(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6629596
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】エッチング速度を変化させるためのイオン注入
(51)【国際特許分類】
G01N 1/28 20060101AFI20200106BHJP
【FI】
G01N1/28 G
G01N1/28 P
G01N1/28 F
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-552809(P2015-552809)
(86)(22)【出願日】2014年1月10日
(65)【公表番号】特表2016-504599(P2016-504599A)
(43)【公表日】2016年2月12日
(86)【国際出願番号】US2014011057
(87)【国際公開番号】WO2014110379
(87)【国際公開日】20140717
【審査請求日】2016年12月20日
(31)【優先権主張番号】61/751,360
(32)【優先日】2013年1月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501419107
【氏名又は名称】エフ・イ−・アイ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・フォード
(72)【発明者】
【氏名】チャド・ルー
【審査官】
島田 保
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−151658(JP,A)
【文献】
特開平03−071632(JP,A)
【文献】
特開2005−055387(JP,A)
【文献】
特開2009−198412(JP,A)
【文献】
特開2000−230891(JP,A)
【文献】
特開2012−042461(JP,A)
【文献】
特開昭57−157523(JP,A)
【文献】
米国特許第8277672(US,B2)
【文献】
特表2009−544120(JP,A)
【文献】
Kyusaku NISHIOKA, et al.,Reactive Ion Beam Etching Using a Selective Gallium Doping Method,Japanese Journal of Applied Physics,1989年,28, 9,L1671-L1672
【文献】
Joachim Mayer, et al.,“TEM Sample Preparation and FIB-Induced Damage”,MRS BULLETIN,2007年 5月,Vol.32,p.400-p.407
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00−1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強された薄片状構造体を集束イオン・ビーム・システムを使用して作製する方法であって、
試料材料から、関心の領域を含む薄片を部分的に形成すること、
続いて前記薄片を機械的に強化する少なくとも1つの構造体を形成すること
を含み、前記少なくとも1つの構造体を形成することが、
第1の集束イオン・ビームのイオンが、前記薄片の表面に、前記関心の領域の周囲にあるパターンで注入されるように、前記第1の集束イオン・ビームを前記薄片上に導くことであって、前記第1の集束イオン・ビームのイオンが、注入された前記薄片の前記材料を硬化させるイオンの種であることと、
第2の集束イオン・ビームを使用して前記薄片をミリングすることであって、前記イオンが注入された前記薄片の一部分が、前記イオンが注入された前記薄片の第1の領域であって、前記関心の領域の周囲の前記第1の領域に前記少なくとも1つの構造体を形成するように、前記第2の集束イオン・ビームが、前記イオンが注入されていない前記薄片の第2の領域であって、前記関心の領域が含まれる前記第2の領域よりも遅い速度で前記第1の領域をミリングすることと
によって行われる方法。
【請求項2】
