(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6629315
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】フェニルヒドラジン/無水物付加物およびこれらを使用する嫌気性硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 11/06 20060101AFI20200106BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20200106BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20200106BHJP
C07C 243/36 20060101ALN20200106BHJP
【FI】
C09J11/06
C09J4/02
C08F2/44 B
!C07C243/36
【請求項の数】13
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-522118(P2017-522118)
(86)(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公表番号】特表2017-537885(P2017-537885A)
(43)【公表日】2017年12月21日
(86)【国際出願番号】US2015053063
(87)【国際公開番号】WO2016064543
(87)【国際公開日】20160428
【審査請求日】2018年9月28日
(31)【優先権主張番号】62/067,027
(32)【優先日】2014年10月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514056229
【氏名又は名称】ヘンケル アイピー アンド ホールディング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】クレマシク、 フィリップ ティー.
(72)【発明者】
【氏名】バーケット、 デイヴィッド ピー.
【審査官】
神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−513341(JP,A)
【文献】
米国特許第04287330(US,A)
【文献】
米国特許第06835762(US,B1)
【文献】
特表2011−519944(JP,A)
【文献】
Database REGISTRY,2002年,RN 477889-12-6, Retrieved from STN international [online] ;retrieved on 22 May 2019
【文献】
Database REGISTRY,2011年,RN 1334595-78-6, Retrieved from STN international [online] ;retrieved on 22 May 2019
【文献】
Russian Journal of Organic Chemistry,2004年,Vol.40,pp.1140-1145
【文献】
Journal of Elastomers & Plastics,1979年,Vol.11,pp.307-316
【文献】
The Formosan Science,1991年,Vol.44,pp.33-50
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C09J
C08F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の化合物の嫌気性硬化性組成物における嫌気性硬化促進剤
としての使用。
【化1】
(式中
R
1は、HおよびC
1〜4アルキルから選択され、pは、1〜5の整数であり、Oは、1個以上のC
1〜4アルキル置換基を有するか、または有さない、シクロアルキル、シクロアルケニル、ビシクロアルキルまたはビシクロアルケニルを表す。)
【請求項2】
(a)(メタ)アクリレート成分、(b)嫌気性硬化誘発性組成物および(c)請求項1で定義された化合物を含む嫌気性硬化性組成物。
【請求項3】
前記化合物は、以下からなる群から選択されるメンバーである、請求項2に記載の組成物。
【化2】
【請求項4】
(メタ)アクリレート成分は、H2C=CGCO2R10
(式中、Gは、H、ハロゲンおよび1〜4個の炭素原子を有するアルキルからなる群から選択されるメンバーであり、R10は、1〜16個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルカリールおよびアリール基からなる群から選択されるメンバーであり、シラン、ケイ素、酸素、ハロゲン、カルボニル、ヒドロキシル、エステル、カルボン酸、尿素、ウレタン、カルバメート、アミン、アミド、硫黄、スルホネートおよびスルホンからなる群から選択されるメンバーで置換または遮断されているまたはされていない)によって表される、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
