【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 http://www.itoen.co.jp/news/detail/id=24748(平成28年9月21日掲載)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記溶液調製工程において、80℃以上の加熱によって寒天溶液を調製し、前記温度調整工程において、前記寒天溶液の温度は30℃以下に調整される請求項1〜4の何れか一項に記載のゼリー飲料の製造方法。
前記温度調整工程において、前記寒天溶液の温度は、5〜30℃に調整され、寒天溶液の粘度は、10mPa・s以上に増加する請求項1〜5の何れか一項に記載のゼリー飲料の製造方法。
更に、ゼリー飲料に適した風味を前記寒天調合液に与える調味工程を有し、前記調味工程は、粘性を有する調味材料を前記寒天溶液に添加する第1工程と、酸性の調味材料を前記寒天調合液に添加する第2工程とを有する請求項1〜8の何れか一項に記載のゼリー飲料の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
寒天は、天草、オゴノリ、オバクサ等の紅藻類の海藻から、熱水抽出、濾過、ゲル化及び乾燥工程を経て得られるゲル化能を有する食材であり、糸状、棒状、粉末状、フレーク状、フィルム状等の製品として市販されている。寒天溶液を冷却してゲル化したゼリーは、破断した際に、ゼリー中に内包する水分を破断面から放出する特性がある。つまり、ゼリー飲料を摂取する際に、破断面から放出される水分によって風味及び口溶け感を享受し易いので、このような寒天の特性は、ゼリー飲料として好ましい。寒天の主成分は、アガロース及びアガロペクチンであり、寒天の凝固作用はアガロースに由来し、アガロース成分の比率によって寒天のゲル化能及びゲル化温度は変化する。
【0018】
寒天の原料である海藻は、種類によって硫酸根の含量が異なり、その含量が少ない(つまり、アガロース含量が高い)と、得られる寒天のゲル化能は高い。つまり、寒天のゲル化能は、製造原料として使用する海藻の種類、産地等によって異なる。又、製造過程における処理条件によっても寒天のゲル可能は変化する。市販される寒天は、天草を原料とするものが多く、その凝固温度は、概して、30〜45℃程度である。オゴノリを原料とする場合には、熱水抽出に先立ってアルカリ処理を施すことが従来より知られており、アルカリ処理によって、脱硫酸が進行してアガロース成分比率が高まり、天草由来の寒天と同程度のゲル化能のものがオゴノリから得ることができる。近年、ゲル化能が従来製品より低い寒天(以下、低強度寒天と記載する)も市場に提供されており、このような寒天は、抽出された寒天成分に、熱処理、酸処理、酵素処理等のようなゲル化能を低下させる処理を施すことによって得られる。これらの処理は、寒天成分分子の結合を切断して分子量を低下させる作用をし、低分子化によって寒天のゲル化能が低下する。その結果、寒天のゲル化能が低下してゲル化後のゼリー強度が低下すると共に、ゲル化し難くなって高粘性液体の前ゲル状態を示し易くなる。低強度寒天は、オゴノリ等の硫酸根含量が相対的に高い海藻を原料として用いて製造することも可能であり、この場合、寒天成分のアガロース成分比率を低く維持するために、熱水抽出前のアルカリ処理は省略又は制限される。この製法では、寒天成分が低分子化しないように抽出条件を配慮することにより、重合度の大きい寒天(高粘性寒天と称される)が得られ、寒天溶液を凝固点近くに冷却した時に、前ゲル状態において極めて粘稠な液体になる。
【0019】
寒天は、水性媒体中で加熱することによって溶解(ゾル化)して透明性のある寒天溶液(ゾル)を形成し、寒天溶液を臨界ゲル温度以下に冷却すると、ゲル化してゼリー状の凝固体となる。寒天固体は、水性媒体中で沈降し易い性質があり、寒天粉末(ゲル粒子)を水に分散させても、静置すると水底に寒天粉末が沈降分離する。従って、ゼリー飲料の製造において均質な製品を安定的に製造するには、分散液における寒天の沈降を防止することが肝要である。
【0020】
この点に関して、ゲル化能が低い低強度寒天は、有用な特性を有している。つまり、低強度寒天は、通常の寒天よりゲル化能が低く、低強度寒天の溶液を通常の寒天の凝固点近くまで冷却しても凝固し難く、粘性が高い液体状態を保ち易くなる。従って、低強度寒天の溶液と、通常の寒天粉末の分散液とを混合すると、低強度寒天の粘性液(前ゲル)と通常の寒天粉末(ゲル)とが混在する水性液が形成され、通常の寒天粉末の粒子は、低強度寒天の粘性液によって支えられ、沈降し難くなる。このような混合状態の寒天調合液を調製して、飲料に適した調味を施して容器に充填した後に加熱すれば、容器内で寒天粉末が溶解して均質な寒天溶液になり、これを冷却することによって良好な容器詰めゼリー飲料が得られる。つまり、同一温度において粘性の寒天溶液(前ゲル)と寒天分散液(ゲル)とが共存し得るように選択された複数種の寒天を組み合わせて用いることによって、寒天液における寒天粉末(ゲル粒子)の沈降抑制及び均質化が可能になり、適度なゼリー強度のゼリー飲料の安定的供給を実現することができる。
