特許第6630137号(P6630137)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6630137
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】画像読取り装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/04 20060101AFI20200106BHJP
   H04N 1/028 20060101ALI20200106BHJP
   G03B 27/54 20060101ALI20200106BHJP
   G03B 27/50 20060101ALI20200106BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20200106BHJP
【FI】
   H04N1/04 101
   H04N1/028 Z
   G03B27/54 A
   G03B27/50 A
   G03G21/00 510
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-233057(P2015-233057)
(22)【出願日】2015年11月30日
(65)【公開番号】特開2017-103516(P2017-103516A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2018年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】塩川 満治
【審査官】 宮島 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−26657(JP,A)
【文献】 特開平1−276874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/04 − 1/207
G03B 27/50
G03B 27/52 − 27/56
G03G 15/00
G03G 21/00
G03G 21/14
G06T 1/00
H04N 1/024 − 1/036
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を発光する発光手段と、
前記発光手段から発光されて基準板に反射した反射光を受光する受光手段と、
前記受光手段からの受光開始信号の間隔が複数あるライン周期のうち順次ライン周期を設定するライン周期設定手段と、
前記ライン周期設定手段により設定されたライン周期において前記受光手段により受光した受光量に基づいて輝度を算出する輝度算出手段と、
前記発光手段により発光する光の基準となる光量である複数の基準光量を記憶する記憶手段と、
前記ライン周期のうち、最大のライン周期から順番にライン周期ごとに、前記記憶手段に記憶された前記基準光量の初期値から順次増加させながら前記発光手段に発光させ、前記輝度算出手段により算出された輝度が所定範囲内となる前記基準光量を特定し、前記特定された基準光量を、前回のライン周期よりも短い次回のライン周期における基準光量の初期値として前記記憶手段に記憶させる第1の光量設定手段、
または前記ライン周期のうち、最小のライン周期から順番にライン周期ごとに、前記記憶手段に記憶された前記基準光量の初期値から順次減少させながら前記発光手段に発光させ、前記輝度算出手段により算出された輝度が所定範囲内となる前記基準光量を特定し、前記特定された基準光量を、前回のライン周期よりも長い次回のライン周期における基準光量の初期値として前記記憶手段に記憶させる第2の光量設定手段
を備えたことを特徴とする画像読取り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライン周期ごとの適切な光量を迅速に決定する画像読取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像読み取り装置は、光を照射する発光素子と、反射光を受光する受光素子と、濃度基準板とを備え、例えば電源をオンしたときなどに、発光素子が濃度基準板に対して光を照射し、その反射光を受光素子により受光し、その受光量に基づいて発光素子が照射する光の光量を調整する。
【0003】
ここで、画像読取り装置では、解像度など画像読み取り設定が複数ある場合、その画像読み取り設定ごとにライン周期が異なり、このライン周期毎に適切な光量となるように発光素子を設定する必要がある。ここでライン周期とは、ライン毎に原稿を読み取る際の読み取り間隔のことである。ライン周期が長い場合には少ない光量でも適切に画像を読み取ることが可能であるが、ライン周期が短い場合、適切に画像を読み取るためには光量を多くする必要がある。
【0004】
