特許第6629467号(P6629467)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6629467
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】通信装置、通信方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/02 20090101AFI20200106BHJP
   H04W 52/18 20090101ALI20200106BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20200106BHJP
【FI】
   H04W72/02
   H04W52/18
   H04W84/10 110
【請求項の数】12
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-563214(P2018-563214)
(86)(22)【出願日】2017年12月12日
(86)【国際出願番号】JP2017044496
(87)【国際公開番号】WO2018135185
(87)【国際公開日】20180726
【審査請求日】2019年3月5日
(31)【優先権主張番号】特願2017-8779(P2017-8779)
(32)【優先日】2017年1月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(72)【発明者】
【氏名】矢端 哲也
【審査官】 松野 吉宏
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/087592(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0264471(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0341108(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 − 7/26
H04W 4/00 − 99/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ異なる周波数帯域が割り当てられた一群のチャンネルを用いて通信を行う通信装置であって、
通信に利用可能な複数の前記チャンネルの中から、自機において妨害を受けていない前記チャンネルを特定するチャンネル特定部と、
通信相手において妨害を受けていない前記チャンネルに関するチャンネル情報を取得する第1情報取得部と、
前記チャンネル特定部において特定された前記チャンネルと、前記第1情報取得部において取得された前記チャンネル情報とに基づいて、所定数以上の前記チャンネルを前記一群のチャンネルとして選択するチャンネル群選択部とを備え、
前記チャンネル群選択部は、前記自機と前記通信相手との双方において妨害を受けていない少なくとも1つの前記チャンネルを、前記一群のチャンネルの少なくとも一部として選択するとともに、前記自機と前記通信相手との双方において妨害を受けていない前記チャンネルの数が前記所定数に達しない場合、前記自機又は前記通信相手のうち、送信電力が小さい方のみにおいて妨害を受けている少なくとも1つの前記チャンネルを、前記一群のチャンネルの少なくとも一部として更に選択する、
通信装置。
【請求項2】
前記通信相手の送信電力に関する送信電力情報を取得する第2情報取得部を備え、
前記チャンネル群選択部は、前記送信電力情報が示す前記通信相手の送信電力と前記自機の送信電力との比較に基づいて、前記自機と前記通信相手との間における送信電力の大小関係を判定する、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
妨害を受けている少なくとも1つの前記チャンネルが前記一群のチャンネルの一部として前記チャンネル群選択部により選択される場合に、前記自機と前記通信相手とのうちの少なくとも一方の送信電力を増大させる制御を行う送信電力制御部を備える、
請求項1又は2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記送信電力制御部は、送信電力を増大させる前記制御を行った後、前記チャンネル群選択部において選択される前記一群のチャンネルの中に妨害を受けている前記チャンネルが含まれなくなった場合、前記自機と前記通信相手とのうちの少なくとも一方の送信電力を元に戻す制御を行う、
請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記チャンネル群選択部は、前記自機又は前記通信相手のうち、送信電力が大きい方において妨害を受けている複数のチャンネルの少なくとも一部が周波数帯域として連続している場合、当該連続したチャンネルに隣接する前記チャンネルを前記一群のチャンネルから除外する、
請求項1乃至4の何れか一項に記載の通信装置。
【請求項6】
前記チャンネル群選択部は、前記自機と前記通信相手との双方において妨害を受けていない前記チャンネルの数が前記所定数に達しない場合、前記自機又は前記通信相手において妨害を受けている前記チャンネルに比べて、前記隣接するチャンネルを優先して選択する、
請求項5に記載の通信装置。
【請求項7】
前記一群のチャンネルに順番を設定し、通信に用いる前記チャンネルを前記設定した順番で所定時間毎に切り替える制御を行う通信制御部を備える、
請求項1乃至6の何れか一項に記載の通信装置。
【請求項8】
それぞれ異なる周波数帯域が割り当てられた一群のチャンネルを用いて通信を行う通信装置による通信方法であって、
通信に利用可能な複数の前記チャンネルの中から、自機において妨害を受けていない前記チャンネルを特定するチャンネル特定工程と、
通信相手において妨害を受けていない前記チャンネルに関するチャンネル情報を取得する第1情報取得工程と、
前記チャンネル特定工程において特定された前記チャンネルと、前記第1情報取得工程において取得された前記チャンネル情報とに基づいて、所定数以上の前記チャンネルを前記一群のチャンネルとして選択するチャンネル群選択工程とを有し、
前記チャンネル群選択工程では、前記自機と前記通信相手との双方において妨害を受けていない少なくとも1つの前記チャンネルを、前記一群のチャンネルの少なくとも一部として選択するとともに、前記自機と前記通信相手との双方において妨害を受けていない前記チャンネルの数が前記所定数に達しない場合、前記自機又は前記通信相手のうち、送信電力が小さい方のみにおいて妨害を受けている少なくとも1つの前記チャンネルを、前記一群のチャンネルの少なくとも一部として更に選択する、
通信方法。
【請求項9】
前記通信相手の送信電力に関する送信電力情報を取得する第2情報取得工程を有し、
前記チャンネル群選択工程では、前記送信電力情報が示す前記通信相手の送信電力と前記自機の送信電力との比較に基づいて、前記自機と前記通信相手との間における送信電力の大小関係を判定する、