前記薄片をミリングすることが厚さ100nm未満のTEM試料をミリングすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記薄片の前記イオンが注入された前記第1の領域のミリング速度が、前記薄片の前記イオンが注入されていない前記第2の領域のミリング速度よりも20%遅い、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記薄片上に前記第1の集束イオン・ビームを導くことが、前記薄片上にベリリウム・イオンのビームを導くことを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の集束イオン・ビームのイオンが、前記薄片の表面に注入されるように、前記薄片上に前記第1の集束イオン・ビームを導くことが、0.1〜1.0nC/μm2の範囲内のイオン線量を供給することを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の集束イオン・ビームを前記薄片上に導くことおよび前記第2の集束イオン・ビームを使用して前記薄片をミリングすることが、前記集束イオン・ビーム・システム内の単一の集束カラムによって実行される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記単一の集束カラムが、液体金属合金源またはプラズマ・イオン源と、前記イオンを選択する質量フィルタとを備える、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の領域の最終的な厚さが20nm未満である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
薄片と、前記薄片の表面から突出する支持構造体とを有するナノスケール薄片状構造体であって、
前記支持構造体に対応する前記ナノスケール薄片状構造体の領域は、50nm未満の厚さを有し、
前記薄片および前記支持構造体は試料材料を含み、
前記支持構造体が前記薄片を機械的に強化するように、前記支持構造体に含まれる前記試料材料の部分は、注入されたところの前記試料材料を硬化させる原子が注入される
ナノスケール薄片状構造体。
【請求項10】
前記薄片が30nm未満の厚さを有する、請求項9に記載のナノスケール薄片状構造体。
【請求項11】
前記支持構造体が、前記薄片の異なる領域間に配置された補強構造体を有する、請求項9または請求項10に記載のナノスケール薄片状構造体。
【請求項12】
前記薄片がシリコンを含み、前記支持構造体がベリリウム原子を注入されたシリコンを含む、請求項9から11のいずれか一項に記載のナノスケール薄片状構造体。
【請求項13】
前記ナノスケール薄片状構造体がTEM試料である、請求項9から12のいずれか一項に記載のナノスケール薄片状構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過電子顕微鏡法(TEM)または走査透過電子顕微鏡法(STEM)用の試料の作製に関する。
【背景技術】
【0002】
透過電子顕微鏡(TEM)は、数ナノメートルから10分の数オングストローム程度の極めて小さな特徴部分の画像を観察者が形成することを可能にする。TEM画像は、試料の内部構造の分析を可能にする。TEMでは、幅の広い電子ビームが試料に衝突し、試料を透過した電子を集束させて試料の画像を形成する。1次ビーム中の電子の多くが試料を透過し、反対側に出てくることを可能にするため、試料は十分に薄くなければならない。
【0003】
バルク試料材料から切り出された薄いTEM試料は「薄片」として知られている。薄片の厚さは通常100ナノメートル(nm)未満であるが、用途によっては、薄片をそれよりもかなり薄くしなければならないことがある。半導体産業では、最も小さく最も重要な構造体の特性を評価するのにTEMおよびSTEM分析が特に重要になっている。薄片の作製は、TEM分析における決定的に重要なステップである。トランジスタのサイズを低減させることが絶えず要求された結果、別個の1つのトランジスタ構造体だけを含む試料を提供するために、薄片の厚さをさらに薄くすることが求められている。半導体製造で使用される最小特徴部分のサイズまたは最小「ピッチ」は22nmに近づいており、そのため、厚さ約10nmの薄片を作製することが望ましい。厚さ20nm未満の薄片を、高い信頼性および再現性で作製することは難しい。
【0004】
このような薄い薄片は、構造的完全性(structural integrity)の欠如による機械的不良を生じやすい。非常に薄い試料では、反り(warping)、曲り(bending)、および重要なエリアの侵食(erosion)がしばしば起こる。要求される薄片の厚さは次第に薄くなっているため、薄い試料の構造的完全性を提供し維持する方法が求められている。
【0005】
TEM薄片を作製する方法は通常、集束イオン・ビーム(FIB)システムを使用する。薄片の厚さおよび最終的な薄片の中心位置の正確さは、FIBミリング操作の配置の正確さに基づいていた。自動化されたワーク・フローでは通常、TEM試料薄片をミリングする基板の上面のなんらかの特徴部分または基準マーク(fiducial)に関してミリングが実行される。
【0006】
厚さ20nm未満の薄片が所望のときには、高いレベルの精度が要求されるため、オペレータのより高い技能が必要となる。さらに、厚さが例えば10nm未満に低下すると、薄片試料の成功率(success rate)は劇的に低下する。
【0007】
