(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態に係るエレベータシステムの構成を概略的に示す図である。
本実施形態におけるエレベータシステムは、エレベータ制御装置11と、乗りかご12とを備える。
【0010】
エレベータ制御装置11は、建物14の最上部の機械室などに設置され、エレベータ全体の制御を行う。なお、機械室を持たないマシンルームレスタイプのエレベータでは、エレベータ制御装置11が昇降路16内に設けられる。
【0011】
乗りかご12は、エレベータ制御装置11の制御の下で、図示せぬ巻上機の駆動によりロープ15を介して昇降路16内を昇降動作する。この乗りかご12内には、カメラ13が設置されている。
【0012】
カメラ13は、例えば乗りかご12内の天井面に設置され、乗りかご12の運転中にかご室内の状態を連続的に撮影する。なお、カメラ13の設置場所は天井面に限らず、かご内全体を撮影可能な場所であれば、どこでも良い。カメラ13は、図示せぬ伝送ケーブルを介してエレベータ制御装置11に接続されている。
【0013】
一方、各階の乗場17a,17b,17c…には、乗場呼びボタン18a,18b,18c…とカメラ19a,19b,19c…がそれぞれ設置されている。
【0014】
乗場呼びボタン18a,18b,18c…は、利用者が乗場呼びを登録するためのボタンである。なお、「乗場呼び」とは、各階の乗場に設置された乗場呼びボタンの操作により登録される呼びの信号のことであり、登録階と行先方向の情報を含む。これに対し、「かご呼び」とは、かご室内に設けられた行先呼びボタンの操作により登録される呼びの信号のことであり、行先階の情報を含む。
【0015】
カメラ19a,19b,19c…は、各階の乗場17a,17b,17c…の状態を連続的に撮影する。これらのカメラ19a,19b,19c…の設置場所は、各階毎に乗場全体を撮影できる場所であれば、どこでも良い。乗場呼びボタン18a,18b,18c…とカメラ19a,19b,19c…は、図示せぬ伝送ケーブルを介してエレベータ制御装置11に接続されている。
【0016】
図2は乗りかご12の構成を示す図である。
乗りかご12の正面にはかごドア21が設置されており、図示せぬドアモータの駆動により開閉動作する。かごドア21の近傍に、かご操作盤24や表示器25などが設置されている。かご操作盤24上には、各階に対応した複数の行先階ボタン22や戸開閉ボタン23a,23bなどを含む各種操作ボタンが配設されている。表示器25は、乗りかご12の現在位置や運転方向、行先階などの運転状態の他に、乗りかご12内の利用者に対する各種メッセージなどを表示する。
【0017】
また、乗りかご12内には、
図1に示したカメラ13と、乗りかご12内の利用者に音声で通知するためのアナウンス装置26が設置されている。
【0018】
図3はエレベータ制御装置11の機能構成を示すブロック図である。なお、
図3では、任意の階の乗場17に設置された乗場呼びボタン18とカメラ19を示すが、実際には各階の乗場17a,17b,17c…に設置された乗場呼びボタン18a,18b,18c…とカメラ19a,19b,19c…が存在する。
【0019】
エレベータ制御装置11には、画像処理部31、記憶部32、乗車判断部33、運転制御部34、通知部35が備えられている。
【0020】
画像処理部31は、乗りかご12内のカメラ13で撮影された画像(映像)と、乗場17のカメラ19で撮影された画像(映像)をそれぞれにリアルタイムで解析処理する。この画像処理部31は、乗車率検出部31aと待ち人数検出部31bを有する。
【0021】
乗車率検出部31aは、乗りかご12内のカメラ13で撮影された画像(映像)の解析結果に基づいて、乗りかご12の各エリア毎の乗車率を検出する。この乗車率検出部31aによる乗車率の検出方法については、後に
図5および
図6を参照して説明する。待ち人数検出部31bは、乗場17のカメラ19で撮影された画像(映像)に基づいて、乗場17で乗りかご12の到着を待つ利用者の人数(待ち人数)を検出する。
【0022】
記憶部32は、例えばROMやRAMなどからなり、制御プログラムなど、エレベータ制御装置11の処理に必要な各種データを記憶している。この記憶部32は、呼び管理テーブル32aと学習テーブル32bを有する。
