特許第6630265号(P6630265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6630265
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】杭抜き装置のトップシーブ
(51)【国際特許分類】
   E02D 9/02 20060101AFI20200106BHJP
   E02D 7/16 20060101ALI20200106BHJP
【FI】
   E02D9/02
   E02D7/16
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-238195(P2016-238195)
(22)【出願日】2016年12月8日
(65)【公開番号】特開2018-96030(P2018-96030A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2018年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】516369686
【氏名又は名称】株式会社青島工業
(74)【代理人】
【識別番号】100095647
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】青島 良一
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−084891(JP,U)
【文献】 実開昭63−056737(JP,U)
【文献】 実開昭57−164139(JP,U)
【文献】 特開平09−142785(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/041154(WO,A1)
【文献】 実開平01−062283(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3087228(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0285011(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 7/00−13/10
E21B 15/00
B66C 13/18−13/38
B66C 13/46−13/50
B66C 15/00
B66C 23/00−23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭抜き装置のリーダ先端部に設けられるトップシーブであって、当該トップシーブは、水平方向に設置した主ブラケットと、この主ブラケットの一方向からそれぞれ左右方向に張り出した副ブラケットと、前記主ブラケットの長手方向に設けられた一対のオーガ昇降用シーブと、前記主ブラケットに設けられ、それぞれ別個に回転する一対の第1シーブ及び第2シーブと、前記主ブラケットに設けられ、この一対の第1シーブ及び第2シーブを経てそれぞれワイヤが走行する一対の並行シーブと、前記副ブラケットに設けられ、これら並行シーブからそれぞれ外側に拡開する位置に設けられた一対の角度調整シーブと、前記副ブラケットの先端側であって、前記角度調整シーブの次段にそれぞれ設けられた複数連シーブとからなり、前記一対のシーブと、並行シーブと、角度調整シーブと、複数連シーブにはそれぞれワイヤを巻回し、このワイヤの先端部にはそれぞれフックが設けられることを特徴とする杭抜き装置のトップシーブ。
【請求項2】
それぞれ別個に回転する一対の第1シーブ及び第2シーブを巻回するワイヤの後端部は、地上付近に設けられたワイヤ回収ドラムに巻回されてフックを昇降させる請求項1記載の杭抜き装置のトップシーブ。
【請求項3】
主ブラケットには、さらにこの主ブラケットの長手方向に沿って一対のフォース振れ止め用シーブを設け、これら振れ止め用シーブの間には振れ止めワイヤが架橋され、水平方向の振れを防止した請求項1または2記載の杭抜き装置のトップシーブ。
【請求項4】
複数連シーブは、3連である請求項1〜3の何れか記載の杭抜き装置のトップシーブ。
【請求項5】
並行シーブと、角度調整シーブと、複数連シーブとは、主ブラケットの中心軸に対して左右対称位置に設けられる請求項1〜4の何れか記載の杭抜き装置のトップシーブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一例として地中に埋設された杭を撤去する際に用いる撤去装置の上端部に設置されるトップシーブの新規な構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、土中に埋設された杭を撤去する際にはクレーンでワイヤを吊り下げ、杭頭を確保したうえで徐々に引き抜く工法が採用されている。埋設された杭が長い場合には一定長ごとに杭を切断して撤去し、ワイヤを架け替えて新たな杭頭を確保して引き抜くというように、段階的に杭を撤去する工法が一般的に広く採用されている。
【0003】
