(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6629997
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】放電ランプ点灯制御装置およびランプ電流供給方法
(51)【国際特許分類】
H05B 41/288 20060101AFI20200106BHJP
【FI】
H05B41/288
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-563531(P2018-563531)
(86)(22)【出願日】2018年5月31日
(86)【国際出願番号】JP2018020918
(87)【国際公開番号】WO2019064695
(87)【国際公開日】20190404
【審査請求日】2018年12月3日
(31)【優先権主張番号】特願2017-188612(P2017-188612)
(32)【優先日】2017年9月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000144393
【氏名又は名称】株式会社三社電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】西川 和弘
【審査官】
田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】
特表2005−515609(JP,A)
【文献】
特開2005−122966(JP,A)
【文献】
特開2012−160387(JP,A)
【文献】
特開2006−73310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 41/288
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電ランプにランプ電流を供給するインバータ回路と、
前記ランプ電流の定電流制御を行い、前記定電流制御を行うための電流指令値を前記インバータ回路に出力する制御回路と、と備え、
前記制御回路は、前記放電ランプを起動してランプ電圧の上昇変化値が一定値未満になった安定状態で、前記電流指令値をより小さな値に変更して前記定電流制御を行う放電ランプ点灯制御装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記放電ランプを起動して前記ランプ電圧の上昇変化値が前記一定値未満になるまでの期間において、出力電力が所定の電力リミッタ値を超えた時には前記出力電力が定電力となる定電力制御を行い、前記定電力制御を行うための電力指令値を前記インバータ回路に出力し、
前記制御回路は、前記安定状態において、前記出力電力が前記電力リミッタ値を超えた時に前記電流指令値をより小さな値に変更して前記定電流制御を行う、請求項1記載の放電ランプ点灯制御装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記放電ランプを起動してランプ電圧が安定するまでに次の制御を以下の順に行う、請求項2記載の放電ランプ点灯制御装置。
(1)前記放電ランプの起動後の第1状態では所定の第1電流指令値により前記定電流制御を行う。
(2)前記第1状態後、前記ランプ電圧の上昇により前記出力電力が前記電力リミッタ値を超える第2状態になった段階で前記定電力制御を行う。
(3)前記第2状態後、前記ランプ電圧の上昇変化値が一定値未満になる第3状態になった段階で、前記ランプ電圧の上昇により前記出力電力が前記電力リミッタ値を超えた時に前記電流指令値を前記第1電流指令値から、より小さな値の第2電流指令値に変更して前記定電流制御を行う。
(4)前記第3状態で、前記ランプ電圧の上昇により前記出力電力が前記電力リミッタ値を超える毎に前記第2電流指令値をより小さな値に変更して前記定電流制御を行う。
(5)前記第3状態後、前記ランプ電圧が安定する第4状態になると、その直前に変更された前記第2電流指令値により定電流制御を行う。
【請求項4】
前記制御回路は、
前記第3状態において、
前記第1電流指令値から、より小さな値の第2電流指令値へ変更する動作と、前記第2電流指令値をより小さな値へ変更する動作とを所定時間かけて徐々に実行する、請求項3に記載の放電ランプ点灯制御装置。
