(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接着剤が溶解性であり、前記接着剤が溶解するとき、前記ヤーン、一次バッキング基材および強化繊維が選択的に分離される、請求項3に記載のリサイクル可能な床被覆材。
【背景技術】
【0003】
タフティング機器の登場により、床被覆材は、織成カーペットから今日使用されているタフテッドカーペットへと時を追って発展した。機械によるタフティングは、ミシンと同様、単一のニードルで始まった。
図1に示すように、ニードル1000はヤーン104に一次バッキング基材120を貫通させ、一次バッキング基材120に隣接した裏面にステッチ112を形成する。表面ではルーパ1002がヤーン104を一次バッキング基材120から特定の高さに保持して、カーペットのパイル110を形成する。タフトされたヤーン104と一次バッキング基材120とは、本明細書においてはまとめてタフテッド基布114と称され得る。
【0004】
単一ニードル構造はやがて、現在タフテッドカーペットが製造される手法である、並んで動作する複数のニードルへと発達した。この機器によれば最大で16フィートのタフティング幅が可能であり、この幅で販売されるとき、こうしたカーペットは業界では「広幅」カーペットと称される。この種のカーペットは、居住用住宅及び商業用建物の約90%にとって好ましい床材である。
【0005】
当初、広幅カーペットの製造技術が進歩するにつれて、唯一の利用可能な一次バッキング基材120は織成されたジュート材であった。天然繊維として、ジュートには収縮する傾向がある。したがって、製造業者は、
図2に示すように、ジュートの一次バッキング基材120を水性接着剤130でコートし、それから二次バッキング基材140を貼り付けてタフテッド広幅カーペット100を形成することを実践し始めた。
【0006】
広幅カーペットは伝統的に、(
図18に示すように)パッド又はクッションの上にカーペットを引き伸ばし、引き伸ばされたカーペットを壁に沿って備え付けられたタックストリップに取り付けることによって、小さな居室に設置された。時間が経過するにつれ、また特に湿気によって、ジュートのバッキングは収縮し、カーペットにしわを引き起こしたり、ピンを引き抜かせたりした。さらに、二次バッキングは、カーペットが湿潤状態やクッション上での踏みしめによる応力負荷にさらされると、一次織物層から剥離し得ることが分かった。製造業者は、カーペットのバッキングにおける増強された安定性の必要性を認識し始めたが、これらの問題の多くは、合成一次及び二次バッキングの導入まで続いた。この導入により、前述の伸縮する問題は軽減されたが、完全には解決されなかった。
【0007】
広幅カーペット100の設置準備にあたっては、所望の寸法を有する1枚のカーペットを得るために、継目をテープで貼り合わせることがしばしば必要であった。継目テープはホットメルト接着剤を含んでおり、隣接するカーペットパネル間の接合を形成するためには、カーペットへの塗布後に加熱されなければなないため、継目をテープで貼り合わせることには時間がかかった。隣接するカーペット片を継目テープを用いてしわなく整列させることにおける困難に加えて、特に二次バッキングが合成材料から作られていたため、継目接着剤の加熱が、この二次バッキングに収縮を引き起こすことがあった。その結果、継目が曲がって、設置はさらに困難になり得た。広幅カーペットの設置のためのこの継目テープ作業は、今日まで引き続いている。
【0008】
40年ほど昔、上述の広幅カーペット製品が直面していた問題のいくつかに対処すべく、モジュラカーペット製品(すなわちカーペットタイル)が導入された。当初、製造業者は、既存の広幅構造を単に切り分けてモジュラユニットにしようと試みた。また、製造業者は、基布の裏に(安定化なしに)厚いポリマ層を適用することによってモジュラ製品を作り出すことも試みた。これらの試みによって経験された主な問題点は、不十分な安定性であった。こうした初期製品の提供が失敗すると、床被覆材の全交換が必要とされ、消費者の信頼の喪失、将来の売り上げの喪失、及び製造業者にとっては重大な財務上の損失を被ることにつながった。
【0009】
こうした初期のモジュラカーペットは、タフテッドカーペットではなく、接着された広幅製品を用いて作り出された。接着カーペット(bonded carpet)200は、
図3に示すように、ポリ塩化ビニル(PVC)接着剤132を用いて表面ヤーン205を一次接着基材(150)の表面に物理的に接着することによって作成される。ここでも、織成されたジュートが、接着カーペット200の一次接着基材(150)として使用される第1の材料であった。技術の進歩につれて、上述の安定性の問題を克服するために、ジュート基材は合成接着基材150に取って代わられた。ポリ塩化ビニルから成る重量バッキング160が(別個の強化層なしに)一次接着基材150の裏面に直接適用され、それによりカーペット200が、接着剤なしに設置可能な個々のタイルへと切り分けられることが可能になった(これが、製造業者が「フリーレイ」という用語を作ることにつながった)。
【0010】
モジュラカーペットタイルは、床の上の設置位置に留まるように、且つ縁が立ち上がったり(「捲れ(curling)」として知られる現象)中央が盛り上がったり(「反り(cupping)」として知られる)することなく平坦なままであるように、十分な安定性を有することが必要であった。これらの目的を満たすため、タイルは、タイルの周囲に沿って床に格子状に接着剤を塗布して設置されるのが典型的であった。さらに、モジュラカーペット構造は、高水準の寸法安定性を示し、使用時に伸縮しないことが期待された。
【0011】
汚れたり擦り切れたりしたときには設置された個々のタイルを取り外して交換することができるため、モジュラカーペットは、オフィス、空港、及び人のよく通る他の場所など、広幅カーペットが非実用的である場合の適用に便利であった。カーペットタイルが容易に取り外し可能であるのは、床下に配線又は冷暖房機器を備えた設備において、特に有利であった。
【0012】
モジュラ式の床用製品に対する商業市場の熱狂は広幅カーペットに対するよりもさらに大きかったが、初期のモジュラ製品は、それが設置される環境の要求を満たすには不十分であることがわかった。具体的には、時間が経過するにつれて、PVCバッキング(160)に使用された可塑剤がバッキング層から移行し始め、バッキング層(160)の寸法の変化を引き起こした。カーペットタイルの表面はバッキング層よりも大きな寸法を有するようになり、カーペットタイルの中央が床の上に盛り上がって、タイルが反りを経験し始めた。
【0013】
図4に示すように、次の進歩は、密集カットパイル205を備え、より優れた安定性を有する、接着カーペットタイル202の製造をもたらした。密集カットパイル205は、ヤーンに何らテクスチャを与えるものではなかった。タイル202の安定性を高めるため、予め形成された繊維ガラスのマット170が(パイルヤーン205が接着される面として)合成一次バッキング基材120に取って代わり、繊維ガラスの第2のマット175がPVCバッキング層160,165の間に埋め込まれた。PVCバッキング層160,165と繊維ガラスマット175とによって作り出された「Iビーム」構造は、PVCバッキング層160,165の収縮を防止するとともに、硬性で極めて柔軟性のない構造体を形成した。カーペットタイル202は、広幅カーペットの従来の輸送方法のように筒に巻き付けられるのではなく、積み重ねて箱詰めされて輸送されなければならなかった。カーペットタイル202の製造のさらなる問題点は、PVCバッキング層160,165間における繊維ガラス175の重要な位置決めが特殊な設備を必要とすることであった。したがって、その高い設備費、より高い材料費、増大された製品重量、過度の品質不良、及び返品の可能性により、こうしたモジュラカーペット製品の製造を行った会社はごく少数であった。
【0014】
時とともに接着カーペットタイル(例えば202)の需要は減少し、タフテッド広幅構造のモジュラ製品への変換が考慮された。タフティング機器により、ループパイル及びカットパイルの両方が、テクスチャを備えて又は備えずに、且つ結合製品よりも速い製造速度で、製造可能となった。残念ながら、タフティングのプロセスでは、予め形成された繊維ガラスマット(例えば170)を主要なバッキング材料として使用することはできなかった。タフティングニードル(1000)が繊維ガラスマットを貫通すると、ガラス繊維が壊れ、繊維ガラスマットの破断が引き起こされ、ヤーン(104)が繊維ガラスマットの裏面にステッチを形成するのが妨げられた。
【0015】
よって、タフテッドモジュラ製品204には、
図5に示すように、合成一次バッキング基材120がヤーン110のタフティング基材として用いられた。合成一次バッキング基材120がポリエステル又はナイロンの不織マットであると、ヤーン110が処理中にしっかりと保持されないことが分かった。その結果、パイルのヤーンは、あるタフトが次のタフトによって短くされ又は奪われる「ロビング(robbing)」を経験することもあり、パイル高さに好ましくないばらつきが引き起こされた。タフティングにあたってはヤーンのさらなる修繕が必要とされ、これは、不織マットの脆弱性に起因して、さらに困難なものとされた。
【0016】
また、引っ張られたヤーン(すなわち、不織マットによってしっかりと保持されていないヤーン)は、パイル表面の空洞やバッキングの適用不良を引き起こした。しっかりと固定されていないヤーンは、バッキングの適用にあたって、時には引っ張られ又は引っ掛けられて、上述の不良を引き起こすこともあった。ヤーンの不良は接着剤プレコート組成物の十分な浸透を妨げるため、不織マットの脆弱性は最終的な床被覆材における脆弱なタフト結合をもたらした。
【0017】
また、製造プロセス中に引っ張られると、不織マット自体が幅を失い(縮み)、「ネックダウン(neck−down)」として知られる状態をもたらすことも観察された。挙句、上述の問題があったとしても、不織マットは「日用品級の」織成された一次基材よりも高価である。
【0018】
「製図タフテッド(graphics tufted)」製品を製造するためにタフティングが特殊なタフティング機器を用いて行われる場合には、上述した不織一次バッキング基材の問題のすべてが拡大される。製図タフティングにおいては、床被覆材の表面の色及びテクスチャを得るために、ジグザグのステッチ及び/又は複数の「ステップオーバ」パターンが採用される。その結果、製図タフテッド基布は、一次バッキング基材の裏面で重なり合った2本以上のヤーンを有し、完成品の床被覆材を製造するためには、そのヤーンのすべてが、接着剤(プレコート)組成物の浸透を必要とする。
【0019】
上述の理由により、製造業者は、「日用品級の」織成された一次基材をタフティング基材として用いることを好んだ。最も一般的に使用される日用品級の一次バッキング基材は、タフティングプロセスにあたってヤーンのステッチをきつく保持するよう設計された、織成されたポリプロピレン材料であった。特に製図タフティングでは、織成された一次バッキング基材は、不織の一次バッキング基材によって達成され得るよりも優れたパターン又は図案画定、色分離、及びテクスチャの均一性を備えた床被覆材をもたらした。そのような結果が観察されたのは、織成された一次バッキング基材のヤーン保持能力が、一次バッキング基材の裏面よりも表面により多くのヤーンが設置されることを可能にしたためであった。これは、床被覆材の外観を向上させたばかりでなく、ヤーンを固定するために必要な接着性組成物の量を減少させた。
【0020】
この織成されたポリプロピレン一次バッキング基材120は、かねて用いられていた繊維ガラスのバッキングマットほど熱的に安定しておらず、これが(捲れなどの)より大きな寸法安定性の問題をもたらした。何らかの二次バッキング材料の適用が発生する前に、タフテッドパイル基材(すなわち、パイルヤーン210及び一次バッキング基材120)には、接着剤コーティング132を受けてヤーン210を適当な位置に固定することが必要であった。接着剤層132は、カーペット製造業者の所望のどんなポリマ種類で作成されていてもよかった(例えば水性、PVC、ホットメルト、ポリウレタン等)。このコーティング層132は、パイル基材が広幅カーペット向けであるかモジュラカーペット向けであるかを問わず用いられた。接着剤層132は、ヤーンを適当な位置に保持するため、且つ歩行者交通にさらされたときにカーペットにピリング及び/又は毛羽立ちを生じるのを防ぐために、個々の表面ヤーンステッチに浸透した。
【0021】
さらに
図5に示すように、タフテッドモジュラカーペット204は「Iビーム」強化構造を内蔵し、繊維ガラス強化マット175がPVCバッキング層160,165の層間に配置された。繊維ガラス強化マット175は、恐らくは安定性を最大化するために、一次バッキング基材120からできる限り遠くに配置された。PVCバッキング層160はその後で接着剤層132に固定された。