(メタ)アクリレート成分は、シリコーン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフラン(メタ)アクリレートおよびジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレンジグリコールジ(メタ)アクリレート、ジグリセロールテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチレンジ(メタ)アクリレート、エチレンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール−A−(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノール−A−(メタ)アクリレート、ビスフェノール−F−(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノール−F−(メタ)アクリレート、およびビスフェノール−A−ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノール−A−ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール−F−ジ(メタ)アクリレートおよびエトキシ化ビスフェノール−F−ジメタクリレートからなる群から選択されるメンバーである、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
共促進剤をさらに含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
請求項2に記載の組成物の反応生成物。
【請求項8】
嫌気性硬化性組成物から反応生成物を調製する方法であって、請求項2に記載の嫌気性硬化性組成物を所望の基材表面に塗布するステップと、組成物を硬化させるのに十分な時間、組成物を嫌気性環境に暴露することを含む方法。
【請求項9】
嫌気性硬化促進剤としての請求項1で定義された化合物とメタ)アクリレート成分と嫌気性硬化誘発性組成物を一緒に混合するステップを含む嫌気性硬化性組成物を調製する方法。
【請求項10】
嫌気性硬化誘発性組成物が、フリーラジカル開始剤とフリーラジカル共促進剤との組み合わせを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項11】
嫌気性硬化促進剤としての請求項1で定義された化合物の使用方法であって、(I)化合物を(メタ)アクリレート成分、嫌気性硬化誘発性組成物を含む嫌気性硬化性組成物と混合するか、または(II)基材表面に化合物を塗布してその上に嫌気性硬化性組成物を塗布することを含む方法。
【請求項12】
アクリル酸をさらに含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項13】
化合物が、以下からなる群から選択される
請求項1に記載の使用。
【化3】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
フェニルヒドラジン/無水物付加物およびこれらの付加物を使用する嫌気性硬化性組成物を提供する。この組成物は、接着剤およびシーラントとして特に有用である。
【背景技術】
【0002】
嫌気性接着剤組成物は、一般に周知である。例えば、「Handbook of Adhesive Technology」、29、467〜79頁、A.PizziおよびK.L.Mittal編、Marcel Dekker、Inc.、New York(1994年)のR.D.Rich、「Anaerobic Adhesives」、およびそれに引用されている参考文献を参照のこと。それらの使用は多岐にわたっており、新しい用途の開発が継続されている。
【0003】
従来の嫌気性接着剤は、通常、フリーラジカル重合可能なアクリレートエステルモノマーを、ペルオキシ開始剤および重合抑制成分と一緒に含む。かかる嫌気性接着剤組成物は、組成物が硬化する速度を増大する促進成分を含有することも多い。
【0004】
硬化を誘発し促進する、望ましい嫌気性硬化誘発性組成物は、サッカリン、N,N−ジエチル−p−トルイジン(「DE−p−T」)およびN,N−ジメチル−o−トルイジン(「DM−o−T」)などのトルイジン、アセチルフェニルヒドラジン(「APH」)ならびにマレイン酸を含むことができる。例えば、米国特許第3,218,305号(Krieble)、同第4,180,640号(Melody)、同第4,287,330号(Rich)および同第4,321,349号(Rich)を参照のこと。
【0005】
サッカリンおよびAPHは、技術の始まり以来、嫌気性接着剤硬化系の標準的な硬化促進剤成分として使用されている。現在、Henkel Corporationは、LOCTITEブランドの嫌気性接着剤の大部分に、サッカリンのみ、またはサッカリンとAPHの両方を使用している。
【0006】
嫌気性接着剤のための他の硬化剤の例には、チオカプロラクタム(例えば、米国特許第5,411,988号(Bockow)参照)およびチオ尿素[例えば、米国特許第3,970,505号(Hauser)(テトラメチルチオ尿素)、ドイツ特許第1 817 989号(アルキルチオ尿素およびN,N’−ジシクロヘキシルチオ尿素)および同第2 806 701号(エチレンチオ尿素)、ならびに特開平07−308,757(アシル、アルキル、アルキリデン、アルキレンおよびアルキルチオ尿素)参照]が含まれ、後者の幾つかは、約20年前まで商業上使用されていた。
【0007】
Henkel Corporationは、嫌気性接着剤組成物の硬化剤として有効な、新しい種類の材料であるトリチアジアザペンタレンを見いだした。驚くべきことに、従来の硬化剤(APHなど)の代替として、これらの材料を嫌気性接着剤に添加することによって、それから形成される反応生成物に少なくとも同程度の硬化速度および物理特性が付与される。米国特許第6,583,289号(McArdle)参照。
【0008】
米国特許第6,835,762号(Klemarczyk)は、(メタ)アクリレート成分と、アセチルフェニルヒドラジンおよびマレイン酸を実質的に含まない嫌気性硬化誘発性組成物と、同じ分子上に−C(=O)−NH−NH−結合および有機酸基を有する嫌気性硬化促進剤化合物(但し該嫌気性硬化促進剤化合物は、1−(2−カルボキシアクリロイル)−2−フェニルヒドラジンを含まない)をベースにした嫌気性硬化性組成物を提供している。該嫌気性硬化促進剤は、
