(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の主な原因である温室効果ガスの排出を抑制するための方法として、太陽光エネルギーや風力エネルギーなどの再生可能エネルギーが脚光を浴びており、これらの実用化・普及のために多くの研究が進められている。しかし、再生可能エネルギーは、立地環境や自然条件によって大きく影響される。さらに、再生可能エネルギーは、出力変動が激しいから、エネルギーを連続的に均一に供給することができないという欠点がある。よって、再生可能エネルギーを家庭用または商業用に使用するために、出力が高いときはエネルギーを保存し、出力が低いときは保存されたエネルギーを使用することが可能なシステムを導入して採用している。
【0003】
このようなエネルギー貯蔵システムとしては大容量の二次電池が使用されるが、一例として、大規模な太陽光発電及び風力発電団地には大容量の二次電池貯蔵システムが導入されている。前記大容量の電力貯蔵のための二次電池としては、鉛蓄電池、硫化ナトリウム(NaS)電池及びレドックスフロー電池(RFB、redox flow battery)などがある。
【0004】
前記鉛蓄電池は、他の電池に比べて商業的に広く使用されているが、低い効率及び周期的な交換によるメンテナンスの費用や、電池交換の際に発生する産業廃棄物の処理問題などの欠点がある。NaS電池の場合、エネルギー効率が高いことが利点であるが、300℃以上の高温で作動する欠点がある。レドックスフロー電池は、常温で作動可能であり、容量と出力をそれぞれ独立して設計することができる特徴があるため、最近、大容量の二次電池として多くの研究が進められている。
【0005】
レドックスフロー電池は、燃料電池と同様に、分離膜(メンブレン)、電極及び分離板(Bipolar plate)が直列(Series)に配置されてスタック(Stack)を構成することにより、電気エネルギーの充放電が可能な二次電池(Secondary battery)の機能を有する。レドックスフロー電池は、分離膜の両側に設けられた陽極電解液貯蔵タンクと陰極電解液貯蔵タンクからそれぞれ供給された陽極電解液(Electrolyte)と陰極電解液が循環しながらイオン交換が行われ、この過程で電子の移動が発生して充放電が行われる。このようなレドックスフロー電池は、従来の二次電池に比べて寿命が長く、kW乃至MW級の中大型システムに製作することができるので、ESS(Energy storage system)に最も適することが知られている。
【0006】
しかし、レドックスフロー電池は、陽極電解液と陰極電解液を貯蔵するタンクが別個に一定の空間をおいて配置される構造(例えば、スタックの両側または下側に一定の空間をおいて電解液タンクが配置される構造)であって、スタックと電解液タンクとを接続する電解液循環管によって、全般的なシステムの体積において、類似した電力貯蔵容量を基準に、他の電力貯蔵装置である鉛蓄電池、リチウムイオン電池及びリチウム−硫黄電池と比較して相対的に大きいという欠点がある。
【0007】
また、スタック、ポンプ及び電解液タンクに接続される電解液循環管が多数備えられるべきなので、それぞれのスタックに電解液を一定に供給するために、一定基準以上のポンプ容量が要求されるが、電解液循環管の長さが長くなるほどポンプの要求容量が増大してポンプの大きさ及び電池の製造コストが増大するという問題点があり、ポンプ容量の増大による消費電力が増加しながら全般的な電池効率が低下するという問題点が伴っている。
【0008】
また、一般な電池は、充放電動作が行われる作動応答性が速くなければならない。ところが、レドックスフロー電池の場合、停止した状態で充放電のために稼動させる場合、ポンプによって電解液がスタックの内部へ循環するまで時間がかかり、所要の時間分の応答性が低下し、セル、スタック及びポンプを連結する耐化学性配管が多数必要とされるので、コストが上昇するという問題点があった。
【0009】
ここで、通常のレドックスフロー電池は、マニホールドを介して各電池セルへ電解液が供給される。ところが、マニホールドに満たされた電解液は、各セルをつなぐ電気通路の役割を果たすので、電子の移動経路になることができ、このような経路によりシャント電流(shunt current)が発生して、充放電の際にエネルギーの一部がシャント電流によって失われてしまう。これは効率の減少、部品の破損、セル性能の不均一を引き起こす主な原因となる。従来は、このようなシャント電流を減らすために、マニホールドの長さを増加させ且つ断面積を狭める方法を主に採用したが、これは流体の流れ抵抗を増加させてポンプ損失を発生させる。よって、これを克服することが可能な代案が求められる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るレドックスフロー電池を好適な実施形態を参照して詳細に説明する。ここで紹介される好適な実施形態は、当業者に本発明の思想が十分に伝達されるようにするための例として提供されるものである。
