(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6629372
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】放射線検査装置及び手荷物検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/04 20180101AFI20200106BHJP
G21K 5/00 20060101ALI20200106BHJP
G21K 5/10 20060101ALI20200106BHJP
G21K 1/02 20060101ALI20200106BHJP
G21F 1/08 20060101ALI20200106BHJP
G21F 1/12 20060101ALI20200106BHJP
G21F 3/00 20060101ALI20200106BHJP
【FI】
G01N23/04
G21K5/00 S
G21K5/10 C
G21K1/02 R
G21F1/08
G21F1/12
G21F3/00 G
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-47458(P2018-47458)
(22)【出願日】2018年3月15日
(65)【公開番号】特開2019-158695(P2019-158695A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2019年2月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 充広
(74)【代理人】
【識別番号】100181146
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 啓
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 和朗
(72)【発明者】
【氏名】高橋 真起
【審査官】
佐藤 仁美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−210501(JP,A)
【文献】
国際公開第2017/057735(WO,A1)
【文献】
特表2014−517319(JP,A)
【文献】
国際公開第2017/110508(WO,A1)
【文献】
特開2008−275451(JP,A)
【文献】
特開2003−083913(JP,A)
【文献】
特開2002−328101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00−23/2276
G01T 1/00−1/16,1/167−7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を被検査物に照射する放射線源と、
前記放射線源からの放射線を受ける放射線センサ部と、
前記放射線源と前記放射線センサ部とを収納して放射線を遮蔽する遮蔽ボックスと、
前記放射線センサ部の収納容器に形成された開口の外側の部分に支持されて放射線が直接入射する照射領域外に延在し、前記放射線センサ部で散乱された放射線を遮蔽する放射線遮蔽部と
を備える放射線検査装置。
【請求項2】
前記放射線センサ部の検出面は、所定方向に直線状に延び、
前記放射線遮蔽部は、前記放射線センサ部の前記検出面の長手方向に沿って対向する状態で延びる、請求項1に記載の放射線検査装置。
【請求項3】
前記放射線源と前記放射線センサ部とは、前記遮蔽ボックス内で鉛直方向に関して異なる高さ位置に配置され、
前記放射線源と前記放射線センサ部との間を通って前記所定方向と交差する方向に延びるとともに前記遮蔽ボックスの入口と出口との間に亘って延在する搬送部をさらに備える、請求項2に記載の放射線検査装置。
【請求項4】
前記放射線遮蔽部は、前記放射線センサ部の前記検出面の長手方向に延びる一対の辺の外側に設けた基部から鉛直下方に所定幅で突起するとともに当該検出面の長手方向に平行に延びる短冊状の一対の平板状部材である、請求項3に記載の放射線検査装置。
【請求項5】
前記一対の平板状部材の前記所定幅は、前記放射線センサ部で散乱された放射線が前記遮蔽ボックスの前記入口と前記出口とに直接入射することを阻止するように設定される、請求項4に記載の放射線検査装置。
【請求項6】