【0022】
床被覆材業界においては、接着剤層(例えば132)は、何ら追加的なバッキング層が用いられない場合には「単一」と称され、追加的なバッキング層が適用されるのであれば「プレコート」と呼ばれる。
【0023】
例えば、広幅カーペットは、床への直接且つ恒久的な糊付け用に設計されているのであれば、その裏面に、表面ヤーンを固定するための1つの接着剤層のみを備え得る。この場合、接着剤層は「単一」コーティングと称され、何ら追加的なバッキングが用いられないことを表すであろう。しかしながら、このカーペットは安定化されておらず、床に恒久的に糊付けされなければ機能を果たさないであろう。カーペットを床に糊付けすることは、その有用寿命の後で取り外してリサイクルするのを非常に困難にし、取り外しには床からカーペットを削り取ることが必要になると予想される。
【0024】
ほとんどのカーペット構造においては、広幅であるかモジュラ式であるかを問わず、接着剤層(例えば132)が「プレコート」として機能し、これに、カーペットが使用中に伸縮するのを防止するため、(
図5に示すように)他のバッキング層が接着され得る。追加的なバッキング層――ならびにそれらを接着するために用いられる(単数又は複数の)接着剤層――は、カーペットアセンブリに重量を追加する。具体的には、モジュラカーペットの重量の大部分は、厚いポリマ層が強化層を貫通して包囲するように、予め形成された強化層(例えば175)を接着剤バッキング(例えば160,165)の層間に備えることに起因するものである。
【0025】
バッキング層160,165の硬化又は冷却には、バッキング層160,165がPVCでできているか、ホットメルト化合物でできているか、あるいはポリウレタンでできているかにかかわらず、高温での硬化のための長いドウェル時間、あるいは環境温度での硬化のための長いドウェル時間が必要である。積層が硬化プロセスと同時に発生しなければならないため、硬化プロセスでは必然的にタフテッド基布を高温にさらすことになる。特に、一次バッキング基材120が織成されたポリプロピレン基材であるときには、バッキング層を硬化させるために用いられる熱が合成一次バッキング基材120を収縮させ得るが、その一方で強化層175を含むポリマバッキング層160,165は収縮しない。この収縮差はカーペットタイルの捲れ又は反りをもたらし得ることから、カーペットタイルは輸送に先立って広範な試験を必要とする。
【0026】
バッキング層160,165は重く、結果としてもたらされる製品はかなり硬性であるが、タイル単独の重量だけでは、反り又は捲れにまつわる固有のどの問題点を克服するにも不十分である。実際、床とカーペット製品との間に設置接着剤を塗布したとしても、反りや捲れが存在していれば、製品の硬性が、製品が床面上に成功裏に設置されることを妨げ得る。どれほどの接着剤を用いても(恒久的なものであれ感圧性のものであれ)、硬性の床被覆材において固有の反り又は捲れを克服するには十分ではない。そのため、反り又は捲れを経験したモジュラ床被覆材は、品質不良とされなければならない。
【0027】
水性(又はラテックス)接着剤は比較的低い温度で処理され得ることが知られている。これは、ポリマの硬化が不要であり、加熱が必要なのは接着剤から水分を取り除くためのみであるからである。この理由及び他の理由により、ほとんどのカーペット製造業者は、水性接着剤をプレコート接着剤層として用いることを好む。ラテックス組成物の別の利点は、製造業者が、「起泡(frothing)」として知られるプロセスにおいて、ラテックス組成物に空気を注入できることである。起泡プロセスは、ポリマの一部を気泡に置換することによって、塗布される接着剤の重量を削減する。ラテックス組成物内の空気の重量容積は、より少ない重量を得ることを可能にし、その結果、製造費及び輸送費がより低くなる。空気のほか、ラテックスベースの接着剤にはフィラー材料が加えられて、費用をさらに低減してもよい。また、製造業者は、起泡された組成物を使用すると、接着剤中の水成分のヤーンへの浸透を制御するのがより容易であることを発見した。接着剤プレコートの浸透は、(a)接着剤の粘度;(b)ヤーンに対する接着剤塗布用ロールの圧力;及び(c)接着剤に含まれる空気の量、ならびにヤーンのステッチ率及び寸法に応じて変化し得る。
【0028】
プレコート層(例えば132)に用いられる接着剤は、ヤーンに効果的に浸透するように、いくらかの粘度を有していなければならない。接着剤がパイルのねじれた又は空気交絡させたヤーン210の各繊維に接触するように、約3,000乃至約15,000センチポアズ(cps)の粘度が最適なヤーン浸透を保証することがわかっている。これまで製造業者は、いくつかの理由により、極低粘度の接着剤を避けてきた。第一に、極低粘度の接着剤はヤーンへのより高い浸透性を有する傾向があり、これはカーペットの表面への接着剤の染み出しをもたらし得る。この染み出しは、様々な品質不良の問題点(カーペットの感触に悪影響を与える接着剤のスパイクや、カーペットの外観に悪影響を与える色の不均一性など)を引き起こし得るものである。第二に、カーペット用途に用いられる接着剤は、炭酸カルシウム(CaCO
2)及び/又はアルミナ三水和物などのフィラーを含み、これらが製造時に飛び出したり貯蔵容器の底に沈んだりして、塗布のばらつきを引き起こし得る。この問題は、こうしたフィラーを溶液中に保持する固有の濃さに欠ける低粘度の接着剤においては、より一層顕著である。
【0029】
プレコート接着剤の好適な粘度は、用いられる塗布方法に依存する。ほとんどの製造業者は、
図6に示すように、プレートの上で塗布用ロール1006(「ドクターロール」と呼ばれることもある)を使用して、タフテッド基布(120,210)がロール1006の下で引っ張られるようにする。ロール1006の近くには接着剤132の液溜まりが現れるので、この液溜まりが基材の裏面に乗る。タフテッド基布が塗布用ロール1006の下で引っ張られるとき、液溜まりがロールの下に引っ張られるにつれて動水力が増大し、ロール1006とタフテッド基布120の裏面との接触が接着剤132をヤーン210へと追い込む。上述のように、ヤーン210への接着剤の適切な浸透を保証するためには、プレコート接着剤組成物の粘度の制御が重要である。
【0030】
モジュラカーペットの製造における次の進化段階は、PVCバッキング層をホットメルトバッキング製剤と置き換えることであった。ホットメルト接着剤(又はホットメルトポリマ)は、融解形態で塗布される熱可塑性プラスチックであり、冷却すると凝固して硬く丈夫なバッキング層を形成する。ホットメルト接着剤の例には、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエチレン、アタクチックポリプロピレン、及びアスファルトベースの化合物があるが、これらには限られない。ホットメルトポリマはその耐水性及び/又は耐溶剤性で知られている。
【0031】
当初、製造業者は、ホットメルトポリマバッキングを用いて、且つ予め形成された強化マットを用いずに、床被覆材(図示しない)を作り出そうとした。床被覆材は、捲れや反りがなく、平坦な状態であった。しかしながら、タイルに切り分けると、ホットメルト塗布中に合成一次バッキングに印加された残留力によって、タイルは寸法を失い、他のタイルと比較して不均一な大きさとなった。非強化ホットメルト床被覆材の別の問題は、ホットメルト層内の「クリープ(creep)」又は「コールドフロー(cold flow)」であった。すなわち、事務用いすや歩行者交通などによって床被覆材に加えられた力により、ホットメルトバッキングが引き伸ばされ、タイルの「成長」がもたらされた。
【0032】
ここでも、製造業者は先に用いられた「Iビーム」強化構造に頼った。最も安定性のあるカーペットタイルでさえ、タイルが移動すること、ならびに設置及び使用にあたって整列の狂いを生じることを防止するために、少なくとも格子方式の感圧性接着剤を必要としたことから、「フリーレイ」モジュラカーペット設置の発想は消えて行った。接着剤格子は、隣接するカーペットタイル間の隙間の形成の防止にも役立った。
【0033】
タイルの安定性及び前述の格子パターンでの接着剤塗布についての継続的な課題に直面して、設置業者は、床用接着剤の全範囲塗布を開始した。この全範囲アプローチは、格子状の塗布よりも迅速に仕上げることができ、設置の標準的な方法となって、ゆくゆくはモジュラカーペット製造業者の賛同を得た。重いバッキング層と「Iビーム」強化層とを備えたモジュラタイルは、堅いままであった。タイルの剛性は、寸法的には安定的でないにしても、途方もない力を作用させる可能性を有していた。その結果、タイルが内在的に反り又は捲れる傾向を有していると、糊の完全塗布ではタイルを平坦に保つことができなかった。
【0034】
上述の安定性の問題を克服することに加え、モジュラカーペットの製造業者は、製造プロセスにおける他の課題に直面した。:
【0035】
(1)複数の厚いポリマ層の一様でない適用により、(側部と側部及び/又は端と端で)厚さ及び重量の変動が生じることがあった。処理されたカーペットの1つの領域から切り取られたタイルは、通常、その処理されたカーペットの他の領域からのタイルに隣接して設置されたため、均一な高さを有する設置された床被覆材を作り出すためには、厚さ及び重量の一致が要求された。
【0036】
(2)1つ又は複数の二次バッキング層を有する広幅カーペットと同様、モジュラタイルの様々な層の間の不完全な接着により、剥離が生じることがあった。層間の各界面は剥離の影響を受けやすかった。
【0037】
(3)予め形成された強化層がポリマコーティングの間に配置されるとともにポリマコーティングにより貫通されていたため、過度の重量が必要であった。貫通が不十分だと、(上述のように)剥離につながる可能性があった。さらに、予め形成された強化層は繊維ガラスであったことから、むき出しの繊維ガラスにより引き起こされる刺激を防止するため、完全な埋め込みが必要とされた。「Iビーム」構造を採用するモジュラ床被覆材には、強化層の適切な間隔を保証するために、十分なバッキングコーティング層が必要であった。
【0038】
(4)上述のように、ホットメルトバッキングシステムを有するモジュラタイルにおいては、クリープ及びコールドフローが経験された。厚いコーティングは、車いすや激しい歩行者交通などの高い負荷の下では拡張する傾向があることが観察された。逆に、PVCから作られたバッキングは、可塑剤移行に起因して収縮しがちであり、揮発性有機化合物(VOC)及び発煙に関連する問題を示した。
【0039】
(5)複数のバッキング層、ヤーン、及び予め形成された強化層のリサイクルは、層の接着及び異なる材料によって、ほとんど不可能であった。
【0040】
(6)費用もまた重大な課題であった。バッキングの材料費に加えて、製造業者は、高価な処理ステップ、遅い生産速度、及び高度の品質不良に直面した。その結果、モジュラカーペット製品は生産するのに広幅よりも50%も多くの費用がかかることがあり、これがその実用的用途を特殊な商用設備のみに限定していた。
【0041】
上述の問題に加え、モジュラ床被覆材には、広幅カーペットと比較した場合、別の重大な販売上の不都合があった。それは、モジュラ床被覆材の快適度であった。この快適性の問題点に対処するため、
図7に示すように、クッションバックモジュラ床被覆材206にはクッション層180が組み込まれた。バッキング層160はホットメルトポリマ化合物で作られた。ホットメルト化合物はタフテッド織物バッキングに融解状態で塗布され、冷却すると、強化層へのタフテッド織物バッキングの積層が達成された。対照的に、PVCがポリマバッキング材料として用いられたときには、PVCを硬化させるために、タフテッド基布及びクッション層180の両方を熱が通過する必要があり、これは非実用的であった。
【0042】
第1の「Iビーム」構造は、一次バッキング基材120と第1の予め形成された強化マット170との間に作り出された。クッション層180は第1の予め形成された強化マット170に接着された。クッション層180を裂けや摩耗から保護するために、別の予め形成された合成強化マット175が追加され、それによって強化マット170,175の間に第2の「Iビーム」構造が作り出された。強化マット170,175の位置は、床被覆材206の所望の安定性の達成において、より一層重要であった。マット170,175を置き違えると、床被覆材206の処理が床被覆材206の一方の面に過剰な熱を生じさせ、その結果最終製品の反り又は捲れがもたらされることがあった。結果的に、製造業者は品質不良及び廃棄に関する多数の問題点に直面し、返品は日常的であった。
【0043】
クッションバックタイル206は、「ハードバック」タイルについて上述したのと同一の問題の多くを経験し、場合によっては、以下のものを含むさらに多くの問題を経験した。
【0044】
(1)クッション層(180)に内蔵されている空気量、クッション層の適用の整合性、及びクッション層を含む発泡体の水分レベルに起因して、厚さのばらつき及び重量が、ハードバックタイルの場合よりもはるかに制御困難であった。