また、一般にビルなどのコンクリート建造物では地盤安定のために地下には長い杭が埋設されているので、このような場合に杭を引き抜く際には車両のフロントブラケットからリーダをバックステーで垂直に立ち上げ、このリーダの先端にトップシーブを設け、このトップシーブに複数に分割可能なケーシングを垂直に懸吊して杭の周囲を確保しながら、ケーシング先端に設けられたビットを回転させながら掘削を進めていき、杭の基底部を確保したうえで引き上げるとともに上部側のケーシングの内側にトップシーブから吊り下げられたフックに2本のワイヤを懸吊してワイヤ先端部で杭頭を確保し、ウインチで一定長ずつ巻き上げて適宜切断して撤去するようにしている。例えば、杭撤去工法の一例を示すと、図3のようにケーシングを撤去した後に多滑車引抜機100を地上に設置し、トップシーブから2本のワイヤによって垂下している多滑車101に吊り下げられたワイヤ102の下端を杭頭に玉巻き103し、杭104を徐々に引き抜いていく。この場合、ワイヤ径が太いために玉巻き103を行った後の左右のワイヤには高低差が生じることは避けられない。よって、多滑車101を吊り上げれば和湯のワイヤのうち、低い方のワイヤには張力がかからない。次に、図4に示すように所望の高さまで杭を引き抜いた後に予め杭頭を別のシーブ105から懸吊されたワイヤ106で確保し、大割り機107によって杭を切断して撤去するという一連の撤去工法が終了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−140801号公報
【特許文献2】特開2016−35144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2は、いずれも掘削機に関する発明であるが、基本的には本発明における前提となるケーシングを打ち込む構成が含まれており、ワイヤを懸吊して杭頭を確保することができる構成をも有している。そして、特許文献1では複数のワイヤを立体的に配置した場合にワイヤソケットとワイヤが接触することを防止するものである。また、特許文献2はオーガの上昇、下降を1つのウインチで行うことを目的とするものである。
【0006】
しかしながら、杭頭を確保する際には従来の構成ではトップシーブから1本のワイヤによって懸吊されたフックに2本のワイヤを並行に吊り下げ、その先端にループを形成し、このループによって杭頭を確保する構成である。そうすると、1本のワイヤには非常に強い引張抵抗が負荷される。上記特許文献1、及び2ではこのような構成で杭を引き抜くことを前提としているものである。ところで、この工法で使用されるワイヤは重量物を吊り下げるために径が大きいが、フックから吊り下げられたワイヤの先端部に設けられたループによって杭頭を確保する場合には垂直方向にずれが生じてしまうことが多い。そうすると、2本のワイヤに付与される張力に差が生じてしまう。いずれにしても、この種のワイヤの径は太いので、現場にて2本のワイヤの張力を均等に調整することは物理的に不可能である。そうすると、ウインチでフックを引き上げた場合には短いほうのワイヤだけに巻き上げトルクが負荷されることになり、片荷状態になってしまい危険である。また、このような片荷状態で巻き上げれば杭を土中から縁を切る際の強い抵抗によってトップシーブから懸吊されている1本のワイヤが切れてしまったり、リーダに余分な力が加わるために垂直に設けられているリーダが傾斜してしまうという危険がある。その結果、杭を垂直に引き抜くことができないという課題がある。
【0007】
また、従来の構成では、一般的にトップシーブから懸吊されるフックは1本のワイヤの先端に設けられており、例えば2つのフックを別々に独立して駆動させて広く構造物を吊り下げる場合には別途新たなクレーンなどを必要としていた。
【0008】
本発明では、2本のワイヤを別々の巻き上げ回路によって均等なトルクで巻き上げることにより、杭を垂直に引き抜くことができる構成のトップシーブを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために本発明では、トップシーブの構成として、水平方向に設置した主ブラケットと、この主ブラケットの一方向からそれぞれ左右方向に張り出した副ブラケットと、前記主ブラケットの長手方向に設けられた一対のオーガ昇降用シーブと、前記主ブラケットに設けられ、それぞれ別個に回転する一対の第1シーブ及び第2シーブと、前記主ブラケットに設けられ、この一対の第1シーブ及び第2シーブを経てそれぞれワイヤが走行する一対の並行シーブと、前記副ブラケットに設けられ、これら並行シーブからそれぞれ外側に拡開する位置に設けられた一対の角度調整シーブと、前記副ブラケットの先端側であって、前記角度調整シーブの次段にそれぞれ設けられた複数連シーブとからなり、前記一対のシーブと、並行シーブと、角度調整シーブと、複数連シーブにはそれぞれワイヤを巻回し、このワイヤの先端部にはそれぞれフックが設けられるという手段を用いた。また、それぞれ別個に回転する一対の第1シーブ及び第2シーブを巻回するワイヤの後端部は、地上付近に設けられたワイヤ回収ドラムに巻回されてフックを昇降させるという手段を用いた。このような手段を用いることによって、一対のフックはそれぞれ独立して別個に操作することができる。
【0010】
さらに、主ブラケットには、さらにこの主ブラケットの長手方向に沿って一対のフォース振れ止め用シーブを設け、これら振れ止め用シーブの間には振れ止めワイヤが架橋され、水平方向の振れを防止するという手段を用いた。また、複数連シーブとして3連のシーブを用いることとした。この3連シーブはワイヤ回収ドラムを駆動させて昇降させる際には、ワイヤ回収ドラムの回転に対して6分の1の距離だけ昇降することになり、フックの高さ位置を精密に微調整することが可能となる。
【0011】
並行シーブと、角度調整シーブと、複数連シーブとを主ブラケットの中心軸に対して左右対称位置に設けるという手段では、一対のフックに荷重を負荷した場合でもブラケットには均等に下向き荷重が掛かることになるので、安定した操業が可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、例えば杭頭を確保するために利用するフックをそれぞれ独立した2つのフックによって行うことにより、杭を吊り上げる場合にワイヤに掛かる張力を調整して均等とし、片荷状態となることを回避することが可能になる。そのために、杭を垂直に引き抜くことができるだけでなく、リーダに掛かる応力もほぼ垂直方向に設定することが可能となるので、リーダを傾斜させるような力を低減させることができ、安全な施工を行うことができる。また、トップシーブから懸吊されるフックの上げ下げを独立して行うことができるので、杭の撤去だけでなく、広く利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のトップシーブの一実施形態を示す平面図。