【0009】
【化1】
(式中、R
1〜R
7は、それぞれ独立に、水素およびC
1〜4から選択され、Zは、炭素−炭素単結合または炭素−炭素二重結合であり、qは、0または1であり、pは、1〜5の間の整数である。)
によって包含され、その例は、3−カルボキシアクリロイルフェニルヒドラジン、メチル−3−カルボキシアクリロイルフェニルヒドラジン、3−カルボキシプロパノイルフェニルヒドラジンおよびメチレン−3−カルボキシプロパノイルフェニルヒドラジンである。
【0010】
米国特許第6,897,277号(Klemarczyk)は、(メタ)アクリレート成分と、サッカリンを実質的に含まない嫌気性硬化誘発性組成物と、以下の構造
【0011】
【化2】
(式中、Rは、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、カルボキシルおよびスルホネートから選択され、R
1は、水素、アルキル、アルケニル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニルおよびアルカリルから選択される)
の嫌気性硬化促進化合物(その例は、フェニルグリシンおよびN−メチルフェニルグリシンである)をベースにした嫌気性硬化性組成物を提供している。
【0012】
米国特許第6,958,368号(Messana)は、嫌気性硬化性組成物を提供している。この組成物は、(メタ)アクリレート成分と、サッカリンを実質的に含まない以下の構造の嫌気性硬化誘発性組成物をベースにしている。
【0013】
【化3】
(式中、Yは、C
1〜6アルキルもしくはアルコキシ、またはハロ基によって最大5つの位置において場合によって置換されている芳香環であり、Aは、C=O、S=OまたはO=S=Oであり、Xは、NH、OまたはSであり、Zは、C
1〜6アルキルもしくはアルコキシ、またはハロ基によって最大5つの位置において場合によって置換されている芳香環であり、あるいはYおよびZは、一緒になって同じ芳香環または芳香環系に結合することができ、但しXがNHである場合、o−安息香酸スルフィミドは該構造から除外される。)
上記の構造によって包含される嫌気性硬化促進化合物の例には、2−スルホ安息香酸環状無水物および3H−1,2−ベンゾジチオール−3−オン−1,1−ジオキシドが含まれる。
【0014】
株式会社スリーボンド、東京、日本は、これまで、テトラヒドロキノリン(THQ)と呼ばれる成分を嫌気性接着剤およびシーラント組成物の成分として記載してきた。さらに最近、Henkel Corporationは新しい硬化促進剤の有効性を実証した。第一のものは以下の構造に含まれる。
【0015】
【化4】
式中、
Xは、H、C
1〜20アルキル、C
2〜20アルケニル、またはC
7〜20アルカリールであり、後者の3つのいずれかは、1以上のヘテロ原子で遮断されていてもよいか、−OH、−NH
2または−SHから選択される1つ以上の基によって官能化されているか、またはXとYは一緒になって5〜7個の環原子を有する炭素環を形成してもよい。;Zは、O、SまたはNX’であり、ここでX’は、H、C
1〜20アルキル、C
2〜20アルケニルまたはC
7〜20アルカリールであり、後者の3つのうちのいずれかが1以上のヘテロ原子によって遮断されていてもよいか、−OH、−NH
2または−SHから選択される1つ以上の基によって官能化されてもよい。;Rは、任意であるが、存在する場合、芳香族環上に3回まで存在することができ、存在する場合、C
1〜20アルキル、C
2〜20アルケニル、またはC
7〜20アルカリールであり、後者の3つのいずれかは、1以上のヘテロ原子で遮断されていてもよいか、−OH、−NH
2または−SHから選択される1つ以上の基によって官能化されてもよい。;nは、0および1であり、zは1〜3であり、但し、XがHである場合、zは2ではなく、好ましくは1である。より具体的には、THQベースまたはインドリンベースの付加物が包含され得る。(米国特許第8,481,659号参照)。
【0016】
第二のものは以下の構造に含まれる。
【0017】
【化5】
式中、
Xは、C
1〜20アルキル、C
2〜20アルケニル、またはC
7〜20アルカリールであり、これらのいずれかは、1つ以上のヘテロ原子によって遮断されていてもよく、−OH、−NH
2または−SHから選択される少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの基によって官能化され、zは1〜3である。(米国特許第8,362,112号を参照。)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
これらの現状技術にもかかわらず、既存の製品とは区別され、かつ原料の不足または供給停止の事態においても供給の保証が得られる嫌気性硬化促進剤の代替技術を見出すことが今も求められている。さらに、従来の嫌気性硬化誘発性組成物に使用される原料の幾つかは、多かれ少なかれ、規制監視下に置かなければならないため、嫌気性硬化誘発性組成物の代替成分が望まれる。したがって、嫌気性硬化性組成物の硬化において硬化成分として機能する新しい材料を特定することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
その要望に対する解決策がここに提供される。フェニルヒドラジンと環式および二環式無水物の付加物である新規な化合物が提供される。これらの化合物は、嫌気性硬化性組成物のための硬化促進剤として有用である。硬化促進剤は、同じ分子に結合したカルボン酸官能基と共に、−C(=O)−NH−NH−結合を含む。例えば、本発明の硬化促進剤は、構造Iであってもよい。
