特許第6629561号(P6629561)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6629561-ポストフォーム化粧板の製造方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6629561
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】ポストフォーム化粧板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/28 20060101AFI20200106BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20200106BHJP
   B32B 27/42 20060101ALI20200106BHJP
   B27D 5/00 20060101ALI20200106BHJP
   B32B 9/02 20060101ALI20200106BHJP
【FI】
   B32B5/28 A
   B32B27/00 E
   B32B27/42 101
   B27D5/00
   B32B9/02
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-199546(P2015-199546)
(22)【出願日】2015年10月7日
(65)【公開番号】特開2017-71127(P2017-71127A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2018年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松井 勇輔
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−073978(JP,A)
【文献】 特開2006−241337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 5/28
B27D 5/00
B32B 9/02
B32B 27/00
B32B 27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物由来原料変性フェノール樹脂及びポリオールを含む混合樹脂液が、繊維質基材に含浸、乾燥された、樹脂含浸コア紙と、
アミノ−ホルムアルデヒド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂から選択される熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂液が、化粧板用化粧紙に含浸、乾燥された、樹脂含浸化粧紙と、
を積層し、熱圧成形することを特徴とするポストフォーム化粧板の製造方法。
【請求項2】
前記植物由来原料変性フェノール樹脂が、レゾール型であることを特徴とする請求項1記載のポストフォーム化粧板の製造方法。
【請求項3】
前記植物由来原料変性フェノール樹脂は、フェノール系水酸基をもつモノマーと、アルデヒド類との反応により合成され、
フェノール系水酸基をもつモノマーは、植物由来のカシューナッツシェルオイルと石油由来のフェノール類とを含み、
その配合割合は、重量比で1:0.1〜10であることを特徴とする請求項1又は2記載のポストフォーム化粧板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポストフォーム化粧板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メラミン化粧板は豊富な色柄と、耐衝撃性、曲げ強度、耐汚染性等の物理・化学的性能、メンテナンス性など優れた特徴を有することから店舗、医療福祉施設など公共施設の家具・什器から住宅家具まで幅広い用途で使用されている。
【0003】
メラミン化粧板は、一般的に、樹脂含浸化粧紙、樹脂含浸コア紙等を積層し、熱圧成形することにより製造することができる。樹脂含浸化粧紙は、化粧板用化粧紙に、メラミン樹脂を含浸することにより製造することができ、また、樹脂含浸コア紙は、繊維質基材に、熱硬化性樹脂を含浸することにより製造することができる。その他、必要に応じて、樹脂含浸裏打紙を配したり、表面保護層や中間層が設けられたりする。
【0004】
