特許第6629785号(P6629785)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6629785
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】カーテンエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/201 20110101AFI20200106BHJP
   B60R 21/232 20110101ALI20200106BHJP
【FI】
   B60R21/201
   B60R21/232
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-79524(P2017-79524)
(22)【出願日】2017年4月13日
(65)【公開番号】特開2018-177001(P2018-177001A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2018年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】503175047
【氏名又は名称】オートリブ株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】100089462
【弁理士】
【氏名又は名称】溝上 哲也
(74)【復代理人】
【識別番号】100129827
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 進
(74)【復代理人】
【識別番号】100204021
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】平田 裕
(72)【発明者】
【氏名】清水 陽介
【審査官】 小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/014191(WO,A1)
【文献】 特開2010−126078(JP,A)
【文献】 特開2003−034216(JP,A)
【文献】 特開2002−193064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16−33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグと、インフレータと、車両と前記エアバッグの間に設けられる樹脂カバーを有し、緊急時、インフレータで発生したガスにより、エアバッグが車室内をサイドウインドウに沿ってカーテン状に展開するカーテンエアバッグ装置であって、
前記エアバッグは、前記インフレータとの接続部に連続するダクトと、当該ダクトに連通し、前記インフレータで発生したガスが供給されて展開する複数のチャンバーと、上端部の近傍に配置される、車両への取り付けのためのタブを備え、
当該タブは、エアバッグ展開した後に前記各チャンバーが最適な位置に位置制御できるような上下方向長さを有し、
ロール形状に巻かれた又は蛇腹形状に折り畳まれた前記エアバッグの、外周側で前記ダクトの上端部近傍に一端が結合され、他端が前記車両又は樹脂カバーに設けられた取付け部に結合されて、前記エアバッグに巻き付けられるラッパーを、前記タブとは独立して設け、
前記ラッパーの巻き付けによって前記車両への取付け時における前記ダクトの上下方向位置を、前記ラッパーを巻き付けていない領域よりも下方に位置させて、前記エアバッグを乗員とサイドウインドウの間に適切に展開させ、前記ラッパーが設けられる領域と、前記ラッパーが設けられない領域とで乗員の頭部のチャンバーへの当接位置や当接角度が相違するようにしたことを特徴とするカーテンエアバッグ装置。
【請求項2】
前記取付け部は、前記巻かれた又は折り畳まれたエアバッグの、車室内側に突出した部材が配置された部分と対応する位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項3】
前記取付け部は、車両の前後方向におけるセンターピラー部分に対応する位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項4】
前記取付け部は、車両の前後方向における側突時に乗員の衝突が想定される領域に対応する位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項5】
