(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6629988
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】光電変換素子
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0224 20060101AFI20200106BHJP
【FI】
H01L31/04 262
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-547535(P2018-547535)
(86)(22)【出願日】2017年10月11日
(86)【国際出願番号】JP2017036751
(87)【国際公開番号】WO2018079257
(87)【国際公開日】20180503
【審査請求日】2018年12月19日
(31)【優先権主張番号】特願2016-209846(P2016-209846)
(32)【優先日】2016年10月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 将典
【審査官】
吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−064214(JP,A)
【文献】
実開平05−093054(JP,U)
【文献】
特開2007−306041(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0126374(US,A1)
【文献】
特開平06−077509(JP,A)
【文献】
実開平04−051156(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0050198(US,A1)
【文献】
国際公開第2011/154033(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02−31/078
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に延伸し、前記第1の方向に直交する第2の方向に第1の間隔をあけて配列された複数のフィンガー電極と、
前記第2の方向において、前記複数のフィンガー電極と前記第1の間隔よりも大きい第2の間隔をあけて配置された識別マークと、
を含む光電変換素子。
【請求項2】
前記識別マークは、略長方形の領域において反射率を異ならせる複数の窪みを有する、
請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
前記第1の方向において、前記複数のフィンガー電極と前記識別マークとは、前記第1の間隔よりも大きい第3の間隔をあけて配置された、
請求項1又は2に記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記識別マークは、前記第1の方向に略平行な第1の辺、第2の辺と、前記第2の方向に略平行な第3の辺、第4の辺とを含む略長方形の領域に形成され、
前記複数のフィンガー電極の内、前記第1の辺と最も近接して並走するフィンガー電極は、前記第1の辺に対して前記第2の間隔をあけて配置され、
前記複数のフィンガー電極の内、前記第2の辺と最も近接して並走するフィンガー電極は、前記第2の辺に対して前記第1の間隔よりも大きい第4の間隔をあけて配置された、
請求項1乃至3のいずれか一つに記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記識別マークは、前記第1の方向に略平行な第1の辺、第2の辺と、前記第2の方向に略平行な第3の辺、第4の辺とを含む略長方形の領域に形成され、
前記複数のフィンガー電極の内、その端部が前記第3の辺と最も近接するフィンガー電極は、前記第3の辺に対して前記第1の間隔よりも大きい第3の間隔をあけて配置され、
前記複数のフィンガー電極の内、その端部が前記第4の辺と最も近接するフィンガー電極は、前記第4の辺に対して前記第1の間隔よりも大きい第5の間隔をあけて配置された、
請求項1、2、4の内のいずれか一つに記載の光電変換素子。
【請求項6】
前記第2の間隔は、前記第1の間隔の2倍よりも小さい、
請求項1乃至5のいずれか一つに記載の光電変換素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1乃至2には、太陽電池セルを識別するための識別マークをレーザ照射によって生成する製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009−528687号公報
【特許文献2】国際公開第2012/176473号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、識別マーク部を避けるようにして集電電極を形成している。しかし、光学スキャナで識別マークを読み取る場合、識別マーク近傍の集電電極の光反射が強く、読み取り効率がよくなかった。
【0005】
本開示は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、光電変換素子における識別マークの読み取り効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示に係る光電変換素子は、第1の方向に延伸し、前記第1の方向に直交する第2の方向に第1の間隔をあけて配列されたフィンガー電極と、前記第2の方向において、前記フィンガー電極と前記第1の間隔よりも大きい第2の間隔をあけて配置された識別マークと、を含む。
【0007】
(2)上記(1)における光電変換素子において、前記識別マークは、略長方形の領域において反射率を異ならせる複数の窪みを有してもよい。
【0008】
