特許第6629310号(P6629310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6629310人工皮革ポリウレタン複合材料の次元的改良
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6629310
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】人工皮革ポリウレタン複合材料の次元的改良
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/30 20060101AFI20200106BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20200106BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20200106BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20200106BHJP
   D06N 3/00 20060101ALI20200106BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20200106BHJP
【FI】
   B32B3/30
   B32B27/40
   B32B27/12
   B32B5/18
   D06N3/00
   B29C59/02 Z
【請求項の数】21
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-519610(P2017-519610)
(86)(22)【出願日】2015年10月19日
(65)【公表番号】特表2017-533124(P2017-533124A)
(43)【公表日】2017年11月9日
(86)【国際出願番号】US2015056237
(87)【国際公開番号】WO2016061581
(87)【国際公開日】20160421
【審査請求日】2017年6月8日
(31)【優先権主張番号】62/065,470
(32)【優先日】2014年10月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515186633
【氏名又は名称】セージ オートモーティブ インテリアズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Sage Automotive Interiors, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マクルール ポール
(72)【発明者】
【氏名】ライス ジャーメイン
(72)【発明者】
【氏名】キッフ マーク エヴェレット
(72)【発明者】
【氏名】コリンス ウィリアム ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ヒル トレーシー ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン デービット マイケル
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−211612(JP,A)
【文献】 特開2014−184580(JP,A)
【文献】 実開平04−067033(JP,U)
【文献】 特開2001−164477(JP,A)
【文献】 特開平07−145553(JP,A)
【文献】 特開昭64−061224(JP,A)
【文献】 実開昭58−192991(JP,U)
【文献】 特開2005−320419(JP,A)
【文献】 特開2007−331222(JP,A)
【文献】 特開昭57−025942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00− 43/00
D06N 1/00− 7/06
B29C 53/00− 59/18
C08J 9/00− 9/42
D06B 1/00− 23/30
D06C 3/00− 29/00
D06G 1/00− 5/00
D06H 1/00− 7/24
D06J 1/00− 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン層と、
前記ポリウレタン層に接合されている上面と、その反対側の下面とを有する非復元性発泡体層と、
前記非復元性発泡体層の前記下面に接合される裏材と、
を備え、前記ポリウレタン層と前記非復元性発泡体層と前記裏材とは、ピロー状セルを形成するエンボスパターンをそれぞれ有し、前記ピロー状セルは、前記エンボスパターンによって形成されるエンボス凸部及びエンボス線の網目によって境界を定められ、
