(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1の工法では、仮柱を建てた状態で伸縮できず、高圧線の通し箇所等において高所作業車の仮アームでの架線物の移設が必要となる。このため、当該工法の適用箇所が限定され、例えば、高圧線の振り分け箇所や高圧線2回線の通し箇所、三角配線等に適用することができない。また、仮柱の上部をクレーンブームの先端で把持しているため、高所作業車での作業時にクレーンブームが支障となり、架線物の移設、アームの取り付けや取り外し、既設電柱の切断等の各種作業が困難となる場合がある。さらに、仮柱専用の特殊車両が必要であるため、装置の低価格化が困難である。
【0006】
本発明は、このような背景に基づいてなされたものであり、架設物の状態に関わらず容易に設置でき、架線物の把持や移動が可能な仮支持柱、電柱建替支援装置及び電柱建替方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る仮支持柱は、
互いに対向するように径方向に延び、クレーンの先端に設けられた把持具で把持可能な一対の突起を備える第1の管と、
前記第1の管の内部に配置され、前記第1の管の先端部から長手方向に引き出すことが可能な第2の管と、
前記第1の管の基端部に接続され、前記第1の管を首振り可能に支持するベースと、
を備える。
【0008】
前記第1の管は、長手方向に延びるスリットを備え、
前記第2の管は、その基端部から径方向に延び、クレーンのフックを係止可能な係止孔が形成され、前記スリットから前記第1の管の外部に突出し、前記スリット内を移動可能なフックを備えてもよい。
【0009】
前記第1の管は、基端面から長手方向に延びるように形成された中心穴を備え、
前記ベースは、地面に設置されるベース本体と、前記ベース本体に対して首振り可能に支持され、前記中心穴に挿入可能な挿入部と、を備え、
前記挿入部は、前記中心穴に挿入された場合にロックピンにより前記第1の管に固定されてもよい。
【0010】
先端部が絶縁材料で形成され、前記第2の管の内部に配置され、前記第2の管の先端部から長手方向に引き出すことが可能な第3の管を備え、
前記第1の管及び前記第2の管は、いずれも鋼材で形成されていてもよい。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の第2の観点に係る電柱建替支援装置は、
長手方向に伸縮可能であって、互いに対向するように径方向に延びる一対の突起を備える仮支持柱と、
長手方向に伸縮可能なブームの先端部に、前記一対の突起を把持可能な仮支持柱把持具が取り付けられたクレーンと、
前記仮支持柱の先端部に設けられ、架線物を把持可能な架線物把持具と、
を備える。
【0012】
前記仮支持柱把持具は、
前記ブームの先端部に取り付けられるクレーン取付部と、
前記クレーン取付部に対して前記ブームの長手方向と交差する方向に延びる回転軸の周りに回転可能に支持され、前記一対の突起のそれぞれを径方向両側から挟み込む仮支持柱把持部と、
を備えてもよい。
【0013】
前記仮支持柱把持部は、その両側面部に設けられ、前記両側面部から対向するように延び、前記仮支持柱を吊り上げるためのスリングを係止可能な一対のフックを備えてもよい。
【0014】
前記仮支持柱は、前記一対の突起を備える第1の管と、前記第1の管の内部に配置され、前記第1の管の先端部から長手方向に引き出すことが可能な第2の管と、を備え、
前記クレーンは、ワイヤの繰り出しと巻き取りとが可能なウィンチを備え、
前記ワイヤは、その端部が前記第2の管に係止され、前記ウィンチの動作に応じて前記第1の管に対して前記第2の管を長手方向に移動させてもよい。
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の第3の観点に係る電柱建替方法は、
仮支持柱の基端部が地面に接触した状態で、クレーンで前記仮支持柱を吊り上げる工程と、
前記仮支持柱の先端部に設けられ、互いに対向するように径方向に延びる一対の突起を、前記クレーンの先端部に取り付けられた架線物把持具で把持することで、前記仮支持柱を地面に対して略鉛直方向に延びるように設置する工程と、
既設電柱に架設されていた架線物を地面に設置された前記仮支持柱に移設する工程と、