前記放射線センサの下面、前記遮蔽ボックスの天面、前記遮蔽ボックスの壁面、及び前記搬送部の内部のいずれか1つ以上を含む複数箇所に放射線遮蔽部を配置する、請求項3〜5のいずれか一項に記載の放射線検査装置。
【請求項7】
前記遮蔽ボックスの入口側及び出口側に設けられる遮蔽カーテンをさらに備える、請求項3〜6のいずれか一項に記載の放射線検査装置。
【請求項8】
前記放射線源が照射する放射線はX線であり、前記放射線遮蔽部は、鉛で形成されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の放射線検査装置。
【請求項9】
前記遮蔽ボックス内において、前記遮蔽ボックスの入口と出口との間に亘って延在する搬送部と前記放射線センサ部との間に、搬送経路が設けられている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の放射線検査装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の放射線検査装置を備え、被検査物としての手荷物を検査する手荷物検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線その他の放射線を使用して物体の内部について検査を行う放射線検査装置及び手荷物検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
手荷物検査装置は、金属製の鞄であっても開封せずに内部の画像が得られることから、X線検査装置を用いて手荷物にX線を照射するものが一般的である。特に空港のように多数の手荷物を短時間で検査する必要がある場所では、検査部入口としてインターロック式のドアではなく放射線が透過し難い材質のカーテンを設置し、検査部を完全に密閉しない方式をとる場合が多い。これは食品検査用のX線装置についても同様である。この場合、法令規定の漏えい量は下回っているものの、ドア方式に比べて検査部入口からのX線漏えいが多くなるという問題がある。
【0003】
鋼管の損傷を検出するX線透視検査法に用いられる装置において、鋼管に近接して平行に延びるX線透過板上にシート状のX線透過度計を挟んで一対の平行に延びるX線散乱防止用マスク本体を取り付け、スリット状のマスクとして機能させるものがある(特許文献1)。
【0004】
放射線検査装置として、非検査物を搬入及び搬出する開口を有する検査室と、検査室に放射線を照射する放射線照射装置とを備え、放射線入射部の近傍に一対の平行に延びるL字型部材を配置して、放射線入射部から検査室に入射する放射線が散乱して開口の方向に流れることを防止するものがある(特許文献2)。
【0005】
放射線イメージング装置として、X線を発生する管体に対して被検体を挟んで反対側であって被検体とフィルム状の感光部との間に散乱防止グリッドを配置したものがある(特許文献3)。散乱防止グリッドは、被検体側からの散乱放射線を除去するためのものであり、複数の傾斜角が異なるX線吸収要素を備えている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1及び2の装置では、X線で被検体を照射する際の散乱成分を除去し、上記特許文献3の装置では、X線が感光部に入射する散乱成分を除去するものであり、放射線センサ部でのX線の散乱については十分に考慮されていない。放射線センサ部でのX線の散乱は、一般に微量であると考えられるが、微量であってもかかる散乱に起因するX線の漏えい量を低減することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平5−81798号公報
【特許文献2】特開2005−172486号公報
【特許文献3】特開2012−5839号公報
【発明の概要】
【0008】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、放射線センサ部での放射線の散乱に起因する放射線の漏洩を低減できる放射線検査装置及び手荷物検査装置を提供することを目的とする。
【0009】
上記目的を達成するため
の放射線検査装置は、放射線を被検査物に照射する放射線源と、放射線源からの放射線を受ける放射線センサ部と、放射線センサ部側において放射線が直接入射する照射領域外に延在し、放射線センサ部で散乱された放射線を遮蔽する放射線遮蔽部とを備える。
【0010】
上記放射線検査装置では、放射線遮蔽部が放射線センサ部で散乱された放射線を遮蔽するので、放射線センサ部に起因する放射線センサ部の周辺への放射線の漏洩を低減することができ、放射線検査装置に対する安心感を高めることができる。
