(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記第1灯具ユニットにおける上記第1投影レンズの後側焦点からの上記各第1発光素子の前後方向変位量が、上記第2灯具ユニットにおける上記第2投影レンズの後側焦点からの上記各第2発光素子の前後方向変位量よりも小さい値に設定されている、ことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。
上記第2投影レンズの前面に、該第2投影レンズからの前方出射光を左右方向に拡散させる複数の拡散レンズ素子が形成されている、ことを特徴とする請求項4記載の車両用灯具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の車両用灯具においては、複数の発光素子を投影レンズの後側焦点から後方側に一定量変位した位置に配置することにより、投影レンズからの前方出射光によって形成される各発光素子の光源像を大きくして互いに部分的に重複させ、これにより配光パターンの配光ムラを抑えるように構成されている。
【0007】
上記従来の車両用灯具において、複数の発光素子のうちの一部が選択的に点灯し得る構成とすれば、横長の配光パターンの一部が欠落した配光パターンを形成することが可能となる。そして、この配光パターンの欠落部分を対向車の位置に対応させることにより、対向車ドライバにグレアを与えてしまうことなく自車ドライバの前方視認性を確保することが可能となる。
【0008】
しかしながら、投影レンズの後側焦点から前後方向に変位して配置された発光素子の光源像はその外周縁が不明瞭なものとなるので、横長の配光パターンの一部が欠落した配光パターンもその欠落部分の境界線が不明瞭なものとなる。したがって、対向車ドライバにグレアを与えてしまわないようにするためには、欠落部分の幅を広めに確保することが必要となり、その分だけ自車ドライバの前方視認性が損なわれてしまう。
【0009】
一方、複数の発光素子を投影レンズの後側焦点から前後方向に変位させないようにすれば、各発光素子の光源像はその外周縁が明瞭なものとなるが、このようにした場合には各光源像が互いに離れてしまうので配光パターンに配光ムラが発生してしまう。
【0010】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ハイビーム領域に横長の配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、横長の配光パターンの一部が欠落した配光パターンを形成したときに、対向車ドライバにグレアを与えてしまうことなく自車ドライバの前方視認性を高めることができる車両用灯具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、所定の2種類のプロジェクタ型の灯具ユニットを備えた構成とすることにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0012】
すなわち、本願発明に係る車両用灯具は、
ハイビーム領域に横長の配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、
第1投影レンズとこの第1投影レンズの後方において左右方向に並列に配置された複数の第1発光素子とを備え、これら複数の第1発光素子のうちの少なくとも一部からの出射光を上記第1投影レンズを介して車両前方へ向けて照射するように構成された第1灯具ユニットと、
第2投影レンズとこの第2投影レンズの後方において左右方向に並列に配置された複数の第2発光素子とを備え、これら複数の第2発光素子のうちの少なくとも一部からの出射光を上記第2投影レンズを介して車両前方へ向けて照射するように構成された第2灯具ユニットと、を備えており、
上記第1および第2灯具ユニットは、上記第1灯具ユニットからの照射光によって形成される上記各第1発光素子の光源像が上記第2灯具ユニットからの照射光によって形成される上記各第2発光素子の光源像よりも鮮明に形成されるように構成されて
おり、
上記各第2発光素子の光源像は、上記各第1発光素子の光源像よりもひとまわり大きい光源像として形成されており、かつ、上記各第1発光素子の光源像に対して同心状の配置で形成されている、ことを特徴とするものである。
【0013】
上記「ハイビーム領域」とは、ロービーム用配光パターンのカットオフラインよりも上方側に位置する領域を意味するものであって、その際、カットオフラインよりも下方側に位置する領域を部分的に含んでいてもよい。なお、本願発明は、必ずしもロービーム用配光パターンの存在を前提とするものではない。
【0014】