前記既設電柱を地面から撤去する工程と、
撤去された前記既設電柱が地面に設置されていた位置に新設電柱を建て込む工程と、
前記仮支持柱に移設されていた架線物を地面に建て込まれた前記新設電柱に移設する工程と、
地面に設置された前記仮支持柱を撤去する工程と、
を含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、架設物の状態に関わらず容易に設置でき、架線物の把持や移動が可能な仮支持柱、電柱建替支援装置及び電柱建替方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る仮支持柱、電柱建替支援装置及び電柱建替方法の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面においては、同一又は同等の部分に同一の符号を付す。
【0019】
実施の形態における「地面」は、コンクリートやアスファルト等で舗装された面、建築物や構造物等により構成された面など、仮支柱柱を設置可能なあらゆる面を含むものとする。
【0020】
図1を参照して、実施の形態に係る電柱建替支援装置1の全体的な構成を説明する。
図1は、電柱建替支援装置1の構成を示す正面図である。
【0021】
電柱建替支援装置1は、既設電柱を取り外す前に、既設電柱に支持架設されている高圧線、低圧線及び通信線等の架線物を、既設電柱が設置されていた位置に新設電柱が設置されるまで、既設電線の撤去や新設電柱の設置の妨げとならない位置に一時的に移設する装置である。
【0022】
電柱建替支援装置1は、長さ方向に伸縮可能な仮支持柱10と、仮支持柱10の先端部に取り付けられ、架線物である高圧線を把持する高圧線把持具20(架線物把持具)と、仮支持柱10が地面に対して略鉛直方向に延びるように仮支持柱10の先端部を支持すると共に、仮支持柱10を伸縮させるクレーン30と、を備える。クレーン30の先端部には、仮支持柱10の先端部を把持する仮支持柱把持具40が設けられている。
【0023】
電柱建替支援装置1は、仮支持柱把持具40で仮支持柱10を把持した状態で、高圧線把持具20で既設電柱に架設されていた高圧線を把持し、その後、クレーン30で仮支持柱10を長手方向に伸ばすことで、高圧線把持具20で把持された高圧線を電柱の取替作業の妨げとならない位置に待避させることができる。高圧線を含む架線物が待避されている間に、既設電柱を撤去して新設電柱を設置すればよい。
【0024】
次に、
図2を参照して、仮支持柱10の構成を説明する。
図2(a)は、仮支持柱10の構成を示す正面図であり、
図2(b)は、仮支持柱10の構成を示す側面図である。なお、
図2では、外管11のフック11f、11gの図示を省略している。
【0025】
仮支持柱10は、外管11(第1の管)と、外管11の内部に配置され、外管11に対して長手方向に移動可能な中管12(第2の管)と、中管12の内部に配置され、中管12に対して長手方向に移動可能な内管13(第3の管)と、外管11の基端部に着脱自在に接続され、外管11を首振り可能に支持するベース14と、を備える。
【0026】
外管11と中管12と内管13とは、いずれも円筒形状の管である。外管11の内径は、中管12の外径よりもわずかに大きく、中管12の内径は、内管13の外径よりもわずかに大きい。中管12の先端部は、外管11の先端部から引き出すことができ、内管13の先端部は、中管12の先端部から引き出すことができるように構成されている。外管11と中管12と内管13とは、互いに入れ子状に配置されているため、仮支持柱10は、長手方向に伸縮可能に構成されている。
【0027】
外管11及び中管12は、座屈しない程度の剛性を必要とするため、いずれも鋼材で形成されている。他方、内管13は、高圧線からの電流を遮断するため、少なくとも先端部が、例えば、繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics:FRP)等の絶縁材料で形成されている。内管13の少なくとも先端部が絶縁材料で構成されているため、線間の狭い高圧線や三角配線等に内管13を接近させることができる。
【0028】
外管11は、先端部から互いに対向するように径方向に延びる一対の突起11aと、壁面を貫通して長手方向に延びるスリット11bと、を備える。