請求項8に記載の通信方法。
【請求項10】
妨害を受けている少なくとも1つの前記チャンネルが前記一群のチャンネルの一部として前記チャンネル群選択工程により選択される場合に、前記自機と前記通信相手とのうちの少なくとも一方の送信電力を増大させる制御を行う送信電力制御工程を有する、
請求項8又は9に記載の通信方法。
【請求項11】
前記チャンネル群選択工程では、前記自機又は前記通信相手のうち、送信電力が大きい方において妨害を受けている複数のチャンネルの少なくとも一部が周波数帯域として連続している場合、当該連続したチャンネルに隣接する前記チャンネルを前記一群のチャンネルから除外する、
請求項8乃至10の何れか一項に記載の通信方法。
【請求項12】
請求項8乃至11の何れか一項に記載される通信方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれ異なる周波数帯域が割り当てられた複数のチャンネルを用いて通信を行う通信装置に係り、例えば、周波数ホッピングなどのスペクトラム拡散方式により通信を行なう通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近距離無線通信の通信規格の1つにBluetooth(登録商標)と称する通信規格がある。この通信規格では、2.4GHzのISM(Industrial, Scientific and Medical)バンドを用いて周波数ホッピングにより通信(無線通信)が行われる。具体的には、2.402〜2.480GHzの連続した周波数帯域が各々1MHzの帯域幅を持つ79個のチャンネルに区分され、通信に使用するチャンネルが625μsごとに切り替えられる。
【0003】
2.4GHzのISMバンドはIEEE802.11の無線LANや電子レンジなどでも使用されるため、これらの機器で発生する電波が前述した通信規格での通信に干渉する場合がある。そこで前述した通信規格のバージョン1.2では、AFH(Adaptive Frequency Hopping)と称される改良された周波数ホッピングが導入されている。AFHでは、妨害を受けたチャンネルを一時的に避けて周波数ホッピングを行われる(下記の特許文献1〜3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−529431号公報
【特許文献2】特開2005−303379号公報
【特許文献3】特開2006−287714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無線LANなどの電波による妨害の受け方は、通信装置の場所に応じて異なる。すなわち、一方の通信装置において妨害を受けているチャンネルと、他方の通信装置において妨害を受けているチャンネルとが一致しない場合がある。そのため、AFHでは、双方の通信装置において妨害を受けていないチャンネルを選択することが望ましい。しかしながら、双方の通信装置で妨害を受けていないチャンネルを選択する場合、一方のみで妨害を受けているチャンネルは選択できなくなるため、選択可能なチャンネルの数が少なくなり易い。前述した通信規格では、周波数ホッピングに使用されるチャンネルの必要最小数が「20」と定められていることから、双方の通信装置で妨害を受けていないチャンネルの数が20より小さくなった場合、妨害を受けているチャンネルも周波数ホッピングに使用せざるを得なくなる。妨害を受けているチャンネルが使用されると、エラーによる再送信が発生し易くなり、通信の品質が低下するという問題がある。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、外来電波等により妨害を受けた場合でも通信品質の低下を抑制できる通信装置とその通信方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点は、それぞれ異なる周波数帯域が割り当てられた一群のチャンネルを用いて通信を行う通信装置に関する。この通信装置は、通信に利用可能な複数の前記チャンネルの中から、自機において妨害を受けていない前記チャンネルを特定するチャンネル特定部と、通信相手において妨害を受けていない前記チャンネルに関するチャンネル情報を取得する第1情報取得部と、前記チャンネル特定部において特定された前記チャンネルと、前記第1情報取得部において取得された前記チャンネル情報とに基づいて、所定数以上の前記チャンネルを前記一群のチャンネルとして選択するチャンネル群選択部とを備える。前記チャンネル群選択部は、前記自機と前記通信相手との双方において妨害を受けていない少なくとも1つの前記チャンネルを、前記一群のチャンネルの少なくとも一部として選択するとともに、前記自機と前記通信相手との双方において妨害を受けていない前記チャンネルの数が前記所定数に達しない場合、前記自機又は前記通信相手のうち、送信電力が小さい方のみにおいて妨害を受けている少なくとも1つの前記チャンネルを、前記一群のチャンネルの少なくとも一部として更に選択する。
【0008】
この構成によれば、前記自機と前記通信相手との双方において妨害を受けていない前記チャンネルの数が前記所定数に達しない場合、前記自機又は前記通信相手のうち、送信電力が小さい方のみにおいて妨害を受けている少なくとも1つの前記チャンネルが、前記一群のチャンネルの少なくとも一部として選択される。すなわち、送信電力が小さい方のみにおいて妨害を受けている前記チャンネルが、通信に使用される。送信電力が小さい方は、送信電力が大きい方に比べて、相手方から送られてくる電波の受信信号強度が相対的に大きいため、外来電波等の妨害の影響を相対的に受け難い。従って、送信電力が小さい方のみにおいて妨害を受けている前記チャンネルは、送信電力が大きい方のみにおいて妨害を受けている前記チャンネルや、双方において妨害を受けている前記チャンネルに比べて、外来電波等の影響を相対的に受け難い。そのため、外来電波等により妨害を受けた場合の通信品質の低下が抑制され易くなる。
【0009】
好適に、上記通信装置は、前記通信相手の送信電力に関する送信電力情報を取得する第2情報取得部を備えてよい。前記チャンネル群選択部は、前記送信電力情報が示す前記通信相手の送信電力と前記自機の送信電力との比較に基づいて、前記自機と前記通信相手との間における送信電力の大小関係を判定してよい。
【0010】
この構成によれば、前記送信電力情報が示す前記通信相手の送信電力と前記自機の送信電力との比較に基づいて、前記自機と前記通信相手との間における送信電力の大小関係が判定される。そのため、前記通信相手に応じて送信電力の大小関係が変化しても、外来電波等により妨害を受けた場合の通信品質の低下が抑制され易くなる。
【0011】
好適に、上記通信装置は、妨害を受けている少なくとも1つの前記チャンネルが前記一群のチャンネルの一部として前記チャンネル群選択部により選択される場合に、前記自機と前記通信相手とのうちの少なくとも一方の送信電力を増大させる制御を行う送信電力制御部を備えてよい。