【0023】
呼び管理テーブル32aは、利用者が乗場17で登録した乗場呼びの情報を管理する。
図4に呼び管理テーブル32aの一例を示す。乗場呼びは、登録階と行先方向の情報を有する。「登録階」は、利用者が乗場呼びボタン18を押下操作して乗場呼びを登録した階、つまり、利用者が乗りかご12に乗車する階のことであり、呼び登録階とも言う。「行先方向」は、利用者が乗りかご12に乗って向かう方向である。詳しくは、乗場呼びボタン18は上方向ボタンと下方向ボタンを有し、上方向ボタンが押下された場合に上方向の情報が呼び管理テーブル32aに記憶され、下方向ボタンが押下された場合には下方向の情報が呼び管理テーブル32aに記憶される。
【0024】
学習テーブル32bは、乗りかご12の各エリアの乗車率と、乗場17の待ち人数との組み合わせに対する利用者の乗車の有無を学習したテーブルである。
【0025】
ここで、乗車率の検出方法について説明する。
乗車率検出部31aは、乗りかご12の乗車スペースを複数のエリアに分割し、これらのエリア毎に利用者の乗車率を求める。乗りかご12の乗車スペースを分割するエリアには、少なくとも乗りかご12のドア前のエリアが含まれる。これは、一般的にドア前に利用者が集中することが多く、そのドア前のエリアの乗車率が乗場で待つ利用者の乗車に大きく影響するからである。
【0026】
図5は、乗りかご12の乗車スペース(かご床面)をA〜Dの4つのエリアに分割した例が示されている。エリアAとエリアBは乗りかご12の前側(ドア側)、エリアCとエリアDは乗りかご12の後側(奥側)であり、それぞれに同じ面積を有する。
【0027】
いま、任意の階の乗場17で乗場呼びが登録され、その乗場呼びに対し、乗りかご12が応答する場合を想定する。
【0028】
乗りかご12のエリアAに利用者が乗車していたとする。図中のPは利用者を天井面からカメラ13で撮影した二次元の画像を模式的に表している。エリアAの面積に対し、利用者の画像Pの面積が占める割合がエリアAの乗車率として求められる。エリアAに多数の利用者が乗車していれば、エリアAの乗車率が上がる。他のエリアB,C,Dについても同様であり、それぞれのエリアに乗車している利用者の数によって乗車率が決まる。
【0029】
なお、利用者が複数のエリアにまたがって乗車している場合には、それぞれのエリアの中で利用者の画像Pが占める割合を求めれば良い。例えば、
図6に示すように、利用者がエリアAとエリアBにまたがって乗車している場合には、エリアAの中で利用者の画像Pが占める割合をエリアAの乗車率として求め、エリアBの中で利用者の画像Pが占める割合をエリアBの乗車率として求める。
【0030】
また、4分割に限らず、乗りかご12の乗車スペースをもっと細かく分割しても良い。一般的に、乗りかご12のドア前に利用者が乗車することが多いので、ドア前のエリアとそれ以外のエリアに分けることでも良い。
【0031】
一方、乗場17では、乗場呼びを登録した利用者を含め、少なくとも1人以上の利用者が待っていたとする。乗場17に設置されたカメラ19の画像から利用者の待ち人数が検出され、その検出された待ち人数が乗りかご12の各エリアの乗車率と共に学習テーブル32bに記憶される。
【0032】
図7に学習テーブル32bの一例を示す。
図7の例では、ある任意の階における学習結果を表しているが、実際には各階毎に同様の学習テーブル32bが用意されている。利用者が乗場呼びを登録した際に、その登録階に対応した学習テーブル32bが参照される。
【0033】
No.1のデータは、乗りかご12の後側(奥側)であるエリアC,Dの乗車率が高く、前側(ドア側)であるエリアA,Bの乗車率が低い状態を示している。乗場17の待ち人数は1人である。このような乗車率と待ち人数の組み合せに対し、利用者の乗車の有無が乗車履歴として記憶される。この乗車履歴は、同じ組み合わせに対するα回(例えば5回)の学習結果の中で利用者の乗車があったか否かを表している。乗車履歴「有」は、同じ組み合わせに対する過去α回の学習結果の中で利用者の乗車が少なくとも1度はあったことを意味している。上記αは、学習の更新回数のことである。つまり、α=5であれば、同じ組み合わせで5回毎に学習テーブル32bに記憶し、その5回の学習結果の中で利用者の乗車が1度でもあれば、乗車履歴「有」となる。
