特許第6629306号(P6629306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6629306
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】高速の均質コーティングプロセス
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/02 20060101AFI20200106BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20200106BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20200106BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20200106BHJP
【FI】
   B01J37/02 101C
   B01J37/02 301D
   B01J35/04 301G
   B01D53/94
   F01N3/28 Q
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-516866(P2017-516866)
(86)(22)【出願日】2015年9月11日
(65)【公表番号】特表2017-530003(P2017-530003A)
(43)【公表日】2017年10月12日
(86)【国際出願番号】EP2015070792
(87)【国際公開番号】WO2016050483
(87)【国際公開日】20160407
【審査請求日】2018年8月31日
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2014/070813
(32)【優先日】2014年9月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501399500
【氏名又は名称】ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・マッソン
(72)【発明者】
【氏名】セーリオ・マレンタケ
【審査官】 中村 俊之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−059011(JP,A)
【文献】 特表2013−518708(JP,A)
【文献】 特開2001−314818(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0321537(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00− 38/74
B01D 53/94
F01N 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気ガス浄化触媒の製造のために、基材(1)を均質にコーティングするプロセスであって、前記基材は円筒状基材であり、またそれぞれが2つの端面、円周面および軸方向長さLを有し、かつ第1端面から第2端面まで多数のチャネルが通過し、液体コーティング媒体でコーティングされ、重力に抗し、
前記液体コーティング媒体(113)の、下方(7)からの前記基材への導入が、軸方向長さの一部から前記基材末端部へのコーティング速度が、前記液体コーティング媒体の前記基材(1)への最初の導入における速度と比較して減少するような方法で制御され、かつ
ーティングチャンバにおけるコーティングの高さが、前記液体コーティング媒体(113)が前記基材に入る前に、導電率センサ(4)によりチェックされ、かつ
前記液体コーティング媒体の前記導入の初めにおける前記コーティング速度が、0.1m/s以上であり、かつ
前記基材の少なくとも75%が既に前記液体コーティング媒体によって濡れるより以前に、前記コーティング速度の減少が始まらず、かつ
前記液体コーティング媒体の前記基材への前記最初の導入における、前記コーティング速度が、前記基材の95%地点での前記コーティング速度と比較して、少なくとも2倍である、プロセス。
【請求項2】
前記基材の最上部に出現する前記液体コーティング媒体(113)が、視覚センサ(5)により監視される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記基材が、膨張式シール(10)により下端面ならびに上端面両方でコーティングステーションに固定される、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記液体コーティング媒体(113)の粘度が2〜200mPa・sである、請求項1からのいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
