特許第6629644号(P6629644)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6629644
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】三相ブリッジインバータ回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20200106BHJP
   H02M 1/00 20070101ALI20200106BHJP
【FI】
   H02M7/48 M
   H02M1/00 F
   H02M1/00 H
   H02M7/48 K
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-45663(P2016-45663)
(22)【出願日】2016年3月9日
(65)【公開番号】特開2017-163691(P2017-163691A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2019年1月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144393
【氏名又は名称】株式会社三社電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森本 健次
(72)【発明者】
【氏名】勝嶋 肇
【審査官】 栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/089875(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/067838(WO,A1)
【文献】 特開2010−051126(JP,A)
【文献】 米国特許第5576943(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相負荷のU相、V相、W相のそれぞれに接続されるインバータで構成された三相ブリッジインバータ回路において、
前記インバータのそれぞれは、
ブリッジ接続されたスイッチ素子と、
前記スイッチ素子に逆並列接続された逆並列ダイオードと、
前記スイッチ素子のそれぞれに並列的に接続されたスナバコンデンサを含むスナバ回路と、
前記スナバ回路と電源間に接続され、回生スイッチ素子を備えた回生回路と、
前記インバータ回路を制御する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、
所定の出力電流となるように前記スイッチ素子を休止期間を挟んで交互にオンオフする第1制御と、
前記スイッチ素子のオンタイミングに同期して前記回生スイッチ素子をオンし、これによって前記休止期間の間に前記スナバコンデンサに蓄積された電荷を電源に回生する第2制御と、
出力電流が所定のしきい値以下の期間で前記第2制御を停止する第3制御と、
前記逆並列ダイオードを介して出力電流が流れる期間で前記第2制御を停止する第4制御と、
を行うことを特徴とする三相ブリッジインバータ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、U相、V相、W相の各相にそれぞれインバータを接続した三相インバータ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータ回路では、スイッチ素子がオフしたときに、負荷側に接続されるリアクトルの作用、またはトランスの一次側と二次側間のリーケージインダクタンスの作用によってスイッチ素子にサージ電圧が印加されるのを防止するため、スイッチ素子に並列にスナバ回路が接続される。このスナバ回路により、スイッチ素子のターンオフ時にZVS動作となりターンオフ損失を小さく出来る。また、スナバ回路のスナバコンデンサに充電された充電電荷を電源に回生する回生回路を設けることも提案されている。この回生回路を設けることにより、充電電荷がスナバ抵抗によって熱消費されず、且つスナバコンデンサの充電電荷が電源に回生されるため、インバータ回路の効率を上げることができる。