【0034】
No.2のデータは、乗りかご12の後側(奥側)であるエリアC,Dの乗車率が低く、前側(ドア側)であるエリアA,Bの乗車率が高い状態を示している。乗場17の待ち人数は2人である。このような乗車率と待ち人数の組み合せに対し、乗車履歴として「無」が記憶されている。乗車履歴「無」は、同じ組み合わせに対するα回の学習結果の中で利用者の乗車がなかったことを意味している。
【0035】
乗車判断部33は、乗車率検出部31aによって検出された乗りかご12の各エリアの乗車率と待ち人数検出部31bによって検出された乗場17の待ち人数とに基づいて、乗場17で待つ利用者が乗りかご12に乗車する可能性を判断する。詳しくは、乗車判断部33は、乗りかご12の各エリアの乗車率と乗場17の待ち人数との組み合わせを
図7に示した学習テーブル32bから検索し、同じ組み合わせに対する乗車履歴を参照して、利用者が乗りかご12に乗車する否かを判断する。
【0036】
運転制御部34は、乗車判断部33の判断結果に応じて、乗りかご12を乗場17(利用者の呼び登録階)で停止あるいは通過させる。
【0037】
通知部35は、乗りかご12内の利用者に対して、乗車に関する通知を行う。通知方法としては、表示器25を通じてメッセージを表示する方法や、アナウンス装置26を通じて音声アナウンスする方法などがある。
【0038】
次に、第1の実施形態の動作について説明する。
図8は第1の実施形態におけるエレベータ制御装置11の処理動作を示すフローチャートである。
【0039】
いま、任意の階の乗場17において、利用者が乗場呼びボタン18の操作により乗場呼びを登録した場合を想定する。
【0040】
上述したように、乗場呼びには、登録階と行先方向の情報が含まれている。エレベータ制御装置11は、乗場呼びの情報を受信すると(ステップS101のYes)、この乗場呼びに含まれる登録階と行先方向を呼び管理テーブル32aに記憶する(ステップS102)。
図4に示すように、例えば利用者が2階の乗場で上方向の乗場呼びを登録すると、登録階:「2F」,行先方向:「上方向」が呼び管理テーブル32aに記憶される。
【0041】
ここで、エレベータ制御装置11は、乗りかご12の各エリアの乗車率を検出する(ステップS103)。
図5で説明したように、エレベータ制御装置11は、乗りかご12の乗車スペースを複数のエリアに分割し、これらのエリア毎に利用者の乗車率を求める。詳しくは、乗りかご12内に設置されたカメラ13の画像を解析処理し、乗りかご12の各エリア毎に利用者が占める割合を乗車率として求める。
【0042】
また、エレベータ制御装置11は、利用者が乗場呼びを登録した階(呼び登録階)における乗場17の待ち人数を検出する(ステップS104)。詳しくは、当該階に設置されたカメラ19の画像を解析処理し、乗場17にいる利用者の人数を検出する。なお、乗場17に複数の利用者がいる場合に、これらの利用者の行先方向は最初に呼び登録した利用者と同じであるとする。
【0043】
乗車率と待ち人数を検出するタイミングは、乗場呼びが登録されたときを基本とする。しかし、乗りかご12が呼び登録階に到着するまでの間に、乗りかご12内の利用者の位置や人数が変動する可能性があり、また、乗場17の待ち人数も変動する可能性がある。したがって、乗りかご12が呼び登録階に近づいたとき、つまり、呼び登録階の直前で乗車率と待ち人数を検出することが好ましい。
【0044】
例えば、呼び登録階が「2F」で、乗りかご12が最下階から上方向に運転中であれば、乗りかご12が「1F」から「2F」に移動している間に乗車率と待ち人数を検出することが好ましい。
【0045】
乗りかご12の各エリアの乗車率と乗場17の待ち人数との組み合わせが得られると、エレベータ制御装置11は、学習テーブル32bの中で同じ組み合わせに対する乗車履歴を参照して、利用者が乗りかご12に乗車する可能性を判断する(ステップS105)。
【0046】
この場合、例えば呼び登録階が「2F」であれば、「2F」の学習テーブル32bが参照される。ここで、利用者が乗場呼びを登録したときに得られた乗車率と待ち人数との組み合わせ(現在の組み合わせ)が