前記非復元性発泡体層は、見かけ密度が1.50〜2.50(kg/m)であり、押込力撓みが20.00〜70.00(N/323cm)であり、セル数が42.00〜80.00(セル/100mm)である、エンボス加工された複合材料。
【請求項2】
前記ポリウレタン層は、上面層と、該上面層に接合されるスキン層と、バインダー層によって前記スキン層に接合される裏材布地層とを備える、請求項1に記載のエンボス加工された複合材料。
【請求項3】
前記上面層と前記スキン層と前記バインダー層との合計重量は、前記ポリウレタン層の総重量の27%〜30%である、請求項2に記載のエンボス加工された複合材料。
【請求項4】
前記裏材布地層は丸編み生地で作製される、請求項2に記載のエンボス加工された複合材料。
【請求項5】
前記丸編み生地は起毛されている、請求項4に記載のエンボス加工された複合材料。
【請求項6】
前記非復元性発泡体層は、ポリエステルポリウレタン発泡体で作製される、請求項1に記載のエンボス加工された複合材料。
【請求項7】
前記非復元性発泡体層は、3mm〜5.2mmの厚さである、請求項6に記載のエンボス加工された複合材料。
【請求項8】
前記ポリウレタン層の前記エンボスパターンは、前記非復元性発泡体層の前記上面の前記エンボスパターンに対して実質的に平行であり、前記裏材の前記エンボスパターンは、前記非復元性発泡体層の前記下面の前記エンボスパターンに対して実質的に平行である、請求項1に記載のエンボス加工された複合材料。
【請求項9】
前記裏材は布地層又は不織布層である、請求項1に記載のエンボス加工された複合材料。
【請求項10】
ポリウレタン層と非復元性発泡体層と裏材とを準備するステップと、
前記ポリウレタン層と前記非復元性発泡体層と前記裏材とを結合するステップであって、複合材料を形成する、ステップと、
前記複合材料にパターンをエンボス加工するステップであって、前記パターンによって形成されるエンボス凸部及びエンボス線の網目によって境界を定められるピロー状セルを有するエンボス加工された複合材料を形成する、ステップと、
を含み、
前記非復元性発泡体層は、見かけ密度が1.50〜2.50(kg/m)であり、押込力撓みが20.00〜70.00(N/323cm)であり、セル数が42.00〜80.00(セル/100mm)である、エンボス加工された複合材料を作製する方法。
【請求項11】
前記エンボス加工するステップは、
エンボス加工ステーションを備えるロールエンボス装置を準備するステップと、
前記複合材料を、彫刻エンボスロールを受けロールに隣接して備える前記エンボス加工ステーションに供給するステップと、
前記複合材料を前記受けロールと前記エンボスロールとのニップ部に通すステップと、を含む、請求項10に記載のエンボス加工された複合材料を作製する方法。
【請求項12】
前記方法は、前記受けロール及び前記彫刻エンボスロールを加熱するステップを更に含み、前記受けロールは、前記彫刻エンボスロールよりも高い温度まで加熱される、請求項11に記載のエンボス加工された複合材料を作製する方法。
【請求項13】
前記方法は、
前記受けロールを190℃の温度まで加熱するステップと、
前記彫刻エンボスロールを150℃の温度まで加熱するステップと、
を更に含み、前記加熱するステップは、前記複合材料が前記ニップ部に通される前に行われる、請求項11に記載のエンボス加工された複合材料を作製する方法。
【請求項14】
前記方法は、
前記受けロールを190℃〜195℃の温度まで加熱するステップと、
前記彫刻エンボスロールを120℃〜180℃の温度まで加熱するステップと、
を更に含み、前記加熱するステップは、前記複合材料が前記ニップ部に通される前に行われる、請求項11に記載のエンボス加工された複合材料を作製する方法。
【請求項15】
前記通すステップは、3ヤード毎分〜5ヤード毎分の線速度で行われる、請求項11に記載のエンボス加工された複合材料を作製する方法。
【請求項16】
前記方法は、
プレスロールを前記彫刻エンボスロールに隣接して設けることと、
前記彫刻エンボスロールを前記受けロールにプレスするステップであって、4MPa〜8MPaの圧力を維持するステップと、
を更に含む、請求項11に記載のエンボス加工された複合材料を作製する方法。
【請求項17】
前記結合するステップは、直火積層法によって行われる、請求項10に記載のエンボス加工された複合材料を作製する方法。
【請求項18】
前記エンボス加工するステップは、
エンボス加工ステーションを備えるフラットエンボス装置を準備するステップと、 前記複合材料を、上側彫刻エンボスプレート及び下側フラットプレートを備える前記エンボス加工ステーションに供給するステップと、
前記上側彫刻エンボスプレートと前記下側フラットプレートとを互いにプレスするステップであって、前記複合材料に前記パターンを形成する、ステップと、
を含む、請求項10に記載のエンボス加工された複合材料を作製する方法。
【請求項19】
前記方法は、
前記上側彫刻エンボスプレートを190℃の温度まで加熱するステップと、
前記下側フラットプレートを200℃の温度まで加熱するステップと、
