(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記捕捉部材は、前記捕捉部材が前記溝の周方向に伸びる際に、前記溝の流入側に向かって配置される第1の掛かり群と、前記捕捉部材が前記溝の周方向に伸びる際に、前記溝の流出側に向かって配置される第2の掛かり群とを含むものであることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
前記掛かりは、螺旋状の掛かりであり、該螺旋状の掛かりがその長手軸周りに回転する際に、自然弁の弁尖及び/又は腱索の第1の部分と自然弁の弁尖及び/又は腱索の第2の部分とが一緒に固定されるように構成されたものであることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
前記捕捉部材は、内部部材と外部管を含み、前記外部管は、複数の孔を有し、前記掛かりは、前記内部部材に位置するものであることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
前記内部部材は、前記孔と前記掛かりが実質的に揃うように、前記外部管に対して移動し、前記孔を通して前記掛かりが展開するように構成されたものであることを特徴とする請求項4に記載のシステム。
さらに、前記内部部材に取り外し可能に装着されたプッシャー管を有し、前記プッシャー管は、前記内部部材を押して、前記内部部材を前記外部管に対して、前記内部部材の長手方向に移動させる、又は回転させるように構成されたものであることを特徴とする請求項5に記載のシステム。
さらに、前記溝の周方向に伸びる環を形成し、前記自然弁の弁尖及び/又は腱索の部分を前記溝内に誘導するように構成された細長い外部部材を有するものであることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
さらに、前記筒状体の側面に位置する第1の端と、第2の自由端を持つ突起を有し、前記突起と前記筒状体の間に前記溝が定められ、前記溝が、前記筒状体と前記突起の前記第2の自由端の間に位置する開口を有するものであることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の詳細な説明では、本発明を実施することができる具体的な実施形態及び細部の形態を描いた添付の図に言及する。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施することができるよう十分に詳細に説明されている。他の実施形態も利用することができ、本発明の範囲から外れることなく構造的、論理的変更を行うこともできる。異なる複数の実施形態は必ずしも相互に排他的ではなく、いくつかの実施形態は、一つ以上の他の実施形態と組み合わせて新たな実施形態とすることができる。
【0008】
図1、
図1a、
図1b、及び
図2に関して、心臓の心房15と心室20を接続し、接続チャンネル壁構造25を有する接続チャンネル10内で(生体の)心臓の房室弁5を機能的に置換するための経カテーテル式人工房室弁1は、筒状体30を有することができる。筒状体30は、接続チャンネル10の内側に設置されることができ、軸35に沿って伸びていてもよい。軸35は、細長い本体であり得る筒状体30の長手方向の軸35とすることができる。移植された状態で、筒状体30の軸35は、必ずしも必要ではないが、接続チャンネル10の軸と実質的に同軸になるように揃えられてもよい。筒状体30は、例えばカテーテルなどを用いて接続チャンネル10へのアプローチ及び挿入を容易にするために半径方向に圧縮可能で、その後接続チャンネル壁構造25の内側又は内側面と密接に結合するように半径方向に拡張可能なものとすることができ、筒状体30の中に設置された人工心臓弁40(例えば
図6aに概略的に示される)を含むことができる。
【0009】
置換される生体の心臓の房室弁5(例えば僧帽弁又は三尖弁)は、概して外周に位置する壁構造25を有し、この壁構造25は、心房15と心室20の間に接続チャンネル10(又は貫通孔)を形成する。壁構造は、外周の弁輪と、弁輪に近い位置で接続チャンネルを開閉する弁尖と、概して外周に位置する乳頭筋と弁尖との間を結合する概して外周に位置する腱組織(腱索)と、前述の外周の乳頭筋とを含む。
【0010】
人工心臓弁40は筒状体30に取り付けることができ、心臓の房室弁(例えば僧帽弁及び/又は三尖弁)の人工置換弁として働くように設計され得る。人工弁40は、生体の心臓の弁を機能的に置換するための人工のフラップ(例えば
図6aに概略的に示す3枚のフラップ)を含むことができる。筒状体30は、外周溝45を有することができる。外周溝45は、筒状体30の半径方向の外側に向かって開口することができる。外周溝45は溝の底部46を定めることができる。外周溝45は、溝の底部46、軸方向に(筒状体30の軸の方向に)向かい合う側壁48、49によって定まるチャンネル47を定めることができる。溝の底部46は筒状体30を第1部分31と第2部分32に分けることができる。外周溝45は、筒状体30の外周全体にわたって、又は筒状体30の外周の一部にわたって伸びていてもよい。外周溝45は連続的な、すなわち中断されない溝であってもよく、また、例えば、外周溝を構成する陥凹部が形成されていない領域によって中断された2つ以上の外周溝45の部分が、筒状体30の軸方向で同じ位置に設けられるような、中断された溝45であってもよい。外周溝45は、筒状体30の軸方向の両端から(軸35に沿った)軸方向の距離を有し得る。すなわち、外周溝45は筒状体30の端部から軸方向に離れていてもよい。
【0011】
図1に示されるように、第1部分31は、外周溝45より上に(例えば近位に)位置する筒状体30の部分とすることができ、第2部分32は、外周溝45より下に(例えば遠位に)位置する筒状体30の部分とすることができる。第1部分31と第2部分32のいずれも、円柱形状を有することができる。一実施形態によると、第1部分31は、その断面径が溝45から筒状体の軸方向に沿って増加する円錐形状又は末広形状を有し、第2部分32は円柱形状である。別の実施形態によると、第1部分31及び第2部分32のいずれも、それぞれの断面径が溝45から筒状体の軸方向に沿って増加する円錐形状を有する。これに加えて、筒状体の流出端は、搬送カテーテルから流出端が解放され、かつ流入端が解放されなかった際に、溝から流出端に向かって半径方向の外側に傾斜する円錐台形状をとってもよい。
【0012】
一実施形態によると、第1部分31及び/又は第2部分32の(軸35に沿った)断面は、円形でなく、楕円形又はD字形状の断面であってもよく、又はこのような断面を含んでもよい。さらに、(筒状体30の軸方向に沿った断面で見たとき)溝45と第1部分31との間及び/又は溝45と第2部分32との間の軸に対する湾曲の方向が(溝45と第1部分31及び/又は第2部分32の移行部で、溝45の凹状の湾曲から凸状の湾曲に)変化していてもよい。溝45の軸方向に向かい合う側壁48、49は、それぞれ第1部分31、第2部分32の一部分であってもよく、