【0045】
(2)クッション層(180)が単独の場合又は別の層と結合された場合にずっと低い内部強度を有していたため、ならびにクッション層の作成に用いられるポリマがほとんどの他のポリマと非相容性であったために、剥離が大きな問題であった。したがって、クッションバックモジュラ床被覆材206に関しては、ハードバック床被覆材と比較して、ラミネート強度が弱かった。
【0046】
(3)2つの「Iビーム」アセンブリに2つの予め形成された強化層170,175を組み込むことから、クッションバック床被覆材206の寸法安定性を達成することが課題であった。収縮の可能性を考慮しながら各層170,175の位置決めを行うことは、所望の寸法安定性を生み出すための緻密な制御を必要とした。
【0047】
(4)クッションバック床被覆材206のリサイクルは、異なるポリマ材料からなる別の層を含んでいることから、ハードバック床被覆材よりもさらに困難であった。
【0048】
(5)クッションバック床被覆材206の生産に関連する費用は、ハードバック床被覆材について見たものよりもさらに高かった。クッション層180は、典型的には、(前述した間隔の要件及び高価な特殊設備の必要に起因して)高価で適用が困難な反応性ポリウレタン材料であった。したがって、クッション層180及びその保護用強化層175と、関連する処理ステップとは、クッションバック製品の材料費及び生産費の増大を助長した。
【0049】
モジュラ床被覆材206を液体染料で染色又は着色しようとする努力は、安定性に関してさらなる課題をもたらした。染色プロセスは床被覆材206を、蒸気、水による浸潤、及び乾燥のための過度の熱にさらした。これらの条件が、合成バッキング基材の収縮を制御するための「Iビーム」構造における強化層170,175の適切な配置をより一層重要なものにした。
【0050】
時を経て、製造業者は、カーペットの全域で車輪交通を容易にする目的で、モジュラ構造の構成要素を広幅カーペットに適用しようとした。広幅製品を用いることによって、製造業者は、モジュラ床被覆材設置の継目及び織物表面を通じて水が浸透する危険性を排除しようと試みた。
【0051】
例示的な広幅カーペットを床被覆材208として
図8に示す。一次バッキング基材120を貫通してタフトされたヤーンパイル210を有するタフテッド基布が床被覆材208の表面として用いられた。ヤーン210のステッチ部分はプレコート接着剤塗布132により固定された。ポリマバッキング160が適用されて床被覆材208のバッキングが形成された。
【0052】
広幅カーペットは巻かれた状態で輸送されるため、ポリマバッキング160の最適な材料は、モジュラ製品において用いられる堅いホットメルト接着剤及び/又は嵩高のクッション層よりも柔軟性のあるPVCであった。しかしながら、このポリマバッキングは重かったので、結果としてもたらされる製品は輸送及び設置が困難であり、12乃至15リニアフィートからたった6リニアフィートへの輸送幅の減少を招いた。モジュラ構造(例えば170)において用いられた予め形成された強化層は、カーペットの柔軟性を促進するために除かれ、これが「Iビーム」構造の安定化を損なった。この「Iビーム」構造の除去は、完成品のカーペットにおける安定性の問題をもたらし、床への恒久的な接着によってのみ対処可能であった。
【0053】
上述のように、PVCポリマバッキングは堅いバッキング面を作り出した。広幅カーペットに期待される快適度を達成するため、PVCバッキングされた広幅床被覆材208には、PVCバッキング層160に貼り付けられた追加的なクッション層(図示しない)を備えたものもあった。こうした場合、製造業者から入手できるクッションには限られた数の選択肢しかなく、また、別の層の追加によって、製造業者は、上述したものと同じ安定性の課題及び品質不良の問題点の多くに直面した。
【0054】
他の場合には、二次バッキングされた広幅床被覆材208が、「両面接着」技術を用いて、床に貼り付けられた特殊なクッションパッドの上に貼り付けられた。この特殊なクッションパッドは、クッションへの接着剤の浸透を最小化するよう設計された。両面接着アプローチにより、消費者は、クッションの厚さと、ひいては床被覆材の快適度とに関して、より多くの選択肢を有することが可能になった。しかしながら、この設置方法は高価で時間がかかった。また、設置は恒久的で、取り外しが困難であった。その結果、このアプローチは一般的に、空間の大きさに起因して広幅床被覆材を引き伸ばすことが非実用的である、比較的大きな空間を有する商業的環境に限定された。
【0055】
上記の検討から明白であるように、床被覆材の製造業者は、生産及び設置の際に安定的な床被覆材の設計において、多くの課題に遭遇してきた。これらの課題により、多数の特殊なカーペットバッキング構造及び必要な処理設備がもたらされてきた。したがって、本明細書に記載されているような、広幅及びモジュラ床被覆材の両方に適用可能な汎用強化バッキング層は、床被覆材産業における重大な進歩を示すであろう。
【0056】
既存の床被覆材では完全に不満足なまま残された別の考慮すべき事項は、床被覆材のリサイクル能力である。上述の床被覆材はしばしば多くの異種のポリマからなる層を含んでいたため、これらの床被覆材を構成要素材料の有用な流れに分離することは事実上不可能であった。このため、合衆国において毎年廃棄される床被覆材の大多数(約95%)は、埋め立てられるか又は焼却処分される。
【0057】
カーペットのリサイクルにおいて試みられた1つの企ては、床被覆材の全体を粉砕し、粉砕された構成要素を、熱可塑性の構成要素の圧縮又は部分融解と、熱硬化性の構成要素の包封とによって、新たな層に再形成するというものであった。このリサイクルされた材料からなる新たな層は、その後、バージンなモジュラカーペットに重量を追加するために、バッキング層などの別のバッキング化合物に埋め込まれた。材料の再利用を促進するための高価な設備の購入後であっても、製造業者はアセンブリの制御における困難を経験するとともに、高いレベルの品質不良の製品を認識した。
【発明を実施するための形態】
【0068】
次に、本発明の製品及び方法の実施形態を詳細に参照する。それらのうち1つ又は複数の例を図面に示す。各例は本発明の説明の目的で提供されており、本発明を限定するものではない。実際、当業者には、本発明において、本発明の範囲又は精神を逸脱することなく様々な修正及び変更が成され得ることが明らかであろう。例えば、ある実施形態の一部として図示又は記載されている特徴が別の実施形態とともに用いられて、さらなる実施形態をもたらしてもよい。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物の範囲内に該当する修正及び変更にも及ぶことが意図されている。
【0069】
図9は、本明細書における第1の態様による、本願の床被覆材2を示す。床被覆材2は、一次バッキング基材20を貫通してタフトされたヤーン10からなるタフテッド基布14を含む。ヤーン10は一次バッキング基材20の裏面にステッチ12を形成する。強化層16は、接着剤組成物32と、接着剤組成物32に包封されてタフテッド基布14の裏面に連続的な繊維層を作り出す複数の繊維36とを含む。接着剤組成物32はヤーン10のステッチ部分12に浸透し、それによって強化層16をタフテッド基布14に接続する。この態様において、接着剤組成物32は同時に(ステッチ12を結合するにあたっての)プレコート及び(床被覆材2の床接触面を形成するにあたっての)バッキングポリマとして機能する。
【0070】
ヤーン10はループパイルを形成するものとして示されているが、ヤーン10はその代わりに、当該技術分野において知られているとおり、(
図10Cに示すように)切断されてカットパイルを作り出してもよい。ヤーン10は、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、アクリルなどの合成材料である。
【0071】
一次バッキング基材20は通常、ナイロン、ポリエステル、又はポリプロピレンなどの合成繊維及び/又はヤーンからなる織成された又は不織の繊維材料である。1つの潜在的に好適な一次バッキング基材20は、業界においては「日用品級の」一次バッキングといわれる織成されたポリプロピレン基材である。1つの市販の日用品級の一次バッキングは、テネシー州チャタヌーガのPropex社により(一次カーペットバッキングについて)POLYBAC(登録商標)という商標を冠して販売されている。一次バッキング基材の別の例は、ニードルボンディングによって作り出される「繊維ロック織り(fiber−lock−weave)」(FLW)基材として知られている。一態様においては、リサイクルを容易にするため、ヤーン10と一次バッキング基材20とは同一のポリマから作成される。この態様又は他の態様において、一次バッキング基材20は、温水中で可溶のポリマから作成されてもよい。
【0072】
いくつかのタフテッド基布14は、繊維強化接着剤層16の適用の前に、「熱緩和」ステップの利益を享受し得る。この熱緩和ステップは、典型的には接着剤の塗布及び硬化の際に予期されるよりも高い温度且つ長い継続時間で実施されるもので、コートされていない基布14が機械方向及び機械に直交する方向に可能な限り収縮することを可能にする。熱緩和ステップの目的は、タフティングの際に生じたかもしれない内部の張力を解放することである。また、熱緩和ステップは、ヤーン10を緩めて、接着剤32の硬化及び/又は冷却の際の過度の収縮を防止する。
【0073】
図10A乃至10C及び
図17を参照して本明細書において説明される本願の構造及び製造方法は、強化繊維32が、接着剤組成物が硬化するまでその組成物中に浮遊し、タフテッド基布14にごく接近(又は接触)して連続的な繊維質の層を形成することを可能にする。その結果、日用品級の一次バッキングであっても、一次バッキングの収縮に関連する問題なしに用いられ得るようになる。日用品級の一次バッキング基材は、モジュラカーペットタイルを含め、あらゆるカーペット種類の製造に使用され得る。同一の一次バッキング基材をあらゆる種類の床被覆材製品に使用可能とすることによって、製造業者は、製造プロセスを単純化するとともに原材料在庫を減らすことができる。
【0074】
強化繊維36は未硬化の接着剤組成物1032に適用されるため、接着剤バッキング層32内における繊維36の位置は、一次バッキング基材20の収縮の発生に応じて変化し得る。また、強化繊維36が一次バッキング基材20に近接していることは、収縮、特に潜在的な収縮を抑えるのに役立つものと考えられている。
【0075】
さらに、ポリマは重量が小さく、内力に対してより不活性であるため、強化層16に用いられるポリマの高い柔軟性は、床被覆材2が捲れたり反ったりする可能性を大幅に低減する。したがって、床被覆材2は床に適合する。床被覆材2の平坦性、又は平面性によって、設置接着剤が、もしも使用される場合には、より効率的に機能することが可能になる。
【0076】
どんな動作理論によっても制約されることは望まないが、本明細書に記載されている本発明の独特な特質は、以下のものによって得られ得るものと考えられる。:1)純粋な(非繊維の)接着剤の一部が繊維から遠くへ押しやられてカーペット基材のヤーンの周辺及び内部の空洞へと押し込まれる。これがカーペットの基材ヤーンの性能を高めるとともに、強化繊維の積層を可能とする。このことは「濾過」及び強化繊維の橋絡によって達成されるもので、カーペット基材ヤーンが濾過媒体として作用し、強化繊維の長さがカーペット基材ヤーン間の間隔を橋渡しする。2)純粋な接着剤の一部が強化繊維の内部に留まって繊維を結び付け、カーペット基材に直接接着された湿式不織強化層を形成する。最後に、その後上記の1及び2がベルト又はパターンのあるロールの織目表面上に置かれ、その位置で硬化されると、余分な接着剤が先に塗布された接着剤/強化繊維からパターンの空洞に流入して、強化繊維層の装飾的な保護カバーを形成する。これは、重力と、接着剤の加熱面へと移動する自然な傾向とによって起こるであろう。
【0077】
本発明は、強化繊維36を接着剤組成物32の中に分散させて、床被覆材(例えば2)の強化層16を形成する。好適には、繊維36は、どんな基材にも最大限の安定性を与えることが知られているガラスからなる。ガラス繊維36はどんな直径及び長さであってもよく、望ましい場合には、床被覆材の同一の強化層16内に異なる直径及び/又は長さの繊維が用いられてもよい。限定ではなく例として、1つの潜在的に好適な直径は「寸法E」と称され、1つの潜在的に好適な長さは約0.25インチである。ガラスは環境条件(例えば温度、湿度)及びカーペットの処理条件に最も影響されず、ほとんどの化学薬品に対して不活性である。ガラス繊維の代わりに、もしくはこれに追加して、天然又は合成繊維が用いられてもよいが、そのような繊維は通常、ガラス繊維ほど熱や水分に対して安定的でない。異なる繊維種類の混合又は異なる繊維種類の混紡(例えば混紡ヤーン)も用いられ得る。