【0022】
よって、本発明は、以下に提示される実施形態に限定されず、他の形態にも具体化できる。以下に提示される実施形態は、本発明の思想を明確にするために記載されたものに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0023】
このとき、使用される技術用語及び科学用語において他の定義がなければ、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が通常的に理解している意味を有し、下記の説明において、本発明の要旨を不明確にするおそれのある公知の機能及び構成についての説明は省略する。
【0024】
また、ここで紹介される図面は、当業者に本発明の思想が十分に伝達されるようにするための例として提供されるものである。よって、本発明は、以下に提示される図面に限定されず、他の形態に具体化されることも可能であり、以下に提示される図面は、本発明の思想を明確にするために誇張して図示できる。また、明細書全体にわたり、同一の参照番号は同一の構成要素を示す。
【0025】
また、明細書及び添付された特許請求の範囲で使用される単数形は、文脈上で特に指示がない限り複数形も含むものと意図することができる。
【0026】
また、本発明の構成要素を説明するにあたり、第1、第2、A、B、(a)、(b)などの用語を使用することができる。これらの用語は、一つの構成要素を他の構成要素と区別するためのもので、該当構成要素の本質や順番、順序などを限定するものではない。ある構成要素が他の構成要素に「連結」、「結合」または「接続」されると記載されている場合、その構成要素はその他の構成要素に直接連結または接続されてもよいが、これらの構成要素同士の間に別の構成要素が「連結」、「結合」または「接続」されてもよいと理解されるべきである。
【0027】
本発明において、用語「電池セル(battery cell)」は、電解液を介して充放電が起こる最小単位であって、イオン交換が起こる分離膜、分離板などを含んで構成される。
【0028】
本発明において、用語「スタック」は、電池セルが複数個積層或いは構成されたものを意味する。
【0029】
本発明の発明者は、レドックスフロー電池の欠点である、電解液循環管の長さ増加及びそれによる電池自体の体積増加、高性能ポンプを必要としたりポンプ自体の数を増やしたりするなどの物理的な問題、電解液の運搬によるポンプの大きさ及び電池の製造コストの増大、応答性の低下、ポンプ損失などの問題点を解決するために鋭意研究を重ねていたところ、電池セルまたはスタックと流体制御部とを備える電池モジュールを多数結合することにより電解液の移動距離を大幅に減らすとともに、ポンプを代替するために電池モジュールごとに流体制御器を備えることにより応答性の低下、ポンプ損失などの問題点を解決し、本発明を完成するに至った。
【0030】
本発明に係るレドックスフロー電池は、
図1または
図13に示すように、内部に電池セル100、電解液タンク200、電解液流路400、及び外部で生成された圧力を電解液流路へ伝達する流体制御部300を含む一つまたは二つ以上の電池モジュール10が電気的に接続されて備えられるが、前記電池モジュールは、それぞれ独立して電解液を内部循環させて充放電することを特徴とする。
【0031】
図2によってこれをさらに詳細に説明すると、内部に陽極110と陰極120に区分される一対の電極と、前記電極同士の間に備えられる分離膜130と、前記電極の外側面に積層される分離板140とを含む一つまたは二つ以上の電池セル100;前記電池モジュールの内部に備えられ、前記陽極または陰極へ陽極電解液または陰極電解液を供給する一対の電解液タンク200;前記電池セルと電解液タンクとを連結して電解液を移送する電解液流路400;及び前記電解液流路に備えられ、電池モジュールの外部から伝達される圧力を電解液流路へ伝達して電解液の流れを制御する一つまたは二つ以上の流体制御部300;を含んで構成できる。
【0032】
但し、本発明において、前記電池セルは、通常のレドックスフロー電池を基準に説明及び図示したもので、場合によっては電極、分離膜または分離板などを省略してもよい。
【0033】
一方、本明細書において、エンドプレート、電解液タンク200及びポンプなどの構成及び機能については、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であればすべてよく知っているはずなので、本明細書において、これについて別に説明しないことにする。