液体(103)を充填され、ピストン(101)を有するシリンダ(102)を有し、前記液体で充填されたシリンダ(102)がタンク(112)と連通し、タンクの内部では、前記ピストン(101)が移動するときに、移動体(111)が前記液体(103)によって比例して移動するように当該移動体(111)が配置され、前記タンク(112)は前記基材(1)用のコーティング装置(3)と連通し、前記移動体(111)が、前記液体コーティング媒体(113)に作用し、その結果として、前記コーティング装置(3)内の液体コーティング媒体(113)の高さに比例して変化をもたらす装置が使用される、請求項1からのいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス触媒の生成プロセスに関する。特に、前記プロセスは最終的にコーティング時間を減少させるやり方で基材をコーティングする方法について記載する。
【背景技術】
【0002】
燃料燃焼は完全ではなく、未燃炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NO)、および微粒子状物質(PM)などの汚染物質の排出を引き起こすことは、燃焼機関の分野において周知である。空気質を改善するため、排出規制法が、固定用途および移動汚染源からの汚染物質の排出を低減するように整備されている。乗用車などの移動汚染源に関しては、既に主要処置により汚染物質の排出を減少させることができた。例えば、主要措置として燃料と空気の混合を改善したことで、汚染物質の大幅な削減をもたらした。しかしながら、長年にわたって一層厳重な規制が導入されてきたため、二次措置として不均一系触媒の使用は避けられなくなってきた。
【0003】
これらの不均一系触媒の製造の重要な態様としては、例えば、コーティング長さ、塗布されたコーティング量、コーティング層の平坦性、コーティング長さの均一性および長手方向軸線に沿ったコーティング勾配を考慮して、使用される基材を精密にコーティングすることである。これを達成するために、現在まで、好ましくは可能な限り少ない回数で、十分にコーティングされた一体構造体の提供を試みようと、幾つかのコーティング戦略が採用されてきた。
【0004】
基材をコーティングするために可能なことの1つとして、基材の片側の開口部をコーティング媒体と接触させて、基材の反対側を減圧することにより、液体コーティング媒体を基材の開口部、例えば、チャネルを通じて引き込むものがある。チャネルの長さの一部だけに沿ってコーティングすることを意図する場合、チャネルからチャネルへ発生する不可避の個々の流動プロファイルのため、異なるチャネルが異なる長さにわたってコーティングされることは不都合である。
【0005】
コーティング媒体が重力に抗する圧力によってチャネルに押し込まれる場合、チャネル全体のコーティングまたは均質コーティングについて、液体がいつ最上部に出現するかを(通常はセンサによって)更にチェックする必要がある。しかし、この場合もまた、モノリスのチャネル内部でコーティングが不均質となり得る。例えば、高速コーティングが確立する場合、基材の周辺部ではなくむしろ中央の、一層のウォッシュコート速度を伴う層流で、ウォッシュコートがチャネルに入り込む可能性がある。この場合、基材中央のウォッシュコートが最上部に発生し、かつ部分的にコーティングされた基材をもたらすということが最初に検出される。高速故に、同様に、センサが検出し得かつそれに応じて信号を送り、また部分的にコーティングされた基材のみをもたらす場合のある、基材の最上部から来るウォッシュコートの液飛びを伴う可能性がある。
【0006】
ドイツ特許第102010007499A1号では、それぞれが2つの端面、円周面、および軸方向長さLを有し、更に第1端面から第2端面まで多数のチャネルが通過する円筒状基材が液体コーティング媒体でコーティングされている、好ましいコーティング機器および方法が開示されている。問題の機器は、液体で充填されたシリンダを有するとともにピストンを有し、前記液体で充填されたシリンダはタンクと連通し、タンクの内部では、ピストンが動くときに、液体により比例して移動するような方法で、移動体が配置される。タンクは基材用のコーティング装置と連通し、それによって移動体が液体コーティング媒体に作用し、その結果として、コーティング装置内の液体コーティング媒体の高さが比例して変化する(当該出願の図1参照)。コーティングチャンバ内のスラリー表面の位置が特定の高さに達したかどうかをチェックするために、2つのセンサが、コーティング装置内で同じ高さに配置される。
【0007】
コーティングプロセスの促進を考慮すると、1つの非常に重要な要素はコーティング液が基材に供試され得る速度である。この速度は、ウォッシュコートスラリーまたは液体媒体が、その長手方向軸線に沿って基材の前面に浸透する速度として定義される。
【0008】
