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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6629457
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】水門
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/26 20060101AFI20200106BHJP
【FI】
   E02B7/26 Z
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-535925(P2018-535925)
(86)(22)【出願日】2016年8月22日
(86)【国際出願番号】JP2016074323
(87)【国際公開番号】WO2018037437
(87)【国際公開日】20180301
【審査請求日】2019年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】515037586
【氏名又は名称】寺田 溥
(73)【特許権者】
【識別番号】515037597
【氏名又は名称】寺田 浩子
(74)【代理人】
【識別番号】100107113
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 健一
(72)【発明者】
【氏名】寺田 溥
(72)【発明者】
【氏名】寺田浩子
(72)【発明者】
【氏名】久木田祥子
(72)【発明者】
【氏名】寺田圭一
(72)【発明者】
【氏名】寺田容子
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−253715(JP,A)
【文献】 特開平9−31936(JP,A)
【文献】 特開2008−133602(JP,A)
【文献】 特開2009−91736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海に通じる水路を横切る方向に設けられ、開時は水底の格納スペースに格納され、閉時は前記格納スペースから上昇して前記水路を横切る位置に移動する扉体を備える水門において、
前記扉体は、薄肉閉断面と、前記扉体の横断面が点で拘束されている状態である断面拘束とにより特徴付けられる捩り構造体をもち、
前記扉体は、前記閉時において、前記薄肉閉断面で前記格納スペース内に高潮圧に耐える断面拘束点と、前記格納スペースの内面に接し、潮流圧に耐える反力ローラとを備え、
前記反力ローラが開閉式であることを特徴とする水門。
【請求項2】
前記扉体は、前記格納スペースの内面に接する底部止水を備え、
前記底部止水は、開閉式であることを特徴とする請求項1記載の水門。
【請求項3】
前記断面拘束点の拘束条件は、回転は自由であるが平行移動は拘束するものであり、かつ、前記断面拘束点は海側に配置されていることを特徴とする請求項2記載の水門。
【請求項4】
前記扉体は、前記閉時において、前記格納スペースに設けられる支承に係合する反力軸を備え、係合時の前記支承及び前記反力軸が前記断面拘束点を構成し、
前記反力軸は、それぞれ軸受けを内蔵する複数のハブと、複数の前記ハブの間に設けられ、前記支承に係合する軸勘合部とを備え、前記軸勘合部の断面形状は、支圧接合とするために、前記支承の内面形状と同一形状とすることを特徴とする請求項2又は請求項3いずれかに記載の水門。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流水や船舶の水路に設けられる水門に関する。水門は、高潮、津波、高水(本川から支川への逆流)、波浪、流木流入等に対応するものである。
【背景技術】
【0002】
高潮や津波などに対応するための大型の水門は、公知である。
【0003】
捩り構造は様々な利点を持ち、有利さは径間が増すに従い顕著になる。例えば、径間400m級の超大型水門の場合、扉体重量は他の構造形式の1/2〜1/3以下である。低重量は低建設コストに繋がる(特許文献1)。
【0004】
