特許第6629512号(P6629512)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6629512トルラ酵母由来グルコシルセラミド含有コラーゲン産生促進組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6629512
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】トルラ酵母由来グルコシルセラミド含有コラーゲン産生促進組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9728 20170101AFI20200106BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20200106BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20200106BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20200106BHJP
   A61K 31/7028 20060101ALI20200106BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20200106BHJP
   A23L 33/18 20160101ALI20200106BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20200106BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20200106BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20200106BHJP
   A61K 36/062 20060101ALI20200106BHJP
【FI】
   A61K8/9728
   A61K8/64
   A61K8/60
   A61Q19/00
   A61K31/7028
   A23L33/10
   A23L33/18
   A61K38/17
   A61P43/00 111
   A61P17/16
   A61K36/062
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-56421(P2015-56421)
(22)【出願日】2015年3月19日
(65)【公開番号】特開2016-175857(P2016-175857A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2018年2月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】519127797
【氏名又は名称】三菱商事ライフサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160978
【弁理士】
【氏名又は名称】榎本 政彦
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 知美
(72)【発明者】
【氏名】中川 智寛
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寿哉
(72)【発明者】
【氏名】阿孫 健一
【審査官】 塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−143605(JP,A)
【文献】 特開2014−087278(JP,A)
【文献】 特開2000−309521(JP,A)
【文献】 特開2010−095499(JP,A)
【文献】 特開2002−255847(JP,A)
【文献】 特開2012−246287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61K 35/00−51/12
A23L 2/00−35/00
A61P 17/16
A61P 43/00
A61Q 19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルラ酵母菌体から抽出されたグルコシルセラミドとコラーゲンペプチドとを含有するコラーゲン産生促進組成物であって、
前記コラーゲンペプチド100質量部に対して、酵母由来のグルコシルセラミドが5〜30質量部であるコラーゲン産生促進組成物。