前記ラッパーは不織布で形成されたものであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のカーテンエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側面衝突時又は横転時、エアバッグがサイドウインドウに沿ってカーテン状に展開し、乗員の頭部の保護と車外への放出を防止するカーテンエアバッグ装置に関するものである。
【0002】
以下、本願において「上」「上方」とは自動車の天井側を、「下」「下方」とは自動車の床側を意味する。また、「前」「前方」とは自動車の前進方向側を、「後」「後方」とは自動車の後退方向側を意味する。
【背景技術】
【0003】
カーテンエアバッグ装置は、側面衝突時又は横転時のように自動車の側方に高荷重が作用した時に、インフレータを作動してガスを発生させ、車室内で、エアバッグをサイドウインドウに沿わせて下方にカーテン状に展開させるものである。
【0004】
このカーテンエアバッグ装置1は、例えば図4に示すように、エアバッグ5のタブとこれらタブ部に配置されるクリップ2及びブラケット3などを用いて、例えばルーフサイドレールRSRからフロントピラー(Aピラー)FP及びリアピラー(例えばCピラー)RPに亘って取付けられる。なお、図4中のCPはセンターピラー(例えばBピラー)を示す。
【0005】
このような取付け状態のカーテンエアバッグ装置1は、車室内側のフロントピラーやリアピラーのガーニッシュ、ルームヘッドライニング(ルーフガーニッシュ)に覆われ、これらガーニッシュに対して車室の外側に格納される。
【0006】
そして、側面衝突時又は横転時には、インフレータ4で発生したガスによって、例えばロール形状に巻かれたエアバッグ5が展開する。その結果、フロントピラー及びリアピラーのガーニッシュ、ルームヘッドライニングが車室内側に押され、フロントピラーFPやリアピラーRP、ルーフサイドレールRSRとの係合が外れる。
【0007】
係合が外れた後は、フロントピラー及びリアピラーのガーニッシュ、ルームヘッドライニングの前記係合が外れた先端側が車室内側に押し広げられ、この押し広げられてできた開口から車室内にエアバッグがカーテン状に展開する。
【0008】
ところで、自動車の側面には、センターピラートリムなど車室内側に突出した部材が配置されている。このため、エアバッグが自動車の前後方向に亘って一様な方向に展開する場合、前記車室内側に突出した部材が配置された領域では、エアバッグの展開が阻害される可能性がある。
【0009】
そこで、前記車室内側に突出した部材である、例えばセンターピラーが配置された領域で、展開が阻害されないような挙動でエアバッグが展開するカーテンエアバッグ装置が種々提案されている。
【0010】
一例として、エアバッグのセンターピラー上方に配置される部分を、センターピラーから離れる方向に展開するよう、他の部分に対して車室内側に向けて捩じり、折り畳み部を上向きに反転して収納配置するエアバッグ装置が特許文献1で提案されている。
【0011】
しかしながら、上記エアバッグ装置の場合、捩じり量は作業者に依存することになって、捩じり量にばらつきが生じるおそれがある。
【0012】
特許文献1には、エアバッグの取付け過程で捩じり反転部が捩じる前の状態に戻ることがなく、その荷姿を保形できて組付け作業を容易に行えるように、エアバッグの捩じり反転部をエアバッグの展開初期に剥離する手段で仮止めすることが記載されている。この場合、仮止め手段としては、捩じり反転部を全周に亘って仮止めできるような手段、例えば粘着テープやマジックファスナー(登録商標)を例示している。
【0013】
しかしながら、粘着テープやマジックファスナーによって捩じり反転部を全周に亘って仮止めする場合、エアバッグ展開時の剥離の仕方によっては、剥離部以外の残っている粘着部分によって意図しない方向に展開するおそれがある。つまり、粘着テープやマジックファスナーによって捩じり反転部を全周に亘って仮止めする場合、エアバッグの展開方向に悪い影響を及ぼし易くなる。
【0014】
また、エアバッグがルーフサイドレール等に当たって損傷しないように保護する樹脂カバーの、エアバッグのタブを通すスリットの位置を変更させることにより、エアバッグを部分的に捩じるエアバッグ装置が特許文献2で提案されている。
【0015】