【0021】
即ち、本発明のゼリー飲料の製造方法においては、少なくとも2種類の寒天、つまり、第1の寒天と、第1の寒天よりゼリー強度が低い第2の寒天とを使用する。第2の寒天は、第1の寒天の粉末粒子を水性液中で支持するために使用されるので、最終的なゼリー飲料のゼリー強度への貢献度は低く、第1の寒天がゼリー飲料のゼリー強度に主として寄与する。従って、第1の寒天は、最終的に生成されるゼリー飲料が好適なゼリー強度を有するように選択するのがよい。具体的には、第1の寒天は、濃度1.5質量%におけるゼリー強度(日寒水式測定法による)が250g/cm
2程度以上の寒天であるとよく、例えば、従来市販されている通常の寒天を好適に使用できる。心太等の製造原料である寒天や高融点寒天は、ゼリー強度が800g/cm
2程度以上となり、これらも第1の寒天として使用可能である。ゼリー強度が高い寒天を第1の寒天として使用すると、配合や製品の食感についての自由度を広げることができる。一方、第2の寒天は、加熱溶解して調製された寒天溶液が、第1の寒天が溶解しない温度において高粘性の前ゲル状態になるものを選択するのがよい。つまり、第2の寒天は、容器詰め前の寒天調合液において高粘性の前ゲル状態になり得るものが選択される。具体的には、臨界ゲル温度近くの温度で10mPa・s程度以上の粘性液を形成可能なものが第2の寒天として好適であり、例えば、濃度1.5%(w/w)におけるゼリー強度が10〜250g/cm
2である低強度寒天は、このような粘性液になるので好適に使用できる。ゼリー強度が150g/cm
2以下である低強度寒天を第2の寒天として使用すると、前ゲル状態の高粘性液を得易い。このような低強度寒天は、市販品として入手可能であり、例えば、伊那食品工業社製のウルトラ寒天イーナ、ウルトラ寒天UX-30、ウルトラ寒天AX-30、ウルトラ寒天BX-30、ウルトラ寒天UX-100、ウルトラ寒天AX-100、ウルトラ寒天BX-100、ウルトラ寒天UX-200、ウルトラ寒天AX-200、ウルトラ寒天BX-200などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。尚、寒天によって得られるゼリー強度は、寒天濃度によって変動し、寒天のゾル−ゲル転移は、寒天濃度や水性媒体のpHの影響を受けるので、第1の寒天及び第2の寒天を、上述した寒天に限定する必要はない。つまり、最終的な製品仕様に応じて、良好な粘性の寒天調合液が調製可能で、好適なゼリー強度の最終製品が得られるように、使用する寒天の選択・組み合わせを行えばよい。
【0022】
更に、ゼリー飲料の原料として、必要に応じて、各種果汁、野菜圧搾汁類や、酸味料、甘味料、香料、塩類等を調味用に使用することができる。酸味料としては、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、ビタミンC等の有機酸が挙げられ、甘味料としては、蔗糖、乳糖、麦芽糖、果糖、ブドウ糖、オリゴ糖、液糖、蜜糖等の単糖及び多糖、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、還元麦芽糖等の糖アルコール等が挙げられる。寒天調合液の15〜15質量%程度の糖類を使用すると、一般的なゼリー飲料の甘味が付与される。又、必要に応じて、乳製品、コーヒー成分、茶成分を使用しても良い。更に、飲食品製造に一般的に使用される機能性成分や添加剤についても必要に応じて適宜使用することができる。機能性成分としては、各種ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類等の栄養素や酵素類が挙げられ、添加剤としては、着色料、安定剤などが挙げられる。果肉等の固形分をゼリー飲料を配合する場合は、寒天調合液を調製して、容器に充填する前の寒天調合液に配合するとよい。
【0023】
寒天は、非常に少ない量で水性媒体をゲル化させることができる点において、ゼラチン等の他のゲル化食材と異なり、寒天のゲル化濃度は、通常、0.15〜1.5%程度である。本発明において、ゼリー飲料を構成する第1の寒天の使用量は、充填前の寒天調合液の質量を基準として、0.10〜0.30質量%程度であると好ましく、この範囲を下回ると、強度が不足してゼリー飲料としての食味、食感において不十分となり易く、他方、上記の量より過剰であると、ゼリー飲料としての飲用が困難になる。第2の寒天は、充填前の寒天調合液の質量を基準として、0.05〜0.30質量%程度であると好ましく、この範囲を下回ると、寒天調合液における粘性が不足して、第1の寒天の粉末粒子が沈降し易くなり、これより過剰であると、ベタつきが強く扱い難くなるため、製造効率を低下させる要因となる。
【0024】
好適な食感のゼリー飲料が得られるには、寒天調合液中の水分量は、第1の寒天及び第2の寒天の合計質量を基準とすると、その130〜500倍程度であるとよい。この水分量は、調味を施した容器詰め前の寒天調合液の81〜85質量%程度であるとよく、調味において果汁等の水分を主体とする材料を使用する際には、この水分量も寒天調合液の水分量に換算される。
