【実施例】
【0089】
実施例
実施例1
本実施例は、ヒト対象における本開示のエジェクタ装置を用いた臨床拡張試験に関する。本実施例は、本開示のエジェクタ装置により、指向性液滴流での低投与量の医薬組成物を送達することによって、点眼器の投与量の1/4を用いるだけで、標準的な点眼器と同等の拡張が示されることを実証する。
【0090】
材料及び方法
本試験の第1の治療群では、35人の対象の片方の眼に、エジェクタ装置から、3.0 μlの用量の2.5%フェニレフリンを2回、3.0 μlの用量の1%トロピカミドを2回投与し、また、他方の眼に、標準的な点眼器から、2.5%フェニレフリンを1回(およそ26 μl)、1%トロピカミドを1回(およそ26 μl)投与する。本試験の第2の治療群では、35人の対象の片方の眼に、エジェクタ装置から、6 μlの用量の2.5%フェニレフリンを1回、6 μlの用量の1%トロピカミドを1回投与し、また、他方の眼に、標準的な点眼器から、2.5%フェニレフリンを1回、1%トロピカミドを1回投与する。本試験の第3の治療群では、35人の対象の片方の眼に、エジェクタ装置から、1.5 μlの用量の2.5%フェニレフリンを1回、1.5 μlの用量の1%トロピカミドを1回投与し、また、他方の眼に、標準的な点眼器から、2.5%フェニレフリンを1回、1%トロピカミドを1回投与する。
【0091】
点眼器からの1滴の2.5%フェニレフリンに対する、エジェクタ装置によって送達される1.5 μlの投与量を1回、又は6 μlの投与量を1回、又は3 μlの投与量を2回という3つの異なる投与量の有効性を、点眼器からの1滴の1%トロピカミドに対する、エジェクタ装置によって送達される1.5 μlの投与量の1%トロピカミドを1回、又は6 μlの投与量を1回、又は3 μlの投与量の投与量を2回とともに、処置前基準線に対する投与後10分、20分及び60分における対象の瞳孔拡張の増加率を測定することによって評価する。
【0092】
結果
図15Aは、従来の点眼器の投与と比較した、本開示の噴霧エジェクタ装置による送達における処置前基準線からの測定された平均拡張変化率を示している。
図15Bは、点眼器と比較した、噴霧エジェクタ装置における投与前拡張基準線に対する平均拡張相違率を示している。相違は、対象に特定して算出し、そして、平均される。
【0093】
考察
図15Aは、エジェクタ装置(例えば、低投与量の医薬組成物の指向性液滴流)と、標準的な点眼器の双方によって送達された拡張薬剤によって、実質的に対象の眼を拡張させ、また、投与後、時間が経過するほど、60分の最大投与後測定点まで、単調に平均拡張度が増加することを示している。
【0094】
図15Bは、エジェクタ装置からの1.5 μlによる1回の投与が、点眼器からの1回の液滴と統計的に等しい拡張度を達成せず(p値(両側検定)(2-tailed p-values)0.001未満と同等)、エジェクタ装置からの6 μlによる1回の投与のすべて、及び3 μlによる2回の投与の3つのうちの2つが、点眼器と統計的に等しい拡張度を達成した(6 μlによる1回投与のp値(両側検定)がすべて0.20超;10分及び60分における3 μlによる2回投与のp値(両側検定)がそれぞれ、0.17及び0.10である。)ことを示している。さらに、3 μlによる2回の投与は、投与後20分において、エジェクタ装置が、点眼器よりも統計的に有意に高い平均拡張を達成した事例であった(p値(両側検定)=0.05)。
【0095】
実施例2
本実施例は、眼圧(IOP)に対するラタノプロストの効果を評価するための、緑内障のビーグル犬を用いた臨床試験に関する。具体的には、本試験は、未処置の眼と比較した、本開示の噴霧エジェクタ装置による1.5 μlの0.005%ラタノプロストの1日1回の滴下後におけるIOP及び瞳孔径(PD)の減少について評価する。
【0096】
材料及び方法
フロリダ大学の緑内障ビーグル犬のマッケイコロニー(MacKay Colony)から、1匹の緑内障ビーグル犬(雌、3歳)を、本試験に選択した。試験を開始する前に、動物を最低1週間休ませた。試験開始前に、動物の片方の眼を、1.5 μlの0.005%ラタノプロストを投与するように割り当て、反対側の眼を、対照として未処置のままにするように割り当てた。基本的な測定プロトコルに常に従い、同じ操作者によって行なった。PDを、ジェイムソンキャリパー(Jameson Caliper)(mm水平)によって測定した。IOPを、清浄なプローブ(iCare)を備えたTonoVet機器を用いて測定した。IOP及びPDを、0、1、2、4、7及び18時間の時点において、2日間、毎日測定した。0時間の時点での測定直後に、噴霧装置を用いて、動物の割り当てられた眼に1.5 μlの0.005%ラタノプロストを投与した。反対側の眼は、未処置のままにした。噴霧装置の精度をすべての使用前後に確認し、処置前に10%の送達用量の精度が必要であった。標準測定を、1、2、4、7及び18時間の時点において、毎日、継続した。考えられ得るエンドポイントには、過度の眼刺激、眼の損傷、及びその他の疾患又は創傷が含まれていたが、これらに限定されなかった。統計交差は、本試験に利用しなかった。
【0097】
結果
処置された眼のIOPは、2時間で、11 mmHgまで減少し、初期値から最大16 mmHg減少した(
図16A)。PDは、1時間で極小まで(0)減少し、7時間まで維持された(
図16B)。
【0098】
考察
Whisper(商標)MDD装置によって送達される1.5 μlの用量の0.005%ラタノプロストは、従来の治療法と同様に、IOPの低下及び瞳孔の収縮において有効であることを示した。本試験は、噴霧エジェクタ装置が、1.5 μlの用量のラタノプロストを常に送達できることを確認する。
【0099】
実施例3
本実施例は、眼圧(IOP)に対するラタノプロストの効果を評価するための、緑内障のビーグル犬を用いた臨床試験に関する。具体的には、本試験は、未処置の眼と比較した、本開示の噴霧エジェクタ装置による3.0 μlの0.005%ラタノプロストの1日1回の滴下後におけるIOP及び瞳孔径(PD)の減少について評価する。
【0100】
材料及び方法
フロリダ大学の緑内障ビーグル犬のマッケイコロニーから、1匹の緑内障ビーグル犬(雌、3歳)を、本試験に選択した。試験開始前に、動物の片方の眼を、3.0 μlの0.005%ラタノプロストを投与するように割り当て、反対側の眼を、対照として未処置のままにするように割り当てた。基本的な測定プロトコルに常に従い、同じ操作者によって行なった。PDを、ジェイムソンキャリパー(mm水平)によって測定した。IOPを、清浄なプローブ(iCare)を備えたTonoVet機器を用いて測定した。IOP及びPDを、0、1、2、4、7及び18時間の時点において、2日間、毎日測定した。0時間の時点での測定直後に、噴霧エジェクタ装置を用いて、動物の割り当てられた眼に3.0 μlの0.005%ラタノプロストを投与した。反対側の眼は、未処置のままにした。噴霧エジェクタ装置の精度をすべての使用前後に確認し、処置前に10%の送達用量の精度が必要であった。標準測定を、1、2、4、7及び18時間の時点において、毎日、継続した。考えられ得るエンドポイントには、過度の眼刺激、眼の損傷、及びその他の疾患又は創傷が含まれていたが、これらに限定されなかった。統計交差は、本試験に利用しなかった。
【0101】
結果
処置された眼のIOPは、2時間で、19 mmHgまで減少し、初期値から12 mmHg減少した(
図17A)。最大の減少は、第2日目の7時間においてみられた。PDは、1時間で極小まで(0)減少し、7時間まで維持された(
図17B)。
【0102】
考察
結果は、1.5 μlの用量の0.005%ラタノプロストとともに、3.0 μlの用量が、従来の治療法と同様に、IOPの低下及び瞳孔の収縮において有効であることを示す。本試験は、噴霧エジェクタ装置が、3.0 μlの用量のラタノプロストを常に送達できることを確認する。
【0103】
実施例4
本実施例は、眼圧(IOP)に対するラタノプロストの効果を評価するための、緑内障のビーグル犬を用いた臨床試験に関する。具体的には、本試験は、従来の点眼器による1日1回送達された26 μlのラタノプロストの平均と比較した、本開示の噴霧エジェクタ装置による9 μlのラタノプロストの1日1回の眼圧(IOP)に対する効果について評価する。
【0104】
材料及び方法
フロリダ大学の緑内障ビーグル犬のマッケイコロニーから、6匹の緑内障ビーグル犬(4匹の雄及び2匹の雌、3〜8歳)を、本試験に選択した。包含される条件には、専門動物眼科医(boarded veterinary ophthalmologist)の肉眼による検査によって判断される、IOPの上昇及び緑内障の症状の文書化が含まれていた。
【0105】