図8に示すように、溝45のチャンネル47に向かって、それぞれ第1部分31、第2部分32の軸方向の境界を定めることができる。筒状体30の第1部分31の半径方向の(例えば第2部分32と反対側の端部の)径は、第2部分32のいずれの半径方向の径よりも大きいものとすることができる。第1部分31がより大きな径を有することによって、(例えば第1部分31が心房15内に位置し、接続チャンネル10の径よりも大きな径を有することによって)摩擦力及び/又は(単に)合う形状が提供され、人工弁1が接続チャンネル10内でよりよく保持されるようにすることができるため、人工弁1を接続チャンネル10内でより効果的に固定することができる。
【0013】
図12に示されるように、筒状体30は、筒状体30の流入端及び流出端の間の軸方向及び半径方向の運動を分離する一つ以上の無相関部140を有することができる。例えば、無相関部140は、第1部分31と第2部分32(
図1)の間の運動を分離することができる。無相関部は、外周溝45の外側に隣接して配置することができる。外周溝45は、
図12に示されるように、無相関部140と筒状体30の流出端の間、例えば、弁40と流入端の間に設けることができる。いくつかの実施形態では、無相関部は、柔軟性のあるS字形状の部分を含んでもよく、又は、ポリエステル生地などの柔軟性のある素材を含んでもよい。別の実施形態では、無相関部140は、これらの構成要素の組み合わせを含む。無相関部は、一般に流出端又は流入端での運動に応じて、伸張又は収縮するように構成される。このように、無相関部が伸張及び/又は収縮するため、筒状体の一端からの運動は筒状体の他方の端には移動又は伝達しない。従って、筒状体の一端は他方の端と相関しない。
【0014】
さらに、人工弁1は、第1の突起群50及び第2の突起群55を有することができる。突起群50、55は、それぞれ第1部分31、第2部分32から軸に沿って反対の方向に伸びている。すなわち、突起群50、55は、筒状体30の軸35(例えば長手方向の軸35)に沿った方向の延長成分又は延長ベクトルを少なくとも有している。従って、第1の突起群50と第2の突起群55は概して互いに向かって伸びており、厳密に又は一直線に互いに向かって伸びているわけではないかもしれないが、一つの延長ベクトルを有している。突起群50、55は、筒状体30の軸35に対して実質的に平行に伸びていてもよく、又は、筒状体30の軸35に対して(横方向の)角度γで伸びていてもよい。ここで(横方向の)角度γは、例えば
図2aに示すように、筒状体30の外周の接線方向に伸びている。
【0015】
人工弁1は、第1又は第2部分31、32から筒状体30の軸方向に伸びており、外周溝45を覆う突起群50、55を一つだけ有していてもよい。例えば
図11a〜
図11cに関して、人工弁1は突起群50、55を一つも有さなくてもよく、外周溝45は筒状体30に(例えば筒状体30と一体形成して)設けられてもよい。
【0016】
第1の突起群50の突起はそれぞれ第1の端67と第2の端69を有することができる(
図13a及び
図13b)。第1の端67は筒状体30と連結しており、第2の端69は筒状体30と連結されない自由端とすることができる。例えば、第1の突起群50は自由端60を有することができ、第2の突起群55の突起は自由端65を有することができる(
図1)。第1及び第2の突起群50、55の自由端60、65は、外周溝45を覆うように設けることができる。すなわち、第1及び第2の突起群50、55の自由端は、溝45を覆うように、溝45の軸方向の位置に設けられる。そのような第1及び第2の突起群50、55の自由端は、それらの伸びている部分に沿って、溝45を部分的に又は完全に覆うことができる。
【0017】
第1の突起群50及び第2の突起群55は、チャンネル47内で溝の底部46と第1及び第2の突起群50、55の間に中空の(外周の)空間66を定めるような半径方向の距離を置いて、溝45の底部46から半径方向に外側に向かって伸びることができる。さらに、向かい合う側壁48、49は、筒状体30の軸方向に中空の空間66を定めることができる。このように、中空の空間66は、突起群50、55及び溝の底部46によって半径方向の境界が定められ、溝45の向かい合う側壁48、49(例えば上下の壁)によって軸方向の境界が定められる。
【0018】
いくつかの実施形態において、突起群50、55の第2の端69は、組織を刺し通すように構成された掛かりを有することができる(
図1a)。別の実施形態では、第2の端69は、例えば、筒状体30の接線Tと実質的に平行な方向に伸びるほぼ平らな端166(
図13a及び
図13b)又は丸みを帯びた構造(例えば、角の丸い三角形)を形成する複数のストラット110(
図14)などの、組織を刺し通さないような鈍い形状の端を有する。さらに別の実施形態では、突起群50、55のうちの一部又は全ての突起が、掛かり、鈍い形状の端、及び/又は丸みを帯びた構造を含む。経カテーテル式人工弁1は、いくつかの実施形態において、第1の突起群50及び/又は第2の突起群55を有する。これらの実施形態では、第1の突起群50又は第2の突起群55は、溝45と第1の突起群50及び/又は第2の突起群55との間に中空の空間66を定めるのに十分な距離を置いて伸びることができる。これに代わって、又はこれに加えて、第1の突起群50及び/又は第2の突起群55は、筒状体30と突起群50及び/又は55の間に、例えば筒状体30に窪みを形成せずに、外周溝45を定めることができる。例えば
図16b及び
図19に示されるように、筒状体30と第2の突起群55の間に外周溝45が定められてもよい。本発明の経カテーテル式人工弁1を用いる方法は、経カテーテル式人工弁1を心臓の接続チャンネル壁構造25内に配置し、外周溝45に隣接する接続チャンネル壁構造25の組織が、例えば、第1及び第2の突起群50、55の半径方向の内側の位置になるように外周溝45に組織を挿入することを含む。第1の突起群50及び/又は第2の突起群55が、例えば鋭角の又は鋭い端を有する場合、第1の突起群50及び/又は第2の突起群55によって組織を穿孔し、内側の位置から最初の半径方向の位置に向かって戻ろうとする組織の位置を外周溝45内で保持することができる。人工弁1は、外周溝45が、外周の壁構造25の弁輪の位置にあるように、又は、心室20側で弁輪と隣接するように配置されることができる。組織を外周溝45内に保持する第1及び第2の突起群50、55によって、経カテーテル式人工弁1を心臓に対して位置決めし、固定することができる。さらに、第1及び第2の突起群50、55が互いに向かって軸方向に伸びているので、心臓のポンプ機能によって、人工弁が接続チャンネル10から軸方向に押し出されるのを安全かつ確実に防ぐことができる。第1の突起群50及び/又は第2の突起群55は、接続チャンネル壁構造25の組織を穿孔する(例えば突き通す、刺し留める)ことによって、及び/又は締まり嵌めによって、接続チャンネル壁構造25の組織を外周溝45内に保持することができる。外周溝45内に保持される組織は、血液、例えば加圧された血液が筒状体30(及びその中の人工の心臓弁40)の中だけを流れることができ、筒状体30の外側(すなわち筒状体30の外側と接続チャンネル壁構造25の内側の間)を迂回することができないように、経カテーテル式人工弁1で接続チャンネル10の内側を(部分的に又は完全に)密閉することもできる。これに関して、筒状体30の内周面及び/又は外周面に、不透過性の層を、例えばライナー33bの形で設けることもできる。