【請求項2】
請求項1のコラーゲン産生促進組成物を含有する飲食品。
【請求項3】
請求項1のコラーゲン産生促進組成物を含有する化粧品。
【請求項4】
請求項1のコラーゲン産生促進組成物を含有する皮膚外用剤。
【請求項5】
請求項1のコラーゲン産生促進組成物を含有する医薬品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルラ酵母由来グルコシルセラミドと、コラーゲンペプチドを利用したコラーゲン産生促進効果に優れた組成物を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
真皮の主要なマトリックス成分であるコラーゲン線維の減少は、皮膚の厚みを減少させ、しわ・たるみの要因の一つとなっている。従って、しわやたるみの予防、改善のためにはコラーゲンの減少を防ぐことが重要であると考えられる。
【0003】
コラーゲンを酵素分解などにより低分子量化し、吸収性を高めたコラーゲンペプチドが、コラーゲンの産生を促進する美容素材として知られ(例えば非特許文献1)、化粧品やサプリメントなどに多用されている。しかしながら、十分な効果を発現、実感させるためにはコラーゲンペプチドを大量摂取する必要がある。一方で、低分子量化したコラーゲンペプチドは特有の風味、臭気を有することから、使用量が制限される。従って、コラーゲンペプチドによるコラーゲン産生促進効果を増強させることが重要であると考えられる。
【0004】
グルコシルセラミドとは、スフィンゴイド塩基と脂肪酸がアミド結合したセラミド骨格に、1分子のグルコースが結合したスフィンゴ糖脂質の一種である。動植物や微生物に幅広く分布し、サプリメント等で摂取した場合、肌機能の改善効果(非特許文献2)や、大腸がんの予防効果(特許文献1)があることなどから近年、健康食品素材として注目を集めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−187391号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】C,Oba, H .Ohara, M.Morifuji, K.Ito,S.Ichikawa, K.Kawahara, J.Koga., Collagen hydrolysate intake improves the loss of epidermal barrier function and skin elasticity induced by UV−B irradiation in hairless mice, Photodermatol Photoimmunol Photomed, 29, 204−211, 2013
【非特許文献2】M,Hori, S.Kishimoto, Y.Tezuka, H.Nishigori, K.Nomoto, U.Hamada, Y.Yonei., Double−blind study on effects of glucosyl ceramide in beet extract on skin elasticity and fibronectin production in human dermal fibroblast, Anti−Aging Medicine, 7, (11), 129−142, 2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、コラーゲンペプチドのコラーゲン産生促進効果が相乗的に増強されて発揮でき、食品分野や化粧品、医薬品分野にて有用な組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、ヒト線維芽細胞におけるコラーゲン産生促進効果を確認したところ、コラーゲンペプチドとトルラ酵母由来のグルコシルセラミドを併用することで、コラーゲン産生効果が相乗的に増強されることを見出した。
【0009】
また本発明では、コラーゲンペプチドとトルラ酵母由来のグルコシルセラミドとの併用による線維芽細胞におけるコラーゲン産生促進効果が、コメ、コーン、コンニャク由来のグルコシルセラミドとコラーゲンペプチドとの併用による効果に比較して優れていることを見出した。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、コラーゲンペプチドに微量のトルラ酵母由来グルコシルセラミドを併用することで相乗的なコラーゲン産生促進効果が得られ、一般的なコラーゲン産生促進剤であるコラーゲンペプチドのコラーゲン産生促進効果を効率的に促進することが出来る。