【0011】
本発明の具体的な側面では、放射線センサ部の検出面は、所定方向に直線状に延び、放射線遮蔽部は、放射線センサ部の検出面の外側において当該検出面の長手方向に沿って対向する状態で延びる。この場合、ラインセンサ状の検出面の長手方向に直交する方向に射出される散乱放射線の広がりを制限することができる。
【0012】
本発明の別の側面では、放射線源と放射線センサ部とは、鉛直方向に関して異なる高さ位置に配置され、放射線源と放射線センサ部とを収納して放射線を遮蔽する遮蔽ボックスと、放射線源と放射線センサ部との間を通って所定方向と交差する方向に延びるとともに遮蔽ボックスの入口と出口との間に亘って延在する搬送部とをさらに備える。この場合、搬送部によって遮蔽ボックス内で放射線源と放射線センサ部との間に被検査物を通過させつつ検査を行うことができる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、放射線遮蔽部は、放射線センサ部の検出面の長手方向に延びる一対の辺の外側に設けた基部から鉛直下方に所定幅で突起するとともに当該検出面の長手方向に平行に延びる短冊状の一対の平板状部材である。この場合、平板状部材の形状や配置を適宜調整することで、1次散乱放射線の最大傾斜角を所望の値にすることができ、1次散乱X線の到達領域を制限することができる。
【0014】
本発明のさらに別の側面では、一対の平板状部材の所定幅は、放射線センサ部で散乱された放射線が遮蔽ボックスの入口と出口とに直接入射することを阻止するように設定される。この場合、遮蔽ボックス外への放射線の漏洩を確実に低減することができる。
【0015】
本発明のさらに別の側面では、放射線センサの下面、遮蔽ボックスの天面、遮蔽ボックスの壁面、及び搬送部の内部のいずれか1つ以上を含む複数箇所に放射線遮蔽部を配置する。この場合、1次の散乱に限らず2次以上の高次の散乱X線を包括的に抑える効果が高まる。
【0016】
本発明のさらに別の側面では、遮蔽ボックスの入口側及び出口側に設けられる遮蔽カーテンをさらに備える。この場合、遮蔽ボックス外への放射線の漏洩をさらに確実に低減することができる。
【0017】
本発明のさらに別の側面では、放射線源が照射する放射線はX線であり、放射線遮蔽部は、鉛で形成されている。
【0018】
上記目的を達成するため、本発明に係る手荷物検査装置は、上述した放射線検査装置を備え、被検査物としての手荷物を検査する。
【0019】
上記手荷物検査装置では、放射線遮蔽部によって周辺への放射線の漏洩を低減することができ、手荷物検査装置に対する安心感を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態に係るX線検査装置又は荷物検査装置を概念的に示す側面図である。
【
図2】(A)は、
図1のAA矢視断面図であり、(B)は、(A)のBB矢視断面図であり、(C)は、
図1のCC矢視断面図である。
【
図3】(A)は、放射線センサ部を長手方向に沿って見た拡大断面図であり、(B)は、センサ部を短手方向に沿って見た拡大側面図である。
【
図4】(A)は、X線の後方散乱を説明する概念図であり、(B)は、X線の後方散乱強度を説明する概念図である。
【
図5】(A)は、第2実施形態に係るX線検査装置又は荷物検査装置の要部を説明する拡大断面図であり、(B)は、X線検査装置の要部の変形例を説明する拡大断面図であり、(C)は、X線検査装置の要部の別の変形例を説明する拡大断面図である。
【
図6】第3実施形態に係るX線検査装置等を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔第1実施形態〕
以下、図面を参照して、本発明に係る第1実施形態の放射線検査装置及び手荷物検査装置について説明する。
【0022】
図1に示すX線検査装置50は、搬送部としてのベルトコンベア51と、ベルトコンベア51により搬送された被検査物TOの中身をX線照射により確認するための検査本体部52と、ベルトコンベア51によって検査本体部52に搬送される被検査物の存在を検知する検知部53と、被検査物TOについてX線透過像を表示するディスプレイ装置54と、各部の制御を行う制御部56とを備える放射線検査装置である。X線検査装置50は、具体的には被検査物TOとしての手荷物BAについて検査を行うことができ、手荷物検査装置100として機能する。
【0023】