【0025】
寒天調合液の調製には、第1の寒天粉末の寒天分散液と、第2の寒天を溶解した寒天溶液とが用いられる。従って、第1の寒天の粉末が水性媒体に分散する寒天分散液を調製する分散液調製工程と、第2の寒天を水性媒体中で加熱して寒天溶液を調製する溶液調製工程とが実施される。第1の寒天の粉末は、分散し易さの点から細かい粒子であることが好ましく、粒径が0.5〜5.0mm程度のものが取り扱い上好適であるが、この大きさでなくてもよい。第2の寒天は、加熱溶解するので、特に形状及び寸法を特定する必要はないが、作業効率の点においては粉末、フレーク状、糸状のもの等が好ましい。
【0026】
寒天溶液及び寒天分散液の調製に使用する水は、寒天調合液を構成する水であるが、寒天調合液を構成する水の全量を使用する必要はない。つまり、寒天調合液を構成する水の一部のみを用いて寒天溶液及び寒天分散液を調製することができ、これにより、寒天溶液の調製に要する熱エネルギーの削減、及び、温度調整の簡便化が図れる。例えば、第1の寒天粉末を用いた寒天分散液の調製では、全水量の3〜15%程度の水に寒天粉末を添加し、これを攪拌することで好適に分散液を調製することができる。第2の寒天についても、全水量の3〜15%程度の水に第2の寒天を添加し、攪拌しながら80〜99℃程度に加熱することによって、寒天溶液を調製することができる。
【0027】
第1の寒天から寒天分散液を調製する際、水性媒体の温度は第1の寒天が溶解しない温度範囲に維持される。従って、寒天分散液の温度は、79℃以下の範囲が許容され、80℃程度以上では寒天が溶解する。但し、寒天溶液との混合時の温度による影響を考慮すると、寒天調合液の調製に使用する際の寒天分散液は、50℃程度以下の温度が好ましく、40℃以下の範囲がより好ましい。尚、4℃以下の冷却は、消費エネルギーの点で好ましくない。これらを考慮すると、寒天分散液は、好ましくは5〜50℃、より好ましくは5〜40℃のものを寒天調合液の調製に使用すると良い。寒天は酸性下で分解し易くなるので、寒天分散液のpH値は中性域以上であることが好ましい。通常の水を使用して調製される寒天分散液のpHは5〜7程度であるので、特にpH調整の必要はない。
【0028】
第2の寒天から寒天溶液を調製する際、寒天溶液のpHが6.0以上、好ましくはpH6.0〜8.0程度になるようにpHを調整すると、寒天溶液の安定性が高まるので好適である。pH調整には、弱塩基性である有機酸塩を用いると良く、例えば、クエン酸、リンゴ酸等の有機酸と、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との塩が挙げられる。有機酸塩は、寒天と共に水に添加すればよいが、寒天の前又は後に添加しても良い。
【0029】
寒天溶液は、第2の寒天を水性媒体に加熱溶解して得るため、高温状態である。このような寒天溶液を第1の寒天の分散液と混合するためには、寒天溶液を冷却して、寒天溶液と接触した第1の寒天が溶解しない温度に調整する工程が必要である。従って、第1の寒天の温度が80℃以上にならないように冷却される。この際、寒天溶液の温度を、好ましくは30℃以下、より好ましくは20℃以下に調整することによって、以下のように非常に有利な働きをする。詳細には、高温の寒天溶液は粘度が小さいが、温度低下によって臨界ゲル温度に近づくと、寒天溶液は粘性が高い前ゲル状態になり、温度が低いほど粘性が増加する。30℃程度以下において、第2の寒天から生成される寒天溶液の粘度は、10mPa・s以上に増加し得る。従って、好ましくは、5mPa・s以上になるように寒天溶液の濃度及び温度を適宜調整すると、これを用いて調製される寒天調合液における寒天粉末の分散状態を好適に維持することができる。尚、4℃以下に冷却すると、高粘性によって攪拌効率の低下を招く場合があり、製造及び冷却に消費するエネルギーの点で好ましくない。これらを考慮すると、寒天溶液の温度は、好ましくは5〜30℃、より好ましくは5〜20℃に調整すると良い。
【0030】
寒天溶液の温度調整工程は、一般的な熱交換による冷却、つまり、水等の冷媒を用いた冷却を利用しても良いが、水性媒体の添加希釈による温度低下(平均化)を利用すると効率的である。つまり、寒天調合液を構成する水のうち、寒天溶液及び寒天分散液の調製に使用した残部(果汁等を使用する場合は、その水量を減算した残量)を利用して温度調整を行うことができる。この時に利用する水は、高温の寒天溶液を冷却可能な温度の水であればよく、雰囲気温度の水を好適に利用できるので、特に冷却した水を用いる必要はない。前述のように、寒天溶液の調製に使用する水の量を、寒天調合液を構成する水の15%程度以下に設定した時、それと同程度以上の量の水を温度調整に利用可能であるので、温度調整を行うに十分である。従って、この温度調整手法は、作業効率及びエネルギー効率の点で優れた方法である。寒天の凝固力は比較的強く、水の添加によって希釈されても、上述の配合割合においては好適な前ゲル状態になり、非常に高粘性の寒天溶液となる。
【0031】