【0034】
以下、図面に基づいて、各構成要素をさらに詳細に説明する。
【0035】
図1は本発明に係るレドックスフロー電池の形態を簡略に示すものである。
図1を参照すると、多数の電池モジュール10がモジュール連結部600を介して電気的に接続されており、前記電池モジュールは電解液の移送のために流体移送管330を介して圧力発生器500に接続されている。但し、場合によっては、電池モジュール間の電気的接続なしで独立して駆動される形態で構成されてもよい。
【0036】
本発明に係るレドックスフロー電池は、前記電池モジュール間の電解液の干渉や交換なしですべて独立して電解液を循環させるか、或いは幾つかの電池モジュールが電解液タンクを共有し、これによりシャント電流の発生を最小限に抑えたことを特徴とする。ただし、場合によっては、各電池モジュール間の電解液の混合のために、電池モジュール間に電解液が流れることが可能な通路が構成できる。本発明ではこれを限定しない。
【0037】
図2は前記電池モジュール10の形態を簡略に示すものである。
図2を参照すると、前記電池モジュールには電池セル100、陽極電解液タンク210及び陰極電解液タンク220が備えられる。これらは電解液流路400を介して電池セルに連結される。一方、前記電解液流路には、外部から伝達される圧力を用いて電解液を移送することができるように流体制御部300が備えられ得る。
【0038】
本発明において、電池セル100は、
図2の下側に示すように、陽極110と陰極120に区分される一対の電極と、前記電極同士の間に位置する分離膜130と、前記陽極及び陰極の外側に離隔して位置する分離板140とを含むことができる。前記陽極、陰極、分離膜及び分離板は、ハウジング150内に位置し、ハウジングの内部で電解液の移動、充電、放電などの電気化学的反応が起こる。
【0039】
前記電池セルに供給される陽極電解液及び陰極電解液は、電解液タンクから移送されて電解液流路を介してハウジングの内部に流入して反応が進行し、反応が終了した電解液は、再び電解液流路を介して電解液タンクへ入って循環する。
【0040】
本発明において、前記流体制御部300は、従来のポンプを代替し且つ電解液を循環させるために、電解液が電池セルへ流入する電解液流路に備えられ得る。前記流体制御部は、圧力の変化を利用して電解液が所定の方向に流れることができるように備えるもので、逆流を防止し且つ圧力の変化を利用して電解液を移送することが可能な形態であれば、その構造及び種類を限定しない。
【0041】
前記流体制御部の他の例として逆止弁を挙げることができる。前記逆止弁について
図2の左側上端からさらに詳細に説明すると、電解液流路内には一方の方向へ流体を移送させることが可能な逆止弁が一対311、312備えられ、これらの逆止弁同士の間には電解液流路へ圧力を直接伝達する流体移送管330が電解液流路に連通して備えられる。
【0042】
つまり、流体移送管を介して外部から圧力が伝達されると、自然に第1逆止弁と第2逆止弁との間の空間に圧力の変化が発生し、これにより電解液が一方の方向に流れる。
【0043】
例えば、流体移送管において第1逆止弁と第2逆止弁との間の空間の圧力が低くなるように作動すると(陰圧)、自然に逆止弁同士の間の空間の圧力も低くなる。よって、圧力平衡を保つために、第1逆止弁の向こうの電解液が逆止弁同士の間の空間に流入し、第2逆止弁は閉じることにより、電解液の逆流を防止する。また、外部から供給される圧力が高まる場合(陽圧)、逆止弁同士の間に存在する電解液が自然に第2逆止弁を通過して電池セルに流入し、第1逆止弁は閉じる。この過程の繰り返しにより、電解液は電池セルまたはスタックに流入して循環する。
【0044】
但し、
図2などでは前記流体制御部が一対の逆止弁を備えているが、一般に、電池セルの内部は流体流れ抵抗が高いため、必要に応じては第2逆止弁がなくても逆流が一部防止される効果があるので、前記流体制御部は一つの逆止弁のみを持つこともできる。これとは逆に、2つ以上の多数の逆止弁をさらに備えてもよい。このような流体制御部の構成は、本発明の目的を達成することが可能な範囲内で自由に変更可能であり、これも本発明の範囲に属する。
【0045】
本発明の実施形態では、流体制御部が電池セルに陽圧を加えて電解液を供給することを示したが、これに限定せず、電池セルから電解液が排出される電解液流路に連結して、流体制御部が電池セルに陰圧を加えて電池セルから電解液が循環するように構成することができる。この場合、逆止弁の作動方向が反対に構成できる。この場合、
図8に示す流体制御部の圧力供給周期は陽圧と陰圧が互いに反対に作動するようにすることが好ましい。