【請求項5】
インバータ回路により放電ランプにランプ電流を供給するランプ電流供給方法において、
前記放電ランプの起動後の第1状態では所定の第1電流指令値により前記ランプ電流の定電流制御を行い、
前記第1状態後、ランプ電圧の上昇により出力電力が所定の電力リミッタ値を超えた第2状態になった段階で、前記出力電力が定電力となるよう定電力制御を行い、
前記第2状態後、前記ランプ電圧の上昇変化値が一定値未満になる第3状態になった段階で、前記ランプ電圧の上昇により前記出力電力が前記電力リミッタ値を超えたときに前記第1電流指令値より小さな値の第2電流指令値により前記定電流制御を行い、
前記第3状態で、前記ランプ電圧の上昇により前記出力電力が前記電力リミッタ値を超える毎に前記第2電流指令値をより小さな値に変更して前記定電流制御を行い、
前記第3状態後、前記ランプ電圧が安定する第4状態になると、その直前に変更された前記第2電流指令値により定電流制御を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、キセノンランプ等の放電ランプの点灯制御装置およびランプ電流供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キセノンランプなどの放電ランプは、管内に陽極、陰極の2つの電極があり、起動後にイグナイタなどでブレークダウンをすると電極間にアーク放電が生じる。ランプの明るさはこのアーク放電によるランプ電流の大きさに比例し、ランプ電圧は電極間距離や放電ランプ内のガスの状態により決まる。
【0003】
一方、放電ランプ点灯制御装置では、放電ランプの明るさを一定に保つためランプ電流に対する定電流制御を行う。また、この制御装置では、電源部の出力電力が定格を超えないように電力制限値(リミッタ)を設定して、定電力制御も行うようにしている。
【0004】
例えば、先行技術である特許文献1では、ランプ電圧が低い起動時においては定電流制御を行い、その後ランプ電圧が一定以上に上昇して定格電力に達すると定電力制御を行っている。
【0005】
放電ランプを起動すると、初期状態ではランプ内のガスの状態が不安定であるため、ランプ電圧が上昇し、ランプ電圧の上昇変化値が段々小さくなっていく。その後ランプ内の状態が安定するとランプ電圧も安定する。このとき、ランプ内のガスの状態やアークの状態は安定状態を維持している。しかし、それでもアークの経路が変動するなどの現象が生じ、それに伴ってランプ電圧の僅かな上昇が生じる。ランプを点灯初期から継続して定電流制御した場合、ある程度ランプ電圧が上昇した状態でランプ電圧の上昇値が大きいと、電源部の出力電力が大きくなって定格を超えてしまうことになる。
【0006】
そこで、先行技術に示される点灯制御装置では、放電ランプの起動後にランプ電圧が上昇して定格電力に達すると、制御モードを定電流制御モードから定電力制御モードに切り替える。
【0007】
定電力制御モードでは、電源部の出力電力が定格を超えることがないため、ランプや電源部への負担が過度になることはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−32711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記のような定電流制御と定電力制御を行う従来の放電ランプ点灯制御装置は以下の問題がある。
【0010】
定電力制御モードでは、ランプ内のガスの状態やアークの状態の変化に起因してランプ電圧が上昇すると、制御回路は、電源部の出力電力(ランプ電力)が電力制限値(リミッタ値)を超えないようランプ電流を低下させる。このとき、ランプ電流が低下するため、ランプの明るさもそれに応じて変化する。この変化が周期的あるいは非周期的に生じると、それが所謂フリッカ現象として感じられることになる。ランプ点灯初期からしばらくの間は、ランプ電圧の変化が大きくフリッカ現象の周期が長くこの間の明滅が大きい。そこで、この期間ではある程度ランプ電圧が安定してからランプが使用される。ランプ電圧が安定しても、非常に周期が短いフリッカ現象は発生するが、人の肉眼で感知できなくなるので問題にならない。しかし、肉眼で感知できる程度の周期のフリッカ現象が発生すると、ちらつきとして認識される。このちらつきは、疲れ目の原因となったり、撮影のバックライトとしてランプを使用した際に干渉縞を生じさせる原因となる。