を更に含み、前記加熱するステップは、前記プレスするステップの前に行われる、請求項18に記載のエンボス加工された複合材料を作製する方法。
【請求項20】
前記プレスするステップは、5秒〜15秒で行われる、請求項18に記載のエンボス加工された複合材料を作製する方法。
【請求項21】
前記エンボス加工ステーションに10psi〜30psiの圧力を加えることを更に含む、請求項18に記載のエンボス加工された複合材料を作製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2014年10月17日に提出された米国仮特許出願第62/065470号の優先権の利益を主張する。この米国仮特許出願は、引用することによりその全体が本明細書の一部をなす。
【0002】
本発明は、包括的には、人工皮革製造装置(artificial leather devices)及び方法に関し、より詳細には、その複合材料/積層材料の三次元的改良(three-dimensional enhancements)に関する。
【背景技術】
【0003】
合成皮革材料は、様々な産業において使用されている。例えば、自動車産業では、合成皮革は、シート、ハンドル、内装パネル等を覆うために広く使用されている。この材料は、環境への影響、費用、耐久性及びカスタマイズ性を含む複数の理由から、天然皮革(animal leather)よりも有利なものである。通常、合成皮革はより軽量であり、より効率的に製造され、本革/天然皮革よりも大幅に安価である。
【0004】
様々なタイプの合成皮革のなかでも、ポリウレタン(「PU」)系レザーは、ポリ塩化ビニル(「PVC」)系レザーに優る利点を有する。合成PUレザーはより軽量であり、通常は無臭であり、PVCレザーに比較して通気性が高い。さらに、PUレザーは、PVCには含まれる可塑剤等の環境に有害な物質を含まない。また、PUレザーは、PVC製品が現状において示している硬さの制約を受けない。
【0005】
PUレザーの多くの利点に鑑みて、PUレザーの外観の多様化及び触感の質の向上を含むPUレザーのスタイリング性の拡大に労力が注がれてきた。「触感」という用語は、素材の手触り及び感触を指す。PUレザーの外観及び質感はどちらも、その製造に用いられる方法によって変化し得る。
【0006】
例えば、エンボス(embossment)は、PU含有材料を次元的に改良するために用いられる。本明細書で使用するとき、「エンボス」とは、圧力及び/又は熱によってそれぞれ可変量で形成される圧痕(impression)を指す。従来のエンボス加工の試みでは、材料の溶融及び裂断(cut)並びにそのようなエンボス部の角部における応力の誘起をもたらす加熱ステップ又はプレスステップに関する問題を含む複数の理由から、PU材料面の表面に裂断又は損傷が生じていた。また、従来使用されてきたエンボスパターン転写手段は、過度に鋭利なエッジを有するロール又はプレートがPU表面層の裂断若しくは損傷、又は更には下側複合層まで貫く激しい裂断の一因となることを含む問題を孕んでいた。不適切な発泡体及び織物スクリムを含む不適切な材料の使用は、エンボス加工の直後から、合成皮革材料を組み込む最終製品、一例としては自動車のシート等の製造までに、エンボスデザインの形状及び深さが歪むこと等の更なる問題を引き起こしていた。
【0007】
積層及びスクリムを伴わない合成皮革材料のフラットエンボス加工(flat embossing)を含む、合成皮革におけるエンボスデザインの完全性を維持するいくつかの試みがより良い結果をもたらすことが判明しているが、そのような試みの三次元的効果はごく僅かであり、妥協され、美的な印象を与えるものではない。通常、これらのエンボスは本質的に二次元的であり、より目立ち、現実的な及び/又は美的に好ましい結果を達成するのに十分な深さを有していない。
【0008】
合成皮革製品の三次元的外観を向上させるために、「ピローエンボス加工(pillow embossing)」として知られる方法が利用されており、これは3層PU構成を含む。PU材料、発泡体及びスクリムの複合層によって形成される表面材料の三次元的性質は、フラットエンボス加工の場合よりも良好であるが、これらの従来の試みは、依然としてエンボスの目標として最適とは言えない。具体的には、これらの従来の試みでは、エンボス加工工程中、複合材料は溶融又は裂断等から適切に保護されない。また、「ピロー」効果をもたらすために使用される材料は、所望のエンボス形状を十分に維持しない。
【0009】
したがって、これらの問題及び他の問題により、合成皮革の分野では、より効率的なエンボス加工法と、その結果得られるより耐久性の高い製品とが依然として必要とされていることが示されている。
【発明の概要】
【0010】
幸運なことに、本発明では、人工皮革ポリウレタン複合材料の、洗練され最適化された汎用的な次元的改良が示される。
【0011】