【0046】
本発明は、上述したような構造を持つことにより、電池モジュールごとにモーターを駆動する必要がなく、エネルギー効率を向上させることができ、電解液の循環距離を減らして電池の応答性を高め、耐酸性配管の使用を最小限に抑えることができる。
【0047】
本発明において、前記流体制御部は、電解液の流れを誘導しなければならないので、一定レベル以上の陽圧及び陰圧が形成されなければならない。但し、本発明において、陽圧及び陰圧の範囲を限定せず、電解液の流れを誘導する程度の圧力であれば、大気圧よりも高いか低くても構わない。一例として、圧力の範囲は、大気圧を基準に、陽圧ないし陰圧、陽圧ないし大気圧、大気圧ないし陰圧などのように、圧力の上限及び下限に関係なく、その差を適切に調節することができる。
【0048】
また、電解液の円滑な流れを誘導し、電池セルに供給する電解液の量を増加させるために、
図2の上側に示すように、逆止弁同士の間に一定の隔室を形成することが可能な制御部ハウジング320をさらに備えてもよい。
【0049】
本発明において、前記流体制御部に圧力を伝達する装置及び流体の種類は制限しない。一例として、陽圧の形成のためには、圧力を伝達するための流体の圧縮のために圧力発生器500をコンプレッサーまたはポンプとすることができ、陰圧の形成のためには、圧力発生器を、真空装備、吸引装備またはベンチュリ管を備えたエジェクタ(ejector)とすることができる。流体の場合にも気体、液体の両方を使用することができ、作動する圧力発生器の種類に応じて自由に選択することができる。また、陽圧または陰圧を形成する装備はどちらか一方のみを使用してもよい。
【0050】
また、本発明に係る圧力発生器は、動作中に失われる流体を補償するために別途の供給装置(図示せず)によって補充することができ、流体制御部に加わる圧力の大きさを一定に維持するために圧力測定器(図示せず)をさらに備え、一定レベル以下の陽圧及び陰圧が測定される場合には前記供給装置を介して流体を圧力発生器へ注入して補充したり外部へ排出したりする構成をさらに含むこともできる。
【0051】
図4は逆止弁を備えた流体制御部の一般な形態を示すものである。
図4によれば、制御部ハウジング320の両側面には電解液流路400に直接連結される逆止弁311、312が一対備えられ、上面には前記電解液流路へ圧力を供給する流体移送管330が直接連結される。このとき、前記流体移送管を介して制御部ハウジング内へ流体が流入することを防止するために、一つ以上の電解液流入防止器350をさらに備えることができる。
【0052】
前記電解液流入防止器は、圧力の円滑な伝達が可能であり、制御部ハウジング内に流体が流入することを防止すればいずれの材質、形状を持ってもよい。一例として、前記電解液流入防止器は、
図4に示すように制御部ハウジング内に位置するが、制御部ハウジングと流体移送管が物理的に遮断でき、柔軟性を有する弁膜の形で備えることが好ましい。
【0053】
本発明に係る流体制御部300は、
図2に示すように、電解液タンクと電池セルとの間に位置することもできるが、
図3に示すように、電解液タンク200の内部に位置することもできる。これをより詳細に説明すると、前記流体制御部は、電解液タンク内に備えられるが、電解液流路400の一端に位置し、制御部ハウジング320を介して流体と電解液との混合を遮断する。制御部ハウジングは側面に一対の逆止弁311、312を備えるが、前記逆止弁は、制御部ハウジングの外部から内部へ作動するものと、制御部ハウジングの内部から外部へ作動するものをそれぞれ備える。このとき、制御部ハウジングの内部から外部へ作動する逆止弁は直ちに電解液流路の一端に連結できる。また、制御部ハウジングの外部から内部へ作動する逆止弁は、直ちに電解液タンクの電解液に接触するか、或いは管路が延長されて電解液中に位置することが好ましい。
【0054】
圧力発生器を介して電解液タンク内の流体制御部へ陽圧が伝達されると、流体制御部内の電解液が逆止弁を介して電解液流路へ押し出され、自然に流体制御部内の電解液の水位が減少して流体制御部内の電解液と外部の電解液との水位差が発生する。一定レベル以上の電解液の水位を下げ、陽圧の供給を中断すると、電解液の水位差を介して電解液が流体制御部の内部に流入することができる。よって、圧力発生器からの電解液の流入のために必要な陰圧の供給量を減らすことができるか、或いは陰圧を供給しなくても電解液が流体制御部内へ自然に流入することができるため、全体レドックスフロー電池の効率を高めることができる。
【0055】
本発明において、前記逆止弁310は、チェックバルブとも呼ばれており、電解液の流れを一方の方向に誘導するように作動する。本発明において、逆止弁は、