しかしながら、部分的に捩じった状態を維持することに関して特許文献2には記載がないので、当初の捩じった状態を維持できているかどうかは不明である。車両搭載後にロール形状に巻き取った部分や蛇腹形状に折り畳んだ部分が若干緩む傾向があるが、粘着テープなどで固定しないことで当初の捩じった状態を維持できていない場合、エアバッグは意図しない方向に展開する可能性がある。
【0016】
衝突時に乗員の衝突が想定される領域では、サイドウインドウに沿ってエアバッグを展開させる必要がある。また、FMVSS(米国連邦自動車安全基準)226(乗員の車外放出軽減)に対応させるため、展開後のエアバッグの上下方向位置は設計で決まっている。
【0017】
ところで、エアバッグの上端に取付けたタブの長さを変えることにより、自動車に取付けたエアバッグの各チャンバーへのガスの導入部であるダクトの位置を変え、エアバッグの展開方向を決めるものがある。
【0018】
しかしながら、タブの長さによって展開方向を決める場合、タブの長さが適切でないと、エアバッグが車外方向に展開してドアやトリム(内装部材)に乗り上げたり、エアバッグが車内の乗員に向かって展開し、適切に乗員を保護できない可能性がある。
【0019】
つまり、エアバッグ5が鉛直下方に展開する図5(b)に示す長さのタブ5aに比べて、タブ5aを長くした図5(a)の場合は車室内側に展開し、タブ5aを短くした図5(c)の場合は車外側に展開する。なお、図5中のPはエアバッグ5のダクトの位置を示し、白抜き矢印はエアバッグ5の展開方向を示している。
【0020】
図5に示すように、タブの長さを変えることで自動車への取付け時のダクトの位置を変え、エアバッグの展開方向を調整することができる。
【0021】
例えば、展開時にフロントピラーに収容されるエアバッグの下端が車内のトリムに乗り上げないようにタブを長くしすぎると、乗員の頭部との当接位置がチャンバーの中心部よりのダクト側によることになってFMVSS 226の乗員保護性能が悪くなる可能性がある。
【0022】
一方、タブを短くしすぎるとエアバッグの展開方向が適切でなくなり、やはり乗員保護性能が阻害されることになる。従って、個別にタブの長さを細かく調整することが必要になり、展開の再現性のためにタブ自体の留め方などにも工夫が必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開2002−193064号公報
【特許文献2】WO2012/099105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明が解決しようとする問題点は、エアバッグの所定の領域における展開を阻害しないような挙動で展開する従来技術は、満足できる展開挙動を得ることができなかったり、FMVSS 226の乗員保護性能が悪くなる可能性があるという点である。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、エアバッグの展開時、所定の領域における展開が阻害されないような挙動で確実に展開でき、かつFMVSS 226の乗員保護性能が悪くなることがないようにすることを目的とするものである。
【0026】
本発明は、エアバッグと、インフレータと、自動車と前記エアバッグの間に設けられる樹脂カバーを有し、緊急時、インフレータで発生したガスにより、エアバッグが車室内をサイドウインドウに沿ってカーテン状に展開するカーテンエアバッグ装置である。
【0027】
そして、上記目的を達成するために、
本発明では、
前記エアバッグは、前記インフレータとの接続部に連続するダクトと、当該ダクトに連通し、前記インフレータで発生したガスが供給されて展開する複数のチャンバーと、上端部の近傍に配置される、自動車への取り付けのためのタブを備え、
当該タブは、エアバッグ展開した後に前記各チャンバーが最適な位置に位置制御できるような上下方向長さを有し、
ロール形状に巻かれた又は蛇腹形状に折り畳まれた前記エアバッグの、外周側で前記ダクトの上端部近傍に一端が結合され、他端が前記車両又は樹脂カバーに設けられた取付け部に結合されて、前記エアバッグに巻き付けられるラッパーを、前記タブとは独立して設け、
前記ラッパーの巻き付けによって前記車両への取付け時における前記ダクトの上下方向位置を、前記ラッパーを巻き付けていない領域よりも下方に位置させて、前記エアバッグを乗員とサイドウインドウの間に適切に展開させ、前記ラッパーが設けられる領域と、前記ラッパーが設けられない領域とで乗員の頭部のチャンバーへの当接位置や当接角度が相違するようにしたことを最も主要な特徴としている。