【0003】
特許文献1に示されるインバータは、上記のようにスナバ回路と回生回路とを備えたものである。このインバータ回路は、一次側に第1のスイッチ素子と第2のスイッチ素子が接続され、第1、第2の各スイッチ素子に並列にスナバ回路が接続され、スナバ回路と電源間に回生回路が接続されている。スナバ回路は、スナバダイオードとスナバコンデンサの直列回路で構成され、回生回路は、回生用のスイッチ素子と、リアクトル及び回生用ダイオードの直列回路で構成されている。
【0004】
上記のインバータ回路では、制御部が第1のスイッチ素子と第2のスイッチ素子とを休止期間を挟んで交互にオンオフし、回生用のスイッチ素子を一定時間だけオンする。休止期間でスナバコンデンサへ充電し(充電サイクル)、次に第2のスイッチ素子がターンオンするときに回生用のスイッチ素子をオンして、スナバコンデンサの充電電荷を放電して(放電サイクル)電源に回生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−219653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のインバータ回路は、第1、第2のスイッチ素子には交互に、常に同じ大きさの直流電流が流れることにより、休止期間での充電サイクルではスナバコンデンサに一定の電圧が充電され、次の放電サイクルではこの充電電荷が電源に回生される。この動作が繰り返される。
【0007】
しかし、三相インバータ回路の場合は、次のような問題がある。
【0008】
第1に、スイッチ素子に流れる電流が交流のため、電流値が低い範囲では充電サイクルにおいてのスナバコンデンサの充電電圧が低くなる。スナバコンデンサへの充電電圧が低く、充電が不十分であると、次にターンオンしようとするスイッチ素子に対してスナバコンデンサを充電経路とする大きな充電電流が流れる。この充電電流はサージ電流となるため、この時に大きな損失が生じることになる。
【0009】
また、三相インバータ回路では、出力電流が正弦波となるため、次のような第1サイクルと第2サイクルの動作がある。例えば、出力電流が正の半サイクルでは、第1スイッチ素子Q1のコレクタからエミッタ側に主回路電流が流れる第1サイクル(ここではMODE(A)と称する)と、第2スイッチ素子Q2に逆並列接続されている逆並列ダイオードds2経由でエミッタからコレクタ側に主回路電流が流れる第2サイクル(ここではMODE(B)と称する)が繰り返され、第1サイクルでリアクトルL1へのエネルギー蓄積とリアクトルL1を電流源とする第1スナバコンデンサC1への充電及びこの回生が行われ、第2サイクルではリアクトルL1を電流源として第2スイッチ素子Q2の逆並列ダイオードds2経由で電流が負荷に流れる。出力電流が負の半サイクルでも同様な第1サイクルと第2サイクルの動作が繰り返される。
【0010】
ところで、三相インバータ回路では、主回路電流値が低い期間と、第2サイクルにおいて逆並列ダイオード経由で負荷に電流が流れる期間において、第1スイッチ素子Q1または第2スイッチ素子Q2にサージ電流が流れ、損失増大や素子破壊を引き起こす問題があった。
【0011】
図1は三相ブリッジインバータ回路の問題を説明するための図である。この図1を参照して、上記の問題について具体的に説明する。
【0012】
同図(A)、(B)は、インバータのスイッチ素子とスナバ回路部分を示している。また、同図(A)は第1スイッチ素子Q1に主回路電流が流れるときの電流経路を示し、同図(B)は第2スイッチ素子Q2の逆並列ダイオードds2を介して主回路電流が流れるときの電流経路を示している。ここでは理解を容易にするためスナバ回路に接続される回生回路を示していない。
【0013】