【0020】
【化6】
式中、
R
1は、HまたはC
1〜4アルキルから選択され;pは、1〜5の整数であり;Oは、1個以上のC
1〜4アルキル置換基を有するか、または有さない、シクロアルキル、シクロアルケニル、ビシクロアルキルまたはビシクロアルケニルを表す。
【0021】
驚くべきことに、従来の嫌気性硬化促進剤(APHまたは上記のトルイジンなど)の量の一部または全部の代わりにこれらの材料を嫌気性硬化性組成物に添加すると、そこから形成される反応生成物に少なくとも同程度の硬化速度および物理的特性を提供する。いくつかの場合において、改善された初期硬化速度は、特に硬化の初期段階(例えば、15分後に測定されるような)中に示される。
【0022】
本発明はまた、そのような硬化促進剤を用いて調製された嫌気性硬化性組成物、本発明の嫌気性硬化促進剤の調製および使用する方法および本発明の嫌気性硬化性組成物の反応生成物を提供する。
【0023】
上記のように、構造Iによって包含される特定の化合物が提供され、
【0024】
【化7】
が含まれる。
【0025】
THPHは、テトラヒドロフタル酸フェニルヒドラジンを表す。HHPHは、ヘキサヒドロフタル酸フェニルヒドラジンを表す。MHPHは、メチルヘキサヒドロフタル酸フェニルヒドラジンを表す。
【0026】
本発明は、「詳細な説明」の読取り、およびその後に続く例示的な実施例によってより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、硬化促進剤としてAPH/MA、SPH、THPHまたはHHPHの1つを用いたPEGMAに基づく嫌気性硬化性組成物(配合物1)について、15分、1時間および24時間の硬化後の鋼製ナット/ボルトアセンブリの破断強度(breakaway strength)を示す棒グラフを示す。
【
図2】
図2は、硬化促進剤としてAPH/MA、SPH、THPHまたはHHPHの1つを有するPEGMAに基づく嫌気性硬化性組成物(配合物1)について、15分、1時間および24時間の硬化後の鋼製ナット/ボルトアセンブリのプリベール強度を示す棒グラフを示す。
【
図3】
図3は、硬化促進剤としてAPH/MA、SPH、THPHまたはHHPHの1つを有するPEGMAに基づく嫌気性硬化性組成物(配合物1)について、15分、1時間および24時間の硬化後のステンレス鋼製ナット/ボルトアセンブリの破断強度を示す棒グラフを示す。
【
図4】
図4は、硬化促進剤としてAPH/MA、SPH、THPHまたはHHPHの1つを有するPEGMAに基づく嫌気性硬化性組成物(配合物1)について、15分、1時間および24時間の硬化後のステンレス鋼製ナット/ボルトアセンブリのプリベール強度を示す棒グラフを示す。
【
図5】
図5は、硬化促進剤としてAPH/MA、SPH、THPHまたはHHPHを有するPEGMAに基づく嫌気性硬化性組成物(配合物1)について、15分、1時間および24時間硬化後の鋼製ピン/カラーアセンブリの引張強度を示す棒グラフを示す。
【
図6】
図6は、硬化促進剤としてAPH/MA、SPH、THPHまたはHHPHの1つを有するPEGMAおよびアクリル酸に基づく嫌気性硬化性組成物(配合物2)について、5分、1時間および24時間の硬化後の鋼製ナット/ボルトアセンブリの破断強度を示す棒グラフを示す。
【
図7】
図7は、硬化促進剤としてAPH/MA、SPH、THPHまたはHHPHの1つを有するPEGMAおよびアクリル酸に基づく嫌気性硬化性組成物(配合物2)について、15分、1時間および24時間の硬化後の鋼製ナット/ボルトアセンブリのプリベール強度を示す棒グラフを示す。
【
図8】
図8は、硬化促進剤としてAPH/MA、SPH、THPHまたはHHPHの1つを有するPEGMAおよびアクリル酸に基づく嫌気性硬化性組成物(配合物2)について、5分、1時間および24時間の硬化後のステンレス鋼製ナット/ボルトアセンブリの破断強度を示す棒グラフを示す。
【
図9】
図9は、硬化促進剤としてAPH/MA、SPH、THPHまたはHHPHの1つを有するPEGMAおよびアクリル酸に基づく嫌気性硬化性組成物(配合物2)について、15分、1時間および24時間の硬化後のステンレス鋼製ナット/ボルトアセンブリのプリベール強度を示す棒グラフを示す。
【
図10】
図10は、硬化促進剤としてAPH/MA、SPH、THPHまたはHHPHの1つを有するPEGMAおよびアクリル酸に基づく嫌気性硬化性組成物(配合物2)について、15分、1時間および24時間の硬化後の鋼製ピン/カラーアセンブリの引張強度を示す棒グラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<詳細な説明>
本発明は、同じ分子上に結合−C(=O)−NH−NH−およびカルボン酸官能基を有する嫌気性硬化促進剤を提供する。このような硬化促進剤化合物を従来の硬化促進剤のいくらかまたはすべての代替として嫌気性硬化性組成物へ添加することによって、驚くべきことに形成された反応生成物へ、少なくとも同程度の硬化速度および物理的特性を提供する。
【0029】
本発明の嫌気性硬化促進剤は、以下の構造Iを参照して表すことができる。
【0030】
【化8】
式中
R
1は、HまたはC
1〜4アルキルから選択され;pは、1〜5の整数であり;Oは、1個以上のC
1〜4アルキル置換基を有するか、または有さない、シクロアルキル、シクロアルケニル、ビシクロアルキルまたはビシクロアルケニルを表す。
【0031】
構造Iのこのような促進剤の特別の例には、
【0033】
NPHは、ナジックフェニルヒドラジンを表し、NMPHは、ナジックメチルフェニルヒドラジンを表す。THPH、HHPHおよびMHPHは上記に示される。