そのため、適切に画像を読み取るためには、例えば電源投入時などにおいて、画像読み取り設定ごと、すなわちライン周期毎の適切な光量を設定しておく必要がある。
【0005】
特許文献1には、読み取り対象である紙幣BLの搬送速度を検出し、この紙幣BLの搬送速度に応じて発光素子の発光量を補正する紙葉類識別装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−73286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の紙葉類識別装置では、紙幣BLの搬送速度に応じて発光素子の発光量を補正する際、どの程度補正するのかを決定する必要がある。
【0008】
例えば、ライン周期毎に、ある発光量で発光素子から光を照射し、反射光を受光素子で受光し、この受光量に基づいて輝度を算出し、算出した輝度が所定範囲内となるように発光素子の発光量を決定することが考えられる。
【0009】
この場合、あるライン周期においてある発光量で発光素子から光を照射したときの輝度が所定範囲内とならない場合、発光量を変化させていき、所定範囲内となるような適切な発光量を決定する。
【0010】
そのため、ライン周期ごとに、発光量の変化、受光量の測定、輝度の算出を繰り返すことにより、所定範囲内となるような適切な発光量を決定する動作を行うので、全てのライン周期において適切な光量を決定するまでに相当な時間を要していた。
【0011】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、ライン周期ごとの適切な光量を迅速に決定する画像読取り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係る画像読取り装置の第1の特徴は、
光を発光する発光手段と、
前記発光手段から発光されて基準板に反射した反射光を受光する受光手段と、
前記受光手段からの受光開始信号の間隔が複数あるライン周期のうち順次ライン周期を設定するライン周期設定手段と、
前記ライン周期設定手段により設定されたライン周期において前記受光手段により受光した受光量に基づいて輝度を算出する輝度算出手段と、
前記発光手段により発光する光の基準となる光量である複数の基準光量を記憶する記憶手段と、
前記ライン周期ごとに、前記記憶手段に記憶された前記基準光量の初期値から順次前記発光手段に発光させ、前記輝度算出手段により算出された輝度が所定範囲内となるような前記基準光量を特定し、前記特定された基準光量を次回のライン周期における基準光量の初期値として前記記憶部に記憶させる光量設定手段と、
を備えたことにある。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る画像読取り装置の第1の特徴によれば、光量設定手段が、ライン周期ごとに、記憶手段に記憶された基準光量の初期値から順次発光手段に発光させ、輝度算出手段により算出された輝度が所定範囲内となるような基準光量を特定し、特定された基準光量を次回のライン周期における基準光量の初期値として記憶手段に記憶させるので、あるライン周期において発光手段の光量を設定すると、他のライン周期では、設定した光量を基準光量として輝度を算出し、算出された輝度が所定範囲内となるか否かを判定すればよいので、従来技術と比較して処理を一部省略でき、その分迅速にライン周期ごとの適切な光量を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る実施例の画像読取り装置の構成図である。
図2】本発明に係る実施例の画像読取り装置1の処理内容を示したフローチャートである。
図3】本発明に係る実施例の画像読取り装置1における輝度算出部の判定を説明した説明図である。(a)は初期設定値であるライン周期400(μs)において、主走査方向に一列に配列された受光素子の受光量に基づいて算出された輝度を示している。(b)は、ライン周期300(μs)において、主走査方向に一列に配列された受光素子の受光量に基づいて算出された輝度を示している。(c)は、ライン周期200(μs)において、主走査方向に一列に配列された受光素子の受光量に基づいて算出された輝度を示している。
図4】本発明に係る実施例の画像読取り装置1の効果を示した図である。(a)は比較のため従来技術における発光素子の光量の決定時間を示した図であり、(b)は本発明に係る実施例の画像読取り装置における発光素子の光量の決定時間を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施例の画像読取り装置について説明する。なお、以下に示す各実施例は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0016】
(画像読取り装置の構成)