図7に示した学習テーブル32bの中のNo.1の組み合わせと同じであったとすると、その組み合わせに対する乗車履歴から利用者が乗りかご12に乗車する可能性が高いものと判断される。一方、現在の組み合わせが
図7に示した学習テーブル32bの中のNo.2の組み合わせと同じであったとすると、その組み合わせに対する乗車履歴から利用者が乗りかご12に乗車する可能性が低いものと判断される。
【0047】
利用者が乗りかご12に乗車する可能性が高いと判断された場合(ステップS105のYes)、エレベータ制御装置11は、乗りかご12を呼び登録階の乗場17で停止させ、戸開により利用者に乗車させる(ステップS106)。
【0048】
一方、利用者が乗りかご12に乗車する可能性が低いと判断された場合(ステップS105のNo)、エレベータ制御装置11は、呼び登録階を通過するように乗りかご12の運転を制御する(ステップS107)。このとき、エレベータ制御装置11は、利用者の乗場呼びの情報を呼び管理テーブル32aに保留しておき、次の周回で当該乗場呼びに応答するように乗りかご12の運転を制御する(ステップS108)。
【0049】
なお、上記ステップS105で乗車の可能性が低いと判断された場合でも、乗場17で降車する利用者がいれば、エレベータ制御装置11は、乗りかご12を乗場17で停止させる。このとき、乗場17の利用者が乗りかご12に乗車した場合には、乗場呼びを保留せずに運転するものとする。乗場17の利用者が乗りかご12に乗車したことは、乗りかご12内に設置されたカメラ13の画像から判断できる。
【0050】
このように第1の実施形態によれば、乗りかご12の各エリアの乗車率と乗場17の待ち人数との関係から利用者が乗車する可能性を判断し、その判断結果に応じて乗りかご12を呼び登録階で停止あるいは通過させる。これにより、利用者が乗車する可能性が低い組み合わせであった場合に、乗りかご12の無駄な停止を回避して運行効率の低下を防ぐことができる。
【0051】
なお、上記第1の実施形態では、すべての階を対象にして乗車判断を行う構成としたが、ある特定の階だけを対象にし、乗車判断を行う構成としても良い。一般的に、基準階で利用者が乗りかご12に乗車することが多いので、基準階の乗場呼びに乗りかご12を応答させる場合に上記のような方法で利用者が乗車する可能性を判断すれば、運行効率を上げることができる。
【0052】
また、上記第1の実施形態では、乗りかご12内に設置したカメラ13を利用して各エリアの乗車率を検出する構成としたが、例えば温度センサを利用して、乗りかご12の床面の温度状態から各エリアの乗車率を検出することでも良い。すなわち、一般的に乗りかご12の床面は温度が低いので、利用者がいる場所と利用者がいない場所で温度差ができる。この温度差を分析すれば、各エリア毎に乗車率を検出することが可能である。同様に、乗場17においても、例えば温度センサなど、カメラ19以外の方法で待ち人数を検出することでも良い。
【0053】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態では、複数の乗りかごを有するエレベータの群管理システムを想定している。
【0054】
図9は第2の実施形態に係るエレベータの群管理システムの構成を概略的に示す図であり、3台の乗りかごが群管理された構成が示されている。なお、乗りかごの台数は3台に限らず、2台でも良いし、3台以上であっても良い。
【0055】
群管理制御装置41は、主制御装置として存在し、任意の乗場で登録された乗場呼びを各号機の乗りかごのいずれかに割り当てるための割当制御など、群管理システム全体の制御を行う。さらに、この群管理制御装置41は、本システムを実現するための機能として、
図3に示したエレベータ制御装置11と同様の機能(画像処理部31、記憶部32、乗車判断部33、運転制御部34、通知部35)が備えられている。
【0056】
号機制御装置42a,42b,42cは、群管理制御装置41の制御の下で、各号機に対応した乗りかご43a,43b,43cの運転を制御する。乗りかご43a,43b,43cには、それぞれに
図2に示したカメラ13などが設けられている。
