特許第6629507号(P6629507)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6629507
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】プリント配線板及び液位センサ
(51)【国際特許分類】
   G01F 23/26 20060101AFI20200106BHJP
   G01F 23/00 20060101ALI20200106BHJP
【FI】
   G01F23/26 A
   G01F23/00 B
【請求項の数】10
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-14655(P2015-14655)
(22)【出願日】2015年1月28日
(65)【公開番号】特開2015-163871(P2015-163871A)
(43)【公開日】2015年9月10日
【審査請求日】2017年9月26日
(31)【優先権主張番号】特願2014-17781(P2014-17781)
(32)【優先日】2014年1月31日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500400216
【氏名又は名称】住友電工プリントサーキット株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100087985
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 宏司
(74)【代理人】
【識別番号】100163979
【弁理士】
【氏名又は名称】濱名 哲也
(72)【発明者】
【氏名】木村 道廣
(72)【発明者】
【氏名】内田 淑文
(72)【発明者】
【氏名】山口 賀人
(72)【発明者】
【氏名】浅井 省吾
(72)【発明者】
【氏名】津曲 隆行
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 雄紀
(72)【発明者】
【氏名】川出 敬介
【審査官】 谷垣 圭二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−147780(JP,A)
【文献】 特開2007−303982(JP,A)
【文献】 特開平08−097565(JP,A)
【文献】 特開2012−216698(JP,A)
【文献】 特開2010−066088(JP,A)
【文献】 特開2005−331508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 23/26
G01F 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ポリマにより形成されて厚さが25μm以上50μm以下である基材と、
前記基材に形成され、厚さが12μm以上18μm以下であって電極間の静電容量を検出する少なくとも一対の電極を含む配線パターンと、
前記配線パターンを覆い、液晶ポリマにより形成されて厚さが25μm以上50μm以下であるカバーレイと、
前記基材よりも高融点のフッ素樹脂により形成されて前記基材を覆う第1フッ素樹脂層と、
前記カバーレイよりも高融点のフッ素樹脂により形成されて前記カバーレイを覆う第2フッ素樹脂層とを備え、
前記第1フッ素樹脂層及び前記第2フッ素樹脂層のうち少なくとも一方は、不織布、及び繊維織物シートの少なくともいずれか一つを含み、
前記第1フッ素樹脂層の前記フッ素樹脂および前記第2フッ素樹脂層の前記フッ素樹脂は、ポリフッ化ビニル、THV(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ビニリデンフロライドの3種類のモノマーからなる熱可塑性フッ素樹脂)、及び、フロオロエラストマーの少なくとも1種を含み、
前記基材及び前記カバーレイは、エチレンテレフタレートとパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体を含み、
イソオクタンとトルエンとを容積比1対1で混合した燃料について、前記基材の前記燃料の吸収率および前記カバーレイの前記燃料の吸収率は、それぞれ2質量%以下である
プリント配線板。
【請求項2】
前記配線パターンの前記一対の電極の端縁は所定間隔で隔てられている
請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項3】
前記カバーレイは、液晶ポリマにより形成される接着層を介して前記基材に積層されている
請求項1または請求項2に記載のプリント配線板。
【請求項4】
前記接着層の融点は、前記基材の融点よりも低くかつ前記カバーレイの融点よりも低い
請求項3に記載のプリント配線板。
【請求項5】
フッ素樹脂により形成されて厚さが50μm以上100μm以下である基材と、
前記基材に形成され、厚さが12μm以上18μm以下であって電極間の静電容量を検出する少なくとも一対の電極を含む配線パターンと、
前記配線パターンを覆い、フッ素樹脂により形成されて厚さが50μm以上100μm以下であるカバーレイとを備え、
前記基材及び前記カバーレイのそれぞれは、不織布、及び繊維織物シートの少なくともいずれか一つを含み、
前記フッ素樹脂は、ポリフッ化ビニル、THV(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ビニリデンフロライドの3種類のモノマーからなる熱可塑性フッ素樹脂)、及び、フロオロエラストマーの少なくとも1種を含む
プリント配線板。
【請求項6】
前記カバーレイは、フッ素樹脂よりも融点が低い液晶ポリマにより形成される接着層を介して前記基材に積層されている
請求項5に記載のプリント配線板。
【請求項7】
前記配線パターンは、同一平面上に形成された一対の電極を有し、前記両電極間の間隔は一端から他端にわたって一定幅であり、
前記電極の延長方向と前記基材及び前記カバーレイの液晶ポリマの流れ方向とが一致する
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプリント配線板。
【請求項8】
前記配線パターンは複数組の電極対を有する
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のプリント配線板。
【請求項9】
前記配線パターンは、対向するように配置された一対の電極を有する
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のプリント配線板。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のプリント配線板を有する液位センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量型の液位センサに用いられるプリント配線板、及びこのプリント配線板を用いた液位センサに関する。
【背景技術】
【0002】
静電容量の変化により液位を検出する液位センサが知られている。
例えば、特許文献1に記載の液位センサは、基材に形成された一対の電極で静電容量を検出する。この電極は、ガソリン等の燃料に浸漬される。
【0003】
液位が変化するとき、電極が形成されている領域(電極領域)において、燃料が浸漬する領域の比率(燃料の占有率)が変化しこれに伴って電極間の静電容量が変化する。そこで、この技術では、静電容量を検出することにより、液位を求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−225788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この技術では、実際の液位と静電容量に基づいて計算される液位とが所定の誤差範囲内であることを前提としているが、様々な試験によれば、その誤差が所定範囲よりも大きくなる場合があることが分かった。例えば、電極領域における燃料の占有率が等しいときでも、基材の状態によって、電極間の静電容量が異なる場合があり、この場合は、実際の液位と静電容量に基づいて計算される液位とが大きく乖離する。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、少なくとも一対の電極を有するプリント配線板において、電極領域に対する液体の占有率が所定値であるとき、電極間の静電容量が一定であるプリント配線板、及びこのプリント配線板を備えた液位センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るプリント配線板は、基材と、この基材に形成された配線パターンと、前記配線パターンを覆うカバーレイとを備え、前記配線パターンは、電極間の静電容量を検出する少なくとも一対の電極を含み、前記基材及び前記カバーレイのそれぞれは液晶ポリマ及びフッ素樹脂の少なくとも一方の層を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電極領域において液体の占有率が所定値であるとき、電極間の静電容量が一定であるプリント配線板、及びこのプリント配線板を備えた液位センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係るプリント配線板の模式図である。