【0012】
この構成によれば、妨害を受けている前記チャンネルが前記一群のチャンネルの一部として選択された場合でも、前記自機と前記通信相手とのうちの少なくとも一方の送信電力が増大することにより、前記自機と前記通信相手とのうちの少なくとも他方における受信信号強度が大きくなり、外来電波等による妨害を受け難くなる。
【0013】
好適に、前記送信電力制御部は、送信電力を増大させる前記制御を行った後、前記チャンネル群選択部において選択される前記一群のチャンネルの中に妨害を受けている前記チャンネルが含まれなくなった場合、前記自機と前記通信相手とのうちの少なくとも一方の送信電力を元に戻す制御を行なってよい。
【0014】
この構成によれば、妨害を受けている前記チャンネルが前記一群のチャンネルの中に含まれなくなると、増大させていた送信電力が元に戻される。これにより、送信電力を増大させたままにする場合に比べて、前記自機の消費電力が減少する。
【0015】
好適に、前記チャンネル群選択部は、前記自機又は前記通信相手のうち、送信電力が大きい方において妨害を受けている複数のチャンネルの少なくとも一部が周波数帯域として連続している場合、当該連続したチャンネルに隣接する前記チャンネルを前記一群のチャンネルから除外してよい。
【0016】
この構成によれば、送信電力が大きい方において妨害を受けている複数のチャンネルの少なくとも一部が周波数帯域として連続している場合、当該連続した周波数帯域は、無線LANの無線信号等による妨害を受けている可能性がある。この場合、当該連続した周波数帯域に隣接する前記チャンネルも、無線信号等の影響を受け易い。従って、前記隣接するチャンネルを前記一群のチャンネルから除外することにより、無線信号等による妨害を更に受け難くなる。
【0017】
好適に、前記チャンネル群選択部は、前記自機と前記通信相手との双方において妨害を受けていない前記チャンネルの数が前記所定数に達しない場合、前記自機又は前記通信相手において妨害を受けている前記チャンネルに比べて、前記隣接するチャンネルを優先して選択してよい。
【0018】
この構成によれば、前記自機と前記通信相手との双方において妨害を受けていない前記チャンネルの数が前記所定数に達しない場合、前記自機又は前記通信相手において妨害を受けている前記チャンネルに比べて、前記隣接するチャンネルが優先的に前記一群のチャンネルとして選択される。前記隣接するチャンネルは、無線信号等の影響を受ける可能性があるものの、妨害の程度が比較的軽微である。そのため、前記隣接するチャンネルが優先的に前記一群のチャンネルとして選択されることにより、通信の品質の低下が抑制され易くなる。
【0019】
好適に、上記通信装置は、前記一群のチャンネルに順番を設定し、通信に用いる前記チャンネルを前記設定した順番で所定時間毎に切り替える制御を行う通信制御部を備えてよい。
【0020】
この構成によれば、前記一群のチャンネルに順番が設定され、通信に用いられる前記チャンネルが前記順番に従って所定時間毎に切り替わる。
【0021】
本発明の第2の観点は、それぞれ異なる周波数帯域が割り当てられた一群のチャンネルを用いて通信を行う通信装置による通信方法に関する。この通信方法は、通信に利用可能な複数の前記チャンネルの中から、自機において妨害を受けていない前記チャンネルを特定するチャンネル特定工程と、通信相手において妨害を受けていない前記チャンネルに関するチャンネル情報を取得する第1情報取得工程と、前記チャンネル特定工程において特定された前記チャンネルと、前記第1情報取得工程において取得された前記チャンネル情報とに基づいて、所定数以上の前記チャンネルを前記一群のチャンネルとして選択するチャンネル群選択工程とを有する。前記チャンネル群選択工程では、前記自機と前記通信相手との双方において妨害を受けていない少なくとも1つの前記チャンネルを、前記一群のチャンネルの少なくとも一部として選択するとともに、前記自機と前記通信相手との双方において妨害を受けていない前記チャンネルの数が前記所定数に達しない場合、前記自機又は前記通信相手のうち、送信電力が小さい方のみにおいて妨害を受けている少なくとも1つの前記チャンネルを、前記一群のチャンネルの少なくとも一部として更に選択する、
【0022】
好適に、上記通信方法は、前記通信相手の送信電力に関する送信電力情報を取得する第2情報取得工程を有してよい。そして、前記チャンネル群選択工程では、前記送信電力情報が示す前記通信相手の送信電力と前記自機の送信電力との比較に基づいて、前記自機と前記通信相手との間における送信電力の大小関係を判定してよい。
【0023】
好適に、上記通信方法は、妨害を受けている少なくとも1つの前記チャンネルが前記一群のチャンネルの一部として前記チャンネル群選択工程により選択される場合に、前記自機と前記通信相手とのうちの少なくとも一方の送信電力を増大させる制御を行う送信電力制御工程を有してよい。
【0024】
好適に、前記チャンネル群選択工程では、前記自機又は前記通信相手のうち、送信電力が大きい方において妨害を受けている複数のチャンネルの少なくとも一部が周波数帯域として連続している場合、当該連続したチャンネルに隣接する前記チャンネルを前記一群のチャンネルから除外してよい。
【0025】
本発明の第3の観点は、上記通信方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、外来電波等により妨害を受けた場合でも、通信品質の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1の実施形態に係る通信装置の構成の一例を示す図である。
図2】第1の実施形態に係る通信装置において周波数ホッピングに用いる一群のチャンネルを選択する方法を説明するための図である。
図3】第1の実施形態に係る通信装置におけるチャンネル特定工程の処理の例を説明するためのフローチャートである。
図4】第1の実施形態に係る通信装置における第1情報取得工程及び第2情報取得工程の処理の例を説明するためのフローチャートである。
図5】第1の実施形態に係る通信装置におけるチャンネル群選択工程の処理の例を説明するためのフローチャートである。
図6】第2の実施形態に係る通信装置の構成の一例を示す図である。
図7】第2の実施形態に係る通信装置におけるチャンネル群選択工程及び送信電力制御工程の処理の例を説明するためのフローチャートである。
図8】第3の実施形態に係る通信装置において周波数ホッピングに用いる一群のチャンネルを選択する方法を説明するための図である。
図9】第3の実施形態に係る通信装置におけるチャンネル群選択工程の処理の例を説明するためのフローチャートである。
図10】第3の実施形態に係る通信装置において周波数ホッピングに用いる一群のチャンネルを選択する方法の一変形例を説明するための図である。
