(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6629510
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】金型装置及びそれを使用した金属製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B21D 28/14 20060101AFI20200106BHJP
B21D 28/02 20060101ALI20200106BHJP
H02K 15/02 20060101ALI20200106BHJP
【FI】
B21D28/14 B
B21D28/02 C
B21D28/02 A
H02K15/02 E
H02K15/02 F
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-31655(P2015-31655)
(22)【出願日】2015年2月20日
(65)【公開番号】特開2016-153131(P2016-153131A)
(43)【公開日】2016年8月25日
【審査請求日】2017年12月20日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(72)【発明者】
【氏名】橋本 彰博
(72)【発明者】
【氏名】岩田 謙一郎
【審査官】
金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第02801696(US,A)
【文献】
特開昭61−023529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 28/14
B21D 28/02
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
順送りされる金属薄板を順次打ち抜き加工する隣り合う加工ステーションでそれぞれ使用する、内側空間部を形成する連続する第1の周壁を備えた単一部材からなる第1のダイ、及び、内側空間部を形成する連続する第2の周壁を備えた単一部材からなる第2のダイを有する金型装置において、
前記第1、第2の周壁の外周部が互いに干渉するように、前記第2の周壁の外周部の一部に、前記第1の周壁の外周部の輪郭に沿った形状の切り欠きが形成され、該切り欠き内に前記第1の周壁の外周部が位置することで、前記第1、第2の周壁の外周面が直接接触することを特徴とする金型装置。
【請求項2】
請求項1記載の金型装置において、ダイプレートの厚さは前記第1、第2のダイの厚さより大きく、
前記ダイプレートの上面側に、前記第1、第2のダイがそれぞれ圧入される第1、第2の窪み部が並べて設けられ、前記第1、第2の窪み部の下側に、該第1、第2の窪み部に圧入された前記第1、第2のダイの下面に当接して支持する円周方向に連続する第1、第2の座面を備え、該第1、第2の窪み部に圧入された前記第1、第2のダイの内側空間部とそれぞれ連通し、該第1、第2のダイから排出される打ち抜き片が通過する第1、第2の貫通孔を中央部に備えた第1、第2の排出部が設けられていることを特徴とする金型装置。
【請求項3】
請求項2記載の金型装置において、前記第1、第2の窪み部は、前記第1、第2のダイの干渉部分が配置される連通部を介して連続し、(1)前記第1の排出部は前記ダイプレートと一体となり、該第1の排出部の一部は前記第1、第2の貫通孔の間に設けられてリブを形成し、又は(2)前記第1、第2の排出部はそれぞれ前記ダイプレートと一体となり、該第1、第2の排出部の一部は、前記第1、第2の貫通孔の間にそれぞれ設けられてリブを形成していることを特徴とする金型装置。
【請求項4】
請求項2記載の金型装置において、前記第1、第2の窪み部は、前記第1、第2のダイの干渉部分が配置される連通部を介して連続し、前記第1の排出部は前記ダイプレートと一体となり、該第1の排出部の一部は前記第1、第2の貫通孔の間に設けられてリブを形成し、前記第2の排出部は、前記第2の窪み部に該第2の窪み部と同一の断面を有して設けられた貫通部に着脱可能に設けられていることを特徴とする金型装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の金型装置において、前記第1のダイは前記金属薄板から鉄心片の内形抜き加工に使用する内形抜きダイ、前記第1の貫通孔は前記内形抜きダイから排出されるスクラップが通過するスクラップ排出孔、前記第2のダイは前記金属薄板から