図1は、本発明に係る実施例の画像読取り装置の構成図である。
【0017】
図1に示すように、本発明に係る実施例の画像読取り装置1は、プラテン200と、読み取り部100と、制御部10とを備えている。
【0018】
プラテン200には、光量調整に用いられる白色の濃度基準板201と、原稿を読み取る際に用いられる無色透明の原稿読み取りグラス202とが設けられている。
【0019】
プラテン200の下方には、読み取り部100が設けられている。
【0020】
読み取り部100は、プラテン20に沿って副走査方向(X1−X2方向)に移動自在に図示しないガイドレールに支持されたキャリッジ103を有している。キャリッジ103は、光を発光する発光素子101と、反射板102とを有しており、光量調整を行う際には、発光素子101から発光される光が濃度基準板201に反射されるように濃度基準板201の下方に位置する。また、原稿を読み取る際には、発光素子101から発光される光が原稿読み取りグラス202に載置された原稿に反射されるように原稿読み取りグラス202の下方に位置し、副走査方向に1ライン毎に移動しながら原稿を読み取る。
【0021】
また、反射光の光路上には、反射板104,105とが設けられており、反射光はそれぞれの反射板で反射されて、集光レンズ106に入射される。
【0022】
そして集光レンズ106で集光された反射光は受光部108が備える受光素子107で受光される。
【0023】
これら発光素子101および受光素子107は、主走査方向(副走査方向と直行する方向であって、紙面の手前―奥行き方向)に整列してそれぞれ複数設けられており、一斉に発光素子101から発光し、それぞれ発光されて反射された反射光を受光素子107により受光することができる。
【0024】
制御部10は、ライン周期設定部11と、輝度算出部12と、光量設定部13と、記憶部14とを備えている。
【0025】
ライン周期設定部11は、受光開始信号の間隔が複数あるライン周期のうち順次ライン周期を設定する。
【0026】
輝度算出部12は、ライン周期設定部11により設定されたライン周期において受光素子により受光した反射光の受光量に基づいて輝度を算出する。
【0027】
光量設定部13は、ライン周期ごとに、記憶部14に記憶された基準光量の初期値から順次発光素子101に発光させ、輝度算出部12により算出された輝度が所定範囲内となるような基準光量を特定し、特定された基準光量を次回のライン周期における基準光量の初期値として記憶部14に記憶させる。
【0028】
記憶部14は、発光素子101により発光する光の基準となる光量である複数の基準光量を記憶する。
【0029】
(画像読取り装置の作用)
図2は、本発明に係る実施例の画像読取り装置1の処理内容を示したフローチャートである。
【0030】
図2に示すように、画像読取り装置1の電源がオンされた場合、またはスリープモードから復帰した場合(ステップS101;YES)、初期化動作として、複数のライン周期毎に適切な光量となるような発光素子101の光量調整を行う必要がある。ここで、ライン周期は、上述したように、解像度など画像読み取り設定によって定められるライン毎に原稿を読み取る際の読み取り間隔のことである。
【0031】
そこで、制御部10のライン周期設定部11は、複数のライン周期の中からあらかじめ決定されているライン周期の初期設定を行う(ステップS103)。ライン周期の初期設定値は、記憶部14に記憶されている。例えば、ライン周期として、設定可能な400(μs)、300(μs)、200(μs)の中から、予め定められた最も長い400(μs)を、ライン周期の初期設定値として設定する。
【0032】
次に、光量設定部13は、記憶部14から基準光量を読み出す(ステップS105)。ここで、例えば、基準光量として、40(%)、50(%)、60(%)、70(%)、80(%)が設定可能であり、基準光量の初期値として最も低い40(%)が記憶されている場合、光量設定部13は、記憶された40(%)を基準光量として読み出す。また後述するように、基準光量が更新された場合は、更新された基準光量を読み出す。
【0033】
輝度算出部12は、ライン周期設定部11により設定されたライン周期において、受光素子107により受光した反射光の受光量に基づいて輝度を算出する(ステップS107)。
【0034】
次に、光量設定部13は、輝度閾値を超えた受光素子の割合が所定範囲内であるか否かを判定する(ステップS109)。
【0035】
図3は、本発明に係る実施例の画像読取り装置1における輝度算出部12の判定を説明した説明図である。図3(a)は初期設定値であるライン周期400(μs)において、主走査方向に一列に配列された受光素子107の受光量に基づいて算出された輝度を示している。
【0036】