【0011】
また本発明により、トルラ酵母由来グルコシルセラミドとコラーゲンペプチドの併用によるコラーゲン産生促進効果はコメ、コーン、こんにゃく由来のグルコシルセラミドとコラーゲンペプチドの併用による効果よりも優れていることを確認した。
【0012】
さらに、トルラ酵母由来グルコシルセラミドは、トルラ酵母から酵母エキスを抽出して得られた酵母菌体から得ることが可能であり、酵母菌体を有効利用できるため、コスト、廃棄物削減の点でも、極めて有利で安価なコラーゲン産生促進組成物を提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明で使用するコラーゲンペプチドとは、動物や魚介類、主に牛、豚、魚由来のコラーゲンを分解して低分子化したものであり、起原や分子量、組成は特に限定されるものではないが、食品衛生上、薬学的、又は香粧的に許容されるものが望ましい。
【0014】
本発明で使用する酵母は、グルコシルセラミドを含有する酵母であればよい。特に好ましくは、一般名トルラ酵母と称されるCandida utilisである。酵母の培養形式はバッチ培養、あるいは連続培養のいずれかが用いられる。培地には炭素源として、ブドウ糖、酢酸、エタノール、グリセロール、糖蜜、亜硫酸パルプ廃液等が用いられ、窒素源としては、尿素、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸塩などが使用される。リン酸、カリウム、マグネシウム源としては例えば過リン酸石灰、リン酸アンモニウム、塩化カリウム、水酸化カリウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等が使用でき、その他亜鉛、銅、マンガン、鉄イオン等の無機塩を添加する。その他、ビタミン、アミノ酸、核酸関連物質等を添加したり、カゼイン、酵母エキス、肉エキス、ペプトン等の有機物を添加しても良い。培養温度は21〜37℃、好ましくは25〜34℃で、pHは3.0〜8.0、特に3.5〜7.0が好ましい。培養条件によりアミノ酸や核酸の生産性が変動するため、目的とする酵母エキスの製品仕様に合わせて条件設定を行う。
【0015】
酵母菌体培養後に集菌し、得られた菌体から酵母エキスの抽出を行う。本願では、エキス抽出後の酵母を酵母残渣としている。酵母エキスの抽出法は、特に制限がないが、一般的に、自己消化法、熱水抽出法、酵素抽出法、酸、若しくはアルカリ抽出法、又はこれらの組み合わせにより行うことが可能である。
【0016】
自己消化により酵母エキスを抽出する場合は、例えば集菌後洗浄して得られた菌体懸濁液を適温で適当な時間攪拌する。酵素抽出法であれば、細胞壁溶解酵素又はプロテアーゼ等で攪拌抽出する。酸抽出法であれば、硫酸等で酸性に調整後、抽出する。アルカリ抽出法であれば、アルカリに調整後、抽出する。又は、自己消化後に、酵素抽出をする等の組み合わせも可能である。
【0017】
上記の酵母中のエキス抽出により、タンパク質や核酸が抽出除去されると共に、ステロール配糖体など一部の夾雑物が除去され、結果としてグルコシルセラミドが富化された酵母残渣が製造される。
【0018】
エキス抽出後は遠心分離で酵母残渣を回収し、残渣を水に懸濁して遠心分離を行うことで洗浄し、このような洗浄を1回または複数回繰り返す。洗浄後の残渣を必要に応じて、凍結乾燥又は熱風乾燥することも可能である。得られた酵母残渣をトルラ酵母由来グルコシルセラミド原料とする。
【0019】
続いて上記原料を用いてグルコシルセラミドの精製を行う。精製の方法に制限はないが、食品として用いることができる精製法が望ましい。例えば、特開2002−281936号公報に記載されている方法で精製することができる。アルコール抽出を行う場合は、トルラ酵母由来グルコシルセラミド原料の乾燥質量に対して約2倍量の90%エタノールを使用し、攪拌によりグルコシルセラミドの抽出を行う。抽出後は抽出液を遠心分離で回収し、濃縮及び凍結乾燥または熱風乾燥させることでグルコシルセラミド組成物が得られる。なお、本願では、グルコシルセラミドの定性分析をTLCで、定量分析をHPLC−ELSDで行った。
【0020】
必要に応じて、グルコシルセラミド組成物をさらに精製することにより、グルコシルセラミド含有量の高い組成物を製造することもできる。精製法は、既知の方法により精製可能であり、例えば、シリカゲルやイオン交換樹脂などのカラム精製、又はアルカリ処理や溶媒分画等を用いることができる。
【0021】