下記は、本発明のいくつかの態様の基本的な理解をもたらすための本発明の簡単な概要である。この概要は、本発明の網羅的な概観ではない。この概要は、本発明の重要な要素又は重大な要素を特定することも、本発明の範囲を定めることも意図していない。続いて提示されるより詳細な説明への前置きとして、本発明の構想を簡単な形で示すことがこの概要の唯一の目的である。
【0012】
本発明は、エンボス加工された複合材料と、皮革の外観及び皮革と同様の特質を有するエンボス加工された複合材料を形成する方法とを含む。
【0013】
1つの実施の形態において、エンボス加工された複合材料は、複数のPU材料層と、発泡体層と、スクリム基層とを備える。複合材料の各層は、複合材料にわたってピロー状の房又はセルを形成するようにエンボス加工される。別の実施の形態において、エンボス加工された複合材料は、少なくとも3つのPU層と、この3つのPU層の裏材の役割を果たす布地層と、この裏材布地層の下の非復元性(unclickable)PU発泡体層と、このPU発泡体層の裏材の役割を果たす布地層又は不織スクリム層とを備える。複合材料は、これらの層の接合部によって形成されるエンボスパターン線の網目によって境界を定められるピロー状の房又はセルを形成するようにエンボス加工される。
【0014】
「復元性(Clickable)」発泡体は、刃による切断、圧力による型押し、熱を伴う挟圧(impinched with heat)又はダイによる打抜き後もその形状を保つので、エンボス加工には不適である。
【0015】
本明細書で使用するとき、「非復元性」発泡体は、エンボス加工に適合されており、エンボス操作後に復元せずそのエンボス形状を保つ発泡材である。
【0016】
1つの実施の形態において、エンボス加工された複合材料を形成する方法は、以下のステップ、すなわち、1)表面層と、裏材層に取り付けられるスキン層とを備えるPUレザー材料を形成するステップと、2)発泡体層をPUレザー材料の下面に取り付けるステップと、3)スクリム層又は布地層を発泡体層の下面に取り付けるステップであって、複合材料を形成するステップと、4)エンボスロールを使用して複合材料をエンボス加工するステップであって、複合材料にエンボスデザイン及びピロー状セルを付与するステップとを含む。
【0017】
別の実施の形態において、エンボス加工された複合材料を形成する方法は、以下のステップ、すなわち、1)表面層と、裏材層に取り付けられるスキン層とを備えるPUレザー材料を形成するステップと、2)発泡体層をPUレザー材料の下面に取り付けるステップと、3)スクリム層又は布地層を発泡体層の下面に取り付けるステップであって、複合材料を形成するステップと、4)エンボスプレートを使用して複合材料をエンボス加工するステップであって、複合材料がエンボスパターンを呈し、エンボスパターン線の内側にピロー状セルが形成されるようにするステップとを含む。
【0018】
本発明によって示される特徴は、フラットエンボス技術及びローラーエンボス技術を使用して、ポリウレタン人工皮革(ポリウレタン被覆材料すなわちPU被覆材料によって支持される)の次元的改良をもたらすことである。本方法では、本発明以前には達成可能でなかった優れた三次元的効果が得られる。本発明によって企図される装置及び方法は、加熱、圧力、エンボスデザイン、材料選択及び合成皮革材料の裂断及び損傷の一因となる他の特徴に関する従来の問題に対処する。
【0019】
本発明の他の特徴は、このエンボス技術による、皮革の外観を有する材料の美的改良である。本方法によって形成される三次元的に改良されたPU材料は、本革製及びOVC/ビニル製のトリム構成部品の外観に一層近似するものである。
【0020】
他の特徴及びそれらの利点は、好ましい実施形態の詳細な説明を注意深く読めば、本発明に関する分野、技術及び装置の当業者には明らかとなるであろう。
【0021】
添付の要約書(Abstract)の目的は、概して、米国特許商標庁及び公衆が簡単な閲覧によって本技術開示の本質及び主旨を即座に明らかにすることを可能にすることである。この要約書は、添付の特許請求の範囲の解釈のために提供されるものでもなく、本発明又は本願を規定するものでもなく、本発明の範囲に関していかようにも限定を与えるものでもない。
【0022】
本主題の更なる目的及び利点は、本明細書の詳細な説明に記載されているか、又は本明細書の詳細な説明から当業者には明らかとなるであろう。また、具体的に図示され、言及され、論じられた本主題の特徴及び要素の変更及び変形を、本発明の様々な実施形態及び使用において本主題の趣旨及び範囲から逸脱することなく行うことができることが更に理解されるべきである。変形は、限定はしないが、図示され、言及され又は論じられた手段、特徴又はステップの等価な手段、特徴又はステップとの置換、様々な部品、特徴、ステップの機能、操作又は位置の反転等を含むことができる。