【0019】
人工弁1は、外周溝45が生体弁の弁輪の心室側に位置するように、例えば生体弁の弁輪から距離をおいて、接続チャンネル10内に配置することができる。すなわち、外周溝45は弁輪下の外周溝とすることができ、及び/又は人工弁1は弁輪下の人工弁1とすることができる。人工弁1は弁輪下の人工弁となるように適合されることができる。すなわち、筒状体30は、(軸35についての)一つの軸方向の高さで生体の弁輪の断面径より小さい断面径(ここでは径とも呼ばれる)を有することができ、及び/又は第1部分31が心房15内に位置し、溝45が生体の弁輪の心室側に弁輪に対して距離を置いて位置し、第2部分32が接続チャンネル10内に位置するように、適切な断面径及び/又は軸方向の長さを筒状体が有することができる。
【0020】
筒状体30は、上記のような外周溝45を一つだけ有してもよい。しかし、2つ以上の外周溝45を有し、その2つ以上の溝45のそれぞれに、上記のような第1及び第2の突起群50、55が備えられ、割り当てられるような、細長い人工弁1を設けてもよい。溝45又はそれぞれの溝は、筒状体30の第1及び第2部分31、32によって形成されることができ、突起群50及び/又は55は(それぞれの)溝45を形成するのに関わっても関わらなくてもよい。突起群50及び/又は55が少なくとも部分的に、例えば筒状体30の心室20に対して近位の側で、外周溝45を形成するのに関わる実施形態とすることもできる(さらに下記参照)。
【0021】
筒状体30は、交差部34で互いに交差する複数の細長いメッシュ構成部又はグリッド構成部33(例えばステントストラット107及び/又は突起)を有するメッシュ型の本体を含んでもよく、又はそのようなメッシュ型の本体であってもよい。メッシュ構成部33は、例えば、鋼鉄及び/又は超合金及び/又は形状記憶合金(例えばニチノール)及び/又はニッケル及び/又はチタン及び/又は貴金属(例えば金)及び/又はこれらを含む合金を含むワイヤー又はレーザーカット管から形成される。メッシュ構成部33はさらに、他の合金を含んでもよく、又は例えばポリマーなどの有機材料からなってもよい。メッシュ構成部33は、ポリ塩化ビニル及び/又はポリスチレン及び/又はポリプロピレン又は他のポリマーからなってもよい。筒状体30は、通常の体温にさらされると拡張する形状記憶素材からなってもよい。筒状体30は、自己拡張可能なものとすることができる。また、筒状体30は、自己拡張可能ではないが、バルーン又は他の拡張機構によって拡張可能なものであってもよい。筒状体30は、カテーテルを用いて挿入することができるように圧縮可能であり、その後接続チャンネル壁構造25に対して適切に位置決めされたときに拡張可能なものとすることができる。筒状体30は、メッシュ構成部33に取り付けられ、同じ材料又は異なる材料からなる上記のライナー33b(
図6a参照)を含むことができる。ライナー33bは、メッシュ構成部33及び/又は筒状体30の内側又は外側に設置されて筒状体30の周りを軸方向35及び/又は周方向に完全に又は一部分のみ覆うことができる。
【0022】
筒状体30の外周溝45、及び/又は第1及び/又は第2の突起群50、55の突起は、接続チャンネル壁構造25と相互作用し、接続チャンネル壁構造25及び接続チャンネル10に対して人工弁1を固定することができる。第1及び/又は第2の突起群50、55の自由端60、65が鉤構造として働くことで、接続チャンネル壁構造25の組織は外周溝45内に「捕らえられ」、その位置を保持することができる。接続チャンネル壁構造25の組織は、自由端60、65によって穿孔されて筒状体30の外周溝45内でより堅固に保持されることができる。また、突起群50及び/又は55(又はその一部分)と接続チャンネル壁構造25の組織との間の締まり嵌め及び/又はクランプによって組織を溝45内で保持することもできる。溝に押し込まれた接続チャンネル壁構造25の組織を第1及び/又は第2の突起群50、55が穿孔可能なようにするために、第1の突起群50及び/又は第2の突起群55の複数の又はそれぞれの自由端が、鋭角の又は鋭い形状を有してもよい。第1及び/又は第2の突起群50、55のそれぞれの突起又は一部の突起はピンであってもよい。
【0023】
さらに、
図1bに関して、第1及び/又は第2の突起群50、55の自由端60、65は、接続チャンネル壁構造25の組織を穿孔可能であるように、円錐状の端70であることができる。一実施形態によると、第1及び/又は第2の突起群50、55の自由端60、65は、鈍い形状であってもよい。第1及び/又は第2の突起群50、55の自由端60、65はピンの形状であってもよい。
【0024】
突起群50、55の自由端60、65の一部又は全ては、
図1aに示すような掛かり又は鉤71を有することができる。鉤71は、接続チャンネル壁構造25の組織を穿孔して、組織が自由端60、65から滑って外れるのを防ぐことができる。このように、自由端60、65上の掛かり又は鉤71によって穿孔される組織は自由端60、65から滑って外れることができず、心臓の弁の接続チャンネル壁構造25の組織がさらに確実に外周溝45内に捕らえられる。自由端60、65の一部又は全ては、鈍い形状であってもよく、又は円錐状の端70であってもよく、又は掛かり若しくは鉤71を有してもよい。第1の突起群50又は第2の突起群55は、解剖学的状況に応じて、異なる型の自由端60、65を有してもよいが、同じ型の自由端60、65を有してもよい。
【0025】
自由端60、65及び/又は第1の突起群50及び第2の突起群55は、互いに異なる軸方向の及び/又は半径方向の位置及び方位に配置されることができる。
図1及び
図6aについて、第1の突起群50の各突起は、互いに等しい外周方向の角距離α(筒状体30の長手方向の軸35から伸びている2つの半径方向の間の角距離)を有することができる。すなわち、突起群50の各突起は、外周上で等間隔に位置することができる。しかし、第1の突起群50の突起は、互いに異なる角距離αを有することもできる。すなわち、第1の突起群50の突起は、筒状体の外周上で等間隔に位置しなくてもよい。
図6a〜6cには示されないが、同様に、第2の突起群55の各突起も互いに等しい角距離を有することができ、すなわち筒状体30の外周上で等間隔に位置することができる。しかし、第2の突起群55の突起は、互いに異なる外周方向の角距離αを有することもでき、すなわち筒状体の外周上で等間隔に位置しなくてもよい。
【0026】
第1の突起群50は、その各突起が筒状体30上で第2の突起群55の各突起と実質的に同じ半径方向の位置(すなわち等しい半径、例えばR2)上に配置されることができる(例えば
図1及び