このようにして得られたトルラ酵母由来のグルコシルセラミドは、コラーゲンペプチドと組み合わせて用いることにより、コラーゲンペプチドのコラーゲン産生促進効果を相乗的に増強することが出来、これらを両方含有するものをコラーゲン産生促進組成物とする。
【0022】
該組成物における、酵母由来グルコシルセラミドとコラーゲンペプチドの含有量の比は特に限定しないが、コラーゲンペプチドに対して微量の酵母由来グルコシルセラミドを配合しただけでも相乗的なコラーゲン産生促進効果を奏する。望ましい含有量の比は、コラーゲンペプチド100質量部に対して、酵母由来のグルコシルセラミドが0.1〜100質量部、より望ましくは0.5〜50質量部、さらに望ましくは5〜30質量部である。
【0023】
本発明のコラーゲン産生促進組成物は、飲食品、化粧品、皮膚外用剤又は医薬品に適用することが出来る。
【0024】
本発明における飲食品とは、食料品、飲料品、嗜好品、サプリメント等、経口で摂取するものを指す。これらに、本発明のコラーゲン産生促進組成物を含有させることができるが、その形態は特に限定されるものではなく、パン類、麺類等主菜となりうるもの、チーズ、ハム、ウインナー、魚介加工品等副菜となりうるもの、果汁飲料、炭酸飲料、乳飲料等の飲料、クッキー、ケーキ、ゼリー、プリン、キャンディー、ヨーグルト等の嗜好品等とすることができる。また、サプリメントとしての形態も特に限定されるものではなく、錠剤、カプセル、ソフトカプセル、栄養ドリンク状の形態をとることもできる。
【0025】
飲食品における上記組成物の配合量は特に限定されるものではなく、例えば該コラーゲン産生促進組成物が飲食品の0.001〜50質量%含まれていればよい。中でも0.01〜10質量%が好適であり、0.1〜5質量%はさらに好適である。
【0026】
本発明の化粧品は、上記組成物を配合した化粧水、乳液、ファンデーション、口紅などを指す。
【0027】
化粧品における上記組成物の配合量は特に限定されるものではなく、例えば該コラーゲン産生促進組成物が化粧品の0.001〜50質量%含まれていればよい。中でも0.01〜10質量%が好適であり、0.1〜5質量%はさらに好適である。
【0028】
また本発明の皮膚外用剤又は医薬品とは、上記組成物を配合したローション、クリーム、軟膏、スプレー、貼付剤(材)などの形状のものを指すが、その形態は特に限定されるものではなく、本発明の目的とする効果を発揮しうるものであればいかなる形態でもかまわない。
【0029】
皮膚外用剤又は医薬品における上記組成物の配合量の配合量は特に限定されるものではなく、例えば上記組成物が皮膚外用剤又は医薬品の0.001〜50質量%含まれていればよい。中でも0.01〜10質量%が好適であり、0.1〜5質量%はさらに好適である。
【実施例】
【0030】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0031】
(酵母の培養)
Candida utilis CS7529株(FERMP−3340)を予めYPD培地(酵母エキス1%、ポリペプトン2%、グルコース2%)を含む三角フラスコで種母培養し、これを30L容発酵槽に18L培地に1〜2%植菌した。培地組成は、グルコース4%、燐酸一アンモニウム0.3%、硫酸アンモニウム0.161%、塩化カリウム0.137%、硫酸マグネシウム0.08%、硫酸銅1.6ppm、硫酸鉄14ppm、硫酸マンガン16ppm、硫酸亜鉛14ppmを用いた。培養条件は、pH4.0、培養温度30℃、通気量1vvm、撹拌600rpmで行い、アンモニアを添加しpHのコントロールを行った。16時間菌体培養した後、培養液を回収し、遠心分離により集菌し、湿潤酵母菌体を得た。得られた湿潤菌体は、蒸留水に懸濁して遠心分離を繰り返すことで洗浄し、熱風乾燥させた。
【0032】
(酵母残渣の取得)
熱風乾燥させたトルラ酵母の乾燥菌体5kgを蒸留水50Lに懸濁し、2N NaOHでpH13.0に調整した後、70℃で30分間撹拌抽出した。エキス抽出後は遠心分離で酵母残渣を回収し、酵母残渣の蒸留水への懸濁と遠心分離を3回繰り返すことで洗浄した。洗浄後は酵母残渣を真空乾燥することで3.3kgのエキス抽出酵母残渣が得られた。
【0033】
(グルコシルセラミドの精製)