ここでは、基準光量の初期値として40(%)が記憶されているので、図3(a)に示すように、光量設定部13は、発光素子101の光量(出力)を40(%)としたときの輝度301が、輝度閾値300を超えた受光素子の割合を算出する。図3(a)に示した輝度301は輝度閾値300を超えていないので、輝度閾値を超えた受光素子の割合は0(%)であり、所定範囲内ではないと判定する。ここで、所定範囲とは、主走査方向1ラインにおいて、適切に画像読み取りが可能な輝度となる範囲であり、例えば、予め50(%)〜70(%)と設定されている。すなわち、輝度閾値を超えた受光素子の割合が50(%)未満であると、主走査方向1ライン全体の光量が少なすぎ、原稿を読み取った画像が暗い画像となってしまう。一方、輝度閾値を超えた受光素子の割合が70(%)を超えると、主走査方向1ライン全体の光量が多すぎ、原稿を読み取った画像の色が不明瞭となる場合がある。そこで、予め適切に画像読み取りが可能な輝度となるように範囲設定しておく必要がある。
【0037】
輝度閾値を超えた受光素子の割合が所定範囲内ではないと判定された場合(ステップS109;NO)、発光素子101の光量(出力)が40(%)では暗すぎるということであるので、光量設定部13は、光量を1段階増加させる(ステップS111)。図3(a)に示した例では、40(%)を50(%)と10(%)単位で増加させている。
【0038】
そして、処理をステップS107に戻し、再度、1段階増加させた光量で発光素子101に発光させ、輝度算出部12が、受光素子107により受光した反射光の受光量に基づいて輝度を算出し(ステップS107)、光量設定部13が、輝度閾値を超えた受光素子の割合が所定範囲内であるか否かを判定する(ステップS109)。
【0039】
図3(a)に示した例では、発光素子101の光量(出力)が50(%)でも暗すぎ、60(%)となったときの輝度302において、主走査方向の受光素子全体数L1に対する輝度閾値300を超えた受光素子の数L2が、所定範囲内(50(%)〜70(%))となっている。そこで、光量設定部13は、発光素子101の光量(出力)が60(%)のときに、輝度閾値を超えた受光素子の割合が所定範囲内であると判定する(ステップS109;YES)。
【0040】
光量設定部13は、輝度閾値を超えた受光素子の割合が所定範囲内であると判定されると(ステップS109;YES)、光量設定部13は、設定した光量を新たな基準光量として記憶部14の基準光量を更新する(ステップS113)。図3(a)に示した例では、発光素子101の光量(出力)60(%)を基準光量として記憶する。
【0041】
次に、光量設定部13は、設定可能なライン周期である400(μs)、300(μs)、200(μs)のうち、全てのライン周期について、光量を決定したか否かを判定する(ステップS115)。
【0042】
全てのライン周期について光量を決定していないと判定された場合(ステップS115;NO)、光量設定部13は、ライン周期を短縮する(ステップS117)。例えば、現在設定されているライン周期が400(μs)であれば300(μs)と設定し、300(μs)であれば200(μs)と設定する。
【0043】
そして、処理をステップS105へ移行し、光量設定部13が、記憶部14から基準光量を読み出し(ステップS105)、その後、ステップS107〜S117の処理を実行する。このとき、ステップS113において基準光量が更新されているので、ステップS117におけるライン周期の短縮後は以前のライン周期における光量を基準光量として輝度閾値を超えた受光素子の割合が所定範囲内である光量を決定することができる。そのため、その分短時間で光量を決定することができる。
【0044】
図3(b)は、ライン周期300(μs)において、主走査方向に一列に配列された受光素子107の受光量に基づいて算出された輝度を示している。
【0045】
ここでは、基準光量の初期値として60(%)が記憶されているので、図3(b)に示すように、光量設定部13は、発光素子101の光量(出力)を40(%)としたときの輝度311および50(%)としたときの輝度312とを算出することなく、60(%)としたときの輝度313を算出し、この輝度313が輝度閾値300を超えた受光素子の割合を算出する。図3(b)に示した輝度313は輝度閾値300を超えていないので、輝度閾値を超えた受光素子の割合は0(%)であり、所定範囲内ではないと判定する。
【0046】
次に、発光素子101の光量(出力)を70(%)としたときの輝度314を算出する。輝度314の主走査方向の受光素子全体数L1に対する輝度閾値300を超えた受光素子の数L2が、所定範囲内(50(%)〜70(%))となっているので、光量設定部13は、輝度閾値を超えた受光素子の割合が所定範囲内であると判定する。そして、光量設定部13は、発光素子101の光量(出力)70(%)を基準光量として記憶する。
