【実施例1】
【0010】
図1は本実施例における車両用シートの概略斜視図である。
図1において、車両用シート1は、シートバック2、シートクッション3を備え、チャイルドシートの車両用シート1への固定方式として国際標準規格ISO−FIXに対応したISO−FIXタイプのチャイルドシートを固定するために、チャイルドシートに設けられた係合部材を係合するアンカを有している。そして、アンカを収納し、チャイルドシートの係合部材を挿入するための挿入部4をシートバック2の下段に有している。チャイルドシートをシートバック2及びシートクッション3の前面に取り付ける際には、この挿入部4を通してチャイルドシートの係合部材をアンカに係合させる。なお、挿入部4はシートクッション3の後端に配置されていてもよい。
【0011】
図2は、シートバックの挿入部の周辺を拡大した模式図であり、(A)はシートバック2の表面から見た表面図、(B)はシートバック2の表皮の裏面からみた背面図を示している。
図2(A)において、シートバック2は、モールド成形した発泡体製パッドであるモールドパッドにウレタン等のワディングと表皮材で被覆して構成されている。挿入部4はスリット5を有し、スリット5は、2枚のスリット形成用の表皮材6で形成されている。スリット形成用の表皮材6は、その上辺部およびスリット5に対して外側の両側辺部が周辺の表皮材に縫製されている。スリット形成用の表皮材6のスリット5側の側辺部及び挿入部4の下端部7は周辺の表皮材に対して縫製されていない。従って、2枚のスリット形成用の表皮材6はそれぞれ略L字形状で縫製されており、スリット5及び、挿入部4の下端部7は開放状態となっている。言い換えれば、挿入部4は、逆T字形状のスリットを有している。
【0012】
従って、チャイルドシートの係合部材を挿入する際には、挿入部4の2枚のスリット形成用の表皮材6それぞれが2辺を開放できるので挿入する力を小さくできチャイルドシートの取り付け作業性の向上が図れる。
【0013】
ここで、チャイルドシートの係合部材を挿入後、チャイルドシートを非装着とするためにチャイルドシートの係合部材を引き抜いた際、本来であれば、スリット形成用の表皮材6の可撓性により元の位置に戻るべきところ、戻らずに挿入部4の内部が見えてしまう可能性がある。そこで、それを解決するための構成について以下説明する。
【0014】
図2(B)において、8は収縮性を有する弾性部材であるゴムバンド、9はガイド部材、10はスリット形成用の表皮材6が覆うスリット形成用のワディング、11は縫製部である。
【0015】
上記したように、2枚のスリット形成用の表皮材6は、スリット形成用のワディング10とともに、その上辺部およびスリット5に対して外側の両側辺部が縫製部11で周辺の表皮材に縫製される。それと共に、ゴムバンド8が、2枚のスリット形成用の表皮材6のスリット5に対して外側の両側辺部で縫製部11によって縫製される。また、2つのそれぞれのガイド部材9がゴムバンド8を貫通して移動可能なように保持して、それぞれのスリット形成用の表皮材6、スリット形成用のワディング10とともに縫製部11によって縫製される。
【0016】
ガイド部材9は、ゴムバンド8やスリット形成用の表皮材6が上下しないように働き、また、スリット形成用の表皮材6がシートバック2の表面から前に出ないように規制する。
【0017】
図3に、チャイルドシートの係合部材を挿入部4に挿入した状態の断面模式図を示す。
図3は、
図2におけるA―Aでのチャイルドシートの係合部材を挿入した場合の断面図である。
図3に示したように、挿入部4はアンカ14を収納するモールドパッド12に形成されたアンカ収納凹部を覆うように構成されており、チャイルドシートの係合部材13が挿入部4に挿入されると、2枚のスリット形成用の表皮材6は2辺が開放されているので、その一部は挿入部4内に押しやられ係合部材13がアンカ14に係合される。この時、ゴムバンド8は係合部材13により引っ張られ、同様に、挿入部4内に押しやられる。一方、アンカ14との係合を解除するために係合部材13を挿入部4から引き抜いた場合は、ゴムバンド8の弾性力により、ガイド部材9を介して、スリット形成用の表皮材6は元の位置に戻るように働く。これにより、チャイルドシート非装着時の外観意匠の低下防止を実現できる。
【0018】
なお、ゴムバンド8は、チャイルドシートの係合部材13がアンカ14に係合された状態で、係合部材13の上部に引っ張られている必要があるため、ゴムバンド8の縫製位置は、チャイルドシートの係合部材13がアンカ14に係合された状態での、係合部材13の上下中心位置よりも上側にゴムバンド8の上下中心位置が来るようにする必要がある。言い換えれば、アンカ14の位置よりも上側にゴムバンド8の上下中心位置が来るようにすればよい。
【0019】
また、挿入部4の貫通穴の大きさは、より大きければ、挿入しやすいが、チャイルドシート非装着時の外観意匠低下や着座感の低下を招くため、両者を勘案して決定する必要がある。本実施例では、挿入部4の貫通穴の大きさは、挿入するチャイルドシートの係合部材13の高さ方向の約2倍、幅方向の約2倍としている。
【0020】
以上のように、本実施例は、チャイルドシートに設けられた係合部材が係合するアンカを収納するアンカ収納凹部がシートを構成するパッドに形成され、アンカ収納凹部をスリットが形成された表皮材で覆うように構成された車両用シートであって、スリットは、逆T字形状のスリットである構造とした。
【0021】
また、スリットは、2枚の表皮材で形成されており、2枚の表皮材はそれぞれの上辺部および外側側辺部が周辺の表皮材に縫製されており、弾性部材とガイド部材を有し、弾性部材は、2枚の表皮材の外側側辺部で縫製されており、ガイド部材は、2枚の表皮材それぞれに縫製されている2枚のガイド部材からなり、それぞれのガイド部材は弾性部材を移動可能なように保持している構造とした。
【0022】
これにより、チャイルドシートの取り付け作業性の向上と、チャイルドシート非装着時の外観意匠の低下防止を兼ねた車両用シートを提供することができる。
【実施例2】
【0023】
図4は、本実施例における、シートバックの挿入部の周辺を拡大した模式図であり、(A)はシートバック2の表面から見た表面図、(B)はシートバック2の表皮の裏面からみた背面図を示している。
図4において、実施例1の
図2と同様の機能を有する構成は同じ符号を付しており、その説明は省略する。
図4が
図2と異なる点は、挿入部4の下端に、チャイルドシートの係合部材を挿入する際の位置合わせのための表皮材15を周辺の表皮材に対して縫製した点である。
【0024】
図4(B)においては、16は位置合わせのための表皮材15が覆う位置合わせのためのワディングであり、位置合わせのための表皮材15は、位置合わせのためのワディング16とともに、その下辺部および両側辺部が縫製部17で周辺の表皮材に縫製される。
【0025】
これにより、挿入部4の下端部7に隣接する表皮材15の上端部をチャイルドシートの係合部材を挿入する際の位置決め位置として、係合部材13を挿入することにより、チャイルドシートの取り付け作業性のさらなる向上が得られる。
【0026】
以上実施例について説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、上記した実施例では、表皮材はワディングとともに縫製するとして説明したが、ワディングはなくてもよい。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。