X線検査装置(放射線検査装置)50は、検査本体部52の入口側に設けられたカメラその他である検知部53により被検査物TOを検知しつつベルトコンベア51によって被検査物TOを搬送方向D1に沿って検査本体部52内へ送り込むように搬送し、検査本体部52においてX線照射によって内部構造を可視化する検査を行い、検査本体部52外へ被検査物TOを搬出して検査を終了する。
【0024】
X線検査装置50のうち、搬送部であるベルトコンベア51は、
図2(A)〜2(C)に示すように、被検査物TOが載置されるベルト部51aと、装置の入口側及び出口側の両端に設けられるとともにベルト部51aが取り付けられる一対のローラー部51b,51bと、搬送方向D1について一対のローラー部51b,51bの間であってかつリング状のベルト部51a内に設けられて、ベルト部51a及びベルト部51aに載置された被検査物TOを支える板状の部分であるベルト支持部51cと、上記各部を支持する支持フレーム51dとを備える。
【0025】
ローラー部51b,51bは、不図示の機構に駆動されて回転し、ベルト部51aの上部を被検査物TOとともに搬送方向D1に所期の速度で移動させる。
【0026】
ベルト支持部51cは、被検査物TOの搬送方向D1に沿って配列される複数の細長い板状のブロック状部材62,62…と、複数のブロック状部材62,62…上に配置される押え板61とで構成されている。各ブロック状部材62は、支持フレーム51dから延びる一対のフランジ部65,65間に掛け渡されて着脱可能に固定されている。複数のブロック状部材62,62…のうち、遮蔽ボックス75内に配置されているものは、鉛等で構成されてX線吸収性を有し、検査本体部52で発生するX線を部分的に遮蔽する。ここで、複数のブロック状部材62,62…は、X線を透過させる透過領域SLを避けて配列されている。すなわち、複数のブロック状部材62,62…は、検査本体部52で発生するX線の一部を吸収しつつ透過領域SLでX線の他の一部を透過させることで、遮蔽ボックス75内を通過する被検査物TOへのX線の照射を可能にしている。押え板61は、例えばアクリル等のX線透過性素材で作製された板状部材である。押え板61は、ベルト支持部51cの最上面を構成し、ベルト支持部51c上面でのがたつきの発生を抑えてベルト支持部51cによるベルト部51aの支持を確実なものとしている。また、押え板61は、上表面が平らなだけでなく、摩擦の少ないものとなっており、ベルト部51aとともにベルト部51aに載置された被検査物TOの安定かつ確実な搬送を確保している。ベルト部51a等を支持する支持フレーム51dは、カバー部77に覆われている。
【0027】
検査本体部52は、検査対象である被検査物TOに対して放射線であるX線RLを照射するX線源71と、X線源71からのX線RLのうち被検査物TOを通過した成分を受けるX線センサ部72と、X線源71とX線センサ部72とを内部に収納する直方体状の遮蔽ボックス75とを有する。ここで、搬送部としてのベルトコンベア51は、X線源71とX線センサ部72との間を通ってX線センサ部72の長手方向と交差するy方向に延びるとともに遮蔽ボックス75の入口ENと出口EXとの間に亘って延在する。これにより、ベルトコンベア51によって遮蔽ボックス75内でX線源71とX線センサ部72との間において被検査物TOを通過させつつ検査を行うことができる。
【0028】
X線源71は、X線RLを射出する放射線源である。X線源(放射線源)71は、遮蔽ボックス75の中央付近の下部側に配置されており、射出部EAから放射線であるX線RLをX線センサ部72に向けて照射する。なお、本実施形態では、X線源71として、パルス発振方式の冷陰極X線源を組み込んでいるが、CW発振方式の熱陰極X線源に置き換えることもできる。X線源71の遮蔽容器71aの上部であって、ベルトコンベア51の下方には、X線RLの搬送方向D1又はx方向への広がりを抑える遮蔽体71bが配置されている。
【0029】
X線センサ部72は、X線RLを受ける放射線センサ部である。X線センサ部72は、ベルトコンベア(搬送部)51を挟んでX線源71に対向するように遮蔽ボックス75の中央付近の上部側に配置されている。X線センサ部72は、例えば受光素子を搬送方向D1に対して垂直な方向に延びるようにライン状に並べて配置することで、ベルトコンベア51による搬送と協働してライン型のスキャンを可能にしている。すなわち、被検査物TOが遮蔽ボックス75の中央付近の領域DDを通過する際に、X線による被検査物への照射がなされ、X線センサ部72が受けた結果に基づき手荷物BA内部の3次元的な検査がなされる。