Lechnerの欧州特許出願公開第2413126号明細書に教示されている方法などの先行技術の薄片補強技法は、構造支持のために、他のエリアよりも厚いある種のエリアを残すように薄片を形作ることを含む。このような方法は、より厚い領域によって取り囲まれたより薄い領域の「窓」を残すが、このような窓は視野を制限することがあり、このことは、薄片から得ることができる情報の量に影響を及ぼす。窓を残す方法はさらに、複雑さおよび処理時間を増大させる。さらに、異なる領域に集束イオン・ビームを導いて薄片内にさまざまなレベルの厚さを残すためには、オペレータの高いレベルの技能が必要となる。したがって、薄片試料を補強する改良された方法および装置が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2413126号明細書
【特許文献2】米国特許第4,775,818号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2009/0309018号明細書
【特許文献4】国際公開第2012/103534号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、試料にイオンを注入し、次いでその試料を処理することによって、試料上に微視的(microscopic)パターンを生み出すことにあり、この処理の下では、注入された領域が、注入されていない領域とは異なる振舞いを見せる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
いくつかの実施形態では、集束イオン・ビームを使用して試料の領域にイオンを注入し、その試料を、エッチングなどによって処理する。このとき、注入された領域内の材料は、注入されていない領域よりもゆっくりと除去され、それにより、注入された領域に対応する一段高いパターンが残り、または、材料はより速く除去され、それにより、注入された領域に対応する凹んだ領域が残る。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態によれば、硬化をもたらす材料を薄片の領域に注入して、薄片を強化する。いくつかの実施形態では、注入された材料が、薄片を、イオン・ビーム処理に対して抵抗性にし、それにより、薄片の他の領域よりも厚い注入されたエリアを残し、それによって、さらに薄片を支持する補強構造体を形成する。
【0012】
以上では、以下の本発明の詳細な説明をより十分に理解できるように、本発明の特徴および技術上の利点をかなり大まかに概説した。以下では、本発明の追加の特徴および利点を説明する。開示される着想および特定の実施形態を、本発明の目的と同じ目的を達成するために他の構造体を変更しまたは設計するためのベースとして容易に利用することができることを当業者は理解すべきである。さらに、そのような等価の構造体は、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨および範囲を逸脱しないことを当業者は理解すべきである。
【0013】
次に、本発明および本発明の利点のより完全な理解のため、添付図面に関して書かれた以下の説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】注入の持続時間を1秒間から32秒間まで変化させてシリコン加工物に線状に実施したベリリウム(Be)注入を示す顕微鏡写真である。
【
図3】
図2の断面の一部分をより高い拡大倍率で示す顕微鏡写真である。
【
図6】異なる材料からなる基板を示し、Beイオンを用いて注入される領域を示す顕微鏡写真である。
【
図7】Beイオンが注入された
図6の基板を示す顕微鏡写真である。
【
図8】ミリングされる領域を示す、
図7の基板を示す顕微鏡写真である。
【
図9】金イオンによってミリングした後の
図7の基板を示す顕微鏡写真である。
【
図10】薄片を形成する際に使用される本発明の一実施形態の諸ステップを示す流れ図である。
【
図11】関心の領域と、本発明の一実施形態に従って作り出される補強構造体の設計とを示す、薄片の配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のいくつかの実施形態によれば、エッチングの前に、材料を加えて加工物の領域を硬化させる。材料が加えられた領域は、材料が加えられていない周囲の領域よりも遅い速度でエッチングし、それにより、加えられた材料によって画定される構造体を残す。この材料は例えば、イオン注入によって加えることができる。イオン注入は、ナノメートル範囲の寸法を有する構造体の精密な画定を可能にする。いくつかの実施形態では、注入されたエリアが、より速い速度でエッチングし、それにより、一段高い領域ではなく凹みを残す。
【0016】