前記鉄心片の外形抜き加工に使用する外形抜きダイ、前記第2の貫通孔は前記外形抜きダイから排出される前記鉄心片が通過する製品排出孔であって、前記スクラップ排出孔の内周側は円形又は非円形となっていることを特徴とする金型装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の金型装置を使用した金属製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型化を図って打ち抜き速度を向上させた金型装置及びそれを使用した金属製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機の回転子や固定子をそれぞれ構成する積層鉄心(金属製品の一例)は、薄い電磁鋼板(金属薄板の一例)をプレスライン(一定の送りピッチで順送りしながら順次打ち抜く複数の加工ステーションを備えた金型装置)を用いて所定形状に打ち抜いて形成した鉄心片を所定枚数だけ積層してカシメ若しくは溶接等の手段で締結することにより製造される。
ここで、鉄心片は内形抜き(内周側の打ち抜き加工)の後に外形抜きを行って形成するので、
図4(A)、(B)に示すように、薄い電磁鋼板の送りピッチPは鉄心片の外径に合わせて設定している。また、内形抜き工程と外形抜き工程の間にアイドル工程(打ち抜かない工程)を設けて、ダイプレート80内において、内形抜き用ダイ81が圧入される位置と外形抜き用ダイ82が圧入される位置を離している。これにより、内形抜き用ダイ81及び外形抜き用ダイ82を一体で保持するダイプレート80に剛性(強度)を持たせて、圧入された内、外形抜き用ダイ81、82によりダイプレート80が変形して保持力が低下することを防止している(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平6−22375号公報
【特許文献2】特開平6−276712号公報
【特許文献3】特開平11−164527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電動機の性能向上のため、より複雑な形状をした積層鉄心が増加し、打ち抜き工程の増加に伴って積層鉄心の打ち抜きレイアウトが長くなるという問題が発生する。特に、車載用の電動機では、複雑な形状に加えて外径の大きな積層鉄心が多く存在するため、積層鉄心の打ち抜きレイアウトが長くなるという問題が更に顕著となっている。このため、金型装置が大型化し、金型装置の製造コストが増大するという問題がある。また、金型装置と連結して金型装置に打ち抜き動作を行わせるプレス装置が小さい場合、金型装置がプレス装置に搭載できない(金型装置をプレス装置に組み込むことができない)という問題が生じる。更に、金型装置が大型化すると、金型装置の上型の重量も増加するため、打ち抜き速度を大きくすることができないという問題が生じる。
【0005】
そこで、内形抜き工程と外形抜き工程の間に存在するアイドル工程を削除して、
図5(A)に示すように、内形抜き用ダイ81が圧入される位置と外形抜き用ダイ82が圧入される位置を、内、外形抜き用ダイ81、82を一体で保持するダイプレート83の剛性が低下しない範囲で接近させようとすると、内外形抜き用ダイ81と外形抜き用ダイ82との間の中心間距離P´を電磁鋼板の送りピッチPに一致させることができない場合が生じ、電磁鋼板を順送りできないという問題が生じる。
一方、
図5(B)に示すように、内形抜き工程と外形抜き工程の間に存在するアイドル工程を削除して、内形抜き用ダイ81と外形抜き用ダイ82との間の中心間距離を電磁鋼板の送りピッチPに一致させることができても、内、外形抜き用ダイ81、82間の隙間Cが小さくなって、内、外形抜き用ダイ81、82を一体で保持するダイプレート84に剛性を持たせることができなくなる場合が生じ、内、外形抜き用ダイ81、82をダイプレート84に高精度で保持することができないという問題が生じる。そして、最悪の場合、打ち抜き加工中にダイプレート84が破損する(隙間Cにき裂が発生する)という問題がある。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、小型化による製造コストの低減と打ち抜き速度の向上を図ることが可能な金型装置及びそれを使用した金属製品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う第1の発明に係る金型装置は、順送りされる金属薄板を順次打ち抜き加工する隣り合う加工ステーションでそれぞれ使用する、内側空間部を形成する連続する第1の周壁を備えた