図2図1のA−A線に沿う断面図である。
図3】液位センサの模式図である。
図4】液位センサのプリント配線板について、図4(a)は、給油前の浸漬状態を示す模式図であり、図4(b)は、給油直後の浸漬状態を示す模式図であり、図4(c)は、給油から所定時間経過後の浸漬状態を示す模式図である。
図5図5(a)は第2実施形態に係るプリント配線板の平面図であり、図5(b)は、そのプリント配線板の電極対付近の拡大図である。
図6図6は第2実施形態に係るプリント配線板の変形例の平面図である。
図7図7(a)は第3実施形態に係るプリント配線板の断面図であり、図7(b)は、そのプリント配線板の側面図である。
図8】第4実施形態に係るプリント配線板の断面図である。
図9】第5実施形態に係るプリント配線板の断面図である。
図10】第6実施形態に係るプリント配線板の断面図である。
図11】第7実施形態に係るプリント配線板の断面図である。
図12】第8実施形態に係るプリント配線板の断面図である。
図13】第9実施形態に係るプリント配線板の断面図である。
図14】第10実施形態に係るプリント配線板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本願発明の実施形態を列記して説明する。
本願発明に係るプリント配線板は、(1)基材と、この基材に形成された配線パターンと、前記配線パターンを覆うカバーレイとを備え、前記配線パターンは、電極間の静電容量を検出する少なくとも一対の電極を含み、前記基材及び前記カバーレイのそれぞれは液晶ポリマ及びフッ素樹脂の少なくとも一方の層を有する。ここで、液晶ポリマの層とは、液晶ポリマを主成分とする層(質量比で50質量%以上の液晶ポリマを含む層)を示し、フッ素樹脂の層とは、フッ素樹脂を主成分とする層(質量比で50質量%以上のフッ素樹脂を含む層)を示す。
【0011】
電極間の静電容量はその周囲の物質の存在によって変化する。
プリント配線板を液体に浸漬すると、電極が形成されている領域(以下、「電極領域」という。)において、液体が占める部分の比率によって静電容量が変化する。
【0012】
ところで、基材及びカバーレイが液体を吸収している状態と、基材及びカバーレイが液体を吸収していない状態とでは、電極領域において液体が占める部分の比率が同じであったとしても、吸収した液体の影響により、両状態において電極間の静電容量が異なる。そして、基材及びカバーレイの液体の吸収率が高いほど、両状態における静電容量の差が大きくなる。すなわち、液体の吸収率に依存して、静電容量が変化する。
【0013】
上記構成では、プリント配線板の基材及びカバーレイそれぞれは、液晶ポリマ及びフッ素樹脂の少なくとも一方の層を有する。液晶ポリマ及びフッ素樹脂は、ポリイミド樹脂やエポキシ樹脂などプリント配線板に用いられる樹脂に比べて、水や燃料の吸収率が低い。ここで、燃料とは、ガソリンや軽油、重油などの石油類、植物油やアルコール類、などの燃焼可能な液体を意味する。
【0014】
このため、本発明に係るプリント配線板は、従来構造のプリント配線板に比べて、水や燃料の吸収によって生じる特性変化が小さい。すなわち、基材及びカバーレイが液体を吸収している状態と、基材及びカバーレイが液体を吸収していない状態との比較において、電極領域において液体が占める部分の比率が同じであったときは、従来構造のプリント配線板に比べて、両状態における電極間の静電容量の差が小さくなる。すなわち、このプリント配線板は、液体への浸漬状態または浸漬時間が異なる場合でも、電極領域に対して液体の占有率が所定値であるときの静電容量は一定になる。
【0015】
(2)上記プリント配線板において、前記基材と前記カバーレイとは共に液晶ポリマにより形成されていることが好ましい。
この構成では、基材及びカバーレイが液晶ポリマで形成される。液晶ポリマは、ポリイミド樹脂やエポキシ樹脂などプリント配線板に用いられる樹脂に比べて、水や燃料の吸収率が低い。
【0016】
このため、プリント配線板は、従来構造のプリント配線板に比べて、水や燃料の吸収によって生じる特性変化が小さい。すなわち、基材及びカバーレイが液体を吸収している状態と、基材及びカバーレイが液体を吸収していない状態との比較において、電極領域において液体が占める部分の比率が同じであったときは、従来構造のプリント配線板に比べて、両状態における電極間の静電容量の差が小さくなる。すなわち、このプリント配線板は、液体への浸漬状態または浸漬時間が異なる場合でも、電極領域に対して液体の占有率が所定値であるときの静電容量は一定になる。
【0017】
(3)上記プリント配線板において、前記基材と前記カバーレイとは共に液晶ポリマにより形成され、前記配線パターンの前記一対の電極の端縁は所定間隔で隔てられている。この構成によれば、一対の電極の端縁が所定間隔が隔てられているため、一対の電極により液体の静電容量を検出することができる。
【0018】
(4)上記プリント配線板において、前記カバーレイは、液晶ポリマにより形成される接着層を介して前記基材に積層されていることが好ましい。
この構成によれば、カバーレイと基材との間に接着剤が介在するため、製造時においてカバーレイと基材との間に挟まれる配線パターンの周縁に形成される気泡やボイドが形成され難くなり、この結果として、カバーレイと基材との間に存在する気泡やボイドが少なくなる。これにより、気泡やボイドに起因するピール等による劣化が少なく、また経時的な特性変化もしくは温度変化による特性変化が小さくなる。
【0019】
(5)上記プリント配線板において、前記接着層の融点は、前記基材の融点よりも低くかつ前記カバーレイの融点よりも低いことが好ましい。
この構成によれば、製造時において熱圧着により接着層を軟化させて基材とカバーレイとを接着させるときに、基材とカバーレイの変形を抑制することができる。このため、プリント配線板の寸法精度が高い。また、熱圧着時に接着層が軟化することから、接着層がない構造に比べて、カバーレイと基材との間に存在する気泡やボイドが少なくなる。
【0020】
(6)上記プリント配線板において、前記基材は、前記基材よりも高融点のフッ素樹脂により形成された第1フッ素樹脂層で覆われ、前記カバーレイは、前記カバーレイよりも高融点のフッ素樹脂により形成された第2フッ素樹脂層で覆われていることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、フッ素樹脂は液晶ポリマに比べてアルコール、特にメチルアルコールの吸収率が低い。このため、プリント配線板は、メチルアルコールの吸収によって生じる特性変化が小さくなる。
【0022】
(7)上記プリント配線板において、前記第1フッ素樹脂層及び前記第2フッ素樹脂層のうち少なくとも一方は、フィラー、不織布、及び繊維織物シートの少なくともいずれか一つを含むことが好ましい。
【0023】
この構成によれば、プリント配線板の剛性が高くなり、プリント配線板の変形に伴う電極間の伸縮が抑制されるようになる。このため、静電容量の検出精度が向上する。また、製造段階においては、第1フッ素樹脂層または第2フッ素樹脂層の形成材料として、フィラー、不織布、及び繊維織物シートを含むフッ素樹脂シートが用いられることになる。このようなシートは剛性が高くかつ皺が生じ難いため、上記構成により、プリント配線板の生産性が向上する。
【0024】