エマージング方式は公知の扉体開閉方式である。この形式の扉体は曲げ構造が採用されて来たが、本発明により捩り構造の採用が可能となり建設コストの大幅な低減が実現する。
【0005】
図1は、開閉式防潮水門のエマージング方式を示す。図1は、防潮水門の港側から見た水門の右半分を表す。図1aは、全閉状態にある扉体の平面図である。図1bは、全開状態にある扉体の平面図である。図1Aは、図1aのAA断面である。図1Bは、図1bのBB断面である。図1Cは、図1AのCC断面である。図1Dは、図1BのDD断面である。
【0006】
1は全閉状態の扉体を示す。2は全開状態の扉体である。図1の水門は、1又は2いずれかの状態をとる。
【0007】
3は扉体1の格納スペース、4は防潮水門の中心線である。
【0008】
全開状態の扉体2は格納スペース3に格納されている。使用時に上昇して、全閉状態の扉体1の位置に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2014/037987
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
捩り構造はコスト面で圧倒的利点を持つが、従来、水門への適用は軸式支承で地盤に固定されたフラップゲートに限られていた。この発明は、捩り構造をエマージング式の防潮水門に適用することを可能とし、これにより捩り構造のコスト的優位性が更に高まる。径間200m〜600m級の超大型防潮水門にも適用できる。
【0011】
この発明は、下記の課題について解決手段を開示し、エマージング式捩り構造防潮水門の実現に寄与しようとするものである。
課題1:高潮圧と潮流圧に対応する断面拘束
課題2:浮体状態と没水状態の扉体運動
課題3:断面拘束ブロック部位の位置的干渉。
課題3.1:支承と反力軸の干渉
課題3.2:支承と底部止水ゴムの干渉
課題3.3:反力ローラと止水シルの干渉
課題4:側部止水ゴムのステム方向摺動
課題5:捩りモーメントの増加
【0012】
課題1:高潮圧と潮流圧に対応する断面拘束
捩り構造は薄肉閉断面と断面拘束により特徴付けられる。断面拘束は扉体の横断面が一点で拘束されている状態で、条件は平行移動拘束、回転運動自由である。防潮扉は台風時に高潮の水圧力に耐え、開閉操作時は潮流圧を受ける。断面拘束点は二つの荷重の反力点である。荷重の性質が著しく異なるので扉体の長大化に伴い二重の断面拘束が必要になる。負荷条件の相違は以下の通りである。
(1)高潮圧の負荷条件
(a)大きさが潮流圧に比較して著しく大きい。
(b)扉体全閉状態で作用する。
(c)海側から作用する。
(d)巨大荷重を支持する拘束点が狭隘箇所に必要である。
(2)潮流圧の負荷条件
(e)高潮圧に比較して著しく小さい。
(f)開閉操作中の全開度で作用する。
(g)海側・陸側の両方向から作用する。
【0013】
課題2:浮体状態と没水状態の扉体運動
従来のエマージング式は機械式開閉装置であった。機械的開閉では浮体状態と没水状態の区別は存在しない。径間が数百メートに及ぶ超大型ゲートでは浮力タンクによる開閉が不可避と考えられる。その結果、扉体の安定性が異なる浮体状態と没水状態が発生する。以下の記述ではこれ等の定義を次の様に割り切る。自重と釣り合う浮力タンクがあって、浮力タンクが100%水没している状態を没水状態、浮力タンクが全部又は一部水面より上に露出している状態を浮体状態と呼ぶ。没水状態と浮体状態では扉体の復原力メカニズムが全く異なる。浮体状態では浮力と自重が均衡するが、没水状態では扉体は上昇状態又は下降状態にあり、静止状態を保つことは困難である。
【0014】
課題3:断面拘束ブロック部位の位置的干渉。