図11】第3の実施形態に係る通信装置におけるチャンネル群選択工程の処理の一変形例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る通信装置1及び2の構成の一例を示す図である。通信装置1及び2は、それぞれ異なる周波数帯域が割り当てられた一群のチャンネルを用いて、周波数ホッピングにより通信を行う。ここでは一例として、通信装置1及び2は、Bluetooth(登録商標)と称する通信規格に準拠した通信を行なうものとする。例えば通信装置1及び2は、この通信規格に対応した通信機能を有する電子機器や、各種の電子機器においてこの通信規格に対応した通信機能を司る通信モジュールを含む。
【0029】
図1に示すように、通信装置1は接続(無線による通信接続)する側の装置であるマスタとして機能し、通信装置2は接続される側の装置であるスレーブとして機能する。本実施形態では、通信装置1が本発明の自機に相当する通信装置となり、通信装置2が本発明の通信相手に相当する通信装置となる。尚、通信装置1は、例えばカーナビゲーション装置やオーディオ装置、パーソナルコンピュータなどに搭載される。通信装置2は、例えばスマートフォンやタブレット、ウェアラブル機器などに搭載される。
【0030】
また、前述した通信規格では、送信電力に応じた3つのクラスが規定されている。クラス1の送信電力が最も大きく(100mW)、クラス2の送信電力が中程度(10mW)であり、クラス3の送信電力が最も小さい(1mW)。電波の到達距離の目安は、クラス1で100m、クラス2で10m、クラス3で1mである。一般に、バッテリで動作する機器(スマートフォンなど)はクラス2に設定され、外部電源を供給される機器(オーディオ装置、カーナビゲーション装置など)はクラス1に設定される。ここでは一例として、マスタの通信装置である通信装置1がクラス1で動作し、スレーブの通信装置である通信装置2がクラス2で動作するものとする。すなわち、図1の矢印の太さで表すように、通信装置1は通信装置2に比べて出力可能な送信電力が大きい。
【0031】
図2は、本実施形態に係る通信装置1において周波数ホッピングに用いる一群のチャンネルを選択する方法を説明するための図である。図2A及び図2Bにおいて、上側の2段は、前述した通信方式の通信で利用可能な全チャンネル(79チャンネル)のうち妨害を受けていないチャンネルを示し、下側の1段は、周波数ホッピング用に選択された一群のチャンネルを示す。
【0032】
図2Aにおいて示すように、本実施形態では、通信装置1と通信装置2との双方において妨害を受けていないチャンネルが、一群のチャンネルとして選択される。図2Aの例では、チャンネル範囲E1,E2及びE3に属するチャンネルが一群のチャンネルとして選択されている。図2Aの例において一群のチャンネル(E1〜E3)として選択されたチャンネルの数は、前述した通信方式で規定される周波数ホッピングの必要最小数(20チャンネル)より多い。
【0033】
一方、図2Bの例では、通信装置1と通信装置2との双方において妨害を受けていないチャンネルの数が20チャンネルより少ない。すなわち、通信装置1及び2の双方で妨害を受けていないチャンネルのみでは、周波数ホッピングの必要最小数を満たすことができない。この場合、本実施形態では、送信電力が相対的に小さい通信装置2のみで妨害を受けているチャンネルの中から、周波数ホッピング用の不足分のチャンネルが選択される。図2Bの例では、チャンネル範囲E4中の斜線の範囲E4xがこれに該当する。送信電力はマスタの通信装置1の方が大きいため、受信信号強度はスレーブの通信装置2の方が大きくなる。従って、通信装置2のみで妨害を受けているチャンネルを周波数ホッピング用に選択することにより、通信装置1のみで妨害を受けているチャンネルや、通信装置1及び2の双方で妨害を受けているチャンネルを選択する場合に比べて、通信の品質の低下が抑制される。
【0034】
通信装置1は、図1の例において、通信処理部10と、記憶部11と、無線送受信部12と、アンテナ13を有する。
【0035】
無線送受信部12は、前述した通信方式に従って、2.4GHz帯の無線通信を行う。具体的には、無線送受信部40は、1スロット(625μ秒)ごとにチャンネルを切り替える周波数ホッピング・スペクトラム拡散(Frequency Hopping Spread Spectrum)により無線通信を行う。無線送受信部12は、通信処理部10から入力される送信データに変調、周波数変換、電力増幅などの信号処理を施して2.4GHz帯のRF信号を生成し、アンテナ13から電波として送信する。また、通信処理部10は、アンテナ13で受信された電波による2.4GHz帯のRF信号に増幅、周波数変換、復調などの信号処理を施して受信データを生成し、通信処理部10に出力する。
【0036】
通信処理部10は、前述した通信方式の通信プロトコルに基づいて通信の各種の処理を行う。通信処理部10は、例えば記憶部11に格納されるプログラム110に基づいて命令を実行するコンピュータ(マイクロプロセッサ等)を含む。通信処理部10は、全ての処理をコンピュータによって実行してもよいし、少なくとも一部の処理を専用のロジック回路によって実行してもよい。また通信処理部10は、1つのIC上に形成されてもよいし、複数のICから構成されてもよい。
【0037】
通信処理部10は、図1の例において、チャンネル特定部100と、第1情報取得部101と、第2情報取得部102と、チャンネル群選択部103と、通信制御部105とを含む。
【0038】
チャンネル特定部100は、周波数ホッピングに利用可能な全チャンネル(79チャンネル)の中から、通信装置1において妨害を受けていないチャンネル(以下、「非妨害チャンネル」と記す場合がある。)を特定する。例えば、チャンネル特定部100は、通信を行なっていない期間における各チャンネルの受信信号強度を無線送受信部12から取得し、この無通信時の受信信号強度が所定のしきい値より小さいか否かを各チャンネルについて判定する。チャンネル特定部100は、無通信時の受信信号強度がしきい値より小さいチャンネルを、非妨害チャンネルとして特定する。
【0039】
また、チャンネル特定部100は、各チャンネルにおける受信データのエラーレート(例えば所定数のパケットにおける誤り検出頻度など)を算出して、所定のしきい値と比較してもよい。この場合、チャンネル特定部100は、エラーレートがしきい値より小さいチャンネルを、非妨害チャンネルとして特定する。
【0040】
第1情報取得部101は、通信装置2における非妨害チャンネルに関するチャンネル情報を取得する。例えば第1情報取得部101は、前述した通信方式のプロトコルスタックの上位レイヤから下位レイヤへHCI(Host Controller Interface)を介して「HCI_Read_AFH_Channel_Map」コマンドを送る。第1情報取得部101は、このコマンドにより、通信装置2において各チャンネルが妨害を受けているか否かを示す情報(チャンネル情報)を通信装置2から取得する。
【0041】