図3に示される)。一方、第1の突起群50の一部又はそれぞれの突起は、第2の突起群55の突起と異なる半径上に配置されてもよい。例えば、第1の突起群50はそれぞれ等しい半径上に位置してもよく、また第2の突起群55はそれぞれ等しい半径上に位置してもよい。
【0027】
図1及び
図3に関して、第1の突起群50及び第2の突起群55は、一直線上に位置するように、又は互いに同軸であるように伸びていてもよい。また、第1の突起群50は、第2の突起群55と一直線上に位置しなくてもよい。例えば、第1の突起群50自体は互いに実質的に平行に伸びていてもよく、実質的に平行に伸びていなくてもよく、第2の突起群55自体は互いに実質的に平行に伸びていてもよく、実質的に平行に伸びていなくてもよい。
【0028】
例えば、
図2及び
図4に関して、第1及び第2の突起群50、55は、外周方向に交互に配置されてもよい。このとき、例えば第1の突起群50のそれぞれの突起は、外周方向で第2の突起群55の2つの突起の間に位置する(またその逆)。この他にも、第1及び第2の突起群50、55の外周方向の適切な配置パターンがあってもよい。例えば、第1の突起群50の1、2、3、4、又はそれ以上の数の突起のセットが、第2の突起群55の1、2、3、4、又はそれ以上の数の突起のセットの間に配置されてもよい。
【0029】
第1の突起群50及び第2の突起群55の突起の数は、例えば、3〜5、又は8〜10、15〜20、30〜100、又はそれ以上の範囲であってもよく、又は他のいずれの数であってもよい。第1の突起群50は、第2の突起群55と同じ数の突起を含んでもよく、異なる数の突起を含んでもよい。その逆も同じである。
【0030】
第1の突起群50及び/又は第2の突起群55の突起は、筒状体30のメッシュ構成部33が交差部34で互いに交差している筒状体30の位置から伸びていてもよい。これによって筒状体30と突起群50、55間の相互結合の機械的安定性を向上させることができる。突起群50、55は、筒状体30に対して例えば溶接、はんだ付け、及び/又は編組みすることができる。突起群50、55は、筒状体30に対して縫合、貼付、又は接着することもできる。これに代わって、又はこれに加えて、突起群50、55は、筒状体30に統合されて一体形成されることもできる。すなわち、例えば
図9a及び
図9bに関して、突起群50、55(又はこのうち一つ以上の突起群)は、交差部34で他のメッシュ構成部33と結合せず(例えばメッシュ構成部33を屈曲させることによって)筒状体30から長手方向の軸35に対して半径方向及び/又は軸方向に伸びており突起群50、55を形成するメッシュ構成部33によって形成されることができる。さらに、(例えばメッシュ構成部33に統合されて一体形成された、又は別に設けられ、筒状体30に結合された)突起群50、55は、長手方向の軸35に対して半径方向及び軸方向に筒状体30から伸びることによって外周溝45を形成することができる。従って、突起群は筒状体30から離れる方向に伸びることで、筒状体30上で外周溝45を定めることができる。外周溝45は、溝45から長手方向の軸35の方向に向かって増加する断面径を有する筒状体30の、円錐形、または類似の形状の部分(例えば第1部分31及び/又は第2部分32)によってさらに定められる。
図9a及び
図9bに見られるように、部分31、32の円錐形の形状は、筒状体30から伸びている突起群50、55と相互作用して、外周溝45をさらに定めることができる。
図9aは、突起群が筒状体30から伸びている点から見たとき、まず、長手方向の軸35に対して実質的に半径方向に伸び、次に、長手方向の軸35に対して実質的に平行に伸びて外周溝45を定める突起群50、55を示す。
図9bは、概して直線的に伸びて外周溝45を定める突起群50、55を示す。突起群50、55は、筒状体30に関して上記したものと同じ材料、例えば超合金、(ニチノールなどの)形状記憶合金、鋼鉄、チタン(又はチタンを含む合金)、ポリマーなどの有機材料からなることができ、又は他の一つ若しくは複数の材料からなることができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、第1の突起群50及び/又は第2の突起群55の第1の端67は、筒状体30のステントストラット107間に位置する第2の開口と実質的に揃った一つ以上の第1の開口105を有する(
図13a及び
図13b)。第1の開口105は、例えば、四角形、円形、三角形などの多様な形状をとることができる。これに加えて、第1の開口105は、ステントストラット107間に位置する第2の開口より大きくても、小さくても、又はほぼ等しいサイズであってもよい。第1の突起群50及び/又は第2の突起群55の第2の端69は、開口を持たないステントの外周面の湾曲に合った形状を有していてもよい。
図13a及び
図13bの実施形態では、第2の端69は実質的に平らな端166を形成し、筒状体30の接線と平行な方向に伸びている。このため、第2の端69は、周囲の組織(例えば、
図13a及び
図13bに示される接線T)に外傷を与えない。
【0032】
上述したように、いくつかの実施形態では、第1の突起群50及び/又は第2の突起群55は、組織を刺し通さないような鈍い形状の端を有する。例えば、各ストラット110は、第1のストラット113と第2のストラット115と、これらを連結する連結部分117を含む。
図14に示されるように、例えば、第1のストラット113、第2のストラット115、及び連結部分117は、一緒に丸みを帯びた三角形状の構造を形成してもよい。別の実施形態では、ストラット110は、例えば、長方形、丸み形状、楕円形、又はこれらを組み合わせた形状や、
図13a及び
図13bに示される平らな突起の形状など、多様な形状をとることができる。
図13a及び
図13bの実施形態では、各連結部分
117は実質的に平らな端166を形成している。これに加えて、ストラット110は、非対称の及び/又は不規則な形状を有することができる。例えば、
図19に示されるように、第1のストラット113と第2のストラット115が対称ではなく、第1及び第2のストラット113、115がそれぞれ任意の異なる形状を有していてもよい。さらに、各連結部分117は不規則な形状を有していてもよい。いくつかの実施形態では、第1のストラット113が別の第1のストラット113と同じ形状を有し、第2のストラット115が別の第2のストラット115と同じ形状を有し、連結部分117が別の連結部分117と同じ形状を有するが、第1のストラット113と第2のストラット115は互いに異なる形状を有することができる。
【0033】
図8に見られるように、第1の突起群50の一部又は全部の突起及び/又は第2の突起群55の一部又は全部の突起は、実質的に直線上に(例えば沿って)又は直線上に伸びていてもよい。すなわち、突起群は、筒状体30から伸びている点からそれぞれの自由端60、65に向かって、長手方向の湾曲を有さなくてもよい。すなわち、突起群は直線的に伸びることができる。しかしながら、突起群はその場合にも掛かり又は鉤71を有することができ、及び/又はピンの形状をとることができる。第1の突起群50は、筒状体30の(筒状体30の軸方向について)実質上同じ軸方向の位置から伸びていてもよく(例えば