【0057】
一方、各階の乗場44a,44b,44c…には、乗場呼びボタン45a,45b,45c…とカメラ46a,46b,46c…がそれぞれ設置されている。
【0058】
乗場呼びボタン45a,45b,45c…は、利用者が乗場呼びを登録するためのボタンである。カメラ46a,46b,46c…は、各階の乗場44a,44b,44c…の状態を連続的に撮影する。これらのカメラ46a,46b,46c…の設置場所は、各階毎に乗場全体を撮影できる場所であれば、どこでも良い。乗場呼びボタン45a,45b,45c…とカメラ46a,46b,46c…は、図示せぬ伝送ケーブルを介して群管理制御装置41に接続されている。
【0059】
次に、第2の実施形態の動作について説明する。
図10は第2の実施形態における群管理制御装置41の処理動作を示すフローチャートである。
【0060】
いま、例えば2階の乗場44bにおいて、利用者が乗場呼びボタン45bを押下操作して上方向の乗場呼びを登録した場合を想定する。上記第1の実施形態で説明したように、この乗場呼びには、登録階と行先方向の情報が含まれている。
【0061】
群管理制御装置41は、乗場呼びの情報を受信すると(ステップS201のYes)、この乗場呼びに含まれる登録階と行先方向を呼び管理テーブル32aに記憶する(ステップS202)。
【0062】
群管理制御装置41は、乗りかご43a,43b,43cのいずれかに乗場呼びを割り当てる(ステップS203)。詳しくは、群管理制御装置41は、号機制御装置42a,42b,42cを介して各号機の運転状態情報(現在位置、運転方向など)を取得する。そして、群管理制御装置41は、これらの運転状態情報に基づいて、乗りかご43a,43b,43cの中で最も早く応答可能な乗りかごに当該呼び情報を割り当て、呼び登録階に向かわせる。乗場呼びが割り当てられた乗りかごのことを「割当かご」と呼ぶ。例えば、A号機の乗りかご43aが割当かごとして決定されると、
図11(a)に示すように、呼び管理テーブル32aに割当かごの情報が追加される。
【0063】
ここで、群管理制御装置41は、割当かごとして決定された乗りかご43aの各エリアの乗車率を検出する(ステップS204)。上記第1の実施形態と同様に、群管理制御装置41は、乗りかご43aの乗車スペースを複数のエリアに分割し、これらのエリア毎に利用者の乗車率を求める。詳しくは、乗りかご43a内に設置された図示せぬカメラの画像を解析処理し、乗りかご43aの各エリア毎に利用者が占める割合を乗車率として求める。
【0064】
なお、各号機の乗りかご43a,43b,43cの乗車スペースは同じであるとし、
図7に示した学習テーブル32bは各号機で共通に使用できるものとする。
【0065】
一方、群管理制御装置41は、利用者が乗場呼びを登録した2階における乗場44bの待ち人数を検出する(ステップS205)。詳しくは、乗場44bに設置されたカメラ46bの画像を解析処理し、乗場44bにいる利用者の人数を検出する。なお、乗場44bで複数の利用者がいる場合に、これらの利用者の行先方向(上方向または下方向)は最初に呼び登録した利用者と同じであるとする。
【0066】
上記第1の実施形態で説明したように、乗車率と待ち人数を検出するタイミングは、乗場呼びが登録されたときを基本とする。しかし、乗りかご43aが呼び登録階に到着するまでの間に、乗りかご43a内の利用者の位置や人数が変動する可能性があり、また、乗場44bの待ち人数も変動する可能性がある。したがって、乗りかご43aが呼び登録階に近づいたとき、つまり、呼び登録階の直前で乗車率と待ち人数を検出することが好ましい。
【0067】
乗りかご43aの各エリアの乗車率と乗場44bの待ち人数との組み合わせが得られると、群管理制御装置41は、学習テーブル32bの中で同じ組み合わせに対する乗車履歴を参照して、利用者が乗りかご43aに乗車する可能性を判断する(ステップS206)。
【0068】
利用者が乗りかご43aに乗車する可能性が高いと判断された場合(ステップS206のYes)、群管理制御装置41は、乗りかご43aを呼び登録階の乗場44bで停止させ、戸開により利用者に乗車させる(ステップS207)。
【0069】