第2情報取得部102は、通信装置2の送信電力に関する送信電力情報を取得する。例えば第2情報取得部102は、通信装置2との接続を開始する際、通信装置2における送信電力のクラスの情報を送信電力情報として取得する。
【0042】
チャンネル群選択部103は、周波数ホッピングに使用されるチャンネルの選択を行う。すなわち、チャンネル群選択部103は、チャンネル特定部100において特定された通信装置1の非妨害チャンネルと、第1情報取得部101において取得された通信装置2の非妨害チャンネルに関するチャンネル情報とに基づいて、通信装置1と通信装置2との双方において妨害を受けていない20以上のチャンネルを、周波数ホッピングに使用される一群のチャンネルとして選択する。
【0043】
また、チャンネル群選択部103は、通信装置1と通信装置2との双方において妨害を受けていないチャンネルの数が20(周波数ホッピングの必要最小数)に達しない場合、通信装置1又は通信装置2のうち、送信電力が小さい方のみにおいて妨害を受けている少なくとも1つのチャンネル(以下、「妨害チャンネル」と記す場合がある。)を、周波数ホッピングに使用される一群のチャンネルの少なくとも一部として選択する。本実施形態では、一例として、通信装置1の送信電力が通信装置2より大きいものとしているため、チャンネル群選択部103は、一群のチャンネルに必要な20チャンネルに対する不足分を、通信装置2における少なくとも1つの妨害チャンネルから選択する。
【0044】
なお、通信装置1と通信装置2との間における送信電力の大小関係が変化し得る場合、チャンネル群選択部103は、第2情報取得部102で取得された送信電力情報が示す通信相手の送信電力と自機の送信電力との比較に基づいて、通信相手と自機との間における送信電力の大小関係を判定してもよい。
【0045】
チャンネル群選択部103は、周波数ホッピングに使用する一群のチャンネルを選択すると、プロトコルスタックの上位レイヤから下位レイヤへHCIを介して「HCI_Set_AFH_Host_Channel_Classification」コマンドを送る。チャンネル群選択部103は、このコマンドにより、通信装置2との周波数ホッピングによる通信で使用される一群のチャンネルを設定する。
【0046】
通信制御部105は、前述した通信方式のプロトコルスタックにおける下位レイヤ(LinkLayer)の各種の処理を行う。例えば通信制御部105は、AFH(Adaptive Frequency Hopping)に関する処理として、「HCI_Set_AFH_Host_Channel_Classification」コマンドにより与えられた一群のチャンネルに疑似ランダムな順番を設定し、当該設定した順番を通信装置2へ通知する。通信制御部105は、通信装置2との通信に用いるチャンネルを、当該設定した順番で所定時間毎(625μs毎)に切り替える。
【0047】
また通信制御部105は、AFHに関わる他の処理として、通信装置2に対して所定のタイミングでチャンネル情報を要求するための「Channel_Classification_Req」コマンドを送信し、各チャンネルの妨害の有無に関するチャンネル情報を通信装置2に要求する。通信装置2は、このコマンドを受け取ると、チャンネル情報を含んだレスポンスとして「Channel_Classification」をマスタに返信する。通信制御部105は、第1情報取得部101から「HCI_Read_AFH_Channel_Map」コマンドを受け取ると、「Channel_Classification」に含まれる通信装置2のチャンネル情報を第1情報取得部101に提供する。
【0048】
記憶部11は、通信処理部10のコンピュータにおいて実行されるプログラム110や、通信処理部10の通信処理に使用される定数データ、通信処理の過程で一時的に保持される変数データなどを記憶する。記憶部11は、ROMやRAM、フラッシュメモリなど、任意の記憶装置を含んで構成される。プログラム110は、記憶部11のROMなどに予め格納されてもよいし、図示しない上位装置(メインコントローラ)からダウンロードされたものが記憶部11に書き込まれてもよいし、図示しない読み取り装置において非一時的な有形の媒体(DVD、USBメモリなど)から読み出されたものが記憶部11に書き込まれてもよい。
【0049】
通信装置2は、図1の例において、通信処理部20と、記憶部21と、無線送受信部22と、アンテナ23とを有する。
【0050】
無線送受信部22は、通信装置1における無線送受信部12と同様に、前述した通信方式に従って2.4GHz帯の無線通信を行う。
【0051】
通信処理部20は、通信装置1における通信処理部10と同様に、前述した通信方式の通信プロトコルに基づいて通信の各種の処理を行う。通信処理部20は、例えば記憶部21に格納されるプログラム210に基づいて命令を実行するコンピュータを含む。通信処理部20は、全ての処理をコンピュータによって実行してもよいし、少なくとも一部の処理を専用のロジック回路によって実行してもよい。また通信処理部20は、1つのIC上に形成されてもよいし、複数のICから構成されてもよい。
【0052】
通信処理部20は、図1の例において、チャンネル特定部200と通信制御部205を含む。
【0053】
チャンネル特定部200は、既に説明したチャンネル特定部100と同様に、周波数ホッピングに利用可能な全チャンネル(79チャンネル)の中から通信装置2の非妨害チャンネルを特定する。
【0054】
通信制御部205は、既に説明した通信制御部105と同様に、前述した通信方式のプロトコルスタックにおける下位レイヤ(LinkLayer)の各種の処理を行う。例えば通信制御部205は、通信装置1から通知される一群のチャンネルとその順番に従って、通信装置1との通信に用いるチャンネルを所定時間毎(625μs毎)に切り替える。また、通信制御部205は、チャンネル情報を要求するコマンド(Channel_Classification_Req)を通信装置1から受け取ると、チャンネル特定部200において特定された結果に基づくチャンネル情報(Channel_Classification)を通信装置1へ返信する。
【0055】
記憶部21は、既に説明した記憶部11と同様に、通信処理部20のコンピュータにおいて実行されるプログラム210や、通信処理部20の通信処理に使用される定数データ、通信処理の過程で一時的に保持される変数データなどを記憶する。プログラム210は、記憶部21に予め格納されてもよいし、図示しない上位装置からダウンロードされたものが記憶部21に書き込まれてもよいし、図示しない読み取り装置において非一時的な有形の媒体から読み出されたものが記憶部21に書き込まれてもよい。
【0056】
ここで、上述した構成を有する通信装置1の周波数ホッピングに関わる動作について、図3図5のフローチャートを参照して説明する。
【0057】
図3は、妨害を受けていないチャンネルを特定するチャンネル特定工程の処理の例を説明するためのフローチャートである。