(8)上記プリント配線板において、前記配線パターンは第1接着層を介して前記基材に形成され、前記カバーレイは第2接着層を介して前記基材に積層されていることが好ましい。この構成によれば、製造工程において、基材とカバーレイとの間または電極間に気泡やボイドが入り込みにくい。このため、このプリント配線板は、気泡やボイドが少ないものとなっている。そして、この結果、気泡やボイドに起因するピール等による劣化が少なく、また経時的な特性変化もしくは温度変化による特性変化が小さくなる。
【0025】
(9)上記プリント配線板において、前記第1及び第2接着層が露出しないように前記基材の端部及び前記カバーレイの端部が封止されていることが好ましい。
第1及び第2接着層が液体を吸収している状態と、第1及び第2接着層が液体を吸収していない状態とでは、電極領域において液体が占める部分の比率が等しいときでも、吸収した液体の影響により、両状態において電極間の静電容量が異なるようになる。このため、プリント配線板が第1及び第2接着層を有する場合は、第1及び第2接着層が液体を吸収することがないようにプリント配線板を構成することが好ましい。そこで、上記構成では、第1及び第2接着層が露出しないように基材の端部及びカバーレイの端部を封止する。これにより、第1及び第2接着層が液体を吸収することを抑制することができる。
【0026】
(10)上記プリント配線板において、前記基材の端部及び前記カバーレイの端部が液晶ポリマ部材で封止されていることが好ましい。この構成によれば、前記基材の端部及び前記カバーレイの端部を容易に封止することができる。
【0027】
(11)上記プリント配線板において、前記基材の端部が折り返されて前記カバーレイに圧着され、または前記カバーレイの端部が折り返されて前記基材に圧着されている構成を採用することもできる。この構成でも、前記基材の端部及び前記カバーレイの端部を容易に封止することができる。
【0028】
(12)上記プリント配線板において、前記基材及び前記カバーレイそれぞれはフッ素樹脂により形成されることが好ましい。
この構成では、基材及びカバーレイがフッ素樹脂で形成される。フッ素樹脂は、ポリイミド樹脂やエポキシ樹脂などプリント配線板に用いられる樹脂に比べて、水や燃料の吸収率が低い。
【0029】
このため、プリント配線板は、従来構造のプリント配線板に比べて、水や燃料の吸収によって生じる特性変化が小さい。これにより、このプリント配線板は、液体への浸漬状態または浸漬時間が異なる場合でも、電極領域に対して液体の占有率が所定値であるときの静電容量は一定になる。
【0030】
(13)上記プリント配線板において、前記カバーレイは、フッ素樹脂よりも融点が低い液晶ポリマにより形成される接着層を介して前記基材に積層されている。
この構成によれば、製造時において熱圧着により接着層を軟化させて基材とカバーレイとを接着させるときに、基材とカバーレイの変形を抑制することができる。このため、プリント配線板の寸法精度が高い。また、接着層として液晶ポリマが用いられているため、エポキシ樹脂が用いられるものに比べて、接着層における吸水率が低くなる。これにより、電極領域に対して液体の占有率が所定値であるときの静電容量の変化が小さくなる。
【0031】
(14)上記プリント配線板において、前記基材及び前記カバーレイそれぞれは、フィラー、不織布、及び繊維織物シートの少なくともいずれか一つを含む。
この構成によれば、プリント配線板の剛性が高くなり、プリント配線板の変形に伴う電極間の伸縮が抑制されるようになる。このため、静電容量の検出精度が向上する。また、製造段階においては、第1フッ素樹脂層または第2フッ素樹脂層の形成材料として、フィラー、不織布、及び繊維織物シートを含むフッ素樹脂シートが用いられることになる。このようなシートは剛性が高くかつ皺が生じ難いため、上記構成により、プリント配線板の生産性が向上する。
【0032】
(15)上記プリント配線板において、前記配線パターンは、同一平面上に形成された一対の電極を有し、前記電極のそれぞれは一端から他端にわたって間隔が一定幅となるよう配置され、前記電極の延長方向と前記基材及び前記カバーレイの液晶ポリマの流れ方向とが一致することが好ましい。
【0033】
液晶ポリマにより形成された基材やカバーレイは、線膨張係数について異方性を有する。すなわち、液晶ポリマの流れ方向の線膨張係数は、この流れ方向に対して直角方向の線膨張係数に比べて小さい。
【0034】
一方、液位の変化を静電容量の変化として検出する用途にプリント配線板が用いられる場合は、電極の延長方向に沿って液位が移動するようにプリント配線板が配置される。
液位の測定において毎回の測定値のばらつきを小さくするためには、基板およびカバーレイにおいて、電極の延長方向に沿う寸法の寸法変化が小さい方が好ましい。そこで、この構成では、電極の延長方向と、基材及びカバーレイの液晶ポリマの流れ方向とを同じ方向にする。これにより、基材及びカバーレイは、電極の延長方向に伸びにくくなる。この結果、このプリント配線板が液位センサに用いられる場合は、温度変化によって生じる液位の測定値のばらつきを小さくすることができる。
【0035】
(16)上記プリント配線板において、前記配線パターンは、前記配線パターンは複数組の電極対を有するように構成してもよい。この場合、個々の電極対において、静電容量の変化を検出することができる。
【0036】
液位の変化を静電容量の変化として検出する用途にプリント配線板が用いられる場合は、電極対の配列方向に沿って液位が移動するようにプリント配線板が配置される。
このような用途に上記プリント配線板が用いられると、電極対のそれぞれにおいて燃料等の液体の有無を検出することが可能となる。このようなことから、基材及びカバーレイの燃料の吸収量に関わらず、一定の精度で液位を検出することができる。
【0037】
(17)上記プリント配線板において、前記配線パターンは、対向するように配置された一対の電極を有するように構成してもよい。このような構成によって、電極間の静電容量に基づいて燃料等の液位を検出することができる。
【0038】
(18)本願発明に係る液位センサは上記プリント配線板を有する。上記プリント配線板は、電極領域に対して液体の占有率が所定値であるとき静電容量が一定である。このため、液位センサにおいて液位の検出誤差を小さくすることができる。
【0039】
[本願発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係るプリント配線板の具体例を、図面を参照しつつ以下に説明する。なお、本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及びこの特許請求の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0040】
[プリント配線板]
図1及び図2を参照して、第1実施形態に係るプリント配線板1を説明する。図1及び図2に示すように、プリント配線板1は、基材2と、配線パターン4と、カバーレイ3とを備えている。
【0041】
基材2とカバーレイ3は共に矩形の樹脂シートにより形成されている。
配線パターン4は基材2上に形成され、また、配線パターン4(端子部4bを除く。)はカバーレイ3に覆われている。
【0042】
基材2とカバーレイ3は共に燃料30の吸収率が低い樹脂により形成されている。また、この構成に加えて、基材2とカバーレイ3は共に耐熱性が高い方が好ましい。更に、基材2とカバーレイ3は共に線膨張係数が小さい方が好ましい。
【0043】
例えば、基材2とカバーレイ3は、共に、液晶ポリマを主成分とする樹脂で形成される。ここで主成分とは、樹脂に対する液晶ポリマの比率が50質量%以上であることを示す。好ましくは、基材2とカバーレイ3は、液晶ポリマが90質量%以上の樹脂により形成される。基材2とカバーレイ3を形成するために好適な液晶ポリマとしては、エチレンテレフタレートとパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体、フタル酸とビフェノールとパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸とパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体などが挙げられる。
【0044】