図1から
図3)、又は筒状体30の異なる軸方向の位置から伸びていてもよい。同様に、第2の突起群55は、筒状体30の(筒状体30の軸方向について)実質上同じ軸方向の位置から伸びていてもよく(例えば
図1から
図3)、又は筒状体30の異なる軸方向の位置から伸びていてもよい。第1の突起群50及び/又は第2の突起群55が軸方向に伸びている長さ(筒状体上の突起の基部と突起の自由端の間の(筒状体30の軸35に沿った)軸方向の距離)は実質的に等しくてもよく、又は異なってもよい。第1の突起群50及び/又は第2の突起群55の伸びている距離又は長さ(筒状体30上の突起群50、55の基部と突起群50、55の自由端60、65の間の距離)は等しくても異なってもよい。
【0034】
第1及び第2の突起群50、55に加え、筒状体30は他のどのような型の突起及び/又はカラーを有してもよい。
【0035】
第1の突起群50及び第2の突起群55は、それぞれ、外周溝45の半径方向の外周部に隣接する、又は外周を縁取るような第1部分31及び第2部分32の領域から伸びることができる。第1の突起群50及び第2の突起群55は、溝45の側面を定める、向かい合う側壁48、49から伸びることができる。
【0036】
図2に関して、第1の突起群50の自由端60は、第2の突起群55の自由端65に対して、筒状体30の軸35の方向に距離W2を置いて位置することができる。第1の突起群50の自由端60は、同じ又は異なる軸方向の位置に配置されてもよく、第2の突起群55の自由端65は、同じ又は異なる軸方向の位置に配置されてもよい。
【0037】
経カテーテル式人工弁1が一つの突起群50、55を有する場合、軸方向の距離W2は、(一つの)突起群50、55の一つ以上又は全ての自由端60、65から、突起群が伸びているのと反対の部分31、32の外周溝45の側壁48、49までの距離とすることができる。
【0038】
第1の突起群50の突起は、第2の突起群55の突起と軸方向に重なり合うことができる(不図示)。この場合、第1の突起群50の自由端60と第2の突起群55の自由端65の間に軸方向に重なる距離が定められる。第1の突起群50の自由端60の一部を、対応する第2の突起群の自由端65から軸方向に距離を置いて配置し、他の自由端60及び65を軸方向に重なり合うように配置してもよい。
【0039】
例えば、
図2aに関して、突起群50、55は、(それぞれ)角度βで半径方向の内向きに傾いて伸びていてもよく、従って、外周溝45内に斜めに伸びていてもよい。筒状体30の軸35に対する突起群50、55の半径方向の内向きの傾きを定める角度βは鋭角であってもよく、例えば45°以下、30°以下、又は15°以下の範囲内とすることができる。第1の突起群50の一部分のみ、及び/又は第2の突起群55の一部分のみが上記のように半径方向に内向きに傾いていてもよい。
【0040】
図6aは、
図3に示されるA−Aに沿った断面であり、接続チャンネル壁構造25をなす心臓弁の組織と第1の突起群50の相互作用を示す(軸35と第2の突起群55を横断する断面も、
図6aと同様の外観を示す)。第1の突起群50が接続チャンネル壁構造25の組織を貫通しているのが見られる。これによって接続チャンネル壁構造25の組織が人工弁1の筒状体30から外れるのをより確実に防ぐことができ、結果、人工弁1は意図された場所により堅固に保持される。
【0041】
さらに、
図3及び
図6bに関して、経カテーテル式人工房室弁1は、細長い外部部材75をさらに有することができる。細長い外部部材75は、接続チャンネル壁構造25の外側に(例えば心室20内に)、筒状体30の外周溝45に対応する(例えば軸35についての)軸方向の位置に設置することができる。細長い外部部材75は、筒状体30の周りに少なくとも部分的に、例えば外周全体に、連続して伸びていてもよく、例えば
図6bに概略的に示されるカテーテル部材90を用いて扱われてもよい。長手方向の軸35と細長い外部部材75の間の半径方向の距離R5は、接続チャンネル壁構造25の弁の組織が少なくとも部分的に外周溝45に押し込まれ、少なくとも部分的に第1及び第2の突起群50、55より半径方向の内側に位置するように、短縮可能である、又は短縮されてもよい。半径方向の距離R5は、筒状体30の長手方向の軸35と突起50、55の自由端60、65の間に定められる半径方向の距離R4よりも小さくなるように短縮可能である、又は短縮されてもよい(自由端60、65は
図6bに示される断面では見ることができないが、
図6b中に×印で示されている)。これにより、細長い外部部材75が第1及び第2の突起群50、55によって定められる外周より内側に配置され、接続チャンネル壁構造25の組織が溝の底部46と第1及び第2の突起群50、55の間の外周溝45内に位置し、細長い外部部材75自体が溝の底部46と第1及び第2の突起群50、55の間の外周溝45内に位置することができる。しかしながら、細長い外部部材75は、接続チャンネル壁構造25の組織を外周溝45に押し込みながら、外周溝の外側に位置するように設置されてもよい(すなわち
図6bに示されるようにR5がR4より大きくてもよい)。細長い外部部材75を扱い、接続チャンネル壁構造25の外周周りに配置するために、カテーテル部材90又は別の、例えば同様の構造を有するカテーテル装置を用いることができる。
【0042】
さらに
図6b及び
図7に関して、カテーテル部材90は、結合手段91、例えば細長い外部部材75が筒状体30の周りに永続的にあり人工弁1の構成部分となるように細長い外部部材75を切断して、その2つの端を一緒にクランプするなどして、細長い外部部材75の自由端を結合するのに用いることができる切断及びクランプ機構を有することができる。しかしながら、細長い外部部材75は、例えばカテーテル部材の一部分として、単なる介在ツールであってもよく、接続チャンネル壁構造25の組織を半径方向に外周溝45に押し込むためだけに用いられ、その後心臓から除去されてもよい。細長い外部部材75が永続的に接続チャンネル壁構造25の外周周りに残る場合、細長い外部部材75は接続チャンネル壁構造25の組織に対して半径方向に内向き、外向き、又は軸方向の、外周溝45に向かう力を永続的に加えることができる。
【0043】
図1、
図3、
図6b、及び
図7に関して、接続チャンネル壁構造25の心臓の組織が外周溝45内で固定される、保持される、及び/又は捕らえられる方法は複数あってもよい。この組織は、第1及び/又は第2の突起群50、55の自由端60、65の鋭角の端70及び/又は掛かり若しくは鉤71によって穿孔されることができる。また、この組織は、突起群50、55の間の締まり嵌めによって外周溝45内に保持されることもできる。さらに、この組織は、細長い外部部材75によって外周溝45の中に保持されることもできる。細長い外部部材75は、一時的に(例えば心臓を治療する間の工程として)、又は永続的に(例えば、