同図において、主回路電流が第1スイッチ素子Q1のコレクタからエミッタに流れている期間をMODE(A)と表し(同図(A))、主回路電流が第2スイッチ素子Q2の逆並列ダイオードds2を介してエミッタからコレクタ側に流れている期間をMODE(B)と表し(同図(B))ている。MODE(A)は、上記の第1スイッチ素子Q1に主回路電流が流れる第1サイクルに対応し、MODE(B)は、上記の第2スイッチ素子Q2の逆並列ダイオードds2を介して主回路電流が流れる第2サイクルに対応している。また、負荷への電流供給とリアクトルL1へのエネルギー蓄積を行うときの電流経路を実線で示し、次の休止期間の充電サイクルでの第1スナバコンデンサC1への充電経路を点線で示す。また、一点鎖線は、問題となる電流経路を示す。
【0014】
図1(A)のMODE(A)(第1サイクル)に示すように、スイッチ素子Q1がターンオンするとリアクトルL1を介して負荷に出力電流(主回路電流)が流れ(実線)、休止期間に入ると充電サイクルとなって第1スイッチ素子Q1がターンオフしてリアクトルL1の蓄積エネルギーに基づいて第1スナバコンデンサC1に充電電流が流れる。第1スイッチ素子Q1がターンオフするとき、第1スイッチ素子Q1の両端電圧VCE(Q1)上昇カーブは上記充電電流のため一定の傾きを持ち、これにより同ターンオフはZVS動作、すなわちソフトスイッチング動作となる。
【0015】
この図1(A)において、交流波形の主回路電流がしきい値以下に下がる期間では、充電サイクルにおいて第1スナバコンデンサC1の充電が不十分となる。すると、第2スイッチ素子Q2のターンオン時にC1→D3→Q2の一点鎖線で示す経路に第1スナバコンデンサC1を充電するためのサージ電流が流れる。このサージ電流により第2スイッチ素子Q2に損失が発生する。
【0016】
また、図1(B)のMODE(B)(第2サイクル)に移ると、リアクトルL1を電流源として(リアクトルL1の蓄積エネルギーに基づいて)、他の相を介して第2スイッチ素子Q2の逆並列ダイオードds2を介して負荷電流(主回路電流)が流れる。このとき、第2スイッチ素子Q2には電流は流れない。そして、休止期間に入ると、リアクトルL1を電流源として第2スナバコンデンサC2への充電電流が流れようとするが、第2スナバダイオードD4が逆方向のためこの点線で示す充電電流は流れない。すると、第1スイッチ素子Q1のターンオン時にE1→Q1→D4→C2の一点鎖線で示す短絡回路が形成され、第1スイッチ素子Q1にサージ電流が流れる。このサージ電流により第1スイッチ素子Q1に損失が発生したり第1スイッチ素子Q1破壊を発生する。
【0017】
なお、MODE(A)、MODE(B)とも、毎サイクル毎に回生回路が動作するため、第1スナバコンデンサC1の電位は回生動作毎にゼロとなっている。
【0018】
以上のように、三相ブリッジインバータ回路では、MODE(A)においては、主回路電流がしきい値以下に下がる期間において図1(A)の一点鎖線で示す経路により、MODE(B)においては図1(B)の一点鎖線で示す経路により、いずれも第2又は第1スイッチ素子Q2又はQ1のターンオン時にサージ電流が発生し、これにより素子損失が増加したり、素子破壊を発生する問題があった。
【0019】
そこで、この発明の目的は、上記のサージ電流が発生するのを防止する三相ブリッジインバータ回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この発明の三相ブリッジインバータ回路は、
インバータのそれぞれが、
ブリッジ接続されたスイッチ素子と、
前記スイッチ素子に逆並列接続された逆並列ダイオードと、
前記スイッチ素子のそれぞれに並列的に接続されたスナバコンデンサを含むスナバ回路と、
前記スナバ回路と電源間に接続され、回生スイッチ素子を備えた回生回路と、
前記インバータ回路を制御する制御回路と、を備えている。
【0021】
前記制御回路は、
所定の出力電流となるように前記インバータ素子を休止期間を挟んで交互にオンオフする第1制御と、
前記スイッチ素子のターンオンタイミングに同期して前記回生スイッチ素子をオンし、これによって前記スナバコンデンサに蓄積されている電荷を電源に回生する第2制御と、
出力電流が所定のしきい値以下の期間で前記第2制御を停止する第3制御と、