【0047】
このように、光量設定部13が記憶部14から基準光量を読み出し、読み出した基準光量を変化させることにより、輝度算出部12により算出された輝度が所定範囲内となるように発光素子101の光量を設定する。そのため、ライン周期が変更された後は、前回のライン周期における光量を基準光量として発光素子101の適切な光量を決定することできるので、短時間で光量を決定することができる。図3(b)に示したライン周期が300(μs)であるときの例では、光量設定部13は、発光素子101の光量(出力)を40(%)としたときの輝度311および50(%)としたときの輝度312とを算出することがないので、その分早く光量を決定することができる。
【0048】
さらに、光量設定部13は、ライン周期300(μs)における光量を決定すると、次に、ステップS115およびS117の処理により、ライン周期を200(μs)と設定すると、記憶部14から基準光量を読み出し(ステップS105)、その後、ステップS107〜S117の処理を実行する。
【0049】
図3(c)は、ライン周期200(μs)において、主走査方向に一列に配列された受光素子107の受光量に基づいて算出された輝度を示している。
【0050】
ここでは、基準光量の初期値として70(%)が記憶されているので、図3(c)に示すように、光量設定部13は、発光素子101の光量(出力)を40(%)としたときの輝度321、50(%)としたときの輝度322、60(%)としたときの輝度323については算出することなく、70(%)としたときの輝度324を算出し、この輝度324が輝度閾値300を超えた受光素子の割合を算出する。図3(c)に示した輝度324は輝度閾値300を超えていないので、輝度閾値を超えた受光素子の割合は0(%)であり、所定範囲内ではないと判定する。
【0051】
次に、発光素子101の光量(出力)が80(%)としたときの輝度325を算出し、輝度325の主走査方向の受光素子全体数L1に対する輝度閾値300を超えた受光素子の数L4が、所定範囲内(50(%)〜70(%))となっているので、光量設定部13は、輝度閾値を超えた受光素子の割合が所定範囲内であると判定する。
【0052】
このように、図3(c)に示したライン周期が200(μs)であるときの例では、光量設定部13は、発光素子101の光量(出力)を40(%)、50(%)、60(%)としたときの輝度を算出することがないので、その分早く光量を算出することができる。
【0053】
図2に戻り、光量設定部13は、設定可能なライン周期である400(μs)、300(μs)、200(μs)のうち、全てのライン周期について、光量を決定したと判定すると(ステップS115;YES)、記憶部14に記憶された基準光量を初期値である40(%)に戻しておく(ステップS121)。
【0054】
図4は、本発明に係る実施例の画像読取り装置1の効果を示した図である。図4(a)は比較のため従来技術における発光素子の光量の決定時間を示した図であり、図4(b)は本発明に係る実施例の画像読取り装置1における発光素子の光量の決定時間を示した図である。
【0055】
図4(a)に示すように、従来技術では、t1時点に電源がオンされると、まず基準光量を40(%)として、400(μs)のライン周期において、光量を変化させることにより適切な光量として60(%)を決定する。
【0056】
そして、t2時点において、400(μs)のライン周期における発光素子101の光量を決定すると、t2時点から、基準光量を40(%)として、300(μs)のライン周期において、光量を変化させることにより適切な光量として70(%)を決定する。そのため、基準光量が40(%)、50(%)、60(%)、70(%)それぞれのときの輝度を算出し、輝度閾値を超えた受光素子の割合が所定範囲内か否かを判定する必要があるので、300(μs)のライン周期における発光素子101の光量を決定するまでt3時点まで時間を要することになる。
【0057】
そして、t3時点から、基準光量を40(%)として、200(μs)のライン周期において、光量を変化させることにより適切な光量として80(%)を決定する。そのため、基準光量が40(%)、50(%)、60(%)、70(%)、80(%)それぞれのときの輝度を算出し、輝度閾値を超えた受光素子の割合が所定範囲内か否かを判定する必要があるので、200(μs)のライン周期における発光素子101の光量を決定するまでt4時点まで時間を要することになる。
【0058】
一方、図4(b)に示すように、本発明に係る実施例の画像読取り装置1では、t1時点に電源がオンされると、まず基準光量を40(%)として、400(μs)のライン周期において、光量を変化させることにより適切な光量として60(%)を決定するので、従来技術と同様に、400(μs)のライン周期における発光素子101の光量を決定するまでt2時点まで時間を要することになる。