図2は、断面拘束ブロックを示す。ブロックは断面拘束部位と底部止水ゴムを含む。断面図は扉体と格納スペースの横断面図で、詳細Aの位置を示す。詳細Aは断面拘束ブロックを示し、詳細A(全閉)は扉体の全閉状態、詳細A(半開)は扉体の半開状態である。コンクリート壁には拘束金物(支承、止水シル(底部止水ゴム当たり)、ローラ逃げがある。半開状態に於いて扉体側にある拘束金物(反力軸)、底部止水ゴム、反力ローラは扉体と共に上昇して、全閉状態には反力軸が支承と一体となり、止水ゴムは止水シルに乗り、底部止水と断面拘束が完成する。反力ローラは上昇する扉体が受ける潮流圧の反力点として作用するが、全閉状態ではローラ逃げの位置に停止して役目を終える。断面拘束ブロックを構成する部位は、水門稼働中の開閉操作では位置的干渉は起こらない、維持管理時等に行われる扉体の戸溝への挿入操作で干渉が起こる。即ち、挿入操作での干渉課題は、(3.1)支承と反力軸、(3.2)支承と底部止水ゴム、(3.3)反力ローラと止水シルである。以下に各々の課題について説明する。
【0015】
課題3.1:支承と反力軸の干渉
図2で示されるように支承(コンクリート壁側拘束金物)と反力軸(扉体側拘束金物)は建設時や維持管理時にお互いが干渉し、扉体の戸溝内での降下・上昇が妨げられる。
【0016】
課題3.2:支承と底部止水ゴムの干渉
図2で示されるように支承(コンクリート側拘束金物)と底部止水ゴム(扉体側)は建設時や維持管理時にお互いが干渉し、扉体の戸溝内での降下・上昇が妨げられる。
【0017】
課題3.3:反力ローラと止水シルの干渉
図2で示されるように反力ローラ(扉体側)と止水シル(コンクリート壁側)は建設時や維持管理時にお互いが干渉し、扉体の戸溝内での降下・上昇が妨げられる。
【0018】
課題4:側部止水ゴムのステム方向摺動
図3は、シル上のP型止水ゴムの摺動方向を示す。クランプバーで扉体に取り付けられたゴムはバルブとステムで構成されている。図はバルブ方向とステム方向の4方向の摺動を示している。門扉が稼働中の側部止水ゴムの摺動方向はバルブ方向であり、支障無く機能する。建設時と維持管理時にはステム方向の摺動が加わるが、×印のついた方向はバルブがクランプバーとシルに挟み込まれ、止水機構の寿命が著しく低下する。
【0019】
課題5:捩りモーメントの増加
浮力タンクによる開閉方式では扉体に作用する浮力と断面拘束点に作用する下向き反力による捩りモーメントが発生するが、この方向が高潮圧による捩りモーメントと同一方向であるので扉体の捩りモーメントが増加する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
コスト的に優れた捩り構造体を使用したエマージング方式の開閉式水門を実現するためのタンク配置、二重断面拘束、サイドローラブロック、開閉式反力ローラ、開閉式底部止水、反力軸、開閉式側部止水、戸溝挿入ステップ、及び、応力低減断面拘束を提供する。タンク配置は稼働状態にある扉体の開閉操作を没水状態で行うことを可能とし、二重断面拘束は条件的に著しく異なる高潮圧と潮流圧への対応を可能とし、サイドローラブロック、開閉式反力ローラ、及び、開閉式底部止水は建設時、及び、維持管理時の開閉操作に伴うスペース的干渉を解決し、コンパクトな反力軸の提供により大荷重を受ける断面拘束点の格納スペース内狭隘箇所設置が可能となり、開閉式側部止水と戸溝挿入ステップで側部止水ゴムの損傷を防止し、応力低減断面拘束により高潮圧捩りモーメントを扉体浮力の利用で半減する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】開閉式防潮水門のエマージング方式の説明図である。
図2】捩り構造エマージング方式の断面拘束ブロックの例である。
図3】止水シル上のP型止水ゴムの摺動方向の説明図である。
図4】実施例検証に使用する計画基本データ事例である。
図5】実施例1の全体図(平面図と縦断面図)である。
図6】実施例1の全体図(横断面図)である。
図7】実施例1の扉体傾斜とタンク配置を示している。
図8】実施例1の開閉操作力を示している。
図9】実施例1の支持・止水機構を示している。
図10】実施例2を示す。実施例1の支承と反力軸の詳細である。
図11】実施例3を示す。開閉式側部止水の詳細を示している。
図12】実施例3を示す。戸溝挿入ステップを表形式で示している。
図13】実施例3を示す。戸溝挿入ステップを図形式で示している。
図14】実施例4を示す。捩りモーメントを減殺する断面拘束点の配置を示している。