前記逆並列ダイオードを介して出力電流が流れる期間で前記第2制御を停止する第4制御と、
を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
三相ブリッジインバータ回路では、各相に接続されるインバータにおいて回生回路の動作を選択的に停止することで、スナバコンデンサへの充電不足を防止できる。これにより、サージ電流によるスイッチ素子の損失増加を防ぎ、また、素子破壊の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】三相ブリッジインバータ回路の問題を説明するための図である。
図2】この発明の実施形態である三相ブリッジインバータ回路の回路図である。
図3】従来のインバータにおいて、主回路電流ic(Q1)、ic(Q2)が一定以上で回生回路が動作しているときの動作時の波形図である。
図4】従来のインバータにおいて、主回路電流ic(Q1)、ic(Q2)が一定未満で回生回路が動作しているときの動作時の波形図である。
図5】この発明の実施形態のインバータの動作の概略を説明する図である。
図6】この発明の実施形態のインバータにおいて、主回路電流ic(Q1)、ic(Q2)が一定未満で回生回路が停止している時の動作時の波形図である。
図7】この発明の実施形態のインバータにおいて、主回路電流ic(Q1)、ic(Q2)が一定以上の場合の動作時の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図2は、この発明の実施形態である三相ブリッジインバータ回路の概略回路図である。
【0025】
この三相ブリッジインバータ回路は、U相、V相、W相毎に同一構成のインバータ1(1U、1V、1W)が接続される。各インバータ1の出力端子にはリアクトルL1(L1(U)、L1(V),L1(W))が接続され、さらに各リアクトルL1の出力側は三相負荷に接続される。
【0026】
次に、インバータ1の構成について説明する。各インバータ1(1U、1V、1W)は同じ構成であるため、以下、インバータ1Uについて、これをインバータ1として説明する。
【0027】
インバータ1は、ブリッジ接続されたIGBT素子等からなり夫々第1、第2逆並列ダイオードds1、ds2を有する第1、第2スイッチ素子Q1、Q2と、各第1、第2スイッチ素子Q1、Q2に並列的に接続されるスナバ回路とを備える。第1スイッチ素子Q1に並列的に接続される第1スナバ回路は第1スナバコンデンサC1とこれに直列接続される第1スナバダイオードD3とで構成され、第2スイッチ素子Q2に並列的に接続される第2スナバ回路は第2スナバコンデンサC2とこれに直列接続される第2スナバダイオードD4とで構成されている。
【0028】
前記第1スナバ回路には、第1回生スイッチ素子Q3と第1放電防止用ダイオードD1の直列回路が接続され、さらに電源E1との間に回生リアクトルLfが接続されている。これらの、Q3、D1、Lfで第1回生回路を構成する。また、前記第2スナバ回路には、第2回生スイッチ素子Q4と第2放電防止用ダイオードD2の直列回路が接続され、さらに電源E2との間に回生リアクトルLfが接続されている。これらの、Q4、D2、Lfで第2回生回路を構成する。本例では、一つの回生リアクトルLfを、第1スナバ回路と第2スナバ回路とで共用している。
【0029】
なお、電源E1、E2の接続点Nは、V相、W相の同一部分Nに接続される。
【0030】
制御回路2は、インバータ1を制御する回路であり、スイッチ素子Q1〜Q4に対してPWM制御信号と回生信号を出す。
【0031】
制御回路2内の制御部2Aは第1、第2スイッチ素子Q1、Q2をPWM制御する回路である。また、制御部2Bは、第1、第2回生回路の第1、第2回生スイッチ素子Q3、Q4をオンオフ制御するための回生信号を生成する回路である。
【0032】
前記制御部2Aは、センサ20で検出した主回路電流(出力電流)と、出力電流の目標値Irefとの誤差Ierrを誤差検出器21で検出し、この誤差Ierrと三角波発生器22からの三角波とを比較器23で比較してPWM制御信号を生成し、これをフォトカプラ24を介して第1、第2スイッチ素子Q1、Q2のゲートに与える。