【0078】
接着剤バッキング組成物32は、ポリ塩化ビニル(PVC)ホットメルト又はポリウレタンからなっていてもよい。本明細書に記載の一態様によれば、接着剤バッキング組成物32は、(好適には約140°F乃至約212°Fの温度の)温水又は蒸気中において水溶性である。また、この態様又は他の態様において、バッキング組成物32はラテックス組成物とホットメルト接着剤とのうち一方である。水溶性であるか否かを問わず、接着剤バッキング組成物32は、ヤーン(ステッチ12)に浸透し;強化繊維36を固体の安定的な層内に固定し;
図10B,10C及び17に示す方法の場合には、床被覆材2の裏面に薄いバッキング層を形成し、ここでヤーンステッチ12は強化繊維36に対する濾過媒体として作用する。
【0079】
塗布の前には、繊維強化接着剤組成物(
図10Aに示す1032)は紐のような外観を有し得る。強化繊維36の含有はバッキング組成物32に空気を組み込む(起泡させる)ことを可能にし、床被覆材2の重量の軽減をもたらす。その結果、床被覆材2はより低い製造費及び輸送費を有するようになる。
【0080】
強化繊維36の添加は、接着剤ポリマ組成物32の実際の粘度及び/又は性能には影響を及ぼさないことがわかっている。したがって、接着剤組成物32のヤーン10への浸透には影響がない。実際に、強化繊維36の添加は、接着剤組成物32を、塗布にあたってより高粘度の組成物として機能させ、より低粘度(2000乃至6000センチポアズ)の接着剤組成物32が、しばしばそうした低粘度の組成物に関連する問題(例えば染み出し及び液溜まりの制御)なしに採用されることを可能にする。よって、接着剤組成物32の粘度の範囲は、約2,000センチポアズ乃至約12,000センチポアズの範囲内に見られるもののような、極低粘度から高粘度までの化合物に拡大される。
【0081】
本発明の強化層を備えた本願の床被覆材は、以前のすべてのカーペット製造技術と相反する手法で作成される。背景の項で述べたように、幅の広い広幅カーペットの製造においては合成二次強化マットが用いられる一方で、モジュラ床被覆材の「Iビーム」構造においては二次強化マットと接着剤層とが用いられる。本願の強化層16はこうした以前の両構造と、これらの構成要素(すなわち予め形成されたマット及び接合ポリマ層)に関連する費用とに取って代わるものである。実際、強化層16により与えられる安定性のため、強化層16は広幅及びモジュラ床被覆材の両方に適した汎用バッキングとして機能し得る。この高性能強化層16の普遍的な適用性には、製造プロセスを大幅に簡略化するとともに床被覆材の生産に関連する費用を大幅に低減する可能性がある。たった1つのポリマ系(すなわち接着剤バッキング組成物32)により、製造プロセスが単純になり、リサイクルが容易になる。
【0082】
強化層16は、完成した床被覆材の柔軟性を保証するため、できる限り薄く軽量であるのが好適である。強化繊維36が重なり合っていることと、繊維36がポリマバッキング層内に埋め込まれていることとにより、たとえ薄い強化層16であっても所望の安定化機能を提供する。また、強化層16を薄く保つことによって、床被覆材の生産費用が、平面性を維持するために大きな重量を必要とする従来の多層床被覆材と比べて低減される。本明細書に記載のアプローチは、「Iビーム」構造を有する伝統的なモジュラ床被覆材及びポリマ二次バッキングを有する広幅床被覆材を作り出すのに用いられる哲学の本質的な相違を表している。
【0083】
本開示の第1の態様による、繊維含有接着剤バッキング組成物1032の塗布の1つの方法を
図10Aに示す。この方法において、タフテッド基布14は表面を下にして設置され、塗布用ロール1006の下で搬送される。塗布用ロール1006は十分な圧力を制御された状態で印加し、接着剤バッキング組成物32をヤーン10へと押し込むとともに強化繊維36から遠ざける。
【0084】
繊維36の長さ及び直径は、繊維36がヤーン10に浸透するのを妨げる(すなわち、繊維36はヤーン10の間に介在する空間よりも大きい)。その代わりに、タフテッド基布14を塗布用ロール1006の下で搬送することによって、繊維36は、タフテッド基布14の裏面に沿って、主に機械方向に、連続的に重複するシート状に整列される。理論により制約されることは望まないが、この予期せぬ繊維の整列は、タフテッド基布14の移動が接着剤バッキング組成物32内の強化繊維36との摩擦を生み出すことに起因して発生するものと考えられる。繊維36は、硬化時には、接着剤バッキング組成物32によって適所に保持される。
【0085】
カーペット業界では、カーペットの機械方向が安定性の問題に対して最も大きな貢献をするものであることが周知である。「機械方向」とは、ヤーンがタフトされる方向と見なされる。機械方向に連続的な一連のループを形成するヤーン10は、特に熱及び/又は水分にさらされたとき、本質的に不安定である。また、(特有の機械方向を有する)一次バッキング基材には、床被覆材の機械方向においてより大きな収縮を経験する傾向がある。タフテッド基布14の処理(及びその結果もたらされる床被覆材)は、床被覆材に機械方向の張力を与えることも観察されている。これらの理由により、機械方向はほとんど常に、床被覆材のより不安定な方向である。
【0086】
従来の床被覆材における不安定性は機械方向においてより大きいため、機械方向での繊維36の整列は、本願の床被覆材2の安定性に大きく貢献する。この整列は、予め形成された強化バッキング基材においては、強化バッキング製造業者によって特別に整列された強化ヤーンを追加することなしには得られない。隣接するタフテッドヤーン10の間の空間又は空洞は強化繊維36の房を含み、これが
図10Aを参照して説明した塗布方法の結果として機械方向の強化の列を形成し、
図9に示す床被覆材2を作り出す。
【0087】
繊維強化接着剤組成物の別の塗布方法を
図10Bに示す。この方法においては、タフテッド基布14は表面を上にして搬送ベルト1016上に設置され、塗布用ロール1006の下で搬送される。代替的には、搬送ベルト1016の代わりにプレート又はドラムが用いられてもよい。繊維強化接着剤組成物1032はベルト1016の上に直接堆積され、タフテッド基布14は繊維強化接着剤組成物1032を含む面上に圧延される。
【0088】
図10Aに示すアプローチとは異なり、
図10Bのアプローチは、接着剤32の液溜まりをタフテッド基布14上に直接分散させるものではない。そのため、接着剤の浸透のより良好な制御が実現され、不均一な接着剤液溜まりにより引き起こされる圧延及び重量の差が軽減又は排除される。
図10Aの方法と同様、塗布用ロール1006は制御された状態で十分な圧力を印加して、接着剤バッキング組成物32をヤーン10に押し込むとともに繊維36から遠ざけ、その結果タフテッド基材の裏面上には無作為に配向された繊維の連続的な層が形成される。
【0089】
図10Bに示すアプローチの別の利点は、
図10Cを参照して以下に説明するように得られる。同図においてはヤーン15がタフテッド基布17の一部としてカットパイルを形成するが、その代わりに
図10Bに示すようにループパイルが用いられてもよい。ベルト1016(もしくはプレート又はドラム)は織りや型押しのテクスチャを備えていてもよく、そのテクスチャが床被覆材(例えば2)のポリマバッキング32に与えられる。好適には、ベルト1016は、繊維36が(テクスチャの「谷間」に挟まるのではなく)ベルト1016の上面に沿って配置され接着剤ポリマ32へと押し込まれるように、繊維36の長さよりも短いパターン又はテクスチャを有する。一態様によれば、ベルト1016は密集したヤーン又は窪んだ領域を有する織成又は型押しされた基材であって、繊維36がベルト1016内のヤーン間に介在する隙間を橋絡することを可能にする。また、ヤーン間に介在する隙間は比較的浅く、それが提供するベルト1016のヤーン間の接着剤が蓄積する区域は、ほんのわずかである。
【0090】
ベルト1016の適切なテクスチャは、接着剤コーティング32に、強化繊維36を包み込ませる。床被覆材の裏面は、(
図11に示すように)装飾的なテクスチャを有するが繊維36を含まない接着剤コーティング32の薄層を有する。埋め込まれた繊維36は床被覆材に安定性を提供し、接着剤バッキング32はヤーン15のピリング及び毛羽立ちを防ぐ。さらに、床被覆材4の裏の織目処理された面は、特に接着剤バッキング組成物32が高い摩擦係数又は粘着度を有する場合には、設置時に床被覆材4の位置を維持するのに役立ち得る。
【0091】
前述の強化繊維36を含有する接着剤コーティング32の塗布方法に加え、他の方法が可能である。例えば、繊維を含有する接着剤が塗布用ロールを備えた浅く平たい容器の中に配置され、次いでカーペットに、接着剤/繊維混合物がカーペット基材の裏側に直接移動されるように、ロール上を通過させてもよい。また、湿式不織繊維ガラスシートなどの予め形成された強化布は、接着剤を用いてカーペット基材に直接積層される。接着剤は、まずカーペット基材ヤーンに押し込まれ、予め形成された強化布がその接着剤コートされた基材に押圧されることにより、強化布への浸透が可能となり、積層が可能となる。接着剤/繊維混合物の他の塗布方法は、当業者には明らかであろう。
【0092】
強化繊維36のバッキング組成物32への組み込みには様々な異なる方法があり、そのうちいくつかを限定ではなく例として、以下のとおり示す。まず、ロービングカッタと連動して動作する噴霧器は、カット繊維36とポリマバッキング組成物32とを同時に(例えば搬送ベルト1016上に直接)塗布することができる。代替的には、ロービングカッタが、基布14への適用の前に繊維36を接着剤組成物32と混合する押出ヘッドに供給を行ってもよい。別の変形例においては、「繊維詰め」押出ヘッドが使用されてもよい。また別のアプローチにおいては、繊維36が、(a)接着剤バッキング組成物32の準備に用いられる起泡機器に連続的に;あるいは(b)接着剤バッキング組成物32を供給するために用いられる管に、供給管に合わせて配置された静的又は動的ミキサを用いて、投入されてもよい。繊維強化接着剤層を作成する別の手法は、接着剤バッキング組成物32を基布に塗布し、その後、強化繊維36をウェットポリマに押し込む又は混ぜ込むというものである。
【0093】
調合プロセス中に強化繊維36が接着剤バッキング組成物32に組み込まれてもよいと考えられる。そのような調合はタンク内で発生し得るもので、塗布部位にポンプ又は重力によって供給される。遊離した繊維が製造設備を汚染するのを防ぐため、強化繊維36は可溶性の袋の中に入れられ、その袋が接着剤調合タンク内に導入されてもよい。このアプローチは、化合物中の繊維の接着剤に対する適切な比を保証するとともに、繊維の取り扱いを容易にする。
【0094】
強化繊維36が接着剤バッキング組成物32中にどのように導入されるかに関係なく、一次基布20の裏面における均一で一様な配置を保証するため、繊維36の均一な分散が好適である。接合化合物としての役割に加えて、接着剤バッキング組成物32は、繊維36をコートするとともに、(繊維ガラスの場合には)コートされていない繊維36への曝露により生じ得る皮膚刺激の可能性を防止する。
【0095】
本明細書に記載の様々な実施形態においては(いずれか1つの特定の実施形態には限定しない)、繊維強化接着剤の追加重量は、(乾燥状態で)約15乃至約40オンス/平方ヤードの範囲内であり得る。1つの特定の構造においては、製図タフテッド基材を用いる場合、所望の接着剤浸透を達成し強化層16を形成するための追加重量は、約25オンス/平方ヤードであり得る。裏面により少ないヤーン(ステッチ)を有する他のタフテッド基材については、追加重量はこの範囲の下端近くであってもよい(例えば約18オンス/平方ヤード乃至約20オンス/平方ヤード)。
【0096】
予め形成された強化マットが熱硬化性又は熱可塑性のポリマバッキング層に包封されている従来の床被覆材では、硬化及び冷却プロセスに時間がかかり、その結果一次バッキング基材の収縮が生じ得る。本願のアプローチによれば、強化層16内の繊維36は接着剤32が硬化するまで基布14とともに移動可能であり、そのため寸法的に類似の基布14及び強化層16を備えたより平面的な床被覆材がもたらされる。より再生産可能であることに加え、本明細書に記載の方法によって作成される床被覆材2は、後で解放された場合に床被覆材2の捲れや反りを引き起こし得る内部応力を有し難い。
【0097】
本願のプロセスによって作られた本願の床被覆材は、強化繊維36とタフテッド基布14との間に密接な接触関係があるときに、非常に安定的であるとともにより柔軟であることが分かっている。予め形成された強化マットを表面からできる限り遠くに設置して可能な最大の「Iビーム」を得る既存のカーペット製造プロセスとは反対に、本願の方法は、一次バッキング基材20と強化繊維36との間の距離ができる限り近い本発明の床被覆材を作成する。そのためには、一次バッキング基材20の裏面上のステッチ12が、強化繊維36がどれほど近接して配置され得るかを決定するにあたっての限定因子であることが分かっている。