【0029】
一対の突起11aは、仮支持柱把持具40に把持されるように、いずれも円柱形状に形成されている。
【0030】
スリット11bは、中管12のフック12aを受け入れ可能に形成され、フック12aが長手方向(上下方向)に移動可能であるが、軸周りには回転しないように規制する。
【0031】
図1に戻り、外管11の中間部付近には、仮支持柱把持具40のフック44から吊り下げられたスリング45のフックを係止可能な一対のフック11fが径方向に対向する位置に設けられている。フック11fは、仮支持柱10をクレーンで吊り下げる場合に、スリング45のフックに係止される。なお、スリング45は、リング状に形成された紐であり、その先端にフックが設けられている。
【0032】
外管11は、フック11fよりも下側であって径方向に対向する位置に設けられ、スリング45のフックを係止可能な一対のフック11gをさらに備える。フック11gは、仮支持柱把持具40で一対の突起11aを押さえ込んだ後に、スリング45のフックを係止することで、クレーン30のブームを伸ばしたり起こしたりしても、仮支持柱把持具40から一対の突起11aが外れないように規制する。
【0033】
図2に戻り、中管12は、その基端部に設けられ、径方向に突出するフック12aと、その先端部に設けられ、壁面を径方向に貫通する複数の雌ねじ孔と、複数の雌ねじ孔にそれぞれねじ込まれる複数のボルト12bと、を備える。
【0034】
フック12aは、スリット11bの幅に対応する厚さで形成され、クレーン30のフック等が係止可能な係止孔を備える。フック12aは、スリット11b内で移動可能となるようにスリット11bの幅よりも小さな厚さ(例えば、厚さ12mm)で形成されている。
【0035】
フック12aは、外管11のスリット11bから外部に突出するように配置されている。このため、フック12aの係止孔にクレーン30のフック等を係止させ、クレーン30を動作させてフック12aをスリット11bに沿って移動させることで、中管12を長手方向に移動させることができる。
【0036】
ボルト12bは、中管12の雌ねじ孔にねじ込まれた場合に、内管13の壁面に接触可能な長さのボルトである。中管12の内部に配置された内管13の壁面に向かってボルト12bを締め付けることで、中管12に対して内管13を固定できる。
【0037】
内管13は、その先端部から互いに対向するように径方向に延びる吊上げフック13aと、吊上げフック13aよりも先端側に設けられ、高圧線把持具20を取り付け可能な高圧線把持具取付部13bと、を備える。
【0038】
吊上げフック13aは、中管12から内管13を引き上げるため、高所作業車のウィンチ等に係止可能に構成されている。
【0039】
高圧線把持具取付部13bは、例えば、横断面が矩形状に形成され、高圧線を把持する高圧線把持具20の基端部に設けられた仮アームを取り付け可能に形成されている。
【0040】
次に、
図3を参照して、中管12と内管13との関係を説明する。
図3(a)は、中管12に対して内管13が移動可能な状態を示す図であり、
図3(b)は、中管12に対して内管13がロックされた状態を示す図であり、
図3(c)は、内管13の一部の構成を示す図である。
図3(a)、(b)では、理解を容易にするため、内管13本体の図示を省略している。
【0041】
中管12は、その内壁面に溶接等で固定される複数の支持板15を備える。支持板15は、例えば、直角三角形の形状を有する鋼板であり、直角三角形の平面が内壁面に当接するように固定されている。各支持板15は、径方向に対向する位置に2つの列を形成するように、中管12の長手方向に一定の間隔で固定されている。
【0042】
内管13は、
図3(c)に示すように、その外壁面に溶接等で固定される複数の下降防止板16を備える。下降防止板16は、例えば、二等辺三角形の形状を有する鋼板であり、二等辺三角形の平面が外壁面に当接するように固定されている。各下降防止板16は、径方向に対向する位置に2つの列を形成するように、内管13の長手方向に一定の間隔で固定されている。
【0043】