【0033】
前記制御部2Bは、目標値Irefをレベル変換器25でレベル変換して第1回生スイッチ素子Q3の指令信号u_refを生成し、これを反転した第2回正スイッチ素子のQ4指令信号*u_refを反転器26で生成する。これらの指令信号は、予め設定されているしきい値soft_rimと比較して(比較器28、29)、AND回路30、31にて上記PWM制御信号と論理積する。AND回路30、31でPWM制御信号と上記指令信号が論理積され、フォトカプラ32を介して第1、第2回生スイッチ素子Q3、Q4のゲートに回生信号として印加される。
【0034】
以上の構成において、従来の三相インバータは、制御部2Bがなく、第1スイッチ素子Q1へのゲート信号(PWM制御信号)が第1回生スイッチ素子Q3への回生信号として兼用されている。同様に、第2スイッチ素子Q2へのゲート信号(PWM制御信号)が第2回生スイッチ素子Q4への回生信号として兼用されている。
【0035】
理解を容易にするため、最初に、制御部2Bがない場合の従来の三相ブリッジインバータ回路の動作を説明し、次いで、制御部2Bを設けた本実施形態の三相ブリッジインバータ回路の動作を説明する。
【0036】
図3は、従来のインバータ1において、主回路電流ic(Q1)、ic(Q2)が一定以上で回生回路が動作しているときの動作時の波形図である。
【0037】
t1ではMODE(A)が開始され、第1スイッチ素子Q1がオンすると、図1(A)に実線で示すような主回路電流ic(Q1)が、第1スイッチ素子Q1、リアクトルL1に流れる。t1では、第1回生スイッチ素子Q3もオンされるため、期間t1−t2では、第1スナバコンデンサC1から回生電流ic(C1)が、回生リアクトルLf、第1回生スイッチ素子Q3を介して流れ(放電)、第1スナバコンデンサC1の充電電荷が電源E1に回生される。この回生電流ic(C1)の経路は、C1−E1−Lf−Q3−D1となる。t3で第1回生スイッチ素子Q3と第1スイッチ素子Q1がオフの休止期間となると、リアクトルL1のエネルギーに基づいて第1スナバコンデンサC1にスナバ充電電流ic(C1)が流れる(充電)。このときの電流ic(C1)は、リアクトルL1により定電流、となるため、第1スナバコンデンサC1の電圧VC(C1)は急激には上昇せず、そのため第1スイッチ素子Q1の電圧VCe(Q1)はZVSターンオフとなる、損失が発生しない所謂ソフトスイッチングが行われる。t4で第1スナバコンデンサC1の電圧VC(C1)はE1となり、スナバ充電電流ic(C1)がゼロとなり、MODE(A)が終了する。
【0038】
t4でMODE(B)に入り、リアクトルL1を電流源として第2スイッチ素子Q2の逆並列ダイオードds2を介して主回路電流が流れる。ところが、このとき、図1(B)に示したように、第2スナバダイオードD4が逆方向のため、リアクトルL1を電流源とした第2スナバコンデンサC2への充電電流が流れない。このため、次に第1スイッチ素子Q1がターンオンしたときに第2スナバコンデンサC2に充電電荷がないため、第1図(B)の一点鎖線で示すE1→Q1→D4→C2経路でサージ電流が流れる。図3においてIS1がこのサージ電流を示している。このとき、第2スナバコンデンサC2は充電されるが、この充電電流は電源から流れる主回路電流によるものである。また、第2スナバコンデンサC2の充電電荷は、t5で第2回生スイッチ素子Q4がオンすることで電源に回生される。主回路電流が負の半サイクルになったときは、上記の動作が逆となって、MODE(B)において、第1スナバダイオードD3が逆方向のためリアクトルL1を電流源とした第1スナバコンデンサC1への充電電流が流れず、第2スイッチ素子Q2がターンオンしたときに第1スナバコンデンサC1に充電電荷がないため、第2スイッチ素子Q2にC1→D3→Q2経路でサージ電流が流れる。
【0039】