【0034】
本発明の嫌気性硬化促進剤は、一般に、以下のそれぞれの構造のフェニルヒドラジンおよび酸無水物から調製することができる。
【0035】
【化10】
式中、R
1は、HまたはC
1〜4アルキルから選択される。;pは、1〜5の整数であり; Oは、1個以上のC
1〜4アルキル置換基を有するか、または有さない、シクロアルキル、シクロアルケニル、ビシクロアルキルまたはビシクロアルケニルを表す。合成のより詳細な説明は、以下の実施例に記載される。具体的な無水物には以下が含まれる。
【0037】
これらの無水物は、テトラヒドロフタル酸無水物(「THPA」)、ヘキサヒドロフタル酸無水物(「HHPA」)、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物(「MHHPA」)、無水ナジック酸(「NA」)および無水ナジック酸メチル(「NMA」)が含まれる。
【0038】
本発明の(メタ)アクリレート成分としての使用に適した(メタ)アクリレートモノマーは、H
2C=CGCO
2R
10(式中、Gは、水素、ハロゲンまたは1〜約4個の炭素原子を有するアルキル基であってもよく、R
10は、1〜約16個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルカリール、アラルキルまたはアリール基から選択されてもよく、これらの基は任意に、シラン、ケイ素、酸素、ハロゲン、カルボニル、ヒドロキシル、エステル、カルボン酸、尿素、ウレタン、カーボネート、アミン、アミド、硫黄、スルホン酸塩、スルホンなどで場合によっては、置換または遮断されてもよい。)によって表されるなどの多種多様な材料から選択されてもよい。
【0039】
本明細書での使用に適する追加の(メタ)アクリレートモノマーには、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフラン(メタ)アクリレートおよびジ(メタ)アクリレートなどの二官能性または三官能性(メタ)アクリレートなどの多官能性(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレンジグリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(ペンタメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、テトラエチレンジグリコールジ(メタ)アクリレート、ジグリセロールテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチレンジ(メタ)アクリレート、エチレンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートおよびエトキシル化ビスフェノール−A(メタ)アクリレートなどのビスフェノール−A−モノおよびジ(メタ)アクリレート、およびエトキシル化ビスフェノール−A(メタ)アクリレートなどのビスフェノール−F−モノおよびジ(メタ)アクリレートが含まれる。
【0040】
本明細書で使用することができるさらに他の(メタ)アクリレートモノマーには、その開示が参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第5,605,999号(Chu)によって教示され、特許請求されているようなシリコーン(メタ)アクリレート部分が含まれる。
【0041】
他の好適なモノマーには、以下の式で表されるポリ(メタ)アクリレートエステルが含まれる。
【0042】
【化12】
式中、
R
4は、水素、ハロゲンまたは1〜約4個の炭素原子を有するアルキルから選択される基であり;qは、少なくとも1、好ましくは、1〜約4に等しい整数であり;Xは、少なくとも2個の炭素原子を含み、総結合容量がq+1である有機基である。X中の炭素原子の数の上限に関し、本質的にいかなる値でも機能できるモノマーが存在する。しかし、実際、一般的な上限値は、約50個の炭素原子、望ましくは30個、最も望ましくは約20個である。
【0043】
例えば、Xは、以下の式の有機基であってもよい。
【0044】
【化13】
式中、
Y
1およびY
2の各々は、少なくとも2個の炭素原子、望ましくは2個〜約10個の炭素原子を含む有機基(例えば、炭化水素基)であり、Zは、有機基、好ましくは少なくとも1個の炭素原子、好ましくは2〜約10個の炭素原子を含む炭化水素基である。
【0045】
有用なモノマーの他の種類は、フランス特許第1,581,361号に開示されているような、ジ−またはトリ−アルキロールアミン(例えば、エタノールアミンまたはプロパノールアミン)と(メタ)アクリル酸との反応生成物である。(メタ)アクリレート官能基を有するオリゴマーもまた用いてもよい。有用な(メタ)アクリレート官能化オリゴマーの例には、以下の一般式を有するものが含まれる。
【0046】
【化14】
式中、R
5は、水素、1〜約4個の炭素原子を有する低級アルキル、1〜約4個の炭素原子を有するヒドロキシアルキル、または
【0047】
【化15】
であり、
R
4は、水素、ハロゲン、または1〜約4個の炭素原子を有する低級アルキルから選択される基であり;R
6は、水素、ヒドロキシルまたは
【0048】
【化16】
であり、
mは、少なくとも1に等しい整数、例えば1〜約15またはそれ以上、望ましくは、1〜約8であり;nは、少なくとも1に等しい整数、例えば1〜約40以上、望ましくは、約2〜約10であり;pは、0または1である。
【0049】