試験を開始する前に、すべての動物を最低1週間休ませた。IOP及び瞳孔径(PD)を、初期基準線レベルを確立するために、4日間(試験第1〜4日)、毎日、5回(0、1、2、4及び7時間)測定した。基本的な測定プロトコルに常に従い、同じ操作者によって行なった。PDを、ジェイムソンキャリパー(mm水平)によって測定した。IOPを、清浄なプローブ(iCare)を備えたTonoVet機器を用いて測定した。3日の休息後、片方の眼を、噴霧エジェクタ装置の送達によって9 μlの0.005%ラタノプロストを投与するように無作為に割り当て、反対側の眼に、従来の点眼容器(26〜30 μl)から従来のラタノプロストを投与した。
【0106】
試験第5〜9日目に、IOP及びPD測定を、およそ0900時間(0時間の時点)で行なった。0時間の時点での測定直後に、噴霧エジェクタ装置によって、それぞれの動物の割り当てられた眼に9 μlの用量の一般的な0.005%ラタノプロストを1日1回投与した。反対側の眼に、従来の点眼器から、同一の市販局所用薬剤の臨床用量(1滴)を投与した(ポジティブコントロール)。噴霧エジェクタ装置の精度をすべての使用前後に確認し、処置前に10%の送達用量の精度が必要であった。標準測定を、0、1、2、4及び7時間の時点において、毎日、継続した。考えられ得るエンドポイントには、過度の眼刺激、眼の損傷、及びその他の疾患又は創傷が含まれていたが、これらに限定されなかった。統計交差は、本試験に利用しなかった。
【0107】
結果
噴霧エジェクタ装置及び一般的な点眼器の処置の結果は同様であった。9 μlの用量は、従来の治療法と同様に、IOPの低下及び瞳孔の収縮において有効であった。点眼器投与の作用持続性は大きかったが、噴霧エジェクタ装置による治療は、IOPの基準線よりも有意に低い値を維持していた(
図18A及び18B)。噴霧エジェクタ装置を用いて処置された眼の刺激は、点眼器によって処置された眼で観察されたものよりも少なかった。
【0108】
考察
噴霧エジェクタ装置を介した1日1回午前中投与による、9 μlの0.005%ラタノプロスト投与は、7時間の試験期間で5日間にわたって、一般的な点眼器の用量のおよそ1/3で、従来の点眼器による治療法と同様に、IOPの制御において有効であった。薬力学(PD)試験は、実施例12の薬物動態(PK)試験のコンパニオン試験(companion study)であり、実施例12は、噴霧エジェクタ装置による9 μlのラタノプロストの送達後における眼房水中のラタノプロストの酸のバイオアベイラビリティを、点眼器によって送達される26 μlのラタノプロストと比較している。
【0109】
実施例5
本実施例は、眼圧(IOP)に対するラタノプロストの効果を評価するための、緑内障のビーグル犬を用いた臨床試験に関する。具体的には、本試験は、6匹の緑内障ビーグル犬での並行無作為化交差試験のIOP低下における噴霧エジェクタ装置による低用量ラタノプロストの効果について評価する。試験時に、標準的な点眼器から1滴(およそ24 μl)として送達する場合に対する、本開示のエジェクタ装置を用いてラタノプロストを(例えば、低投与量の指向性液滴流として)6 μlの用量で2回送達する場合の緑内障ビーグル犬のIPOを測定する。
【0110】
材料及び方法
フロリダ大学(UF)のマッケイ緑内障ビーグル犬コロニーから、6匹の緑内障動物(4匹の雄及び2匹の雌、3〜8歳)を、本試験に選択した。包含される条件には、専門動物眼科医の肉眼による検査によって判断される、眼圧(IOP)の上昇及び緑内障の症状の文書化が含まれていた。
【0111】
試験を開始する前に、すべての動物を最低1週間休ませる。眼圧(IOP)、瞳孔径(PD)及び心拍数(HR)を、初期基準線レベル(試験第1〜5日)を確立するために、5日間、毎日、6回(0、0:30、0:45、1、2、7時間)測定する。基本的な測定プロトコルに常に従い、同じ操作者によって行なう。PDを、ジェイムソンキャリパー(mm水平)によって測定する。IOPを、清浄なプローブ(iCare)を備えたTonoVet機器を用いて測定する。HRを、大腿血管の触診によってモニタリングする。
2日の休息後、片方の眼を、噴霧エジェクタ装置の送達によって薬剤を投与するように無作為に割り当て、反対側の眼に、点眼容器から従来のラタノプロストを投与する。
【0112】
活性薬剤送達を、試験第8日目から開始する。5日間、IOP及びPDの測定を0900で行なう。0900の測定直後(0時間の時点)に、エジェクタ装置によって、それぞれの動物の割り当てられた眼に6 μlの一般的なラタノプロストを投与し、続いて、(結膜嚢の過負荷を回避するために)3分後に、2回目の追加の6 μlの投与をする。反対側の眼に、FDA承認容器から、同一の市販局所用薬剤の臨床用量(1滴)を投与する(ポジティブコントロール)。エジェクタ装置の精度をすべての使用前後に確認する(表1)。標準測定を、毎日(0:30、0:45、1、2、7時間)、継続する。考えられ得るエンドポイントには、過度の眼刺激、眼の損傷、及びその他の疾患又は創傷が含まれているが、これらに限定されない。
【0113】
【表1】
【0114】
休息から7日後、試験第22日目に開始し、処置を繰り返すが、唯一の変更点は、統計的管理のための反対側の眼の使用である。最初に割り当てられた薬剤によるすべての眼をポジティブコントロールとして用い、FDA承認点眼容器から、同一の市販局所用薬剤の臨床用量(1滴)を投与する。反対側の割り当てられた眼に6 μlの一般的なラタノプロストを投与し、続いて、3分後に、2回目の追加の6 μlの投与し、全12 μlのラタノプロストを投与する。
【0115】
結果
図19A〜19Cは、エジェクタ装置が、従来の点眼器を用いて得られたものと概して一致することを示している。試験時のIOP圧を
図19Aに示し、試験時のIOPの変化を
図19Bに示し、そして、試験時の瞳孔径を
図19Cに示している。
【0116】
エジェクタ装置(例えば、低投与量の医薬組成物の指向性液滴流)と従来の点眼器によるラタノプロスト処置はともに、IOPを減少させ、虹彩の縮瞳を生じた。エジェクタ装置によるIOPの変化は、第1日目の0:45の時点で、基準線から有意に異なっていた。最初の7時間におけるIOPの最大変化は、−34.8 mmHg(69%)であった。従来の処置も同様に、0:45の時点でIOPの有意性を示した。従来の処置において、最初の7時間におけるIOPの最大変化は、−38.0 mmHg(72%)であった。IOPに対するエジェクタ装置による処置と従来の処置との間には有意差はなかった。
【0117】
有意な瞳孔径の変化は、第1日目の0:30の時点で、エジェクタ装置による処置でみられた。虹彩は、1時間で極小の状態(最大縮瞳)に達し、残りのモニタリング7時間まで維持された。有意な瞳孔径の変化は、0:30の時点で従来のラタノプロスト処置でみられた。虹彩は、1時間で極小の状態に達し、残りのモニタリング7時間まで維持された。
【0118】
本試験において、心拍数の変化はなく、その平均値は、およそ25拍/15秒(100 bpm)であった。過度の眼刺激又はその他の眼の問題についての報告はなかった。一部の結膜刺激が、プロスタグランジンの使用に関連して、従来の処置による眼で認められた。
【0119】
考察
要約すると、1日1回滴下した場合に、低投与量の0.005%ラタノプロストは、標準的な点眼器に相応して、有意に緑内障ビーグルのIOPを低下させる。IOPの低下は、約20 mmHg(45%)から27 mmHg(60%)まで変動した。結果は、たとえ、本開示のエジェクタ装置によって送達される2回の6 μlの用量が、標準的な点眼器によって送達される量のおよそ1/2であっても、(例えば、低投与量の指向性液滴流として)本開示のエジェクタ装置によって達成されたイヌのIOPの低下が、低投与量の標準的な点眼器によるものと統計的に区別できないことを示す。
【0120】
実施例6
本実施例は、眼圧(IOP)に対するラタノプロストの効果を評価するための、緑内障のビーグル犬を用いた臨床試験に関する。具体的には、本試験は、従来の点眼器による1日1回およそ26〜30 μlの滴下と比較した、本開示の噴霧エジェクタ装置による1日1回30 μlの0.005%ラタノプロストの滴下の眼圧(IOP)に対する効果について評価する。
【0121】
材料及び方法
フロリダ大学の緑内障ビーグル犬のマッケイコロニーから、2匹の緑内障ビーグル犬(2匹の雌、3〜8歳)を、本試験に選択した。試験を開始する前に、両方の動物を最低1週間休ませた。試験開始前に、それぞれの動物の片方の眼を、噴霧エジェクタ装置による送達によって30 μlの0.005%ラタノプロストを投与するか、又は、もう片方の眼に、0.005%ラタノプロストを1滴投与するように割り当てた。基本的な測定プロトコルに常に従い、同じ操作者によって行なった。IOPを、清浄なプローブ(iCare)を備えたTonoVet機器を用いて、0、1、2、4及び7時間の時点において、2日間、毎日測定した。0時間の時点での測定直後に、噴霧エジェクタ装置を用いて、それぞれの動物の割り当てられた眼に30 μlの用量の0.005%ラタノプロストを投与した。反対側の眼に、従来の点眼器から、同一の市販局所用薬剤の臨床用量(1滴)を投与した(ポジティブコントロール)。噴霧エジェクタ装置の精度をすべての使用前後に確認し、処置前に10%の送達用量の精度が必要であった。標準測定を、1、2、4及び7時間の時点において、毎日、継続した。考えられ得るエンドポイントには、過度の眼刺激、眼の損傷、及びその他の疾患又は創傷が含まれていたが、これらに限定されなかった。統計交差は、本試験に利用しなかった。