図2などに示すように、ボール(ball)形態や弁膜形態などの流体の流れ方向を制御することができればいずれの構造を持ってもよい。
【0056】
例えば、
図5Aに示すようなディスク形態または
図5Bに示すような弁膜形態の逆止弁を備えても構わず、この他にも、リフト逆止弁、スイング逆止弁、ウエハー型スイング逆止弁、スプリットディスク逆止弁などの様々な形態の逆止弁を使用することができる。
【0057】
また、前記逆止弁以外にも、
図5Cに示すように、圧力で動作する弁を備えてもよい。前記弁も、一般な逆止弁と動作形態が同一であり、電解液の流れにおいて正方向よりも逆方向の流れ抵抗が高いため、全体的に正方向に流体が流れる形態を持つことができ、これも逆止弁のカテゴリーに属するといえる。すなわち、逆止弁の形態とは関係なく、電解液の流れにおいて正方向より逆方向の流れ抵抗が高いため、全体的に正方向に流体が流れる形態を持つことができ、これも逆止弁のカテゴリーに属するといえる。
【0058】
また、前記電池モジュールは、
図6及び
図7に示すように、前記流体制御部300を二つ以上備えることもできる。一般に、流体制御部の流体移送管が一つである場合、陽圧であるときにのみ電池セルへ電解液が供給されて連続的な電解液の流れを作ることは難しい。また、このとき、電解液がセルの内部に一定時間以上滞在しながら、セル自体の性能が低下するおそれがある。
【0059】
本発明は、これを解消するために、二つまたはそれ以上の流体制御部を連結して連続的な流れを誘導することができる。
図7を参照してこれをさらに詳細に説明すると、第1流体制御部300aに陽圧が供給されると、第2流体制御部300bには陰圧を供給する。すなわち、第1流体制御部に陽圧が供給されるので、逆止弁同士の間に位置する電解液が電池セル側へ流入し、同じ時間に第2流体制御部には陰圧が供給されるので、電解液タンク内の電解液が逆止弁同士の間の空間に流入する。第1流体制御部内の電解液を電池セル側に向かって供給した後には第1流体制御部に陰圧を供給し、同じ時間に第2流体制御部には陽圧を供給することにより、電解液を電池セルへ供給する。このような動作を繰り返すと、電解液の連続的な流れを誘導して安定的なセル駆動を可能にすることができる。
【0060】
前述のように電池モジュールに複数の流体制御部を備える場合、これらに供給される圧力の供給周期を調節することが好ましい。但し、この場合には、これらの供給周期を同じ位相(phase)とするよりは、互いに異なる位相にして圧力変化を与えることが好ましい。
【0061】
図8A乃至
図8Cを参照してこれをさらに詳細に説明すると、
図8Aに示すように、第1流体制御部の圧力供給周期と第2流体制御部の圧力供給周期を互いに完全反対にするが(mirror image phase)、各制御部の陽圧区間の長さと陰圧区間の長さとを同一にする場合、一定の流量の電解液が電池セルへ供給されなければならないが、各流体制御部で圧力周期が変わる地点で、各区間による干渉により、一般に供給されなければならない電解液よりもさらに少ない量の電解液が電池セルへ供給される。すなわち、この区間で瞬間的に流量が減少することがある。
【0062】
したがって、前述したような干渉による電解液の供給妨害を防止するために、各流体制御部の陽圧周期区間または陰圧周期区間が互いに重なり合うようにするのが良い。
【0063】
図面を参照してこれをさらに詳細に説明すると、
図8Bに示すように、各流体制御部の周期は同一にするが、一つの流体制御部の陽圧区間の長さと陰圧区間の長さとは同一に維持し、もう一つの流体制御部の陽圧区間は陰圧区間よりも長く維持するか、或いは、
図8Cに示すように、二つの流体制御部の作動位相は異なるが、いずれか一つの流体制御部の陽圧周期と他の流体制御部の陽圧周期とが一定の時間互いに重なり合うようにすること、すなわち、一つの流体制御部における陽圧周期の区間D
1が他の流体制御部における陰圧周期の区間D
2よりもさらに長くなるように調節するのが良い。
【0064】
これは、両流体制御部の陽圧周期と陰圧周期が完全に同一の長さを持つ場合、一般に供給されなければならない電解液の量よりもさらに少ない量の電解液が電池セルへ供給されるので、不足分を補うためにいずれか一つまたは二つの流体制御部の陽圧周期の長さを陰圧周期の長さよりも増やして電池セルに供給する電解液を一定に維持させるのである。
【0065】
ただし、図面上では二つの流体制御部の周期を互いに同一に示したが、両流体制御部の周期は互いに同一であっても異なってもよく、前述した流体制御部の作動目的を達成することができればいずれの形態にも変更することができる。
【0066】