図15】実施例4を示す。捩りモーメント減殺効果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図4は、防潮水門の計画データ事例である。図4の水位条件は平常時水位を設置水深で表し高潮時の潮位差を5mとしている。即ち、高潮時の港側水深が16mで高潮時の海側水深が21mである。潮位変動は常時存在していて扉体設置時、開閉操作時、高潮時の港側水位は一定であり得ない。しかし計画データの使用目的が実現性検証であり、単純化の為に扉体設置時、開閉操作時、及び、高潮時の港側水深を一定として設置水深で表した。明細書の中では港側水深を設置水位、高潮時の海側水深を高潮水位とも呼ぶ。又、表中の鋼重はバラストを除く超概算値である。
【実施例1】
【0023】
図5図9は、図4のデータに基づいた実施例で、エマージング移動式捩り構造防潮水門を示す。
【0024】
図5は、防潮水門の港側から見た水門の右半分を表す。図5aは全閉状態の平面図である。図5bは、全開状態の平面図である。図5Aは、図5aのAA断面である。図5B図5bのBB断面である。図5a及び図5bにおいて、上側が海側、下側が港側である。
【0025】
5は全閉状態の扉体を示す。6は全開状態の扉体を示す。図5の水門は5又は6いずれかの状態をとる。
【0026】
7は格納スペース、8は防潮水門の中心線、9は全閉状態の間隙ゲート、10は全開状態の間隙ゲート、11はサイドローラブロック、12はサイドローラガイド、13は水密隔壁、14は断面拘束ブロック、15は底部ローラ、16は底部ローラ受けである。
【0027】
扉体5及び扉体6の横断面は薄肉閉断面である。
【0028】
図6は、図5に示す水門の横断面図である。図6Cは、図5AのCC断面である。図6Dは、図5AのDD断面である。図6Eは、図5BのEE断面である。図6Fは、図5BのFF断面である。図6C図6Fにおいて、右側が海側、左側が港側である。
【0029】
17は偶力楔、18は左均衡タンク、19は右均衡タンク、20は設置潮位、21は高潮潮位である。図6において、図5と同一部分については同一符号を付している。
【0030】
図7は扉体傾斜とそれに関わる浮力と重力、及び、タンク18、19、19aの配置を示す。
【0031】
扉体傾斜は没水状態の沈降時と上昇時、及び、浮体状態を示している。没水状態の傾斜はローラ摩擦によるものである。浮体状態の傾斜は扉体重心と浮力中心のずれによるものであるが、傾斜緩和の目的でバラストを積載している。浮体状態の安定性は大きいのでローラ摩擦の影響を無視している(前述の課題「課題2:浮体状態と没水状態の扉体運動」に対応。扉体傾斜に関わる力は作用箇所と方向を矢印で示した)。
【0032】
タンク配置は左右均衡タンク18、19と沈降タンク19aを備え、均衡タンク18、19の浮力は扉体自重より若干大きく中心が扉体重心と一致し、その天頂高さが設置潮位に等しい(図6C及び図6Dの左均衡タンク18、右均衡タンク19、設置水位20を参照)。沈降タンク19aは右均衡タンク19内に設置され、その中心は扉体重心に一致している。均衡タンク18,19の容積から沈降タンク19aの容積を差し引いた浮力は、扉体5の自重より若干小さい。左均衡タンク18と右均衡タンク19は没水状態で、稼働時開閉操作は沈降タンクに注・排水して行う(前述の課題「課題2:浮体状態と没水状態の扉体運動」に対応)。
【0033】
図8は、開閉操作に必要な沈降力又は上昇力を没水状態の沈降時と上昇時、及び、浮体状態について示している。図中の重力および浮力は、図7に示す矢印に対応する。浮体状態での開閉操作は扉体内空気の注入/排除で行われる。
【0034】
図9は、扉体の支持・止水機構を示す。図9aは、図5Aに示す全閉状態の扉体5の右端部詳細である。図9Aは、図9aのAA断面である。図9Bは、図9aのBB断面である。図9Cは、図9aのCC断面である。図9Dは、図9Bの詳細Dである。図9Eは、図9aの詳細Eである。図9Fは、図9EのFF断面である。図9Gは、図9EのGG断面であり、断面拘束ブロック14を示す。図9bは、図9Gの全閉状態の扉体5が降下中の状態を示す。
【0035】
22が主ローラ、23が底部止水ゴム、24が側部止水ゴム、25が支承、26が反力軸、27が反力ローラ、28が回転軸である。図9において、図5又は図6と同一部分については同一符号を付している。