欧州特許第1180398A2号では、3000L/hrのコーティング速度が記載されている実施例1で、モノリス基材をコーティングするプロセスが開示されている。本方法では、モノリスのコーティング長さにわたってコーティング速度は変化しないが、吹付けられたスラリーが上面付近で上昇する場合に抑制されるという、重力に抗する古典的なコーティングアプローチが使用されるという事実の他に、直径118.4mmおよび約90%の空面(コーティング液に対する壁を有さない)を有する通常のモノリス用のコーティング速度0.08m/sに変わることが記載されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
特に自動車用の排気ガス浄化触媒の製造のために、円筒状基材であってかつそれぞれが2つの端面、円周面および軸方向長さLを有し、また重力に抗して液体コーティング媒体を伴い第1端面から第2端面まで多数のチャネルが通過する基材を均質にコーティングするプロセスにおいて、液体コーティング媒体の基材への最初の導入における速度と比較して、軸長の一部から基材の端部へのコーティング速度が減少するような方法で、下方からの液体コーティング媒体の基材への導入が制御され、同時に一定の速度を伴う通常のコーティングと比較して、より良好なコーティング性能と共にコーティング時間の大幅な減少が実現できる、ということが見出された。例えば、基材の長手方向軸線に沿ったコーティングにおいて、勾配に関する均一性が大幅な程度で低減し得る、ということが判明している。
【0010】
コーティング速度の減少は、当業者により実施することができる。例えば、まず基材の長手方向軸線の特定部分に沿った、下方からの基材チャネルのコーティングにおける高速度から始まり、新しいウォッシュコート/液体コーティング媒体の導入速度は、次に線状曲線、双曲線、放物曲線、指数曲線および対数曲線からなる群から選択される速度減少の曲線型に従って減少する。好ましいコーティング方法では、基材の半分が既に液体コーティング媒体によって濡れるより以前に、コーティング速度の減少は始まらない。より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも80%、最高に好ましくは少なくとも90%の基材の長手軸方向の長さが、上述の型に従って速度の減少が開始するより前に高速でコーティングされるのが好ましい。
【0011】
コーティング速度の減少は、液体コーティング媒体が基材に最初に導入され、かつ液体コーティング媒体が基材の最上部に出現する、即ち、コーティング媒体の導入が抑制される少し前に効果がある速度で確定される。好ましい実施形態では、基材の95%、好ましくは97%、最も好ましくは98%が液体コーティング媒体によりコーティングされている場合に、液体コーティング媒体が基材の最上部に出現する少し前の時点に達する。
【0012】
本プロセスの更に有利な態様では、液体コーティング媒体の基材への最初の導入におけるコーティング速度は、液体コーティング媒体が基材の最上部に出現する少し前、−例えば−基材のコーティング長さが95%であるときのコーティング速度と比較して少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも3倍、より好ましくは少なくとも4倍の規模である。
【0013】
本プロセスの別の有利な態様では、液体コーティング媒体の基材への最初の導入におけるコーティング速度は、液体コーティング媒体が基材の最上部に出現する少し前、−例えば−基材のコーティング長さが97%であるときのコーティング速度と比較して少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも3倍、より好ましくは少なくとも4倍の規模である。
【0014】
本プロセスの更に別の有利な態様では、液体コーティング媒体の基材への最初の導入におけるコーティング速度は、液体コーティング媒体が基材の最上部に出現する少し前、−例えば−基材のコーティング長さが98%であるときのコーティング速度と比較して少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも3倍、より好ましくは少なくとも4倍の規模である。
【0015】
液体コーティング媒体導入の始めにおける高速コーティング速度の絶対値は、コーティングされる基材の種別によるが、0.1m/s、更に良いのは0.2m/s、更により好ましくは0.3m/sを超えるか、または等しい。上限値は使用する装置および基材によってのみ得られるが、0.5m/s、好ましくは0.4m/sを超えない場合もある。
【0016】