近年では、環境意識の高まりから、各種の成形材料の分野において、植物由来の原料を用いることが検討されている。そこで、本願の出願人は、植物由来の原料を用いた化粧板を発明した(特許文献1)。具体的には、植物由来原料により変性したフェノール樹脂を合成し、繊維質基材に含浸させてプリプレグとし、積層後、熱圧成形することで、植物由来原料を用いた化粧板を得た。この化粧板は、従来のメラミン化粧板における優れた物性を維持したままで、弱点であった耐クラック性等の向上を図ることに成功した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2014−224231号
【0006】
ところで、メラミン化粧板の用途としては、主に、机の天板などの水平面の他、カウンターなどの曲面に対する加工(ポストフォーム加工)がある。その場合、あらかじめ曲面に加工した基材に対して、メラミン化粧板を徐々に曲げて、基材に貼着していく製造方法が採られる。その際に、従来のメラミン化粧板では、可とう性に欠け、曲げに対する抵抗力が強いことから、ポストフォーム加工が難しかった。また、前述した植物由来原料を用いた化粧板においても、やや可とう性が改善されているものの、作業性が悪いという問題が発生していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の化粧板の優れた物性を維持したままで、さらに曲げ加工性を飛躍的に向上させたポストフォーム化粧板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、植物由来原料変性フェノール樹脂及びポリオールを含む混合樹脂液が、繊維質基材に含浸、乾燥された、樹脂含浸コア紙と、アミノ−ホルムアルデヒド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂から選択される熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂液が、化粧板用化粧紙に含浸、乾燥された、樹脂含浸化粧紙と、を積層し、熱圧成形することを特徴とするポストフォーム化粧板の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により製造されるポストフォーム化粧板は、その優れた物性から、通常の家具や什器の他に、より厳しい環境下における用途にも対応し、さらに従来のメラミン化粧板よりも、曲げ加工性が飛躍的に向上している。また、バイオマス原料を用いていることから、近年の環境問題にも対応したものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明においては、樹脂含浸コア紙を製造するために、植物由来原料変性フェノール樹脂及びポリオールを含む混合樹脂液を調製する。
【0011】
このうち、植物由来原料変性フェノール樹脂については、2段階の反応で合成することが好ましい。具体的な合成方法としては、例えば、第1段階の反応では、フェノール系水酸基をもつモノマーと、アルデヒド類と、触媒を仕込み、撹拌しながら加熱し、所定時間反応させた後、自然冷却する。次いで、第2段階の反応では、更に、アルデヒド類と、触媒を加え撹拌しながら加熱して所定時間反応させる。このような2段階の反応にすることにより未反応モノマーが揮発して、最終生成物中に残りにくくなるといったメリットがある。多量の未反応モノマーが樹脂中に残留すると、臭気の問題が発生したり、樹脂及び化粧板の品質の安定性に欠けたりするため、好ましくない。
【0012】
植物由来原料としては、カシューナッツシェルオイルや、リグニン、ロジン等を挙げることができる。本発明においては、カシューナッツシェルオイルを用いるのが好ましい。
【0013】
(a)カシューナッツシェルオイルは、カシューナッツの殻から油状の液を抽出することにより得られ、収穫量が非常に多く、その供給にも支障がないといった利点がある。カシューナッツシェルオイルは、主成分としてカルダノールが含まれており、その他の成分として、カルドール等が含まれている。これらはフェノール系水酸基をもつため、アルデヒド類と反応させてカシューナッツシェルオイル変性フェノール樹脂を合成することができる。カシューナッツシェルオイルは、そのまま反応原料として用いてもよいが、ダイマーやトリマー等からなる不純物が含まれるため、蒸留、溶剤抽出などにより精製された精製カシューナッツシェルオイルを用いる方が化粧板としての物性が安定しやすく好ましい。
【0014】
本発明においては、(a)成分の他に、(b)石油由来のフェノール類を併用することができる。(b)成分としては、フェノール、クレゾール、レゾルシン、キシレノール、オクチルフェノール、フェニルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFなどが挙げられ、1種又は2種以上を選択して用いる。