【0036】
断面拘束ブロック14は、支承25、反力軸26、底部止水ゴム23、反力ローラ27を備えている。
【0037】
全閉状態の扉体5に作用する高潮圧は、支承25と反力軸26(高潮圧の断面拘束点)で受ける。その反力と高潮圧で形成する捩りモーメントは捩り剛性で扉体5の右端末に伝達され、偶力楔17に作用する偶力と釣り合う。開閉操作中に作用する潮流圧は反力ローラ27(潮流圧の断面拘束点)で受ける。その反力と潮流圧で形成する捩りモーメントは捩り剛性で扉体右端末に伝達され、主ローラ22に作用する偶力と釣り合う(前述の課題「課題1:高潮圧と潮流圧に対応する断面拘束」に対応。
【0038】
サイドローラブロック11は扉体5と軸結合されていて、建設時や維持管理時に軸を中心としたブロック11の回転による扉体位置の戸溝内変更で支承25と反力軸26の位置的干渉回避が可能である(前述の課題「課題3.1:支承と反力軸の干渉」に対応)。底部止水ゴム23と反力ローラ27は一体構造で、建設時や維持管理時に回転軸28を中心に回転して扉体・コンクリート間隙を開く。これにより支承25と底部止水ゴム23の位置的干渉回避が可能である(前述の課題「課題3.2:支承と底部止水ゴムの干渉」に対応)。また、反力ローラ27と図2に示す止水シルの位置的干渉回避が可能である(前述の課題「課題3.3:反力ローラと止水シルの干渉」に対応)。
底部止水ゴム23と反力ローラ27の干渉問題を開閉方式で解決する方法として回転軸28を中心とする垂直面内回転を示したが、開閉方式は水平面内回転、水平面内平行移動などもある。これを実現する機械機構は回転軸の他にスライド機構、リンク機構などもある。
【0039】
側部止水ゴム24は扉体5に固定されていて底部止水ゴム23の様な回転軸28を持たない。図3に示すステム方向摺動(×印)の回避は建設時や維持管理時に行う扉体5の戸溝挿入ステップの中で行う(後に再度説明)。
【実施例2】
【0040】
図10は、図4のデータに基づいた実施例で、実施例1の支承25と反力軸26の詳細を示す。
【0041】
図10aは、図9bの拡大図で断面拘束ブロック14の側面図である。図10Aは、図10aのAA断面で支承25の正面図である。図10Bは、図10aのBB断面で反力軸26の正面図である。図10Cは、図10BのCC断面である。図10D図10BのDD断面である。図10Eは、図10BのEE断面である。図10Fは、図10BのFF断面である。
【0042】
29がハブ、30が無給油軸受け、31が支承25と勘合する反力軸26の軸勘合部である。図10において、図9と同一部分については同一符号を付している。
【0043】
支承25と反力軸26は、扉体とコンクリート壁に挟まれた狭隘間隙に設置される。荷重は高潮圧であって極めて大きく、潮流圧の50倍(約1000tf)に達する。反力軸26の軸勘合部31は蒲鉾形状(hog-backed)として支圧面設計を適用する。反力軸26の両端に無給油軸受け30を内蔵したハブ29を配置して静荷重設計を適用し、支承25及び反力軸26の全体の小型化を図る。反力軸の軸受け面は高潮圧により最大3.8mm摺動する。潮位変化は緩慢(6時間程度)であるので、無給油軸受け30への静荷重設計適用が可能である(前述の課題「課題1:高潮圧と潮流圧に対応する断面拘束(1)高潮圧の負荷条件」に対応)。
【実施例3】
【0044】
図11〜13は、図4のデータに基づいた実施例である。図12及び図13は、開閉式側部止水と実施例1の側部止水(以後、固定式側部止水、又は、固定式と呼ぶ)の扉体挿入ステップを示す。
【0045】
図11は、開閉式側部止水の詳細を示す。図11aは、図5Aに示す全閉状態の扉体5の右端部付近の詳細である。図11bは、図11aの扉体5が建設時や維持管理時に戸溝に挿入される時の右端部付近の詳細である。図11Aは、図11aの詳細Aである。図11Bは、図11AのBB断面である。図11Cは、図11AのCC断面である。図11Dは、図11bの詳細Dである。図11Eは、図11DのEE断面である。図11Fは、図11DのFF断面である。
【0046】