一方、利用者が乗りかご43aに乗車する可能性が低いと判断された場合(ステップS206のNo)、群管理制御装置41は、他の乗りかごに当該利用者の乗場呼びを割当変更する(ステップS208)。
【0070】
詳しくは、群管理制御装置41は、各号機の運転状態情報に基づいて、現在の割当かごの次に呼び登録階に早く到着可能な乗りかごを変更対象として選出する。群管理制御装置41は、その変更対象として選出された乗りかごの各エリアの乗車率を検出する。この各エリアの乗車率と乗場44bの待ち人数との組み合わせに基づいて、学習テーブル32bを再検索した結果、同じ組み合わせに対する乗車履歴が「有」であれば、その乗りかごに利用者の乗場呼びを割当変更する。
【0071】
例えば、利用者の呼び情報がB号機の乗りかご43bに割当変更された場合には、
図11(b)に示すように、呼び管理テーブル32aの内容が変更される。
【0072】
B号機の乗りかご43bに割当変更した場合、群管理制御装置41は、乗りかご43bを呼び登録階の乗場44bで停止させ(ステップS208)、戸開して利用者を乗車させる(ステップS207)。
【0073】
なお、上記ステップS208において、割当変更可能な他の乗りかごが存在しなかった場合には、上記第1の実施形態と同様に、呼び登録階を通過させて、次の周回で乗りかご43aを応答させる(
図8のステップS107〜S108参照)。
【0074】
このように第2の実施形態によれば、複数の乗りかごを有する群管理システムにおいて、割当かごとして決定された乗りかご43aの各エリアの乗車率と乗場44bの待ち人数との関係で利用者が乗車する可能性が低いと判断された場合には、乗車可能な他の乗りかご43bに乗場呼びが割当変更される。これにより、乗りかご43bを応答させたときに、利用者を乗りかご43bに乗車させて効率的に運転することができる。
【0075】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
一般に、乗りかごのドア前に利用者が混んでいると、乗車スペースに余裕があっても、乗場に到着したときに利用者が乗車しないことが多い(
図7のNo.2の参照)。そこで、第3の実施形態では、乗りかごのドア前の乗車率が高い場合に、乗りかご内の利用者に奥に詰めるように通知して、利用者が乗車しやすい環境を作り出すようにしたものである。
【0076】
以下では、上記第1の実施形態のエレベータシステムを例にして説明するが、上記第2の実施形態の群管理システムも同様である。
【0077】
図12は第3の実施形態におけるエレベータ制御装置11の処理動作を示すフローチャートである。このフローチャートで示される処理は、
図8に示したフローチャートのステップS103の後で実行される。
【0078】
すなわち、上記ステップS103において、乗りかご12の各エリアの乗車率が検出されると、エレベータ制御装置11は、ドア前のエリアA,Bの乗車率が他のエリアC,Dよりも高いか否かを判断する(ステップS301)。ドア前のエリアA,Bの乗車率が他のエリアC,Dよりも高い場合には(ステップS301のYes)、エレベータ制御装置11は、乗りかご12内の利用者に奥に詰めるように通知する(ステップS302)。
【0079】
通知方法としては、乗りかご12内に設けられた表示器25を通じてメッセージ表示で通知するか、あるいは、乗りかご12内に設けられたアナウンス装置26を通じて音声アナウンスで通知する。メッセージ表示と音声アナウンスの両方で通知しても良い。
【0080】
図13に乗りかご12の各エリアの乗車状態を示す。
図13(a)は通知前、同図(b)は通知後の状態を示している。図中のPは利用者を天井面からカメラ13で撮影した二次元の画像を模式的に表している。
【0081】
例えば、
図13(a)に示すように、ドア前のエリアA,Bに利用者が集中している場合に、
図14に示すようなメッセージが表示器25に表示されるか、あるいはアナウンス装置26を通じて音声アナウンスされる。このような通知を受けて、
図13(b)に示すように、乗りかご12内の利用者が奥に詰めると、ドア前のエリアA,Bが空いて、利用者が乗車しやすい環境になる。
【0082】