図7に示すように細長い外部部材75が接続チャンネル壁構造25の周方向に伸びているとき細長い外部部材75を切断し、その2つの端を永続的に結合するために切断及びクランプ機構91が用いられる場合)組織を外周溝45に押し込むのに用いることができる。接続チャンネル壁構造25の組織は、上述した2つ以上のアプローチの組み合わせによって外周溝45内に保持されてもよい。
【0044】
いくつかの実施形態において、細長い外部部材75は、外周溝45の幅W1(
図2に示される)よりも小さい断面径D1(
図6b参照)を有することができる。細長い外部部材75は、第1及び第2の突起群50、55の自由端60、65の間の幅W2より小さい断面径D1を有することもできる。細長い外部部材75は、幅W2より大きく幅W1より小さい断面径D1を有していてもよい。細長い外部部材75は、幅W2及び/又はW1より大きい断面径D1を有していてもよい。細長い外部部材75は、例えばワイヤー又は帯であってもよく、円形の断面又は長方形の断面を有していてもよい。細長い外部部材75は、三角形の断面、又は曲線状や多角形状などの他のいずれの形状の断面も有していてもよい。細長い外部部材75は、メッシュ構成部33に関して述べた材料又はそれらの材料の組み合わせ又は他の材料からなることができる。例えば、細長い外部部材は鋼鉄、チタン合金、又はニチノールなどの形状記憶合金からなることができる。
【0045】
突起群50及び/又は55の長さは、外周溝45の幅W1と相関させることができる。これに関して、外周溝45の幅W1に対する、第1及び第2の突起群50、55の自由端60、65の間の距離(突起群50、55が一つである場合は、突起群50、55の自由端60、65から、軸35に関して突起群50、55と反対に位置する外周溝45の側壁48、49までの距離)の比の最大値は、0.5、0.4、0.3、0.2、又は0.1とすることができる。これにより、突起群50、55と溝の底部46の間に中空の空間66が定められる。外周溝45の幅W1は、外周溝45の側壁48、49の間、及び/又は第1及び/又は第2の突起群50、55の突起が筒状体30から伸びている位置と外周溝45の反対側に位置する側壁48、49の間、及び/又は第1の突起群50の突起が伸びている位置と第2の突起群55の突起が伸びている位置の間に定めることができる。
【0046】
図4及び
図5に関して(より明確に理解しやすくするために、経カテーテル式人工弁1は人工の弁40なしで示される)、経カテーテル式人工弁1は、捕捉(クランプ)部材80を有することができる。クランプ部材80は、外周溝45内で筒状体30の外周方向に伸びる長手方向の軸を有する筒状の構造を有してもよい。クランプ部材80は、外周溝45内で第1及び第2の突起群50、55の半径方向の内側に(例えば少なくとも部分的に)位置することができる。クランプ部材80は、外周溝45の底部46と接することができる。クランプ部材80は、筒状体30の外周全体にわたって伸びていてもよく、
図4及び
図5に示すように筒状体30の外周の一部分のみに伸びていてもよい。クランプ部材80は、外周溝45内で例えば10°〜30°又は他のいずれの角度にわたって伸びていてもよい。クランプ部材80は、外周溝45全体の周りに、例えば360°にわたって伸びていてもよい。クランプ部材80は、その長手方向の軸を横断する断面径D2を有することができる。断面径D2は、選択的により大きい又はより小さい断面径D2とすることができる。すなわち、クランプ部材80はその断面径D2の半径方向に(カテーテルを用いて挿入できるように)圧縮可能であり、及び/又は拡張可能(例えば圧縮された後に再拡張可能)であり、これによって、クランプ部材の外周及び内周が筒状体30の半径方向に第1及び/又は第2の突起群50、55に向かって縮小及び拡張することができる。クランプ部材80の断面径D2は、筒状体30の断面径(
図6aに半径R1が示される)より小さくてもよい。いくつかの実施形態では、クランプ部材80の断面径D2は、外周溝45の幅W1よりも小さく、第1及び第2の突起群50、55の自由端60、65間の空間の幅W2よりも小さい。クランプ部材80は、例えば、外周溝45内に位置する心臓の組織を、軸35から突起群50、55に向かって外向きにクランプするように設けられる。
【0047】
クランプ部材80は、搬送カテーテル内では搬送形態をとり、クランプ部材80が搬送カテーテルから展開された際に展開形態をとるものとすることができる。いくつかの実施形態では、クランプ部材80は、展開形態に形状を変化させる。例えば、クランプ部材80は、カテーテルを介して簡便に搬送できるように成型された搬送形態と展開形態とを有するニチノールやニチノール系合金などの形状記憶合金を含み、展開形態では形状記憶合金は筒状体に適した形状に変化する。
【0048】
図6dに関して、クランプ部材80は上記の細長い外部部材75であってもよく、又は細長い外部部材75の一部分を形成してもよい。この場合、クランプ部材80は、(筒状体30の軸35に関する)軸方向のひとつの位置で接続チャンネル壁構造25の周りに完全に又は一部分にわたるように、接続チャンネル壁構造25の外周に(半径方向に圧縮された状態で)設置され、誘導され、及び/又は配置される。その後、クランプ部材80は半径方向に(クランプ部材80の径D2の方向に)拡張される。これによって、筒状体30の半径方向のクランプ部材の内径は縮小し、内側に位置する接続チャンネル壁構造25の組織(このときクランプ部材80の内側に位置する)が外周溝45内に半径方向に押し込まれる。すなわち、クランプ部材は、クランプ部材80による接続チャンネル壁構造25に対する弾性力及びクランプ部材80による突起群50、55に対する対応する反発力によって溝45に押し込まれる接続チャンネル壁構造25の組織と、突起群50、55との間に位置することができる。クランプ部材80及び溝45(例えば溝の底部46)によって発生し、接続チャンネル壁構造25の組織に対して作用する力は、矢印85bによって概略的に示される。細長い外部部材75及び/又はクランプ部材80(これらは同じ部材であってもよい)は、人工弁1を固定し、生体の心臓の弁尖に対して人工弁1を密着させ、血流に対して密閉するように働くことができる。さらに、上記のように人工弁1によって弁尖を固定する(例えばクランプ部材80及び/又は細長い外部部材75を有する)ことによって、人工弁(例えば外周溝45)内の心臓(例えば弁尖)組織の増殖を促進し、これによって、増殖した組織が、さらに又は代わって、筒状体30の外で血流に対する密閉を行うことができるため、よりよく心臓に対して人工弁1を固定し、及び/又は血流に対して密閉することができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、クランプ部材80は、一つ以上の掛かり230を含むことができる。この掛かり230が展開する際に、例えば、自然弁の弁尖及び/又は腱索の部分を刺し通すことで、人工弁1を自然弁の弁尖及び/又は腱索の部分に固定することができる。例えば、