支持板15と下降防止板16とは、仮支持柱10が地面に対して略鉛直方向に延びるように設置された場合、互いに対向する辺が水平面上に延びるように配置され、内管の重量を支えることができる程度の大きさで形成されている。このため、支持板15は、下降防止板16を上方から接触させると、中管12に対して内管13が下向きに移動しないように支持することができる。
【0044】
したがって、中管12と内管13とを相対的に回転させ、中管12の支持板15が設けられている位置と内管13の下降防止板16が設けられている位置とを一致させると、支持板15は下降防止板16に支持される。他方、この状態から上から見て時計方向に90°回転させると、支持板15は下降防止板16に接触しないため、内管13を中管12に対して移動させることができる。
【0045】
支持板15及び下降防止板16は、それぞれ同一の間隔で中管12及び内管13に固定されていることが好ましい。支持板15及び下降防止板16をそれぞれ中管12及び内管13に対して同一の間隔で、例えば、0.5m毎に設けるならば、中管12に対して内管13を所定の単位で、例えば、0.5m単位で伸縮させることができる。
【0046】
次に、
図4を参照して、外管11の基端部の構成をさらに説明する。
図4は、ベース14の一部が挿入された外管11を長手方向に切断した断面図である。
【0047】
外管11は、基端面から長手方向に延びるように形成され、ベース14の一部が内部に挿入される中心穴11cと、基端部に設けられ、壁面から中心穴11cに向かって径方向に貫通する一対の貫通孔11dと、一対の貫通孔11dに挿通可能であって、中心穴11cに挿入されたベース14を外管11に固定するロックピン11eと、をさらに備える。
【0048】
中心穴11cは、ベース14の外管挿入部14fを挿入可能に形成されている。中心穴11cは、外管挿入部14fの断面に対応する断面形状を有している。
【0049】
ロックピン11eは、中心穴11cに挿入された外管挿入部14fを外管11に固定する固定具である。ロックピン11eは、例えば、細長部材であるピンと、ピンの基端部に設けられた操作部と、ピンの先端部に設けられ、ピンに対して径方向に突没可能なポール又はボールと、操作部に設けられ、ポール又はボールの突没を操作するボタンと、を備える。ロックピン11eは、一対の貫通孔11dに挿通された場合に、ポール又はピンが外管11の外部に位置する程度の長さで形成されている。
【0050】
次に、
図5を参照して、実施の形態に係るベース14の構成を説明する。
図5(a)は、ベース14の構成を示す図であり、
図5(b)は、ベース14に外管11が接続されている様子を示す図である。
図5では、理解を容易にするために、ベース14の一部の構成が自重や外管11の重量で倒れずに、真っ直ぐ上方に延びている様子を図示している。
【0051】
ベース14は、地面に接触する木製底板14aと、木製底板14aの上面部にボルト等で固定された錘14bと、錘14bの上面部に固定され、錘14bから垂直方向に延びるアイボルト14dと、アイボルト14dと係合するUボルト14eと、Uボルト14eの基端部が固定され、外管11の中心穴11cに挿入可能に形成された外管挿入部14fと、を備える。
【0052】
木製底板14aと錘14bとは、ベース14のベース本体を構成する。木製底板14aは、例えば、複数の木材の板を積層して形成されている。木製底板14aは、アスファルト等の舗装の上に設置されたとしても、舗装を傷つけることがないように、ベース14に設けられている。
【0053】
錘14bは、複数の鋼板を厚さ方向に重ねて構成されている。錘14bは、例えば、鋼板の両側端部がそれぞれ固定具14cで把持され、溶接されることで一体化している。
【0054】
アイボルト14dとUボルト14eとは、ベース本体と外管挿入部14fとを互いに首振り可能に連結する手段である。アイボルト14dは、頭部にリング又はリング状の係止部を備えたボルトである。
【0055】
Uボルト14eは、U字状であって両端部に雄ねじが形成されたボルトである。Uボルト14eは、その両端部が外管挿入部14fの下面部に固定されている。
【0056】
外管挿入部14fは、外管11の中心穴11cに挿入可能に構成された部材である。外管挿入部14fは、下面部に平行な向きに延びており、
図4に示すように、外管11の貫通孔11dに挿通されたロックピン11eを挿通可能な貫通孔を備える。
【0057】
次に、
図6を参照して、高圧線把持具20の構成を説明する。