また、図4は、従来のインバータ1において、主回路電流ic(Q1)、ic(Q2)が一定未満で回生回路が動作しているときの動作時の波形図である。
【0040】
図4に示すように、主回路電流ic(Q1)、ic(Q2)が一定未満の場合、図1(A)で説明したように、休止期間での第1スナバコンデンサC1への充電が不足する。すると、t4において第2スイッチ素子Q2がターンオンしたタイミングで第2スイッチ素子Q2にサージ電流IS2が流れる。なおt7では、第1スイッチ素子Q1に上記で説明したサージ電流IS1が流れ、MODE(B)が終了する。
【0041】
このように、制御部2Bがない従来の回路では、図3図4に示すようなサージ電流IS1、2が発生し、スイッチ素子Q1、Q2の損失増大や素子破壊を発生することになる。
【0042】
次に、制御部2Bを設けた本実施形態のインバータの動作について図2図5図6図7を参照して説明する。 図5は、本実施形態のインバータの動作の概略を説明する図である。
【0043】
図5(A)は、U相、V相、W相の主回路電流波形図、図5(B)は回生信号波形図、図5(C)は電流経路を示している。また、図6は、主回路電流ic(Q1)、ic(Q2)が一定未満の区間で回生回路が停止している時の動作時の波形図である。図7は、主回路電流ic(Q1)、ic(Q2)が一定以上の場合の動作時の波形図である。
【0044】
図3、4、6、7に示すように、U相が正の半サイクルでは、第1スイッチ素子Q1と第2スイッチ素子Q2は交互にオンオフするスイッチングを繰り返し、スイッチングの1サイクルにおいて第1スイッチ素子Q1がオンとなる前半の期間では同スイッチ素子Q1はMODE(A)の状態であり、第2スイッチ素子Q2がオンとなる後半の期間では同スイッチ素子Q2はMODE(B)の状態である。
【0045】
そして、図5(B)において、U相が正の半サイクルの期間をQ1_MODE(A)とQ2_MODE(B)として示しているが、Q1_MODE(A)の期間は、スイッチングの各サイクルの前半において第1スイッチ素子Q1がMODE(A)の状態であることを示し、Q2_MODE(B)の期間は、スイッチングの各サイクルの後半において第2スイッチ素子Q2がMODE(B)の状態であることを示している。
【0046】
また、U相が負の半サイクルの期間をQ2_MODE(A)とQ1_MODE(B)として示しているが、Q1_MODE(B)の期間は、スイッチングの各サイクルの前半において第1スイッチ素子Q1がMODE(B)の状態であることを示し、Q2_MODE(A)の期間は、スイッチングの各サイクルの後半において第2スイッチ素子Q2がMODE(A)の状態であることを示している。
【0047】
図5は、第1に、主回路電流が一定未満の区間Tでは、第1回生回路と第2回生回路の制御動作を停止することを示している。ここで、主回路電流が一定未満の区間Tは、本例ではしきい値soft_rimの6.8V(主回路電流27.5Aに対応)と5.6V(主回路電流22.5Aに対応)で決定される。この区間Tは、後述のように、指令信号u−refと指令信号*u−refがしきい値soft_rim未満の範囲である。電流が上昇するときと下降するときでしきい値soft_rimを変えているのは、図2の比較器28、29のヒステリシス特性を補償するためである。
【0048】
上記区間Tでは、第1回生スイッチ素子Q3に対する回生信号の指令信号u−refと、第2回生スイッチ素子Q4に対する回生信号の指令信号*u−refがともにしきい値soft_rim未満となっている。図2の制御部2Bからわかるように、指令信号u−refと指令信号*u−refがしきい値soft_rim未満であると、第1、第2回生スイッチ素子Q3、Q4がともにオフ状態となる。このため、動作波形図は図6のようになる。同図に示すように、区間Tでは第1、第2回生スイッチ素子Q3、Q4ともオフ状態であるため第1、第2スナバコンデンサC1、C2の充放電はされず、第1、第2スナバコンデンサC1、C2の電圧VC(C1)、VC(C2)は高いままである。これにより、図3図4に示すようなC1、C2を介してのサージ電流が流れることはない。