更に好ましい態様では、本プロセスは、コーティングチャンバまたはコーティング装置におけるウォッシュコートまたは液体コーティング媒体のコーティングの高さが、基材に導入される直前にチェックされるように設計されている。これにより、そこから本発明に従って実施することができる基材のコーティングにおいて、精密なオンセットが発生する。コーティングの減速が開始されなければならない時点で極めて正確に合わせるという観点から、精密な始点は重要である。コーティングの高さは、当業者に周知の手段によりチェックすることができる。通常、液体コーティング媒体の高さは、電気センサ、視覚センサ、容量センサ、IR−センサおよび振動センサからなる群から選択される特定のセンサにより、監視される。本プロセスにおけるより好ましい方法では、コーティング装置におけるコーティングの高さは、液体コーティング媒体が基材に入る前に導電率センサによりチェックされる(この関係におけるドイツ特許第102010007499A1号、図1参照)。本発明の非常に好ましい実施形態では、コーティング装置におけるコーティングの高さは、欧州特許第14171938.5号に記載されているように、センサ系により監視される。センサが液体コーティング媒体を検出し次第、シグナルが中央演算処理装置にもたらされ、高速コーティングの始点が確定する。
【0017】
既に示したように、基材の最上部にコーティングスラリーまたは液体コーティング媒体が出現した時点で、本発明の液体コーティング媒体の導入が終了する。これは、当業者に周知の特定の種類のセンサにより、再度測量することができる。特に、この関係において、好ましくは光学センサまたは超音波型センサを選択することができる(http://www.baumer.comまたはhttp://www.sick.com)。それらは基材より上に置かれることが好ましく、基材の上に液体コーティング媒体が出現するのを監視するのに役立つ。液体コーティング媒体が基材の上に到達し次第、シグナルが中央演算処理装置にもたらされる。
【0018】
本発明が好ましくは実施され得る装置は、各センサにより送信されるシグナルに基づいて本コーティングプロセスを全く自動的に操縦する、中央演算処理装置を更に含んでよい(欧州特許第14171938.5の図1およびここでの開示もまた参照)。非常に好ましい様式では、本発明は、上記で引用された周辺条件に従って、説明した系それ自体が学習してコーティングプロセスを最適化するよう設計される。異なるコーティングキャンペインで使用される異なる基材(例えば、金属またはセラミック)のために、例えば、達成し得る最も理想的な結果を得ようと、系それ自体が初期のコーティング速度、コーティング速度を減速する位置、およびコーティング速度減速の量を採用するということが、極めて有用であると考えることができる。従って、第1基材を新しいキャンペインに供試する一方、有利には、最良のコーティング条件を全く自動的に計算するように系がプログラムされる。各基材におけるコーティングの差が基材から基材へと最小になる、および/または基材におけるコーティングのために与えられる規格が、可能である最大の基材量を満たす場合に、最良のコーティング結果が実現する。この実行のためにプログラムされる自己学習ソフトウエアは、当業者の知見に基づいている。後者の態様は、キャンペインの間に液体コーティング媒体を変えることができ(例えば、粘度において)、また例えばコーティング速度を適合させることにより、今しがた説明した自動化された電子系がこの変更を補うことができ、かつ想定される理想的なコーティング規格からの偏差が少ないコーティング基材を供給する、という事実の観点から更により有利である。
【0019】
コーティング工程が終了し次第、コーティングスラリーまたは液体コーティング媒体が基材の最上部に出現するということは、既に重視されている。この動作はセンサによっても監視される(上記参照)。スラリーが基材からはみ出していることを各センサが示し次第、当該各センサを介して信号が送られた後に中央演算処理装置により新しい液体コーティング媒体の導入が停止する。しかし、非常に早い速度がコーティングプロセスで適用される故に、多少のスラリーが基材から流出して、例えば基材の外側周縁を汚すということが起こり得る。この材料は触媒の損失となり、従って無駄となってしまう。液体コーティング媒体中にPGMが存在する場合、大規模な製造キャンペインにおいてはこの材料の無駄が大変なコストとなり得る。従って、好ましい実施形態では、コーティングされる基材は、膨張式シールにより、当該基材の円周面においてその下端部ならびにその上端面の両方で、コーティングステーションに固定される。これは、最上部シールによるその遮断によって、液体コーティング媒体による円周面の汚れを防止するのに役立つ(図1参照)。余剰液体コーティング媒体は、このように基材の最上部に残り、そしてその後の吸引工程において単に基材内へと引き込まれる。
【0020】