【0030】
遮蔽ボックス75は、直方体状の筐体であり、ベルトコンベア51を挿入させて被検査物TOを内部に搬送させるとともに被検査物TOの入口ENや出口EXを形成する矩形状の開口部を有している。なお、遮蔽ボックス75を構成する各壁部は、外部へのX線漏洩を抑制するために、鉛等のX線吸収部材で形成されている。遮蔽ボックス75の入口EN及び出口EXには、遮蔽カーテンCN1,CN2が設けられている。遮蔽カーテンCN1,CN2の材料としては、短冊状の鉛入りゴム状部材を配列したものを用いることができる。遮蔽カーテンCN1,CN2を設けることで、遮蔽ボックス75外へのX線の漏洩をより確実に低減することができる。
【0031】
図3(A)に示すように、X線センサ部72は、受光素子72aと、信号処理回路72bと、収納容器72cとを備える。受光素子72aの検出面72jは、紙面に垂直なx方向に直線状に延び、x方向を長手方向とする細長い矩形形状を有する。具体的には、検出面72jは、
図2(A)等に示すベルトコンベア51のベルト部51aの幅程度の長さを有し、y方向に例えば数mm程度の幅を有する。収納容器72cは、鉛等のX線吸収部材で形成され、受光素子72aの検出面72jに対応する範囲に開口72oを有するとともに開口72oを塞ぐ透過窓72wを有する。
【0032】
図3(A)及び3(B)に示すように、X線センサ部72に付随して、X線センサ部72の下面72u側に放射線遮蔽部82が設けられている。つまり、放射線遮蔽部82とX線センサ部72とは、鉛直方向すなわちz方向に関して異なる高さ位置に配置されている。放射線遮蔽部82は、X線センサ部72で散乱された放射線であるX線RLを遮蔽するため、鉛等のX線吸収部材で形成されている。放射線遮蔽部82は、短冊状の一対の平板状部材82a,82bを有し、両平板状部材82a,82bは、X線源71からの放射線であるX線RLが直接入射する照射領域DR外に照射領域DRを挟むように延在する。より具体的には、一対の平板状部材82a,82bは、X線センサ部72の検出面72jの外側において当該検出面72jの長手方向に沿って対向する状態で延びる。これにより、ラインセンサである検出面72jの長手方向に直交するy方向に射出される散乱放射線の広がりを制限することができる。つまり、一対の平板状部材82a,82bの形状や配置を適宜調整することで、1次散乱放射線の最大傾斜角を所望の値にすることができ、1次散乱X線L12,L22の到達領域を制限することができる。一対の平板状部材82a,82bは、X線センサ部72の検出面72jの長手方向に延びる一対の辺S1,S2の外側に設けた収納容器72cの基部72qから鉛直下方である−z方向に突起するとともに、検出面72jの長手方向であるx方向に平行に延びる。
図3(B)に示すように、一対の平板状部材82a,82bの長手方向又はx方向の幅又は長さは、X線センサ部72の検出面72jのx方向の長さより長く、検出面72jの範囲をカバーするものとなっている。
【0033】
以下、平板状部材82a,82bの鉛直方向の幅と水平方向の間隔とについて説明する。X線センサ部72の透過窓72wの外側に入射するX線RLのうち、透過窓72wを基準として最外点P1,P2に入射する外側X線L11,L21は、最外点P1,P2での後方散乱によって1次散乱X線L12,L22となって遮蔽ボックス75内に戻される。この際、1次散乱X線L12,L22は、反対側の平板状部材82a,82bの配置、特に下端部82eの配置との関係で後方散乱の傾斜角に制限が生じる。具体的には、最外点P1から反対の平板状部材82bまでの距離をdとし、平板状部材82bの鉛直幅をhとして、1次散乱X線L12の最大傾斜角θ1は、下端部82eでの遮蔽が臨界点となって、tan
−1(d/h)となる。この最大傾斜角θ1より大きな傾斜角の後方散乱成分L13は、平板状部材82bの内面で再度後方散乱された2次散乱X線となるので、当初のX線RLの強度又は頻度に比較して(1/100〜1/1000)
2倍程度微小なものとなり、安全性に与える影響度が格段に下がり安心感の確保が容易となる。なお、最外点P1に入射した外側X線L11が後方散乱されて同じ側の平板状部材82aに入射した場合、この後方散乱成分L14は、2次散乱X線となるので、安全性に与える影響度が格段に下がる。反対の最外点P2に入射する外側X線L21に起因する1次散乱X線L22も同様であり、最外点P2から反対の平板状部材82aまでの距離をdとし、平板状部材82bの縦幅をhとして、最大傾斜角θ2は、tan