水の添加による寒天溶液の温度調整工程は、第1の寒天の分散液を混合する調合工程の前に実施しても、或いは、調合工程と共に実施してもよい。つまり、高温の寒天溶液に水を加えて低温に温度を調整した後に、これと第1の寒天の分散液を混合しても、或いは、高温の寒天溶液及び寒天分散液を同時に水に添加して、冷却と混合とを同時に行うようにしてもよい。冷却と混合の同時実施は、冷媒を用いた熱交換による冷却を利用した場合でも可能であり、その場合、冷却速度を高めるような工夫が混合装置に施される。
【0032】
寒天溶液の温度調整、及び、寒天溶液と寒天分散液との混合によって、第1の寒天及び第2の寒天を含んだ寒天調合液が得られる。この寒天調合液において、第2の寒天は凝固せずに粘性液(前ゲル)の状態であり、第1の寒天の粉末粒子は、第2の寒天の粘性液に支持されて流動抵抗により沈降が抑制され、液中での分散状態が維持される。このようにして得られる寒天調合液を、以下のような工程においてゼリー飲料用調合液として用いて、ゼリー飲料を製造することができる。
【0033】
寒天調合液は、ゼリー飲料に適した風味を前記寒天調合液に与える調味工程を完了した後に、容器に充填する充填工程を経て、ゼリー飲料に加工される。攪拌効率等の作業効率の観点から、寒天調合液の調味を、調味工程は、粘性を有する調味材料を寒天溶液に添加する第1工程と、酸性の調味材料を寒天調合液に添加する第2工程とに分けると好適である。液糖、蜜糖等は、それ自体粘性がある調味材料であり、又、糖の添加は、寒天のゼリー強度を増加させて寒天液の粘性を高める作用もある。このため、作業効率の点から、粘性液状の糖類は、第1の寒天の分散液を混合する前に、第2の寒天から調製される寒天溶液に添加するとよい。或いは、前述の温度調整工程と調合工程を同時に行う場合は、温度調整用の水に予め液糖等を添加しておき、これに寒天溶液及び寒天分散液を添加するとよい。これにより、温度調整工程及び調合工程と同時に調味の第1工程が実施される。粉糖等の固形の糖類を使用する場合は、少量の水又は温度調整用の水に溶解して、液糖等と同様に取り扱うとよい。第2工程に関して、寒天は、酸及び加熱によって分解が進行してゼリー強度が低下するので、ゼリー飲料の調味に使用する果汁、酸味料、ビタミンC等の酸性物質は、寒天調合液の水量が多く液温が低い状態で配合することが望ましい。従って、このような酸性物質を寒天調合液に添加する第2工程においては、好ましくは40℃程度以下の温度を維持し、その後容器に充填する迄に長時間をかけないようにするとよい。望ましくは、酸性物質の添加は、容器詰め前の寒天調合液に対して最終的に行うとよい。粉末等の固形の酸性物質は、適宜水溶液に調製して使用するとよい。それ以外の調味材料や添加剤については、寒天調合液に適宜配合してよい。
【0034】
寒天調合液の調味に関して、寒天由来の海藻臭が問題になる場合には、糖度、糖酸比及び香料の配合を好適に調整することによって、マスキングすることが可能である。この点に関して、寒天調合液における果汁の配合割合が5.0〜50.0質量%程度、香料の割合が0.05〜0.35%程度、寒天調合液の糖度Brix値が10.0〜15.0%程度であると、マスキング効果が好適に発揮される。濃縮果汁を使用する場合は、上記の割合より配合量を低下し得る。
【0035】
寒天調合液は、容器に充填する前に、必要に応じて最終的な微調整を施すことができる。例えば、風味の微妙な調整のために香料、酸味料、甘味料等の追加を行ったり、寒天調合液の安定性を高める安定剤を添加することができる。更に、原料由来の固形物や凝集物、沈殿物等が寒天調合液中に存在する場合、必要に応じて、このような不要物を除去するための濾過処理を容器詰め前に行うことができる。濾過処理を行う濾過装置として、寒天粉末を通過させる程度の目開きの膜、網等をフィルターとして用いるものがよい。尚、このような不要物を除去するための濾過処理は、原料の各々について、予め、寒天調合液の調製に使用する前に行うと最適であるが、その要否は原料の状態に応じて適宜決定して良く、寒天調合液を調製する間に必要に応じて行えばよい。
【0036】
ゼリー飲料を容器詰め製品として提供するために、出来上がった寒天調合液は、容器に充填する充填工程に供され、容器内に封止される。容器は、瓶、缶、紙パック、ペットボトル、ラミネートフィルム製軟包装容器等が挙げられるが、充填及び飲用が容易なものであればよい。広口容器やスパウト付き容器は飲用が容易であり、スクリューキャップを備えたボトル缶は開栓後の再栓が可能であるので便利である。
【0037】
容器に充填された寒天調合液は、加熱工程において加熱され、第1の寒天が溶解する。寒天の溶解は、80℃程度以上の温度において進行し、85℃程度以上の加熱が好ましい。この加熱工程において殺菌加熱を兼ねることができるので、100℃以上での高温殺菌、120℃以上での超高温殺菌を加熱工程において適用可能である。寒天の劣化を防止するためには短時間の加熱が好ましいので、容器を回転させて内部の寒天調合液を流動させると、加熱効率が上がって寒天調合液の温度を短時間で目標温度に到達させることができる。本発明において、寒天調合液は高粘性であるので、例えば60〜600cpm程度の回転によって寒天調合液の温度上昇が促進されると、初期の粘度が急激に低下し、加熱時間を第1の寒天の溶解に必要な最小限に抑えることが可能である。