【0049】
図5は、第2に、ソフトSW動作範囲(区間T以外の範囲)では、MODE(B)にあるスイッチ素子に対応する回生回路の制御動作を停止することを示している。
【0050】
図5(B)では、第2回生スイッチ素子Q4に対する回生信号の指令信号*u−refは第1回生スイッチ素子Q3に対する回生信号の指令信号u−refの反転信号である。U相の正の半サイクルのソフトSW動作範囲においては、指令信号u−refがしきい値soft_rim以上であるため、図2の制御部2Bからわかるように、第1回生スイッチ素子Q3による回生動作は行われる。しかし、指令信号*u−refはしきい値soft_rim未満であるため、第2回生スイッチ素子Q4による回生動作は行われない。このソフトSW動作範囲では、第1スイッチ素子Q1はMODE(A)にあり、第2スイッチ素子Q2はMODE(B)となっている。
【0051】
一方、U相の負の半サイクルのソフトSW動作範囲においては、指令信号*u−refがしきい値soft_rim以上であるため、図2の制御部2Bからわかるように、第2回生スイッチ素子Q4による回生動作は行われる。しかし、指令信号u−refはしきい値soft_rim未満であるため、第1回生スイッチ素子Q3による回生動作は行われない。このソフトSW動作範囲では、第2スイッチ素子Q2はMODE(A)であり、第1スイッチ素子Q1はMODE(B)となっている。
【0052】
このように、U相の正の半サイクルのソフトSW動作範囲では、MODE(A)(図1(A)参照)にある第1スイッチ素子Q1に対応する第1回生回路による回生動作が行われ、MODE(B)(図1(B)参照)にある第2スイッチ素子Q2に対応する第2回生回路による回生動作が停止される。また、U相の負の半サイクルのソフトSW動作範囲では、MODE(A)(図1(A)参照)にある第2スイッチ素子Q2に対応する第2回生回路による回生動作が行われ、MODE(B)(図1(B)参照)にある第1スイッチ素子Q1に対応する第1回生回路による回生動作が停止される。
【0053】
図7は、U相の正の半サイクルのソフトSW動作範囲の動作波形図である。同図に示すようにt1〜t4では第1スイッチ素子Q1はMODE(A)にあり、t4〜t7では第2スイッチ素子Q2はMODE(B)の状態にある。そして、第1スイッチ素子Q1に対応している第1回生スイッチ素子Q3による回生動作は行われるが、第2スイッチ素子Q2に対応している第2回生スイッチ素子Q4による回生動作は行われない。MODE(B)では、第2回生スイッチ素子Q4がオフ状態であるため第2スナバコンデンサC2の充放電はされず、第2スナバコンデンサC2の電圧VC(C2)は高いままである。これにより、図3に示すような、第2スナバコンデンサC2を介しての第1スイッチ素子Q1へのサージ電流が流れることはない。
【0054】
U相が負の半サイクルのフトSW動作範囲では、逆の動作となり、第1回生スイッチ素子Q3がオフ状態であるため第1スナバコンデンサC1の充放電はされず、第1スナバコンデンサC1の電位は高いままである。この場合も、第1スナバコンデンサC1を介しての第2スイッチ素子Q2へのサージ電流が流れることはない。
【0055】
図5(C)の(a)は、U相の電位が正の半サイクルのソフトSW動作範囲で、第1スイッチ素子Q1が導通し、同スイッチ素子Q1がMODE(A)(図1(A)参照)の状態であることを示す。図5(C)の(b)は、U相の電位が正の半サイクルのソフトSW動作範囲で、主回路電流ic(Q2)が第2スイッチ素子Q2の逆並列ダイオードds2を介して流れることにより、同スイッチ素子Q2がMODE(B)(図1(B)参照)の状態であることを示している。また、MODE(A)では、第1回生スイッチ素子Q3がオンして回生動作が行われ、MODE(B)では、第2回生スイッチ素子Q4がオンせず回生動作が行われないことを示している。
【0056】