単一部材からなる第1のダイ、及び、内側空間部を形成する連続する第2の周壁を備えた
単一部材からなる第2のダイを有する金型装置において、
前記第1、第2の周壁の外周部が互いに干渉するように、前記第2の周壁の外周部の一部に、前記第1の周壁の外周部の輪郭に沿った形状の切り欠きが形成され、該切り欠き内に前記第1の周壁の外周部が位置することで、前記第1、第2の周壁の外周面が直接接触する。
第1、第2のダイの外周部は互いに干渉しているので、第1、第2のダイの一方は円形の外形を有し、第1、第2のダイの他方は、円形の一部が干渉部分の他方側輪郭、即ち、干渉部分にある一方側輪郭に沿った形状に切り欠かれた外形を有している。
【0008】
第1の発明に係る金型装置において、ダイプレートの厚さは前記第1、第2のダイの厚さより大きく、
前記ダイプレートの上面側に、前記第1、第2のダイがそれぞれ圧入される第1、第2の窪み部が並べて設けられ、前記第1、第2の窪み部の下側に、該第1、第2の窪み部に圧入された前記第1、第2のダイの下面に当接して支持する円周方向に連続する第1、第2の座面を備え、該第1、第2の窪み部に圧入された前記第1、第2のダイの内側空間部とそれぞれ連通し、該第1、第2のダイから排出される打ち抜き片が通過する第1、第2の貫通孔を中央部に備えた第1、第2の排出部が設けられていることが好ましい。
【0009】
ここで、ダイプレートの厚みは、第1、第2のダイの厚みの1.1〜2.5倍とする。ダイプレートの厚みが第1、第2のダイの厚みの1.1倍未満では、ダイプレートの剛性低下を顕著に抑制することができない。一方、ダイプレートの厚みが第1、第2のダイの厚みの2.5倍を超えて厚くすると、ダイプレートの剛性は向上するがダイプレートの重量が増大し、材料コストが上昇するため好ましくない。
【0010】
第1の発明に係る金型装置において、前記第1、第2の窪み部は、前記第1、第2のダイの干渉部分が配置される連通部を介して連続し、(1)前記第1の排出部は前記ダイプレートと一体となり、該第1の排出部の一部は前記第1、第2の貫通孔の間に設けられてリブを形成し、又は(2)前記第1、第2の排出部はそれぞれ前記ダイプレートと一体となり、該第1、第2の排出部の一部は、前記第1、第2の貫通孔の間にそれぞれ設けられてリブを形成していることが好ましい。
第1、第2の貫通孔の間にリブが形成されているため、ダイプレートの剛性低下を更に抑制することができ、第1、第2のダイをダイプレートに高精度で保持するこができると共に、ダイプレートの厚さも薄くすることができる。
【0011】
第1の発明に係る金型装置において、前記第1、第2の窪み部は、前記第1、第2のダイの干渉部分が配置される連通部を介して連続し、前記第1の排出部は前記ダイプレートと一体となり、該第1の排出部の一部は前記第1、第2の貫通孔の間に設けられてリブを形成し、前記第2の排出部は、前記第2の窪み部に該第2の窪み部と同一の断面を有して設けられた貫通部に着脱可能に設けることもできる。
このような構成とすることによりダイプレートの構造が簡単になり、ダイプレートの製作コスト(金型製作コスト)を低減することができる。
【0012】
第1の発明に係る金型装置において、前記第1のダイは前記金属薄板から鉄心片の内形抜き加工に使用する内形抜きダイ、前記第1の貫通孔は前記内形抜きダイから排出されるスクラップが通過するスクラップ排出孔、前記第2のダイは前記金属薄板から前記鉄心片の外形抜き加工に使用する外形抜きダイ、前記第2の貫通孔は前記外形抜きダイから排出される前記鉄心片が通過する製品排出孔であって、前記スクラップ排出孔の内周側は円形又は非円形とすることもできる。
これによって、内周側が所望の形状となる鉄心片を作製することができる。
【0013】
前記目的に沿う第2の発明に係る金属製品の製造方法は、第1の発明に係る金型装置を使用する。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明に係る金型装置においては、アイドル工程を削除して打ち抜き工程を短縮するので、金型装置の下型を小型化することが可能になる。その結果、金型装置の上型も小型化するためプレス装置の打ち抜き速度を向上させることができ、打ち抜き工程の生産性を向上させることが可能になる。
【0015】