【0059】
しかしながら、1つのライン周期における発光素子101の光量として60(%)を決定すると、その後の計算処理を一部省略できるので、結果的に短時間で全てのライン周波数における発光素子101の光量を決定することができる。
【0060】
具体的には、図4(b)に示すように、t2時点において、400(μs)のライン周期における発光素子101の光量を決定すると、t2時点から、基準光量を60(%)として、300(μs)のライン周期において、光量を変化させることにより適切な光量70(%)を決定する。そのため、基準光量が40(%)、50(%)それぞれのときの輝度を算出し、輝度閾値を超えた受光素子の割合が所定範囲内か否かを判定する必要がないので、t3時点より前のt5時点において、300(μs)のライン周期における発光素子101の光量を決定することができる。
【0061】
そして、t5時点から、基準光量を70(%)として、200(μs)のライン周期において、光量を変化させることにより適切な光量80(%)を決定する。そのため、基準光量が40(%)、50(%)、60(%)それぞれのときの輝度を算出し、輝度閾値を超えた受光素子の割合が所定範囲内か否かを判定する必要がないので、t4時点より前のt6時点において、200(μs)のライン周期における発光素子101の光量を決定することができる。
【0062】
以上のように、本発明に係る実施例の画像読取り装置1によれば、光量設定部13が、ライン周期設定部11により順次選択されるライン周期ごとに、記憶部14に記憶された基準光量の初期値から順次発光素子101に発光させ、輝度算出部12により算出された輝度が所定範囲内となるような基準光量を特定し、特定された基準光量を次回のライン周期における基準光量の初期値として記憶部14に記憶させるので、あるライン周期において発光素子101の光量を設定すると、他のライン周期では、設定した光量を基準光量として輝度を算出し、輝度閾値を超えた受光素子の割合が所定範囲内か否かを判定すればよいので、計算処理を一部省略でき、その分迅速にライン周期ごとの適切な光量を決定することができる。
【0063】
なお、図2に示したフローチャートでは、ステップS103において、ライン周期として、設定可能な400(μs)、300(μs)、200(μs)の中から、予め定められた最も長い400(μs)を、ライン周期の初期設定値として設定した。そして、ステップS117において、ライン周期を順次短くし、ステップS111において、それぞれのライン周期において、光量を増加させることにより適切な光量を決定した。
【0064】
そのため、上述した例では、まず400(μs)のライン周期における発光素子101の光量が決定され、その後、300(μs)のライン周期における発光素子101の光量、200(μs)のライン周期における発光素子101の光量の順に決定されることになる。
【0065】
ここで、上述したように、ライン周期が長い場合には少ない光量でも適切に画像を読み取ることが可能であるが、ライン周期が短い場合、適切に画像を読み取るためには光量を多くする必要がある。
【0066】
そのため、最も長いライン周期を初期設定値として設定している場合、段階的にライン周期を短くしながら適切な光量を決定していくので、常に前回のライン周期において決定された光量以上となるはずである。そこで、予め定められた最も長い400(μs)を、ライン周期の初期設定値として設定されている場合には、ステップS117において、ライン周期を順次短くし、ステップS111において、それぞれのライン周期において、光量を増加させることにより適切な光量を決定した。
【0067】
しかしながら、本発明に係る実施例の画像読取り装置1では、最も短いライン周期を初期設定値として設定してもよい。
【0068】
この場合、図2に示したフローチャートでは、ステップS103において、ライン周期として、設定可能な400(μs)、300(μs)、200(μs)の中から、予め定められた最も短い200(μs)を、ライン周期の初期設定値として設定する。そして、ステップS117において、ライン周期を順次長くし、ステップS111において、それぞれのライン周期において、光量を減少させることにより適切な光量を決定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1…画像読取り装置
10…制御部
11…ライン周期設定部
12…輝度算出部
13…光量設定部
14…記憶部
20…プラテン
100…読み取り部
101…発光素子
102…反射板
103…キャリッジ
104,105…反射板
106…集光レンズ
107…受光素子
108…受光部
200…プラテン
201…濃度基準板
202…原稿読み取りグラス
図1
図2
図3
図4