【0028】
すなわち、本発明は、エアバッグの展開方向の制御をラッパーの巻き付けによって行い、当該展開方向の制御を行ったエアバッグの各チャンバーの展開終了後の位置制御をタブの長さを規定することによって行うことが最も主要な特徴である。
【0029】
本発明では、自動車への取付け用のタブと展開方向制御用のラッパーを独立して設けているので、自動車の構造によって取付け位置に制限を受けるタブから独立して、当該ラッパーを自由に配置することができる。
【0030】
本発明では、前記取付け部は、巻かれた又は折り畳まれたエアバッグの、車室内側に突出した部材が配置された位置、若しくは乗員の衝突が想定される領域と対応する位置に設けることが望ましい。展開制御が必要とされるのは、車室内側に突出した部材、若しくは乗員の衝突が想定される領域だからであり、当該位置に取付け部を設けることで、展開後のエアバッグの位置と展開中の制御を適切に行うことができる。
【0031】
より具体的には、車室内に突出した部位としての自動車の前後方向におけるセンターピラーに対応する位置や、自動車の前後方向における、側突時に乗員の衝突が想定される領域に対応する位置である。
【0032】
これらにより、センターピラーや乗員の衝突が想定される領域における、展開後のエアバッグの位置と展開中の展開方向の制御を適切に行うことができ、乗員をより適切に保護することができる。
【0033】
また、本発明では、自動車へのエアバッグの取付け時におけるダクトの上下方向位置を、エアバッグの展開時まで切れない程度に保持できれば良いので、ラッパーには、不織布などの強い部材でない素材を採用することが望ましい。
【0034】
展開時、エアバッグが自動車の取付け位置から離れないよう、展開時の衝撃に耐えることができる強度を有するタブを通常は使用する。このようなタブを使ってエアバッグの展開方向の制御を行う場合、適切な部分で適切なタイミングで切断しないと意図した展開方向に制御できなくなる。従って、スリット等を設けて切断力を調節することが必要になり、相反する性能が要求される。また、切断の安定性を確保するため、正確なスリット加工が必要になる。
【0035】
これに対して、本発明では、タブが十分な強度を有していても、もともと強い部材でないラッパーが展開方向の制御を行うので、展開初期に簡単に破れて意図した展開方向に制御することができる。
【0036】
すなわち、本発明では、ラッパーがエアバッグの展開方向の制御を行い、タブがエアバッグ展開後のチャンバーの位置制御を分担して行うので、展開時、所定の領域における展開が阻害されないような挙動で確実にエアバッグを展開することができる。しかも、乗員の衝突が想定される領域でのFMVSS 226の乗員保護性能等が悪くなることもない。
【発明の効果】
【0037】
本発明では、意図した方向にエアバッグを展開することができるので、ピラートリムなど車室内側に突出した部材が配置された領域でもエアバッグの展開が阻害されることがない。しかも、乗員の衝突が想定される領域でのFMVSS 226の乗員保護性能等が悪くなることもない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】(a)は格納前の展開状態における本発明のカーテンエアバッグ装置の要部を説明する図、(b)は格納時におけるラッパー取付け部分の拡大図である。
図2】(a)は図1(b)のA−A断面図、(b)は(a)に示した部分の展開方向を説明する図である。
図3】(a)は図1(b)のB−B断面図、(b)は(a)に示した部分の展開方向を説明する図である。
図4】カーテンエアバッグ装置の自動車への取り付け状態を自動車の側方から見た図である。
図5】タブの長さを変更して自動車への取付け状態のエアバッグのダクトの位置を変更した場合の展開方向を説明する図で、(a)は(b)よりタブ長さが長い場合、(b)は鉛直下方に展開するタブ長さの場合、(c)は(b)よりタブ長さが短い場合を示した図である。
図6】カーテンエアバッグ装置の自動車への取り付け状態の他の例を自動車の側方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の目的は、展開時、乗員の衝突が想定される領域でのFMVSS 226の乗員保護性能などを犠牲にせず、また、展開方向がばらついて車内のトリムなどにエアバッグの下端が乗り上げず、所定の領域における展開が阻害されずに確実にエアバッグを展開することである。そして、その目的を、ラッパーがエアバッグの展開方向の制御を行い、タブがエアバッグ展開後のチャンバーの位置制御を分担して行うことで実現した。