イオンを注入した後の材料のエッチングは例えば、集束イオン・ビーム・エッチング、ブロード・ビーム(スポット・サイズが0.5μmよりも大きい)・イオン・エッチング、ビーム誘起化学エッチング、ビームを使用しない化学エッチングまたはレーザ・ビーム・エッチングを使用して実行することができる。ビーム誘起エッチングは例えば、イオン・ビーム、電子ビーム、クラスタ・ビーム、中性ビーム、レーザ・ビームまたは光学ビームを使用して誘起することができる。エッチングされるエリアは通常、注入されたエリアよりも大きいため、ビームを使用する場合、エッチングは、イオンを注入するビームよりも大きなスポット・サイズを有するビームを使用して実行することが好ましい。
【0017】
例えば、ベリリウム(Be)イオンは、シリコン(Si)、二酸化シリコン(SiO
2)および銅(Cu)を含むさまざまな加工物材料を硬化させ、それにより、その加工物を、イオン・スパッタリングによるエッチングに対してより抵抗性にすることを、本出願の出願人は見出した。通常はこれらのイオンを第1の領域に注入し、次いで、第1の領域を含む、第1の領域より広い領域であることが好ましい第2の領域をエッチングする。このエッチングは例えば、イオン・ビーム、電子ビーム、レーザ・ビームなどの第2のビームを使用して、または化学エッチングなどの他のプロセスを使用して第2の領域を処理することなどによって達成する。
【0018】
本発明の実施形態は、TEM画像化および分析用の薄片を形成するのに特に有用である。この方法を使用して、薄片を強化して曲りおよび侵食を防ぐ補強構造体を、それぞれの薄片に形成することができる。本発明の使用は、薄片作製プロセスの再現性を高め、それによって成功率を増大させる。補強構造体の所望の幅は用途によって異なるが、この強化された領域の最小幅は、注入ビームのスポット・サイズの分解能または他の材料配置法の分解能だけによって制限される。いくつかの実施形態では、単一の集束カラムを使用して、注入するイオンのビームおよびミリングするイオンのビームを生み出す。例えば、Clark Jr.他の「Liquid Metal Ion Source and Alloy」という名称の米国特許第4,775,818号明細書に記載されているものなどの液体金属合金源、またはSmith他の「Multi−Source Plasma Focused Ion Beam System」という名称の米国特許出願公開第2009/0309018号明細書に記載されているものなどのプラズマ・イオン源を質量フィルタとともに使用してイオンを選択することができ、それにより、強化するイオンのビームとミリングするイオンのビームとを容易に切り換えることができる。注入とエッチングとでは通常、異なるイオン種が使用される。同じ種を使用することもでき、その場合には異なるビーム・エネルギーで使用されることが好ましい。別の実施形態は、別のイオン・カラム・システムを使用して、これらの異なるビームを生み出すことができる。本発明の実施形態は、補強構造体のビーム誘起付着の必要性を排除することができる。薄片の作製では、通常は白金またはタングステンである犠牲保護キャップが使用される。本発明の実施形態を使用して犠牲保護キャップを補強し、それにより、キャップの侵食を低減させることもできる。
【0019】
ある種の実施形態では、厚さ20nm未満、よりいっそう好ましくは厚さ10nm未満の薄片が、その構造的完全性を維持し、TEMモードまたはSTEMモードで検査されうることを、このBe硬化が可能にする。強化を提供しない先行技術の薄化法は、10nm未満の切片を作製することができない。それらの切片が、応力緩和、およびカール(curling)、曲り、層間剥離(splitting)などのさまざまな破壊的な不良機構を示すためである。
【0020】
図1は、Beをそれぞれ1秒、2秒、4秒、8秒、16秒および32秒間注入した後の加工物の表面の「焼け跡(burn)」または線102a〜102fを示す顕微鏡写真である。
【0021】
図2は、集束イオン・ビームを使用してミリングされた、
図1の領域を貫く断面を示す。イオン・ビームは、表面およびBe注入線に対して垂直に導いた。この断面の注入された領域の下の構造体202c〜202fは、イオン・ビームが、注入された領域を周囲の領域よりもゆっくりとミリングし、それにより、注入された領域の下に「影(shadow)」を残したことを示している。すなわち、注入された領域はその下の領域を保護した。ミリングに対する抵抗性は、注入されたBeの量によって変化し、注入されるBeの量は、加工物にBeビームが導かれる時間によって決まる。
図2によれば、Beを32秒間注入した線102fの下にある構造体202fは、Beを16秒間注入した線102eの下にある構造体202eよりもはっきりしている。それぞれ1秒間および2秒間照射された線102aおよび102bの下に、目に見える構造体はない。
【0022】