【0058】
チャンネル特定部100は、受信信号強度(RSSI)を取得する所定のタイミングになると(ST100)、各チャンネルの受信信号強度を無線送受信部12から取得する(ST105)。受信信号強度を取得するタイミングは、例えば一定時間毎でもよいし、無通信の状態が一定時間以上続いた場合でもよい。チャンネル特定部100は、各チャンネルの受信信号強度や受信信号強度の平均値を所定のしきい値と比較し、その比較結果に基づいて、各チャンネルが妨害を受けているか否かを判定する(ST110)。
【0059】
また、チャンネル特定部100は、エラーレートを取得する所定のタイミングになると(ST115)、各チャンネルのエラーレートを取得する(ST120)。エラーレートを取得するタイミングは、例えば一定時間毎でもよいし、チャンネル毎に所定数のパケットが受信されたタイミングでもよい。チャンネル特定部100は、例えば、所定数のパケットの中でエラーが検出されたパケットの数をエラーレートとして取得する。チャンネル特定部100は、各チャンネルのエラーレートを所定のしきい値と比較し、その比較結果に基づいて、各チャンネルが妨害を受けているか否かを判定する(ST125)。チャンネル特定部100は、スリープモードなどへ移行せずに通信動作が継続している間、ステップST100〜ST125の処理を繰り返す(ST130)。
【0060】
図4は、チャンネル情報を取得する第1情報取得工程及び送信電力情報を取得する第2情報取得工程の処理の例を説明するためのフローチャートである。
【0061】
まず、通信装置1が通信装置2との接続を開始すると(ST200)、第2情報取得部102が、通信装置2から送信電力情報として送信電力のクラスの情報を取得する(ST205)。また第1情報取得部101は、通信装置1と通信装置2との接続中においてチャンネル情報を取得する所定のタイミングになると(ST210,ST215)、接続中の通信装置2からチャンネル情報を取得する(ST220)。チャンネル情報を取得するタイミングは、例えば一定時間毎でもよいし、チャンネル特定部100の上述したステップST110,ST125(図3)において判定結果が得られたタイミングでもよい。第1情報取得部101は、通信動作が継続している間、ステップST200〜ST220の処理を繰り返す(ST225)。
【0062】
図5は、通信装置1において周波数ホッピングに用いる一群のチャンネルを選択するチャンネル群選択工程の処理の例を説明するためのフローチャートである。
【0063】
チャンネル群選択部103は、通信装置2との接続中において一群のチャンネルの選択を行う所定のタイミングになると(ST300,ST305)、通信装置1と通信装置2との双方において妨害を受けていないチャンネルを一群のチャンネルとして選択する(ST310)。すなわち、チャンネル群選択部103は、チャンネル特定部100の上述したステップST110,ST125(図3)の判定結果と、第1情報取得部101の上述したステップST220(図4)において得られたチャンネル情報とに基づいて、通信装置1及び2の双方における非妨害チャンネルを選択する。
【0064】
チャンネル群選択部103は、ステップST310において選択した非妨害チャンネルの数を計数し、この数が20(周波数ホッピングの必要最小数)に達しているか否かを判定する(ST330)。選択した非妨害チャンネルの数が20に達していない場合、チャンネル群選択部103は、送信電力が小さい側のみ(本例では通信装置2のみ)において妨害を受けているチャンネルから、20に足りない分のチャンネルを一群のチャンネルとして更に選択する(ST335)これにより、一群のチャンネルは全部で20チャンネルとなり、その中には、通信装置1及び2の双方における非妨害チャンネルと、通信装置2のみで妨害を受けているチャンネルとが含まれることになる。チャンネル群選択部103は、通信動作が継続している間、ステップST300〜ST335の処理を繰り返す(ST370)。
【0065】
以上説明したように、本実施形態によれば、通信装置1及び2の双方において妨害を受けていない非妨害チャンネルの数が周波数ホッピングの必要最小数である20に達しない場合、通信装置1及び2のうち、送信電力が小さい方のみにおいて妨害を受けている少なくとも1つのチャンネルが、周波数ホッピングで使用される一群のチャンネルの少なくとも一部として選択される。すなわち、送信電力が小さい方のみにおいて妨害を受けているチャンネルが、通信に使用される。送信電力が小さい方は、送信電力が大きい方に比べて、相手方から送られてくる電波の受信信号強度が相対的に大きいため、外来電波等の妨害の影響を相対的に受け難い。従って、送信電力が小さい方のみにおいて妨害を受けているチャンネルは、送信電力が大きい方のみにおいて妨害を受けているチャンネルや、双方において妨害を受けているチャンネルに比べて、外来電波等の影響を相対的に受け難い。これにより、通信エラーや通信の途絶などが生じ難くなるため、外来電波等により妨害を受けた場合の通信品質の低下を効果的に抑制することができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、送信電力情報が示す通信装置2の送信電力と通信装置1の送信電力との比較に基づいて、通信装置1と通信装置2との間における送信電力の大小関係が判定される。そのため、通信装置2が変わることによって送信電力の大小関係が変化しても、送信電力の大小関係の判定結果に応じて一群のチャンネルの選択を行うことができるため、外来電波等により妨害を受けた場合の通信品質の低下を抑制できる。
【0067】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、一群のチャンネルの数が所定数に達しない場合に、送信電力を増大させる制御が行われる。
【0068】
図6は、第2の実施形態に係る通信装置1及び2の構成の一例を示す図である。図6に示す通信装置1は、図1に示す通信装置1の通信処理部10に送信電力制御部104を追加したものであり、他の構成は図1に示す通信装置1と同様である。図6に示す通信装置2は、図1に示す通信装置2の通信処理部20に送信電力制御部204を追加したものであり、他の構成は図1に示す通信装置2と同様である。以下では、図1に示す通信装置1及び2との相違点を中心に説明する。
【0069】
通信装置1の送信電力制御部104は、通信装置1及び2における各チャンネルの妨害の状況に応じて、通信装置1及び2の送信電力を制御する。
【0070】
送信電力制御部104は、通信装置1又は通信装置2において妨害を受けている少なくとも1つの妨害チャンネルが一群のチャンネルの一部としてチャンネル群選択部103により選択されている場合、通信装置1の送信電力を増大させる制御を行う。例えば送信電力制御部104は、無線送受信部12における出力段のアンプのゲインを高めることにより、アンテナ13からの送信電力を増大させる。また、この場合、送信電力制御部104は、通信装置2の送信電力を増大させる制御コマンドを通信装置2へ送信する処理も行う。具体的には、送信電力制御部104は、送信電力の増大を要求する「LMP_Power_Control_Req」コマンドを通信制御部105から通信装置2へ送信させる。