上記一般式に対応する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーの典型例は、ジ−、トリ−およびテトラエチレングリコールジメタクリレート;ジ(ペンタメチレングリコール)ジメタクリレート;テトラエチレングリコールジアクリレート;テトラエチレングリコールジ(クロロアクリレート);ジグリセロールジアクリレート;ジグリセロールテトラメタクリレート;ブチレングリコールジメタクリレート;ネオペンチルグリコールジアクリレート;およびトリメチロールプロパントリアクリレート等が挙げられる。
【0050】
別の有用な種類の材料は、(メタ)アクリレート官能化、ヒドロキシルまたはアミノ含有材料およびポリイソシアネートを適切な割合で含む反応生成物であり、イソシアネート基の全てをウレタン基またはウレイド基にそれぞれ変換する。このように形成された(メタ)アクリレートウレタンまたは尿素エステルは、その非アクリレート部分にヒドロキシまたはアミノ官能基を含むことができる。使用に適する(メタ)アクリレートエステルは、以下の式を有する。
【0051】
【化17】
式中、
Xは、−O−および
【0052】
【化18】
から選択され、
R
9は、水素または1〜7個の炭素原子を有する低級アルキルから選択され;R
7は、水素、ハロゲン(例えば塩素)またはアルキル(例えばメチルおよびエチル基)から選択され、R
8は、1〜8個の炭素原子を有する低級アルキレン、フェニレンおよびナフチレンから選択される二価の有機基である。
【0053】
これらの基は、ポリイソシアネートとの適切な反応の際に、以下の一般式のモノマーを生成する。
【0054】
【化19】
式中、nは、2〜約6の整数であり;Bは、置換および非置換の両方のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、アルカリール、アルカリールおよび複素環式基、およびそれらの組み合わせから選択される多価有機基であり;R
7、R
8およびXは上記の意味を有する。
【0055】
Bの特性に依存して、尿素またはウレタン結合を有するこれらの(メタ)アクリレートエステルは、それらをオリゴマークラス(約1,000〜約5,000など)またはポリマークラス(例えば、約5,000以上)である分子量を有してもよい。
【0056】
勿論、これらの(メタ)アクリレートの組み合わせを用いてもよい。
【0057】
(メタ)アクリレート成分は、組成物の総重量に基づいて約10〜約90重量%、例えば約60〜約90重量%を占めるべきである。
【0058】
近年、配合物またはその反応生成物の物理的性質を変更するために、従来の嫌気性接着剤に追加の成分が含まれてきた。
【0059】
例えば、マレイミド成分、耐熱性付与共反応物、高温条件下で反応する希釈剤成分、モノまたはポリヒドロキシアルカン、ポリマー可塑剤およびキレート化剤(その開示は参照により本明細書に明示的に組み込まれる、国際特許出願PCT/US98/13704を参照)を配合物の物理的特性および/または硬化プロファイルおよび/または硬化接着剤の強度または耐熱性を改変するために含むことができる。いくつかの実施形態では、アクリル酸を使用することもできる。
【0060】
使用される場合、マレイミド、共反応物、反応性希釈剤、可塑剤、モノまたはポリヒドロキシアルカンおよび/またはアクリル酸は、組成物の全重量に対して約1重量%〜約30重量%の範囲内の量で存在し得る。
【0061】
本発明の組成物はまた、フリーラジカル開始剤、フリーラジカル共促進剤、およびフリーラジカル発生の阻害剤などの他の従来の成分、ならびに金属触媒を含むことができる。
【0062】
フリーラジカル重合の多くの周知の開始剤は、典型的には、限定されないが、クメンヒドロペルオキシド(「CHP」)、パラメタンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド(「TBH」)およびt−ブチルペルベンゾエートなどのヒドロペルオキシドが挙げられる。その他のペルオキシドとしては、ベンゾイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジアセチルペルオキシド、ブチル4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)吉草酸、p−クロロベンゾイルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、t−ブチルペルベンゾエート、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシヘクス−3−イン、4−メチル−2,2−ジ−t−ブチルペルオキシペンタン及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0063】
このようなペルオキシド化合物は、典型的には、組成物の総重量に基づいて約0.1〜約10重量%の範囲で本発明で使用され、約1〜約5重量%が望ましい。
【0064】
上述したように、従来のフリーラジカル重合促進剤をこれまでの使用量よりも少ない量で本発明の嫌気性硬化促進剤と併用することもできる。そのような促進剤は、典型的には、ヒドラジン変種(例えば、APH)であり、米国特許第4、287,350号(Rich)および第4,321,349号(Rich)に記載される。MAは、通常、APH含有嫌気性硬化系に添加される。本発明の1つの利点は、本発明の嫌気性硬化促進剤が嫌気性接着剤組成物を調製する際にそのような酸の使用を不要にすることである。
【0065】
安息香酸スルフィミド(サッカリンとしても知られている)のような芳香族スルフィミドを含む、フリーラジカル重合の共促進剤を使用することもできる。(‘305および‘349特許を参照。)
【0066】