図3は、構造体202eおよび202fをより大きな拡大倍率で示す顕微鏡写真である。
図4および5は、ミリングされた断面の追加の図を示す顕微鏡写真である。
【0023】
図6は、この荷電粒子ビーム画像中で黒く見える二酸化シリコンの領域606a、606b、606cおよび606d、606eまでによって分離された、この荷電粒子ビーム画像中で灰色に見える銅の領域604a、604b、604c、604dおよび604eを含む不均質な表面602を示す。
図6はさらに、Beを注入される表面602の領域608を示す。注入される領域608は、銅領域604aおよび二酸化シリコン領域606d内では途中までしか延びておらず、銅領域604eまたは二酸化シリコン領域606e内へは全く延びていないことに留意されたい。
【0024】
図7は、Beの注入後の硬化した領域702を示す。
図6の画像と
図7の画像は異なるシステム設定を使用して得たものであり、これらの2つの画像では基板が異なって見える。
図8は、金イオンを使用してミリングする領域802を示す。金イオンは、Beイオンと同じ液体金属イオン合金源から得ることが好ましい。質量フィルタを使用して、加工物にBeイオンまたは金イオンを選択的に送達することができる。これらのカラム光学部品は、選択されたイオンを加工物のところで集束させるように調整される。
図9は、
図8の領域802に対応する領域902を金イオンのビームを使用してミリングした結果を示す。
【0025】
図9は、ミリングされた領域902では表面の材料がエッチングされて除かれているが、領域902のBeが注入された部分は、領域902の残りの部分ほどには深くミリングされておらず、Beが注入されたところに、一段高い帯904が残されていることを示している。銅領域604aは、一段高い帯904がこの銅領域を部分的に横切ることを示しており、二酸化シリコン領域606dも、一段高い帯が、領域606dを横切って部分的にだけ延びていることを示していることに留意されたい。この一段高いエリアは、ベリリウムが注入された部分に対応する。銅領域604eおよび604fならびに二酸化シリコン領域606eおよび606fにベリリウムは注入されておらず、一段高い領域はない。
図6〜9は、Beが、
図1〜5によって示されているようにシリコンのミリング速度を低下させるだけでなく、銅および二酸化シリコンのミリング速度も低下させることを示している。
【0026】
図10は、薄片を形成する本発明の一実施形態に基づく諸ステップを示す流れ図である。ステップ1002で、薄片を部分的に形成する。参照により本明細書に組み込まれる「TEM Sample Preparation」という名称の国際公開第2012/103534号パンフレットに記載されている手順などの任意の薄片作製手順を使用することができる。薄片は薄くするが、ステップ1002では、その最終的な厚さまで完全には薄くしないことが好ましい。
【0027】
図11は、特徴部分1108の周囲に画定された関心の領域1106に影響を及ぼすことなく薄片1104を構造的に補強する硬化したエリア1102の配置を示す図である。
【0028】
ステップ1004で、薄片に硬化材料を、所望の補強構造体に対応するパターンで与える。一実施形態では、硬化材料がBeであり、このBeが、液体金属合金イオン源からのビーム・エネルギー30keV、ベリリウム線量(dose)10分の数nC/μm
2のBeイオンの集束ビームを使用して与えられる。ステップ1006で、集束イオン・ビームを用いて薄片をその最終的な厚さまでミリングする。この構造体は、硬化した領域1102のミル抵抗性によって形成され、硬化した領域1102が補強構造体を生み出す。ステップ1008で、透過電子顕微鏡上で薄片を観察する。
【0029】
この硬化プロセスはベリリウム・イオンだけに限定されず、他のイオンを使用して同様の効果を提供することもできる。例えば、Siまたは他の材料への注入にはLi
+、Mg
+およびCa
+が有用であることがある。注入して材料を硬化させるのに有用である可能性がある他の材料には、Ga
+、Xe
+、Ar
+、O
+、In
+、Si
+、Kr
+およびBi
+などがある。注入は、ほぼ全ての材料を硬化させる目的に有用である可能性があるが、このプロセスは、シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン、タングステン、SiGe、低k誘電体材料(「炭素がドープされた酸化物」)、タンタル、窒化タンタル、チタン、窒化チタン、アルミニウムを硬化させる用途で特に有用である可能性がある。
【0030】
好ましい硬化材料は、注入されたときに、注入のない加工物材料のエッチング速度よりも少なくとも10%、より好ましくは20%、最も好ましくは30%遅いエッチング速度を生み出すことが好ましい。その材料は、関心の領域に影響を及ぼさないことが好ましい。好ましい硬化材料は、液体金属合金源、プラズマ源などのイオン源から容易に得ることができ、10nm未満のスポット・サイズを有するビームに容易に集束させることができる材料である。関心の領域に影響を及ぼすことを防ぐため、好ましい材料は、注入されている材料中に容易には拡散しない。