基材2の厚さは、20μm以上100μm以下であることが好ましい。より好ましくは、基材2の厚さは、25μm以上50μm以下である。カバーレイ3の厚さは、基材2の厚さと同様に設定される。すなわち、カバーレイ3の厚さは、20μm以上100μm以下であることが好ましく、25μm以上50μm以下であることが更に好ましい。
【0045】
このような設定は、基材2またはカバーレイ3の厚さが大きくなり過ぎると、電極4a間の静電容量が小さくなり過ぎて燃料30の検出精度が低下しすぎるためである。また、基材2またはカバーレイ3の燃料の吸収量が増大することに起因して燃料30の検出精度が低下するためである。一方、基材2またはカバーレイ3の厚さが小さくなり過ぎると、基材2またはカバーレイ3の封止機能が低下するためである。例えば、基材2またはカバーレイ3に傷がつくことにより、この部分から燃料または空気が侵入して配線パターン4が劣化するおそれがある。
【0046】
また、これら液晶ポリマにおいて、イソオクタンとトルエンとを容積比1対1で混合したものを燃料30として使った時の燃料30の吸収率は2質量%以下であることが好ましく、更に、この吸収率が1.0質量%以下であることが好ましい。これにより、燃料30の吸収による電極4a間の静電容量の変化を抑制することができる。
【0047】
ここで、吸収率とは、液晶ポリマを燃料30に浸漬してその質量が変化しなくなるときの質量を、乾燥時の液晶ポリマの質量で除算した値(パーセント表示)を示す。なお、このようなイソオクタンとトルエンとを容積比で1対1で混合した燃料30を用いて液晶ポリマの性質を規定した理由は、市販されている一般の燃料30が多種多様で、同じ名称の燃料30であっても成分が異なる場合があり、このような一般の燃料30を使って特性を規定することができないためである。
【0048】
また、これら液晶ポリマにおいて、−20℃〜240℃の範囲において、流れ方向DFの線膨張係数が10×10−5以下、直角方向DRにおける線膨張係数が20×10−5以下であることが好ましい。また、より好ましくは、−20℃〜240℃の範囲において、流れ方向DFの線膨張係数が2×10−5以下、直角方向DRにおける線膨張係数が10×10−5以下である。なお、ここで、流れ方向DFとは、成形の際に形成される液晶ポリマの流動方向(すなわち液晶ポリマの配向方向)を示し、直角方向DRは、この流動方向に対して垂直な方向を示す。
【0049】
配線パターン4は一対の電極4aを有する。これらの電極4aは基材2上に配置されている。すなわち、電極4aは同一平面上に配置されている。
各電極4aには、測定部11(後述)の電気回路と接続するための端子部4bが設けられている。端子部4bのそれぞれは基材2の一方の端側に配置されている。
【0050】
2つの電極4aは、一端から他端にわたって間隔Saが一定幅となるように互いに平行に形成されている。一定幅とは、一端から他端にわたって電極4a間の間隔Sa(図1参照。一方の電極4aの端縁と他方の電極4aの端縁との間の間隔Sa。)が所定距離範囲内にあることを示す。例えば、間隔Saは200μm±100μmに設定される。
【0051】
間隔Saの最大値(間隔Saの設定寸法の最大値)は500μmであり、最小値(間隔Saの設定寸法の最小値)は50μmであることが好ましい。間隔Saが500μmを超えると電極4a間の静電容量が小さくなり過ぎて燃料30の液位の検出精度が低下しすぎる。また、間隔Saが50μmより小さくなると、電極4a間への液晶ポリマの流れ込みが難しくなるため、検出ばらつきが大きくなるなどセンサとしての信頼性が低下する。なお、一対の電極4aのそれぞれは同一形状かつ同面積の矩形であることが好ましい。
【0052】
また、電極4aのそれぞれは、その延長方向DE(長手方向)と液晶ポリマの流れ方向DFとが一致するように形成されていることが好ましい。
これは、次の理由による。液晶ポリマの樹脂シート(基材2及びカバーレイ3)は、線膨張係数について異方性を有する。すなわち、樹脂シートにおいて流れ方向DFの線膨張係数は直角方向DRの線膨張係数よりも小さい。一方、液位センサ10の構成要素としてのプリント配線板1が燃料タンク20(図3参照)に配置されるとき、プリント配線板1は、その電極4aが鉛直方向DLに沿うように配置される。このような配置により、プリント配線板1の電極4aの延長方向DEに沿って燃料30の液位が移動するようになる。しかし、電極4aの延長方向DEの寸法が変化すると、液位の検出精度が低下する。このようなことから、この種のプリント配線板1としては、電極4aに沿う方向の寸法(延長方向DE)の寸法変化が小さいことが好ましい。このため、基材2及びカバーレイ3のそれぞれについて、これらの流れ方向DFと電極4aの延長方向DEとを一致させることが好ましい。
【0053】
配線パターン4は、銅、金、銀、ニッケル、またはこれらの積層体により形成されている。このような配線パターン4は、サブトラクティブ法やセミアディティブ法により形成される。配線パターン4の厚さは、12μm以上18μm以下であることが好ましい。
【0054】
配線パターン4は、基材2及びカバーレイ3により封止されている。
例えば、真空チャンバー内で、配線パターン4が形成された基材2とカバーレイ3とを圧着する。これにより、基材2とカバーレイ3との間に気泡やボイドが残存しないように、配線パターン4が封止される。
【0055】
また、配線パターン4の封止を確実なものとするため、配線パターン4の電極4aの端縁と基材2及びカバーレイ3の端縁との間の距離L(図1参照)を0.5mm以上に設定することが好ましい。この距離が0.5mmよりも小さい場合は、基材2とカバーレイ3との接着部分の幅が狭くなりすぎて基材2とカバーレイ3との間に隙間が生じるおそれが高まるためである。
【0056】
[液位センサ]
図3に、液位センサ10の模式図を示す。図3には、液位センサ10が燃料タンク20に配置されている例が示されている。
【0057】
液位センサ10は、上記実施形態に係るプリント配線板1と、電極4a間の静電容量を測定する測定部11とを備える。測定部11とプリント配線板1とは導線12で接続されている。
【0058】
測定部11は、周期的に、電極4a間の静電容量を測定する。静電容量の測定は、例えば共振法、周波数信号を入力する方法などにより行う。共振法では、一対の電極4aに対して直列または並列にコイルが配置される。なお、このコイルは、図3においては、測定部11の内部に配置される。
【0059】
プリント配線板1は、電極4aの延長方向DEと鉛直方向とが一致するように、燃料タンク20に配置されている。このため、燃料30の液位が変わるとき、液位は電極4aの延長方向DEに沿って移動する。
【0060】
また、燃料30の液位が変わるとき、これに伴って、一対の電極4aに対応する領域(配線パターン4が形成されている部分に対応する領域。図3の破線で囲まれた領域。以下、これを「電極領域AE」という。)において、空気の占有部SAの比率(空気の占有率)と燃料30の占有部SGの比率(すなわち燃料30の占有率)とが変化する。この比率は液位に相関する。すなわち、液位が上昇するとき、燃料30の占有部SGの比率が増大するとともに、空気の占有部SAの比率が減少する。
【0061】
電極4a間の静電容量は、電極領域AEにおいて空気の占有部SAの静電容量と、燃料30の占有部SGの静電容量との和である。このため、燃料30の液位と電極4a間の静電容量とが概ね一次式で相関する。
【0062】
図4に、液位が変化する前、液位の変化後、及び液位が変化して所定時間経過後におけるプリント配線板1の浸漬状態を示す。
図4(a)は、給油前の液位が低い状態におけるプリント配線板1の浸漬状態を示す。図4(b)は、給油により液位が高い状態におけるプリント配線板1の浸漬状態を示す。図4(c)は、給油後、燃料30が使用されずに所定時間経過したときのプリント配線板1の浸漬状態を示す。
【0063】
給油により燃料タンク20内の液位が上昇するとき、電極領域AEにおいて燃料30の占有部SGが増大する。このため、電極4a間の静電容量が変化する。その後、液位が変化することがない場合には、電極4a間の静電容量は変化しないはずである。
【0064】
しかし、従来のプリント配線板を有する液位センサでは、給油により燃料タンク20内の液位が上昇した後、燃料30の使用がないときでも(すなわち液位が変化しないときでも)、時間が経過したとき、電極4a間の静電容量が変化することがある。このため、測定部11は、給油直後の時点と、所定時間の経過後の時点において、液位が等しい場合でも、両時点では、電極4a間の静電容量を異なる値として検出する。この結果、液位センサ10は、両時点で実際の液位が等しいにも拘わらず、異なる液位レベルを出力するようになる。