図6は、高圧線把持具20が高圧線2を把持している様子を示す図である。
【0058】
高圧線把持具20は、内管13の高圧線把持具取付部13bに取り付けられる仮アーム21と、仮アーム21から上方に延び、高圧線2の位置を規制する4面ローラ22と、仮アーム21から互いに対向する向きに延び、仮アーム21に対して上下方向に旋回可能に支持された一対の碍子23と、碍子23の先端部に回転可能に支持され、高圧線2を把持する一対の高圧線把持部24と、を備える。
【0059】
仮アーム21は、高圧線把持具取付部13bに上方から装着され、内管13に対して軸周りに回転可能に支持されている。このため、架設物の状況に応じて高圧線把持具20の向きを調整することができる。また、仮アーム21は、その両側に突出して設けられ、碍子23の基端部を回転可能に支持する回転支持部21aを備える。
【0060】
4面ローラ22は、絶縁材料で形成され、フレームに回転可能に支持された4本のローラが井桁状に組み合わされて構成されている。4本のローラで高圧線2を取り囲むため、高圧線2が湾曲している場合であっても、4面ローラ22内に高圧線2を保持することができる。
【0061】
碍子23は、高圧線2と仮アーム21とを絶縁する部材である。碍子23は、引張強度が必要なため、例えば、耐張型ポリマー碍子であることが好ましい。碍子23の基端部は、仮アーム21の回転支持部21aにピン等を介して回転可能に支持されている。
【0062】
高圧線把持部24は、例えば、アルミ合金等の比較的軽量な金属材料で形成され、高圧線2を径方向から挟み込むことで高圧線2を把持する。高圧線把持部24は、横断面の形状がコの字状であって、長手方向に延びる内部空間に高圧線2を収容する本体24aと、本体24aの開口部側に回転可能に支持され、高圧線2を本体24aの内部空間に閉じ込めることが可能な止め具24bと、を備える。
【0063】
高圧線把持部24は、その中心部が碍子23の先端部に回転可能に支持され、碍子23が延びている平面と平行な平面上を回転するように構成されている。
【0064】
次に、
図7を参照して、高圧線把持具20が取り付けられた仮支持柱10を支持するクレーン30の構成を説明する。
図7は、クレーン30の構成を示す正面図である。
【0065】
クレーン30は、例えば、ミニクローラークレーン(カニクレーン)やクレーン付トラック等である。ミニクローラークレーンであれば、例えば、小型トラックで運搬され、トラッククレーンが作業できない山間部、不整地、狭小地等での作業が可能である。
【0066】
クレーン30は、基台31と、基台31に回転可能に支持された複数のクローラー32と、基台31から延び、クローラー32を地面から持ち上げることが可能な複数のアウトリガー33と、基台31から上方に延び、長手方向に伸縮可能なブーム34と、基台31内部に設けられたウィンチ35と、ウィンチ35に巻き取り可能に接続されたワイヤ36と、ワイヤ36の先端部に設けられたフック37と、を備える。
【0067】
ブーム34の先端部には、仮支持柱10を把持する仮支持柱把持具40が着脱自在に設けられている。クレーン30は、例えば、作業者がリモコンを操作することで、ブーム34の伸縮や起伏、ワイヤ36の巻き上げ等が可能である。
【0068】
図1に戻り、電柱建替支援装置1が現場で組み立てられると、ワイヤ36は、フック37を介して中管12のフック12aに接続される。このため、ウィンチ35を操作してワイヤ36を巻き上げることで、外管11に対して中管12を容易に引き上げることができる。
【0069】
次に、
図8を参照して、仮支持柱把持具40の構成を説明する。
図8(a)は、仮支持柱把持具40の構成を示す平面図であり、
図8(b)は、仮支持柱把持具40の構成を示す側面図である。
【0070】
仮支持柱把持具40は、ブーム34の先端部に取り付けられるクレーン取付部41と、仮支持柱10の先端部を把持する仮支持柱把持部42と、クレーン取付部41と仮支持柱把持部42とを互いに回転可能に接続する回転接続部43と、仮支持柱把持部42に設けられ、仮支持柱10を吊り下げるスリング45(図示せず)が取り付けられるフック44と、を備える。
【0071】