【0011】
以上の現象を
図1〜
図3を参照して説明すると以下の通りとなる。
【0012】
図1は、放電ランプの構造とアークを示す。
図2は、定電流制御と定電力制御を行う放電ランプ点灯制御装置の電圧電流特性図を示す。
図3は、ランプ内が安定状態にあるときに定電流制御をした場合のランプ電流変化(右側波形)と、同様な安定状態で定電力制御をした場合のランプ電流変化(左側波形)とを示す。
【0013】
図1において、放電ランプは、管内に陽極(+)と陰極(−)が対向配置されている。安定状態では、アーク電流はAの経路で流れているが、ランプ内の状態が変動するとBの経路に変化することがある。Bの経路は電流経路が長くなるためランプ電圧が大きくなる。定電力制御時では、AからBへの変化が数10ms間で起きると、以下の説明のようにフリッカ現象が起きる。
【0014】
図2は、ランプの電力制限値(リミッタ)がWlimitに設定されている場合の特性を示している。点灯初期は、ランプ電圧が上昇していき、この間、定電流制御が行われる(
図2のa点)。
図2のb点でランプ電力が定格に達すると、これ以降に電圧が上昇すると定電力制御となる。定電流制御であれば、ランプ内のガスの状態やアークの状態が変動して、ランプ電圧が上昇し動作点が図のc点に遷移しようとする。しかし、定電力制御ではc点は電力制限値(リミッタ)を超えることになるので、実際は動作点は定電力特性曲線上のd点となる。
【0015】
このような現象が肉眼で検知できる数10ms毎に起きると、ランプ電流が周期的に変動するため、これがフリッカ現象として肉眼で観測されることなる。このようなフリッカ現象は、ランプ電圧の安定状態初期に観測されることが多い。
【0016】
図3は、ランプ安定状態で時間軸レンジを拡大したときの電圧・電流変化を示している。図の上側は電圧変化、下側は電流変化を示す。また、図の左側はランプ安定状態で定電力制御をした場合の電圧・電流変化を示している(直流成分を除く)。同図左側の定電力制御時では、P1でアーク電流経路がA→Bとなり(
図1参照)、ランプ電圧上昇によりランプ電流が低下し(
図2のd点)、それによりフリッカ現象が観測される。一方、ランプ安定状態で定電力制御ではなく定電流制御を継続した場合の電圧・電流変化は
図3の右側に示される。P2でアーク電流経路がA→Bとなり(
図1参照)、ランプ電圧が上昇しても、電流が一定になるよう制御されるため、電流変化はない。このため、フリッカ現象は生じない。このように、安定状態となっても定電流制御であれば、フリッカ現象を防ぐことが出来る。しかし、上述のように定電流制御では電源の出力が大きくなり、ランプへの負担も大きくなり、出力が定格を超えるとランプを破損すると言った不具合がある。
【0017】
この発明の目的は、電源の定格出力を大きくすることなく、ランプが安定状態のときも定電流制御を可能にする放電ランプ点灯制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この発明の放電ランプ点灯制御装置は、
放電ランプにランプ電流を供給するインバータ回路と、
前記ランプ電流の定電流制御を行い、前記定電流制御を行うための電流指令値を前記インバータ回路に出力する制御回路と、と備え、
前記制御回路は、前記放電ランプを起動して前記ランプ電圧の上昇変化値が一定値未満になった安定状態で、前記電流指令値をより小さな値に変更して前記定電流制御を行う。
【0019】
前記制御回路は、放電ランプが安定状態になると電流指令値を下げて定電流制御が可能となるように制御する。これにより、安定状態においてランプ電圧が上昇したときに、ランプ電流が低下することを防止できる。
【0020】
好ましい実施形態では、前記制御回路は、出力電力が所定の電力リミッタ値を超えた時には前記出力電力が定電力となる定電力制御を行い、前記定電力制御を行うための電力指令値を前記インバータ回路に出力する。
【0021】
この発明のさらに好ましい別の実施形態では、前記制御回路は、前記放電ランプを起動してランプ電圧が安定するまでに次の制御を以下の順に行う。