上記「第1発光素子」および「第2発光素子」の種類は特に限定されるものではなく、例えば発光ダイオードやレーザダイオード等が採用可能である。
【0015】
上記「第1および第2灯具ユニット」は、第1灯具ユニットからの照射光によって形成される各第1発光素子の光源像が、第2灯具ユニットからの照射光によって形成される各第2発光素子の光源像よりも鮮明に形成されるように構成されていれば、これを実現するための具体的な構成は特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0016】
本願発明に係る車両用灯具は、2種類のプロジェクタ型の灯具ユニットからの照射光によってハイビーム領域に横長の配光パターンを形成する構成となっているが、その際、第1灯具ユニットからの照射光によって形成される各第1発光素子の光源像を第2灯具ユニットからの照射光によって形成される各第2発光素子の光源像よりも鮮明に形成する構成となっているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0017】
すなわち、複数の第1発光素子のうちの一部および複数の第2発光素子のうちの一部を選択的に点灯させることにより横長の配光パターンの一部が欠落した配光パターンを形成することができるが、その際、欠落部分の左右両側部分を第1灯具ユニットからの照射光によって形成するようにすれば、欠落部分の境界線を明瞭に形成することができる。したがって、欠落部分の幅を狭くしても対向車ドライバにグレアを与えてしまわないようにすることができる。
【0018】
一方、横長の配光パターンの一部が欠落した配光パターンにおける欠落部分の左右両側部分以外の部分については、第2灯具ユニットからの照射光によって形成するようにすれば、横長の配光パターンの一部が欠落した配光パターンを略均一な明るさで形成することができる。その際、第1灯具ユニットからの照射光を追加することも可能であり、このようにした場合には横長の配光パターンの一部が欠落した配光パターンの明るさを増大させることができる。
【0019】
このように本願発明によれば、ハイビーム領域に横長の配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、横長の配光パターンの一部が欠落した配光パターンを形成したときに、対向車ドライバにグレアを与えてしまうことなく自車ドライバの前方視認性を高めることができる。
【0020】
上記構成において、第1灯具ユニットにおける第1投影レンズの後側焦点からの各第1発光素子の前後方向変位量が、第2灯具ユニットにおける第2投影レンズの後側焦点からの各第2発光素子の前後方向変位量よりも小さい値に設定された構成とすれば、第1灯具ユニットからの照射光によって形成される各第1発光素子の光源像を第2灯具ユニットからの照射光によって形成される各第2発光素子の光源像よりも鮮明に形成することが容易に可能となる。
【0021】
そして、このような構成を採用した場合には、第1および第2灯具ユニットの主要構成要素を共通にした上で、その第1および第2発光素子の前後方向変位量を互いに変化させただけの構成で、上記作用効果を得ることができる。
【0022】
その際、第1灯具ユニットの構成として、各第1発光素子が第1投影レンズの後側焦点を含む焦平面上に配置された構成とすれば、横長の配光パターンの一部が欠落した配光パターンにおける欠落部分の境界線を極めて明瞭に形成することができ、これにより欠落部分の幅を最小限に抑えることができる。
【0023】
上記構成において、第2投影レンズの構成として、該第2投影レンズからの前方出射光を左右方向に拡散させるように構成されたものとすれば、第1灯具ユニットからの照射光によって形成される各第1発光素子の光源像を第2灯具ユニットからの照射光によって形成される各第2発光素子の光源像よりも鮮明に形成することが容易に可能となる。
【0024】
そして、このような構成を採用した場合には、第1および第2灯具ユニット相互間において第2投影レンズの構成を異なったものとするだけで、上記作用効果を得ることができる。
【0025】
その際、第2投影レンズの前面に、該第2投影レンズからの前方出射光を左右方向に拡散させる複数の拡散レンズ素子が形成された構成とすれば、第2投影レンズからの前方出射光を左右方向に所要量拡散させることが容易に可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0028】
図1は、本願発明の一実施形態に係る車両用灯具10を示す平断面図である。
【0029】