クレーン取付部41は、平面視でコの字状に形成され、ブーム34の先端部にボルト等で固定される。クレーン取付部41は、回転接続部43に接触する基端部と、基端部の両端から垂直に延びる一対の延出部と、一対の延出部の先端側に設けられ、一対の延出部を連結して補強する補強板と、を備える。
【0072】
仮支持柱把持部42は、仮支持柱10の一対の突起11aを上方から把持するように構成されている。仮支持柱把持部42は、回転接続部43に接触する基端部42aと、基端部42aの両端で屈曲しており、先端部が基端部42aに対して垂直に延びる一対の延出部42bと、を備える。一対の延出部42bの先端部は、互いに平行に配置されている。
【0073】
延出部42bには、外管11の突起11aの上方から下向きに移動して、突起11aを径方向で挟み込む突起挟持部42cが形成されている。突起挟持部42cは、突起11aを径方向の対向する位置で挟み込み、地面に対して略鉛直方向に設置された外管11が基端部を支点にして倒れないように支持する。
【0074】
回転接続部43は、ボルト43aと、ボルト43aにねじ込み可能なナット43bと、ボルト43aを挿通可能な貫通孔を有し、クレーン取付部41と仮支持柱把持部42とに挟み込まれるリング状のベアリング43cと、を備える。ベアリング43cは、例えば、樹脂製ベアリングである。ボルト43aは、クレーン取付部41の基端部の貫通孔と、ベアリング43cの貫通孔と、仮支持柱把持部42の基端部42aの貫通孔と、を貫通している。
【0075】
回転接続部43は、クレーン取付部41と仮支持柱把持部42とを、クレーン30のブーム34の長手方向と交差する方向に延びる回転軸(ボルト43aの中心軸)の周りに回転可能に接続するように構成されている。
【0076】
一対のフック44は、それぞれ互いに対向するように一対の延出部42bの両側面部から突出している。フック44は、U字状に形成され、その両端部がそれぞれ延出部42bの側面部に固定されている。なお、フック44に係止されるスリング45は、外管11のフック11fに係止された状態で外管11を略垂直方向に吊り上げた場合、突起11aが仮支持柱把持具40よりも少し下側に位置する程度の長さであることが好ましい。
【0077】
次に、
図9(a)〜
図9(h)を参照して、電柱建替支援装置1を用いて作業者が実施する電柱の取替作業の流れを説明する。
【0078】
まず、
図9(a)に示すように、仮支持柱10をクレーン30で吊り上げる。具体的には、
図1に示す仮支持柱10の中間部付近に設けられたフック11fとクレーン30に取り付けられた仮支持柱把持具40のフック44とにスリング45を係止させ、クレーン30のブーム34を起こすことで、仮支持柱10の基端部を地面に接触させたまま仮支持柱10を吊り上げる。
【0079】
次に、
図9(b)に示すように、仮支持柱10の基端部にベース14を取り付ける。より詳細に説明すると、まず、クレーン30を操作して仮支持柱10を地面に垂直な方向に立てる。すると、
図9(b)の上側の拡大図に示すように、仮支持柱10が
図8に示す仮支持柱把持具40の延出部42bの間に入り込む。次に、クレーン30のブーム34をゆっくり縮めることで、
図4に示すベース14の外管挿入部14fが外管11の中心穴11cに挿入されるように外管11を移動させる。次に、外管11の一対の貫通孔11dとベース14の外管挿入部14fの貫通孔とにロックピン11eを差し込むことで、外管11とベース14とを固定する。
【0080】
次に、
図9(c)に示すように、仮支持柱把持具40に仮支持柱10の先端部を把持させる。より詳細に説明すると、まず、クレーン30のブーム34をさらに起こしながら長さを縮めることで、
図9(c)の拡大図に示すように、外管11に設けられた一対の突起11aを仮支持柱把持具40に把持させる。このとき、外管11の基端部がベース14に支持されるため、スリング45に加えられていた引張荷重が緩和され、スリング45は緩むことになる。仮支持柱把持具40により一対の突起11aを把持した後、スリング45の先端に設けられたフックを
図1に示す外管11のフック11fから外し、すぐ下にあるフック11gに係止させることにより、ブーム34を伸ばした状態でも一対の突起11aが把持され続ける。
【0081】
次に、