【0022】
(1)前記放電ランプの起動後の第1状態では所定の第1電流指令値により前記定電流制御を行う。
【0023】
(2)前記第1状態後、前記ランプ電圧の上昇により前記出力電力が前記電力リミッタ値を超える第2状態になった段階で前記定電力制御を行う。
【0024】
(3)前記第2状態後、前記ランプ電圧の上昇変化値が一定値未満になる第3状態になった段階で、前記ランプ電圧の上昇により前記出力電力が前記電力リミッタ値を超えた時に前記第1電流指令値より小さな値の第2電流指令値により前記定電流制御を行う。
【0025】
(4)前記第3状態で、前記ランプ電圧の上昇により前記出力電力が前記電力リミッタ値を超える毎に前記第2電流指令値をより小さな値に変更して前記定電流制御を行う。
【0026】
(5)前記第3状態後、前記ランプ電圧が安定する第4状態になると、その直前に変更された前記第2電流指令値により定電流制御を行う。
【0027】
放電ランプを起動すると、ランプ電圧が上昇しはじめ、ユーザにより予め設定されている所定の第1電流指令値に基づく定電流制御が行われる(第1状態)。その後、出力電力が電力リミッタ値に達すると、定電力制御を行う(第2状態)。その後、定電力制御中に、ランプ電圧の上昇変化値が一定値未満のランプ安定状態となる(第3状態)。このランプ安定状態の初期においては、
図1に示すようなアーク電流経路の変動によりランプ電圧がΔVだけ上昇して前記出力電力が前記電力リミッタ値を超えた時に、電流指令値をそれまでの第1電流指令値から、所定値だけ小さい第2電流指令値に変更する。そして、この第2電流指令値で定電流制御を行う。その後も、ランプ電圧がΔVだけ上昇して前記出力電力が前記電力リミッタ値を超える毎に、第2電流指令値をより小さな値に変更していく。第3状態後、ランプ電圧が安定する第4状態になると、その直前に変更された第2電流指令値により定電流制御を行う。
【0028】
以上の制御を行うことで、第3状態では、ランプ電圧上昇に応じて第2電流指令値を少しずつ小さくしていき、継続して定電流制御を行う。また、第4状態でも定電流制御を行う。これにより、第3状態以降は従来のような定電力制御ではなく定電流制御が行われることとなる。そして、アークの揺れによってランプ電圧が変動してもフリッカ現象が発生しない。
【0029】
また、第3状態以降、電流指令値を下げるため、電源容量を大きくしなくても良い。また、ランプへの供給電力も大きくなることはないため、ランプ寿命を低下させることもない。
【0030】
より好ましい実施形態では、制御回路は、前記第3状態において、電流指令値の変更を所定時間かけて徐々に実行する。
【0031】
電流指令値の変更を所定時間かけて徐々に行うことにより、指令値の変化が急激なものとならないから、フリッカの発生がより抑制される。
【発明の効果】
【0032】
放電ランプが安定状態となった以降も、定電流制御が維持されるためフリッカが発生するのを防ぐことが出来る。また、電源容量を大きくしなくても良いため電源部の大型化を防止でき、また、ランプ寿命を低下させることがない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図2】定電流制御と定電力制御を行う放電ランプ点灯制御装置の電圧電流特性図
【
図3】ランプ内が安定状態にあるときに定電流制御をした場合のランプ電流変化(右側波形)と、同様な安定状態で定電力制御をした場合のランプ電流変化(左側波形)とを示す図
【
図6】従来の放電ランプ点灯制御装置においてランプ電圧等の時間経過を示す図
【
図7】本実施形態の放電ランプ点灯制御装置においてランプ電圧等の時間経過を示す図
【
図9】放電ランプ点灯制御装置の動作を示すフローチャート
【
図10】放電ランプ点灯制御装置の動作を示すフローチャート
【
図11】放電ランプ点灯制御装置の動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0034】
図4は、この発明の実施形態の放電ランプ点灯制御装置のブロック図である。
【0035】