得られた酵母残渣全量を2倍量の90%エタノールに懸濁し、60℃で10時間撹拌してグルコシルセラミドを抽出した。遠心分離により抽出液を回収し、酵母残渣をエタノールで3回洗浄した洗浄液と合わせて濃縮した結果、抽出物300gが得られた。これをグルコシルセラミド含有組成物とし、HPLC−ELSDで分析した結果、グルコシルセラミドが3.0%含有されていた。またTLCによる分析の結果、夾雑物のステロール配糖体は確認されなかった。コラーゲン産生促進効果の確認用のサンプルには、上記抽出物15gをエタノールに溶解し、シリカカラムを用いて精製することでグルコシルセラミドを50%含有する組成物0.6gが得られた。得られた酵母由来グルコシルセラミド組成物を用いてコラーゲン産生促進作用の評価を行った。
【0034】
(HPLC−ELSD条件)
グルコシルセラミドの定量には高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた。カラムにはGLサイエンス社製Inertsil 100Aを用い、グルコシルセラミドの検出は蒸発光散乱検出器(島津製ELSD−LTII)で行った。溶出溶媒にはクロロホルム/メタノール:水=95:5(容量比)のグラジエントを用いた。カラム温度は35℃、流速は1mL/min、ドリフトチューブ温度は40℃で窒素ガス圧力は350kPaであった。グルコシルセラミド含有量は、グルコシルセラミド標準品(Glucocelebrosides、マトレヤ社製)及びグルコシルセラミド含有組成物をそれぞれ解析して得られるクロマトグラムにおける、グルコシルセラミドを示すピークの面積比より算出した。
【0035】
(TLC条件)
TLCはシリカゲルプレート(メルク社製Silicagel 60、層厚0.25mm)を使用し、クロロホルム:メタノール:水=65:16:2(容量比)で展開した。展開後はシリカゲルプレートを乾燥させ、アニスアルデヒド硫酸試薬を噴霧して加熱することで発色させた。
【0036】
トルラ酵母、コメ、コーン、又はコンニャク由来グルコシルセラミドそれぞれ(単独区)のコラーゲン産生促進効果、及びそれらをコラーゲンペプチドと混合したもの(併用区)のコラーゲン産生促進効果を評価した。コメ由来グルコシルセラミドには、市販の米由来グルコシルセラミド3%含有組成物、コーン由来グルコシルセラミドには、市販のコーン由来グルコシルセラミド3%含有組成物、コンニャク由来グルコシルセラミドには、市販のコンニャク由来グルコシルセラミド3%含有組成物を使用した。
【0037】
(ヒト線維芽細胞のコラーゲン産生量の評価)
正常ヒト線維芽細胞を24ウェルプレートに播種(6×10cells/well)し、24時間前培養した(5% CO、37℃)。培養液は、1%牛胎児血清を含むD−MEM培地を使用した。その後、各原料由来グルコシルセラミド、コラーゲンペプチドをそれぞれ最終濃度が10μg/mL、200μg/mLとなるように添加した新鮮な培地に交換し、72時間培養した。対照は何も添加しない新鮮な培地に交換した。培養後、培養上清を100μL採取し、0.5M酢酸に溶解した0.1質量%のシリウスレッド溶液300μLを上記の培養上清に加えて振とう後、1時間室温で染色した。これを10000rpmで5分間遠心分離し、上清を捨てた後、コラーゲンとシリウスレッドの複合体形成による沈殿を回収した。回収した沈殿を10mM HClで2回洗浄した後、0.1N NaOHに溶解したものをサンプルとして、マイクロプレートリーダーを用いて540nmの吸光度を測定した。対照の吸光度をコラーゲン産生率100%とし、各サンプルを添加した培養上清の吸光度からそれぞれのコラーゲン産生率を求めた。
【0038】
各原料由来グルコシルセラミドとコラーゲンペプチドを併用した併用区のコラーゲン産生率の予測値は、各原料由来グルコシルセラミドの単独区、及びコラーゲンペプチドのみのコラーゲン産生率から以下の式で求めた。
予測値(%)={単独区の産生率(%)+コラーゲンペプチドの産生率(%)}−100(%)
【0039】
各原料由来グルコシルセラミドとコラーゲンペプチドの併用による効果は、併用区の実測値と予測値との比較で評価した。(実測値)/(予測値)比が、1.10以上の場合を相乗効果、0.90超過1.10未満の場合を相加効果、0.90以下の場合を相殺効果と判定した。
【0040】
上記実施例の結果を表1に示す。表中の表示において◎は相乗効果、○は相加効果、×は相殺効果を示す。
【0041】
【表1】
【0042】
結果、トルラ酵母由来グルコシルセラミドとコラーゲンペプチドの併用区のみ、コラーゲン産生促進効果が相乗的に増強されることが確認された。すなわち、トルラ酵母由来のグルコシルセラミドは、コメ由来、コーン由来、コンニャク由来のグルコシルセラミドと比べて、コラーゲンペプチドのコラーゲン産生促進効果を顕著に向上させることが示された。