【0071】
他方、送信電力制御部104は、送信電力を増大させる制御を行った後、チャンネル群選択部103において選択される一群のチャンネルの中に妨害チャンネルが含まれなくなった場合、通信装置1の送信電力を元に戻す制御を行う。例えば送信電力制御部104は、無線送受信部12における出力段のアンプのゲインを下げることにより、アンテナ13からの送信電力を減少させる。また、この場合、送信電力制御部104は、通信装置2の送信電力を元に戻す制御コマンドを通信装置2へ送信する処理も行う。具体的には、送信電力制御部104は、送信電力の減少を要求する「LMP_Power_Control_Req」コマンドを通信制御部105から通信装置2へ送信させる。
【0072】
通信装置2の送信電力制御部204は、通信装置1から送られてくる制御コマンド(LMP_Power_Control_Req)に応じて、無線送受信部22における送信電力を制御する。すなわち、送信電力制御部204は、送信電力の増大を要求する制御コマンドを受信した場合、無線送受信部22における出力段のゲインを高めることにより、アンテナ23からの送信電力を増大させる。また、送信電力制御部204は、送信電力の減少を要求する制御コマンドを受信した場合、無線送受信部22における出力段のゲインを下げることにより、アンテナ23からの送信電力を減少させる。
【0073】
図7は、第2の実施形態に係る通信装置1において周波数ホッピングに用いる一群のチャンネルを選択するチャンネル群選択工程及び通信装置1と通信装置2とのうちの少なくとも一方の送信電力を増大させる制御を行う送信電力制御工程の処理の例を説明するためのフローチャートである。図7に示すフローチャートは、図5に示すフローチャートに送信電力制御工程となるステップST340〜ステップST360が追加されたものである。以下では、図5に示すフローチャートとの相違点を中心に説明する。
【0074】
チャンネル群選択部103が妨害チャンネルを周波数ホッピング用の一群のチャンネルとして選択した場合(ST335)、送信電力制御部104は、無線送受信部22において送信電力を増大させる制御を行うとともに(ST340)、通信装置2の送信電力の増大を要求する制御コマンド(LMP_Power_Control_Req)を通信制御部105から通信装置2へ送信させる(ST345)。
【0075】
一方、送信電力制御部104は、ステップST310においてチャンネル群選択部103が新たな一群のチャンネルの選択を行った場合(ST310)、その選択の結果、周波数ホッピング用の一群のチャンネルとして妨害チャンネルが選択される状態が解消されたか否かを判定する(ST350)。一群のチャンネルとして妨害チャンネルが選択される状態が解消された場合、送信電力制御部104は、無線送受信部22において送信電力を元に戻す制御を行うとともに(ST355)、通信装置2の送信電力を元に戻すように要求する制御コマンド(LMP_Power_Control_Req)を通信制御部105から通信装置2へ送信させる(ST360)。
【0076】
以上説明したように、本実施形態によれば、妨害を受けているチャンネルが周波数ホッピング用の一群のチャンネルの一部として選択された場合、通信装置1の送信電力が増大することにより、通信装置2における受信信号強度が大きくなるため、通信装置2において外来電波等による妨害を受け難くなる。また、この場合、通信装置2の送信電力が増大することにより、通信装置1における受信信号強度が大きくなるため、通信装置1において外来電波等による妨害を受け難くなる。従って、外来電波等により妨害を受けた場合の通信品質の低下を更に効果的に抑制することができる。
【0077】
また、本実施形態によれば、妨害を受けているチャンネルが周波数ホッピング用の一群のチャンネルの中に含まれなくなった場合、増大させていた通信装置1の送信電力や通信装置2の送信電力が元に戻される。これにより、送信電力を増大させたままにする場合に比べて、通信装置1や通信装置2における消費電力を減らすことができる。通信装置1と通信装置2とのうちのどちらの送信電力を増大させたり、元に戻したりするかは、妨害波の状況に合わせて適宜決めてよい。
【0078】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、非妨害チャンネルの中で妨害の影響を比較的受けやすいものが、周波数ホッピング用の一群のチャンネルから除外される。
【0079】
本実施形態に係る通信装置1は、既に説明した図1に示す通信装置1に対してチャンネル群選択部103の動作が異なっているものの、他の構成については図1に示す通信装置1と同じである。本実施形態における通信装置2は、図2に示す通信装置2と同じである。従って、以下では、チャンネル群選択部103の動作の相違点を中心に説明する。
【0080】
本実施形態におけるチャンネル群選択部103は、通信装置1又は通信装置2のうち、送信電力が大きい方において妨害を受けている複数のチャンネルの少なくとも一部が周波数帯域として連続している場合(以下、この周波数帯域を「妨害周波数帯域」と記す場合がある)、当該連続したチャンネルに隣接するチャンネルを、周波数ホッピング用の一群のチャンネルから除外する。
【0081】
図8は、第3の実施形態に係る通信装置1において周波数ホッピングに用いる一群のチャンネルを選択する方法を説明するための図である。図8Aは、通信装置1と通信装置2との双方で妨害を受けていないチャンネルの数が20を超える場合を示し、図8Bは、このチャンネル数が20に達していない場合を示す。
【0082】
図8Aの例において、チャンネル範囲D1及びD2が、妨害周波数帯域に対応する。この妨害周波数帯域は、送信電力が大きい(通信相手の送信電力が小さい/受信信号強度が小さい)通信装置1において妨害を受けている周波数帯域であり、無線LANの無線信号等の妨害を受けている可能性がある。通常、無線信号は一定の帯域幅を占有するため、これに隣接する周波数では、無線信号の影響を定常的に受け易くなる。そこで、図8Aの例では、チャンネル範囲D1に隣接するチャンネル「Na」と、チャンネル範囲D2に隣接するチャンネル「Nb」及び「Nc」が一群のチャンネルから除外されている。すなわち、図8Aの例では、一群のチャンネルとして、チャンネル「Na」及び「Nb」が除外されたチャンネル範囲E7と、チャンネル「Nc」が除外されたチャンネル範囲E8と、チャンネル範囲E9とが選択されている。
【0083】