また、流体制御部の内部に流入する電解液の流量が電池セルへ排出される流量よりも少ない場合(そして、電解液流入防止器が備えられていないか破損した場合)、前記流体制御部に流入する陽圧対象である流体が電解液の代わりに電池セルに流入してセル性能を低下させることができるので、陰圧と陽圧を調節して、流体制御部の内部に流入する電解液の流量が排出される流量よりも多くなるように調節するのが良い。
【0067】
上述のように、各流体制御部300に供給される圧力の周期を調節するために、
図9A及び
図9Bに示すように、圧力発生器と流体制御部との間に圧力制御弁340をさらに備えることが好ましい。前記圧力制御弁は、流体制御部に陽圧と陰圧を交互に供給するためのもので、上述したような特定の圧力供給周期に合わせてポートの開閉を自由に調節することができる構造、及びこれに相応するすべての形態の装置を含む。
【0068】
図10A及び
図10Bを参照して前記圧力制御弁340をさらに詳細に説明すると、
図10Aに示すように、互いに異なる二つの圧力発生器から出てきた流体移送管にそれぞれ圧力制御弁を備えることができる。前記圧力制御弁は、圧力制御弁ハウジング341と、前記ハウジングの内部に設けられたスイッチング管342とを備えることができる。このとき、前記圧力制御弁ハウジングは、流体の流れ方向がハウジングの内部(input)に向かう管(流入管)と、ハウジングの内部から外部(output)に向かう管(排出管)をそれぞれ備え、これらの数を調節してスイッチング管のスイッチング形態を自由に調節することができる。
【0069】
また、
図10Bに示すように、それぞれの圧力制御弁340に陽圧と陰圧が同時に連結され、必要な周期に応じて、流体制御部300に供給される圧力を陽圧と陰圧の中から選択的に供給されるようにすることができる。または、陽圧と陰圧との中間圧力を形成することができるように、別のポートまたは外部の弁を備えて2つの圧力供給管が連結されるようにすることができる。
【0070】
一例として、一つの圧力制御弁に一つの流入管と二つの排出管を備える場合、前記圧力制御弁は、一つの圧力発生器及び二つの流体制御部に連結される構造を持つ。よって、いずれか一つの流体制御部に陽圧を供給する中に圧力の形態を変化させなければならない場合、前記スイッチング管と排出管との連結形態を変えて他の流体制御部に陽圧を供給することにより調節することができる。
【0071】
但し、図面の如く、ハウジング流入管を一つ、ハウジング排出管を二つ備えることもできるが、ハウジング流入管を二つ、ハウジング排出管を一つ備えることもでき、圧力供給器及び流体制御部の数に応じて流入管及び排出管の数を自由に調節することは本発明が制限しない。
【0072】
また、上述の如く、陽圧周期の区間D
1が陰圧周期の区間D
2よりもさらに長くなるように調節する場合、陽圧周期の区間が陰圧周期の区間よりも長いため、すべての流体制御部に陽圧を供給する瞬間が発生する。このとき、上述の如くスイッチング管が備えられると、すべての流体制御部に陽圧を供給することが難しいので、前記スイッチング管の代わりにハウジングの外側にソレノイドバルブなどの調節弁(図示せず)を備えるのが良い。
【0073】
例えば、前記ソレノイドバルブを各流体制御部に連結された排出管に連結し、いずれか一つの流体制御部に陽圧を供給するときは、当該流体制御部に連結された排出管のソレノイドバルブを開き、第1流体制御部と第2流体制御部の両方に陽圧を供給するときは、すべての排出管のソレノイドバルブを開いて陽圧周期を上述のように調節する。または、
図10Bに示すように構成して陽圧と陰圧を電池セルごとに独立して制御することができる。
【0074】
本発明に係るレドックスフロー電池は、
図9A及び
図9Bなどに示すように多数の圧力発生器500を備えることもできるが、
図9Bに示すように一つの圧力発生器で陽圧と陰圧を同時に発生させ、発生する陽圧と陰圧の排出口を互いに異なるように備えることで、エネルギー消費を減らし且つ空間活用を極大化することもできる。
【0075】
また、本発明に係るレドックスフロー電池は、前記流体移送管330の内部に電解液流入防止器350をさらに備えることもできる。
【0076】
一般に、レドックスフロー電池は、バナジウム酸化物、ヒドラジン、ハロゲン化合物、及びその他の酸類などを添加しており、これを運搬するために、耐酸性を有する移送管を使用しなければならない。ただし、上述した特殊な移送管は、一般管に比べて高価であるため、電解液を移送する管以外には一般金属管または空気圧管または空気圧チューブを使用するのが良い。
【0077】
問題は、上述のように流体を用いて電解液流路に圧力を加えるためには前記流体を供給する流体移送管が電解液流路に連通して備えられなければならないが、陽圧供給または陰圧供給過程で電解液が流体移送管側へ逆流するおそれもあることである。
【0078】