図20に示されるように、クランプ部材80は中空の外部管200内にスライド可能に設置された内部部材210を含むことができる。また、外部管200が内部部材210に対してスライド可能に設置されることも考えられる。外部管200は、クランプ部材80の屈曲を容易にするため、一つ以上の可動部240を有していてもよい。可動部240は、例えば
図20に示されるように、切り抜きを含んでもよく、又はクランプ部材80の屈曲を容易にする材料を含んでいてもよい。切り抜きは多様な形状及び大きさを有することができる。また、可動部240は、外部管200全体にわたって設けられてもよく、又は部分的に設けられてもよい。
【0050】
外部管200の外表面は、内部部材210の一つ以上の掛かり230と対になるような一つ以上の孔220を有していてもよい。例えば、掛かり230はそれぞれ、掛かり230が外部管200の内部で内部部材210と実質的に平行に位置するような第1の搬送形態をとるものとすることができる。掛かり230は、例えば、内部部材210に沿って実質的に平らに横たえられる。外部管200に対して内部部材210を移動させることにより、掛かり230と孔220を実質的に揃え、掛かり230を第1の搬送形態から第2の展開形態に移行させることができる。例えば、
図22に示されるように、掛かり230は、クランプ部材80から離れる方向に伸びることができ、自然弁の弁尖及び/又は腱索に取り付けられる。このように、掛かり230は、展開形態において、孔220を通って展開されることができる。
【0051】
掛かり230を搬送形態から展開形態に展開させるために、様々な手段を用いることができる。例えば、掛かり230は、孔220と揃えられた際に直ちに展開形態をとれるよう、超弾性材料から構成されていてもよい。別の実施形態では、掛かり230は(例えばバルーンの膨張による)水圧、掛かり230を押すこと、掛かり230の回転、スプリング機構、及び/又は熱電流によって展開形態に移行させることができる。
【0052】
掛かり230は、筒状体30が完全に展開する前に展開され、展開形態をとることができる。例えば、掛かり230は、筒状体30が部分的に展開しているときに展開されてもよい。これに代わって、掛かり230は、筒状体30が完全に展開した後に展開されてもよい。
【0053】
掛かり230の搬送形態は、掛かり230の展開形態と実質的に垂直であることができる。これに加えて、掛かり230は、例えば
図21及び
図23に示されるように、展開形態において弓状に曲がるものであってもよい。掛かり230は、その長手軸周りに回転する際に接続チャンネル壁構造25にねじ込まれるような螺旋構造を形成することも考えられる(
図27)。螺旋構造は、
図27に示されるように、隣接する自然弁の弁尖及び/又は腱索(例えば第1部分と第2部分)を一緒に固定するよう、隣接する自然弁の弁尖及び/又は腱索を貫通することができる。螺旋構造としては、螺旋状の針が挙げられる。いくつかの実施形態では、螺旋状の針から縫合糸が推進され、自然弁の弁尖及び/又は腱索の複数の部分が一緒に固定される。
【0054】
いくつかの実施形態では、
図26に示されるように、クランプ部材80は、クランプ部材80が少なくとも部分的に外周溝45の周方向に伸びる際に外周溝45の流入側に向かって配置される第1の掛かり群233を含むことができる。これに代わって、又は、これに加えて、クランプ部材80は、クランプ部材80が少なくとも部分的に外周溝45の周方向に伸びる際に外周溝45の流出側に向かって配置される第2の掛かり群235を含むことができる。
【0055】
内部部材210は、内部部材210の外表面に一つ以上のスリット250を有していてもよい。掛かり230が搬送形態をとっている際、各掛かり230はスリット250内に配置されていてもよい。これにより、内部部材210は、掛かり230による詰まりなしに、外部管200内をスライドすることができる。これに加えて、又はこれに代わって、外部管200に対して内部部材210がスライドしやすくなるように、内部部材210及び/又は外部管200は滑りやすい皮膜で覆われていてもよい。
【0056】
内部部材210を外部管200に対して長手方向に押して及び/又は引いて、又は回転させて、掛かり230を展開させるようにプッシャー管260を構成することができる。また、外部管200を内部部材210に対して長手方向に押して及び/又は引いて、又は回転させて、掛かり230を展開させるようにプッシャー管260を構成することも考えられる。例えば、
図25a〜
図25cに示されるように、プッシャー管
260は、連結部270を介して内部部材210に取り外し可能に装着することができる。いくつかの実施形態では、連結部270は、プッシャー管260上の第1の連結部280と、第1の連結部280と取り外し可能に連結する第2の連結部290とを含む。従って、第1の連結部280と第2の連結部290が連結している場合、プッシャー管260は、孔200と掛かり230が揃うようにクランプ部材80を選択的に押して及び/又は引いて、掛かり230を展開させることができる。また、プッシャー管260は、内部部材210から選択的に離すことができる。いくつかの実施形態では、掛かり230が展開されるように、プッシャー管260が細長い外部部材75に対して推進される。例えば、プッシャー管260は、内部部材210と連結部270を介して連結されていてもよく、クランプ部材80と共に細長い外部部材75に対して推進される。
【0057】
人工弁1が自然弁の弁尖及び/又は腱索の部分に固定されるように、掛かり230が突起群50及び/又は55に取り付けられてもよい。例えば、
図26及び
図27に示されるように、第1の掛かり群233を突起群55に通し、第2の掛かり群235を突起群50に通すように配置することができる。
図26及び
図27に示されるように、掛かり230の形状により、掛かり230は突起群50、55に固定される。また、掛かり230を突起群50、55に固定するために、別の既知の留め具を用いてもよい。留め具としては、特に限定されないが、縫合糸、接着剤、クランプなどが挙げられる。
【0058】
外周溝45の開口は、筒状体30の側面の窪みによって定めることができる。溝45は、
図26及び
図27に示されるように、クランプ部材80の最大外径よりも大きくすることができる。掛かり230を自然弁の弁尖及び/又は腱索の部分に取り付けることによって、人工弁1を自然弁の弁尖及び/又は腱索の部分に固定することができる。また、掛かり230を自然弁の弁尖及び/又は腱索の部分から外すことで、弁尖及び/又は腱索の部分への人工弁1の固定を解除することができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、搬送用カテーテルから流出端を展開し、流入端は展開しないといった部分的な展開において、筒状体30は、外周溝45から流出端に向かって半径方向の外側に傾斜する円錐台形状を形成することができる。例えば、筒状体30は、部分的に展開した際、筒状体30の長手方向の中心軸に対して、約2°〜45°の角度で半径方向の外側に向かって傾斜することができる。本発明の実施形態では、筒状体30は、筒状体の長手方向の中心軸に対して、約5°〜30°、約10°〜20°、又は約15°の角度の傾斜を有することができる。