第2の発明に係る金属製品の製造方法においては、生産性が高い金型装置を使用するので、金属製品の製造コストを低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(A)は本発明の第1の実施の形態に係る金型装置において干渉状態で隣り合うダイを保持するダイプレートの平面図、(B)は側断面図である。
【
図2】(A)は同金型装置のダイプレートの斜視図、(B)は干渉状態で隣り合うダイを保持するダイプレートの斜視図である。
【
図3】(A)は本発明の第2の実施の形態に係る金属製品の製造方法を用いて鉄心片を製造する際の打ち抜き工程の説明図、(B)は従来の製造方法を用いて鉄心片を製造する際の打ち抜き工程の説明図である。
【
図4】(A)は内形抜き工程と外形抜き工程の間にアイドル工程を設けた打ち抜き工程で使用する内形抜き用ダイ及び外形抜き用ダイを保持するダイプレートの平面図、(B)は側断面図である。
【
図5】(A)はアイドル工程を省くと電磁鋼板を順送りできない状況を示す説明図、(B)はアイドル工程を省いても電磁鋼板を順送りできる状況を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1(A)に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る金型装置10は、順送りされる金属薄板の一例である薄い電磁鋼板11(
図3参照)を順次打ち抜き加工して積層鉄心(金属製品の一例)を構成する鉄心片12(
図3参照)を製造するものである。ここで、鉄心片12の内形抜きと外形抜きを行う隣り合う加工ステーションでそれぞれ使用する同一厚さで外形状が円形となった内形抜きダイ13(第1のダイの一例)と外形抜きダイ14(第2のダイの一例)は、内形抜きダイ13と外形抜きダイ14の外周部が互いに干渉する状態でダイプレート15に保持されている。そして、内形抜きダイ13の中心と外形抜きダイ14の中心との間の距離は、電磁鋼板11の順送りピッチPに一致している。なお、符号16、17は、内形抜きダイ13と外形抜きダイ14をそれぞれダイプレート15に固定する際に用いるキーである。以下、詳細に説明する。
【0018】
図1(A)に示すように、内形抜きダイ13の外周部と外形抜きダイ14の外周部は互いに干渉して干渉部分(干渉領域)18が形成されているので、例えば、内形抜きダイ13は円形の外形を有し、外形抜きダイ14は、円形の一部が干渉部分18の他方側輪郭、即ち、干渉部分18にある内形抜きダイ13の外側輪郭に沿った形状に切り欠かれた外形を有している。このため、
図1(B)、
図2(A)に示すように、ダイプレート15の上面側に、内形抜きダイ13が上方から圧入される平面視して円形の第1の窪み部19と、外形抜きダイ14が上方から圧入される平面視して円形の第2の窪み部20を並べて設けた場合、第1、第2の窪み部19、20は干渉部分18が配置される連通部21を介して連続している。
【0019】
図1(B)、
図2(A)、(B)に示すように、第1の窪み部19の下側には、第1の窪み部19に圧入された内形抜きダイ13の下面に当接して支持する円周方向に連続する第1の環状座面(第1の座面の一例)22を上面に備え、第1の窪み部19に圧入された内形抜きダイ13の内側空間部と連通し、内形抜きダイ13から排出されるスクラップ(打ち抜き片の一例)が通過する、即ちスクラップを外部に排出するスクラップ排出孔23(第1の貫通孔の一例)を中央部に備えた第1の排出部24が、ダイプレート15と一体に設けられている。
【0020】
図1(B)、
図2(A)、(B)に示すように、第2の窪み部20の下側には、第2の窪み部20と同一の断面を有して設けられた貫通部25が設けられている。そして、貫通部25には、第2の窪み部20に圧入された外形抜きダイ14の下面に当接して支持する円周方向に連続する第2の環状座面(第2の座面の一例)26を上面に備え、第2の窪み部20に圧入された外形抜きダイ14の内側空間部と連通し、外形抜きダイ14から排出される鉄心片(打ち抜き片の一例)が通過する、即ち鉄心片を外部に排出する製品排出孔27(第2の貫通孔の一例)を中央部に備えた第2の排出部28が着脱可能に設けられている。
なお、符号29、30は、内形抜きダイ13、外形抜きダイ14をそれぞれダイプレート15に固定する際に使用するキー16、17を差し込むキー溝である。
【0021】
以上の構成において、第1の排出部24がダイプレート15と一体に設けられていることにより、第1の排出部24の一部により、スクラップ排出孔23と、製品排出孔27が形成された第2の排出部28との間に、より詳細には、ダイプレート15にそれぞれ形成されたスクラップ排出孔23と貫通部25の間にリブが形成される。その結果、ダイプレート15にスクラップ排出孔23と貫通部25を並べて形成しても、ダイプレート15の剛性低下を抑制することができる。