【0065】
このような事象の原因は、基材2及びカバーレイ3が燃料30を吸収することに起因する。
以下この点について説明する。
【0066】
燃料30を給油する前において、燃料30が徐々に少なくときは、電極領域AEにおいて空気の占有部SAは乾燥するため、この部分(図4(a)の符号SAで示す部分)における燃料30の吸収量は少ない。
【0067】
図4(b)に示すように、燃料30を給油して燃料30の液位が急上昇すると、給油直前において空気の占有部SAであったところが、燃料30の占有部SGに変化する。このような場合、この部分(すなわち給油直前の空気の占有部SA。以下、「直前空気占有部SAB」という。)の基材2及びカバーレイ3には、燃料30が吸収されていない。なお、図4(b)では、電極領域AEにおいて直前空気占有部SABよりも下方の部分を、給油の前後において燃料30に浸漬している部分SGBとして示している。
【0068】
給油後、燃料30が使用されず所定時間経過したとき、直前空気占有部SABにおける基材2及びカバーレイ3が燃料30を吸収した状態になる。
すなわち、燃料30を給油した時点と、燃料30を給油して所定時間経過後の時点とでは、液位の変化はないが、直前空気占有部SABの燃料吸収状態が異なる。燃料30を給油した時点では、電極4aの表面から基材2またはカバーレイ3の厚さだけ離れたところから燃料30が存在する。
【0069】
一方、燃料30を給油して所定時間経過後の時点では、基材2またはカバーレイ3が燃料30を吸収するため、電極4aの表面から基材2またはカバーレイ3の厚さだけ離れたところよりも電極4a側に近いところから燃料30(燃料30を構成する物質)が存在することになる。
【0070】
このように、燃料30を給油した時点と、燃料30を給油して所定時間経過後の時点とでは、電極4aから基材厚さ方向(またはカバーレイ厚さ方向)に離れる方向において、燃料30(燃料30を構成する物質)が存在し始めるところが異なる。このため、両時点において液位が等しいとしても静電容量が異なるようになる。
【0071】
液位が等しいにも関わらず静電容量が異なる値になるといった事態は、このような状況においてのみ生じるものではない。例えば、プリント配線板1周囲の温度条件の相違によってもこのような事態が生じる。基材2及びカバーレイ3は、温度により燃料30の吸収率が異なるため、液位が所定の位置にあるときでも、冬季において検出される静電容量と、夏季において検出される静電容量とが異なる。
【0072】
これらの事象から次のことが分かる。
基材2及びカバーレイ3に燃料30が吸収されていないときの電極4a間の静電容量と、基材2及びカバーレイ3に燃料30が吸収されているときとの電極4a間の静電容量とは異なる。このため、基材2及びカバーレイ3は、燃料30の吸収率が低いことが好ましい。
【0073】
そこで、本実施形態では、基材2及びカバーレイ3として、燃料30を吸収しにくいものを採用する。すなわち、電極4a間の静電容量に対して、基材2及びカバーレイ3に含まれる燃料量の増減の影響を小さくする。これによって、電極領域AEに対して液体の占有率が所定値であるとき静電容量を一定にすることができる。すなわち、この構成によれば、従来のプリント配線板に比べて、電極領域AEに対して液体の占有率が所定値であるときの静電容量のばらつきを小さくすることができる。
【0074】
なお、一定とは、静電容量の誤差率が1%以下、好ましくは0.5%以下であることを示す。ここでは、誤差率は、「(実測値−基準値)/基準値×100」として定義される。基準値は、基材2及びカバーレイ3が十分に乾燥したプリント配線板1を用いて、電極領域AEにおいて面積比で100%分浸漬するようにプリント配線板1を配置し、その直後に測定した静電容量を示す。電極領域AEにおいて面積比で100%分浸漬するようにプリント配線板1を配置した状態で、基材2及びカバーレイ3の燃料の吸収が飽和状態に達するまで浸漬状態にした後に測定した静電容量を示す。
【0075】
上記プリント配線板1によれば、次の効果を奏する。
(1)プリント配線板1の基材2とカバーレイ3とが共に液晶ポリマにより形成されている。液晶ポリマは、ポリイミド樹脂やエポキシ樹脂など従来のプリント配線板に用いられる樹脂に比べて水及び燃料30の吸収率が低い。
【0076】
このため、プリント配線板1は、従来構造のプリント配線板に比べて、水や燃料30の吸収によって生じる特性変化が小さい。すなわち、基材2及びカバーレイ3が水や燃料30を吸収している状態と、基材2及びカバーレイ3が水や燃料30を吸収していない状態との比較において、電極領域AEにおいて燃料30が占める部分の比率が同じ値(所定値)であったときは、従来構造のプリント配線板に比べて、両状態における電極4a間の静電容量の差が小さくなる。このため、このプリント配線板1は、浸漬時間や浸漬状態または温度条件に関わらず、電極領域AEに対して水や燃料30の占有率が所定値であるとき静電容量が一定になる。
【0077】
(2)上記プリント配線板1において、配線パターン4は、同一平面上に形成された一対の電極4aを有し、両電極4a間の間隔は、これら電極4aの一端から他端にわたって一定幅であることが好ましい。この構成によれば、電極4aのそれぞれが一端から他端にわたって間隔が一定幅となっていない構成に比べて、電極領域AEに対する水や燃料30の占有率の変化の増大に伴う静電容量の変化率が一定となり、両者の関係が一次式に近似されるようになる。
【0078】
(3)上記プリント配線板1において、電極4aの延長方向DEと基材2及びカバーレイ3の液晶ポリマの流れ方向DFとが一致することが好ましい。
この構成によれば、基材2及びカバーレイ3は電極4aの延長方向DEに伸びにくくなる。この結果、このプリント配線板1が液位センサ10に用いられる場合は、温度変化によって生じる液位の測定値のばらつきを小さくすることができる。
【0079】
(4)液位センサ10は、本実施形態のプリント配線板1を有する。上記プリント配線板1は、電極領域AEに対して水や燃料30の占有率が所定値であるときの静電容量は一定になる。これにより、液位センサ10において液位の検出誤差が小さくなり、液位の検出精度が向上する。
【0080】
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本技術の一例である。
以下、その他の実施形態について説明する。
【0081】
図5を参照して、第2実施形態に係るプリント配線板101について説明する。
このプリント配線板101は、第1実施形態に係るプリント配線板1において配線パターン4の構造を異ならせたものである。図5(a)はプリント配線板101の平面図を示す。図5(b)は、プリント配線板101の電極対42付近の拡大図である。なお、図5(a)では、いくつかの配線41をドットで示し、その記載を省略している。
【0082】
配線パターン4は、複数組の配線ペア40により構成されている。配線ペア40とは、静電容量の測定時に、同時に通電する2本の配線41を示す。
図5(a)に示されるように、配線41は電極41aと配線部41bと端子部41cとを有する。電極41aは、配線部41bの先端に配置されている。端子部41cは、配線部41bの末端に配置されている。配線ペア40において一方の配線41の電極41aの端縁(他方の配線41に最も近づく部位)と他方の配線41の電極41aの端縁(一方の配線41に最も近づく部位)とは、所定間隔を隔てて配列される。所定間隔は、一対の電極41aにより液体が検出可能な距離である。間隔の形態は特に限定されない。一対の電極41aの間の間隔は、一方端から他方端にわたって途中で拡大されてもよいし、途中で縮小されてもよいし、拡大部分と縮小部分とが交互に繰り返される構造であってもよいし、一方端から他方端にわたって一定であってもよい。例えば、配線ペア40において一方の配線41の電極41aと他方の配線41の電極41aとは、間隔Sb(図5(b)参照。)が一定幅となるように、液晶ポリマの直角方向DRに沿うように配置される。また、これら電極41aは電極対42を構成する。そして、これら電極対42は、基材2及びカバーレイ3の液晶ポリマの流れ方向DFに沿って一列に配列されている。この間隔Sbの最大値は500μm、最小値は50μmであることが好ましい。間隔Sbが500μmを超えると電極41a間の静電容量が小さくなり過ぎて燃料30の液位の検出精度が低下しすぎる。また、間隔Sbが50μmより小さくなると、電極41a間への液晶ポリマの流れ込みが難しくなるため、検出ばらつきが大きくなるなどセンサとしての信頼性が低下する。ここで、間隔Sbとは複数の電極対42についての平均である。また、プリント配線板101に設けられている複数の電極対42について、これらの間隔Sbのばらつきは小さい方が望ましい。例えば、これらの電極対42について、間隔Sbの最小値は、間隔Sbの平均値の0.5倍であり、間隔Sbの最大値は、間隔Sbの平均値の1.5倍であることが望ましい。