(3)上記(1)〜(2)における光電変換素子は、前記第1の方向において、前記フィンガー電極と前記識別マークとは、前記第1の間隔よりも大きい第3の間隔をあけて配置されてもよい。
【0009】
(4)上記(1)〜(3)における光電変換素子において、前記識別マークは、前記第1の方向に略平行な第1の辺、第2の辺と、前記第2の方向に略平行な第3の辺、第4の辺とを含む略長方形の領域に形成され、前記複数のフィンガー電極の内、前記第1の辺と最も近接して並走するフィンガー電極は、前記第1の辺に対して前記第2の間隔をあけて配置され、前記複数のフィンガー電極の内、前記第2の辺と最も近接して並走するフィンガー電極は、前記第2の辺に対して前記第1の間隔よりも大きい第4の間隔をあけて配置されてもよい。
【0010】
(5)上記(1)、(2)、(4)における光電変換素子において、前記識別マークは、前記第1の方向に略平行な第1の辺、第2の辺と、前記第2の方向に略平行な第3の辺、第4の辺とを含む略長方形の領域に形成され、前記複数のフィンガー電極の内、その端部が前記第3の辺と最も近接するフィンガー電極は、前記第3の辺に対して前記第1の間隔よりも大きい第3の間隔をあけて配置され、前記複数のフィンガー電極の内、その端部が前記第4の辺と最も近接するフィンガー電極は、前記第4の辺に対して前記第1の間隔よりも大きい第5の間隔をあけて配置されてもよい。
【0011】
(6)上記(1)〜(5)における光電変換素子は、前記識別マークは、受光面の裏面側に配置されてもよい。
【0012】
(7)上記(1)〜(6)における光電変換素子は、前記第2の間隔は、前記第1の間隔の2倍よりも小さくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は本実施形態に係る光電変換素子の裏面側の概略を示す平面図である。
【
図2】
図2は本実施形態に係る光電変換素子の裏面側の概略を示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の実施形態について、図面を用いて以下に説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る光電変換素子の概略を示す模式的な平面図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係る光電変換素子100は、その受光面の裏面側において集電極を有する。集電極は、集光効率と集電効率の両方を満足させるために、フィンガー電極20と、バスバー電極10とを含む。フィンガー電極20は、互いに略平行に多数配置され、光電変換素子100内部で発生した電気を収集する。バスバー電極10は、フィンガー電極20に比べて幅広であり、そのフィンガー電極20に略垂直に交わり、フィンガー電極20が収集した電気を外部に取り出す。
【0017】
ここで、フィンガー電極20の延伸方向を第1の方向と定義し、この第1の方向に直交するフィンガー電極の配列方向を第2の方向と定義する。
【0018】
図2は、
図1におけるII部の拡大平面図である。
【0019】
フィンガー電極20は、光電変換素子100の裏面側の略全域において第1の間隔W1をあけて配置されているが、略長方形の電極開口領域30においては、フィンガー電極20は形成されていない。略長方形の電極開口領域30は第1の方向に略平行な一対の辺30A、30Bと、第2の方向に略平行な他の一対の辺30C、30Dと、を有する。第1の方向に略平行な一対の辺30A、30Bはそれぞれ、フィンガー電極20に接している。また、第2の方向に略平行な一対の辺30C、30Dは、その辺30C、30Dに直交するフィンガー電極20の端部と接している。
【0020】
電極開口領域30内には、フィンガー電極20と間隔を隔てて識別マーク40が設けられている。この識別マーク40は、略長方形の領域においてドット状の窪みを複数配置することにより構成されている。窪み領域の光の反射率は、窪みがない領域の光の反射率と大きく異なるため、識別マーク40を光学式スキャナで読み取ることができる。この窪みはたとえばレーザなどの照射により形成することができる。
【0021】
識別マーク40が形成された略長方形の領域は、第1の方向に平行な第1の辺40A、第2の辺40Bと、第2の方向に平行な第3の辺40C、第4の辺40Dとを有する。なお、本実施形態を示す
図2において、識別マーク40形成領域の左側の辺を第1の辺40A、右側の辺を第2の辺40Bとして表示しているが、右側の辺を第1の辺40A、左側の辺を第2の辺40Bとしても構わない。ただし、本実施形態においては、光学式スキャナの走査方向を考慮し、光学式スキャナが識別マーク40内に進入してくる側の辺を第1の辺40Aであるとする。また、本実施形態を示す
図2において、識別マーク40形成領域の上側の辺を第3の辺40C、下側の辺を第4の辺40Dとして表示しているが、下側の辺を第3の辺40C、上側の辺を第4の辺40Dとしても構わない。
【0022】
電極開口領域30に外接するフィンガー電極20の内、第1の辺40Aと最も近接して並走するフィンガー電極20を第1のフィンガー電極20Aと定義する。第2の方向における第1のフィンガー電極20Aと第1の辺40Aとの距離を第2の間隔W2と定義する。即ち、電極開口領域30における第1の方向に略平行な辺30Aと識別マーク40における第1の辺40Aとの距離が第2の間隔W2である。
【0023】
電極開口領域30に外接するフィンガー電極20の内、第2の辺40Bと最も近接して並走するフィンガー電極20を第2のフィンガー電極20Bと定義する。第2の方向における第2のフィンガー電極20Bと第2の辺40Bとの距離を第4の間隔W4と定義する。即ち、電極開口領域30における第1の方向に略平行な辺30Bと識別マーク40における第2の辺40Bとの距離が第4の間隔W4である。
【0024】