【0015】
(a)成分と(b)成分との配合割合は、重量比で、1:0.1〜10であることが好ましく、1:0.3〜8がさらに好ましく、1:0.5〜5が特に好ましい。ここで、(a)成分に関しては、不純物を除いた重量である。この範囲において、配合することにより、成分が分離することなく樹脂が合成でき、また、成形した化粧板の諸物性が飛躍的に向上する効果がある。
【0016】
植物由来原料変性フェノール樹脂の合成には、上記の(a)及び(b)成分に対し、(c)アルデヒド類を反応させる必要がある。(c)成分としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、パラアルデヒド、グリオキザール、ヘキサメチレンテトラミン、フェニルアセトアルデヒド、o−トルアルデヒド、ベンズアルデヒドなどが挙げられ、1種又は2種以上を選択して用いる。これらの中でも合成時の反応性の高い、ホルムアルデヒドやパラホルムアルデヒドを用いるのが好ましい。
【0017】
第1段階の(c)アルデヒド類の配合割合としては、(a)及び(b)成分のフェノール系水酸基をもつモノマーの合計1モルに対して、(c)成分が0.5〜1.5モルとなるよう配合することが好ましく、0.7〜1.3モル配合することがさらに好ましく、0.8〜1.2モル配合することが特に好ましい。この範囲内において、配合することにより、合成した樹脂の分子構造上、適度に隙間ができることから、可とう性が付与される傾向にあり、また、化粧板として成形する際の、樹脂含浸コア紙と樹脂含浸化粧紙との密着が良好となる効果がある。
【0018】
また、第1段階の後に、第2段階として、更に(c)成分を添加するのが好ましい。その際の(c)成分としては、第1段階と同じものを用いることができる。第2段階の(c)アルデヒド類の配合量としては、(a)及び(b)成分のフェノール系水酸基をもつモノマーの合計1モルに対して、(c)成分のアルデヒド基が、0.01〜0.5モルとなるよう配合することが好ましく、0.05〜0.3モル配合することが特に好ましい。
【0019】
合成反応は、第1段階、第2段階ともに、塩基性触媒で行うのが好ましく、その際のpHの範囲は、8.0〜9.0が好ましい。塩基性触媒としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属及びマグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属の酸化物や水酸化物、及びトリエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、アンモニア水などのアミン類が挙げられ、1種又は2種以上を選択して用いる。第1、2段階の塩基性触媒の配合量の合計としては、第1、2段階における、(a)、(b)及び(c)成分の固形分の総合計100重量部に対して、固形分で0.1〜20重量部配合することが好ましく、0.5〜10重量部配合することが特に好ましい。ここで、(a)成分に関しては、不純物を除いた重量である。
【0020】
ここで、合成反応終了前には、ポリオール化合物を配合することにより、混合樹脂液を調製する。ポリオール化合物を配合することにより、植物由来原料変性フェノール樹脂に、可とう性を付与することができる。
【0021】
ポリオール化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,4−ブタンジオールなどが挙げられ、1種又は2種以上を選択して用いる。このうち、グリコール化合物を用いることが好ましい。その配合量は、第1、2段階における、(a)、(b)及び(c)成分の固形分の総合計100重量部に対して、0.01〜20重量部配合することが好ましく、0.1〜10重量部配合することがさらに好ましく、1〜8重量部配合することが特に好ましい。ここで、(a)成分に関しては、不純物を除いた重量である。
【0022】
また、その際には、未反応のモノマーを減らすために、ホルムアルデヒドのキャッチャー剤を添加してもよい。キャッチャー剤としては、尿素が好適に用いられる。
【0023】
その他、合成反応における反応溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトンを用いても良い。また、これらの溶媒は、反応終了前後にも希釈溶媒として用いることができる。
【0024】