放電ランプ点灯制御装置は、商用電源入力端子1に入力される交流電圧を整流する第1の整流回路2と、第1の整流回路2の整流出力の電流波形を変えることで、その力率を改善するPFC回路(力率改善回路)3と、PFC回路3の制御を行うPFC制御回路4と、スイッチング回路5と、スイッチング回路5の出力の電圧変換を行う変圧器6と、変圧出力を整流する第2の整流回路7と、第2の整流回路7の整流出力に起動高圧パルスを重畳させる高圧トランス8及び始動回路9と、出力電流(ランプ電流)を検出するランプ電流検出器10と、ランプ電流及びランプ電圧に基づいて定電流制御や定電力制御を行うスイッチング回路5に対し、制御用PWM信号を供給するメイン制御回路11とを備える。キセノンランプなどの放電ランプ12は、高圧トランス8の出力側に接続される。
【0036】
図5は前記メイン制御回路11のブロック図である。
【0037】
メイン制御回路11は、検出されたランプ電流Iと電流指令値との差分、及びランプ電力と電力指令値との差分をPWM発生回路110内のエラーアンプに入力する。PWM発生回路110は、ランプ電流Iと電流指令値との差分がゼロとなるように定電流制御を行う。また、PWM発生回路110は、ランプ電力が電力リミッタ値、すなわち電力指令値を超えようとした場合に、ランプ電力と電力指令値との差分がゼロとなるように出力電流を減少させる定電力制御を行う。
【0038】
定電流制御と定電力制御では、いずれもPWM制御を行う。メイン制御回路11は、後述のフローチャートに示す制御を行う制御部111も備えている。なお、メイン制御回路11に代えて、演算処理や、ランプ電流とランプ電圧の変換テーブルを用いてPWM制御を行うようにしても良い。
【0039】
本実施形態では、放電ランプ12の起動後に第1電流指令値により定電流制御を行い(第1状態)、ランプ電圧Vが上昇して、第1電流指令値とランプ電圧Vとから算出した出力電力が所定の電力リミッタ値、例えば定格電力を超えると、定電力制御に移行する(第2状態)。定電力制御において、ランプ電圧Vの上昇変化値が徐々に小さくなり、ランプ電圧Vが安定するランプ安定状態に移行すると、ランプ電圧の変動を監視する(第3状態)。第3状態に入ると、ランプ安定状態の初期には、ランプ電圧Vが微増する期間が存在する。このとき、ランプ電圧が上昇して前記出力電力が前記電力リミッタ値を超えた時に電流指令値を第1電流指令値から所定値だけ小さい第2電流指令値に変更する。この第2電流指令値により定電流制御を行う。また、その後も、ランプ電圧が上昇して前記出力電力が前記電力リミッタ値を超える毎に第2電流指令値をより小さな値に変更し、変更後の第2電流指令値により定電流制御を行う。
【0040】
第3状態後、ランプ電圧が完全に安定する第4状態になると、その直前に変更された第2電流指令値により定電流制御を行う。
【0041】
これにより、第3状態になってからは、それ以降、最後に設定された第2電流指令値による定電流制御が維持される。
【0042】
本実施形態の放電ランプ点灯制御装置と従来の放電ランプ点灯制御装置の動作を、
図6、
図7を参照して説明する。
図6は、従来の放電ランプ点灯制御装置においてランプ電圧等の時間経過を示している。
図7は、本実施形態の放電ランプ点灯制御装置においてランプ電圧等の時間経過を示している。
図8は、
図6、
図7の一部の時間軸と電圧軸の拡大図を示している。
【0043】
図6において、上から、ランプ電圧、ランプ電流、ランプ電力の時間変化を示す。なお、従来の放電ランプ点灯制御装置では、第2電流指令値を使用しない。
【0044】
従来の放電ランプ点灯制御装置では、
図6に示すように以下の動作となる。
【0045】
t0で放電ランプ12が起動されると、予め設定された定格電流に対応する第1電流指令値により定電流制御が行われる(第1状態)。予め設定された定格電流で起動した点灯初期Aから、ランプ電圧が上昇していく。定格電力Wlimitに達して定電力リミッタが働くt1になると、定電流制御から一定の電力指令値による定電力制御に切り替わる。
【0046】
t1からは、定電力制御が行われる。つまり、ランプ電圧の上昇に応じてランプ電流が減少するように制御される(第2状態)。
【0047】
t2でランプ電圧の上昇変化値が一定値未満になる第3状態に移っても、定電力制御が行われる。ランプ電圧が完全に安定するt3以降の第4状態になっても、定電力制御が行われる。以上の制御の動作特性図は