図9(d)に示すように、中管12から内管13を所望の長さだけ引き出して固定する。より詳細に説明すると、まず、高所作業車のウィンチを内管13の吊上げフック13aに取り付け、ウィンチを巻き上げることで中管12から内管13を引き出す。次に、所定の長さだけ引き出した時点で、中管12に対して内管13を約90°回転させることで、中管12に対して内管13を位置決めする。次に、
図2に示す中管12の頭部に設けられた4本のボルト12bを内管13に向けてねじ込むことで、中管12に対して内管13を固定する。
【0082】
次に、
図9(e)に示すように、高圧線把持具20を仮支持柱10に取り付け、高圧線2を高圧線把持具20に把持させる。より詳細に説明すると、まず、内管13の高圧線把持具取付部13bに
図6に示す高圧線把持具20の仮アーム21を取り付ける。次に、クレーン30を操作してワイヤ36を巻き上げることで、外管11から中管12を引き出し、仮アーム21を高圧線2に近づける。次に、高圧線2に対する高圧線把持部24の位置を調整し、さらにワイヤ36を巻き上げて高圧線2を4面ローラ22内に移動させる。次に、ホットスティック(間接活線工具)を用いて高圧線把持部24の位置や向きを操作して、高圧線把持部24で高圧線2を把持させる。
【0083】
次に、
図9(f)に示すように、高圧線把持具20が取り付けられた高圧線2を振り分けアーム5と一緒に既設電柱3から取り外す。より詳細に説明すると、まず、既設電柱3に高圧線2を架設している振り分けアーム5のアームタイレスバンドを緩める。次に、クレーン30のブーム34の伸縮・起伏操作をして、振り分けアーム5にかかる既設電柱の荷重を取り除いた後、クレーン30のワイヤ36を少しずつ巻き上げて仮支持柱10を伸ばし、高圧線2を持ち上げることで、高圧線2を既設電柱3の上端部から取り外す。
【0084】
なお、低圧線は、既設電柱3から取り外し、一つに束ねてバンド等で仮支持柱10に固定すればよい。また、通信線は、既設電柱3から取り外し、Jフック等を用いて仮支持柱10に固定すればよい。
【0085】
次に、
図9(g)に示すように、既設電柱3を撤去し、既設電柱3が設置されていた位置に新設電柱の建て込みを行う。仮支持柱10を伸ばすことで高圧線2を上方に持ち上げているので、高圧線2に妨げられることなく既設電柱3の撤去と新設電柱の建て込みとを行うことができる。
【0086】
次に、
図9(h)に示すように、仮支持柱10から新設電柱4に高圧線2が取り付けられた振り分けアーム5を移設する。より詳細に説明すると、まず、クレーン30(図示せず)を操作して、新設電柱4の上端部に高圧線2が取り付けられた振り分けアーム5を移設する。次に、高圧線2から高圧線把持具20を取り外し、その後クレーン30(図示せず)を操作して仮支持柱10を撤去する。以上が、電柱の取替作業の流れである。
【0087】
実施の形態に係る仮支持柱10は、外管11の基端部が地面に設置されるベース14に対して首振り自在に支持され、外管11の先端部に設けられた一対の突起11aが仮支持柱把持具40に把持されている。このため、ベース14を設置する際に厳密に水平を取る必要が無く、仮支持柱10に多少の水平荷重が加わったとしても、仮支持柱10を安定した状態で設置することができる。また、クレーン30を操作することで、高圧線2等を把持したまま仮支持柱10の位置を調整することができる。
【0088】
また、実施の形態に係る仮支持柱10は、長手方向に伸縮するように構成されている。このため、仮支持柱10の組立に要する時間を低減できると共に、現場で架線物の付設状況に応じて仮支持柱10の長さを調整できるため、電柱の建て替えを円滑に行うことできる。
【0089】
さらに、実施の形態に係る電柱建替支援装置1は、仮支持柱10の傾きや長さをクレーン30のリモコンで操作可能に構成されている。このため、作業員が一人であっても仮支持柱10の設置や仮支持柱10への架線物の仮移設等を容易に行うことができる。また、クレーン付トラックのように既存のクレーン30を活用して構成できるため、安価なコストで導入することできる。さらに、少人数の作業員で迅速な設置が可能であるため、稼働率を向上させることができる。
【0090】
本発明は上記の実施形態に限られず、以下に述べる変形も可能である。
【0091】
(変形例)