本発明の別の好ましい態様では、液体コーティング媒体は2〜200mPa・sの粘度率を備える。特に好ましいのは、液体(103)を充填され、ピストン(101)を有するシリンダ(102)を有し、前記液体で充填されたシリンダ(102)がタンク(112)と連通し、タンクの内部では、前記ピストン(101)が移動するときに、移動体(111)が前記液体(103)によって比例して移動するように当該移動体(111)が配置され、前記タンク(112)は前記基材(1)用のコーティング装置(3)と連通し、前記移動体(111)が、前記液体コーティング媒体(113)に作用し、その結果として、前記コーティング装置(3)内の液体コーティング媒体(113)の高さに比例して変化をもたらす装置が使用される、本発明のプロセスである。
【0021】
本コーティングプロセスのために利用することができる前記基材は、当業者に周知である。好ましくは、本発明に従ってコーティングされる基材は、いわゆるウォールフローフィルタまたは流動モノリスである。ここで使用される基材は通常触媒を調製するために使用されるこれらの材料でできていてもよく、セラミックまたは金属ハニカム構造を含むのが好ましい。
【0022】
通路がそこを通る流量を受け入れるように、基材の入口または出口面からそこをとおり抜けて延びる微細な、平行のガス流路を有するタイプのモノリシック基材などの好適な基材を使用することができる(ハニカム型流通基材と称される)。通路を通って流れているガスが触媒材料と接触するように、流入口から流出口へ本質的に真直ぐな経路である通路は触媒材料がウォッシュコートとしてその上またはその中にコーティングされる壁によって画定される。モノリス基材の流路は薄壁のチャネルであって、台形、長方形、正方形、正弦波形、六角形、楕円形、円形、その他などの任意の好適な横断面形とサイズであり得る。このような構造は、断面積の平方インチ当たり約400〜900のガス吸気口開口部(即ちセル)、またはより多くのガス吸気口開口部を含んでよい(62〜140セル/cm)。
【0023】
セラミック基材は任意の好適な耐火性材料、例えば、コーディエライト、コーディエライト−アルミナ、窒化シリコン、ジルコンムライト、スポジュメン、アルミナ−シリカマグネシア、ジルコンシリケート、シリマナイト、マグネシウムシリケート、ジルコン、ペタライト、アルミナ、アルミノシリケートなどでできていてもよい。また、本発明の触媒複合体に対して有用な基材は本質的に金属であってもよく、1つ以上の金属または金属合金からなる。金属基材は波形シートまたはモノリス形状などの種々の形状で使用され得る。好ましい金属担体としては、チタンおよびステンレス鋼、並びに鉄が大部分のまたは主要な構成成分である、その他の金属合金などの耐熱性金属および合金が挙げられる。かかる合金は1種以上のニッケル、クロムおよび/またはアルミニウムを含むことができ、これらの金属の総量は、有利には、少なくとも約15重量%の合金、例えば、約10〜25重量%のクロム、約3〜8重量%のアルミニウムおよび最大約20重量%のニッケルを含むことができる。合金は、また、例えばマンガン、銅、バナジウム、チタンなどの少量のまたは微量の1種以上の他の金属を含み得る。基材表面上に酸化物層を形成することにより合金の耐腐食性を向上させるために、金属基材の表面は、例えば、約1000℃以上の高温にて酸化され得る。かかる高温による酸化は高融点金属酸化物担体の接着性および基材に対する金属成分の触媒的促進を高めることができる。
【0024】
基材は更に、ハニカムウォールフローフィルタであってよい。コーティング組成物を担持するために有用なウォールフロー基材は、複数の微細な、当該基材の長手方向軸線に沿って延びる実質的に平行のガス流路を有する。典型的には、各流路は、向い側の端面で閉塞される代替流路と共に、基材本体の一端で閉塞される。本発明の機器にて使用するための特定のウォールフロー基材としては、流体の流れが背圧の大きすぎる増大または物品に対する圧力低下を引き起こすことなく移動する、多孔質薄壁ハニカム(モノリス)が挙げられる。通常、清浄なウォールフロー物品の存在は、0.036psi〜10psiの背圧を生じさせる。これらのセラミックウォールフロー基材は任意の好適な耐火性材料、例えば、コーディエライト、コーディエライト−アルミナ、窒化シリコン、ジルコンムライト、スポジュメン、アルミナ−シリカマグネシア、ジルコンシリケート、シリマナイト、マグネシウムシリケート、ジルコン、ペタライト、アルミナ、アルミノシリケートなどでできていてもよい。これらは、少なくとも5マイクロメートルの平均孔径(例えば、5〜30マイクロメートル)を有する、少なくとも40%の多孔性(例えば、40〜70%)を有する材料により、形成されることが好ましい。より好ましくは、基材は少なくとも46%の多孔性を有し、また少なくとも10マイクロメートルの平均孔径を有する。これらの多孔性およびこれらの孔径を伴う基材が上記の機器によりコーティングされる場合、コーティング組成物の適性な量が基材の細孔に取り込まれ得る、および/または基材の細孔に入り得て、優れた汚染物質の変換効率および煤煙のバーンオフを実現する。これらの基材は、依然として適性な排気流特性を保持することが可能である。即ち、触媒充填にもかかわらず、許容可能な背圧である。好適なウォールフロー基材は、例えば米国特許出願公開第4,329,162号公報に開示されている。