図2に示した通りであり、t3以降はランプ電圧の変動に応じてランプ電流も変動し続ける。
【0048】
本実施形態の放電ランプ点灯制御装置では、
図7に示すように以下の動作となる。
【0049】
図7において、t0で放電ランプ12が起動された後、t1までの第1状態と、その後の第2状態までは、
図6と同じである。すなわち、t0で放電ランプ12が起動されると、予め設定された定格電流に対応する第1電流指令値により定電流制御が行われる(第1状態)。予め設定された定格電流で起動した点灯初期Aから、ランプ電圧が上昇していく。定電力リミッタが働くt1になると、定電流制御から一定の電力指令値による定電力制御に切り替わる。
【0050】
t1からは、定電力制御が行われる。
図6と同様ランプ電圧の上昇に応じてランプ電流が減少するように制御される(第2状態)。
【0051】
t0―t2までは、
図6の経過と同じである。
【0052】
t2でランプ電圧上昇変化値が一定値未満になるランプ安定状態の初期である第3状態になった段階で、ランプ電圧の上昇により出力電力が所定の電力リミッタ値を超えた時に第1電流指令値を、より小さな値の第2電流指令値に変更する。この第2電流指令値により定電流制御を行う。さらに、ランプ電圧の上昇により出力電力が所定の電力リミッタ値を超える毎に前記第2電流指令値をより小さな値に変更し、この第2電流指令値により定電流制御を行う。
【0053】
第3状態の拡大図を示す
図8において、実線は本実施形態の変化を示し、破線は
図6の従来の放電ランプ点灯制御装置の変化を示す。
【0054】
図8に示すように、従来の放電ランプ点灯制御装置では、t2−t3の第3状態において、ランプ電圧の上昇に従い定電力制御によってランプ電流が破線に示すように変動する。本実施形態の放電ランプ点灯制御装置では、t2−t3の第3状態において、ランプ電圧の上昇に従い、実線に示すように電流指令値が変更されつつ定電流制御される。すなわち、ランプ電圧の上昇により出力電力が所定の電力リミッタ値を超えた時に第1電流指令値を、より小さな値の第2電流指令値に変更する。この第2電流指令値により定電流制御を行う。さらに、ランプ電圧の上昇により出力電力が所定の電力リミッタ値を超える毎に前記第2電流指令値をより小さな値に変更し、この第2電流指令値により定電流制御を行う。
図8の一番下の経過図で示されるように、第2電流指令値はランプ電圧の上昇にしたがい、より小さな値に階段状に変更されていく。また、その上のランプ電力図(経過図)に示されるように、ランプ電力は常に定格電力未満となっているため、定電力制御が行われない。このような制御により、t2−t3の第3状態の期間では、階段状の各区間でランプ電流の定電流化が行われるため、フリッカの発生を防止できる。
【0055】
また、t3以降の第4状態では、ランプ電圧が完全に安定状態となるため、t3直前に変更された第2電流指令値により定電流制御が行われる。このt3以降でも、定電流制御が行われているためフリッカの発生はない。
【0056】
以上のように、本実施形態の放電ランプ点灯制御装置では、ランプ電圧の上昇変化が緩やかになるt3からランプ電圧が安定するt4以降の期間では、ランプ電圧の上昇に応じて定電力制御が行われないよう電流指令値を下げながら定電流制御を行う。
【0057】
このため、
図3の右側に示すようにフリッカの発生を防止できる。
【0058】
次に上記の制御内容について、
図9〜
図12を参照して具体的に説明する。
【0059】
図9〜
図11は、制御部111(
図5参照)による制御動作を示すフローチャートである。
図12は、フローチャートの定義表である。
【0060】
図9は、放電ランプ12の起動タイミングt0から第3状態が始まるt2(
図7、
図8参照)までの制御動作(パターン1)を示す。
図10は、t2から第t3までの制御動作(パターン2)を示す。
図11は、t3からの制御動作(パターン3)を示す。
【0061】
放電ランプ12が起動されると、
図9のST1で、ユーザにより、定電力リミッタWlimitと、第1電流指令値Iref1が設定される。その後、第1状態となって第1電流指令値Iref1により定電流制御が行われる(ST2)。その後、出力電力が定電力リミッタWlimitを超えると(Iref1>Wlimit/Vdet(n))、第2状態となってST3→ST4と進み、定電力リミッタWlimitにより定電力制御が行われる。