【0098】
強化繊維36とヤーン10との間の距離を短縮するためには、接着剤バッキング組成物32が塗布される前に、ヤーン10のステッチ部分12を平らにして圧縮することが可能である。ヤーン束10は平均して80乃至90%が空気であるため、ヤーン10は容易に圧縮され得る。しかしながら、ヤーン10は嵩高であり、ヤーン10を圧縮形態で保持する何らかの力の印加なしにはすぐに回復する。
【0099】
図11は、平らにされたステッチ13を有する床被覆材4を示す。見て取れるように、一次バッキング基材20の裏面のヤーン10のステッチ13は平らにされており、一次バッキング基材20にごく接近している。接着剤バッキング組成物32はステッチ13及び強化繊維36の両方に浸透し、それによって床被覆材4を形成する。強化繊維36は連続的な層の中に分散されており、
図9に示すように主に機械方向に整列されてもよいし、あるいは
図10B及び10Cに示すプロセスの結果、より無作為に配向されてもよい。
【0100】
ヤーン10は、圧力、熱、及び/又は(潤滑のための)水分を用いて圧縮され又は平らにされてもよい。平らにされたヤーンが一次バッキング基材20の裏面で「リベット」として機能するので、ヤーン10のタフト結合が高められる。低粘度澱粉(多糖)又は接着剤の塗布(すなわち「事前噴霧」)は、熱で平らにされたヤーン10を、繊維強化接着剤バッキング層16の塗布及び硬化の間中ずっと、圧縮された形状に保持する。事前噴霧はヤーン10に浸透し、ヤーン10を束状に保持するので、ピリング及び毛羽立ちも軽減される。
【0101】
ヤーンステッチ13を平らにすることの別の利点は、ヤーン束10内の空洞の量が減少され、必要な接着剤32の追加重量がより少なくなることである。接着剤量がより少なくなることで、床被覆材4はより速く硬化し、硬化に必要な熱が少なくなり、より軽量、より柔軟になるとともに、生産が安価になる。反りや捲れに寄与し得る内部応力の除去又は低減によって、床被覆材4のより高い柔軟性及び改良されたドレープ性が床への適合性をもたらす。したがって、設置は、設置接着剤の薄層のみにより、又は全く何もなしで、容易に達成され得る。さらに、設置の際の本願の床用製品(例えば4)の切断は、はるかに容易である。
【0102】
タフテッド基布14の生産に用いられるタフティングプロセスは、一次バッキング基材20の裏面に「タグ」を作り出し得ることがある。これらの「タグ」は、タフティング機での修繕を必要とするヤーン10の不完全なタフト又は引っ張られたタフテッドヤーンのいずれかである。平らにするプロセスは、こうした欠陥の修繕において効果的であることがわかっている。接着剤バッキング層32内に強化繊維36を追加することによって、連続的な繊維質の層が形成され、これらの欠陥を隠す。特に、ヤーン10のステッチ部分13が接着剤塗布の前に平らに押圧される場合には、本明細書において説明され得るような任意選択的なバッキング層がさらにこれらの欠陥を隠蔽する。
【0103】
繊維強化接着剤バッキング組成物により形成された連続的な繊維層は、床被覆材が広幅製品として用いられるかモジュラ製品として用いられるかに関係なく、本願の床被覆材に安定性を与える。他のバッキング層の適用は多くの点において不利であり、床被覆材の柔軟性及び費用に悪影響を有する。製品の外観を良くするために追加の装飾的なコーティングが望まれる場合には、リサイクルの努力を支援するべく、接着剤バッキングと同一のポリマの軽いコーティングが用いられるのが好適である。
【0104】
図12は、そのような任意選択的な装飾バッキング層42を有する床被覆材6を示す。この追加バッキングを備えた例示的な構造においては、任意選択バッキング層42は、装飾的なコーティング又は薄膜であって、床被覆材6の安定性には影響を及ぼさない。接着剤バッキング化合物32に着色剤を混ぜ込むことにより、非常に薄いコーティングでの繊維36の最大限の被覆が達成され得る。床被覆材6の異なる製造業者又は特定の性質の標識として、異なる色及び/又はポリマが使用可能であることが想定される。別の態様においては、層42に温水可溶性化合物を用いることによって、床被覆材6のリサイクル能力が悪影響を受けることはない。任意選択バッキング層42は、
図10Cに記載のプロセスを用いて生産された床被覆材においては不要であるかもしれない。なぜなら、このプロセスはそれ自体審美的に満足のいく表面をもたらすものであるためである。
【0105】
図13に示す別の態様においては、追加バッキング層は、強化層16に付加されてクッション性のある床被覆材8を作り出すクッション層80であってもよい。クッション層80は、当該技術分野において既知であるように、及び/又は本明細書に記載されているように、ポリウレタン、ラテックス、フェルト、又は任意の他の適切なクッション材料から作成されてもよい。上述のクッションバック床被覆材と同様、クッション層80は予め形成された強化マット75により保護されていてもよい(もっとも、床接着剤が用いられない場合には、予め形成された強化マット75は不要である)。繊維36は必要な安定性を提供するとともに及び接着剤の送出を容易し、一方、追加的なクッション層80は床被覆材8の快適度を向上させる。また、繊維36は、床被覆材8が床から取り外される際に損傷を受けるのを防止するものと考えられる。
【0106】
代替的には、追加バッキングは、クッション層80及び保護用強化マット75の代わりに、
図14に示すように別の装飾バッキング90であってもよく、これは繊維36を含む強化層に適用される。装飾バッキング90は、強化繊維36の追加的な被覆範囲を追加するため、(何らかの理由で必要な場合には)床被覆材に重量を追加するため、あるいはある製造業者を別の製造業者と区別するために、用いられてもよい。バッキング層90は、彫り込みを行ったりパターンロールを用いてポリマを適用したりすることによって、図示するように不連続にされてもよい。バッキング層90を不連続な層として形成することで、リサイクルプロセスにおいてバッキング層90が粉々になること、ならびに接着剤でコートされた繊維36から分離されることが、潜在的に容易になる。さらに、バッキング層90の不連続な特徴が床被覆材102の柔軟性を維持する。
【0107】
バッキング層90は、溶解してタフテッド基布(10,20)及び強化繊維36から容易に分離されるように、温水可溶性ポリマから作成されてもよい。代替的には、バッキング層90は不溶性ポリマ(PVC、ホットメルト接着剤、又はポリウレタンなど)から作成されてもよく、構成要素の分離及び分別はバッキング層90の不連続な又はセグメント化された性質によって促進され得る。接着剤組成物36が溶解すると、セグメント化されたバッキング層90は破砕され、その断片が液化接着剤から取り出されて、他の製品に再利用されてもよい。
【0108】
本明細書において考えられる別の代替案は、
図15に示すような床被覆材115であり、ここでは繊維36が、ヤーン10を一次バッキング基材20内に固定するために用いられる接着剤プレコート組成物32内ではなく、不連続なポリマバッキング層92内に無作為に分散されている。この態様において、バッキング層92は、伝統的な床被覆材において用いられる(予め形成されたマットを備えた)多層バッキングシステムよりもかなり軽量であるにもかかわらず、所望の安定化特性及び柔軟性を有している。バッキング層92はPVC、ポリウレタン、水性接着剤、又はホットメルト接着剤化合物から作成されてもよく、ここで、繊維36を混ぜ込むことは、クリープ、コールドフロー、又は可塑剤移行の防止に特に利益がある。結果としてもたらされる床被覆材115は、「Iビーム」構造を有する従来のモジュラ床被覆材と比較して、床を「抱き込む」十分な柔軟性を有する。
【0109】
図16は、一次バッキング基材20を貫通してタフトされた複数のヤーン10を含む床被覆材108を示す。ヤーン10のステッチ部分は、先の実施形態によれば接着剤ポリマ組成物32を用いて固定されるが、今回は接着剤組成物32をプレコートとしてのみ用いて固定される。強化繊維36を含有する第2の接着剤バッキング組成物46が、タフテッド基布の裏面に連続的な強化層を形成する。第2の接着剤バッキング46は、プレコートとして用いられる接着剤ポリマ組成物32と同一のポリマであっても、異なるポリマであってもよい。
【0110】
図16の床被覆材108は、ロール・オーバ・ロール(又はプレート)構造の現在の技術が用いられている
図17に示す方法により生産されてもよい。有利には、ヤーンステッチ12を固定するべく接着剤プレコート組成物32をタフテッド基布14の裏面に塗布する第1のロール1008及び第2のロール1010を備えた既存のコーティング設備が用いられてもよい。ヤーン10への接着剤組成物32の浸透は、現在の実務によるプレコート接着剤層の適用において理解されるように、ヤーンの種類、ヤーンの寸法、接着剤の粘度、及びロール1008,1010の圧力に応じて変動し得る。塗布用ロール1006は繊維強化接着剤組成物1032を搬送ベルト1016上に導き、そこで繊維強化組成物1032は接着結合されたヤーン10をコートして、コートされたヤーンステッチ間の空洞を埋めることにより強化バッキング層46を形成する。
【0111】
このアプローチは、いくつかの潜在的な利点を提供する。第一に、接着剤32の量(プレコート32及びバッキング層46におけるものの合計)が減少され得る。第二に、上述のように、プレコート接着剤組成物32及び/又はその粘度がバッキング接着剤組成物46及び/又はその粘度と異なり得る。接着剤プレコート組成物32と接着剤バッキング組成物46とが同一のポリマからなっており、そのポリマが温水可溶性であると、リサイクルが容易になり得る。組成物が異なるポリマからなっている場合には、繊維強化接着剤組成物1032の塗布の前に、接着剤プレコート組成物32を硬化又は処理することが必要となり得る。
【0112】
この2コート方法の別の利点は、住居用広幅カーペットとしてであるか、業務用広幅カーペットとしてであるか、それとも(タイル又はラグなどの)モジュラカーペット製品としてであるかを問わず、接着剤組成物が床被覆材108の用途に合わせて調整され得るということである。例えば、広幅カーペットに用いられる接着剤組成物は、特にループパイル構造が商業的用途ではなく住居用途のために設計されている場合には、より多くのフィラー材料を含有し得る。別々の用途の接着剤組成物32,1032を塗布することによって、浸透ならびに強化繊維36の的確な量の正確な制御が行われ、強化層のその場形成(in−situ formation)が可能となり得る。この方法によって作成された実施例を、実施例10乃至13として記載する。
【0113】
例えば
図10A乃至10C及び
図17に示すプロセスによって作成される本願の床被覆材製品は、広幅カーペットとして使用され得るものであり、あるいはモジュラユニット(すなわちカーペットタイル、エリアラグ、マット、又はランナー)に切り分けられてもよい。広幅カーペットとして用いられるときには、本願の強化層により提供される寸法安定性が、それがなければ従来の広幅カーペットが引き伸ばされてタックストリップに取り付けられる際に起こり得る、壁や出入口への損傷の生じない設置を可能にする。
【0114】
寸法安定性及び柔軟性の利点に加えて、本願の汎用バッキングは、堅木張りの床の上に敷かれるエリアラグに特に適した、傷つけない表面を提供する。エリアラグは、小さなエリアラグやランナーから部屋の大きさの大型ラグまで、任意の所望の寸法であってもよい。また、本願の床被覆材の柔軟性は、床被覆材を階段用のカーペット類としても有用なものとし、その場合には本願の床被覆材のロールが所望の寸法に切り分けられて、慣例的に床被覆材が時間とともに「成長」して踏み外しの危険を生じるという心配なしに設置され得る。
【0115】
タイルに切り分けられたとき、タイルの寸法は、従来のカーペットタイルと同様に小型(12’’×12’’)又は中型(36’’×36’’)であってもよく、あるいはタイルは(6’×6’又は6’×12’のパネルのように)大型の寸法を有していてもよい。後者はエリアラグに相当し得るものであり、また、両者とも従来のタイル製造方法では得ることができない。広幅製品のような大型のモジュラ製品又はラグは、巻くことができるほど十分に柔軟であり、ロールに巻き付けるか又は巻かれた状態で便利に輸送され得る。限定ではなく例として、複数の大型のモジュラパネルが同一のロールに巻かれて一緒に輸送され得るものと考えられる。例えば、輸送又は取り扱いの重量制限を超過することなく、120リニアフィートを被覆するのに十分な床被覆材を提供するための10枚もの6’×12’のパネルが1つのロールに巻かれて輸送され得る。
【0116】