安定剤および阻害剤(例えば、ヒドロキノンを含むフェノールおよびキノンを含むケトン)もまた使用して、早期のペルオキシドの分解および本発明の組成物の重合を制御および防止することもでき、ならびにキレート剤(エチレンジアミン四酢酸(「EDTA」)の四ナトリウム塩など)を用いて、そこからの微量の金属汚染物質を捕捉することができる。使用される場合、キレート剤は、組成物の総重量に基づいて、組成物中に通常約0.001重量%〜約0.1重量%の量で存在し得る。
【0067】
本発明の嫌気性硬化促進剤は、組成物の総重量に基づいて約0.1〜約5重量%、例えば約1〜約2重量%の量で使用することができる。従来の促進剤(このような従来の促進剤よりも低いレベルであるが)と組み合わせて使用する場合は、本発明の促進剤は、組成物の総重量に対して0.01〜5重量%、例えば0.02〜2重量%の量で使用すべきである。
【0068】
金属触媒溶液またはそのプレミックスは、約0.03〜約0.1重量%の量で使用される。
【0069】
増粘剤、非反応性可塑剤、充填剤、強化剤(エラストマーおよびゴムなど)などの他の添加剤および他の周知の添加剤は、当業者が望ましいと思われる場合に、組み込むことができる。
【0070】
本発明はまた、本発明の嫌気性接着剤組成物の調製および使用する方法、ならびに組成物の反応生成物を提供する。
【0071】
本発明の組成物は、当業者に周知の従来の方法を用いて調製することができる。例えば、本発明の組成物の成分は、成分が組成物中で発揮するはずの役割および機能と一致する任意の好都合な順序で一緒に混合することができる。公知の装置を用いた従来の混合技術を用いることができる。
【0072】
本発明の組成物を様々な基材に塗布して、本明細書に記載の所望の利益および利点を付与することができる。例えば、適切な基材は、鋼、真鍮、銅、アルミニウム、亜鉛、および他の金属および合金、セラミックおよび熱硬化性樹脂から構成されてもよい。本発明の組成物は、鋼、真鍮、銅および亜鉛に対して特に良好な結合強度を示す。嫌気性硬化性組成物に適したプライマーを、選択した基材の表面に塗布して、硬化速度を高めることができる。あるいは、本発明の嫌気性硬化促進剤をプライマーとして基材の表面に塗布することができる。例えば、米国特許第5,811,473号(Ramos)参照。
【0073】
さらに、本発明は、(メタ)アクリレート成分と、アセチルフェニルヒドラジンを実質的に含有せず、任意に実質的にマレイン酸を含まない嫌気性硬化誘導性組成物と、同じ分子上に結合−C(=O)−NH−NH−およびカルボン酸官能基を有する嫌気性硬化促進剤化合物を一緒に混合する工程を含む、嫌気性硬化性組成物の調製方法を提供する。
【0074】
本発明はまた、本発明の嫌気性硬化性組成物から反応生成物を調製する方法を提供し、その工程は、組成物を所望の基材表面に塗布し、組成物を硬化させるのに十分な時間、嫌気性環境に組成物を暴露することを含む。
【0075】
本発明はまた、嫌気性硬化性組成物のための硬化促進剤として、同じ分子上に結合−C(=O)−NH−NH−およびカルボン酸官能基を有する化合物を使用する方法を提供する。
【0076】
また、本発明は、(I)嫌気性硬化促進剤化合物を嫌気性硬化性組成物に混合する工程、または(II)基材の表面に嫌気性硬化促進剤化合物を塗布し、その上に嫌気性硬化性組成物を塗布することを含む嫌気性硬化促進剤化合物を用いる方法を提供する。当然のことながら、本発明はまた、一体にされる基材間に、本発明の組成物によって形成される結合を与える。
【0077】
構造Iに含まれるいくらかの化合物を提供する。
【0079】
本発明の上記の説明から、広範な実用的可能性が与えられることが明らかである。以下の実施例は単に例示目的であり、本明細書の教示を制限するように決して解釈されるべきではない。
【実施例】
【0080】
嫌気性硬化性組成物、特に接着剤中のAPHの代替物として、特定の環式および二環式無水物/フェニルヒドラジン化合物を評価するための研究を行った。
【0081】
フェニルヒドラジン、テトラヒドロフタル酸無水物THPA、HHPA、MHHPA、NAおよびNMA、PEGMA、MA、アクリル酸(「AA」)、サッカリンおよびAPHは、Aldrich Chemical Companyから購入した。
【0082】
4つの環式および2環式の無水物/フェニルヒドラジン化合物を調製し、評価して、その含有が嫌気性接着剤における別の硬化成分の使用を不要にするかどうかを決定した。
【0083】
本発明の嫌気性硬化促進剤は、以下に記載の合成スキームに従って調製した。
【0084】
【化21】
式中、R
1は、水素またはC
1〜4アルキルから選択され;pは、1〜5の整数であり;Oは、1個以上のC
1〜4アルキル置換基を有するまたは有さないシクロアルキル、シクロアルケニル、ビシクロアルキルまたはビシクロアルケニルを表す。
【0085】
プロトン及び炭素核磁気共鳴(「
1H及び
13C NMR」)分析は、Varian 300Hz Gemini分光光度計を用いて行った。赤外線(「IR」)スペクトル分析は、ATI Mattson GenesisシリーズFTIRを使用して、純粋なサンプルで実施した。融点は、TA Instrument 2920示差走査熱量計で得られた。
【0086】
A.環式および二環式無水物/フェニルヒドラジン化合物の合成のための一般的手順
<HHPH>
【0087】
コンデンサー、熱電対、機械的撹拌機、滴下漏斗および窒素注入口を備えた1000mLの4つ口丸底フラスコに、攪拌しながらHHPA(77.8g、0.505mol)およびCH
3CN(500mL)を添加した。溶液を加熱還流した。フェニルヒドラジン(54.0g、0.50mol)を約15〜20分かけて滴下し、反応物を還流下で30分間撹拌した。生成物は、周囲温度まで冷却すると溶液から沈殿した。粗収率=107.0g(81%);融点=152℃。生成物をCH