さらにまた、本主題の異なる実施形態及び異なる目下好ましい実施形態は、ここに開示される特徴、ステップ若しくは要素、若しくはそれらの均等物の様々な組合せ又は構成を含むことができることを理解されたい(図に明確に示されていないか若しくはそのような図の詳細な説明に記載されていない特徴、部品若しくはステップの組合せ又はそれらの構成を含む)。本主題の更なる実施形態は、概要部に必ずしも記載されているわけではなく、上記の概説された目的において言及された特徴、構成要素又はステップ及び/又は本願において他に論じられている他の特徴、構成要素又はステップの態様の様々な組合せを含み、そのような組合せを組み込むことができる。当業者は、本明細書の残りの部分を読めば、そのような実施形態及び他の実施形態の特徴及び態様をより十分に理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1A】本発明の一実施形態に係るエンボス加工された複合材料の一部の斜視図である。
図1B】本発明の一実施形態に係るエンボス加工された複合材料の一部の断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るエンボス加工された複合材料を作製する方法を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係るエンボス加工された複合材料を作製するのに使用される材料の断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るエンボス加工された複合材料を作製する方法を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係るエンボス加工された複合材料を作製するのに使用される材料の断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係るエンボス加工された複合材料を作製する方法の図である。
図7】本発明の一実施形態に係るエンボス加工された複合材料を作製するのに使用されるエンボス装置の斜視図である。
図8】本発明の一実施形態に係るエンボス加工された複合材料を作製するのに使用されるエンボス装置の斜視図である。
図9】本発明の一実施形態に係るエンボス加工された複合材料の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書には、或る特定の好ましい実施形態及び例が開示される。しかしながら、発明の主題は、具体的に開示される実施形態における例を超えて、他の代替的な実施形態及び/又は使用並びにそれらの変更形態及び均等物に及ぶ。したがって、添付の特許請求の範囲の範囲は、本明細書に記載の特定の実施形態のいずれによっても限定されない。例えば、本明細書に開示されるいかなる方法又は工程においても、その方法又は工程の行為又は操作を任意の好適な順番で行うことができ、開示されている特定の順番に必ずしも限定されない。様々な操作が、或る特定の実施形態の理解に役立ち得る方式又は順序における複数の別個の操作として記載されている場合がある。しかしながら、記載の順序は、これらの操作が順序依存的であることを含意するものとして理解されるべきでない。さらに、本明細書に記載の構造、システム及び/又は装置は、一体型の構成要素としても別個の構成要素としても実施することができる。様々な実施形態を比較する目的で、これらの実施形態の或る特定の態様及び利点が記載される。そのような態様又は利点の全てが必ずしも任意の特定の実施形態によって達成されるわけではない。したがって、例えば、本明細書に教示されている1つの利点又は利点群を、同様に本明細書に教示又は示唆されている場合がある他の態様又は利点を必ずしも達成することなく達成又は最適化するように、様々な実施形態を実施することができる。
【0025】
本発明は、エンボス加工された複合材料と、皮革の外観及び特質を有するエンボス加工された複合材料を作製する方法及び装置とを含む。
【0026】
本発明は、合成皮革を形成するのに使用されるPU材料の次元的改良を可能にする。本明細書で使用するとき、「PU」という用語は、ポリウレタン含有材料又はポリウレタン被覆材料を指す。PU材料は、パターン又はデザインを変えることができる。ここでは、これらの材料及び方法は、最終的なPU合成皮革製品のデザインに二次元的側面及び三次元的側面の双方をもたらすために使用される。
【0027】
本発明の一実施形態に係る次元的に改良されたPUレザー10の一例が、図1A及び図1Bに示されている。図示のように、PUレザー10は、外観において装飾的かつ三次元的なパターンでエンボス加工される。このパターンは、圧刻(markings)又は線12の網目と、エンボス加工工程において形成されるピロー状セル14とによって規定される。ここで、材料層は、接合線12において又は接合線12に沿って熱及び圧力を用いて接合されている。
【0028】