具体的には、モジュラ床被覆材製品は、円形カーペット、楕円形カーペット、カーペットタイル、カーペットパネル、エリアラグ、ランナー、及び階段用床被覆材のうちいずれであってもよく、そのカーペットタイル、カーペットパネル、エリアラグ、ランナー、及び階段用床被覆材のいずれもが多角形であってもよい。限定ではなくほんの例として、多角形は正方形、長方形、又は三角形であってもよい。
【0117】
また、同一の厚さ及び寸法安定性を有する広幅及びモジュラ床被覆材を生産することが可能であることから、両方の種類の床被覆材が同一の部屋又は隣接する部屋に一緒に設置され得ると考えられる。例えば、1つの部屋の中で、床の大部分は本明細書の教示に従って引き伸ばされていない広幅で覆われ、その一方で部屋の周囲や他の領域はタイルで覆われて、装飾的な特徴を作り出してもよい。複数の部屋への設置では、1つの部屋が引き伸ばされていない広幅床被覆材で覆われてもよく、その一方で隣接する部屋はモジュラタイルで覆われるが、広幅及びタイルはいずれも同一の生産工程で生産され(すなわち同一の基布)、同一の厚さを有する。
【0118】
設置
背景の項で説明した多数の床被覆材構造に対応するべく、製造業者及び設置業者は、床被覆材の耐久性及び快適性を高めるため、数々の設置技術を開発してきた。例えば、広幅カーペットは、住居用の設置においては、
図18に示すように、典型的には引き伸ばされて、部屋の周囲に設置されたタックストリップに取り付けられる。図示するように、床2000の上にはクッション層2280が置かれ、タックストリップ2004が部屋の周囲に、壁2002にごく接近して配置されてもよい。(表面ヤーン2210として表される)タフテッド基布を有するカーペットは、パワーストレッチャを用いて引き伸ばされ、タックストリップ2004の裏側に折り込まれる。任意選択的には、引き伸ばしが不可能な大きな商業空間においては、カーペット2210を「両面接着」設置で適用する前に、接着剤層(図示しない)が床及びクッション層2280適用されてもよい。
【0119】
パワーストレッチャを使用する目的は、度重なる歩行者交通により生じ得るような皺が時間とともに床被覆材に形成されるのを防止することである。背景の項で述べたように、居住用の大きさの部屋であっても、所望の部屋寸法の床被覆材を作成するためには継目テープを用いる必要があるかもしれない。継目テープはホットメルト接着剤を使用しており、融解のためには加熱された継ぎ合わせアイロンが必要である。継ぎ合わせアイロンにより与えられる熱は、床被覆材に用いられるバッキング基材にとって有害であり得るとともに、設置業者に潜在的な安全性の懸念をもたらす。
【0120】
パワーストレッチングは比較的小さな居住用寸法の部屋においてのみ用いられ得るものであり、オープンオフィス環境に見られるような大型の商業用寸法の部屋には適さないことがわかっている。パワーストレッチングが非実用的である大型の商業用の設置においては、床被覆材は床2000又はクッション層2280に直接貼り付けるように設計されており、(「両面接着」設置においては)床に直接貼り付けられてもよい。
【0121】
伝統的に、床被覆材を直接床2000に固定するか別個のクッション層(例えば2280)に固定するかを問わず、床用接着剤は塗装用ローラ又は溝付きの鏝を用いて塗布される。床用接着剤を塗布するために用いられる塗布方法が、床被覆材との接触に利用可能な接着面領域を決定する(すなわち、床用接着剤が溝付きの鏝によって塗布されるときには、床被覆材と床用接着剤との間にはより少ない接触点が存在する)。モジュラ床被覆材の設置においてはモジュラ床被覆材の可撤性を維持するために感圧性接着剤が使用されるが、感圧性接着剤は堅いモジュラ床被覆材を平面位置に維持するには効果がないことに注意しなければならない。安定性のより低い広幅製品の設置には恒久的な床用接着剤が使用される。そのような貼り付け設置の撤去は、高価であるとともに時間がかかる。
【0122】
対照的に、汎用繊維強化バッキングシステムを有する(
図9及び11乃至16に示すような)本願の床被覆材は、エンドユーザが所望するどんな設置技術をも可能にする十分な安定性及び柔軟性を備えているが、織物構成要素の引き伸ばしや恒久的な床用接着剤を必要としない。パワーストレッチングのステップをなくすことは、床被覆材を健全に保ち、設置を大幅に簡単にし、且つ設置の所要時間を短縮する。さらに、住居用の設置技術(タックストリップの使用など)は業務用の取り付けにも適用され得るものであるため、本願の床被覆材の市場は広がる。
【0123】
広幅の設置であるかモジュラ床の設置であるかを問わず、本願の床被覆材は全く接着剤を使用せずに設置され得るものであり(
図19Aに示すような「浮動式の」設置)、あるいは、望まれる場合には、格子状又は点在的に床に塗布された感圧性接着剤を用いて設置されてもよい(「フリーレイ」設置として前述したもので、図示しない)。
【0124】
別の変形例においては、床被覆材は、高い摩擦係数を有するバッキングを備えていてもよい。高摩擦係数のバッキングは独立した層であってもよく、あるいは強化繊維を含有するバッキング接着剤の選択の結果もたらされてもよい。高摩擦係数材料の例には、アクリル又は天然ラテックスがある。高摩擦係数コーティングがクッション又は床、ならびにカーペットバッキングに適用されてもよい。その結果もたらされる高摩擦係数の層の接合体は、摩擦効果を指数関数的に増大させる。
【0125】
図19Aにおいては、タフテッド基布2214及び繊維強化接着剤層2216を有する床被覆材2202が床2000の上に設置される。床被覆材2202の端は壁2002に隣接して配置される。この態様においては、設置は、床2000と強化接着剤層2216との間に全く接着剤が用いられない、浮動式の設置である。図示するように、床被覆材2202は、継目2203で互いに当接する隣接したタイルを有するモジュラ床被覆材である。もっとも、床被覆材2202はその代わりに、上述のように、接着剤を用いずに設置される広幅床被覆材であってもよい。広幅床被覆材が望ましいときには、その床被覆材は引き伸ばされていない状態で設置されてもよい。
【0126】
(例えば商業用の環境において)部屋の大きさに適合させる必要がある場合には、一片の床被覆材2202が別の一片の床被覆材2202にホットメルトテープ又は感圧性接着剤テープを用いて接合されてもよい。繊維強化バッキング2216は、ホットメルト接着テープの適用に耐えるのに十分なほど安定的である。しかしながら、感圧性接着剤テープを使用すると、加熱された継ぎ合わせアイロンの必要性がなくなり、恐らくは、継目テープの使用が結局のところ完全に排除されることになる。
【0127】
図19Bは代替的な設置技術を示す。この態様によれば、床被覆材の厚さよりも薄い外形を有する薄型のタックストリップ2006が壁2002に隣接して設置される。タフテッド基布2214及び繊維強化接着剤層2216を有する床被覆材がタックストリップ2006に固定される。具体的には、床被覆材はタックストリップ2006と壁2002との間でタックストリップ2006に巻き付けられる。
【0128】
タックストリップ2006の使用には多くの利点がある。具体的には、タックストリップ2006がないと、床被覆材は、部屋の周囲で所望の「切断品質」を生み出すように、高い精度で切断されなければならない。ところが、タックストリップ2006が使用されると、切断品質の改良された外観が得られ、同時に部屋の周囲及びドア枠の周辺で床被覆材を正確に切断する必要性がなくなる。
【0129】
従来の床被覆材の設置とは異なり、床被覆材は引き伸ばされていない状態で(すなわち、パワーストレッチャにより引き伸ばされることなく)設置される。繊維強化バッキングにより提供される寸法安定性のおかげで引き伸ばしの必要がなくなったことから、本願の床被覆材の広幅の設置は非常に簡単且つ迅速になっている。また、本願の広幅の設置は、クッション上での設置及び設置用接着剤を用いない設置など、大規模な業務用の設置に適している。
【0130】
代替的には、タックストリップ2006の代わりに、部屋の周囲における感圧性接着剤の塗布が用いられてもよい。そのようなアプローチは、――タックストリップが使用されない場合には――床全体にわたる恒久的な接着剤被覆を必要とする従来の広幅床被覆材では、効果を有さないであろう。接着剤による設置方法の別の問題点は、設置後に切り口が露出されることになるため、床被覆材が壁及びドア枠に沿って正確に切断されなければならないことである。
【0131】
図19Cに示すように、タフテッド基布2214と、繊維強化接着剤層2216と、貼り付けられた(又は貼り付けられていない)クッション層2282とを有する床被覆材もまた、床用接着剤を用いずに設置されてもよい。床被覆材が
図19Cにおけるように貼り付けられたクッション層2282を備えるときには、(床用接着剤を使用しなくても)移動や滑りの可能性がさらに低減される。理論により制約されることは望まないが、追加的な厚さ及び/又は重量は床被覆材の位置安定性の増大に寄与し得ると考えられる。床被覆材は広幅床被覆材であってもよいし、あるいはモジュラ式の床用製品であってもよい。任意選択的には格子状の接着剤が用いられてもよいが、そのような接着剤の塗布は必要ない。床被覆材が反りや捲れのおそれなしに高い寸法安定性を示すため、床接着剤の目的は、単に床被覆材が使用中に移動したり滑ったりするのを防止することである。
【0132】
(
図19Bにおけるように)貼り付けられたクッション層を有する代わりに、広幅又はモジュラ式の設置が分離したクッション層の上に設置されて、床被覆材により提供される快適度を高めてもよい。望ましい快適度を得るためには製造業者が特定のクッションを勧めてもよいが、最終的な決定は消費者に委ねられる。今日のラミネート床の設置において用いられる薄いクッションを本願の床被覆材とともに使用することが可能である。
【0133】
クッションは、接着剤を用いない浮動式の設置であってもよく、又は格子状の又は点在的な接着剤によって床に取り付けられてもよい。床被覆材はクッションの上に接着剤を用いずに敷かれてもよいし、あるいは点在的な又は格子状の接着剤によってクッションに貼り付けられてもよい。クッションは、水分バリアとして作用する薄膜を備えていてもよい。また、この膜は、どんな液体接着材であってもクッションに浸透するのを防止してもよい。膜はクッション層と一体であってもよいし、又は床被覆材が敷かれる前に独立した層として適用されてもよい。
【0134】
モジュラ床被覆材の設置のための別の想定される技術は、
図19Dに示すように、床被覆材の下にモジュラ式の「クッションタイル」を使用する。床被覆材タイルは正確に切断された端を有して作成され、床被覆材をタイル、マット、又はエリアラグとしての使用に適したものとしてもよい。本明細書に記載されたモジュラ床被覆材の柔軟性及び安定性は、カットパネルが輸送のために管に巻き付けられることを可能にする。
【0135】
タイル・オーバ・タイル式の設置において用いられるとき、クッションタイルは膜層を備えていてもよく、その膜層はクッションの1つ又は複数の端を超えて拡張していてもよい。膜の拡張部分は、隣接するクッションの端に重なることによって、特に、それがなければ脆弱な継目に沿って、床被覆材に水分バリア特性を提供する。(水分が微生物の増殖を生み出す心配がある病院及び医療環境において必要であるように)クッションタイルは、タイルが異なる方向で接合されるように設置中に回転され、それによって継目を熱融着させる必要をなくしてもよい。重なっている膜部分は、クッションタイルをまとめて固定するのにも役立つ。
【0136】
図19Dに示す一態様において、中型又は大型のタイル又はパネル2208が用いられる場合には、クッションタイル2280はモジュラ床被覆材パネル2208よりも小さい寸法に切断されてもよい。図示するように、床被覆材タイル2208は継目2203で互いに当接し、その一方でクッションタイルは継目2283で互いに当接する。この設置技術によれば、大型のモジュラ床被覆材パネル2208が折り畳まれたり、巻き返されたり、又は取り除かれたりして、下にあるクッションタイル2280にアクセスすることが可能になり、そのクッションタイルもまた(電気設備、電話機、又は冷暖房空調設備に使われるもののような)床下設備への進入のために除去されてもよい。したがって、配線又は設備の修理が迅速に、且つ全体として床被覆材の設置に対する最小限の破壊をもって、行われ得る。
【0137】
要約すれば、本願の床被覆材製品の寸法安定性は、接着剤を用いた又は用いない幅広い設置方法を採用することを可能にする。設置は、従来の床被覆材で用いられたものよりも単純であり、新たな市場が利用可能となった。
【0138】
本開示は、繊維強化層を有する床被覆材と、その床被覆材の設置方法とを説明する。本明細書に記載の特徴は任意の適切な組み合わせで利用され得るものであり、目下そのような組み合わせのあらゆる順列が意図されていることに注意しなければならない。本開示のさらなる裏付けとして提供される以下の節には、例として本願の床被覆材の設置方法が記載され得る。:
【0139】