3CNから再結晶した。結晶化収量=77.1g(59%):
1H NMR(d
6−DMSO)δδ12.0(s,1,OH),9.5(s,1,NH),7.6(s,1,NH),7.1(t,2,Ar−H),6.7(m,3,Ar−H),2.8(m,1,CO−CH),2.6(m,1,CO−CH),1.1−2.1(m,8,CH
2);
13CNMR(d
6−DMSO)175,173,148,128,118,112,42,28,25,24,22;IR(純粋)2928,1698,1665,1602,1495,1265,1239,750,690cm
−1。
【0088】
<THPH>
上記と同じ手順をTHPA(76.8g、0.505mol)に使用した。粗収率= 85.8(66%)。融点=149℃。生成物をCH
3CNからから再結晶した。結晶化収量=53.9g(41%):
1H NMR(d
6−DMSO)δδ12.1(br s,1,OH),9.5(s,1,NH),7.7(s,1,NH),7.1(m,2,Ar−H),6.7(m,3,Ar−H),5.6(m,2,HC=CH),2.9(m,2,CO−CH),2.1−2.6(m,4,=C−CH
2−);
13C NMR(d
6−DMSO)175,173,150,128,126,125,118,38,27,26,22;IR (純粋)3276,1704,1633,1601,1494,1258,1211,921,749,690cm
−1。
【0089】
B.環状および二環式無水物/フェニルヒドラジン化合物を有する接着剤配合物
THPHおよびHHPHは、APH/マレイン酸およびコハク酸フェニルヒドラジン(「SPH」)をコントロールとして用いて、脱脂された軟鋼製ナットおよびボルト、ステンレス鋼製ナットおよびボルト、および軟鋼製ピンおよびカラー上の2つのモデル嫌気性接着剤組成物中の嫌気性接着硬化剤として評価した。
【0090】
接着強度評価のために使用されたモデル配合物を、表Aに要約する。配合物は、列挙した量の記載された成分から、ガラスバイアル中の機械的撹拌機と混合することによって調製した。各試料は、安定剤としてキレート剤およびナフタキノンを含む。
【0091】
【表1】
【0092】
C.物理的性質
これらの新しい硬化システムを、従来の硬化成分、APH/MAおよびサッカリンを含有する対照配合物と、ナット/ボルトおよびピン/カラー試験片について82℃の加速安定性および15分/1時間/24時間の接着試験を比較した。
【0093】
<保存安定性>
配合物の82℃の安定性は、接着剤配合物が82℃で3.5時間以上液体である続ける場合に、配合物が許容可能な保存安定性を有すると判断される評価に従って決定された。以下の表Bから分かるように、各配合物は24時間以上液体のままであった。
【0094】
【表2】
【0095】
従って、配合物は、許容可能な保存安定性を示した。
【0096】
<15分、1時間、24時間破断およびプリベール強度および引張強度>
破断/プリベール接着試験のために、試験片を、組み立て後、周囲温度で15分、1時間および24時間硬化させ、以下のように試験した。
【0097】
鋼とステンレス鋼の10個のナットとボルトの試験片(デプライミングされている)を、各配合物のトルク試験と同じ方法で組み立てた。周囲温度で1時間後、試験片の半分について、周囲温度で24時間後、残りの試験片について破断およびプリベールトルク強度を記録した。トルク強度は、較正自動トルクアナライザで測定した。
【0098】
配合物1中のフェニルヒドラジン硬化剤の接着強度データを以下の表1〜4に示し、
図1〜4にグラフで示す。
【0099】
【表3】
【0100】
【表4】
【0101】
【表5】
【0102】
【表6】
【0103】
これらの配合物の各々は、鋼製ピンおよびカラー(脱脂されている)の15個の複製に塗布され、周囲温度、室温(25℃)および45〜50%の相対湿度で、それぞれ15分間、1時間および24時間保持した。表5および
図5は、データを記録し、棒グラフ形式でデータを示す。
【0104】
【表7】
【0105】
表1〜2および
図1〜2に関し、SPHを促進剤として含有する対照組成物と比較して、本発明の組成物では、室温で1時間、鋼上で硬化させた後の強度発現の適度な改善が認められる。表4および
図4に関し、対照組成物と比較して、室温で1時間および24時間で、ステンレス鋼上で硬化させた後に、本発明の組成物についてより有意な改善が見られる。
【0106】
配合物2中のフェニルヒドラジン系硬化剤の接着強度データを以下の表6〜10に示し、
図6〜10にグラフで示す。
【0107】
【表8】
【0108】
【表9】
【0109】
【表10】
【0110】
【表11】
【0111】
これらの配合物の各々は、鋼製ピンおよびカラー(脱脂されている)の15個の複製に塗布され、周囲温度、室温(25℃)および45〜50%の相対湿度で、それぞれ15分間、1時間および24時間保持した。表10および
図10は、データを記録し、棒グラフ形式でデータを示す。
【0112】
【表12】
【0113】
表6および
図6に関し、SPH含有対照組成物と比較して、HHPH含有組成物では、室温で15分後または1時間後に適度に、24時間後では、大きく、鋼製ナットおよびボルト上で硬化させたときの強度発現の改善が認められる。
表7および
図7は、SPH含有組成物と比較して、本発明の組成物は、室温で鋼製ナットおよびボルト上で15分硬化させたときの強度発現の改善を示す。表9および
図9は、SPH含有組成物と比較して、本発明の組成物は、鋼製のナットおよびボルト上で室温で1時間硬化したときの強度発現の改善を示す。
【0114】
表10および
図10は、HHPH含有組成物と比較して、本発明の組成物は、鋼製ピンおよびカラー上で室温で15分硬化させたときの強度発現の改善を示す。