図2】同、側面図。
図3】従来から行われている杭撤去工法の一例を示す模式図。
図4】同、図3に続く工程を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。図1は、本発明の一実施形態を示すトップシーブの平面図、図2はフックを含んで示した正面図である。図中、1はトップシーブの主ブラケット、2は主ブラケットの後端部、3は主ブラケットの先端部、4a・4bは正面視において主ブラケット先端部3のそれぞれ左右両側に張り出した副ブラケットであり、主ブラケット1に溶接、あるいはボルト止めなど公知の手段で固定されている。後端部2、及び先端部3は、位置関係を示すための名称であり、特に意味するところはない。なお、トップシーブの主ブラケット1はリーダ(図示せず)先端部にアダプタアッセイ(図示せず)によって取り外し自在に設けられる。そして、これらの構成によってトップシーブの骨格が形成されている。
【0015】
次に、ブラケットに回転自在に固定されたシーブについて説明すると、5はオーガ昇降用シーブであり、同様にオーガ昇降用シーブ6との間に主巻きオーガを昇降するためのオーガ昇降用ワイヤ7を巻回するものである。オーガ昇降用ワイヤ7は、オーガ昇降用シーブ5から下側に延長し、建設装置の地上部分において動力で駆動するウインチで回転するワイヤ回収ドラムに接続されている。また、オーガ昇降用ワイヤ7の他方端は、オーガ昇降用シーブ6から垂直方向に延長され、オーガの上端に接続されている。8・9はフォース振れ止め用のシーブであり、主ブラケット1が操業中に平面方向に振れることを防止するための振れ止めワイヤ10が架橋されている。
【0016】
本発明の重要な構成であるフック懸吊用の構成についてさらに説明すると、図中、11は第1フック、12は第2フックであり、それぞれのフック11・12は3連のシーブ13・14から懸吊されている。そして、フック11・12にはワイヤ先端部15・16がそれぞれ固定されており、3連シーブ13・14にワイヤ17.18を巻回した後に3連シーブ13・14を経て角度調整シーブ19・20によってワイヤ17・18を内側向きとし、2つの並行シーブ21・22を経たのちに第1フック11のワイヤ17は第1シーブ23に、第2フック12のワイヤ18は第2シーブ24に巻回され、地上付近に設置されたワイヤ回収ドラム(図示せず)にそれぞれ回収され、このワイヤ回収ドラムをそれぞれ別個に独立してウインチで駆動している。なお、第1シーブ23、及び第2シーブ24は図面においてオーガ昇降用シーブ6と同軸に設けられているが、省スペースを目的としたものであり、別の軸に回転自在に設けられる構成であってもよい。また、本実施形態ではフック11・12を懸吊するためのシーブは3連シーブ13・14としているが、この場合には各フックとシーブ間のワイヤには荷重に対して6分の1の力が加わることになる。ただし、ワイヤ自体が耐荷重の高いものであれば、これらのシーブは2連シーブに変更することも可能である。この場合には、それぞれのワイヤ17・18の先端部15・16はフック11・12に対してではなく、ブラケット1の下部に設けられるソケット(図示せず)に固定されることになる。つまり、支部が奇数連であればワイヤ先端部はフックに固定されることになり、偶数連であればワイヤ先端部はブラケットに設けられているソケットに固定することになるが、いずれも本発明の範囲である。
【0017】
上述した実施形態について、その動作を説明すると、先ずはリーダの先端に設置した本実施形態のトップシーブに対して必要なワイヤを架け渡し、リーダを継ぎ足しながら必要な高さを確保する。ここで必要なワイヤとは、オーガ昇降用ワイヤ7、フック懸吊用のワイヤ17・18、及びフォース振れ止めワイヤ10である。なお、施工の種類によってはその他のワイヤを別のシーブに架け渡すことがあるのはもちろんである。そして、これらのワイヤは地上に設置されたワイヤ回収ドラムに巻回され、ウインチでワイヤ回収ドラムを回転駆動することによってそれぞれ独立して繰り出し、巻き上げが行われる。この場合、第1フック11と第2フック12はそれぞれ別のウインチで独立して昇降させることができる。したがって、例えば杭の撤去工法に本実施形態の装置を適用すれば、従来工法のように多滑車101を用いることなく2本のワイヤを第1フック11、第2フックからそれぞれ吊り下げることができ、それぞれに設けられたワイヤを杭頭に玉巻きした場合でもそれぞれのワイヤに掛かる張力を調整することができる。
【0018】
なお、本実施形態の説明に際しては、地中に埋設された杭を撤去する例を示したが、本発明装置は杭の撤去工法に採用するだけでなく、リーダ先端部に設置されたトップシーブから懸吊されたフックを別用途に用いることが可能であり、その利用範囲は杭の撤去工法に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0019】
1 主ブラケット
4a・4b 副ブラケット
5・6 オーガ昇降用シーブ
7、8、10、17、18 ワイヤ
11、12 フック
13、14 3連シーブ
19、20 調整用シーブ
21、22 並行シーブ
23 第1シーブ
24 第2シーブ
図1
図2
図3
図4