他方、図8Bの例では、図8Aにおけるチャンネル範囲E8が一群のチャンネルに選択されなくなったため、通信装置1と通信装置2との双方で妨害を受けていないチャンネルの数が20より少なくなっている。そこで、図8Bの例では、一群のチャンネルに含まれるチャンネル範囲E8が、チャンネル範囲E10へ拡大している。図8Aにおける斜線の範囲E10Xは、この拡大分に相当する。斜線の範囲E10Xは、送信電力が小さい(通信相手の送信電力が大きい/受信信号強度が大きい)通信装置2のみで妨害を受けているチャンネルである。
【0084】
図9は、第3の実施形態に係る通信装置1において周波数ホッピングに用いる一群のチャンネルを選択する処理の例を説明するためのフローチャートである。図9に示すフローチャートは、図5に示すフローチャートにステップST315が追加されたものである。以下では、図5に示すフローチャートとの相違点を説明する。
【0085】
チャンネル群選択部103は、通信装置1と通信装置2との双方で妨害を受けていないチャンネルを選択する場合(ST310)、この双方で妨害を受けていないチャンネルの中から、送信電力が大きい(通信相手の送信電力が小さい/受信信号強度が小さい)通信装置1における妨害周波数帯域に隣接したチャンネルを除外する(ST315)。
【0086】
以上説明したように、送信電力が大きい方(通信相手の送信電力が小さい方/受信信号強度が小さい方)において妨害を受けている複数のチャンネルの少なくとも一部が妨害周波数帯域として連続している場合、この妨害周波数帯域は、無線LANの無線信号等による妨害を受けている可能性がある。この場合、妨害周波数帯域に隣接するチャンネルは、無線信号等の影響を定常的に受け易い。本実施形態によれば、妨害周波数帯域に隣接するチャンネルを一群のチャンネルから除外することにより、無線信号等による妨害を更に受け難くすることができる。
【0087】
次に、本実施形態の一変形例について、図10及び図11を参照して説明する。
【0088】
この変形例において、チャンネル群選択部103は、通信装置1と通信装置2との双方において妨害を受けていないチャンネルの数が20に達しない場合における一群のチャンネルの選択基準が、上述した実施形態と異なっている。すなわち、この場合、チャンネル群選択部103は、通信装置1又は通信装置2の一方又は両方で妨害を受けているチャンネルに比べて、通信装置1と通信装置2との双方で妨害を受けておらず、かつ、妨害周波数帯域に隣接する非妨害チャンネルを、一群のチャンネルとして優先的に選択する。
【0089】
図10は、第3の実施形態に係る通信装置1において周波数ホッピングに用いる一群のチャンネルを選択する方法の一変形例を説明するための図である。図10Aは、通信装置1と通信装置2との双方で妨害を受けていないチャンネルの数が20を超える場合を示し、図10Bは、このチャンネル数が20に達していない場合を示す。
【0090】
図10Aに示す状態は、既に説明した図8Aに示す状態と同じである。この状態でチャンネル範囲E9が一群のチャンネルに選択されなくなった場合、図8Bの例では、チャンネル「Na」,「Nb」及び「Nc」を一群のチャンネルから除外したまま、チャンネル範囲E8をチャンネル範囲E10へ拡大している。しかしながら、チャンネル「Na」,「Nb」及び「Nc」は通信装置1と通信装置2との双方で妨害を受けていないため、通信装置2で妨害を受けている斜線の範囲E10Xに比べて妨害の影響を受け難いと推測される。そこで、本変形例では、図10Bにおいて示すように、一群のチャンネルとして選択されるチャンネル範囲E11及びE12に、チャンネル「Na」,「Nb」及び「Nc」が追加される。一群のチャンネルに選択される妨害チャンネル(斜線の範囲E12x)は、この追加分だけ少なくなっている。
【0091】
図11は、第3の実施形態に係る通信装置1において周波数ホッピングに用いる一群のチャンネルを選択する処理の一変形例を説明するためのフローチャートである。図11に示すフローチャートは、図9に示すフローチャートにステップST320〜ステップST325が追加されたものである。以下では、図9に示すフローチャートとの相違点を中心に説明する。
【0092】
チャンネル群選択部103は、ステップST315において、送信電力が大きい通信装置1における妨害周波数帯域に隣接した非妨害チャンネルを一群のチャンネルの選択対象から除外した場合、除外後の非妨害チャンネルの選択数が20(周波数ホッピングの必要最小数)に達しているか否か判定する(ST320)。除外後の非妨害チャンネルの選択数が20に達していない場合、チャンネル群選択部103は、ステップST315で選択対象から除外した非妨害チャンネルの中から、20に足りない分の非妨害チャンネルを再度選択する(ST325)。そして、チャンネル群選択部103は、非妨害チャンネルの選択数が20に達しているかを更に判定し(ST330)、それでも非妨害チャンネルの選択数が20に達していない場合は、上述したステップST335の処理により、送信電力が小さい側のみ(本例では通信装置2のみ)において妨害を受けているチャンネルから、20に足りない分のチャンネルを選択する。
【0093】
本変形例によれば、通信装置1と通信装置2との双方において妨害を受けていないチャンネルの数が20に達しない場合、通信装置1又は通信装置2において妨害を受けているチャンネルに比べて、妨害周波数帯域に隣接する非妨害チャンネルが優先的に一群のチャンネルとして選択される。妨害周波数帯域に隣接する非妨害チャンネルは、無線LANの無線信号等の影響を受ける可能性があるものの、通信装置1と通信装置2との双方で妨害を受けていないと判定されているため、妨害の程度は比較的軽微である。そのため、妨害周波数帯域に隣接する非妨害チャンネルが優先的に一群のチャンネルとして選択されることにより、妨害の影響による通信の品質の低下を抑制できる。
【0094】
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明したが、本発明は上記の形態にのみ限定されるものではなく、種々のバリエーションを含んでいる。
【0095】
例えば、上述した実施形態では、周波数ホッピングを用いて通信を行なう例を挙げたが、本発明の他の実施形態では、それぞれ異なる周波数が割り当てられた複数のチャンネルを用いる他の方式で通信を行なってもよい。
【0096】
また、上述した実施形態では、本発明をBluetooth(登録商標)通信規格に準拠した通信に適用した例が挙げられているが、本発明は他の種々の通信規格にも適用可能である。
【符号の説明】
【0097】
1…通信装置、10…通信処理部、100…チャンネル特定部、101…第1情報取得部、102…第2情報取得部、103…チャンネル群選択部、104…送信電力制御部、105…通信制御部、11…記憶部、110…プログラム、12…無線送受信部、13…アンテナ、2…通信装置、20…通信処理部、200…チャンネル特定部、204…送信電力制御部、205…通信制御部、21…記憶部、210…プログラム、22…無線送受信部、23…アンテナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11