図1A及び図1Bに示すパターン以外の多様なパターンが、本発明によって想定されている。例えば、エンボスパターンは、対称的でも非対称的でもよい。ピロー状セル14の形状は、幾何学的でもランダムでもよい。また、接合線12及びピロー状セル14の寸法は、一貫していても一貫していなくてもよい。「線(lines)」という用語は、使用されるエンボス装置の対応する彫刻部に対して複合材料層が互いに接合又は溶融された領域を示す、任意の圧刻又は視認可能な圧痕を表すのに用いられる。エンボスパターンが、複合材料の接合の維持と、ひいてはピロー状セルの完全性の維持とに適したものである限り、このPUレザー材料を形成するために多種多様のパターン設計を用いることができる。
【0029】
PUレザー10を形成するのに使用される様々な材料が、自動車のシート等の最終製品における使用後も維持可能な三次元パターンを付与するエンボス加工の有効性に寄与する。図1Bは、PU表面材料20と、発泡体材料22と、スクリム材料24とを含む複合材料を形成するのに用いられる様々な材料を示す、PUレザー10の1つの実施形態の断面図である。これらの材料のそれぞれは、本明細書に記載の装置及び方法によって結合される1つ又は複数の層を備える。
【0030】
1つの実施形態において、PU表面材料20は、図2の図に示す方法によって形成される。剥離紙30を先頭ロール32に通して供給し、コーティングが施される一連の硬化室に通す。第1の硬化室34において、剥離紙30を或る量の水性PUで被覆し、水性PUを硬化して(乾燥及び固化して)PU表面層を形成する。第2の硬化室40において、上記被覆された剥離紙30を、脂肪族イソシアネート基を有するポリカーボネートジオールを原料とする或る量のPU樹脂38で更に被覆する。PU樹脂38は、PUスキン層を形成し、剥離紙に対する粒子転写物(grain transfer)としての役割を果たす。第3の硬化室42において、剥離紙30を、脂肪族基を有するポリカーボネートジオールを原料とする或る量のPU樹脂接着剤44で更に被覆する。PU樹脂接着剤44は、PUバインダー層としての役割を果たす。この工程によって、剥離紙上にPU表面層が形成される。次に、ロール50を使用して、被覆された剥離紙30の表面に裏材材料48を施して積層する。最後に、剥離紙を除去して(図示せず)、PU表面材料20を得る。
【0031】
図3において、本発明のPU表面材料20の1つの実施形態の断面が示されている。このPU表面材料20は、PU表面層60と、PUスキン層62と、PUバインダー層64と、裏材層66とを備える。
【0032】
PU表面材料20の代替的な実施形態が、本発明によって想定されている。例えば、PUスキン層62は、単一の層ではなく2つの層とすることができる。別の実施形態において、図3に示す表面層60に代えて、PUスキン層62を最上層とすることができる。さらに、PUスキン層62と裏材層66との間にシリコーン層(図示せず)を含めることができる。また、PU表面材料が孔(図示せず)を有する場合、内側スキン層の色が外側スキン層とは異なっており、内側スキン層の色が外側スキン層の孔を通して視認可能であるように、別々の色を有する複数のスキン層を用いることができる。
【0033】
PU表面材料20の各層の重量及び厚さの割合は様々とすることができる。1つの実施形態において、表面層60とスキン層62とバインダー層64とは、合わせてPU表面材料20の総重量の約30%を占め、裏材層が総重量の残りを占める。別の実施形態において、これらの3つの層は、PU表面材料20の総重量の約27%〜約30%を占め、裏材層が総重量の残りを占めてもよい。更に別の実施形態において、これらの3つの層を合わせた重量は約120g/mとしてもよく、裏材層の重量は約320g/mとしてもよい。
【0034】
皮革の外観の模擬は、PU表面材料20の表面に転写される剥離紙30の表面の粒子パターンによって一部達成可能である。平滑パターン、粗目パターン及び技術的パターン(反復デザイン及び反復形状を有する)を含む、多種多様の粒子パターンが利用可能である。PU表面材料は、更に穿孔することができる。さらに、PU表面材料20は、工程中に導入される1つ又は複数の染料によって付与される多種多様の色とすることができる。
【0035】
また、裏材層66に用いられる材料は、様々とすることができる。特定の裏材材料は、PU表面材料に厚さ、引張強度及び伸縮性を与える。1つの実施形態において、裏材は、丸編み生地とすることができる。丸編み生地は、起毛していなくても(flat)起毛していてもよい。これらのタイプの生地は、PU表面材料の装飾性を向上させる。また、起毛した丸編み生地は、PU表面材料の触感特徴を向上させることができる。特にPU表面材料が穿孔される場合、トリコットスエード生地の使用も想定されている。裏材は、不織スエードを含む不織材料とすることもできる。後述のように、裏材が発泡体材料22の表面に結合されるように適合されている限り、他の材料が好適である場合もある。
【0036】