【0025】
「コーティング」という表現は、触媒的活性材料および/または吸蔵成分を、上述のウォールフローフィルタまたは流動モノリスの様式で構築されてよい、実質的に不活性な基剤の上に塗布する、という意味であると理解すべきである。コーティングは実際の触媒機能を発揮し、また、非常に分散した形状で、温度の安定した、広い表面積の金属酸化物に体積する吸蔵材料および/または触媒活性金属を、通常含有する。コーティングは、通常、吸蔵材料および/または触媒活性成分の液体コーティング媒体の塗布−不活性基材壁へのウォッシュコートとも称される−により実施される。液体コーティング媒体の塗布後、担体を乾燥させ、適切な場合は高温で焼成される。コーティングは、1つの層で構成されてもよく、もしくは基材に上下に塗布される(多層形態で)および/または互いに対してオフセットである(ゾーンで)、複数の層から構成されてもよい。
【0026】
液体コーティング媒体は、例えば、触媒活性成分またはその前駆体と、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、またはそれらの組み合わせなどの無機酸化物とを含有する、自動車用の排気ガス触媒をコーティングするための懸濁液または分散液(「ウォッシュコート」)であり、酸化物に、例えば、シリコンまたはランタンを添加することが可能である。バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、ニッケル、またはランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジウム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、もしくはそれらの組み合わせなどの希土類金属の酸化物は、触媒活性成分として使用することができる。プラチナ、パラジウム、金、ロジウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、およびそれらの組み合わせなどの貴金属も、触媒活性成分として使用することができる。これらの金属はまた、互いに、もしくは他の金属とともに合金として、または酸化物として存在することができる。金属は、上記の貴金属の硝酸塩、亜硫酸塩、またはオルガニルおよびそれらの混合物などの前駆体としても存在することができ、特に、硝酸パラジウム、亜硫酸パラジウム、硝酸プラチナ、亜硫酸プラチナ、またはPt(NH(NOを液体コーティング媒体内に使用することができる。約400℃〜約700℃でか焼することで、触媒活性成分を前駆体から得ることができる。自動車の排気ガス触媒製造用基材をコーティングするために、無機酸化物の懸濁液または分散液をコーティング用に最初に使用することができ、その後、次のコーティングステップで、1つまたは複数の触媒活性成分を含有する懸濁液または分散液を加えることができる。ただし、液体コーティング媒体が、これらの成分をともに含有することも可能である。液体コーティング媒体(スラリー/ウォッシュコート)は、多くの場合35%〜52%の固形分含有量および2〜300mPa・s、好ましくは15〜200mPa・sの粘度率を有する。
【0027】
コーティングプロセスは、通常、一定のコーティングスラリーが方向(114)を経てコーティング装置(3)へとセンサ(4)までポンプで送り込まれて、コーティングの高さを調整する(4)のシグナルが到達すると、開始する。この間、基材(1)は上方からコーティング装置(3)の上に置かれ、かつシール(10)を膨張させることにより堅く固定される(例えば、ドイツ特許第102010007499A1号、ドイツ特許第102010008700A1号、または中国実用新案第201420126144.7号に記載されている)。これらの引用される公刊文書は、本発明の機器によるコーティングプロセスが好ましくはどのように実施され得るかに関して、有利には本開示の一部である。
【0028】
装置(3)内に適切に充填される場合、コーティングスラリー(113)は、次の工程において本発明に従って更に基材(1)へと所望のコーティングに達するまで、即ち液体コーティング媒体が基材の最上部に出現してセンサ(5)により信号が送られるまで、ポンプで送りこまれる。その後に、余剰コーティングスラリーは基材(1)から下方より取り除かれ、また基材(1)は同一のウォッシュコートで再度コーティングしてよいか、またはコーティングチャンバから外されて更に処理される、例えば、別の方向から再度コーティングされる、あるいは同じ方向から異なるウォッシュコートで2度目にコーティングされる、もしくは計量、乾燥またはか焼ユニットへと進行する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】1 基材 2 基材固定ユニット 3 コーティング装置 4 コーティング装置の充填量監視センサ 5 基材最上部におけるコーティングスラリー出現の監視センサ 6 中央演算処理装置 7 液体コーティング媒体の流れ 10 膨張式シール