−1(d/h)となる。以上の最大傾斜角θ1,θ2内の角度領域A1は、1次散乱X線L12,L22の到達領域であり、遮蔽ボックス75外に直接漏れ出すような広がりを有しないことが望ましい。一方、最大傾斜角θ1,θ2外の角度領域A2は、1次散乱X線L12,L22が平板状部材82a,82bによって遮断されてX線の強度又は頻度が極めて低下しており、しかも、X線の伝搬距離が長くなるので、遮蔽ボックス75内でどのような広がりを有していても問題とならない。実際には、
図2(B)に示すように、角度領域A1の下端の最大広がり位置M1,M2が遮蔽ボックス75の入口ENや出口EXよりも内側となるように設定されており、平板状部材82a,82bによって1次散乱X線L12,L22が入口ENや出口EXに直接入射することが阻止されている。結果的に、遮蔽ボックス75外へのX線の漏洩を確実に低減できる。角度領域A1を通過した1次散乱X線L12,L22がベルトコンベア51に入射しても2次散乱X線となり、伝搬距離が長くなって、漏洩量を抑えることができる。なお、平板状部材82a,82bの鉛直幅hは、角度領域A1を狭く制限する観点である程度大きく確保することが望ましいが、ベルトコンベア51の搬送経路を妨げない範囲とする必要がある。平板状部材82a,82bの鉛直幅hを低くする観点からすると、平板状部材82a,82bを外側X線L11,L21になるべく近づけることが望ましいといえる。
【0034】
以上の説明では、外側X線L11,L21が対称的にX線センサ部72に入射する前提で説明を行ったが、外側X線L11,L21が非対称的にX線センサ部72に入射する場合、個々の外側X線L11,L21について、最大傾斜角θ1,θ2を評価し平板状部材82a,82bの配置や大きさを設定すればよい。この場合、両平板状部材82a,82bの高さ又は鉛直幅が異なる場合も生じる。さらに、以上の説明では、X線センサ部72が遮蔽ボックス75内で搬送方向D1に関して中央にあるとしているが、X線センサ部72が遮蔽ボックス75内で中央からずれた位置にある場合も、外側X線L11,L21の入射位置に応じて平板状部材82a,82bの配置や大きさを個別に設定する。さらに、平板状部材82a,82bの高さ又は鉛直幅は、x方向の位置に関わらず一定となっているが、これに限る必要はなく、長手のx方向の位置によって異なるものであってもよい。
【0035】
図4(A)は、X線RLの散乱を説明する図である。X線RLを対象物OBに入射させた場合、対象物OBが散乱体であれば、透過成分R1の他に、前方散乱成分DR1と後方散乱成分DR2とが生成される。対象物OBの厚みや遮蔽能にもよるが、透過成分R1に比較して前方散乱成分DR1及び後方散乱成分DR2の比率は小さく、一般的には前方散乱成分DR1の方が後方散乱成分DR2よりも多くなる。また、
図4(B)に示すように、後方散乱成分DR2については、散乱角φrが大きくなるほど散乱強度が大きくなる。
図3(A)に示すような1次散乱X線L12,L22について考える場合、これらは後方散乱成分DR2に相当するものであり、1次散乱X線L12,L22の強度又は頻度は、対象物OBや散乱角φrにもよるが、元のX線RLの強度又は頻度に対して例えば1/100倍以下のレベルとなる。
【0036】
以上のように、第1実施形態のX線検査装置50では、放射線遮蔽部82がX線センサ部72で散乱されたX線、すなわち1次散乱X線L12,L22を遮蔽するので、X線センサ部72に起因するX線センサ部72の周辺へのX線の漏洩を低減することができ、X線検査装置50に対する安心感を高めることができる。
【0037】
〔第2実施形態〕
以下、
図5(A)を参照して、第1実施形態を変形した第2実施形態について説明する。なお、本実施形態に係るX線検査装置50は、放射線遮蔽部82及びその周辺の構造を除いて、第1実施形態と同様の構成であるので、X線検査装置50全体についての詳細な説明を省略する。
【0038】
この場合、放射線遮蔽部82を構成する一対の平板状部材82a,82bが鉛直方向に対して傾いており、先端側で狭まるような形状となっている。第2実施形態の場合も、第1実施形態の場合と同様に、平板状部材82a,82bの下端部82eの配置を調整することにより、1次散乱X線L12,L22の最大傾斜角θ1,θ2を所望の値にすることができ、角度領域A1を所望の広がりを有する状態に設定することができる。一対の平板状部材82a,82bを先端側で狭まるような形状又は配置とすることで、平板状部材82a,82bを外側X線L11,L21に近づけることが比較的容易になる。