【0031】
イオン注入では、イオンのタイプ、エネルギーおよび線量の全てを、機械的なスパッタリングをできるだけ少なくするように選択すべきである。例えば、軽いイオンは、大きなエネルギー(30keV)および中程度の線量(0.1〜0.5nC/μm
2)で安全に使用することができるが、より重いイオンは、このエネルギーで、重大なスパッタリングを引き起こすであろう。特定の組合せのイオン/材料/エネルギーに対して適当な線量を決定するのに有用な方法は、最初に、重要でないエリアで調査のための実験を実行する方法である。例えば、0.1〜1.0nC/μm
2の範囲の線量を用いて所望のエネルギーで領域に照射し、それらのさまざまな照射の効果を、高分解能SEM画像化またはAFM分析を用いて観察することができる。重大なミリングまたは表面膨張を示す領域は照射が過剰であった領域であり、そのような条件は硬化の目的には好ましくない。好ましい線量は、最小限の機械的損傷を維持する可能な最も高い線量である。軽いイオンでは、エネルギーを小さくするとスパッタ率が増大することがあり、そのため、機械的なスパッタリングが重大になる領域に入ることがないようにユーザは注意しなければならない。加えて、より小さなイオン・エネルギーはさらに、より低い空間分解能(より大きなスポット・サイズ)を有し、このことは、ユーザが、精確な硬化構造体のパターンを、TEM用の薄片などの小さな試料上に形成することをより困難にする。一般に、効果的な材料硬化の好ましい条件は、エネルギーが大きいこと、イオン質量が軽いこと、および目に見える機械的損傷に対するしきい値をわずかに下回るように線量が調整されていることである。この硬化プロセスは、結晶性材料(Si)、多結晶性材料(Cu)および非晶質材料(SiO
2)に対して等しく機能することが実証されている。
【0032】
これらの例および以上に示した指針に基づいて、当業者は、特定用途の基板を硬化させるイオン種、ビーム・エネルギーおよび線量を容易に選択することができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、本発明が、先行技術の「窓」技法よりも限局された薄片の補強を可能にし、先行技術の「窓」技法よりも高速であり、複雑でない。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態では、注入されたBeイオンが、関心の領域の周囲に支持領域を提供する。薄化プロセスを継続したとき、注入されたイオン領域は、注入されたBe+イオンを含まない領域に比べて遅い材料除去速度を有し、その結果、追加の付着を必要とせずに、関心の領域の周囲に、より厚い支持構造体を残す。
【0035】
本発明の実施形態を使用して、イオン・ビーム・スパッタリングに対して抵抗性のパターンまたは領域、および荷電粒子ビーム誘起化学エッチングに対して抵抗性のパターンまたは領域を作り出すことができる。荷電粒子ビーム誘起化学エッチングでは、通常はガスである前駆体材料と化学反応するための活性化エネルギーを荷電粒子ビームが供給する。このような実施形態では、試料に向かって第1のビームを導いて試料に原子を注入して、イオン・ビームによる後続の除去に抵抗することが意図されたパターン形成されたエリアを作り出す。前駆体ガスの存在下で試料に向かって第2のビームを導く。この第2のビームのエネルギーが、吸着した前駆体分子を分解し、その結果、基板材料と前駆体ガスが化学反応して基板をエッチングする。この第2のビームは、同じ種もしくは異なる種のイオン・ビーム、電子ビーム、中性ビームまたはレーザ・ビームとすることができる。注入された原子の領域は、エッチング速度を低下させて、補強構造体を残す。
【0036】
いくつかの実施形態では、注入された領域が、ビーム誘起エッチングに対して抵抗性であるだけでなく、自発(spontaneous)エッチングに対しても抵抗性である。例えば、本発明の発明者は、Auイオンを注入されたSi領域が、XeF
2による化学エッチングに対して抵抗性を示すことに気づいた。このエッチングの化学作用は、第2のビームのエネルギーを必要とすることもまたは必要としないこともあることに留意されたい。Siに対してXeF
2を使用する場合には、材料除去に対するビーム駆動エッチング成分と自発エッチング成分の両方が存在する。Au注入は、どちらの場合にも(エッチング・ステップ中に第2のイオン・ビームのエネルギーが存在する場合にもまたは存在しない場合にも)Siのエッチング速度を低減させるようである。注入は、ビーム駆動エッチング・ステップまたは非ビーム(化学作用だけを使用する)駆動エッチング・ステップの両方で、エッチング速度を低減させることができる。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態では、表面の領域に向かってイオン・ビームを導く。次いで、注入された領域より大きな領域の表面を有するより大きな領域を、エッチング用の化学剤にさらす。注入されたエリアはよりゆっくりとエッチングして、表面に一段高いパターンを生み出す。