その他、合成反応時には、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、粘着付与樹脂、可塑剤、消泡剤及び濡れ性調製剤等の各種添加剤を配合してもよい。
【0025】
本発明では、植物由来原料変性フェノール樹脂及びポリオールを含む混合樹脂液が、繊維質基材に含浸、乾燥された、樹脂含浸コア紙を用いる。
【0026】
繊維質基材としては、木材パルプ繊維を用いることによりバイオマス度が向上することから好ましく、例えば、針葉樹、広葉樹の晒し、未晒しのクラフトパルプ、サルファイトパルプ、その他の木材パルプ等を単独若しくは混合して用い、抄紙されたものが挙げられる。また、無機繊維基材も使用が可能で、例えば、ガラス繊維、ロックウール、炭素繊維等の無機繊維からなる不織布、織布等が挙げられる。
【0027】
繊維質基材の坪量は、化粧板の強度や含浸効率を考えた際に、30〜300g/mのものを用いることが好ましく、100〜250g/mのものが特に好ましい。含浸率は数1で示される算出方法において10%〜200%が好ましく、30%〜150%が特に好ましい。
【0028】
【数1】
【0029】
混合樹脂液を繊維質基材に含浸する際には、硬化剤として酸性触媒を配合してもよい。酸性触媒の例としては、塩酸、硫酸、シュウ酸、パラトルエンスルホン酸、酢酸、リン酸等、もしくはこれらの塩等が挙げられ、単独または2種類以上併用して使用できる。混合樹脂液を繊維質基材に含浸後、乾燥させることにより、樹脂含浸コア紙を製造することができる。
【0030】
本発明においては、樹脂含浸コア紙に加えて、熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂液が、化粧板用化粧紙に含浸、乾燥された、樹脂含浸化粧紙を用いる。樹脂含浸コア紙に樹脂含浸化粧紙を積層することにより、ポストフォーム化粧板の生産性、層間密着性、及び最表面の耐摩耗性が一層向上する。
【0031】
熱硬化性樹脂としては、アミノ−ホルムアルデヒド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。これらの中でも、アミノ−ホルムアルデヒド樹脂は、耐熱性、耐摩耗性において一層優れているため好ましい。
【0032】
化粧板用化粧紙の坪量は、ポストフォーム化粧板の強度や含浸効率を考えた際に、30〜300g/mのものを用いることが好ましく、100〜250g/mのものが特に好ましい。含浸率は数1で示される算出方法において10%〜200%が好ましく、30%〜150%が特に好ましい。
【0033】
本発明のポストフォーム化粧板は、樹脂含浸コア紙と樹脂含浸化粧紙とを積層し、平板プレス、連続プレス等のプレス機で熱圧成形することにより得られる。片面に、樹脂含浸化粧紙を配した場合、他方の面には、樹脂含浸裏打紙を配することができる。樹脂含浸裏打紙を配した場合、化粧板特有の反りの発生や、破損を一層抑制することができる。
【0034】
樹脂含浸裏打紙は、熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂液を、化粧板用化粧紙に含浸、乾燥することにより製造する。熱硬化性樹脂や繊維質基材としては、樹脂含浸コア紙や樹脂含浸化粧紙の場合と同じものを用いることができる。また、繊維質基材の坪量や含浸率についても、同様である。
【0035】
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げてより詳細に説明するが、具体例を示すものであって、特にこれらに限定するものではない。
【実施例】
【0036】
<実施例1>
(1)植物由来原料変性フェノール樹脂及びポリオールを含む混合樹脂液の調製
(a)成分として、精製カシューナッツシェルオイル(カシュー株式会社、製品名:CX−1000、純度98%)を199.0重量部と、(b)成分として、フェノールを266.3重量部と、(c)成分として、47%ホルマリンを178.0重量部と、塩基性触媒として、48%水酸化ナトリウム水溶液を4.4重量部と、を撹拌機、還流冷却機及び温度計を備えたセパラブルフラスコに仕込み、95℃まで昇温させて、加熱を停止し、自然冷却させた。
温度が85℃まで低下した時点で、さらに、47%ホルマリンを22.0重量部と、48%水酸化ナトリウム水溶液を0.7重量部と、をさらに添加し、再び95℃まで昇温させた。この状態で、95±5℃に保ったまま90分間かけて合成を行った。
この後、再び自然冷却させ、温度が60℃まで低下した時点で、ジエチレングリコール22.8重量部、固形尿素8.0重量部、メタノール336.4重量部を添加し、さらに室温まで冷却させ、植物由来原料変性フェノール樹脂及びポリオールを含む混合樹脂液を調製した。