同図に示すように、本実施形態に係る車両用灯具10は、車両の左前端部に配置されるヘッドランプであって、ランプボディ12とその前端開口部に取り付けられた素通し状の透光カバー14とで形成される灯室内に、第1灯具ユニット20Aと第2灯具ユニット20Bとが組み込まれた構成となっている。
【0030】
なお、車両用灯具10としては、
図1において、Xで示す方向が「前方」(車両としても「前方」)であり、Yで示す方向が「前方」と直交する「左方向」(車両としても「左方向」であるが灯具正面視では「右方向」)である。
【0031】
まず、第1灯具ユニット20Aの構成について説明する。
【0032】
図2は、
図1のII方向矢視図であり、
図3は、
図1のIII−III線断面図である。
【0033】
これらの図に示すように、第1灯具ユニット20Aは、プロジェクタ型の灯具ユニットであって、車両前後方向に延びる光軸Axを有する第1投影レンズ22Aと、この第1投影レンズ22Aの後方において左右方向に並列に配置された複数の第1発光素子24Aとを備えており、各第1発光素子24Aからの直射光を第1投影レンズ22Aを介して前方へ向けて照射するようになっている。
【0034】
第1投影レンズ22Aは、前面22aが凸面で後面22bが平面の平凸非球面レンズであって、その外周フランジ部22cにおいてレンズホルダ28に支持されている。このレンズホルダ28はベース部材32Aに支持されており、このベース部材32Aは図示しない支持部材を介してランプボディ12に支持されている。
【0035】
複数の第1発光素子24Aは、第1投影レンズ22Aの後側焦点Fを含む焦平面上において左右方向に並列に配置された状態で、共通の基板26に支持されている。この基板26はベース部材32Aに支持されている。
【0036】
本実施形態においては、いずれも同様の構成を有する11個の第1発光素子24Aが、光軸Axの位置を中心にして左右方向(すなわち車幅方向)に等間隔で配置された構成となっている。
【0037】
各第1発光素子24Aは白色発光ダイオードであって、その発光面24aは1×1mm程度の正方形の外形形状を有している。そして、各第1発光素子24Aは、その発光面24aを上記焦平面上において灯具正面方向へ向けた状態で配置されている。その際、各第1発光素子24Aは、その発光面24aの中心が光軸Axのやや下方に位置するとともに、その発光面24aの上端縁が光軸Axのやや上方に位置するようにして配置されている。
【0038】
これにより第1灯具ユニット20Aにおいては、各第1発光素子24Aの発光中心から出射して第1投影レンズ22Aに入射した光を、光軸Axと平行な方向に対して僅かに上向きの平行光として前方へ向けて出射するようになっている。
【0039】
11個の第1発光素子24Aは、個別に点灯し得るように構成されている。これを実現するため、各第1発光素子24Aは図示しない電子制御ユニットに接続されており、この電子制御ユニットによって自車の走行状況に応じてその点消灯制御が行われるようになっている。
【0040】
次に、第2灯具ユニット20Bの構成について説明する。
【0041】
図4は、
図1のIV−IV線断面図である。
【0042】
同図に示すように、第2灯具ユニット20Bは、第1灯具ユニット20Aと同様の第2投影レンズ22Bおよび複数の第2発光素子24Bを有するプロジェクタ型の灯具ユニットとして構成されているが、複数の第2発光素子24Bが第2投影レンズ22Bの後側焦点Fを含む焦平面から後方側に変位している点で、第1灯具ユニット20Aの場合と異なっている。その際、各第2発光素子24Bの発光面24aの上記焦平面からの後方変位量は、0.4〜1.2mm程度(例えば0.8mm程度)の値に設定されている。
【0043】
これを実現するため、第2灯具ユニット20Bにおいては、基板26およびレンズホルダ28を支持するベース部材32Bの前後長が第1灯具ユニット20Aのベース部材32Aよりも多少長くなっている。
【0044】
第2灯具ユニット20Bにおいては、各第2発光素子24Bが上記焦平面から後方側に変位しているため、その発光面24aから出射して第2投影レンズ22Bへ向かう光は、上記焦平面を多少の拡がりをもって通過することとなる。このため11個の第2発光素子24Bは、その発光面24aが互いに多少離れているにもかかわらず、その出射光が上記焦平面を通過する際の光線束の範囲は、互いに隣接する第2発光素子24B相互間において部分的に重複するものとなる。
【0045】
第2灯具ユニット20Bにおいても、11個の第2発光素子24Bは個別に点灯し得るように構成されている。
【0046】
図5は、車両用灯具10から前方へ向けて照射される光により、車両前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される付加配光パターン(すなわちハイビーム領域に形成される横長の配光パターン)を透視的に示す図である。その際、同図(a)は、ハイビーム用配光パターンPH1の付加配光パターンPA1を示す図であり、同図(b)は、中間的配光パターンPM1の付加配光パターンPAm1を示す図である。