本発明に従ってエンボス加工されることになるPU複合材料を形成するために、PU表面材料20は、発泡体材料及びスクリム裏材と結合される。1つの実施形態において、PU複合材料は、図4の図に示されている方法によって形成される。この方法は、一連の隣接する3つのロールによる直火積層法(open flame lamination)を含む。隣接するロールは互いに反対方向に回転し、ここで、中央のロールは、外側ロールの反対方向に回転する。まず、発泡体材料70を準備して、第1のロール72に送る。発泡体材料70が第1のロール72の周りを通過する際に、第1の直火74が発泡体材料70を溶融して、粘着面を生成する。次に、PU表面材料20を準備して、第1のロール72の隣の第2のロール76に送る。PU表面材料20と発泡体材料70とが第1のロール72と第2のロール76とのニップ部の間で挟圧されることで、PU表面材料20の下面又は裏材側が発泡体材料70の粘着面に接合する。発泡体材料70の接合面が第2のロール76と接触しながら、発泡体材料70の未接合面すなわち反対側が第2の直火82によって溶融され、粘着面を生成する。最後に、スクリム裏材又は布地裏材78を準備して、第2のロール76の隣の第3のロール80に送る。スクリム裏材78と発泡体材料70とが第2のロール76と第3のロール80とのニップ部の間で挟圧されることで、スクリム裏材78が、発泡体材料70の未接合粘着面に接合し、エンボス加工されることになる複合材料26がもたらされる。
【0037】
代替的な一実施形態(図示せず)において、発泡体層とスクリム層との積層は、図4に示す連続的な方法とは異なり、2つの別個の経路において行うことができる。
【0038】
形成されたPU複合材料26の1つの実施形態の断面が、図5に示されている。この実施形態では表面層60とスキン層62とバインダー層64と裏材層66とを含むPU表面層に加えて、複合材料は、発泡体層70と、スクリム層又は布地層78も備える。この複合材料26は、1つの実施形態のエンボス加工された複合材料10を作製するのに用いられる。
【0039】
これらの追加層に使用される材料は、複合材料の性質を向上させる。特に、非復元性発泡体の使用が、発泡体層70の好ましい材料である。「復元性」発泡体は、刃による切断、ダイによる打抜き又は加熱後にその以前の形状を復元するので、エンボス加工には不適である。本明細書で使用するとき、「非復元性」発泡体は、エンボス加工に適合されており、ダイカット/エンボス操作後に復元せずそのエンボス形状を保つ発泡材である。この非復元性発泡体は、エンボスが適所に恒久的に保持され、本発明において望まれる三次元的効果を与えることを可能にする。
【0040】
1つの実施形態において、発泡体層70は、厚さ約3mm〜約5.2mmのポリエステルポリウレタンである。発泡体層と外側PU表面層及びスクリム層との接合を達成するには、前述したように、発泡体の両側を加熱して溶融することが好ましい。本発明の1つの実施形態に係る溶融工程において、発泡体の厚さは、いずれの側も約1mmずつ減少する。したがって、この工程における出発発泡体材料70が約5mm〜約7.2mmとすれば、複合材料における最終発泡体厚さは、約3mm〜5.2mmになる。後述のように、発泡体層がエンボスパターンを有効に維持する限り、他の厚さが想定される。
【0041】
別の実施形態において、発泡体材料は、Foamex Innovations, Internationalによって市販され、LC160035として指定されているポリエステルポリウレタン発泡体としてもよい。別の実施形態において、ポリエステルポリウレタンは、Foamex Innovationsによって市販され、LZ185040として指定されているものとすることができる。また別の実施形態において、発泡体は、次の性質を有するものとしてもよい:見かけ密度約1.85lb/ft、セル数約75CPI、かつ押込力撓み(indentation force deflection)約65lb/50in。更に別の実施形態において、発泡体が、以下の性質範囲を有することができる。
【0042】
【表1】
【0043】
布地層又は不織スクリム層72は、エンボスプレート及びエンボスローラーの熱からの保護を提供し、製品の寸法安定性は、スクリムの選択によって変更することができる。
【0044】
PU複合材料のエンボスパターンは、ロールエンボス法又はフラットエンボス法によって達成することができる。本発明に係るロールエンボス法の1つの実施形態が、図6及び図7に示されている。まず、PU複合材料を先頭ロール90に通して供給し、エンボスロール装置に引き取る。複合材料がエンボス加工ステーション94に供給される際、複合材料の張力は、1つ又は複数のバー92によって維持される。エンボス加工ステーション94は、隣接する3つのロールを備え、このとき、彫刻エンボスロール100は、加熱された受けロール96とプレスロール106との中間にある。複合材料26を、加熱された受けロール96と加熱されたエンボスロール100とのニップ部に導入する。このとき、複合材料26のPU表面20側がエンボスロール100に接触し、複合材料26の裏材24側が、加熱された受けロール96に接触する。プレスロール106は、エンボスロール100と受けロール96との間のニップ部の緊密度に寄与する。複合材料がエンボスロール100と受けロール96との間を通る際に、エンボス加工ステーションにおいて加えられる熱及び圧力が、複合材料にエンボスパターンを付与する。その後、エンボス加工された複合材料102を、様々な用途に使用するために巻取り機104において巻き取る。