【0038】
充填工程前の寒天調合液に上述の濾過処理を施す場合、濾過後の寒天調合液は、充填工程の前に短時間の加熱を効率的に施すのに好都合であり、濾過装置と充填装置との接続路に加熱手段を付設して、通過する寒天調合液を高温で短時間加熱するように構成することができる。このような構成によって、殺菌加熱を施すことが可能であり、例えば、105〜115℃程度で30秒程度の加熱を施すと、第1の寒天が溶解し、殺菌加熱された寒天調合液を容器に充填することができる。
【0039】
加熱工程後の寒天調合液は、冷却工程において冷却することによってゲル化する。寒天調合液には複数種の寒天が含まれており、その組み合わせによってゾル−ゲル転移の挙動は大きく異なり得るので、冷却条件は、予め試行して確認することが望ましい。従って、寒天調合液の配合変更に応じて、冷却条件は適宜設定し直すとよい。概して40℃以下の冷却温度が適用される。好ましくは30℃程度以下、より好ましくは20℃程度以下に冷却することによって、第1の寒天及び第2の寒天が良好にゲル化する。冷却時間は、1時間以上、好ましくは24時間以上に設定すると良い。容器に充填された寒天調合液は、冷却によって好適なゼリー強度に凝固したゼリー飲料となる。容器に充填された寒天調合液中の寒天粉末の分散が維持されるので、均質な状態で凝固した容器詰めゼリー飲料製品が提供される。
【0040】
上述の製造方法によって、液中に分散する寒天粉末が沈降し易い点は改善されるので、容器に充填された寒天液を加熱することによって、寒天粉末が均一に分散したまま溶解され、冷却後のゼリー飲料は均質に形成される。又、充填される寒天液の容器毎のバラツキも解消されるので、製品のバラツキや品質の低下が防止される。
【0041】
上述においては、ゼリー飲料の製造について記載しているが、本発明は、ゼリー飲料よりゼリー強度が高い製品に適用することも可能である。具体的には、寒天調合液全体としてのゼリー強度が高まるように、第1の寒天の使用量を増加させたり、使用する第1の寒天の種類をゼリー強度がより高いものに変更することによって、ゼリー強度が比較的高い、つまり、崩れ難い製品を提供することができる。従って、製品に求められる食感などに応じて、第1の寒天及び第2の寒天の使用量及び/又は比率を変更して、提供するゼリー製品のゼリー強度を調整するとよい。
【実施例1】
【0042】
<原料>
第1の寒天:伊那食品工業(株)社製伊那寒天カリコリカン(商品名、粒径:約1.68mm(10メッシュ))
第2の寒天:伊那食品工業(株)社製ウルトラ寒天イーナ(商品名)
甘味料:果糖ブドウ糖液糖
調味液:レッドグレープ濃縮果汁、エルダーベリー果汁、グレープ香料、エンジュ香料、クエン酸及びビタミンC(計317g)を水757mlに配合した水溶液
【0043】
(製法A1)
第1の寒天粉末25.5gを1200mlの水に加えて攪拌し、寒天分散液を調製した(16℃、pH5.5)。
他方、第2の寒天粉末12.0g及びクエン酸ナトリウム10.5gを600mlの水に加えて攪拌しながら85℃に加熱して溶解し、寒天溶液を調製した(85℃、pH7.2、粘度2.9mPa・s)。
寒天溶液を調合容器に収容された4Lの水中に投入し、寒天溶液の容器残液を600mlの水で洗い出して調合容器に入れて攪拌混合した。この寒天溶液を20℃に冷却した。寒天溶液の粘度は30.8mPa・sであった。
甘味料2.5kgを水1500mlに溶解し、調合容器内の寒天溶液に加えて攪拌混合した。これに、前述の寒天分散液を加え、寒天分散液の容器残液を700mlの水で洗い出して調合容器に入れて攪拌混合することにより、20℃の寒天調合液を調製した。これを6分間静置して、寒天の沈降分離の有無を調べたところ、沈降分離は見られなかった。
寒天調合液に調味液を加えて攪拌混合し(24℃、粘度6.0mPa・s)、加熱して95℃に達した後に、25℃に冷却して24時間静置した。寒天調合液の状態を観察し、食感の官能評価を行った。寒天調合液は、ゲル化して良好なゼリーの食感を有し、風味も良好であった。
【0044】
(製法A2)
甘味料2.5kgを水1500mlに溶解し、調合容器内に収容された4Lの水に加えて攪拌混合した。
上述の製法A1と同様の手順で、寒天分散液及び寒天溶液を調製した後、寒天溶液と寒天分散液を同時に調合容器に投入し、寒天溶液及び寒天分散液の容器残留液を水(計1300ml)で洗い出して調合容器に加え、これを攪拌混合することにより、20℃の寒天調合液を調製した。これを6分間静置して、寒天の沈降分離の有無を調べたところ、沈降分離は見られなかった。
上述の寒天調合液及び調味液を用いて、製法A1と同様に加熱及び冷却を行って、ゼリー飲料を調製した。寒天調合液は、ゲル化して良好なゼリーの食感を有し、風味も良好であった。
【0045】
(製法B1)