したがって、かかる問題点を解決するために、流体移送管内に弁膜、遮断弁、逆止弁、及び浮遊弁から選ばれるいずれか一つまたは二つ以上の電解液流入防止器をさらに備えて電解液の逆流を防ぐことができる。
【0079】
図11を参照して前記電解液流入防止器350の一例をさらに詳細に説明すると、前記電解液流入防止器は、流体移送管と流体制御部ハウジングが隣接するところに備えるが、電解液によって浮遊することができ、網状構造などの内部に気孔を持つが、流体移送管に当接しうる面は流体移送管を閉鎖することができるようにシート形状を有する物体であり得る。
【0080】
図11の上側に示すように、前記電解液流入防止器は、流体移送管内で浮遊するように一定サイズ以上の直径を有することがよく、流体移送管の直径よりは小さいことが好ましい。一方、前記流体移送管は、前記制御部ハウジングに直接接続される部分の直径は前記電解液流入防止器の直径よりも小さく備えられ、電解液流入防止器が離脱しないようにすることができる。
【0081】
図11の下側に示すように、流体移送管に陰圧がかかって制御部ハウジング内の電解液の水位が上昇すると、前記電解液流入防止器が流体移送管を塞いで一種のバルブの役割を果たして電解液の流入を防止することができる。
【0082】
但し、
図11のような浮遊弁の場合、陰圧と陽圧を供給するポンプの作動に応じて、流体の制御部ハウジングの流入を完全に防ぐことは難しいおそれがある。よって、
図12に示すように、前記流体移送管の断面を完全に覆うように弁膜形態の電解液流入防止器を導入することもできる。
【0083】
図12を参照してこれをさらに詳細に説明すると、前記弁膜は、前記流体移送管と制御部ハウジングとの連結を完全に閉鎖するが、弾性を持つ材質から構成され、流体移送管を介して伝達される圧力を制御部ハウジング内へ効果的に伝達することができる。すなわち、
図12の上側に示すように、制御部ハウジングに陽圧を伝達する場合には、前記弁膜も陽圧に合わせて流体移送管から制御部ハウジングの方向へ伸びる。よって、制御部ハウジング内の圧力が高くなるので、自然に内部の逆止弁が作動して電解液が電池セル側へ移動する。
【0084】
図12の下側に示すように、制御部ハウジングに陰圧を伝達する場合には、前記弁膜も陰圧に合わせて制御部ハウジングから流体移送管の方向に伸びる。この場合、制御部ハウジング内の圧力が低くなりながら、内部の逆止弁が作動して電解液が電解液タンクから制御部ハウジングの方向へ移動する。
【0085】
ただし、前記電解液流入防止器は、
図11または
図12に示すように、浮遊体、または圧力により変形が可能な弁膜で流体移送管を完全に塞ぐ形態で備えることもできるが、この他にも、電解液の流入を防ぐことができながらも、圧力を流体制御部へ伝達することができる構造であれば、本発明で区別なく適用することができる。
【0086】
また、前記電解液流入防止器は、一つまたは二つ以上の異なる構造を混合して使用することができる。すなわち、一つまたは二つ以上の浮遊体または弁膜形態の電解液流入防止器を混合して使用してもよい。
【0087】
前記電解液流入防止器は、電解液が直接触れ合う構造なので耐酸性を維持し、前述のように弁膜形態である場合には、流動性を有する物質からなるのがよい。例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなどの高分子、アクリルゴム、フッ素ゴムなどのゴム類、またはアルミニウムなどの金属などがあり、この他にも、上述のような物性を有する物質であれば制限なく使用可能である。
【0088】
また、本発明に係るレドックスフロー電池は、電解液に混合できる不純物を除去するために流体移送管330に流体濾過器360をさらに備えることができる。
【0089】
流体制御部に圧力を伝達する流体が空気または酸素を含む気体である場合、電解液が酸化して電池セルの充放電効率が低下するおそれがある。これを解消するために、酸素などの不純物が電解液に混合されないように、
図11及び
図12の如く流体移送管に流体濾過器をさらに備えるのがよい。このとき、流体濾過器は、各流体制御部に設置するか、或いは全体流体制御部を連結して一つの流体移送管に設置することが可能であり、修理のために交換することも可能である。
【0090】
本発明において、前記流体濾過器は、電解液の性能を低下させる成分、例えば、酸素、水分などを予め除去するためのもので、これらの成分以外にも、電解液の性能に影響を与える物質であればいずれも除去することができる該当成分除去用フィルターなどを含むことが好ましい。一例として、脱酸素剤または脱酸素装置が流体移送管の一部に装着されてもよい。
【0091】