【0045】
加熱パラメーター、圧力パラメーター及び張力パラメーターは、ロールエンボス法の有効性と、その結果得られるエンボス加工された複合材料の寸法安定性とに寄与する。1つの実施形態において、彫刻エンボスローラー100の温度は、約140℃/華氏245度以下である。別の実施形態において、上記温度は、約120℃/華氏245度である。
【0046】
また、ロールに使用される材料は、様々とすることができる。1つの実施形態において、加熱される受けロール96は金属製である。別の実施形態において、加熱されるロール96は鋼製である。更に別の実施形態において、加熱されるロール96の温度は、約190℃/華氏375度以下である。別の実施形態において、プレスロール106は、ナイロン材料製である。
【0047】
エンボスロール100と複合材料と加熱された受けロール96との接触点での滞留時間は、ロールエンボス機の線速度によって制御される。1つの実施形態において、線速度は、約3ヤード毎分〜約5ヤード毎分である。1つの実施形態において、上記圧力は、約4MPa(メガパスカル)〜約8MPaに維持される。
【0048】
さらに、彫刻エンボスローラーは、多様なエンボスデザインを形成することができる。パターンは、ローラーの表面に対して正確な深さ及びモチーフ構成に彫刻されている。特に、彫刻エンボスロール100は、複合材料26にパターンを転写するように適合されている凸部及び凹部のアレイを備える。凸部及び凹部の寸法は、エンボスパターンが、材料を損傷せずに複合材料26に有効に転写される限り様々とすることができる。
【0049】
本発明に係るフラットエンボス法の1つの実施形態が、図8に示されている。まず、PU複合材料をフラットエンボス装置に供給する。複合材料206を、プレートエンボス装置のエンボス加工ステーション210に送る。エンボス加工ステーションは、上部彫刻エンボスプレート200と、受けマット202と、加熱される下部プレート204とを備える。上部エンボスプレート200を複合材料の表面に下降させる。代替的には、上部プレートと下部プレートとを互いにプレスする。エンボス加工ステーションにおいて加えられる熱及び圧力が、プレート間にある複合材料の一部にエンボスパターンを付与する。次に、エンボス加工された複合材料208を、エンボス加工ステーション210から移動させる。代替的には、フラットエンボス加工は、複合材料206のシートの一区画又は一部をエンボス加工するのではなく、1回の連続パスで行われる。したがって、複合材料の全量(entire amount)をエンボス加工することもできるし、複合材料の一部のみをエンボス加工することもできる。
【0050】
加熱パラメーター、圧力パラメーター及び張力パラメーターは、フラットエンボス法の有効性と、その結果得られるエンボス加工された複合材料の寸法安定性とに寄与する。1つの実施形態において、以下のパラメーターをプレートエンボス装置に用いてもよい。エンボスプレートの温度は、PU材料に接触するプレートの表面において約190℃/華氏380度以下としてもよい。下部ヒータープレートの温度は、PU材料の下部スクリム層に接触する側において約200℃/華氏400度以下としてもよい。滞留時間は、用いられるエンボスパターンによって変化する。1つの実施形態において、滞留時間は、圧力制御が実行された時点から圧力制御が解除されるまでの間で約5秒〜約15秒としてもよい。別の実施形態において、用いられる圧力は、約10psi〜約30psiとしてもよい。
【0051】
さらに、エンボスプレートは、PU複合材料に多様なエンボスデザインを形成することができる。パターンは、金属材料に対して正確な深さ及びモチーフ構成に彫刻される。
【0052】
図9には、1つの実施形態のエンボス加工された複合材料の断面が示されている。図示のように、エンボスパターンは、複合材料全体に通して付与されている。しかしながら、複合材料の性質に関して、PU表面材料層及び発泡体層の上部は同様の湾曲部を有し、この湾曲部は、発泡体の下部及びスクリム層の湾曲部の鏡像となっているように見える。記載したように、エンボスパターンは、PU表面及びスクリムの凸部300によって境界を定められるとともに接合線12の内側に包含されるピロー状セル14を形成する。
【0053】
当業者は、好ましい実施形態の上記の説明から、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、置換及び変更を行うことができることを理解するであろう。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9