【0122】
結果
噴霧エジェクタ装置及び点眼器によって処置された動物のIOPの低下は、同様であった(
図20)。噴霧エジェクタ装置による送達される30 μlの用量は、従来の点眼器による治療法と同様に、IOPの低下及び瞳孔の収縮において有効であった。
【0123】
考察
結果は、噴霧エジェクタ装置が、30 μlの用量の0.005%ラタノプロストを送達できることを確認する。本パイロット試験において、噴霧エジェクタ装置による薬剤送達は、従来の点眼器による治療法と同様に、IOPを制御するのに有効であり、作用持続性が増加する傾向にあることが実証された。本試験は、この一連の試験において1.5 μl〜30 μlである、プロスタグランジンプロドラッグ送達の有効投与量範囲を遂行する。
【0124】
実施例7
本実施例は、眼圧(IOP)に対するトラボプロストの効果を評価するための、緑内障のビーグル犬を用いた無作為化交差臨床試験に関する。具体的には、本試験は、本開示の噴霧エジェクタ装置によって送達される9 μlの用量の0.004%トラボプロスト(Travatan Z(登録商標)、Alcon Laboratories社(Fort Worth, TX USA)製)の有効性について、24時間眼圧(IOP)用量/応答曲線の抑制及び平低化、並びに午前中の眼圧(IOP)スパイクの制御において、マイクロピペットによる送達と比較する。また、本試験は、噴霧エジェクタ装置の有効性について、IOP及び眼の刺激をモニタリングすることによっても、標準的なマイクロピペットと比較する。
【0125】
本開示の噴霧エジェクタ装置及び方法の開発前に、治験及び市販プロスタグランジンアゴニストを、およそ26 μlの量で点眼器によって送達した。防腐剤に耐性のない患者、又は眼表面疾患(OSD)患者は、調剤された防腐剤を含まない薬剤の点眼器と同等の用量を用い、単回投与ピペットを用いて治療されている。本方法は、安全性及び使いやすさについての問題を伴う。近年、点眼器と同等の用量を単回投与送達する、防腐剤を含まないIOP低下剤は、無菌ブローフィル(blow-fill)ピペットで販売されている。しかしながら、眼の創傷及び有用性についての問題は依然としてある。
【0126】
本開示の噴霧エジェクタ装置によって低用量で送達される薬剤については、用量当たりの防腐剤の暴露を低減することができ、1日1回の投与によって、防腐剤により誘発される眼の刺激が更に低減される。
【0127】
材料及び方法
フロリダ大学の緑内障ビーグル犬のマッケイコロニーから、6匹の緑内障ビーグル犬(3匹の雄及び3匹の雌、3〜8歳)を、本試験に選択した。包含される条件には、専門動物眼科医の肉眼による検査によって判断される、IOPの上昇及び緑内障の症状の文書化が含まれていた。
【0128】
試験を開始する前に、すべての動物を最低1週間休ませた。眼圧(IOP)、瞳孔径(PD)及び心拍数(HR)を、初期基準線レベル(試験第1〜5日)を確立するために、およそ2100時間から開始して5日間、毎日、0、12、13、14、16及び19時間の時点で測定した。基本的な測定プロトコルに常に従い、同じ訓練された操作者によって行なった。PDを、ジェイムソンキャリパー(mm水平)によって測定した。IOPを、清浄なプローブ(iCare)を備えたTonoVet機器を用いて測定した。HRを、大腿血管の触診によってモニタリングした。2日の休息後、それぞれの動物の片方の眼を、噴霧エジェクタ装置の送達によって9μlの0.004%トラボプロストを投与するように無作為に割り当て、反対側の眼を、マイクロピペットによって同一の用量で処置するように割り当てた。
【0129】
活性薬剤送達を、試験第8日目に開始した。5日間、IOP及びPDの測定をおよそ2100時間で行なった。この測定の直後(0時間の時点)に、噴霧エジェクタ装置によって、それぞれの動物の割り当てられた眼に9.0±0.9μlの0.004%トラボプロスト(Travatan Z(登録商標)、Alcon Laboratories社(Fort Worth, TX USA)製)を投与した。反対側の眼に、マイクロピペットによって、同一の用量(9.0 μl)の同一の薬剤(ポジティブコントロール)を投与した。噴霧エジェクタ装置及びマイクロピペットの精度をすべての使用前後に確認した。標準測定を、12、13、14、16、19時間において、毎日、継続した。考えられ得るエンドポイントには、過度の眼刺激、眼の損傷、及びその他の疾患又は創傷が含まれていたが、これらに限定されなかった。
【0130】
休息から7日後、試験第22日目に開始し、統計的管理のために反対側の眼を用いたこと以外は、上述したように処置を繰り返した。最初に割り当てられた薬剤によるすべての眼をポジティブコントロールとして用い、マイクロピペットによって、9μlの0.004%トラボプロストを投与した。噴霧エジェクタ装置によって、反対側の眼に、9μlの0.004%トラボプロストを投与した。
【0131】
結果
噴霧エジェクタ装置によって、試験第1日目の12時間の時点において、基準線からIOPが有意に変化した。最初の24時間におけるIOPの最大変化は、−20.0mmHg(59%)であった。第1日目の初期平均IOPレベルは33.75mmHgであり、5日間の処置後、観察された最も高い日平均ピークは18.83mmHgであり、これは、同様の基準線レベルの30.83mmHgを下回っていた(
図21A)。試験第1日目の12時間の時点において、噴霧エジェクタ装置処置によって有意なPD変化がみられた。虹彩は、12時間の時点において最大の縮瞳(1.17mm)に達し、モニタリングの残りの時間にわたって、基準線レベルに上昇し始めた(
図21B)。本試験において、HRの変化はなく、その平均値は、25拍/15秒(100bpm)であった。過度の眼刺激又はその他の眼の問題についての報告はなかった。
【0132】
噴霧エジェクタ装置及びマイクロピペットはともに十分に機能した。試験において、処置間に統計的な有意差は認められなかった(p=0.7546)。このことは、送達方法に関係なく、低用量でのトラボプロストの有効性を実証する。ただし、送達方法に関する問題については留意されるべきである。両方の処置方法は、同様のレベルの全体的刺激を示した。
【0133】
考察
トラボプロストは、毎日24時間、IOPを低下させるために検討したプロスタグランジンアゴニストの中で最も有効であり、プロスタグランジンプロドラッグによる処置で多くみられた午前中のIOPスパイクの優れた制御を含む。
【0134】
実施例8
本実施例は、眼圧(IOP)に対するトラボプロストの効果を評価するための、緑内障のビーグル犬を用いた無作為化交差臨床試験に関する。具体的には、本試験は、本開示の噴霧エジェクタ装置による18μlの0.004%トラボプロストの1日1回午前中又は午後の滴下後の眼圧(IOP)に対する効果について、従来の点眼器による1日1回平均26μlの送達と比較して、評価する。
【0135】
材料及び方法
フロリダ大学の緑内障ビーグル犬のマッケイコロニーから、6匹の緑内障ビーグル犬(4匹の雄及び2匹の雌、3〜8歳)を、本試験に選択した。包含される条件には、専門動物眼科医の肉眼による検査によって判断される、眼圧(IOP)の上昇及び緑内障の症状の文書化が含まれていた。
【0136】
試験を開始する前に、すべての動物を最低1週間休ませた。IOP及び瞳孔径(PD)を、初期基準線レベルを確立するために、4日間(試験第1〜4日)、毎日、0、1、2、4、7及び12時間の時点で測定した。基本的な測定プロトコルに常に従い、同じ操作者によって行なった。PDを、ジェイムソンキャリパー(mm水平)によって測定した。IOPを、清浄なプローブ(iCare)を備えたTonoVet機器を用いて測定した。3日の休息後、片方の眼を、噴霧エジェクタ装置の送達によって9μlで2回、18μlのトラボプロストを投与するように無作為に割り当て、反対側の眼に、従来の点眼容器からトラボプロストの用量(平均26 μl)を投与した。
【0137】
試験第5日目及び6日目において、IOP及びPDの測定をおよそ0900時間で行なった。この測定の直後(0時間の時点)に、噴霧エジェクタ装置によって、それぞれの動物の割り当てられた眼に18μlのトラボプロストを投与した。反対側の眼に、従来の点眼器から、同一の市販局所用薬剤の臨床用量(1滴)を投与した(ポジティブコントロール)。噴霧エジェクタ装置の精度をすべての使用前後に確認し、処置前に10%の送達用量の精度が必要であった。標準測定を、0、1、2、4、7及び12時間の時点において、毎日、継続した。
【0138】