【0039】
図5(B)は、
図5(A)に示す放射線遮蔽部82を変形したものであり、平板状部材82a,82bが湾曲した形状を有する。
図5(C)は、
図5(A)に示す放射線遮蔽部82をさらに変形したものであり、放射線遮蔽部82を構成する板状部材182a,182bは、断面L字状で2つの平板部材を組み合わせたものとなっている。
【0040】
〔第3実施形態〕
以下、
図6を参照して、第3実施形態について説明する。なお、本実施形態に係るX線検査装置50は、第1実施形態を部分的に変更したものであり、重複する部分については説明を省略する。
【0041】
X線検査装置50は、遮蔽ボックス75内の複数箇所に放射線遮蔽部82を配置している。具体的には、遮蔽ボックス75内において、基本的な平板状部材82a,82bの外側に、X線センサ部72の下面72uから延びる一対の追加の平板状部材182a,182bと、遮蔽ボックス75の天面75aから延びる一対の追加の平板状部材282a,282bとが形成されている。追加の平板状部材182a,182b,282a,282bは、基本的な平板状部材82a,82bと寸法が異なるが類似する形状を有しており、X線センサ部72で散乱された1次又は2次以上の高次の散乱成分を遮蔽する役割を有する。遮蔽ボックス75の壁面75bからは、搬送経路の上方においてx方向に掛け渡されるように、一対の追加の平板状部材382a,382bが形成されている。一対の平板状部材382a,382bは、X線センサ部72からの2次以上の高次の散乱成分を遮蔽する役割や、被検査物TOからの1次以上の散乱成分を遮蔽する役割を有する。さらに、ベルトコンベア51のベルト支持部51cのうち透過領域SLにおいて空間を設け、その空間を搬送経路方向に挟むように、一対の追加の平板状部材482a,482bを設けている。一対の平板状部材482a,482bは、ベルトコンベア(搬送部)51の内部において、X線センサ部72や被検査物TOからの1次以上の散乱成分を遮蔽する役割を有する。
【0042】
〔その他〕
この発明は、上記の各実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0043】
上記実施形態では、透視観察型の検査のためX線RLを用いているが、X線RL以外の他の放射線を用いることができる。
【0044】
上記実施形態では、X線検査装置50を手荷物検査装置100に適用する場合を説明したが、X線検査装置50は、手荷物検査に限らず、様々な対象をX線その他の放射線で検査する場合に応用できる。
【0045】
X線センサ部72の検出面72jの形状は、例示のものに限らず、縦横比を様々に変更したものとできる。
【0046】
遮蔽ボックス75の入口EN又は出口EXにおいて、遮蔽カーテンCN1,CN2へのX線の入射量が少ない場合、遮蔽カーテンCN1,CN2を省略することができる。
【0047】
上記実施形態では、ベルトコンベア(搬送部)51を用いたが、ベルトコンベア51を有しないX線検査装置50において、
図3(A)等に示す放射線遮蔽部82を組み付けることができる。ベルトコンベア51を有しない場合、X線センサ部72をラインセンサタイプとしないでX線その他の放射線を面状に照射することもできるが、X線センサ部72をラインセンサタイプとして検査対象及びX線センサ部72の一方を他方に対して相対的に移動させてもよい。
【符号の説明】
【0048】
50…X線検査装置(放射線検査装置)、 51…ベルトコンベア(搬送部)、 51a…ベルト部、 51b…ローラー部、 51c…ベルト支持部、 51d…支持フレーム、 52…検査本体部、 54…ディスプレイ装置、 56…制御部、 62…ブロック状部材、 71…X線源(放射線源)、 71a…遮蔽容器、 72…X線センサ部(放射線センサ部)、 72a…受光素子、 72c…収納容器、 72j…検出面、 72o…開口、 72q…基部、 72u…下面、 72w…透過窓、 75…遮蔽ボックス、 82…放射線遮蔽部、 82a,82b…平板状部材、 82e…下端部、 100…手荷物検査装置、 A1,A2…角度領域、 BA…手荷物、 CN1,CN2…遮蔽カーテン、 D1…搬送方向、 DR…照射領域、 EA…射出部、 EN…入口、 EX…出口、 L11,L21…外側X線、 L21,L22…1次散乱X線L、 P1,P2…最外点、 S1,S2…一対の辺、 SL…透過領域、 TO…被検査物、 θ1,θ2…最大傾斜角