図5(C)の(c)は、U相の電位が負の半サイクルのソフトSW動作範囲で、第2スイッチ素子Q2が導通し、MODE(A)(図1(A)参照)の状態であることを示す。図5(C)の(d)は、U相の電位が負の半サイクルのソフトSW動作範囲で、主回路電流ic(Q1)が第1スイッチ素子Q1の逆並列ダイオードds1を介して流れることにより、同スイッチ素子Q1がMODE(B)(図1(B)参照)の状態であることを示している。また、MODE(A)では、第2回生スイッチ素子Q4がオンして回生動作が行われ、MODE(B)では、第1回生スイッチ素子Q3がオンせず回生動作が行われないことを示している。
【0057】
すなわち、図5(C)の(a)においては、正の半サイクルのソフトSW動作範囲で、第1スイッチ素子Q1はMODE(A)の状態であり、第1スナバコンデンサC1の充電電荷の電源への回生動作(放電)が行われ(図7のt1−t2)る。一方、図5(C)の(b)においては、リアクトルL1を電流源とする第1スナバコンデンサC1への充電が行われてから(図7のt3−t4)、第2スイッチ素子Q2はMODE(B)の状態となる。すなわち、リアクトルL2を電流源として第2スイッチ素子Q2の逆並列ダイオードds2に主回路電流ic(Q2)が流れる。このとき第2スナバコンデンサC2に充電電流は流れないが、第2回生スイッチ素子Q4がオフしているため回生動作が行われていない。このため、第2スナバコンデンサC2の電位はE1を維持している。したがって、次に第1スイッチ素子Q1がターンオンしたタイミングt7では、この第1スイッチ素子Q1に図3で示すサージ電流ISが流れることはない。図5(C)の負の半サイクルのソフトSW動作範囲で、(c)の第2スイッチ素子Q2が導通している時と、(d)の第1スイッチ素子Q1の逆並列ダイオードds1に主回路電流ic(Q1)が流れる時においても同様の動作となる。
【0058】
以上の動作を実現するように、図2において、制御部2Bは、主回路電流ic(Q1)、ic(Q2)が一定未満の場合のMODE(A)においての回生動作を停止し、また、MODE(B)のときの回生動作を停止するよう、比較器28、29、AND回路30、31を接続し、AND回路30、31でQ3、Q4への回生信号を生成している。
【0059】
本実施形態では、制御部2Bを設けることで、主回路電流ic(Q1)、ic(Q2)が一定未満である区間Tでは、MODE(A)、MODE(B)のときの回生動作を停止し、主回路電流ic(Q1)、ic(Q2)が一定以上であるソフトSW動作範囲(区間T以外の範囲)では、MODE(B)のときの回生動作を停止するようにしている。このため、これらの回生動作をしない分の電源効率が悪くなるが、図3図4に示す第1、第2スイッチ素子Q1、Q2に流れるサージ電流IS1、IS2による損失がなくなるため、損失差引により全体として電源効率が良くなる。もちろん、サージ電流IS1、IS2が大きいと素子破壊につながるが、本実施形態ではこれらのサージ電流を防止できるため素子破壊は生じない。
【0060】
なお、制御回路2の動作を要約すれば以下の通りとなる。
【0061】
制御部2Aは、出力電流(主回路電流)が所定の大きさとなるようにスイッチ素子Q1、Q2を休止期間を挟んで交互にオンオフする第1制御を行う。
【0062】
制御部2Bは、スイッチ素子Q1、Q2のオンタイミングに同期して回生スイッチ素子Q3、Q4をオンし、これによって休止期間の間にスナバコンデンサC2、C2に蓄積された電荷を電源に回生する第2制御と、
出力電流が所定のしきい値以下の区間Tで前記第2制御を停止する第3制御と、
前記逆並列ダイオードを介して出力電流が流れるMODE(B)の期間で前記第2制御を停止する第4制御と、を行う。
【0063】
以上のように、本実施形態では、三相インバータ回路で問題となるサージ電流を防止でき、スイッチ素子のターンオン時の損失を減らすことが出来、且つスイッチ素子が破壊するのを防止できる。
【符号の説明】
【0064】
1U−インバータ
2−制御回路
2A−制御部
2B−制御部
u_ref―Q3指令信号
*u_ref―Q4指令信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7