【0047】
図5(a)に示すハイビーム用配光パターンPH1は、図示しない他の灯具ユニットからの照射光によって形成されるロービーム用配光パターンPL(図中、破線で示す配光パターン)に対して、車両用灯具10からの照射光によって形成される付加配光パターンPA1が付加されたものとなっている。
【0048】
ロービーム用配光パターンPLは、左配光のロービーム用配光パターンであって、その上端縁に左右段違いのカットオフラインCL1、CL2を有している。このカットオフラインCL1、CL2は、灯具正面方向の消点であるH−Vを鉛直方向に通るV−V線を境にして左右段違いで水平方向に延びており、V−V線よりも右側の対向車線側部分が下段カットオフラインCL1として形成されるとともに、V−V線よりも左側の自車線側部分が、この下段カットオフラインCL1から傾斜部を介して段上がりになった上段カットオフラインCL2として形成されている。
【0049】
このロービーム用配光パターンPLにおいて、下段カットオフラインCL1とV−V線との交点であるエルボ点Eは、H−Vの0.5〜0.6°程度下方に位置している。
【0050】
付加配光パターンPA1は、H−Vを水平方向に通るH−H線を上下に跨ぐようにしてV−V線から左右両側に均等に拡がる横長の配光パターンとして形成されている。その際、この付加配光パターンPA1は、上下方向に関してH−H線の下方側よりもその上方側により多く拡がっており、その下端縁は下段カットオフラインCL1のやや下方に位置している。
【0051】
そして、この付加配光パターンPA1がロービーム用配光パターンPLに対して追加形成されることにより、前方走行路を幅広く照射するハイビーム用配光パターンPH1が形成されるようになっている。
【0052】
この付加配光パターンPA1は、第1灯具ユニット20Aからの照射光によって形成される11個の光源像Iaと第2灯具ユニット20Bからの照射光によって形成される11個の光源像Ibとを合成した配光パターンとして形成されている。
【0053】
図6(a)は、第1灯具ユニット20Aからの照射光によって形成される11個の光源像Iaを取り出して示す図であり、
図6(b)は、第2灯具ユニット20Bからの照射光によって形成される11個の光源像Ibを取り出して示す図である。
【0054】
図6(a)に示すように、各光源像Iaは、正方形の外形形状を有する小さくて明るい配光パターンとして鮮明に形成されている。これは、各第1発光素子24Aの発光面24aが正方形の外形形状を有しており、かつ、第1灯具ユニット20Aにおいては各第1発光素子24Aの発光面24aが上記焦平面上に配置されていることによるものである。
【0055】
11個の光源像Iaは、互いに隣接する光源像Ia相互間で左右方向に多少離れた状態で形成されている。これは、11個の第1発光素子24Aが、互いに隣接する第1発光素子24A相互間において、その発光面24aが左右方向に多少離れた状態で配置されていることによるものである。
【0056】
各光源像Iaは、H−H線を上下に跨ぐようにして形成されており、その下端縁は下段カットオフラインCL1と略同じ高さに位置している。これは、各第1発光素子24Aの発光面24aの中心が光軸Axのやや下方に位置しており、その上端縁が光軸Axのやや上方に位置していることによるものである。
【0057】
一方、
図6(b)に示すように、各光源像Ibは、各光源像Iaよりもひとまわり大きい略正方形の外形形状を有するやや明るい配光パターンとして形成されており、その外周縁は各光源像Iaに比してやや不明瞭なものとなっている。これは、第2灯具ユニット20Bにおいては、各第2発光素子24Bの発光面24aが上記焦平面から後方側に変位していることによるものである。
【0058】
11個の光源像Ibは、互いに隣接する光源像Ib相互間においてその光源像Ibの外周縁部が互いに重複するようにして形成されている。これは、各第2発光素子24Bの発光面24aが上記焦平面よりも後方側に位置しており、互いに隣接する第2発光素子24B相互間において上記焦平面を通過する光線束の範囲が部分的に重複することによるものである。
【0059】
各光源像Ibは、H−H線を上下に跨ぐようにして形成されており、その下端縁は下段カットオフラインCL1のやや下方に位置している。これは、各第2発光素子24Bの発光面24aの中心が上記焦平面よりも後方側において光軸Axのやや下方に位置しており、その上端縁が光軸Axのやや上方に位置していることによるものである。