甘味料2.5kgを水1500mlに溶解し、調合容器内に収容された4Lの水に加えて攪拌混合した。これに、上述の製法A1の手順で調製した寒天分散液を加えて、寒天分散液の容器残液を700mlの水で洗い出して調合容器に入れて攪拌混合した。この後、6分間静置したところ、寒天は沈降して底部に分離していた。
【0046】
(製法B2)
上述の製法A1と同様の手順で、寒天溶液の調製、調合容器の水中への投入及び冷却を行って、20℃の寒天溶液を得た。これに、製法A1と同様の手順で甘味料を加えて混合した後に、20℃で24時間静置したが、寒天溶液は凝固せず、高粘性の液体であった。
【0047】
(製法B3)
上述の製法A1と同様の手順で、寒天分散液及び寒天溶液を調製し、これらをそのまま混合して寒天調合液を得たところ、寒天調合液の温度は約50℃で、粘度は4mPa・sであった。これを室温で6分間静置したところ、寒天は沈降して底部に分離し、上澄み液に粘性は見られなかった。
【0048】
(製法B4)
第1の寒天粉末25.5g、第2の寒天粉末12.0g及びクエン酸ナトリウム10.5gを、調合容器内の600mlの水に添加して攪拌し、更に1200mlの水を加えて希釈して、寒天分散液を調製した(16℃、pH7.2)。
甘味料2.5kgを水1500mlに溶解し、調合容器内の寒天分散液に加え、寒天分散液の容器残液を1300mlの水で洗い出して調合容器に入れて攪拌混合することにより、寒天調合液を調製した。この寒天調合液の温度は20℃、粘度は6.0mPa・sであった。これを6分間静置して、寒天の沈降分離の有無を調べたところ、寒天が沈降して底部に分離していた。
【0049】
(製法C1)
上述の製法A1において、寒天溶液の調製時にクエン酸ナトリウムの使用量を減らして寒天溶液のpHを6.0に調整したこと以外は同様の操作を繰り返すことによって、寒天調合液を調製した。これを6分間静置して、寒天の沈降分離の有無を調べたところ、沈降分離は見られなかった。
寒天調合液及び調味液を用いて、製法A1と同様に加熱及び冷却を行って、24時間静置した。寒天調合液の状態を観察し、食感の官能評価を行ったところ、寒天調合液は、ゲル化して良好なゼリーの食感を有し、風味も良好であった。
【0050】
(製法C2)
上述の製法A1において、寒天溶液の調製時にクエン酸ナトリウムの使用量を増加して寒天溶液のpHを8.0に調整したこと以外は同様の操作を繰り返すことによって、寒天調合液を調製した。これを6分間静置して、寒天の沈降分離の有無を調べたところ、沈降分離は見られなかった。
寒天調合液及び調味液を用いて、製法A1と同様に加熱及び冷却を行って、24時間静置した。寒天調合液の状態を観察し、食感の官能評価を行ったところ、寒天調合液は、ゲル化して良好なゼリーの食感を有し、風味も良好であった。
【0051】
(製法D1)
上述の製法A1において、クエン酸ナトリウムを使用せず、寒天溶液のpHが5.2であったこと以外は同様の操作を繰り返すことによって、寒天調合液を調製した。これを6分間静置したところ、寒天の沈降分離は見られなかったが、寒天調合液中に第2の寒天のダマが見られた。
【0052】
(製法D2)
上述の製法A1において、寒天溶液の調製時にクエン酸ナトリウムの使用量を増加して寒天溶液のpHを9.0に調整したこと以外は同様の操作を繰り返すことによって、寒天調合液を調製した。これを6分間静置して、寒天の沈降分離の有無を調べたところ、沈降分離は見られなかった。
寒天調合液及び調味液を用いて、製法A1と同様に加熱及び冷却を行って、24時間静置した。寒天調合液の状態を観察し、食感の官能評価を行ったところ、寒天調合液は、ゲル化して良好なゼリーの食感を有したが、塩味が感じられた。
【0053】
(製法C3)
上述の製法A1において、寒天溶液を調製する際の加熱温度を80℃に変更したこと以外は同様の操作を繰り返すことによって、寒天調合液を調製した。これを6分間静置して、寒天の沈降分離の有無を調べたところ、沈降分離は見られなかった。
寒天調合液及び調味液を用いて、製法A1と同様に加熱及び冷却を行って、24時間静置した。寒天調合液の状態を観察し、食感の官能評価を行ったところ、寒天調合液は、ゲル化して良好なゼリーの食感を有し、風味も良好であった。
【0054】
(製法C4)
上述の製法A1において、寒天溶液を調製する際の加熱温度を99℃に変更したこと以外は同様の操作を繰り返すことによって、寒天調合液を調製した。これを4分間静置して、寒天の沈降分離の有無を調べたところ、沈降分離は見られなかった。
寒天調合液及び調味液を用いて、製法A1と同様に加熱及び冷却を行って、24時間静置した。寒天調合液の状態を観察し、食感の官能評価を行ったところ、寒天調合液は、ゲル化して良好なゼリーの食感を有し、風味も良好であった。
【0055】
(製法D3)
上述の製法A1において、寒天溶液を調製する際の加熱温度を70℃に変更したところ、寒天の溶解速度が遅く、僅かな溶け残りが生じた。
【0056】
(製法D4)
上述の製法A1において、寒天溶液を調製する際の加熱温度を100℃に変更したところ、水の気化が激しく、容器に充填して加熱及び冷却した後のゲル強度が高く、崩し難くなったため、飲用には適さないものであった。
【0057】
(製法C5)