【実施例】
【0040】
以下、本発明のカーテンエアバッグ装置を、図1図3を用いて説明する。
【0041】
本発明のカーテンエアバッグ装置1は、インフレータ4から噴出するガスにより、サイドウインドウ6に沿ってカーテン状に展開するエアバッグ5を備えている。そして、側面衝突時や横転時などの緊急時には、エアバッグ5を展開させて、着座した乗員の頭部を保護し、かつ、乗員が車外に放出されるのを防止する。
【0042】
前記エアバッグ5は、インフレータ4との接続部5bに連続して前後方向に亘って形成されるダクト5cと、当該ダクト5cに連通し、前記インフレータで発生したガスが供給されて展開する前後方向に配置された複数のチャンバー5dが形成されている。そして、前記エアバッグ5の上部近傍に自動車への取付け部であるタブ5aを設けている。
【0043】
前記エアバッグ5は自動車への取付け時には、略上下方向に例えばロール形状に巻かれた長尺状態となされている。その際、本発明では、前記ロール形状に巻いて長尺状態にしたエアバッグ5と自動車の間に樹脂カバー7を配置し、当該エアバッグ5が自動車に当たって損傷しないようにしている。
【0044】
ラッパー8は、前記ロール形状に巻いて長尺状態としたエアバッグ5を自動車に取付ける際にFMVSS 226に対応させるため、自動車の側突時に乗員の衝突が想定される領域Cに対応する部分のダクト5cの上下方向位置Pを調節する位置に設けられる。また、ラッパー8は、当該エアバッグ5の車室内側に突出した部材、例えばセンターピラートリム(センターピラーなど)と対応する部分のダクト5cの上下方向位置Pを調節する位置に設けても良い。
【0045】
前記ラッパー8は、前記エアバッグ5の外周側の、前記ダクト5cの上端部近傍に一端を例えば縫製8bによって結合している。そして、他端には例えば係合孔8aを設け(図1(a)参照)、前記樹脂カバー7に設けられた取付け部、例えば係合爪7aに前記係合孔8aを引掛けて結合することで(図2参照)、当該ラッパー8を前記エアバッグ5に巻き付ける構成である。この取付け部は、自動車の車体に直接的に取り付けても良いし、車体の一部に孔を設けて当該孔にクリップなどを嵌め込み、当該クリップにラッパー8の他端を引掛けて結合しても良い(図示省略)。
【0046】
前記樹脂カバー7の係合爪7aは、前記ロール形状に巻いたエアバッグ5の、自動車の側突時のFMVSS 226に対応した乗員の衝突が想定される領域Cに対応する位置や、センターピラートリムのような車室内側に突出した部材が配置された部分と対応する位置などに設けている。
【0047】
前記ラッパー8は、カーテンエアバッグ装置1の自動車への取付け時、ダクト5cを所定の上下方向位置Pに保持した状態を維持でき、エアバッグ5の展開初期に切断してエアバッグ5の展開を妨げることがないような素材、例えば不織布などによって製作する。
【0048】
本発明では、ダクト5cの位置を上下方向に変更する必要のない領域は、ロール形状に巻いただけの状態のエアバッグ5を自動車に取付ける。つまりラッパー8を巻き付けない。
【0049】
この取付け状態では、ダクト5cの上下方向位置Pは、巻いたエアバッグ5の横断面の中心より若干上方のサイドウインドウ6側となり(図3(a)参照)、エアバッグ5は鉛直線からサイドウインドウ側に24°傾いた方向に展開する(図3(b)参照)。
【0050】
一方、自動車の側突時のFMVSS 226に対応した乗員の衝突が想定される領域Cや、センターピラートリムのような車室内側に突出した部材と対応する領域と対応する位置に展開するエアバッグ5の部分には、前記ラッパー8を巻き付けて前記エアバッグ5を下方に捩じった状態となるようにして自動車に取付ける。
【0051】
このラッパー8の巻き付けにより、ダクト5cの上下方向位置Pは、ラッパー8を巻き付けない場合に比べて15mm下方に位置することになり(図2(a)参照)、エアバッグ5は鉛直線からサイドウインドウ側に12°傾いた方向に展開する(図2(b)参照)。
【0052】
展開後のエアバッグ5は、ラッパー8が設けられた領域とラッパー8が設けられない領域とで、乗員の頭部Hのチャンバー5dへの当接位置や当接角度が相違し(図2図3の(b)図参照)、乗員の保護性能が異なることになる。
【0053】
