特許第6630263号(P6630263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6630263ガソリン パーティキュレート フィルター強制再生方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6630263
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】ガソリン パーティキュレート フィルター強制再生方法
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/023 20060101AFI20200106BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20200106BHJP
   F02D 41/08 20060101ALI20200106BHJP
【FI】
   F01N3/023 A
   F02D43/00 301E
   F02D43/00 301T
   F02D41/08
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-236585(P2016-236585)
(22)【出願日】2016年12月6日
(65)【公開番号】特開2017-106466(P2017-106466A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2018年4月18日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0173220
(32)【優先日】2015年12月7日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬 相 珍
【審査官】 小笠原 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−120373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/02− 3/36
F02D 43/00
F02D 41/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン始動スイッチをオンする第1段階と、
前記エンジン始動スイッチのオン状態で冷却水温が所定温度以下であるか否かを判断する第2段階と、
前記冷却水温が前記所定温度以下であればエンジンのアイドル状態が所定時間以上継続しているか否かを判断する第3段階と、
前記アイドル状態が前記所定時間以上であればA/Fリーン(通常の理論空燃比よりも相対的に空燃比が薄い)噴射に転換し、A/Fリーン噴射を実施してガソリン パーティキュレート フィルター(Gasoline Particulate Filer)を強制再生する第4段階と、
を含み、
前記第2段階と前記第3段階との間に、前記冷却水温が前記所定温度以下であればA/Fリッチ(通常の理論空燃比よりも相対的に空燃比が濃い)噴射を実施する第2−1段階を更に実施し、A/Fリッチ噴射中に前記エンジンのアイドル状態が前記所定時間以上継続しているか否かを判断する前記第3段階に進み、
前記第3段階は、前記エンジンのオン状態における前記冷却水温が前記所定温度以下であるときに実施されることを特徴とするガソリン パーティキュレート フィルター強制再生方法。
【請求項2】
前記第2段階で、車両走行距離が所定のマイレージ以上であるか否かを判断する過程を更に実施し、前記車両走行距離が前記所定のマイレージ以上の条件を満足する場合、及び/または前記冷却水温が前記所定温度以下の条件を満足する場合は、前記第3段階に進むことを特徴とする請求項1に記載のガソリン パーティキュレート フィルター強制再生方法。
【請求項3】
前記第3段階で、前記アイドル状態が維持される時間を判断する所定時間は、20秒乃至30秒間であることを特徴とする請求項1に記載のガソリン パーティキュレート フィルター強制再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリン パーティキュレート フィルター(Gasoline Particulate Filer)の強制再生方法に係り、より詳しくは、フィルターの壁面に付着している灰(ash)をフィルターの後方に押し出すことにより、フィルターの壁面に詰まる灰を除去することでフィルターの背圧を改善するガソリン パーティキュレート フィルター強制再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジンの高出力、高効率化の傾向に伴い、ガソリンエンジンでも燃料をシリンダーの内部に直接噴射するガソリン直接噴射(Gasoline Direct Injection、以下「GDI」と記す)方式のエンジンが装備されつつある。
このようなGDIエンジンを始めとしてGDIエンジンにターボチャージャーが適用されたTGDIエンジンは、燃焼室内の不完全燃焼区間の増加による粒状物質(PM)の発生が問題となっている。
【0003】
このようなPMの発生を解決するために、ディーゼルエンジンに用いられる媒煙濾過フィルターのような役割をするガソリン パーティキュレート フィルター(Gasoline Particulate Filer、以下「GDF」と記す)を適用するなどの研究開発が盛んである。