上記実施の形態では、仮支持柱10が外管11と中管12と内管13とを備えていたが、本発明はこれに限られない。仮支持柱10は、例えば、外管11と中管12とで構成されていてもよく、中管12と内管13とで構成されていてもよい。また、中管12は、一つの管の場合に限られず、入れ子状に配置された複数の管で構成されていてもよい。
【0092】
上記実施の形態では、外管11と中管12と内管13とが円筒形状に形成されていたが、本発明はこれに限られない。外管11と中管12と内管13とは、互いに入れ子状に構成され、長手方向に相対的に移動可能であればよく、例えば、三角形、四角形、他の多角形、楕円形等の断面を有していてもよい。
【0093】
上記実施の形態では、一対の突起11aが円柱形状に形成されていたが、本発明はこれに限られない。一対の突起11aは、仮支持柱把持具40で把持可能であればいかなる形状であってもよく、例えば、その断面が三角形、四角形、他の多角形、楕円形等であってもよい。また、一対の突起11aの表面には、滑り止めのために凹凸を設けてもよく、粗面加工を施してもよい。
【0094】
上記実施の形態では、中管12と内管13とは、中管12の雌ねじ孔にねじ込まれたボルト12bで中管12と内管13とを固定されていたが、本発明はこれに限られない。中管12と内管13とを固定する手段はいかなる手段であってもよく、例えば、中管12及び内管13のそれぞれに形成された貫通孔にロックピンを挿通可能に構成してもよい。
【0095】
上記実施の形態では、ベース本体と外管挿入部14fとをアイボルト14dとUボルト14eとで連結していたが、本発明はこれに限られない。ベース本体と外管挿入部14fと首振り可能に連結できれば、いかなる連結手段であってもよいが、例えば、ボールジョイント等であってもよい。
【0096】
上記実施の形態では、ベース14の木製底板14aが地面に接触していたが、本発明はこれに限られない。例えば、仮支持柱10を設置する位置の近傍に穴等が掘られている場合、仮支持柱10の穴等への落下を防ぐために、ベース14から木製底板14aを取り外して、錘14bを互いに平行に配置された一対のH鋼に固定してもよい。錘14bは、締め付け金具等を用いてH鋼に固定される。
【0097】
また、仮支持柱10の揺れを抑制するために、木製底板14aをゴム製の板状部材に置き換えてもよい。
【0098】
上記実施の形態では、一つの高圧線2を一つの高圧線把持具20で把持していたが、本発明はこれに限られない。高圧線2回線の通し箇所に適用する場合であっても、各高圧線2を高圧線把持具20で把持することで、電柱建替作業を行うことができる。より具体的には、
図10に示すように、上段の高圧線2を把持する仮アーム21を仮支持柱10の中心軸周りに回転させて高圧線把持具20の角度を変えると共に、ベース14に対する仮支持柱10の傾きを調整して上方に伸ばすことで、下段の高圧線2をかわしながら上段の高圧線2を支持可能な状態に仮支持柱10を設置できる。
【0099】
上記実施の形態では、本発明の工法を高圧線の通し箇所に適用していたが、本発明はこれに限られない。例えば、本発明の工法は、高圧線の振分縦配箇所、高圧2回線の高圧縦配線及び三角配線等の現場でも適用可能である。例えば、
図11に示すように、高圧縦配線の場合であっても、仮支持柱10に仮アーム21を上下に並べて複数段(例えば2段又は3段)設けることにより各高圧線2を把持することができる。
【0100】
上記実施の形態では、高圧線把持具20が高圧線を把持していたが、本発明はこれに限られない。例えば、低圧線、通信線等の他の架線物を把持するように高圧線把持具20を構成してもよい。
【0101】
上記実施の形態は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の趣旨を逸脱しない範囲でさまざまな実施の形態が可能である。各実施の形態や変形例で記載した構成要素は自由に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した発明と均等な発明も本発明に含まれる。
【解決手段】仮支持柱10は、互いに対向するように径方向に延び、クレーンの先端に設けられた把持具で把持可能な一対の突起11aを備える外管11と、外管11の内部に配置され、外管11の先端部から長手方向に引き出すことが可能な中管12と、外管11の基端部に接続され、外管11を首振り可能に支持するベース14と、を備える。