電極開口領域30における第2の方向に略平行な辺30Cと識別マーク40における第3の辺40Cとの距離が、第3の間隔W3である。即ち、電極開口領域30の辺30Cに接するフィンガー電極の端部と識別マーク40における第3の辺40Cとの距離が第3の間隔W3である。
【0025】
電極開口領域30における第2の方向に略平行な辺30Dと識別マーク40における第4の辺40Dとの距離が、第5の間隔W5である。即ち、電極開口領域30の辺30Dに接するフィンガー電極の端部と識別マーク40における第4の辺40Dとの距離が第5の間隔W5である。
【0026】
ここで、フィンガー電極20と識別マーク40とは、フィンガー電極20の配列方向である第2の方向において、第2の間隔W2が第1の間隔W1よりも大きくなるように配置されている。このような構成とすることにより、光学スキャナで識別マーク40を読み取る際の、集電電極の光反射による読み取り精度に対する影響を低減することができる。
【0027】
また、光学スキャナ進入側である第2の間隔W2を第1の間隔W1よりも大きくすることで、識別マークの読み取り効率を向上させることができる。たとえば、光学式認識用スキャナを、第2の方向に走査させて、識別マーク40の存在を確認する際に、当該スキャナは、フィンガー電極20の有無を反射率の工程で判別する。フィンガー電極20は所定の間隔である第1の間隔W1を隔てて配置されているため、スキャナが読み取る反射率は走査距離に応じて一定間隔で変化する。しかし、スキャナが電極開口領域30に進入すると、スキャナが第1の間隔W1分の距離を走査しても反射率の高い領域に差し掛からない。そのため、スキャナは、現在の走査位置が電極開口領域30内にあり、もうすぐ識別マーク40形成領域に差し掛かることを判断することができる。その結果として、識別マークの読み取り効率を向上させることができるのである。
【0028】
さらに、本実施形態においては、第2の方向において、第4の間隔W4が第1の間隔W1よりも大きくなるように配置されている。このような構成とすることにより、光学スキャナで識別マーク40を読み取る際の、集電電極の光反射による読み取り精度に対する影響を更に低減することができる。
【0029】
なお、フィンガー電極20の延伸方向である第1の方向において、フィンガー電極20と識別マーク40とは、第1の間隔W1よりも大きい第3の間隔W3、第5の間隔W5をあけて配置されることが望ましい。第3の間隔W3、第5の間隔W5を大きくすることにより、第1の方向についても、識別マーク40とフィンガー電極20の外延とを区別するに十分な距離が担保され、識別マーク40の読み取りに際し、読み取り効率が向上する。
【0030】
なお、本実施形態においては、識別マーク40は、受光面の裏面側に配置しているが、受光面側に配置しても構わない。ただし、受光面における発電効率と意匠性の観点からは、受光面の裏面側に識別マーク40を配置することが望ましい。
【0031】
なお、第2の間隔W2は、第1の間隔W1の2倍より小さいことが望ましい。電極開口領域30内のうち、識別マーク40が形成された領域では、一般に窪みの形成工程(たとえばレーザーアブレーション)による半導体基板への局所的ダメージが残存する。かかる局所ダメージは再結合中心として作用するため、発電効率が著しく低下する。一方で、電極開口領域30内のうち、識別マーク40が形成されていない領域ではそのような低下が生じない。そのため、とりわけ、電極開口領域30内でかつ、識別マーク40が形成されていない領域での電荷キャリアは、電極開口領域30の外延に近接するフィンガー電極20により収集される。そのため、このキャリア収集効率の観点からは、第2の方向における識別マーク40とフィンガー電極20との距離が離れすぎないよう、第2の間隔W2は、第1の間隔W1の2倍より小さい構成とすることにより、識別マーク40近傍で生成されたキャリアの集電効率の低下を抑制できる。
【0032】
本実施形態においては、第1の方向、及び第2の方向における電極開口領域30の幅を6mm、識別マーク40の幅を3.5mmとし、第1の間隔W1を0.68mm、第2の間隔W2、第4の間隔W4を1.25mm、第3の間隔W3、第5の間隔W5を、1.25mmとしている。すなわち、本実施形態においては、正方形状の電極開口領域30より小さい正方形状の識別マーク40が、電極開口領域30の中心に配置されている。第2の間隔W2、及び第4の間隔W4が、第1の間隔W1よりも大きく、且つ第1の間隔W1の2倍よりも小さい。また、第3の間隔W3、及び第5の間隔W5が、第1の間隔W1よりも大きく、且つ第1の間隔W1の2倍よりも小さい。
【0033】
本実施形態では、光電変換素子100が、光受光面と裏面の両方に集電電極を有するいわゆるバイフェイシャル構造を有し、その裏面側の図面等を用いて説明したが、光電変換素子100の構造は、これに限定されるものではなく、裏面側に+極と−極の両方を配置した、いわゆる、バックコンタクト構造においても適用可能である。
【0034】
本実施形態では、識別マーク40が、データマトリクスである場合を例に挙げて説明したが、読み取り可能なデータ形式出れば、特段の制限はない。識別コードの形式としては、文字記号であってもよいし、バーコード、QRコード(登録商標)やデータマトリクスのような2次元コードであってもよいが、データ密度の観点からは2次元コードが好ましい。
【0035】
識別マーク40を構成する窪みの深さは、特段の制限はないが、好適には5μm以上100μm以下、もっとも好適には10μm以上40μm以下である。深さが小さい場合には、窪み領域の光の反射率と窪みがない領域の光の反射率の差が小さく読み取り効率が低下する。一方で、深さが大きい場合には窪み領域近傍の強度が著しく低下し、光電変換素子100の破損が生じる恐れがある。窪みの開口径は好適には50μm〜100μm程度である。開口径が小さい場合、読み取り効率が低下する一方で、開口径が大きい場合、窪み領域近傍の強度が著しく低下し、光電変換素子の破損が生じる恐れがある。