試験第7〜9日目において、測定12時間の時点の直後(およそ2100時間)に、噴霧エジェクタ装置によって、それぞれの動物の割り当てられた眼に18μlのトラボプロストを投与した。反対側の眼に、従来の点眼器から、同一の市販局所用薬剤の臨床用量(1滴)を投与した(ポジティブコントロール)。噴霧エジェクタ装置の精度をすべての使用前後に確認し、処置前に10%の送達用量の精度が必要であった。標準測定を、0、1、2、4、7及び12時間の時点において、毎日、継続した。考えられ得るエンドポイントには、過度の眼刺激、眼の損傷、及びその他の疾患又は創傷が含まれていたが、これらに限定されなかった。統計交差は、本試験に利用しなかった。
【0139】
結果
噴霧エジェクタ装置及び従来の点眼器の結果は同様であった。噴霧エジェクタ装置よって送達される18μlの投与量は、従来の治療法と同様に、IOPの低下及び瞳孔の収縮において有効であった。点眼器と比較して、噴霧エジェクタ装置による薬剤送達後のIOPの低下の持続性に有意差はなかった。両方の処置は、試験期間において、全24時間の基準線よりもはるかに低いIOP値を維持していた(
図22A〜22D)。噴霧エジェクタ装置を用いて処置された眼の刺激は、点眼器によって処置された眼で観察されたものよりも少なかった。
【0140】
考察
噴霧エジェクタ装置による18μlの午前中又は午後用量のトラボプロストの送達は、点眼器平均送達用量(26μl)のおよそ2/3であっても、従来の治療法と同様に、IOPの制御に有効である。処置後のIOPは、常に20mmHg未満を維持していた。IOP及びこの一連の先行試験における日変化の効果を含む数学モデルに基づき、トラボプロストの1日1回午後投与によって、最大24時間のIOP低下が提供される必要がある。噴霧エジェクタ装置による眼の刺激が認められないことは、プロスタグランジンプロドラッグ感受性患者、随伴性眼疾患患者、及び最適な制御を必要とする重度の緑内障患者におけるその用途を示すものである。
【0141】
実施例9
本実施例は、眼圧(IOP)に対するビマトプロストの効果を評価するための、緑内障のビーグル犬を用いた臨床試験に関する。具体的には、本試験は、本開示の噴霧エジェクタ装置による6 μlの0.03%ビマトプロスト(Lumigan(登録商標);Allergan社(Irvine, CA USA)製)の1日1回午前中滴下の眼圧(IOP)及び瞳孔径(PD)に対する効果について、従来の点眼器による1日1回平均26μlの送達と比較して、評価する。
【0142】
材料及び方法
フロリダ大学の緑内障ビーグル犬のマッケイコロニーから、6匹の緑内障ビーグル犬(4匹の雄及び2匹の雌、3〜8歳)を、本試験に選択した。包含される条件には、専門動物眼科医の肉眼による検査によって判断される、IOPの上昇及び緑内障の症状の文書化が含まれていた。
【0143】
試験を開始する前に、すべての動物を最低1週間休ませた。IOP及びPDを、初期基準線レベルを確立するために、4日間(試験第1〜4日)、毎日、0、1、2、4及び7時間の時点で測定した。基本的な測定プロトコルに常に従い、同じ操作者によって行なった。PDを、ジェイムソンキャリパー(mm水平)によって測定した。IOPを、清浄なプローブ(iCare)を備えたTonoVet機器を用いて測定した。3日の休息後、片方の眼を、噴霧エジェクタ装置の送達によって6μlの0.03%ビマトプロストを投与するように無作為に割り当て、反対側の眼を、従来の点眼容器から従来のビマトプロスト(26〜30μl)を投与するように割り当てた。
【0144】
試験第5〜9日目において、IOP及びPDの測定をおよそ0900時間(0時間の時点)で行なった。これらの測定の直後に、噴霧エジェクタ装置によって、それぞれの動物の割り当てられた眼に6 μlの0.03%ビマトプロストを投与した。反対側の眼に、従来の点眼器から、同一の市販局所用薬剤の臨床用量(1滴)を投与した(ポジティブコントロール)。噴霧エジェクタ装置の精度をすべての使用前後に確認し、処置前に10%の送達用量の精度が必要であった。標準測定を、0、1、2、4及び7時間の時点において、毎日、継続した。考えられ得るエンドポイントには、過度の眼刺激、眼の損傷、及びその他の疾患又は創傷が含まれていたが、これらに限定されなかった。統計交差は、本試験に利用しなかった。
【0145】
結果
噴霧エジェクタ装置及び従来の点眼器の結果は同様であった。6μlの用量は、従来の治療法と同様に、IOPの低下及び瞳孔の収縮において有効であった。点眼器によって投与される用量の持続性は大きかったが、噴霧エジェクタ装置による治療は、基準線よりも低いIOP値を維持していた(
図23A〜23B)。噴霧エジェクタ装置を用いて処置された眼でみられた刺激は、点眼器によって処置された眼よりも顕著に少なかった。
【0146】
考察
噴霧エジェクタ装置による6μlの0.3%ビマトプロストの1日1回午前中の送達は、26μlの点眼器平均用量のおよそ1/4未満であっても、従来の治療法と同様に、IOPの制御に有効である。試験時に眼の刺激のないことが認められた。
【0147】
実施例10
本実施例は、標準的な点眼器と比較した、濃度を変更させた有効成分を含む低投与量の医薬組成物によって達成されるIOPの減少を評価するための、緑内障のビーグル犬を用いた臨床試験に関する。具体的には、本試験は、6匹の緑内障ビーグル犬での並行無作為化交差試験のIOP低下における噴霧エジェクタ装置によって送達される低用量高濃度ラタノプロストについての有効性を評価する。
【0148】
材料及び方法
種々のレベルの遺伝性緑内障に罹患した6匹のビーグル犬を用いた。すべての動物を、フロリダ大学で飼育されている緑内障ビーグル犬の既存コロニーから入手した。3〜9歳の4匹の雄及び2匹の雌を本試験に選択した。すべてのイヌの体重は少なくとも5kgであった。馴化及び隔離は必要ではなかった。動物を、刺青、マイクロチップ及びマークによって特定した。
【0149】
試験に供する前に、イヌが健康であることを保証するために、イヌを検査した。イヌを、運動条件を達成するのに十分な大きさの屋内ドッグランに収容した。動物を、温度及び湿度などの自然環境要素に暴露させた。飼育及び衛生管理は、フロリダ大学動物ケアサービス(UF ACS)のプロトコルに従って行なった。
【0150】
イヌに、実験室用イヌ餌(Teklad Global 21%タンパク質イヌ餌)を与えた。食事の検証及び分析は、ベンダーのHarlan Tekladによって提供された。イヌに水道水を自由に与えた。水中の汚染物質の存在は認められず、地域水区域によって供給されている区域以外の区域では分析せず、US ACSプロトコルに指定されているとおりに分析を行なった。環境パラメータ(温度及び湿度)を毎日測定した。
【0151】
試験第1日目の前に、眼科検査(フルオレセインによるスリットランプ及び間接検眼法)を、それぞれの動物の眼で行なった。眼の所見を、McDonald‐Shadduck評価システムに従って評価した。眼の所見を、標準化データ収集シートを用いて記録した。肉眼観察を、眼病変を評価するDraizeスケールに従って記録した。試験第1日目の前に、基本的な無作為化に基づいて、動物に処置を割り当てた。
【0152】
Westlab薬局によって処方された6.0±0.6μlの5倍濃縮(0.025%)ラタノプロストを、噴霧エジェクタ装置を用いて、それぞれの動物の1つの無作為化された眼に滴下した。エジェクタ装置からのそれぞれ6μlの用量には、標準的な点眼器のラタノプロストの活性剤の5倍の濃度が含まれていた。改良ラタノプロストは、点眼器の標準液滴と同一量の活性剤を含有することを目的としていたが、液体のおよそ1/4の容積にすぎない。反対側の眼に、点滴器に補充された市販の一般的なラタノプロストを1滴投与した。すべての噴霧エジェクタ装置による処置を、処置前及び処置後の処置較正測定を用いて、送達精度を検証した。処置前はすべて、使用前の標的6.0μlの10%(0.6)以内であることが予測された。
【0153】
7日の休息後、眼の選択を逆にした。IOP、心拍数及び瞳孔径(PD)の測定を、予備試験及び交差試験において、0:15、0:30、0:45、1、2、4、7及び18時間に行なった。動物眼科医は、眼の副作用の証拠を得るために、試験前後において、それぞれの試験対象を評価した。
【0154】
結果
噴霧エジェクタ機構(0.025%で6.0μl)と一般的なラタノプロスト(0.005%)点眼器はともに、同様の結果であった。本試験において、いずれかの時点に、眼圧(IOP)(p=0.823)間にも、瞳孔径(PD)(p=0.943)間にも有意差はなかった。IOPは、試験の初日におよそ45.4 mmHg減少し、その後の日には、24.7mmHg減少した。PDは、毎日、1時間の時点までに極小サイズ(0mm)になると予測されるように、減少した。異常又は予期しない結果はなかった。プロスタグランジン類似体によって生じる一般的な刺激があった。
【0155】
考察