【0060】
図5(a)に示す付加配光パターンPA1においては、各光源像Ibが各光源像Iaに対して同心状の配置で形成されている。これは、各第1発光素子24Aおよび各第2発光素子24Bは、その前後方向の位置関係は互いに異なっているが、左右方向および上下方向の位置は同一であることによるものである。
【0061】
図5(b)に示す中間的配光パターンPM1は、ハイビーム用配光パターンPH1に対して、付加配光パターンPA1の代わりにその一部が欠落した付加配光パターンPAm1を有する配光パターンとなっている。
【0062】
具体的には、付加配光パターンPAm1は、11個の光源像Iaのうち右から4番目の光源像Iaが欠落するとともに11個の光源像Ibのうち右から3番目と4番目と5番目の光源像Ibが欠落した配光パターンとなっている。この付加配光パターンPAm1は、11個の第1発光素子24Aのうち左から4番目の第1発光素子24Aを消灯させるとともに11個の第2発光素子24Bのうち左から3番目と4番目と5番目の第2発光素子24Bを消灯させることによって形成されるようになっている。
【0063】
このような付加配光パターンPAm1を形成することにより、車両用灯具10からの照射光が対向車2に当たらないようにした上で前方走行路を幅広く照射するようになっている。
【0064】
その際、対向車2の左右両側に位置する光源像Iaは明るい配光パターンとして鮮明に形成されるので、付加配光パターンPAm1における欠落部分の境界線も明瞭に形成されることとなる。したがって、欠落部分の幅を狭くしても対向車ドライバにグレアを与えてしまわないようにすることができる。
【0065】
この付加配光パターンPAm1において、その欠落部分の左右両側に位置する2つの光源像Ia以外の部分は、付加配光パターンPA1と同様、光源像Ia、Ibが重複して形成されているので、その部分の明るさを十分に確保することができる。
【0066】
本実施形態においては、対向車2の位置が変化するのに伴って、消灯の対象となる第1および第2発光素子24A、24Bを順次切り換えることにより、付加配光パターンPAm1における欠落部分の位置を移動させ、これにより対向車ドライバにグレアを与えてしまわない範囲内でできるだけ前方走行路を幅広く照射する状態を維持するようになっている。
【0067】
なお、対向車2の存在は、図示しない車載カメラ等によって検出することが可能である。また、前方走行路に前走車が存在したりその路肩部分に歩行者が存在するような場合においても、これを検出して一部の光源像Ia、Ibを欠落させるようにすれば、前走車ドライバや歩行者にグレアを与えてしまわないようにすることが可能である。
【0068】
次に本実施形態の作用効果について説明する。
【0069】
本実施形態に係る車両用灯具10は、第1および第2灯具ユニット20A、20Bからの照射光によってハイビーム領域に横長の配光パターンとして付加配光パターンPA1を形成する構成となっているが、その際、第1灯具ユニット20Aからの照射光によって形成される各第1発光素子24Aの光源像Iaを第2灯具ユニット20Bからの照射光によって形成される各第2発光素子24Bの光源像Ibよりも鮮明に形成する構成となっているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0070】
すなわち、本実施形態に係る車両用灯具10は、複数の第1発光素子24Aのうちの一部および複数の第2発光素子24Bのうちの一部を選択的に点灯させることにより、横長の配光パターンの一部が欠落した配光パターンとして付加配光パターンPAm1を形成する構成となっているが、その際、欠落部分の左右両側部分を第1灯具ユニット20Aからの照射光によって形成するようになっているので、欠落部分の境界線を明瞭に形成することができる。したがって、欠落部分の幅を狭くしても対向車ドライバにグレアを与えてしまわないようにすることができる。
【0071】
一方、付加配光パターンPAm1における欠落部分の左右両側部分以外の部分については、第1および第2灯具ユニット20A、20Bからの照射光によって形成するようになっているので、付加配光パターンPAm1の明るさを十分に確保することができる。
【0072】
このように本実施形態によれば、ハイビーム領域に横長の配光パターンとして付加配光パターンPA1を形成するように構成された車両用灯具10において、付加配光パターンPA1の一部が欠落した付加配光パターンPAm1を形成したときに、対向車ドライバにグレアを与えてしまうことなく自車ドライバの前方視認性を高めることができる。
【0073】