上述の製法A1において、寒天分散液を調製する際にクエン酸を用いてpHを5.0に調整したこと以外は同様の操作を繰り返すことによって、寒天調合液を調製した。これを6分間静置して、寒天の沈降分離の有無を調べたところ、沈降分離は見られなかった。
寒天調合液及び調味液を用いて、製法A1と同様に加熱及び冷却を行って、24時間静置した。寒天調合液の状態を観察し、食感の官能評価を行ったところ、寒天調合液は、ゲル化して良好なゼリーの食感を有し、風味も良好であった。
【0058】
(製法C6)
上述の製法A1において、寒天分散液を調製する際にクエン酸ナトリウムを用いてpHを7.0に調整したこと以外は同様の操作を繰り返すことによって、寒天調合液を調製した。これを6分間静置して、寒天の沈降分離の有無を調べたところ、沈降分離は見られなかった。
寒天調合液及び調味液を用いて、製法A1と同様に加熱及び冷却を行って、24時間静置した。寒天調合液の状態を観察し、食感の官能評価を行ったところ、寒天調合液は、ゲル化して良好なゼリーの食感を有し、風味も良好であった。
【0059】
(製法D5)
上述の製法A1において、寒天分散液を調製する際にクエン酸を用いてpHを4.0に調整したこと以外は同様の操作を繰り返すことによって、寒天調合液を調製した。これを6分間静置して、寒天の沈降分離の有無を調べたところ、沈降分離は見られなかったが、寒天粉末の分散がやや不十分であった。
【0060】
(製法D6)
上述の製法A1において、寒天分散液を調製する際にクエン酸ナトリウムを用いてpHを8.0に調整したこと以外は同様の操作を繰り返すことによって、寒天調合液を調製した。これを6分間静置して、寒天の沈降分離の有無を調べたところ、沈降分離は見られなかった。
寒天調合液及び調味液を用いて、製法A1と同様に加熱及び冷却を行って、24時間静置した。寒天調合液の状態を観察し、食感の官能評価を行ったところ、寒天調合液は、ゲル化して良好なゼリーの食感を有したが、塩味が感じられた。
【0061】
(製法C7)
上述の製法A1において、寒天分散液を調製する際に水を5℃に冷却したこと以外は同様の操作を繰り返すことによって、寒天調合液を調製した。これを6分間静置して、寒天の沈降分離の有無を調べたところ、沈降分離は見られなかった。
寒天調合液及び調味液を用いて、製法A1と同様に加熱及び冷却を行って、24時間静置した。寒天調合液の状態を観察し、食感の官能評価を行ったところ、寒天調合液は、ゲル化して良好なゼリーの食感を有し、風味も良好であった。
【0062】
(製法C8)
上述の製法A1において、寒天分散液を調製する際に水を50℃に加熱したこと以外は同様の操作を繰り返すことによって、寒天調合液を調製した。これを6分間静置して、寒天の沈降分離の有無を調べたところ、沈降分離は見られなかった。
寒天調合液及び調味液を用いて、製法A1と同様に加熱及び冷却を行って、24時間静置した。寒天調合液の状態を観察し、食感の官能評価を行ったところ、寒天調合液は、ゲル化して良好なゼリーの食感を有し、風味も良好であった。
【0063】
(製法D7)
上述の製法A1において、寒天分散液を調製する際に水を60℃に加熱したこと以外は同様の操作を繰り返すことによって、寒天調合液を調製したところ、分散する第1の寒天の量が少なく、一部が溶解したことが理解された。これを6分間静置して、寒天の沈降分離の有無を調べたところ、寒天粉末の分布が下部側に偏向していた。
【0064】
(製法C9)
上述の製法A1において、寒天溶液を5℃に冷却して寒天調合液の調製に使用したこと以外は同様の操作を繰り返すことによって、寒天調合液を調製した。これを6分間静置して、寒天の沈降分離の有無を調べたところ、沈降分離は見られなかった。
寒天調合液及び調味液を用いて、製法A1と同様に加熱及び冷却を行って、24時間静置した。寒天調合液の状態を観察し、食感の官能評価を行ったところ、寒天調合液は、ゲル化して良好なゼリーの食感を有し、風味も良好であった。
【0065】
(製法C10)
上述の製法A1において、寒天溶液の温度を30℃に調整して寒天調合液の調製に使用したこと以外は同様の操作を繰り返すことによって、寒天調合液を調製した。これを6分間静置して、寒天の沈降分離の有無を調べたところ、沈降分離は見られなかった。
寒天調合液及び調味液を用いて、製法A1と同様に加熱及び冷却を行って、24時間静置した。寒天調合液の状態を観察し、食感の官能評価を行ったところ、寒天調合液は、ゲル化して良好なゼリーの食感を有し、風味も良好であった。
【0066】
(製法D8)
上述の製法A1において、寒天溶液を3℃に冷却して寒天調合液の調製に使用したこと以外は同様の操作を繰り返すことによって、寒天調合液を調製したところ、寒天溶液の粘性が高いために取り扱いが難しくなり、攪拌による第1の寒天の粉末の分散が進行し難くなった。このため、寒天調合液の調製に時間を要した。得られた寒天調合液を6分間静置して、寒天の沈降分離の有無を調べたところ、沈降分離は見られなかったが、容器への充填等に関する製造効率の低下が懸念された。
【0067】
(製法D9)