要約すると、噴霧エジェクタ装置による6.0±0.6μlの0.025%ラタノプロスト送達におけるIOP及びPDの結果は、1日1回1滴(およそ26.0±10.0μl)のラタノプロストによる従来の送達と統計的に同等である。両方の処置は、毎日滴下する場合、緑内障ビーグル犬において有意にIOPを低下させる。点眼器によって送達されるラタノプロストの濃度の5倍(5X)の、噴霧エジェクタ装置によって送達されるラタノプロストは、点眼器による投与後よりも刺激を生じなかった。噴霧エジェクタ装置による等価用量の低用量高濃度処方の使用は、用量当たり低い防腐剤量が可能になり、また、咽頭への少ない流出によって全身毒性を低減することにより、治療効果を向上させることができる。
【0156】
実施例11
本実施例は、従来の点眼器による平均26μlの1日1回滴下と比較した、噴霧エジェクタ装置による12μlのラタノプロストの12時間間隔(q12h)滴下(BID)の眼圧(IOP)に対する効果を評価する、緑内障のビーグル犬を用いた臨床試験に関する。
【0157】
本試験は、従来の点眼器によって送達される用量の50%未満である、既知の有効用量の6 μl用量の0.005%ラタノプロストを2回滴下する。6μl用量を、24時間のIOP変動を減少させることを試みて、1日1回点眼器により滴下した0.005%ラタノプロストとの並行無作為化交差比較において、噴霧装置によって12時間間隔投与した。
【0158】
材料及び方法
種々のレベルの遺伝性緑内障に罹患した4匹のビーグル犬を用いた。すべての動物を、フロリダ大学で飼育されている緑内障ビーグル犬の既存コロニーから入手した。3〜9歳の2匹の雄及び2匹の雌を本試験に選択した。すべてのイヌの体重は少なくとも5kgであった。馴化及び隔離は必要ではなかった。動物を、刺青、マイクロチップ及びマークによって特定した。
【0159】
試験第1日目の前に、眼科検査(フルオレセインによるスリットランプ及び間接検眼法)を、それぞれの動物の眼で行なった。眼の所見を、McDonald‐Shadduck評価システムに従って評価し、肉眼観察を、眼病変を評価するDraizeスケールに従って記録した。眼の所見を、標準化データ収集シートを用いて記録した。
【0160】
試験は、市販のラタノプロスト(0.005%)を用い、これを、噴霧エジェクタ装置及び従来の点眼器よって滴下した。試験対象眼を無作為化した。試験動物の試験対象眼に、噴霧エジェクタ装置によって1回投与し、反対側の眼に、従来の点眼器によって1滴投与した。試験第1日目において開始し、基準(baseline)データを、0、1、2、4、7及び12時間の時点において5日間収集した。試験第7日目において、第1の投与をおよそ0900時間(試験第0時間)で行なった。噴霧エジェクタ装置を用いて、それぞれのイヌの1つの無作為に割り当てられた試験対象眼内に6 μl送達した。5秒後、第2の6μlの用量を同じ眼に投与した。反対側の眼(ポジティブコントロール)に、従来の点眼器によって、一般的な0.005%ラタノプロストを1滴投与した。試験第7日目の試験0時間において開始し、瞳孔径(PD)、眼圧(IOP)及び心拍数(HR)を、毎日、0、1、2、4、7及び12時間においてモニタリングした。投与は、毎日、0及び12時間の測定後に行なった。この手順を5日間繰り返した。試験は、試験24時間の測定後に終了した。
【0161】
結果
5日間測定したところ、基準(baseline)IOPは、日平均48.4±1.16mmHgであった。基準PDは、平均6.4±0.15mmであった。午前中と午後の測定値との間に有意差はなかった。IOPの一部の傾向は、午後に低い圧力が測定され、わずかに昼行性の効果を示した。試験第7日目の0時間の時点の測定値は、基準データを反映していた。
【0162】
噴霧エジェクタ装置によって処置された眼において、IOPは、試験第7日目の初日の滴下において急速に低下し、7時間において、15.5±2.2mmHgのレベルまで最大28mmHgの減少であった。第8日目において、最大IOPは17.2±3.0mmHgであり、最小値は、7時間において、13.6±1.2mmHgであった。第9日目において、最大IOPは26.2±6.3mmHgであり、最小値は、4時間において、16.2±1.5mmHgであった。第10日目において、最大IOPは27.5±3.5mmHgであり、最小値は、4時間において、14.0±1.3mmHgであった。第11日目も同様であり、最大IOPが26.5±2.8mmHgであり、最小値は、7時間において、14.7±0.9mmHgであった(
図25A)。
【0163】
点眼器によって処置された眼も、IOPの減少を示した。これらの変化は、発表された結果を追随し、試験5日間で最大27.5mmHgの減少であった。日最大値は、噴霧エジェクタ装置によって処置された眼よりも概して高かった。点眼器によって処置された眼の日平均変化(最大値から最小値を引いたもの)は14.6mmHgであり、噴霧エジェクタ装置を用いて処置された眼では、日平均変化は7.6mmHgであった。
【0164】
PDの変化は、両方の処置において類似しており、PDは、ほとんどの日において1時間の時点までに最小径(極小)に達した。点眼器によって処置された眼は、最大24時間で正常PDに戻り、噴霧エジェクタ装置を用いて処置された眼では、PDは、非常に長く収縮したままであった(
図25B)。心拍数の変化は報告されなかった。眼の刺激、損傷、又は処置のいずれかによる不快感の顕著な報告はなかった。
【0165】
考察
要約すると、噴霧エジェクタ装置による0.005%ラタノプロストの送達は、BIDを滴下した場合、緑内障ビーグル犬のIOPを有意に低下させた。ラタノプロストの1日2回の滴下では、標準用量の50%未満の使用でも、日IOPの変動が少なかった。点眼器による送達と比較して、噴霧エジェクタ装置による投与は、予測される午前中IOPスパイクを防止した。
【0166】
低投与量は、プロスタグランジン類似体の大量使用でみられることが多い、眼に対する少ない刺激に関連していた。IOPの平均変動は、7.6mmHg(30%)であり、1日1回の投与に対して実質的な低下を表した。PDは、ラタノプロストの点眼器による送達後と比較して、噴霧エジェクタ装置送達後に長い持続期間で低いままであった。
【0167】
明確な傾向は、一連の本試験で示されており(実施例1〜11)、これらは、本開示の噴霧エジェクタ装置によって送達される薬剤が、低い総用量、低い総投与量、及び高い投与濃度において有効であり、眼の刺激が少ないことを示している。
【0168】
実施例12
本実施例は、本開示の噴霧エジェクタ装置による9μlの0.005%ラタノプロストの送達後における眼房水(AH)中のラタノプロストの酸レベルを、標準的な点眼器による26μlの0.005%ラタノプロストの送達と比較した、緑内障のビーグル犬を用いた薬物動態臨床試験に関する。
【0169】
材料及び方法
8匹の健康な実験用ビーグル犬を本試験に選択した。包含される条件には、専門動物眼科医の肉眼による検査によって判断される、一般に全体的な健康及び正常な眼の状態が含まれていた。噴霧装置の投与前及び投与後の質量堆積較正は、9μlの意図された用量の常に10%以内であった。9.0μl用量の市販プロスタグランジンプロドラッグ、ラタノプロストを、噴霧エジェクタ装置を用いて、8匹の正常血圧のビーグル犬それぞれの2つの眼に局所的に滴下した。ラタノプロストの酸のレベルを、7時間の期間で5日間にわたって、毎日、前眼房水除去(aqueocentesis)によって得られた眼房水(AH)中で測定した。このプロトコルを、点眼器(平均用量26μl)によって送達される0.005%ラタノプロストにおいて繰り返した。
【0170】
第1部
すべてのイヌに2週間の休薬期間及び馴化期間を設けた。第1週目において、すべての動物を群に割り当て、それぞれの群に2匹の動物を群1、2、4及び7に割り当てた。試験第1日目、0時間(±15分)において、噴霧エジェクタ装置により、それぞれの動物の眼に9μlの0.005%ラタノプロストを投与した。第1時間において、群1の2匹のイヌに鎮静剤を与え(Torbugesic(登録商標)0.1〜1mg/kg)、局所眼科用麻酔薬(プロパラカイン塩酸塩点眼液USP、0.5%)を与えた。局所麻酔薬の効果が現われたら、IOP及びPDを測定した。不安及び動作が示される場合、優れた結果を有する1mcg/kgデクスメデトミジンを用いて、鎮静プロトコルを変更し、研究者が試験において4つのアリコートのAHを得るのを妨げた。次いで、それぞれの眼を、0.1%ベタジン溶液で穏やかに洗浄した。それぞれの眼に、27g又は30gの針を慎重に用いて、前房から最低50〜75μlのAHを採取した。それぞれの試料を1.5mlエッペンドルフチューブに入れ、標識し、ドライアイス上でまず保存し、その後、−80℃の急速冷凍装置(ultra-freezer)に保存した。滅菌綿棒から直接圧力を加えることによって針穿刺を行なった。局所用抗生物質を毎日、最終的注意として眼に適用した。これは、第2、4及び7時間において、グループ化されたイヌのそれぞれの対で繰り返した(5日間、1日当たり16試料)。5日間で全76のAH試料を採取した。第2週目は、動物の休薬及び治癒の週として利用した。
【0171】
第2部