【0062】
t2となってランプ電圧上昇変化値が一定値未満になる第3状態になると(ST5),
図10の制御動作(パターン2)に移行する。
【0063】
ST10で、第2電流指令値Iref2(n)の初期値を第1電流指令値Iref1の値とする。ST11で、出力電力が定電力リミッタWlimitを超えると(Iref2(n)>Wlimit/Vdet(n))、すなわち、ランプ電圧Vdet(n)が上昇すると、ST12以下で第2電流指令値Iref2(n)をより小さな値に変更する制御を行う。この補正は、ST13、ST14で所定時間かけて行う。すなわち、ST13で、定電力リミッタWlimitの値をその時のランプ電圧Vdet(n)で除することで、電流値を求め、これを、第2電流指令値Iref2(n)として更新する。また、次のST14で、前回の第2電流指令値Iref2(n−1)から、今回の第2電流指令値Iref2(n)(ST12で求めた第2電流指令値Iref2(n))まで、補正周期T2の期間で徐々に変化させる。その後、ST15で第2電流指令値Iref2(n)による定電流制御を開始する。
【0064】
以上の制御動作を、ランプ電圧Vdet(n)の上昇が続くまで(t2−t3の期間)行う。
【0065】
なお、
図12に示すように、スイッチング回路5のスイッチング周期と、ST15での定電流制御周期T1と、ST14での第2電流指令値Iref2(n)の補正周期T2との関係は、以下の通りである。
【0066】
スイッチング周期<<T1<<T2
ST14で、前回の第2電流指令値Iref2(n−1)から、今回設定した第2電流指令値Iref2(n)まで、補正周期T2の期間で徐々に変化させる周期は、上記式より、制御周期よりも長い。このため、
図8のランプ電流図の実線に示すように、ランプ電圧が徐々に安定していくにつれて、次の第2電流指令値を変更するまでの時間が徐々に長く、且つ第2電流指令値の変化も小さくなることから、第2電流指令値が急激に変動することによるフリッカ発生をより効果的に防ぐことが出来る。
【0067】
パターン2の制御動作において、ST16でランプ電圧Vdet(n)が安定したことを判定すると、t3以降の第4状態となって、
図11のST20以下の制御動作(パターン3)に移行する。
【0068】
ST20では、パターン2において最後に更新された第2電流指令値Iref2(n)で定電流制御を行う。この定電流制御を行っている間、万一、ランプ内のガスの状態やアークの状態の変化に起因してランプ電圧が上昇しても、定電流制御されているためにフリッカは生じない。
【0069】
ST21でランプ電源がオフされると制御は終了する。
【0070】
以上の動作により、t2以降のランプ安定状態でランプ電圧の上昇が生じても、第2電流指令値を減少させることによって定電流制御状態を維持できる。このため、フリッカを防ぐことが出来る。また、ランプ電圧が安定している状態で電源容量を大きくしなくても定電流制御を維持できる。このため電源部の大型化を防止でき、また、放電ランプには、定格以上の電力が供給されないためランプ寿命を低下させることがない。
【0071】
上記実施形態では、第1状態から第4状態まで詳細な制御を行うが、本発明は、安定状態において、電流指令値をより小さな値に変更して定電流制御を行うものである。したがって、例えば、上記実施形態で示される第3状態における制御だけが行われる他の実施形態も本発明に含まれる。
【0072】
また、上記実施形態では、第1電流指令値とランプ電圧Vとから算出した出力電力が所定の電力リミッタ値を超える例として、例えば出力電力が定格電力を超えるものと示した。しかしながら、所定の電力リミッタ値としては、ユーザが指定する電力であっても良い。
【0073】
また、
図6において、t0で放電ランプ12が起動されると、予め設定された定格電流に対応する第1電流指令値により定電流制御が行われる(第1状態)が、予め設定された定格電流はユーザが指定する電流であっても良い。
【符号の説明】
【0074】
11−メイン制御回路
110−エラーアンプ
111−制御部