本発明に係るレドックスフロー電池は、上述のような構成に加えて、外部から電気的に接続するための電気端子、前記流体制御部などを制御することが可能な制御部、及びモニター部と、これらを接続する端子または接続口がさらに備えられてもよい。
【0092】
また、前記流体濾過器を応用して外部からの供給圧力を利用した回転体を備え、この回転体の回転によるポンプ代替構造を構成することも可能である。
【0093】
図13は前述した電池モジュールを多数接続して大容量のシステムを構成する実施形態を示す図である。電池モジュール100は、直列または並列に電気的に接続されるか、或いは電気的に独立して構成され得る。各電池モジュールの流体制御部の駆動のために外部から圧力を伝達することができるように圧力発生器に連結するが、電池モジュールの大きさ及び個数に応じて、圧力発生器の個数も一つまたは多数に構成することができる。
【0094】
前述したように、本発明に係るレドックスフロー電池は、高価な化学用ポンプを使用することなく、電解液を電解セルまたはスタックへスムーズに循環させることができる。また、それぞれの電池モジュールごとに電解液タンクを備えるか、或いは一定の数の電池モジュールごとに電解液タンクを共有することができるので、従来のレドックスフロー電池に比べて電解液の循環距離が一層短く、これにより高価な耐酸性移送管の使用比重を大幅に減らすことができる。
【0095】
また、電解液の循環距離が短いので、従来のレドックスフロー電池に比べて応答性が大幅に改善でき、電解液タンクが分離できる。このとき、電解液が各電池モジュール内でのみ循環するので、シャント電流が発生しない。
【0096】
本発明に係るレドックスフロー電池は、上述のような特性により、電藏庫と呼ばれる高電圧大容量のエネルギー貯蔵システム(energy storage system)を効果的に実現することができる。また、高価な化学用ポンプを多数使用する必要がなくてコストを削減することができ、それぞれの電池モジュールを独立して設置、交換することができるので、運用効率性が向上できる。これだけでなく、電池モジュールの性能バラツキを考慮して、類似の性能を有する電池モジュールごとに区分して、大容量のエネルギー貯蔵システムを実現することができるので、システムの効率を向上させることができる。
【0097】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明に係るレドックスフロー電池をさらに詳細に説明する。ただし、下記実施例及び比較例は、本発明の理解を助けるために記載されるものなので、本発明を制限するものではない。
【0098】
電池セル、電解液タンク及び流体制御部を
図7のような形態で連結するが、各電池セルの電解液出入口と排出口に流量測定器を連結して電解液の流量を測定した。
【0099】
このとき、各実施例に使用された電池セルは、2つの炭素電極、2つの集電体、4つのガスケット及び1つの分離膜から構成された。前記電極及び分離膜の活性領域は約49cm
2であった。分離板は炭素素材でできており、分離膜はフッ素系分離膜を使用した。電解液はバナジウム電解液を使用し、バナジウム濃度は1.6mol乃至2.0molであった。このとき、バナジウム電解液の比重は約1.4である。
【0100】
また、各実施例に使用された電池モジュールは、弁膜構造を持つ2つの流体制御部を備え、前記電解液の流れ速度は、約100mL/minであった。
【0101】
上述のように構成された電池モジュールにおいて流体制御部に供給される圧力を調節して電解液を循環させるが、流体制御部の圧力供給周期は2秒とし、陽圧供給時間を下記表1のとおりに調節して1分間反復的に電池モジュールを作動させた。このとき、電池セルから排出される電解液の流量を1分単位で測定した後、その平均値を計算した。
【0103】
表1から分かるように、二つの流体制御部が同じ周期及び異なる位相で制御される場合(実施例1)、平均流量よりもさらに少ない流量が流れる瞬間が発生するが、実施例2乃至4のように各流体制御部の圧力供給周期の位相が異なるように調節する場合、各流体制御部の陽圧供給時間を陰圧供給時間よりも増やすと、平均流量よりもさらに多い流量が瞬間的に流れるから、セルの性能を維持するために必要な最小限の流量よりもさらに多い流量が確保されるので、さらに向上した性能で安定的なセル駆動が可能である。
【0104】
上述したように、本発明の好適な実施例及び比較例を参照して、本発明に係るレドックスフロー電池の大略的な連結構造などを説明したが、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、下記特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び領域から逸脱することなく、本発明に多様な修正及び変更を加え得ることが理解できるだろう。