エレベータ制御装置11は、通知後における各エリアの乗車率を再検出する(ステップS303)。以後は、エレベータ制御装置11は、呼び登録階における乗場17の待ち人数を検出し、上記通知後に得られた各エリアの乗車率と待ち人数との組み合わせに基づいて学習テーブル32bを検索して、利用者が乗りかご12に乗車する可能性を判断する(
図8のステップS103〜S105)。この場合、上述した通知によって乗りかご12内の利用者が奥に詰めていれば、各エリアの乗車率と待ち人数の組み合わせが変わるので、利用者が乗車する可能性が高くなる。
【0083】
このように第3の実施形態によれば、乗りかご12のドア前のエリアA,Bの乗車率が他のエリアC,Dよりも高い場合に、乗りかご12内の利用者に奥に詰めるように通知することで、乗場17の利用者を乗りかご12に乗車させて効率的に運転することができる。
【0084】
なお、第3の実施形態を上記第2の実施形態の群管理システムに適用する場合には、
図10に示したフローチャートのステップS204とS205との間に
図12のステップS301〜303の処理を組み込めば良い。
【0085】
(変形例1)
例えばオフィスビルでは、時間帯によって乗場の状況やかご内の状況が大きく異なる。したがって、時間帯毎に乗りかご12の各エリアの乗車率と乗場17の待ち人数との組み合わせに対する利用者の乗車履歴を学習することが好ましい。
【0086】
図15の例では、T1〜T4の時間帯に分け、それぞれの時間帯において、D1〜D4で示される複数の学習テーブル32bが用意されている。例えば、利用者が任意の階で乗場呼びを登録した時間が9:00であれば、時間帯T1に対応したD1の学習テーブル32bが参照され、そのときに検出された乗りかご12の各エリアの乗車率と乗場17の待ち人数とに基づいて利用者が乗りかご12に乗車する可能性が判断される。
【0087】
D1の学習テーブル32bには、予めT1の時間帯で学習された乗りかご12の各エリアの乗車率と乗場17の待ち人数との組み合わせに対する乗車履歴が記憶されている。したがって、このD1の学習テーブル32bを参照することで、現在の時間帯における乗場の状況やかご内の状況を考慮して利用者が乗車するか否かを適切に判断することができる。
【0088】
上記第2の実施形態で説明した群管理システムの場合でも同様であり、複数の時間帯毎に乗車履歴が記憶された複数の学習テーブルを用いることで、現在の時間帯における乗場の状況やかご内の状況を考慮して利用者が乗車するか否かを適切に判断することができる。
【0089】
(変形例2)
乗りかご12のすべての乗車率パターンに対して学習テーブル32bを参照する必要はなく、例えば乗りかご12が無人に近い状態など、明らかに乗りかご12に乗車できる場合には乗車判断部33による乗車判断を行わずに乗りかご12を呼び登録階で停止させる。また、乗りかご12が満員に近い状態など、明らかに乗りかご12に乗車できない状態の場合も同様であり、乗車判断部33による乗車判断を行わずに乗りかご12を呼び登録階で停止させずに通過させる。
【0090】
上記第2の実施形態で説明した群管理システムの場合でも同様であり、明らかに割当かごに乗車できる状態の場合あるいは明らかに割当かごに乗車できない状態の場合には乗車判断を行わずに割当かごを運転制御する。
【0091】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、乗りかごの無駄な停止を回避し、乗場で待つ利用者を効率的に運ぶことのできるエレベータシステムを提供することができる。
【0092】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【解決手段】一実施形態に係るエレベータシステムは、乗車率検出部31aと、待ち人数検出部31bと、乗車判断部33と、運転制御部34とを備える。乗車率検出部31aは、乗りかご12の乗車スペースを複数のエリアに分割し、これらのエリア毎に利用者の乗車率を検出する。待ち人数検出部31bは、乗場17の待ち人数を検出する。乗車判断部33、乗りかご12の各エリアの乗車率と乗場17の待ち人数とに基づいて、利用者が乗りかご12に乗車する可能性を判断する。運転制御部34は、乗車判断結果に応じて乗りかご12を乗場17で停止あるいは通過させる。