本実施形態においては、第1灯具ユニット20Aにおける第1投影レンズ22Aの後側焦点Fからの各第1発光素子24Aの前後方向変位量が、第2灯具ユニット20Bにおける第2投影レンズ22Bの後側焦点Fからの各第2発光素子24Bの前後方向変位量よりも小さい値に設定されているので、第1灯具ユニット20Aからの照射光によって形成される各第1発光素子24Aの光源像Iaを第2灯具ユニット20Bからの照射光によって形成される各第2発光素子24Bの光源像Ibよりも鮮明に形成することが容易に可能となる。
【0074】
そしてこれにより、第1および第2灯具ユニット20A、20Bの主要構成要素を共通にした上で、その第1および第2発光素子24A、24Bの前後方向変位量を互いに変化させただけの構成で、上記作用効果を得ることができる。
【0075】
特に、本実施形態の第1灯具ユニット20Aは、各第1発光素子24Aが第1投影レンズ22Aの後側焦点Fを含む焦平面上に配置されているので、付加配光パターンPAm1における欠落部分の境界線を極めて明瞭に形成することができ、これにより欠落部分の幅を最小限に抑えることができる。
【0076】
また、付加配光パターンPAm1における欠落部分の左右両側部分以外の部分は、光源像Ia、Ibが重複しているので、その部分の明るさを十分に確保することができる。
【0077】
本実施形態に係る車両用灯具10を用いて、
図5に示す配光パターン以外の配光パターンを形成するようにすることも可能である。例えば、
図7(b)に示すように、中間的配光パターンPM2として付加配光パターンPAm2を有する配光パターンを形成することが可能である。
【0078】
この付加配光パターンPAm2は、11個の光源像Iaのうち右から3番目と5番目以外の光源像Iaが欠落するとともに11個の光源像Ibのうち右から3番目と4番目と5番目の光源像Ibが欠落した配光パターンとなっている。
【0079】
このような構成を採用することにより、付加配光パターンPAm2における欠落部分以外の部分について、光源像Ia、Ibのいずれか一方のみが形成されるようにすることができ、これにより付加配光パターンPAm2の明るさを全体的により均一なものとすることができる。
【0080】
上記実施形態においては、第1灯具ユニット20Aとして11個の発光素子24Aを備えており、第2灯具ユニット20Bとして11個の発光素子24Bを備えているものとして説明したが、これ以外の個数の発光素子24A、24Bを備えた構成とすることも可能である。
【0081】
上記実施形態においては、各第1発光素子24Aおよび各第2発光素子24Bが正方形の発光面24aを有しているものとして説明したが、これ以外の形状(例えば縦長矩形状や横長矩形状等)の発光面を有する構成とすることも可能である。
【0082】
上記実施形態においては、各第2発光素子24Bが上記焦平面の後方側に配置されているものとして説明したが、各第2発光素子24Bが上記焦平面の前方側に配置されているとした場合にも、上記実施形態の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0083】
上記実施形態においては、各第1発光素子24Aが上記焦平面上に配置されているものとして説明したが、各第1発光素子24Aが各第2発光素子24Bよりも小さい前後方向変位量で上記焦平面の後方側あるいは前方側に配置された構成とすることも可能である。このようにした場合には、付加配光パターンPAm1における欠落部分の境界線の明瞭度は多少低下するが、付加配光パターンPA1、PAm1の明るさの均一性を高めることができる。
【0084】
上記実施形態においては、ロービーム用配光パターンPLの存在を前提として、ハイビーム用配光パターンPH1においてはハイビーム領域に横長の配光パターンとして付加配光パターンPA1を追加形成するとともに、中間的配光パターンPM1においては付加配光パターンPA1の一部が欠落した付加配光パターンPAm1を追加形成する構成となっているものとして説明したが、ロービーム用配光パターンPLを形成することなく、付加配光パターンPA1、PAm1と同等の配光パターンを単独で形成する構成とすることも可能である。
【0085】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0086】
図8は、本変形例に係る車両用灯具110を示す、
図1と同様の図である。
【0087】
同図に示すように、この車両用灯具110の基本的な構成は上記実施形態の車両用灯具10と同様であるが、第2灯具ユニット120Bの構成が上記実施形態の場合と異なっている。
【0088】
すなわち、本変形例の第2灯具ユニット120Bは、その基本的な構成に関しては上記実施形態の第2灯具ユニット20Bと同様であるが、第2投影レンズ122Bおよびベース部材132Bの構成が第2灯具ユニット20Bの場合と異なっている。