【0038】
別の実施形態では、注入された領域が逆の効果を有する。すなわち、イオンにさらすことによって、選択されたエリアのミリング速度が増大する。このような実施形態では、表面にイオン・ビームを導いて、領域またはパターンにイオンを注入し、次いで、イオン・ビーム、電子ビーム、レーザ・ビームなどのビームまたは化学エッチングを使用して、その表面をエッチングする。エッチングの後、注入されたエリアは、試料中へより深くエッチングされており、それにより、軒樋(trough)状のパターンを提供する。
【0039】
いくつかの実施形態では、荷電粒子ビームの存在下で基板材料と反応する前駆体ガスを使用して荷電粒子ビーム・エッチングを実行する。前駆体は、加工物の異なる材料と異なる態様で反応し、それにより、ある材料を他の材料よりも速く選択的にエッチングする。いくつかの実施形態では、加工物のイオンが注入された部分のビーム支援エッチング速度が低く、注入された領域に対応する一段高いエリアを残す。他の実施形態では、注入された領域が、注入されていない領域よりも速くエッチングし、注入された領域に対応する表面に凹みを残す。
本発明のいくつかの実施形態によれば、補強された薄い薄片状構造体を荷電粒子ビーム・システムを使用して作製する方法は、試料材料から薄片を部分的に形成すること、薄片に硬化材料をあるパターンで与えること、および薄片をミリングすることを含み、薄片の硬化材料を含む領域は、薄片の硬化材料を含まない領域よりも遅い速度でミリングされ、これにより、硬化材料が与えられたところに少なくとも1つの一段高い構造体が残されて、薄片が機械的に強化される。
いくつかの実施形態では、薄片をミリングすることがTEM試料をミリングすることを含む。いくつかの実施形態では、薄片の硬化材料を含む領域のミリング速度が、薄片の硬化材料を含まない領域のミリング速度よりも20%遅い。いくつかの実施形態では、硬化材料を与えることが、薄片にイオンを注入するために、薄片に向かって集束イオン・ビームを導くことを含む。いくつかの実施形態では、イオンを注入するために、薄片に向かって集束イオン・ビームを導くことが、薄片に向かってベリリウム・イオンのビームを導くことを含む。いくつかの実施形態では、薄片にイオンを注入するために薄片に向かって集束イオン・ビームを導くことが、0.1〜1.0nC/μm2の間のイオンの線量を供給することを含む。
いくつかの実施形態では、硬化材料を与えることおよび薄片をミリングすることが、荷電粒子ビーム・システム内の単一の集束カラムによって実行される。いくつかの実施形態では、この単一の集束カラムが、液体金属合金源またはプラズマ・イオン源と、これらのイオンを選択する質量フィルタとを備える。いくつかの実施形態では、薄片の最終的な厚さが20nm未満である。
本発明のいくつかの実施形態によれば、ナノスケール(nanoscale)構造体は、厚さ50nm未満の第1の領域を備え、第1の領域の少なくとも2つの側部が、第1の領域よりも薄い第2の領域によって取り囲まれており、第1の領域が、第2の領域を補強する支持構造体を形成する。
いくつかの実施形態では、第1の領域に隣接する第2の領域の厚さが30nm未満である。いくつかの実施形態では、第1の領域が、第2の領域内に配置された補強線を含む。いくつかの実施形態では、第1の領域が、第2の領域と同じ材料を含み、第1の領域には異なる材料の原子が加えられている。いくつかの実施形態では、第1の領域に加えられた異なる材料の原子が、イオン注入によって注入されたものである。いくつかの実施形態では、ベリリウムを用いて注入されたシリコンを第1の領域が含み、第2の領域がシリコンを含む。いくつかの実施形態では、ナノスケール構造体が薄片状TEM試料である。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態によれば、微視的構造体を作製する方法は、加工物の表面に原子を注入するために、イオンの集束ビームを加工物に向かってあるパターンで導くこと、および加工物の一部分をエッチングすることを含み、エッチングされた部分が、パターンの少なくとも一部分を含み、注入された原子が、パターンのエッチング速度を低下させて、パターンの形態の突出した領域を形成する。
いくつかの実施形態では、加工物をエッチングすることが、集束イオン・ビームまたは集束電子ビームを使用して加工物をミリングすることを含む。いくつかの実施形態では、加工物をエッチングすることが、荷電粒子ビームの存在下で分解する前駆体ガスに加工物をさらすことを含む。いくつかの実施形態では、加工物をエッチングすることが、荷電粒子ビームの存在を必要とせずに加工物をエッチングするエッチング剤に加工物をさらすことを含む。