【0022】
更に、
図1(B)に示すように、ダイプレート15の厚さT
Pは内形抜きダイ13、外形抜きダイ14の厚さT
Dより大きく、例えば、ダイプレートの厚みT
Pを、内形抜きダイ13、外形抜きダイ14の厚さT
Dの1.1〜2.5倍とする。これによって、スクラップ排出孔23と貫通部25の間で、一部がリブを形成する第1の排出部24の厚さを大きくすることができ、ダイプレート15が幅方向(内形抜きダイ13と外形抜きダイ14の中心間を結ぶ線分に直交する方向)に伸びて、内形抜きダイ13と外形抜きダイ14の保持力が低下するのを防止できる。なお、ダイプレート15の厚さT
Pが、内形抜きダイ13、外形抜きダイ14の厚さT
Dの1.1倍未満ではリブの厚さを大きくすることができず、ダイプレート15の伸び(剛性低下)が顕著になるため好ましくない。一方、ダイプレート15の厚さT
Pが、内形抜きダイ13、外形抜きダイ14の厚さT
Dの2.5倍を超えて厚くすると、ダイプレート15の伸びを低下させる(剛性を向上させる)ことができるが、ダイプレート15の重量が過大になって、ダイプレート15の材料コストが上昇するため好ましくない。
【0023】
続いて、本発明の第1の実施の形態に係る金型装置10を使用した積層鉄心(金属製品の一例)を構成する鉄心片の製造方法(即ち、本発明の第2の実施の形態に係る金属製品の製造方法)について説明する。
図3(A)に示すように、金型装置10では、スロット抜き工程で使用するスロット打ち抜きダイと、内形抜き工程で使用する内形抜きダイと、外形抜き工程で使用する外形抜きダイを、電磁鋼板11の順送り方向に並べて配置する際、
図1(A)、(B)に示すように、隣り合うダイ、例えば、内形抜きダイ13と外形抜きダイ14の外周部が互いに干渉する状態でダイプレート15に配置することができる。このため、各ダイを電磁鋼板11の順送りピッチに合わせて順に配置することができ、
図3(B)に示すように、内形抜き工程と外形抜き工程の間に従来から設けていたアイドル工程を削除することが可能になる。
【0024】
その結果、打ち抜き工程を、従来の打ち抜き工程と比較して短縮することができ、金型装置10の下型を小型化することが可能になる。また、金型装置10の下型が小型化することに伴って、上型も小型化するので、例えば、各ダイを保持するダイプレート15等の製作に使用する材料使用量を削減することができ、金型装置10の製造コストを低減することができる。
更に、金型装置10の上型が小型化するため、プレス装置の打ち抜き速度を向上させることができ、打ち抜き工程の生産性を向上させることが可能になる。これにより、鉄心片12の製造速度が向上し、積層鉄心の製造コストを低減することが可能になる。
【0025】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
更に、本実施の形態とその他の実施の形態や変形例にそれぞれ含まれる構成要素を組合わせたものも、本発明に含まれる。
例えば、本実施の形態では、第1の排出部をダイプレートと一体に設けて、スクラップ排出孔と製品排出孔が形成された第2の排出部が着脱可能に設けられる貫通部の間にリブが形成されるようにしたが、第2の排出部をダイプレートと一体に設けることもできる。この場合、スクラップ排出孔が形成された第1の排出部が、第1の窪み部の下側に第1の窪み部と同一の断面を有して設けられた貫通部に着脱可能に設けられることになって、この貫通部と第2の排出部の中央部に設けられた製品排出孔との間にリブが形成されることになる。また、第1、第2の排出部をそれぞれダイプレートと一体に設けて、スクラップ排出孔と製品排出孔の間にリブが形成されるようにしてもよい。
更に、スクラップ排出孔(第1の貫通孔)の内周側を円形としたが、スクラップ排出孔の内周側は、製造しようとする鉄心片の内周側形状に応じた形状とすることができ、例えば、非円形とすることができる。
【符号の説明】
【0026】
10:金型装置、11:電磁鋼板、12:鉄心片、13:内形抜きダイ、14:外形抜きダイ、15:ダイプレート、16、17:キー、18:干渉部分、19:第1の窪み部、20:第2の窪み部、21:連通部、22:第1の環状座面、23:スクラップ排出孔、24:第1の排出部、25:貫通部、26:第2の環状座面、27:製品排出孔、28:第2の排出部、29、30:キー溝