【0037】
(2)樹脂含浸コア紙の製造
繊維質基材として、坪量180g/mのクラフト紙を用いて、(1)で調製した混合樹脂液を、数1で定義される算出方法で、含浸率が50%となるように含浸し、120℃で2分間乾燥して樹脂含浸コア紙を製造した。
【0038】
(3)樹脂含浸化粧紙の製造
化粧板用化粧紙として、坪量140g/mの化粧紙を用いて、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂を主成分とする樹脂液を、数1で定義される算出方法で、含浸率が110%となるように含浸し、120℃で2分間乾燥して樹脂含浸化粧紙を製造した。
【0039】
(4)樹脂含浸裏打紙の製造
繊維質基材として、坪量180g/mのクラフト紙を用いて、(1)で調製した混合樹脂液を、数1で定義される算出方法で、含浸率が55%となるように含浸し、120℃で2分間乾燥して樹脂含浸裏打紙を製造した。
【0040】
(5)ポストフォーム化粧板の製造
下から順に、樹脂含浸裏打紙を1枚、樹脂含浸コア紙を2枚、樹脂含浸化粧紙を1枚積層し、フラット仕上げプレートを用いて、132℃、60kgf/cm、60分間の条件で熱圧成形して一体化し、実施例1のポストフォーム化粧板を得た。
【0041】
<実施例2>
(1)植物由来原料変性フェノール樹脂及びポリオールを含む混合樹脂液の調製において、以下のとおりにしたこと以外は、実施例1と同様に実施した。
(a)成分として、精製カシューナッツシェルオイル(カシュー株式会社、製品名:CX−1000、純度98%)を211.0重量部と、(b)成分として、フェノールを266.3重量部と、(c)成分として、47%ホルマリンを223.0重量部と、塩基性触媒として、48%水酸化ナトリウム水溶液を4.5重量部と、を撹拌機、還流冷却機及び温度計を備えたセパラブルフラスコに仕込み、95℃まで昇温させて、加熱を停止し、自然冷却させた。
温度が85℃まで低下した時点で、さらに、47%ホルマリンを25.0重量部と、48%水酸化ナトリウム水溶液を0.7重量部と、をさらに添加し、再び95℃まで昇温させた。この状態で、95±5℃に保ったまま90分間かけて合成を行った。
この後、再び自然冷却させ、温度が60℃まで低下した時点で、ジエチレングリコール24.2重量部、固形尿素8.0重量部、メタノール336.4重量部を添加し、さらに室温まで冷却させ、植物由来原料変性フェノール樹脂及びポリオールを含む混合樹脂液を調製した。
【0042】
<比較例1>
(1)植物由来原料変性フェノール樹脂及びポリオールを含む混合樹脂液の調製において、精製カシューナッツシェルオイルを、全てフェノールとしたこと以外は、実施例1と同様に実施した。
【0043】
評価結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
<ポストフォーム化粧板の物性評価>
実施例及び比較例について、物性評価試験を行った。評価方法を以下に示す。
外観:プレス成形直後の外観について、樹脂含浸コア紙におけるフェノール系樹脂が、化粧板表面へと染み出しているかどうか、目視で観察した。
耐熱密着性:218℃に保持した熱源に、化粧板表面を90秒間接触させて、層間の剥離、パンクが無いものを○、剥離、パンクしたものを×とした。
耐煮沸性:JIS K6902に準じて、評価を行った。
耐クラック性:50mm×150mmの試験片を作製し、長手方向の中央に、5mm×15mmの凹型の切り欠きを入れる。その試験片を温度40℃湿度90%の試験室にて16時間養生させる。その後、図1に示すように、試験片の四隅を器具で固定した後、80℃の乾燥機に放置する。6時間乾燥させた後に、2枚の試験片につき、発生した2本のクラックの長さを測定した。この平均値を表に示す。
曲げ加工性:抄紙の流れ方向に平行に280mm幅に試験片を切り出し、9R(9mm)又は6R(6mm)の半径を持つ曲げ成形治具によって化粧板の温度を163℃まで加熱して曲げ成形を行い、その際に発生した、左端部又は右端部から中央部へのひび割れの長さを測定した。
【0046】
実施例のポストフォーム化粧板は、各評価項目において良好な結果が得られ、従来のメラミン化粧板における優れた物性を維持したままで、さらに、耐熱密着性、曲げ加工性や耐クラック性が著しく向上していた。それに対し、比較例のポストフォーム化粧板は、いずれかの評価項目において劣っていた。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】耐クラック性の試験方法を示す斜視図。
図1