【0083】
なお、各配線部41bは、図5では、液晶ポリマの直角方向DRに沿う部分と、液晶ポリマの流れ方向DFに沿う部分とにより構成されているが、配線部41bの構造は、このような形態に限定されない。例えば、各配線部41bは、基材寸法の制限等によって、液晶ポリマの流れ方向DFに対して斜め延長するように構成されたり、また、曲線で構成されたりする。
【0084】
このような構成によれば、基材2及びカバーレイ3の燃料30の吸収量に関わらず、一定の精度で液位を検出することができる。この点を以下に説明する。
各電極対42は電気的に独立しているため、それぞれ独立して電極41a間の静電容量を測定することができる。例えば、最も外側の配線ペア40から順に内方に向かう順に、若しくはその逆方順に、配線ペア40間に所定電圧を印加する。これにより、配線ペア40の電極41a間の静電容量を測定する。そして、その静電容量が、閾値以上であるか否かに基づいて電極41a間の部分に燃料30が存在するか否かを判定する。この判定では、燃料が「有る」か「無い」かのいずれかの判定値を出力する。
【0085】
そして、この判定は、配線ペア40の全てについて、若しくは燃料30が「有る」状態から「無い」状態と判定されるまで、若しくは燃料30が「無い」状態から「有る」状態と判定されるまで行われる。このような判定操作により、配線ペア40の列について、燃料30が「無い」状態から「有る」状態に切り替わる配線ペア40、もしくは燃料30が「有る」状態から「無い」状態に切り替わる配線ペア40が検出される。このようにして検出された配線ペア40の位置が燃料30の液位を示す。
【0086】
ところで、第1実施形態に係るプリント配線板1では、電極4a間の静電容量の大きさに基づいて液位を推定する。しかし、この構成の場合は、電極4a間またはその付近に存在する物質(例えば燃料30)の濃度変化(基材2またはカバーレイ3の厚さ方向に対する物質の濃度勾配の変化)に伴って両電極4a間の静電容量が変化する。そして、基材2及びカバーレイ3を燃料30の吸収率の低い部材で形成したとしても、この部材として樹脂を採用する限りにおいて多少の燃料30の吸収があることから、液位についての測定精度を更に高めることには限度があると考えられる。
【0087】
これに対して、図5に示すプリント配線板101の構造によれば、個々の電極対42において、静電容量の変化を検出することができる。
このため、適切な閾値を設定すれば、電極41a間に存在する物質(燃料30を構成する物質)の濃度変化に伴う両電極41a間の静電容量の変化に関わらず、電極41a間の部分において燃料30の有無を精確に判定することができる。これによって、基材2及びカバーレイ3の燃料30の吸収量に関わらず一定の精度で液位を検出することができる。
【0088】
また、基材2及びカバーレイ3が液晶ポリマにより形成されていることにより電極間の静電容量が一定になるため、個々の配線ペア40において燃料が「ある」か「ない」かの判定精度が高まる。これにより、液位の検出精度が高められる。
【0089】
図6を参照して、第2実施形態に係るプリント配線板101の変形例を説明する。
上記第2実施形態に係るプリント配線板101では、基材2の片面にだけ配線パターン4が形成されているが、この変形例に係るプリント配線板102では、基材2の両面に配線パターン4が形成されている。配線パターン4の配線部41bは、電極41aと同じ面側に配置される第1配線部41bxと、第1配線部41bxとスルーホールまたはバイアホールを介して接続されて電極41aの配置面とは反対側の面に配置される第2配線部41byとにより構成される。端子部41cは、第2配線部41byの端部に設けられる。
【0090】
更に、配線パターン4の構造は、次の点で、第2実施形態に係るプリント配線板101の配線パターン4とは異なる。
一列に配列された複数の電極対42において片側の電極41a群は、所定数の組に分けられて、同一組内の各電極41aが1本の第2配線部41byに接続される。このような構成により、第2配線部41byの本数が削減され、プリント配線板102の面積が小さくなる。
【0091】
図7を参照して、第3実施形態に係るプリント配線板201を説明する。
図7(a)はプリント配線板201の断面図であり、図7(b)は、そのプリント配線板201の側面図である。
【0092】
このプリント配線板201は、第1実施形態に係るプリント配線板1において、電極配置構造を異ならせている。図1に示すプリント配線板1では、同一平面上に2つの電極4aが配置されているが、このプリント配線板201では、2つの電極51aが対向するように配置され、かつ、それぞれの対向面が平行に設定されている。このような構成は、各電極51aの中間部分でプリント配線板201を折り曲げることにより実現される。折り曲げ位置は図7に記載された位置に限定されるものではなく、個々の設計によって、対となる電極51aが互いに対向するように折り曲げ位置を決めればよい。このような折り曲げを要する構造とするためには、プリント配線板201は可撓性を有することが好ましい。また、図3から図6に記載の構造においても、プリント配線板1,101が可撓性を有することによって、平面ではない構造物、例えば、円筒形状の燃料タンク20の壁面に沿ってプリント配線板1,101を密着して堅固に固定することができるため、精度の高い液位検出が可能となる。このため、プリント配線板1,101,102は可撓性を有することが好ましい。
【0093】
電極51aのそれぞれは、矩形に形成されている。また、電極51aのそれぞれは、その延長方向DE(長手方向)が、基材2及びカバーレイ3の流れ方向DFと一致するように構成されている。
【0094】
2つの電極51aは、一端から他端にわたってその間隔Scが一定幅となるように配置されている。一定幅とは、一端から他端にわたって2つの電極51aの間の間隔Scが所定距離範囲内にあることを示す。また、これを実現するため、電極51aの両端周辺には、2つの電極51aの間にスペーサ52が配置されている。燃料30は、電極51aの間の空間に自由に流通する。
【0095】
2つの電極51aの間隔Scは次のことを考慮し設定される。
2つの電極51aの間隔Scが狭すぎるときは毛細管現象によって燃料30がこの2つの電極51a間に広がってしまう。このことを考慮し、この間隔Scは、毛細管現象による液位の変動が大きくなり過ぎないように設定されている。一方、電極51a間の間隔Scが大き過ぎるときは、測定される静電容量が小さくなり、液位の測定精度が低下する。なお、液位の測定精度が低下を補うために電極面積を大きくしてもよい。
【0096】
このプリント配線板201によれば、第1実施形態に係るプリント配線板1と同様に、電極51a間の静電容量に基づいて燃料30等の液位を検出することができる。
また、プリント配線板201は、対向面で対向する一対対の電極51aを有するため、電極面積の変更によって、電極51a間の最大静電容量を変更することができる。このため、この構成では、静電容量の測定精度を比較的簡単に変更することが可能である。
【0097】
なお、第3実施形態に係るプリント配線板201は次のように構成することもできる。
電極51aのそれぞれを個別の基板に形成し、これら基板を互いに平行に配置する。この構成によっても、図7(a)に示すプリント配線板201と同様の効果を奏する。
【0098】
図8を参照して、第4実施形態に係るプリント配線板301を説明する。