上述の製法A1において、寒天溶液の液温を40℃に調整して寒天調合液の調製に使用したこと以外は同様の操作を繰り返すことによって、寒天調合液を調製した。これを6分間静置して、寒天の沈降分離の有無を調べたところ、寒天が沈降して底部に分離していた。
【0068】
(製法D10)
上述の製法A1において、寒天溶液の調製に使用する第2の寒天を第1の寒天に変更したこと以外は同様の操作を繰り返すことによって、寒天調合液を調製した。これを6分間静置したところ、寒天調合液の上部において寒天粉末がやや沈降し、調合液の部分的な凝固が確認された。これを容器に充填して加熱及び冷却した後のゲル強度が高く、飲用には適さなかった。
【0069】
(製法D11)
上述の製法A1において、寒天分散液の調製に使用する第1の寒天を第2の寒天に変更したこと以外は同様の操作を繰り返すことによって、寒天調合液を調製した。これを6分間静置して、寒天の沈降分離の有無を調べたところ、沈降分離は見られなかった。
寒天調合液及び調味液を用いて、製法A1と同様に加熱及び冷却を行って、24時間静置した。寒天調合液の状態を観察したところ、寒天調合液は、ゲル化していなかった。
【実施例2】
【0070】
下記の手順に従って寒天調合液を調製し、容器への充填及び加熱を経て冷却することによって、容器詰めゼリー飲料を製造した。尚、以下において、粘度の測定は、粘度計TVB−10M(東機産業社製、M−1号ロータ使用)を用いて、60rpmの回転速度で測定した。
【0071】
<第1の寒天から寒天分散液の調製>
第1の寒天として、市販の高強度寒天粉末(伊那寒天カリコリカン(商品名)、伊那食品工業(株)社製、粒径:約1.68mm(10メッシュ))25.50kgを用意し、容器に収容される1200Lの水(15℃)に添加して攪拌することによって、寒天分散液を調製した。
【0072】
<第2の寒天から寒天溶液の調製>
第2の寒天として、市販の低強度寒天粉末(ウルトラ寒天イーナ(商品名)、伊那食品工業(株)社製)12.00kgを用意し、10.50kgのクエン酸ナトリウムと共に、容器に収容される1200Lの水に添加した。84℃に加熱しながら攪拌することによって、寒天溶液を調製した。不要物除去用の濾過(目開き:0.149mm(100メッシュ))を行った。寒天溶液のpHは7.46で、粘度は2.9mPa・s(84℃)であった。
【0073】
<寒天溶液の温度調整>
上述の寒天溶液を、調合タンクに収容した4000Lの水(16℃)中に投入しながら攪拌した。寒天溶液の容器の残留液を600Lの水で洗い出して調合タンクに加えた。調合タンク内の寒天溶液の温度は28℃、pHは7.61であり、粘度は19.2mPa・s(26℃)であった。
【0074】
<寒天調合液の調製及び調味>
2000kgの果糖ブドウ糖液糖(1500L)に、不要物除去用の濾過(目開き:0.84mm(20メッシュ))を行った後、調合タンク内の寒天溶液に添加しながら攪拌した。
更に、前述において第1の寒天から調製した寒天分散液に600Lの水を加えて調合タンクに投入した。寒天分散液の容器の残留液を700Lの水で洗い出して調合タンクに加えながら攪拌して、寒天調合液を調製した。
【0075】
容器に収容した500Lの水に、7.50kgのクエン酸、6.00kgのエンジュ香料、及び、3.00kgのビタミンCを溶解し、不要物除去用の濾過(目開き:0.149mm(100メッシュ))を行った後、この溶液を調合タンクに投入し、容器の残液を400Lの水で洗い出して調合タンクに加えた。寒天調合液の温度は26℃、pHは4.33であった。更に、247.50kgのレッドグレープ濃縮果汁と9.38kgのエルダーベリー透明果汁とを容器内で混合し(5℃、pH3.43)、不要物除去用の濾過(目開き:0.074mm(200メッシュ))を行った後、これを調合タンクに投入し、容器の残液を843Lの水で洗い出して調合タンクに加えた。寒天調合液の温度は26℃、pHは4.33であった。最後に、30.00kgのグレープ香料を3050Lの水に加えて不要物除去用の濾過(目開き:0.149mm(100メッシュ))を行った後、この液を調合タンクの寒天調合液に添加した。寒天調合液の温度は22℃、pHは3.88であり、粘度は6.0mPa・s(20℃)であった。攪拌を停止して寒天調合液を静置したが、寒天調合液中の寒天粉末は、沈降せずに均一に分散していた。
【0076】
<寒天調合液の充填及びゼリー飲料の調製>
調合タンク内の寒天調合液に対して、不要物除去用の濾過(目開き:0.84mm(200メッシュ))を行い、充填装置に接続される供給管を通して送液される寒天調合液を109.0±2.0℃で30秒間加熱殺菌し、濾過器を通して缶型の容器に280gずつ充填し、封止した。
寒天調合液を充填した容器を580rpmで回転させながら加熱して85℃に昇温した後に、26.8℃に冷却して24時間静置した。この後、得られた容器詰めゼリー飲料から15缶をサンプリングして開封し、内部のゼリー飲料を目視で観察し、品質不良(凝固不良、層分離、質感の偏り)の有無について確認した。その結果、品質不良を生じているものはなく、何れも均質で透明感のあるゼリー飲料であった。