32は側部止水ゴム24の回転軸である。図11において、図9と同一部分については同一符号を付している。
【0047】
図11が示す対象は側部止水ゴム24であるが、底部止水ゴム23は側部止水ゴム24と取り合い関係にあるので、底部止水ゴム23も表示した。
【0048】
開閉式と固定式の構造的相違は止水ゴムコーナー部の所属(底部か側部か)及び側部止水ゴム24の回転軸の有無であり、また、稼働時の扉体操作は全く相違がなく、維持管理時の戸溝挿入ステップに相違が現れる。
【0049】
図12図13は開閉式(実施例3)と固定式(実施例1)の戸溝挿入ステップを示す。
【0050】
図12は、各ステップの作業内容とサイドローラ、反力ローラ、底部止水、側部止水の開閉状態を表形式で示す。
【0051】
図13は、図12の内容を図形式で示す。
【0052】
両形式のステップ1〜3は同一内容で、ステップ4と5で側部止水の取り扱いに相違が現れる。
【0053】
開閉式はステップ4でサイドローラを閉じて扉体5を稼働位置に移動し、ステップ5で側部止水を閉じて図3に示すステム方向摺動(×印)を回避する(前述の課題「課題4:側部止水ゴムのステム方向摺動」に対応)。開閉式は全ステップが浮体状態で行われ、扉体5を全開位置迄移動ぜずに終了する。
【0054】
固定式はステップ4で扉体5を全開位置(扉体6の高さ)迄下げ、ステップ5でサイドローラを閉じて扉体5を稼働位置に移動する。側部止水ゴム24の止水シルが全開位置に存在しないので、図3に示したステム方向摺動(×印)が回避できる(前述の課題「課題4:側部止水ゴムのステム方向摺動」に対応)。ステップ5は没水状態で行われるが、底部ローラ15(図5参照)により扉体5の移動を円滑に行うことができる(前述の課題「課題2:浮体状態と没水状態の扉体運動」に対応)。
【0055】
以上は扉体挿入時の説明であるが、抜き取り時の作業ステップは挿入ステップと逆になる。
【実施例4】
【0056】
図14図15は、図4のデータに基づいた実施例で、浮力を利用して捩りモーメントを減殺する断面拘束点配置とその効果を示す。
【0057】
図14は、断面拘束点配置を示す。図14aは、全閉状態の扉体5右端末付近の平面図である。図14Aは、図14aのAA断面である。図14Bは、図14AのBB断面である。図14Cは、図14Bの詳細Cである。図14Dは、図14Bの詳細Dである。図14Dは、断面拘束点を示す。
【0058】
図14において、図5又は図9と同一部分については同一符号を付している。
【0059】
実施例1と異なる点は、高潮圧に対する断面拘束点(支承25と反力軸26)を海側に配置し、左右均衡タンク18と19の天端を扉体天端に合わせることである。潮流圧に対する断面拘束点(反力ローラ27)と底部止水ゴム23の配置は実施例1と変わらない。
【0060】
図15は断面拘束点配置の効果をグラフで示す。高潮捩りモーメント及び実施例1と実施例4の高潮圧と浮力の合計捩りモーメントを、海側水深を横軸としてパーセント表示している。設置水深が16m、高潮水深が21mである。高潮時の浮力影響は実施例1では7%の捩りモーメントの増加であるのに対して実施例4では53%の減殺となる。コンクリート壁の荷重負担が増加するが、大きなコスト的メリットに変わりはない(前述の課題「課題5:捩りモーメントの増加」に対応)。
【符号の説明】
【0061】
5 扉体(全閉状態)
6 扉体(全開状態)
7 格納スペース
8 防潮水門の中心線
9 間隙ゲート(全閉状態)
10 間隙ゲート(全開状態)
11 サイドローラブロック
12 サイドローラガイド
13 水密隔壁
14 断面拘束ブロック
15 底部ローラ
16 底部ローラ受け
17 偶力楔
18 左均衡タンク
19 右均衡タンク
19a 沈降タンク
20 設置水位
21 高潮水位
22 主ローラ
23 底部止水ゴム(底部止水)
24 側部止水ゴム
25 支承
26 反力軸
27 反力ローラ
28 反力ローラ27の回転軸
29 ハブ
30 無給油軸受け
31 支承25と勘合する反力軸26の軸勘合部
32 側部止水ゴム24の回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図15