このプリント配線板301は、上記のプリント配線板1と次の点で異なる。すなわち、第1実施形態に係るプリント配線板1は、基材2とカバーレイ3とを圧着した構造を有するが、このプリント配線板301は、基材2と配線パターン4との間に第1接着層5aを有し、かつカバーレイ3と配線パターン4との間に第2接着層5bを有する。第1及び第2接着層5a,5bは互いに接着するため、第1及び第2接着層5a,5bの接着面から水分が内部に入り込みにくい。また、第1及び第2接着層5a,5bは燃料30の吸収率の低い樹脂により形成されている。
【0099】
このような構成によれば、製造工程において、基材2とカバーレイ3との間または電極4a間に気泡やボイドが入りにくい。これは、基材2とカバーレイ3との圧着において、第1及び第2接着層5a,5bが流動することにより、基材2とカバーレイ3との間に広がって、また電極4a間に流込むためである。このため、このプリント配線板301は、接着層を介さずに基材2とカバーレイ3を積層するものに比べて、気泡やボイドが少ないものとなっている。この結果、このプリント配線板301は、気泡やボイドに起因するピール等による劣化が少なく、また気泡やボイドに起因する経時的な特性変化もしくは温度変化による特性変化が小さい。
【0100】
また、第1接着層5aの厚さ及び第2接着層5bの厚さは、配線パターン4の厚さよりも大きくすることが好ましい。この構成によれば、製造工程において、配線パターン4の端縁や2つの電極4aの間に気泡やボイドが生じることを更に抑制することができる。例えば、配線パターン4の厚さが18μmであるときは、第1接着層5aの厚さ及び第2接着層5bの厚さは共に25μmに設定される。
【0101】
なお、基材2とカバーレイ3とを第1接着層5a及び第2接着層5bを介して接着する構成は、第2実施形態に係るプリント配線板101や第3実施形態に係るプリント配線板201にも適用される。
【0102】
また、第1接着層5a及び第2接着層5bの厚さについての構成は、下記に示す第5実施形態に係るプリント配線板401や第6実施形態に係るプリント配線板501にも適用することが好ましい。
【0103】
図9を参照して、第5実施形態に係るプリント配線板401を説明する。
このプリント配線板401は、第1実施形態に係るプリント配線板1と次の点で異なる。すなわち、第1実施形態に係るプリント配線板1は、基材2とカバーレイ3とを圧着した構造を有するが、本実施形態に係るプリント配線板401は、基材2と配線パターン4との間に第1接着層5aを有し、かつカバーレイ3と配線パターン4との間に第2接着層5bを有する。そして、第1及び第2接着層5a,5bは露出しないように封止されている。基材2及びカバーレイ3の構成は、第1実施形態に係るプリント配線板1と同じ構成である。
【0104】
第1及び第2接着層5a,5bは、エポキシ樹脂などにより形成される。第1及び第2接着層5a,5bは燃料30の吸収率が高いため、第1及び第2接着層5a,5bが露出しないように基材2及びカバーレイ3の端部が液晶ポリマ部材6で封止される。液晶ポリマ部材6は、基材2及びカバーレイ3と同様に、燃料30の吸収率が2質量%以下、好ましくは1.0質量%以下の液晶ポリマにより形成されている。
【0105】
第1及び第2接着層5a,5bが燃料30を吸収している状態と、第1及び第2接着層5a,5bが燃料30を吸収していない状態とでは、電極領域AEにおいて燃料30が占める部分の比率が等しいときでも、吸収した燃料30の影響により、両状態において電極4a間の静電容量が異なるようになる。
【0106】
そこで、上記構成では、第1及び第2接着層5a,5bが露出しないように基材2の端部及びカバーレイ3の端部を液晶ポリマ部材6で封止する。この構成によって、第1及び第2接着層5a,5bが燃料30を吸収することを抑制することができる。
【0107】
なお、基材2及びカバーレイ3の端部を液晶ポリマ部材6で封止する構成は、基材2とカバーレイ3との間に接着層が介在するものについて、第2実施形態に係るプリント配線板101,102や第3実施形態に係るプリント配線板201にも適用される。
【0108】
図10を参照して、第6実施形態に係るプリント配線板501を説明する。
このプリント配線板501は、第5実施形態に係るプリント配線板401を次のように変更したものである。第5実施形態に係るプリント配線板401では、第1及び第2接着層5a,5bが露出しないように、基材2及びカバーレイ3の端部を液晶ポリマ部材6で覆っているが、この構成に代えて、第6実施形態に係るプリント配線板301では、基材2の端部2aを折り返してカバーレイ3に圧着する。なお、カバーレイ3の端部を折り返して基材2に圧着する構成を採用することもできる。この構成によっても、基材2の端部及びカバーレイ3の端部を容易に封止することができる。
【0109】
基材2またはカバーレイ3の端部を折り返すことによりプリント配線板501の端部を封止する構成は、基材2とカバーレイ3との間に接着層が介在するものについて、第2実施形態に係るプリント配線板101や第3実施形態に係るプリント配線板201にも適用される。
【0110】
図11を参照して、第7実施形態に係るプリント配線板601を説明する。
このプリント配線板601は、次の点で、第1実施形態に係るプリント配線板1と異なる。すなわち、第1実施形態に係るプリント配線板1は、基材2とカバーレイ3とが直接互いに接着した構造(図2参照)を有する。
【0111】
これに対して、このプリント配線板601は、接着層5を介して基材2にカバーレイ3が積層されている。接着層5は、液晶ポリマにより構成される。好ましくは、接着層5を構成する液晶ポリマとして、基材2の融点よりも低くかつカバーレイ3の融点よりも低いものが用いられる。
【0112】
このような構成により、プリント配線板601の吸水率が低下する。また、製造時において熱圧着により基材2とカバーレイ3とを接着させるときに、加熱温度を基材2の融点及びカバーレイ3の融点よりも低くすることができる。そして、このよう温度設定においても接着層5を十分に軟化させることができ、接着剤(接着層5の材料)を配線部41b間の隙間や電極41a間の隙間に充填させることができるようになる。これにより、基材2とカバーレイ3との間または電極4a間に気泡やボイドの形成が抑制される。
【0113】
このため、プリント配線板601は、電極領域に対して液体の占有率が所定値であるときの静電容量が一定である特性が向上し、かつ気泡やボイドに起因するピール等による劣化が少なく、また経時的な特性変化もしくは温度変化による特性変化が小さくなる。
【0114】
図12を参照して、第8実施形態に係るプリント配線板701を説明する。
このプリント配線板701は、次の点で第1実施形態に係るプリント配線板1と異なる。すなわち、第8実施形態に係るプリント配線板701は、第1実施形態に係るプリント配線板1の構成(図2参照)に加えて、基材2を覆う第1フッ素樹脂層7と、カバーレイ3を覆う第2フッ素樹脂層8とを備える。第1フッ素樹脂層7及び第2フッ素樹脂層8は、フッ素樹脂を主成分とする層である。ここで主成分とは、樹脂に対するフッ素樹脂の比率が50質量%以上であることを示す。好ましくは、第1フッ素樹脂層7及び第2フッ素樹脂層8は、フッ素樹脂が90質量%以上の樹脂により形成される。
【0115】
フッ素樹脂は液晶ポリマに比べてアルコール、特にメチルアルコールの吸収率が低い。このため、上記構成のプリント配線板701は、メチルアルコールの吸収によって生じる特性変化が小さくなり、プリント配線板701は、電極領域に対して液体の占有率が所定値であるときの静電容量が一定であるという特性が向上する。
【0116】
第1フッ素樹脂層7の厚さは、25μm以上200μm以下であることが好ましい。より好ましくは、第1フッ素樹脂層7の厚さは、50μm以上100μm以下である。第2フッ素樹脂層8の厚さは第1フッ素樹脂層7の厚さと同様に設定される。
【0117】
第1フッ素樹脂層7または第2フッ素樹脂層8の厚さが大きくなり過ぎると、電極4a間の静電容量が小さくなり過ぎて燃料30の検出精度が低下しすぎるためである。一方、第1フッ素樹脂層7または第2フッ素樹脂層8の厚さが小さくなり過ぎると、第1フッ素樹脂層7または第2フッ素樹脂層8のメチルアルコールを阻止する機能が低下するためである。例えば、第1フッ素樹脂層7または第2フッ素樹脂層8に傷がつくことにより、この部分からメチルアルコールが侵入して基材2またはカバーレイ3がメチルアルコールを吸収するおそれがある。
【0118】