【0089】
本変形例の第2投影レンズ122Bは、上記実施形態の第2投影レンズ22Bと同様、前面122aが凸面で後面122bが平面の平凸非球面レンズであって、その外周フランジ部122cにおいてレンズホルダ28に支持されているが、その前面122aに複数の拡散レンズ素子122sが形成されている点で第2投影レンズ22Bと異なっている。
【0090】
複数の拡散レンズ素子122sは、細かいピッチで縦縞状に形成されており、これにより第2投影レンズ122Bからの前方出射光を左右方向に僅かに拡散させるようになっている。
【0091】
本変形例のベース部材132Bは、第1灯具ユニット20Aのベース部材32Aと同様の構成を有している。すなわち本変形例においては、各第2発光素子24Bが第2投影レンズ122Bの後側焦点Fを含む焦平面上に配置されている。
【0092】
図9は、車両用灯具110から前方へ向けて照射される光により形成される付加配光パターンPA3、PAm3を示す、
図5と同様の図である。
【0093】
図9(a)に示すように、ハイビーム用配光パターンPH3の付加配光パターンPA3は、第1灯具ユニット20Aからの照射光によって形成される11個の光源像Iaと第2灯具ユニット120Bからの照射光によって形成される11個の光源像Icとを合成した配光パターンとして形成されている。
【0094】
各光源像Iaは、上記実施形態の場合と同様、正方形の外形形状を有する小さくて明るい配光パターンとして鮮明に形成されている。
【0095】
一方、各光源像Icは、各光源像Iaを左右両側に多少拡張した配光パターンとして形成されている。これは、第2投影レンズ122Bの前面122aに形成された複数の拡散レンズ素子122sにより、第2投影レンズ122Bからの前方出射光が左右方向に僅かに拡散することによるものである。
【0096】
図9(b)に示すように、中間的配光パターンPM3の付加配光パターンPAm3は、付加配光パターンPA3の一部が欠落した配光パターンとなっている。
【0097】
この付加配光パターンPAm3は、11個の光源像Iaのうち右から4番目の光源像Iaが欠落するとともに11個の光源像Icのうち右から3番目と4番目と5番目の光源像Icが欠落した配光パターンとなっている。
【0098】
本変形例の構成を採用することによっても、第1灯具ユニット20Aからの照射光によって形成される各第1発光素子24Aの光源像Iaを、第2灯具ユニット120Bからの照射光によって形成される各第2発光素子24Bの光源像Icよりも鮮明に形成することができる。
【0099】
そして本変形例においても、複数の第1発光素子24Aのうちの一部および複数の第2発光素子24Bのうちの一部を選択的に点灯させることにより、付加配光パターンPA3の一部が欠落した付加配光パターンPAm3を形成することができる。その際、欠落部分の左右両側部分を第1灯具ユニット20Aからの照射光によって形成するようになっているので、欠落部分の境界線を明瞭に形成することができる。したがって、欠落部分の幅を狭くしても対向車ドライバにグレアを与えてしまわないようにすることができる。
【0100】
一方、付加配光パターンPAm3における欠落部分の左右両側部分以外の部分については、第1および第2灯具ユニット20A、120Bからの照射光によって形成するようになっているので、付加配光パターンPAm3の明るさを十分に確保することができる。
【0101】
このように本変形例の構成を採用した場合においても、上記実施形態の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0102】
上記変形例においては、第2投影レンズ122Bとして、その前面122aに複数の拡散レンズ素子122sが形成された構成となっているものとして説明したが、第2投影レンズ122Bを全体的に左右方向に多少変形させたような外形形状を有する第2投影レンズを採用した場合においても、該第2投影レンズからの前方出射光を左右方向に僅かに拡散させるようにすることが可能である。
【0103】
上記変形例においては、各第2発光素子24Bが第2投影レンズ122Bの後側焦点Fを含む焦平面上に配置されているものとして説明したが、各第2発光素子24Bが上記焦平面から前後方向に変位して配置された構成とすることも可能である。
【0104】
なお、上記実施形態およびその変形例において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【0105】
また、本願発明は、上記実施形態およびその変形例に記載された構成に限定されるものではなく、これ以外の種々の変更を加えた構成が採用可能である。