通常、GPFはディーゼルフィルターとは異なり、自然再生によりすす(SOOT)を燃焼させ、運転時の温度が約400℃以上ですすがフィルターリングされると、直ちにすす除去が行われる。
【0004】
実際に16万Kmの耐久完了後にフィルターを調査すると、すす量は非常に少なく(0.1g)、灰量が多い(20g)。
すすの最終産物の灰は、走行距離の増加時に背圧上昇の主な原因になる。
特に、GPFを自然再生する場合は、灰が壁面に詰まる現象が発生する。
【0005】
反面、ディーゼルフィルターは、後噴射による強制再生が行われ、その時に温度と圧力が急激に上がってその灰がフィルターの後方に蓄積される。
それと共にディーゼルは、すすの絶対量が高くなるため、その灰量もガソリンに比べて多い。
このようにGPFは、フィルターの壁面(表面)に堆積される灰によって背圧上昇を招くようになり、結局、出力低下と燃料消耗量の増加を引き起こすという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開特許第10−2012−0054314号
【特許文献2】特許第4100448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような点を考慮して案出されたものであって、冬季の低温始動条件及びアイドル運転条件で、フィルターの壁面に詰まっている灰を強制的にフィルターの後方に押し出す方法でGPFに対する強制再生を実施する、新たなGPF背圧低減方法を行うことで、GPFの背圧を改善できるなど、出力向上と燃料消耗量低減を図ることができるGPF強制再生方法を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明で提供するGPF強制再生方法は、次のような特徴がある。
前記GPF強制再生方法は、エンジン始動スイッチをオンする第1段階と、前記エンジン始動スイッチのオン状態で冷却水温が所定温度以下であるか否かを判断する第2段階と、前記冷却水温が前記所定温度以下であればエンジンアイドル状態が所定時間以上で継続しているか否かを判断する第3段階と、前記アイドル状態が前記所定時間以上であればA/Fリーン(通常の理論空燃比よりも相対的に空燃比が薄い)噴射に転換し、A/Fリーン噴射を実施してGPFを強制再生する第4段階と、を含み、前記第2段階と前記第3段階との間に、前記冷却水温が前記所定温度以下であればA/Fリッチ(通常の理論空燃比よりも相対的に空燃比が濃い)噴射を実施する第2−1段階を更に実施し、A/Fリッチ噴射中に前記エンジンのアイドル状態が前記所定時間以上継続しているか否かを判断する前記第3段階に進み、前記第3段階は、前記エンジンのオン状態における前記冷却水温が前記所定温度以下であるときに実施される。
【0009】
ここで、前記第2段階で、車両走行距離が所定のマイレージ以上であるか否かを判断する過程を更に実施し、前記車両走行距離が前記所定のマイレージ以上の条件を満足する場合、及び/または前記冷却水温が前記所定温度以下の条件を満足する場合は、前記第3段階に進むことができる。
【0010】
そして、前記第3段階で、前記アイドル状態が維持される時間を判断する所定時間は、20秒〜30秒間に設定することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明で提供するGPF強制再生方法は、走行距離、冷却水温、アイドリング時間などの条件を設定してGPFを強制再生させ、フィルターの壁面に付着した灰をフィルターの後方に押しやって除去し、GPFの背圧を改善するもので、それによってエンジンの出力向上はもちろん燃料消耗量も低減できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施例によるGPF強制再生方法を示すフローチャートである。
図2】本発明の一実施例によるGPF強制再生方法によるGPF背圧低減効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付した図面を参照して本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例によるGPF強制再生方法を示すフローチャートである。
図1に示すように、本発明のGPF強制再生方法は、GDIエンジンのGPF装着車両で、所定の走行マイレージ、例えば耐久評価により決定された約5万Km走行となった時点で、冷却水温が低温(冬季)で、始動時で、且つアイドル状態で強制的に燃焼灰(ash)を堆積させる再生を実施することによって、GPFの背圧を改善する方法である。
【0014】
そのために、先ず、第1段階でエンジン始動をする段階を実施する(S100)。
次に、2段階で、エンジン始動状態で冷却水温が所定温度であるか否かを判断する段階を実施する(S110)。
【0015】
この段階は、外部気温を考慮する段階であって、冬季などのように外部温度が低い条件ではGPFの温度上昇が遅れるようになるため、相対的にすすがたくさん堆積されることがあり、このようにすすが強制的に堆積させた状態で強制再生を実施することで、すなわち気温が低い条件ですすの強制堆積を誘導してから強制再生を実施することで、再生効果を高めることができる。
【0016】
具体的には、ガソリンエンジンの場合は排気ガスの温度が高いため、すすがフィルタリングされると直ちにすす再生が行われてすすが堆積することがないため、最大限低い温度条件を選択してすすの堆積量がたくさん確保されるようにした状態で強制再生を実施すること(高い圧力で強制再生を実施)が好ましい。