第3週目は、0時間の時点において、点眼器による平均用量26μlの0.005%ラタノプロスト送達の代わりに、第1週のプロトコルに従った。5日間で全74のAH試料を、80回の前眼房水除去による試みで採取した。AH試料をすべて−80℃に凍結し、ドライアイス上で保存し、その後、ラタノプロストに特異的なHPLC法を用いて、ラタノプロストの酸について分析した。試験終了時に、動物を物理的に検査し、選定、又は適切であると考えられる他の利用のために準備した。
【0172】
結果
第1部
噴霧エジェクタ装置によって送達される9 μlの0.005%ラタノプロストの投与後、1、2,4及び7時間に採取したAH試料はそれぞれ、0.43±0.11μg/ml、0.54±0.10μg/ml、0.28±0.08μg/ml及び0.30±0.06μg/mlのレベルのラタノプロストの酸を有することが分かった(表2)。
【0173】
【表2】
【0174】
第2部
点眼器によって送達される平均投与量26μlの0.005%ラタノプロストの投与後、1、2,4及び7時間に採取したAH試料はそれぞれ、0.50±0.14μg/ml、0.15±0.03μg/ml、0.28±0.09μg/ml及び0.27±0.04μg/mlのレベルのラタノプロストの酸を有することが分かった(表3)。
【0175】
【表3】
【0176】
本試験の第1部及び2部におけるラタノプロストの酸の週及び日平均レベルは、
図26A及び26Bに示されている。
図26A(表4)は、噴霧エジェクタ装置による投与後のラタノプロストレベルの薬理学的に活性のある酸の大きな最大濃度(CMAX)及び曲線下面積(AUC)を強調している。
【0177】
【表4】
【0178】
考察
1時間後では、AHにおけるラタノプロストの酸レベルは、本開示の噴霧エジェクタ装置による9μlのラタノプロスト送達後よりも、点眼器による26μlのラタノプロスト送達後において高い。第2時間では、噴霧エジェクタ装置送達によってラタノプロストが投与された眼中のラタノプロストの酸レベルは、25%を超えて上昇したが、点眼器によって処置された眼のレベルは、80%を超えて減少した。第4時間及び7時間では、噴霧エジェクタ装置により送達されるラタノプロストの酸の量は、その初期レベルの50%で安定し、点眼器によって送達される酸形態のラタノプロストは、およそ40%で安定していた。IOPの減少及びPDの減少は、実施例4のコンパニオン試験での7時間の試験期間において、両方の送達方法(噴霧エジェクタ装置によって送達される9μl、及び点眼器によって送達される26μl)で同等であった。
【0179】
本試験の結果は、受動拡散、浸透及び能動輸送が両方の送達系によって生じ、また、噴霧エジェクタ装置によって送達されるプロスタグランジンプロドラッグが、高い速度(3倍)で吸収され、高い用量で点眼器によって送達される薬剤よりも長い持続性があることを示唆している。液滴の大きさ、液滴運動量、用量及びその他の要因は、薬物動態、並びに噴霧プロスタプロドラッグ、ラタノプロストのIOP及びPD減少効果に影響を及ぼすと考えられる。
【0180】
実施例13
本実施例は、エジェクタ面の帯電、及び本開示の電荷分離噴霧エジェクタ装置の流体負荷について評価する。
【0181】
図14A〜14Cを参照すると、エジェクタシステムは、それぞれの導電面において信号を送信し、
図14Aでは、シングルエンド型駆動が、接地されたエジェクタ面を有する圧電体の上部端子のみに適用され、
図14Bでは、圧電体及びエジェクタ面がともに電圧によって交流駆動し、他の電極が接地された差動駆動エジェクタシステムがあり、
図14Cでは、第3の導体及び誘電体が追加され、エジェクタ面が接地された圧電体を差動駆動させる。
【0182】
標準圧電エジェクタトポロジーを
図14A〜14Bに示し、圧電体が、ハイブリッドエジェクタ又はエジェクタノズルを有する単一膜であり得るエジェクタプレートに結合されている。
図14Aの装置には、標準圧電エジェクタトポロジーが、エジェクタ面で接地されたままで示されている。圧電体の他の電極は、シングルエンド型電気信号によって駆動し、すなわち、接地電極に対して同等のかつ逆の極性で振動する。接地されたエジェクタ面の定電位により、電圧は流体に印加されず、流体に電場があるか、又はほとんどゼロである。
【0183】
図27Aは、
図14Aのエジェクタシステムの実験室において測定されたシングルエンド型駆動波形を示している。小さな周期電圧は、エジェクタプレートを流れる電流により、流体中に発生する。流体(蒸留水)中で発生した電圧は、流体貯留部周辺で局所的に(直接上部に)電場によって無限小双極子(infinitely small dipole)において誘導される電圧よりも低く、圧電体に印加される信号よりも小さい桁の大きさである。
図27Bは、エジェクタプレートが接地されている間、電流が接地されたプレートに流れると、有限電圧(finite voltage)は、抵抗損失により、エジェクタプレート上で依然として発生していることを示している。したがって、流体は、流体貯留部周辺で局所電場によって無限小双極子において誘導される電圧よりも低く、圧電駆動信号をおよそ2桁下回る小さな電圧変動を受ける。
【0184】
図14Bの装置には、標準圧電エジェクタトポロジーが示されており、エジェクタ面及び圧電体電極が差動駆動し、すなわち、半周期オフセットされた等しい信号がある。一方の電極が駆動している間、他方の電極は、同等及び逆の極性のいずれかにより接地されている。エジェクタシステムのいずれの部分も、このシステムにおいては直接接地されていない。それぞれの電極の電圧は、電源の接地を基準にし、2つの電極の変化する電位の間に電場が形成し、圧電体が励起される。接地されていないエジェクタ面の電位の変化により、電圧は、エジェクタ電極に対応する流体に周期的に印加され、交流極性電場は、駆動信号に対して非常に大きな振幅である流体中に存在する。蒸留水によるこの構成の実際の実験室測定は、差動駆動下で、エネルギーを蓄積し、エネルギーをエジェクタ面に戻すコンデンサとして、流体が機能することを示す。これによって、これらの流体に電流が増加すると、電解特性を有した流体に非常に有害な電流が流体中に誘導される。
【0185】
図27Bは、
図14Bのエジェクタシステムの実験室において測定された差動駆動波形を示している。大きな周期電圧は、エジェクタプレートの交流電位との直接接触により、流体中に発生する。流体は、エジェクタ表面電位に従うコンデンサと同様に、周期的に帯電及び放電する。電解流体は、抵抗器と非常に類似しており、波形に直接従う。
【0186】
これに反して、本開示によれば、
図14Cの装置には、電荷分離エジェクタトポロジーが示されており、エジェクタ面が接地されたままであり、圧電素子が差動駆動している。大部分の電場は、逆の極性の場合、差動駆動する電極間に閉じ込められ、それぞれの電極上で等しい振幅信号を送信する。エジェクタ面は、接地されたままである。
図14Cに示されているように、同一の交流極性信号の場合、圧電体電極が駆動すると、エジェクタ面における電場はゼロであり、
図14Aのシングルエンド型の場合の1/4である(1/2に分割されたその電極及び電場におけるシングルエンド型駆動の電圧の半分、1/2は、圧電体電極に移行し、他のものは、エジェクタ面に移行する。)。この構成の結果は、両電極が同等及び逆の極性信号で駆動する場合、流体に対してほぼ完全な電場遮蔽である。
図14Cに示されているように、両電極が、交流接地信号及び正の極性信号によってオフセットされた駆動時間である場合、
図27Cに示されている実験室の測定は、電圧の1/2未満が、
図27Bのシングルエンドの場合にみられ、圧電信号よりも2桁を超えて少ない大きさであることを示す。真の差動駆動において、流体に付与される電圧は、1桁以上更に減少する。
【0187】
図27Cは、本開示の実施形態によるエジェクタシステムの実験室において測定された電荷分離エジェクタの波形を示している。小さな周期電圧は、
図14Aの標準システムの半分以下のレベルであるエジェクタプレートを流れる電流により、流体中に発生する。空気中に発生する電圧は、流体貯留部付近の標準システムによって発生する電場をどれくらい十分に遮蔽するかを示す。
【0188】
エジェクタに接触している流体は、その収容貯留部中にある場合、交互に帯電及び放電する。この帯電及び放電は、非不動態化導電面(unpassivated, conducting surface)において腐食反応を触媒作用することができる。吐出孔における振動時に、エジェクタの電荷は、流体に対して極性を逆にすることができ、これによって、液滴からエジェクタ面への電場が発生し、エジェクタ面の上に流体を引く起電力が生じる(electro-wetting、液滴駆動)。液滴駆動がエジェクタ面に流体ビーズ(bead)を形成した後、そのプロセスは、続いて吐出される液滴と干渉するエジェクタ面の方に、吐出されていない流体を継続して送り込むことができる。噴霧方式におけるメッシュの振動のみがこの問題を強める。
図28は、液滴駆動過程を示している。
【0189】