実施形態1。寸法安定性のある床被覆材の設置方法であって:(a)表面及びその表面と反対の裏面を有する一次バッキング基材と、一次バッキング基材を貫通してタフトされた複数のヤーンとを備え、各ヤーンの一部は一次バッキング基材の裏面に位置するステッチを形成する、タフテッド基布と;接着剤組成物及び複数の繊維を含み、繊維は接着剤組成物により包まれて一次バッキング基材の裏面に繊維強化接着剤層を形成し、各ヤーンのステッチ部分には接着剤組成物が浸透した、強化層と、を備えた寸法安定性のある床被覆材を提供することと;(b)床被覆材が設置される部屋の寸法に適合するように床被覆材を測定することと;(c)部屋の寸法に適合するように床被覆材を切断することと;(d)床被覆材を部屋に敷くことと、を備える方法。
【0140】
実施形態2。部屋の周囲に隣接してタックストリップを設置することと;床被覆材の切断端をタックストリップに取り付けることと、をさらに備える実施形態1の方法。
【0141】
実施形態3。感圧性接着剤を部屋の床に塗布することをさらに備える、先行するいずれかの実施形態に定義された方法。
【0142】
実施形態4。感圧性接着剤が格子状に塗布される、先行するいずれかの実施形態に定義された方法。
【0143】
実施形態5。床被覆材を敷く前に部屋の床の上にクッションを配設することをさらに備える、先行するいずれかの実施形態に定義された方法。
【0144】
実施形態6。床被覆材は引き伸ばされていない広幅床被覆材である、先行するいずれかの実施形態に定義された方法。
【0145】
実施形態7。床被覆材はモジュラ床被覆材である、先行するいずれかの実施形態に定義された方法。
【0146】
実施形態8。クッションを床に配設する前にクッションをタイルに切り分けることをさらに備える、先行するいずれかの実施形態に定義された方法。
【0147】
実施形態9。床被覆材はクッションタイルよりも大きな寸法を有するモジュラパネルである、先行するいずれかの実施形態に定義された方法。
【0148】
リサイクル
床被覆材が汚れたり染みがついたりしたときには、床被覆材を埋め立て処分又は焼却処分するのではなく、リサイクルするのが望ましい。本願のリサイクルプロセスは、本願の床被覆材の製造により生じた廃棄物についても用いられ得る。そのようなリサイクルは、床被覆材を通常の使用中には遭遇することのない環境にさらすこと(すなわち、140 °F乃至212°Fの温度の温水又は蒸気への曝露)により達成され得る。
【0149】
図20は、本明細書に記載の、強化層に用いられる接着剤組成物が温水又は蒸気中で可溶性である一態様による、本願の床被覆材製品のリサイクルのための代表的な設備の設置を示す。このプロセスは、接着剤組成物が澱粉、PVA、及びポリエステルのうち1つ又は複数、又は他の温水可溶性組成物からなるときに用いられ得る。
【0150】
床被覆材(例えば2)は目の粗いメッシュ搬送ベルト2016(メッシュの目は図示しない)の上に配置される。搬送ベルト2016は第1の蒸気チャンバ2000を通って床被覆材2を運搬し、ここで床被覆材2は(212°Fの)蒸気で加熱され、繊維強化層16中の接着剤組成物32が軟化又は溶解し始める。次に、床被覆材2は、高圧蒸気ノズル2012が蒸気の流れを繊維強化層16に向ける第1の蒸気インジェクタ区域2010の上を搬送される。蒸気は、接着剤組成物36を溶解させるとともに、繊維強化層16を除去する。関連するベルト又はプレートを有する一対のロール2026は、蒸気の流れにより衝撃を受けたときに床被覆材2が搬送ベルト2016を外れた位置に変位するのを防止する。
【0151】
第1の蒸気インジェクタ区域2010において、接着剤組成物32が溶解を始め、基布14から離れてもよい。強化層16に埋め込まれた繊維36は、溶解した接着剤組成物とともに、回収タンク(図示しない)につながっている排液管2036へと運ばれてもよい。
【0152】
第2の蒸気チャンバ2040は、繊維強化層16の残りの部分に追加的な高温水分を導入する。第2の蒸気チャンバ2040は、接着剤組成物36の溶解に加え、基布14(ヤーン及び一次バッキング基材)を浄化する働きをする。
【0153】
高圧蒸気ノズル2052を有する第2の蒸気噴射区域2050は、追加的な蒸気の流れを繊維強化層16に向けて、接着剤組成物36を完全に溶解させて、埋め込まれた繊維とともに排液管2036へと運ばせる。ここでも、関連するベルト又はプレートを有する一対のロール2056が、蒸気の流れにより衝撃を受けたときに基布14が搬送ベルト2016を外れた位置に変位するのを防止する。
【0154】
図20はモジュラタイルの形状の床被覆材2を示すが、この方法は、広幅床被覆材を含め、どんな形状の床被覆材にも適用可能である。蒸気チャンバ2000,2040は、必要に応じて異なる長さであってもよい。同様に、各蒸気インジェクタ区域2010,2050の蒸気ノズル2012,2052の数ならびにその各々の容積及び/又は圧力は、必要に応じて同一であっても異なっていてもよい。望ましい場合には、リサイクルプロセスは不連続であってもよい。蒸気インジェクタ区域2010,2050のうち1つ又は複数、又は蒸気チャンバ2000,2040においては、界面活性剤、水噴射、又は両者の組み合わせが用いられてもよい。
【0155】
2組の蒸気チャンバ及び蒸気インジェクタ区域を図示するが、接着剤組成物を完全に溶解し基布を浄化するのに必要な任意の数のチャンバ及び区域が用いられてもよい。
【0156】
ヤーンと一次バッキング基材とが同一のポリマ(例えばナイロン6又はナイロン6,6)から作成されているのであれば、基布全体が切り刻まれ、ペレット化され、新たな一次バッキング又は成形されたポリマ製品に押出成形されてもよい。ナイロンの場合、回収されたポリマは、新たなナイロン繊維に再押出成形されることが可能である。このようにしてリサイクルされるとき、その結果もたらされる製品は典型的には灰色をしており、これは一次バッキング基材としての使用に適している。
【0157】
ヤーンと一次バッキング基材とが異なるポリマで作成されている場合には、基布は粉砕されるか、短い長さに切り分けられてもよい。その結果もたらされる短い繊維は、本願の床被覆材用の新たなクッション又は新たな織成一次ベースにニードルパンチされて、端でほつれない一次バッキング基材を形成してもよい。
【0158】
代替的には、浄化されたヤーンが一次バッキング基材の表面から切り取られ、それ自体が強化繊維として本願の床被覆材又は他の製品に組み込まれてもよい。この方法は、ヤーンが擦り切れていたり、そうでなれば不適当な外観を有するときに、有用であり得る。
【0159】
接着剤組成物を溶解するべく追加された水は、再利用のために接着剤組成物に水分補給をする際に有用である点に注意しなければならない。例えば、バージンな接着剤組成物の含水量は、比較的大量(例えば20%乃至50%)の水を含み得る。したがって、かなりの水が(蒸気の形で)、再生接着剤組成物のリサイクル能力に悪影響を及ぼすことなく、接着剤組成物を溶解するために用いられ得る。再生接着剤組成物は、バージンな基布上に繊維強化バッキング層を作成するために用いられてもよい。望ましい場合には、強化繊維は希釈された接着剤から遮断されて、接着剤組成物がプレコートとして又は何らかの他の用途に用いられることを可能にしてもよい。
【0160】
また、溶解した接着剤組成物に埃が混入し得ることが予期される。埃はフィラー材料として機能するため、接着剤組成物への埃の含有は容認できる。
【0161】
本願の床被覆材をリサイクルするための別の選択肢は、温度を上げて洗濯槽又は洗浄容器内で床被覆材を浸して転がすことである。そのようなプロセスに適した1つの設備は、接着剤を溶解させるとともに完了時に基布から水を絞り取る脱水サイクルを含む業務用洗濯機である。床被覆材を浸すことは、強化層を取り除くことができる一方で、より大量の水を必要とすることになり、その結果さらに希釈された接着剤組成物がリサイクル用にもたらされるものと予期される。
【0162】
いずれのリサイクル方法でも、一次バッキング基材(すなわちタフティング基材)は温水可溶性材料で作成されていてもよい。この場合、一次バッキング基材は強化層とともに溶解されてもよい。
【0163】
温水可溶性ポリマ強化層を有する本願の床被覆材はリサイクル及び再利用を容易にし、それによって従来技術に対する進歩を示す。前述のように、――熱可塑性物質及び熱硬化性樹脂のような――従来の床被覆材構造における複数の異種層の使用は、それらの床被覆材が容易にリサイクルされるのを妨げる。
【0164】
本開示は、繊維強化層を有する床被覆材と、その床被覆材のリサイクル方法とを説明する。本明細書に記載の特徴は任意の適切な組み合わせで利用され得るものであり、目下そのような組み合わせのあらゆる順列が意図されていることに注意しなければならない。本開示のさらなる裏付けとして提供される以下の節には、例として本願の床被覆材のリサイクル方法が記載され得る。:
【0165】
実施形態1。床被覆材のリサイクル方法であって、床被覆材は、表面及びその表面と反対の裏面を有する一次バッキング基材と、一次バッキング基材を貫通してタフトされた複数のヤーンとを備え、各ヤーンの一部は一次バッキング基材の裏面に位置するステッチを形成する、タフテッド基布と;温水可溶性の接着剤組成物及び複数の繊維を含み、繊維は接着剤組成物により包まれて一次バッキング基材の裏面に繊維強化層を形成し、各ヤーンのステッチ部分には接着剤組成物が浸透した、強化層と、を備え;この方法は:(a)床被覆材が蒸気にさらされる蒸気チャンバを通って床被覆材を搬送することと;(b)複数の蒸気ノズルから床被覆材の強化層に高圧蒸気流を向けることにより、温水可溶性の接着剤組成物を溶解させることと;(c)接着剤組成物を完全に溶解させるために必要に応じてステップ(a)及び(b)を繰り返すことと;(d)溶解された接着剤組成物を集めることと、を備える。
【0166】
実施形態2。蒸気チャンバを通って床被覆材を搬送することは、強化層が搬送ベルトに接触するように床被覆材を目の粗いメッシュ搬送ベルトの上に配置することを備える、実施形態1の方法。
【0167】
実施形態3。蒸気チャンバ内の蒸気に界面活性剤を導入することをさらに備える、先行するいずれかの実施形態に定義された方法。
【0168】
実施形態4。溶解された接着剤組成物とともに強化繊維を集めることをさらに備える、先行するいずれかの実施形態に定義された方法。
【0169】
実施形態5。溶解された接着剤組成物を再利用することをさらに備える、先行するいずれかの実施形態に定義された方法。
【0170】
実施形態6。溶解された接着剤組成物を遮蔽して強化繊維を分離することをさらに備える、先行するいずれかの実施形態に定義された方法。
【0171】
実施形態7。タフテッド基布を切り刻み、ペレット化し、押出成形することをさらに備える、先行するいずれかの実施形態に定義された方法。
【0172】
実施形態8。タフテッド基布を粉砕することをさらに備える、先行するいずれかの実施形態に定義された方法。
【0173】
実施形態9。タフテッド基布の表面からヤーンを切り取り、切り取られたヤーンをバージンな基布のための接着剤組成物に組み込むことをさらに備える、先行するいずれかの実施形態に定義された方法。
【0174】
実施例
本発明の様々な実施形態を限定するのではなく説明するために、代表的な実施例を提示する。
【0175】
構成要素
例となる床被覆材は、織物表面と、少なくとも1つの高分子接着剤化合物と、強化繊維とを含んでいた。
【0176】
織物表面
すべての実施例において同一の織物表面が用いられた。織物表面は、従来のカーペット構造において用いられる構成要素を組み込んでいた。
【0177】
具体的には、織物表面は、日用品級の織成されたポリプロピレン一次バッキング基材及びナイロンヤーンを有する製図タフテッド織物であった。一次バッキング基材の重量は4オンス/平方ヤードであった。ナイロンヤーンの面重量は25オンス/平方ヤードであった。
【0178】
ポリマ化合物
本明細書に記載の実施例は、以下の市販のポリマ組成物のうち1つ又は複数を接着剤組成物及び/又はバッキング構成要素として組み込んでいた。正確な配合は不明であるが、これらの化合物の特性は下記の表1に記録されている。
【0180】
VAEラテックスは塗布の前に当初の重量の半分まで起泡された。他の接着剤化合物では起泡は行われなかった。
【0181】
PVA/ポリエステルラテックスは通常は接着剤プレコート層としては用いられない。しかしながら、この化合物は約175°Fの温度で温水可溶性であることから、リサイクルが望まれる本願の技術の特定の態様において有用な化合物の種類を説明するために用いられた。
【0182】
強化繊維
全ての実施例において、ガラス繊維が強化繊維として用いられた。ガラス繊維は、直径が「寸法E」として分類され、約0.25インチの長さを有していた。これは、従来の予め形成された強化層において用いられていた寸法及び長さと一致する。本明細書において用いられるガラス繊維は、ペンシルバニア州フェアレスヒルズのNyconによって流通された。
【0183】
塗布技術