いくつかの実施形態では、加工物をエッチングすることが、500nmよりも大きなスポット・サイズを有するイオン・ビームを加工物上へ導くことを含む。いくつかの実施形態では、加工物の表面に原子を注入するために、イオンの集束ビームを加工物に向かってあるパターンで導くことが、Be+、Ga+、Xe+、Ar+、O+、In+、Si+、Kr+またはBi+イオンを導くことを含む。
本発明は幅広い適用可能性を有し、上記の例において説明し示した多くの利点を提供することができる。以上の本発明の説明は主に、極薄のTEM試料を作製する方法を対象としているが、本発明のさまざまな実施形態は任意の加工物上で使用することができる。この硬化現象を、バルク(薄くされていない)試料の表面で効果的に使用することもできる。実施形態を使用して、任意の構造体中に、他の目的の補強構造体または一段高い領域を生み出すことができる。
【0041】
薄片を作製するいくつかの実施形態は、真空室内で薄くし、真空室の外で基板から取り出した試料(外位置(ex situ)型試料)、または基板から抜き取り、真空室内のTEMグリッドに取り付けた後で薄くした試料(原位置(in situ)型試料)に対して使用することができる。
【0042】
本発明の実施形態は、具体的な用途によって大きく異なる。全ての実施形態が、これらの全ての利点を提供するわけではなく、全ての実施形態が、本発明によって達成可能な全ての目的を達成するわけでもない。本発明を実施するのに適した粒子ビーム・システムは例えば、本出願の譲受人であるFEI Companyから市販されている。
【0043】
このような方法の操作を実行する装置も本発明の範囲に含まれることを認識すべきである。
【0044】
本明細書において、用語「自動」、「自動化された」または類似の用語が使用されるとき、これらの用語は、自動プロセスもしくは自動ステップまたは自動化されたプロセスもしくは自動化されたステップの手動による開始を含むものと理解される。以下の議論および特許請求の範囲では、用語「含む(including)」および「備える(comprising)」が、オープン・エンド(open−ended)型の用語として使用されており、したがって、これらの用語は、「...を含むが、それらだけに限定されない」ことを意味すると解釈すべきである。用語「集積回路」は、マイクロチップの表面にパターン形成された一組の電子構成部品およびそれらの相互接続(ひとまとめにして内部電気回路要素)を指す。用語「半導体デバイス」は、総称的に集積回路(IC)を指し、この集積回路(IC)は、半導体ウェーハと一体でも、またはウェーハから切り離されていても、または回路板上で使用するためにパッケージングされていてもよい。本明細書では用語「FIB」または「集束イオン・ビーム」が、イオン光学部品によって集束させたビームおよび整形されたイオン・ビームを含む、平行イオン・ビームを指すために使用される。
【0045】
ある用語が本明細書で特に定義されていない場合、その用語は、その通常の一般的な意味で使用されることが意図されている。添付図面は、本発明の理解を助けることが意図されており、特記しない限り、一定の比率では描かれていない。微視的とは、ミクロンのスケールまたはナノメートルのスケールなど、ミリメートルよりも小さなスケールに関することを意味する。
【0046】
本発明および本発明の利点を詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲によって定義された本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に、さまざまな変更、置換および改変を加えることができることを理解すべきである。さらに、本出願の範囲が、本明細書に記載されたプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法およびステップの特定の実施形態に限定されることは意図されていない。当業者なら本発明の開示から容易に理解するように、本明細書に記載された対応する実施形態と実質的に同じ機能を実行し、または実質的に同じ結果を達成する既存のまたは今後開発されるプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法またはステップを、本発明に従って利用することができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、その範囲内に、このようなプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法またはステップを含むことが意図されている。