本発明では、自動車の前後方向の全体に亘って適切に所期の保護性能を得られるように、前記各タブ5aの上下方向の長さを、エアバッグ5が展開した後に各チャンバー5dが最適な高さ位置となるような長さに決定する。
【0054】
具体的には、例えば車室内側に突出した部材のない領域に比べて車室内側に突出した部材のある領域の方が、接触時のチャンバー5dの位置が上方になるので、接触時のチャンバー5dの上下位置が同じ位置になる様に、突出した部材のある領域のタブ5aの長さを長くするのである。
【0055】
上記本発明では、側面衝突や横転によって車体側部に所定値以上の高荷重が作用した場合、センサからの信号を受け、インフレータ4から噴出したガスがダクト5cを通って各チャンバー5dに供給され、エアバッグ5がカーテン状に展開する。
【0056】
その際、自動車の側突時のFMVSS 226に対応した乗員の衝突が想定される領域Cや、センタートリムのように車室内側に突出した部材のない領域に対応する位置では、ラッパー8を巻き付けていないので、エアバッグ5はサイドウインドウ6と略平行に展開する(図3(b)参照)。
【0057】
一方、自動車の側突時のFMVSS 226に対応した乗員の衝突が想定される領域Cや、センタートリムのように車室内側に突出した部材のある領域に対応する位置では、ラッパー8を巻き付けてダクト5cを下方に位置させているので、サイドウインドウ6よりわずかに車室内側方向に、かつ乗員とサイドウインドウ6の間に適切にエアバッグ5が展開する(図2(b)参照)。
【0058】
つまり、本発明では、ラッパー8の作用により、自動車の側突時のFMVSS 226に対応した乗員の衝突が予想される領域Cでドアトリムなどにエアバッグ5の下端が乗り上げたりすることがなく、かつセンタートリムのように車室内側に突出した部材のある領域におけるエアバッグ5の展開挙動が阻害されることがない。
【0059】
加えて、本発明では、前記各タブ5aの上下方向の長さを、エアバッグ5が展開した後に各チャンバー5dが最適な位置となるような長さに決定するので、自動車の前後方向の全体に亘って所期の乗員保護性能を得ることができるようになる。
【0060】
本発明は上記の例に限らず、各請求項に記載された技術的思想の範疇に含まれるものであれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0061】
すなわち、図1図3で説明した実施例は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も、各種の方法で実施または遂行できる。特に本願明細書中に限定する主旨の記載がない限り、本発明は添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさ、および構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書の中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨のない限り、それに限定されるものではない。
【0062】
例えば、図1図3の実施例では、ロール形状に巻いたエアバッグ5を示しているが、蛇腹形状に折り畳んだエアバッグ5でも良い。また、袋状に形成するエアバッグ5は、基布を縫製すること、或いは、OPW(One-Piece Woven)を用いて紡織することの何れの方法で形成しても良い。
【0063】
また、上記の実施例は、エアバッグ5がフロントピラーFP、ルーフサイドレールRSR、リアピラーRPに亘って配置されたものであるが、図6に示すように、リアピラーRPにまでエアバッグ5が配置されていないものでも良い。
【0064】
また、ラッパー8の一端におけるダクト5cの上端部近傍との結合は縫製8bに限らず溶着や接着によって行っても良い。また、ラッパー8の他端と樹脂カバー7に設けた取付け部との結合は、樹脂カバー7の係合爪7aとラッパー8の係合孔8aに限らず、樹脂カバー7に係合孔を、ラッパー8に係合爪を設けたものでも良い。
【符号の説明】
【0065】
1 カーテンエアバッグ装置
4 インフレータ
5 エアバッグ
5a タブ
5b 接続部
5c ダクト
5d チャンバー
6 サイドウインドウ
7 樹脂カバー
7a 係合爪
8 ラッパー
8a 係合孔
8b 縫製
CP センターピラー
C 乗員の衝突が想定される領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6