タフテッド基材のコーティング後の強化繊維の分散率は、0.5オンス/平方ヤード未満になるように選択された。
【0184】
実施例は、本明細書に記載の方法に従って準備された。よって、下記の表2においては、接着剤塗布方法を説明する添付の図面を参照する。
【0186】
実施例の準備
実施例1及び2はアクリル系ペイントで塗装された。
【0187】
実施例6及び7は、
図10Aを参照して説明した接着剤組成物の塗布方法と、
図10B及び10Cを参照して説明したバッキングポリマ組成物の塗布方法とを用いて準備された。
【0188】
実施例8は、強化繊維を有する、乾燥重量が20oz/yd
2のPVA/ポリエステル接着剤(温水可溶性ラテックス)を用いて作成された。小さい正方形のコートされたカーペットが沸騰水中に入れられ濯がれた。すべての接着剤が除去されてリサイクルが容易になることにより、本願の床被覆材のリサイクル能力を示した。
【0189】
実施例9は、
図10Aを参照して説明した接着剤のプレコート塗布を用いて準備された。バッキング層は強化繊維を追加されたホットメルト接着剤で、従来の技術を用いて塗布された。VAEラテックスはEVAホットメルトの塗布前に硬化された。
【0190】
実施例11は、ニードルボンディングされた繊維ロック織り(FLW)一次バッキング基材を有するタフテッド基布を用いて作成された。実施例10及び12は、不織一次バッキング基材を有するタフテッド基布を用いて作成された。
【0191】
実施例13は不織一次基材を用いて作成された。VAEラテックス配合物は実施例1,3,6,7,及び9乃至12において用いられた配合物よりも少ないフィラー材料を含んでいた。
【0192】
実施例の観察
実施例1乃至7,9,及び10は、手作業では剥離できなかった。実施例8は、手作業で剥離するには、1インチあたり約3ポンドの力を必要とした。
【0193】
柔軟性についての標準検査が存在しないため、柔軟性はPVCハードバックタイルと比較された。PVCハードバックタイルの剛性には1という柔軟性スコアが割り当てられた。より大きな数字はより高い柔軟性の度合いを示し、10というスコアが可能な最も高いスコアであって最も高いドレープを表す。
【0194】
サンプルは箒の柄のようなダボの上に平衡状態で置かれ、サンプルがそのダボの周りで湾曲する度合いが、そのサンプルの柔軟性に割り当てられるスコアを決定した。
【0195】
実施例2及び4のPVCバッキングされた床被覆材が最も高い柔軟性を示した一方で、(
図17の2ステップ接着剤コーティング方法によって作成され最大量のバッキング材料を有する)実施例9の床被覆材が最大の剛性を有していた。実施例9の剛性は、通常はPVCほど柔軟でないホットメルトで作成されているが、それでも従来のPVCハードバックタイルよりも柔軟であったことに注意しなければならない。
【0196】
実施例の評価
アーヘン安定性試験(Aachen Stability Test)(ITTS−004)は、モジュラ及び広幅カーペットの両方について床被覆材業界全体で用いられる標準的な安定性試験である。試験方法は以下のステップを含む。:(a)床被覆材サンプルが測定され;(b)床被覆材サンプルが60℃のオーブン内に2時間置かれ、取り出され、測定され;(c)床被覆材サンプルが20℃の溶液中に2時間置かれ、取り出され、測定され;(d)床被覆材サンプルが60℃のオーブン内に24時間置かれ、取り出され、測定され;(e)床被覆材サンプルが、21℃で相対湿度65%の標準的な環境に48時間置かれ、取り出され、測定された。
【0197】
試験の最後に寸法変化(収縮又は成長)が両方向とも0.027インチ未満であれば、サンプルは安定的であると考えられる。
【0198】
実施例11及び12がアーヘン安定性試験(ITTS−004)を用いて評価された。その結果を下記の表3に示す。試験はジョージア州ダルトンのIndependent Textile Testingによって実施された。
【0200】
本明細書に記載された本発明の強化層によれば、床被覆材業界は、(i)任意の幅及び/又は長さの広幅;(ii)より幅の大きいモジュラ製品;(iii)任意の寸法の安定的なエリアラグ、マット、ランナー;(iv)別々のパッド上への設置が可能な床被覆材製品;(v)設置接着剤を用いない設置が可能な寸法安定性のある床被覆材;(vi)階段用モジュラカーペット;(vii)ロールに巻いての輸送が可能なモジュラ床被覆材製品;(viii)摩耗防止バッキングを有する床被覆材;及び(ix)いずれも同一の厚さを有する広幅及びモジュラ床被覆材をうまく組み合わせた設置といった、種々の新たな製品を導入することができる。このような製品は、本明細書に記載の方法を用いて設置及びリサイクルされ得る。
【0201】
さらに、本発明の強化層及び方法は、(i)上張用織物;(ii)工業用織物;(iii)屋根ふき膜及びアスファルトシングル;ならびに(iv)任意の接着剤化合物を使用し安定化を要するクッション製品及び/又は積層体を含むがこれらに限られない、他の商業用途に適用合能である。上張用又は工業用織物の場合には、タフテッド基布は、(織成された又は不織の織物などの)平面状の織物と置き換えられ、これがその後本願の繊維強化接着剤層でバッキングされる。屋根ふき膜及びアスファルトシングルは、織成された又は不織の基材に適用された個々のポリマ層のうち1つ又は複数を本願の繊維強化接着剤層と交換することによって作成され得る。同様に、PVC又は他のポリマの層でコートされた、予め形成された繊維ガラス基材で作成されたビニル床材が、高分子層のうち1つ又は複数を本願の繊維強化接着剤層と交換することによって作り出されてもよい。そのような製品は、本願の製造方法及び製品を採用する製造業者に利用可能な市場を拡大する。
【0202】
有利には、これらの製品は、既知の材料を使用し、容易に利用可能な設備により、低い生産費及び低い原材料費で、品質不良を現在の床被覆材製品について予期されるよりも抑えて、製造され得る。本明細書に記載の汎用バッキングは、種々の組み込まれた層又は独立した層(例えば床被覆材又は床に貼り付けられたクッション)とともに使用するのに適しており、こうした製造の柔軟性により、床被覆材の在庫を調査中であったり、広幅又はモジュラ床被覆材製品の特定の顧客注文を保留中の製造業者には理想的である。
【0203】
具体的には、製造業者は、ある日には広幅の注文を満たすべくある特定の長さの本願の床被覆材製品を引っ張るかもしれず、別の日にはモジュラの注文を満たすべくモジュラ床被覆材に切断するために第2の長さの本願の床被覆材製品を引っ張るかもしれない。いずれの注文種類でも、クッション層は切断及び/又は輸送の前に組み込まれてもよく、最終製品は住居用又は業務用環境で使用され得る。製造業者にこれほどの生産の柔軟性を提供しつつ、同時に最終製品の性能及び安定性の要件を満たすとともに広幅及びモジュラ製品の製造費用を低減する利用可能な床被覆材は、他にはない。
【0204】
以下は、上述の様々な発明のいくつかの代替的な説明である。
【0205】
表面及びその表面と反対の裏面を有する一次バッキング基材と、一次バッキング基材を貫通してタフトされた複数のヤーンとを備え、各ヤーンの一部は一次バッキング基材の裏面に位置するステッチを形成するタフテッド基布と;接着剤組成物と複数の繊維とを含み、繊維は接着剤組成物により包まれて一次バッキング基材の裏面に繊維強化層を形成する、強化層と;を備え、各ヤーンのステッチ部分には接着剤組成物が浸透している、寸法安定性のある織物床被覆材。前述の床被覆材において、繊維は強化層全体に分散されている。前述の床被覆材において、繊維は強化層の接着剤組成物内に連続的な層を形成する。前述の床被覆材において、繊維は強化層の接着剤組成物内に機械方向に整列される。前述の床被覆材において、一次バッキング基材は織成された基材を備え、この織成された基材は、ポリプロピレン、ポリエステル、及びナイロンからなる群から選択されたヤーンを備える。前述の床被覆材において、一次バッキング基材は可溶性の基材を備える。前述の床被覆材において、ヤーンは、ナイロン、ポリエステル、及びアクリルからなる群から選択される。前述の床被覆材において、ヤーンのステッチ部分は、各ステッチ部分の大部分が一次バッキング基材の裏面と接触するように、平らにされる。(
図11乃至14)前述の床被覆材において、接着剤組成物はホットメルト化合物又は水性の化合物である。前述の床被覆材において、接着剤組成物はポリウレタン又はポリ塩化ビニルである。前述の床被覆材において、接着剤組成物は、温水又は蒸気中で水溶性であり、ポリビニルアルコール、ポリエステル、及び澱粉のうちいずれか1つを備える。前述の床被覆材において、強化繊維は、ガラス繊維、合成繊維、及び天然繊維からなる群から選択される。前述の床被覆材において、強化繊維は、寸法Eの直径及び約0.25インチの長さを有するガラス繊維である。前述の床被覆材はさらに、強化層に貼り付けられた追加バッキング層を備えている。(
図12,13,14)前述の床被覆材において、追加バッキング層は、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ラテックス、及びホットメルト化合物からなる群から選択された材料を備える。前述の床被覆材において、追加バッキング層はクッション材料を備える。(
図13)前述の床被覆材において、床被覆材は広幅カーペットである。前述の床被覆材において、床被覆材は、12’’×12’’乃至6’×12’の範囲の寸法を有するモジュラカーペットであり、床被覆材は巻くことができるほど十分に柔軟である。前述の床被覆材において、モジュラカーペットは、カーペットタイル、エリアラグ、ランナー、又は階段用の床被覆材である。
【0206】
寸法安定性のある床被覆材の設置方法であって、(a)表面及びその表面と反対の裏面を有する一次バッキング基材と、一次バッキング基材を貫通してタフトされた複数のヤーンとを備え、各ヤーンの一部は一次バッキング基材の裏面に位置するステッチを形成する、タフテッド基布と;接着剤組成物及び複数の繊維を含み、繊維は接着剤組成物により包まれて一次バッキング基材の裏面に繊維強化接着剤層を形成し、各ヤーンのステッチ部分には接着剤組成物が浸透した、強化層と、を備えた寸法安定性のある床被覆材を提供することと;(b)床被覆材が設置される部屋の寸法に適合するように床被覆材を測定することと;(c)部屋の寸法に適合するように床被覆材を切断することと;(d)床被覆材を部屋に敷くことと、を備える方法。前述の方法は、部屋の周囲に隣接してタックストリップを設置することと;床被覆材の切断端をタックストリップに取り付けることと、をさらに備える。前述の方法は、感圧性接着剤を部屋の中の床に塗布することをさらに備える。前述の方法において、感圧性接着剤は格子状に塗布される。前述の方法は、床被覆材を敷く前に、部屋の床の上にクッションを配設することをさらに備える。前述の方法において、床被覆材は引き伸ばされていない広幅床被覆材である。前述の方法において、床被覆材はモジュラ床被覆材である。前述の方法は、クッションを床の上に配設する前に、クッションをタイルに切り分けることをさらに備える。前述の方法において、床被覆材は、クッションタイルよりも大きな寸法を有するモジュラパネルである。
【0207】
床被覆材のリサイクル方法であって、床被覆材は、表面及びその表面と反対の裏面を有する一次バッキング基材と、一次バッキング基材を貫通してタフトされた複数のヤーンとを備え、各ヤーンの一部は一次バッキング基材の裏面に位置するステッチを形成する、タフテッド基布と;温水可溶性の接着剤組成物及び複数の繊維を含み、繊維は接着剤組成物により包まれて一次バッキング基材の裏面に繊維強化層を形成し、各ヤーンのステッチ部分には接着剤組成物が浸透した、強化層と、を備え、方法は:(a)床被覆材が蒸気にさらされる蒸気チャンバを通って床被覆材を搬送することと;(b)複数の蒸気ノズルから床被覆材の強化層に高圧蒸気流を向けることにより、温水可溶性の接着剤組成物を溶解させることと;(c)接着剤組成物を完全に溶解させるために必要に応じてステップ(a)及び(b)を繰り返すことと;(d)溶解された接着剤組成物を集めることと、を備える、方法。前述の方法において、蒸気チャンバを通って床被覆材を運搬することは、床被覆材を、強化層が搬送ベルトと接触するように、目の粗いメッシュ搬送ベルトの上に配置することを備える。前述の方法は、蒸気チャンバ内の蒸気に界面活性剤を導入することをさらに備える。前述の方法は、溶解された接着剤組成物とともに強化繊維を集めることをさらに備える。前述の方法は、溶解された接着剤組成物を再利用することをさらに備える。前述の方法は、溶解された接着剤組成物を遮蔽して強化繊維を分離することをさらに備える。前述の方法は、タフテッド基布を切り刻み、ペレット化し、押出成形することをさらに備える。前述の方法は、タフテッド基布を粉砕することをさらに備える。前述の方法は、タフテッド基布の表面からヤーンを切り取り、切り取られたヤーンをバージンな基布のための接着剤組成物に組み込むことをさらに備える。