【0017】
ここで、前記冷却水温の設定温度は複数回の実験により設定されるが、冬季の外気温が氷点下の場合を考慮して0℃以下に設定することが好ましく、暑い地域の場合はその該当地域で最も低い外気温を考慮して設定することができる。
このような第2段階では、強制再生のための条件として車両走行距離を考慮する過程を更に実施することができる。
【0018】
例えば、車両の走行距離が所定のマイレージ以上であるか否かを判断する過程を実施することができる。
この時の所定のマイレージは、車両の耐久評価後に様々なキャリブレーションにより確保したフィルター壁面の灰堆積量データに基づいて決定されるが、このような所定のマイレージは約5万KM程度に選択することができる。
すなわち、5万KM毎にGPF強制再生を実施することができる。
【0019】
ここで、車両走行距離が所定のマイレージ以上の条件及び冷却水温が所定の温度以下の条件を両方とも満足する場合、または車両走行距離が所定のマイレージ以上の条件を満足する場合、または冷却水温が所定の温度以下であることを満足する場合は、次の段階、すなわち第2−1段階や第3段階に進行するようになる。
【0020】
そして、車両走行距離が所定のマイレージ以上の条件及び冷却水温が所定の温度以下の条件を両方とも満足していない場合(所定のマイレージ未満及び冷却水温の所定の温度超過)、または車両走行距離が所定のマイレージ以上の条件を満足していない場合、または冷却水温が所定の温度以下の条件を満足していない場合)は、GPF強制再生を実施することなく、車両を正常に運転する段階に進入する(S150)。
【0021】
次に、第2−1段階で冷却水温が所定の温度以下であれば(及び/または車両走行距離が所定のマイレージ以上であれば)A/Fリッチ噴射を実施する段階を行う(S120)。
【0022】
ここで、A/Fは、空気と燃料の比(空燃比)を意味し、A/Fリッチ(RICH)噴射は、通常の理論空燃比よりも相対的に空燃比が濃いこと(空気量に対する燃料量が多いこと)を意味し、後述するA/Fリーン(LEAN)噴射は、通常の理論空燃比よりも相対的に空燃比が薄いこと(空気量に対する燃料量が少ないこと)を意味する。
【0023】
この段階は、具体的には、理論空燃比よりも多く燃料を供給することで不完全燃焼によるすすの強制発生を誘導してすすが多く積もるようにして、その結果、GPF内にすすがたくさん堆積された状態を形成する。
【0024】
そして、前記A/Fリッチ(RICH)噴射制御方法やA/Fリーン(LEAN)噴射制御方法などは、当該技術分野で通常的に知られている方法であれば特に制限することはなく採択でき、本発明で実施する各段階はECUなどのようなコントローラの制御によって行われる。
【0025】
この時のA/Fリッチ(RICH)噴射はエンジンのアイドル状態で行われるが、後述するエンジンアイドル状態の設定時間内でA/Fリッチ(RICH)噴射を行うことができる。
次に、第4段階でエンジンアイドル状態が所定の時間以上であるか否かを判断する段階を実施する(S130)。
【0026】
具体的には、A/Fリッチ(RICH)噴射が行われているアイドル状態を一定時間持続させることによって、所定量のすすをフィルターに堆積させる段階を実施する。
ここで、前記エンジンアイドル状態の設定時間は、すすを強制堆積させる時間である。
すなわち、エンジンアイドル状態が持続されている設定時間内でA/Fリッチ(RICH)噴射による一定量のすすの堆積が行われることができる。
【0027】
このような設定時間は、低温始動時にA/Fリッチ(RICH)噴射を実施してすす堆積量やすす堆積状態などを検出するなどのような複数回のキャリブレーションにより決定でき、この時の設定時間は、10秒〜1分程度の範囲、好ましくは20秒〜30秒程度の範囲内で設定することが良い。
【0028】
ここで、エンジンアイドル状態が所定時間を超える前に運転者が車両を出発させるなどの操作行為があれば、GPF強制再生を実施することなく車両を正常に運転する段階に進入することができる(S160)。
【0029】
次に、第4段階でアイドル状態が所定時間以上であればA/Fリーン噴射に転換した後にA/Fリーン噴射を実施してGPFを強制再生する段階を実施する(S140、S170)。
【0030】
具体的には、アイドル状態が所定の時間を超えた時点でA/Fリッチ噴射からA/Fリーン噴射に転換し、この段階では理論空燃比よりも多い空気をGPFに供給(十分な酸素をGPFに供給)して燃焼させることによってGPF強制再生が行われる。結局、このように強制再生が行われる過程でフィルターの壁面に詰まっていた灰が落ちてフィルターの後方に押し出されて蓄積される。
【0031】
このようなA/Fリーン噴射によりGPFを強制的に再生する時間は、エンジン毎に、又は車両毎に実験を実施して適切に設定することができる。
図2は、本発明の一実施例によるGPF強制再生方法によるGPF背圧低減効果を示すグラフであって、ここではGPF強制再生前(太い実線グラフ)に比べてGPF強制再生後(細い点線グラフ)で背圧が改善されたことを確認することができる(約5kPa改善)。
【0032】
このようにGPF強制再生によって背圧を改善することでGPFの長さを短縮でき、その結果、原価低減の効果を図ることができる。
例えば、既存のGPFの長さ6.5inchから5.5inchに(25.4mm)縮小でき、現在φ132の長さ25.4mmを縮小すると、0.35Lの体積が縮小され、約1万ウォンの原価低減の効果が得られる。
図1
図2