電圧(V)が基板と流体との間に印加されると、接触角θは、次に示す関係に従って、(特定の臨界値又は「飽和」値まで)減少する。
【0190】
【数1】
【0191】
上の式において、ε、εθはそれぞれ、流体と導電性基板との間の界面における絶縁膜の誘電率、自由空間の誘電率である。絶縁膜の厚さはtで表され、γという用語は、流体の表面張力である。液滴の縁の方への電場線のフリンジング(周辺化、fringing)によって、表面に流体をより近づけ(接触角θは、印加電圧の関数として減少する。)、基板に接する液滴の面積が増加する。この現象は液滴駆動(electro-wetting)と呼ばれる。薬剤がメッシュの表面を液滴駆動すると、漏出した薬剤のバルクが蒸発した後に、膜が残り、流体吐出を低下させ及び/又は妨げる。
【0192】
実施例14
本実施例は、本開示の電荷分離エジェクタ機構によって達成される質量堆積について評価する。エジェクタ装置の質量堆積を測定するために、エジェクタ装置を試験装置に固定し、接地線及び陽極ワイヤ(positive wire)を演算増幅器に接続し、そして、電流プローブ及び電圧プローブをオシロスコープに接続する。周波数及び電圧は、例えば、50キロヘルツ(kHz)の周波数において、ピーク(90Vpp)正弦波に対して90Vピークに設定し、エジェクタ装置からの噴霧は、1ミリグラム(mg)の感度を有するスケールを用いて、24 mm×60 mmのNo.1カバーガラス上で5回測定し、追跡可能な証明書を用いて、1 mgクラス1重量によって較正する。それぞれの測定において、カバーガラスをスケール上に置き、スケールをゼロにする。スライドをエジェクタ装置の噴霧経路に置き、所定時間、電圧を印加する。スライドをスケールに戻し、質量を測定し、記録する。カバーガラスを清浄化し、それぞれの測定前に、スケールを再度ゼロにする。全5つの測定を周波数ごとに記録する。過程を、所定のステップサイズ(通常1 kHz)に基づいて周波数を漸増させて繰り返す。
【0193】
電荷分離エジェクタ装置の質量堆積プロファイルを決定した。結果を
図29に示すが、優れた性能を示す。
図14Cに示されているように構成された電荷分離エジェクタ装置によって、エジェクタ面は常に接地されており、これによって、帯電効果及び液滴駆動により生じるビーディングを妨げ、依然として、差動信号の電気的利点が認められる。
【0194】
実施例15
本実施例は、本開示の電荷分離エジェクタ機構表面の液滴駆動及び腐食について評価する。振動電場によって電荷分離エジェクタ機構の液滴駆動を検討するために、エジェクタプレート又は接地された圧電アクチュエータのいずれかを備えた
図14Cに従って、エジェクタ装置を設定する。試験において、流体は、蒸留水(非導電性)、又は導電性にさせるように塩を加えた水のいずれかである。液滴形成を生じる吐出から、液滴駆動による効果を切り離すため、エジェクタ装置を、非吐出周波数である1 kHzの周波数で駆動させる。
【0195】
第1の試験では、エジェクタ面を接地し、圧電アクチュエータを0〜70Vの矩形波によって駆動させる。流体がいずれかの電場を受けておらず、エジェクタプレート表面がゼロの一定電位に維持されている(接地)ため、蒸留水又は塩水のいずれかによって変化は観察されない。
【0196】
第2の試験では、圧電アクチュエータを接地し、エジェクタ面を0〜70Vの矩形波によって駆動させる。エジェクタ面を0〜70Vの矩形波によって駆動させ、圧電アクチュエータを接地し、エジェクタ面の背部にある流体が、実際の作動条件下で印加される電場に類似する電場に遭遇するのを保証する。流体が蒸留水である場合、蒸留水は導電性でないので、変化は観察されない。
【0197】
第3の試験では、圧電アクチュエータを接地し、エジェクタプレート1602を、上の2つの試験と同様であるが蒸留水を塩水に換えて、0〜70Vの矩形波によって駆動させる。
図30A〜30Cに示されているように、変化は、ほぼすぐみられ(
図30Aの最初の画像と、
図30Bの真ん中の画像の比較)、液滴が形成し始めている。試験を継続すると、
図30Cに見られるように、化学反応が明らかになる。
【0198】
電荷分離エジェクタ機構に対する液体製剤の潜在的な液滴駆動及び腐食作用を評価するために、水/塩水ではなく、例示的な液体製剤を用いて、試験を繰り返す。液体製剤には、塩水に類似させるように、種々の塩が含まれ、部分的に酸性であってもよい。
【0199】
試験では、流体は、医薬品ラタノプロストを含む。上述のように、エジェクタ面を、0〜70Vの矩形波によって駆動させ、圧電アクチュエータを接地する。
図31に示されているように、2分後、ラタノプロストを含有する流体を、エジェクタプレート表面において観察することができ、薬剤は、エジェクタプレート表面と化学的に反応する。
【0200】
別の試験では、流体は、医薬活性剤トロピカミドを含む。上述のように、エジェクタ面を、0〜70Vの矩形波によって駆動させ、圧電アクチュエータを接地する。
図32に示されているように、2分後、トロピカミドを含有する流体を、エジェクタプレート表面において観察することができ、薬剤は、エジェクタプレート表面と化学的に反応する。
【0201】
実施例16
本実施例は、噴霧エジェクタ機構によって吐出される液滴の帯電について評価する。
【0202】
材料及び方法
電位計と塩水又はその他の試験流体を吐出する装置に連結されたファラデーケージに収容されているファラデーカップを用いて、すべての測定を行なった。吐出面をすべて、ファラデーカップの上1〜2 cmに配置した。吐出方法による質量の差を考慮して、電荷測定を吐出質量に標準化した。必要に応じて、接地面をエジェクタ機構の上下に配置した。
【0203】
ファラデーカップの出力を電位計の入力に接続し、電位計の接地は、共通の接地レールを基準とする。また、試験において、ファラデーケージも、共通の接地を基準とする。導電性チューブをファラデーケージの上に置き、ファラデーケージ内部で受ける電気的干渉を制限することによって、信号対雑音比を増加させる。DC電源の二重側面を直列に接続し、最大125V DCまで電圧を促進する。安全対策として、抵抗器を電源の出力に配置する。実験台を、ファラデーケージの上11 mmの設定高さにおいて機械的噴霧器を保持するように配置する。エジェクタ機構のエジェクタプレートは、貯留部を誘導帯電する電極として機能する。電極を電源の一方の極性に接続し、逆の極性を共通の接地部材に接続する。これによって、電極とファラデーケージとの間の空間に電場を形成することができる。
【0204】
電位計をウォーミングアップし、ゼロにし、一方、選択されたエジェクタを機械的噴霧器に取り付け、貯留部に塩水(又はその他の試験流体)を充填する。エジェクタからの液滴当たりの平均質量を測定し、記録する。基準線を浮遊している貯留部から取り出し、次いで、それぞれの測定後に、接地された貯留部の電位計をゼロにする。誘導帯電分析では、基準線が得られると、電極を電源に接続し、測定を、それぞれの極性から25Vステップにおいて25V〜125Vで行なう。この手順を、それぞれのエジェクタアセンブリについて繰り返す。摩擦帯電の影響を抑制するために、シリンジを用いて流体をメッシュ孔に押し通すことによって、速度をゼロ付近まで低減させた。液滴の速度は、ゼロに可能な限り近かった。
【0205】
摩擦帯電分析では、ファラデーカップをエジェクタ面と同じ電位に接続する。エジェクタ面を、−125Vから+125Vの電位において掃引し、摩擦帯電効果を判断する。
【0206】
材料及び方法
図示されているように、本開示の態様によれば、液滴の誘導帯電は、制御可能かつ反復可能であり、帯電極性及び振幅は制御可能である。この点に関して、本開示のエジェクタ機構の複数の構成について評価した。
【0207】
例えば、特定の構成は、ステンレス鋼製エジェクタプレート上に取り付けられたジェネレータプレートを有するハイブリッドエジェクタ機構を備えている。特定の実施形態において、ステンレス鋼製エジェクタプレートは、流体と接触する側においてダイヤモンド様炭素コーティング(DLC)によって不動態化されている。特定の実施形態において、ジェネレータプレートは、エジェクタプレートのDLC不動態化側に取り付けられており、この場合、当該DLC不動態化側は流体である。他の構成において、ジェネレータプレートは、DLC/流体側とは反対側に取り付けられている。特定の実施形態には、PEEKジェネレータプレートが含まれ、他のものには、めっきされた不動態化NiCoジェネレータプレートが含まれている。構成には、非不動態化又はDLCステンレス鋼製エジェクタプレート、PEEK又は金不動態化NiCoジェネレータプレート、及びジェネレータプレートの流体又は非流体側取付けなどの種々の組合せが含まれていてもよい。他の実施形態には、モノリシックPEEK又は「PIMP」における穿孔を含むジェネレータプレートを備えた、非ハイブリッドエジェクタ機構が含まれている。PIMP構造は、「未処理の(virgin)」又は中心に開けたエジェクタ孔のパターンにタルクを充填し4つの柱部が取り付けられた全PEEK部分として配置することができる。