図2】100 アクチュエータ 101 ピストン 102 シリンダ 103 液体 104 導管部 111 移動体 112 タンク 113 液体コーティング媒体 114 充填流方向 124 移動体をモニタリングするセンサ 125 中央演算処理装置
【発明を実施するための形態】
【0030】
(図面の詳細な説明)
図1は、基材(1)をコーティングするための、本発明の配置を示す。コーティング機器(3)の中に、導管部(7)を介して液体コーティング媒体を充填するが、前記コーティング機器(3)は、基材(1)および装置(3)内における液体コーティング媒体の最初の量を正確に測定するためのセンサ(4)を備える。センサ(4)により測定された値は、中央演算処理装置(6)へと送達され、これに関して、上述の分析に基づいて少なくともコーティングスラリーの更なるポンピングまたは吸引を制御する。
【0031】
コーティング機器(3)の充填流方向(7)にて、コーティング媒体を最初の量(センサ4の量)まで充填した後、センサ(5)により監視される液体コーティング媒体が基材(1)の最上部に出現した後、コーティングスラリーが戻り流方向で吸引され得、貯蔵タンクに余剰コーティング媒体をもたらして更なる使用の準備のために保持する。このために必要とされる全ての制御コマンドは、同様に、中央演算処理装置(6)から出力されるのが好ましい。
【0032】
図2は、液体(103)で充填されたシリンダ(102)中でアクチュエータ(100)により作動するピストン(101)を有し、またシリンダ(102)の連結部(104)が移動体(111)まで通じ、液体コーティング媒体(113)で充填されたタンク(112)内の移動体(111)の作動を可能にし、またコーティングユニットに連結している導管部(114)を有する、基材をコーティングするための本発明の配置を示す。センサ(124)を使用して、コーティング媒体(113)の移動体積と、タンク(112)内の移動体(111)の状態とを観測する。
【0033】
センサ(124)によって測定された値はまた、中央演算処理装置(125)に送られ、中央演算処理装置は、これに関して、アクチュエータ(100)を制御し、したがってピストン(101)を制御する。
【0034】
基材をコーティングする目的で必要とされ、かつ(4)(5)および(124)から発せられる信号に基づく全ての制御コマンドは、同様に、中央演算処理装置(125[図2],6[図1])から出力されることが好ましい。
【0035】
自動車のための排ガス触媒の製造に好適な完成基材は、特にその壁部分に、少なくとも長手方向チャネル軸線に沿ったコーティングの均質性が、より遅く、従って一定の速度でのコーティングと比較して優れていることを特徴とする、均一コーティングを有する。高速コーティングは、触媒ユニットあたり(g/L)の触媒種の量および/またはウォッシュコートの量で、少なくとも勾配において、実際は一層の均質性を促進することが検出されている。本発明は、非常に容易にもかかわらず、驚くべきことに効果的な方法により、この結果を実現する。特別なコーティング速度プロファイルが適用されるという点で、驚くべきことに、依然として有利にもコーティング基材を備える超高速コーティング方法を用いることができる。これは、サイクルタイム(本体1つをコーティングするのに必要な時間)の短縮に大いに役立つが、他方では、規格から外れるコーティングがより少ないモノリスをも促進してしまう。従って、本発明は、排ガス触媒のコーティング工程における経済性を、大幅に向上させることを可能にする。本発明の日付における先行技術の教示によりなされるものではないことが、明らかである。
【0036】
(実施例)
143.8cmの直径を備える2.5 l基材を、ドイツ特許第102010007499A1に記載された手順に従ってコーティングした。通常のコーティングプロセスを、本発明に従った高速コーティングと比較した。流出センサがコーティング媒体の導入を終了する信号を送る場合に、ウォッシュコートを停止する。
【0037】
【表1】
【0038】
所与の条件は、実際のコーティングプロセスに相当する。新規コーティング戦略の適用により、一部あたり大量の時間を節約できると見ることができる。高速コーティングプロセスによるコーティングの質は、一部で依然として導入されつつ、液体コーティング媒体を導入して実質的にコーティング媒体の粘度率を変化させる場合に、使用されるモノリス基材が十分に早く水を吸収できないという事実故に、通常のコーティングプロセスより大幅に良好である(600mL/s)。
図1
図2