フッ素樹脂としては、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(ポリテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、四フッ化エチレン・六フッ化エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリクロロトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリフッ化ビニル、THV(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ビニリデンフロライドの3種類のモノマーからなる熱可塑性フッ素樹脂)、フロオロエラストマー、等が挙げられる。また、これら化合物を含む混合物やコポリマーがフッ素樹脂を構成する材料として用いられる。
【0119】
更に、好ましくは、第1フッ素樹脂層7及び第2フッ素樹脂層8の少なくとも一方は、繊維織物シートを含む。繊維織物シートとしては、例えば、ガラスクロスシート、カーボンシート等が挙げられる。繊維織物シートに代えて、または繊維織物シートに加えて、第1フッ素樹脂層7と第2フッ素樹脂層8には、フィラー、不織布が含まれ得る。フィラーとしては、ガラスフィラー、カーボンフィラー等が挙げられる。不織布として、ガラス不織布、カーボン繊維不織布が挙げられる。繊維織物シートまたは不織布を含む第1フッ素樹脂層7及び第2フッ素樹脂層8を形成する部材としてのフッ素樹脂シートは、繊維織物シートまたは不織布に対するフッ素樹脂の含浸処理、または繊維織物シートまたは不織布とフッ素樹脂シートとの熱プレス処理等により形成される。これにより、プリント配線板701の剛性が高くなり、プリント配線板701の変形に伴う電極間の伸縮が抑制されるようになる。また、上述した理由によりプリント配線板701の生産性が向上する。
【0120】
図13を参照して、第9実施形態に係るプリント配線板801を説明する。
このプリント配線板801は、次の点で第1実施形態に係るプリント配線板1と異なる。第1実施形態に係るプリント配線板1では、基材2とカバーレイ3とが液晶ポリマを主成分とする樹脂で形成されているのに対して、第9実施形態に係るプリント配線板801では、基材2とカバーレイ3とがフッ素樹脂を主成分とする樹脂で形成されている。ここで主成分とは、樹脂に対するフッ素樹脂の比率が50質量%以上であることを示す。好ましくは、基材2とカバーレイ3はフッ素樹脂が90質量%以上の樹脂により形成される。
【0121】
基材2の厚さは、25μm以上200μm以下であることが好ましい。より好ましくは、基材2の厚さは、50μm以上100μm以下である。カバーレイ3の厚さは、基材2の厚さと同様に設定される。すなわち、カバーレイ3の厚さは、25μm以上200μm以下であることが好ましく、50μm以上100μm以下であることが更に好ましい。
【0122】
このような設定は、基材2またはカバーレイ3の厚さが大きくなり過ぎると、電極4a間の静電容量が小さくなり過ぎて燃料30の検出精度が低下しすぎるためである。また、基材2またはカバーレイ3の燃料の吸収量が増大することに起因して燃料30の検出精度が低下するためである。一方、基材2またはカバーレイ3の厚さが小さくなり過ぎると、基材2またはカバーレイ3の封止機能が低下するためである。例えば、基材2またはカバーレイ3に傷がつくことにより、この部分から燃料または空気が侵入して配線パターン4が劣化するおそれがある。
【0123】
フッ素樹脂としては、第8実施形態に係るプリント配線板701の説明において挙げたフッ素樹脂が用いられ得る。
更に、基材2とカバーレイ3の少なくとも一方は、好ましくはその両方(図13参照)は、繊維織物シート9を含む。繊維織物シート9としては、例えば、ガラスクロスシート、カーボンシート等が挙げられる。繊維織物シート9に代えて、または繊維織物シート9に加えて、基材2とカバーレイ3には、上述と同様のフィラー、上述と同様の不織布が含まれ得る。これにより、プリント配線板801の剛性が高くなり、プリント配線板801の変形に伴う電極間の伸縮が抑制されるようになる。また、上述した理由によりプリント配線板801の生産性が向上する。
【0124】
上記構成によれば、基材2とカバーレイ3とが共にフッ素樹脂により形成されている。フッ素樹脂は、ポリイミド樹脂やエポキシ樹脂など従来のプリント配線板に用いられる樹脂に比べて水及び燃料30の吸収率が低い。
【0125】
このため、第1実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、プリント配線板801は、浸漬時間や浸漬状態または温度条件に関わらず、電極領域AEに対して水や燃料30の占有率が所定値であるとき静電容量が一定になる。
【0126】
図14を参照して、第10実施形態に係るプリント配線板901を説明する。
このプリント配線板901は、次の点で第9実施形態に係るプリント配線板801と異なる。第9実施形態に係るプリント配線板801は、基材2とカバーレイ3とが直接互いに接着した構造(図13参照)を有する。これに対して、このプリント配線板901は、接着層5を介して基材2にカバーレイ3が積層されている。接着層5は、液晶ポリマにより構成される。接着層5の厚さは配線パターン4の厚さよりも大きいことが好ましい。好ましくは、接着層5を構成する液晶ポリマとして、基材2の融点よりも低くかつカバーレイ3の融点よりも低いものが用いられる。このような構成により、プリント配線板601の吸水率が低下する。また、製造時において熱圧着により基材2とカバーレイ3とを接着させるとき、加熱温度を基材2の融点及びカバーレイ3の融点よりも低くすることができる。これにより、第8実施形態と同様の効果が得られる。
【0127】
[その他の実施形態]
・上記各実施形態及び変形例について、配線パターン4の電極41aの構造は限定されない。上記第1及び第2実施形態では、電極対42を構成する2個の電極41aは、間隔Sbが一定幅となるように設定されているが、2個の電極41aにおいて互いに接近し合う部分の端縁は、互いに平行である必要はなく一部分において拡大または縮小されていてもよい。
【0128】
すなわち、電極対42を構成する2個の電極41aは、所定電圧の印加により両者の間の静電容量が検出可能な程度に互いに接近し合うように配置されていればよい。また、2個の電極41aの形状は、矩形に限定されない。例えば、電極41aは櫛歯状に形成され、一方の電極41aの歯と他方の電極41aの歯とが互い違いに位置するように、2個の電極41aが配置される。この構成によれば、電極対42において、2個の電極41aが互いに接近し合っている部位が長くなるため、電極41a間の静電容量が増大する。
【0129】
・液位センサ10については、次の構成を採用することもできる。
上記液位センサ10は第1実施形態に係るプリント配線板1を備えるが、このプリント配線板1に代えて上記第2〜第10実施形態のいずれか1つのプリント配線板101〜901,102を備えるように、液位センサ10を構成してもよい。このような液位センサ10においても、上記液位センサ10と同様の効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0130】
上記プリント配線板1,101〜901,102は、静電容量を測定する液位センサ10に用いると有益である。
液位センサ10は、燃料30の液位を測定する測定装置として用いると有益である。
【符号の説明】
【0131】
1,101,102,201,301,401,501,601,701,801,901…プリント配線板
2…基材
2a…端部
3…カバーレイ
4…配線パターン
4a…電極
4b…端子部
5…接着層
5a…第1接着層
5b…第2接着層
6…液晶ポリマ部材
7…第1フッ素樹脂層
8…第2フッ素樹脂層
9…繊維織物シート
10…液位センサ
11…測定部
12…導線
20…燃料タンク
30…燃料
40…配線ペア
41…配線
41a…電極
41b…配線部
41bx…第1配線部
41by…第2配線部
41c…端子部
42…電極対
51a…電極
52…スペーサ
AE…電極領域
DF…流れ方向
DR…直角方向
DE…延長方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
図11
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