【0208】
特定の構成では、ステンレス鋼製エジェクタプレートを接地(0)電位に維持するという点で、エジェクタ機構を「遮蔽」することができる。非ハイブリッド構成では、ステンレス鋼製リングをPIMPエジェクタの上部に取り付け、接地(0)電位に維持する。この構成では、PEEKが絶縁材料であり、電荷を排出することが困難であるので、ステンレス鋼製リングが使用される。遮蔽された構成は、ジェネレータプレート単独の摩擦帯電効果を試験するのに有用であった。
【0209】
特定の構成では、帯電電極の配置も変更される。一構成では、環状部(エジェクタプレート)を高電位/ホット(hot)電位又は正の電位に維持し、リテーナプレート(リテーナフレックス)に取り付けられたフレックス回路を、接地部材(「AHFG」)に保持する。他の構成は、環状部(エジェクタプレート)を接地部材に保持し、リテーナフレックスをホット電位(「AGFH」)に維持するという点で、AHFGの逆である。
【0210】
図33A〜33Cは、エジェクタ面への印加電圧に対する付与された電荷をグラム当たりのピコクーロンで示している。試験したエジェクタ機構(上述の説明)において、液滴上の印加電位と測定電荷との間に直線関係が示されている。とりわけ、エジェクタ面が外部電極と同じ電位に維持される場合、電場が存在せず、測定可能な電荷が液滴に付与されない。
【0211】
図33Dは、(上述した)種々のエジェクタ機構構成のゼロに近い速度により噴出摩擦帯電によって付与された電荷を示している。図示されているように、付与された摩擦帯電は、誘導帯電よりも低い少なくとも3桁の大きさである。
【0212】
図33E〜33Gは、塩水と代表的な眼科用薬剤ラタノプロストの帯電の両方を示し、液滴の制御可能な誘導帯電が、種々の代表的な流体において達成され得ることを確立している。
【0213】
図33H〜33Iは、比較のための、ピペットにより送達される液滴の平均電荷データについて示し、液滴上の電荷を制御する代替的な機構を示している。
【0214】
実施例17
本試験の目的は、正に帯電したスライドガラスを用いて、本開示の噴霧エジェクタ装置によって吐出された液滴の表面相互作用を分析することである。本試験は、眼表面と噴霧エジェクタ装置との間の電荷差を模倣することを目的とする。
【0215】
材料及び方法
本試験において、眼の表面をシミュレートするのにスライドガラスを用いる。スライドガラスに正電荷を発生させる。DCオフセット電荷によって、噴霧エジェクタ装置に電荷を発生させる。噴霧中の電荷をファラデーケージによって測定する。
【0216】
結果
正電荷噴霧によって、液滴は、スライドガラス表面に玉のようになる傾向がある。負電荷噴霧によって、液滴は、スライドガラス表面を湿らせる傾向がある。
【0217】
考察
液滴とスライドガラス表面との間の電荷差によって、表面相互作用における挙動に顕著な相違がある。この点に関して、眼の表面は、正味の負電荷を有し、このため、正電荷噴霧は、眼表面への液体分散及び付着を促進することができる。同様に、負電荷は、電荷と同等の極性により、眼表面からの流出低減を促進することができる。
【0218】
実施例18
本実施例は、処置に対する液滴電荷の効果を評価するための、緑内障ビーグル犬を用いた臨床試験に関する。
【0219】
材料及び方法
緑内障ビーグル犬のインビボ薬力学(PD)試験、及び健康なイヌの薬物動態(PK)試験は、本開示の噴霧エジェクタ装置を用いて角膜上に噴霧した市販プロスタグランジンアゴニストの優れた眼圧(IOP)低下効果、及びバイオアベイラビリティの有意な増加を示している(実施例2〜15を参照)。これらの試験に用いた装置は、摩擦帯電及び誘導正電荷を有することが分かった。
【0220】
本実施例の試験は、処置に対する液滴電荷の効果を更に調査する。実施例2〜15において上述したとおりに、動物の選択及び薬剤の投与を行なうことができる。これらの試験では、0.002%、0.004%又は0.0005%のトラボプロスト(Travatan Z(登録商標)、Alcon Laboratories社(Fort Worth, TX USA)製)を、制御可能な液滴電荷を有する本発明の噴霧エジェクタ装置によって動物に投与した。
【0221】
結果
本開示の噴霧エジェクタ装置による制御可能な液滴帯電によって、薬剤を改良することなく、IOP低下効果が向上し、効果の持続性が延長し、PF2aプロスタグランジンアゴニストプロドラッグのバイオアベイラビリティが増加する。
【0222】
具体的には、
図34A〜34Hに示されているように、低用量のトラボプロスト(3マイクロリットル、0.002%及び0.0005%)は、制御可能な液滴電荷を有する本開示の噴霧エジェクタ装置によって送達される場合、IOPを大幅に低下させる。制御可能な液滴電荷噴霧投与は、点眼器又はピペットによる従来の送達と比較して、3倍のIOP低下有効性、対応する防腐剤の3倍の低減、及び同じ分類のPF2aプロスタグランジンアゴニスト薬剤の4倍のバイオアベイラビリティを達成する。制御可能な液滴電荷噴霧投与は、(lxqd@hs投与によって)トラボプロストのIOP低下効果を生じ、24時間IOP低下を示し、従来の投与によって観察される鋸歯状IOP曲線を低減する。また、データは、リガンド受容体のバイアスの増強、及びトラボプロストの薬理学的に活性のある形態への考えられ得る生体内変化の増強が、液滴帯電投与の制御によって生じることも示唆している。
【0223】
図34A〜34Dは、非常に低用量(0.0005%、0.002%)の正帯電トラボプロスト(3mcl)によって、(非帯電液滴と比較して)瞳孔径の少ない減少、及び大きなIOP低下を示し、考えられ得るリガンドGPCR受容体のバイアスを示唆している。
【0224】
図34E及び34Fは、トラボプロストの正負両方による制御可能な液滴帯電噴霧投与の逆説的なIOP/瞳孔径効果を示し、複数の受容体(PF2aプロスタグランジンアゴニスト受容体、カチオン性及びアニオン性受容体)による結合、リガンド(薬剤)細胞内シグナル伝達のバイアス、及び生体内変化の加速を示唆している。
図34F及び34Gは、0.004%正負帯電トラボプロストによる(非帯電液滴と比較した)大きなIOP低下を示し、角膜への逆の電荷の付着が、薬剤効果増強の唯一のメカニズムでないことを更に示唆している。
【0225】
例示的な実施形態を参照し本発明が説明されているが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、種々の変更がなされ、均等物をその構成要素に置換できることが当業者によって理解される。さらに、その本質的範囲から逸脱することなく、本発明の教示を特定の状況及び事態に適応させるように、変更することができる。したがって、本発明は、本明細書に開示されている特定の実施例に限定されないが、添付の特許請求の範囲内に入るすべての実施形態を包含する。次の態様も考えられる。
[態様9]
標準的な点眼器と比較して、治療上有効な低投与量の医薬組成物を含む指向性液滴流を発生させて、その必要がある対象の眼に送達するエジェクタ機構であって、該エジェクタ機構は、
ジェネレータプレート及び圧電アクチュエータを備え、前記ジェネレータプレートに、その厚さを貫通して形成された複数の開口が含まれ、前記圧電アクチュエータが、前記低投与量の医薬組成物の指向性液滴流を発生させる頻度において、前記ジェネレータプレートを直接又は間接的に振動させるように動作可能であり、
15ミクロンよりも大きい平均液滴サイズで前記指向性液滴流を発生させ、使用時に、前記指向性液滴流を対象の眼上に堆積させるように、発生した指向性液滴流が低い混入気流を有し、
標準的な点眼器の投与量の容積の3/4未満で、前記対象の眼上に堆積するために、前記低投与量の医薬組成物を発生させる、
エジェクタ機構。
[態様10]
前記エジェクタ機構は、標準的な点眼器の投与量の容積の1/2未満で、前記対象の眼上に堆積するために、前記治療上有効な低投与量の医薬組成物を発生させる、態様9に記載のエジェクタ機構。
[態様11]
前記エジェクタ機構は、標準的な点眼器の投与量の容積の1/4未満で、前記対象の眼上に堆積するために、前記治療上有効な低投与量の医薬組成物を発生させる、態様9に記載のエジェクタ機構。
[態様12]
前記エジェクタ機構は、20〜400ミクロンの範囲の平均液滴径で、
前記指向性液滴流を発生させる、態様9に記載のエジェクタ機構。
[態様13]
前記エジェクタ機構は、前記指向性液滴流が、0.5 m/s〜10 m/sの範囲の平均初期速度で、前記指向性液滴流を発生させる、態様9に記載のエジェクタ機構。
[態様14]
前記エジェクタ機構が、態様1に記載の電荷分離エジェクタ機構である、態様9に記載のエジェクタ機構。
[態様15]
態様9に記載のエジェクタ機構であって、
前記エジェクタ機構は、制御可能な液滴電荷を有した、前記低投与量の医薬組成物を含む指向性液滴流を発生させ、
前記制御可能な液滴電荷が、標準的な点眼器による送達と比較して、対象の眼への前記液滴の送達を向上させるエジェクタ機構。