【0060】
部分的に展開した状態において、壁構造25の組織(例えば自然弁の弁尖及び/又は腱索)を外周溝45内に誘導するように、細長い外部部材75を筒状体30に沿ってスライドさせることができる。例えば、細長い外部部材75を、筒状体30の流出端から筒状体30の流入端に向かって筒状体30の傾斜に沿って半径方向の内側にスライドさせ、外周溝45内に配置することができる。部分的に展開された筒状体30の円錐台形状に沿ってスライドさせる際、細長い外部部材75は壁構造25の外側に配置されてもよく、これにより、筒状体30及び壁構造25に沿ってスライドさせることができる。従って、細長い外部部材75は、自然弁の弁尖及び/又は腱索が筒状体30と細長い外部部材75の間に配置されるように、壁構造25の自然弁の弁尖及び/又は腱索を外周溝45内に移動させることができる(
図10c)。これにより、自然弁の弁尖及び/又は腱索を外周溝45内に捕捉することができる。
【0061】
図6cは、
図4中のC−Cでの断面に類似した、筒状体30及びクランプ部材80の断面を示す概略図であるが、
図4には示されていない接続チャンネル壁構造25をなす心臓の組織を加えて示している。
図6cでは、第1又は第2の突起群50、55の位置が点50、55によって示される。
図6cに見られるように、接続チャンネル壁構造25をなす心臓の組織は、外周溝45内で、筒状体30の溝の底部46と、第1及び/又は第2の突起群50、55の自由端60、65によって定められる径の間の半径方向の位置にある。
図6cからわかるように、クランプ部材80は接続チャンネル壁構造25の組織によって弾性的に引き伸ばされ、接続チャンネル壁構造25の組織を自由端60、65に対して押しつける力を生じさせる。矢印85は、クランプ部材80から生じ、外周溝45内で接続チャンネル壁構造25に対して作用する力を示す。
【0062】
クランプ部材80を一つだけ示す
図6c及び
図6dに関して、例えば、溝45内に互いに平行に配置され、及び/又は筒状体30の外周方向に連続的に、例えば外周方向に距離を置いて又は接して配置される2つ以上のクランプ部材80を設けることもできる。例えば、互いに接する2つのクランプ部材80と、それら2つのクランプ部材80から角距離を置いた3つ目のクランプ部材80とを溝45内に設けることができる。複数のクランプ部材80は、例えば、溝45の径方向に反対の位置に配置することができる。これらの2つ以上の(例えば3〜5つの)クランプ部材80は、全てが等しい断面径D2を有してもよく、それぞれ異なる断面径を有してもよい。クランプ部材80は、(例えば筒状体30の外周方向に)全てが等しい長手方向の長さを有してもよく、異なる長手方向の長さを有してもよい。クランプ部材80は、特定の(例えば1人の患者の)心臓の接続チャンネル壁構造25の特定の組織構造及び状態に応じて、筒状体30が堅固に固定されるように設計され、取り付けられることができる。クランプ部材80は、局所の状態に応じて筒状体30を堅固に固定するために、操作者又は外科医によって特別に選ばれ、取り付けられることができる。それぞれのクランプ部材80は、筒状以外の形状、例えばブロック型、キューブ型、又はボール型の形状を有することができる。
【0063】
接続チャンネル壁構造25の組織に働く力は、クランプ部材80を細長い外部部材75とともに用いると増大させることができ、これによって経カテーテル式人工弁1と接続チャンネル壁構造25との間の結合をさらに向上させることができる。この場合、クランプ部材80から発生した軸35に対して外向きの弾性力と、細長い外部部材75から発生した軸35に対して内向きの力が接続チャンネル壁構造25の組織に作用し、人工弁1を接続チャンネル10の中で意図された位置に堅固に保持する。しかしながら、人工弁1は、クランプ部材80及び細長い外部部材75なしでも(すなわちそれ自体で)用いることができ、又はそれらのうち一つだけと共に用いることもできる。突起群50、55を有さない人工弁1は、クランプ部材80及び/又は細長い外部部材75によって固定することができる。このような細長い外部部材75及び/又はクランプ部材80としては、剛直なもの、例えば、圧力又は硬化によって剛性となる物質が充填された膨張可能なバルーン自体、又はそのようなバルーンを含むものなどが挙げられる。充填される物質は、限られた時間で、添加剤(例えば網状化剤)の注入によって、熱又はエネルギーを加えることによって硬化させることができる。このような物質の例としては、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、異なるエポキシ、ポリウレタン、ポリウレタンシリコーンの混合物などが挙げられる。これに補強繊維(例えばケブラー(登録商標)などのポリアラミド)を加えることで強化することができる。
【0064】
クランプ部材80は、
図4及び
図5に示すように、メッシュ型の構造から構成されてもよく、内腔を有することができる。メッシュは、金属、有機素材、又は他の素材からなることができる。クランプ部材80のメッシュの素材の例としては、鉄、ニッケル、アルミニウム、チタン、及び/又はそれら金属と他の元素の合金などが挙げられる。また、メッシュの素材として、鋼鉄(例えばばね鋼)、超合金、形状記憶合金(例えばニチノール)、Ti
6Al
4V、及び/又は金などの貴金属、又はこれらの組み合わせなども挙げられる。クランプ部材80のメッシュは、ポリマー、例えばポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、又はナイロンからなることもできる。当然メッシュはこれらの素材の組み合わせからなることもでき、すなわち2つ以上の異なる素材からなってもよい。いくつかの実施形態では、クランプ部材は、ダクロン(登録商標)などのポリエステル又はPTE(ポリエチレンテレフタレート)のグラフト素材、又はePTFE(延伸ポリテトラフルオロエチレン)のグラフト素材で覆われた鉄又はニチノールステントからなる、拡張可能なステントグラフトである。クランプ部材80のメッシュは、筒状体30のメッシュ構成部33及び/又は細長い外部部材75に関して上述したいずれの素材を加えて含むこともでき、クランプ部材80は、接続チャンネル壁構造25の組織を突起群50、55に対して押し付ける強い弾性力を生むような素材を選択して設計することができる。クランプ部材80は、筒状体30に結合するための鉤又は掛かりを有してもよい。
【0065】
クランプ部材80及び/又は細長い外部部材75は、膨張可能な内部部材(不図示)を有することもできる。膨張可能な内部部材は、クランプ部材80の内腔に設置されることができ、クランプ部材80の径D2を増大させるように膨張することによって、接続チャンネル壁構造25の組織を突起群50、55に対して(クランプ部材80が中空の空間66にある場合は内側から、又はクランプ部材80が接続チャンネル壁構造25の外側にある場合には外側から)押し付けることができる。内部部材は、操作者が例えば体の外に置かれたシリンジ、流体のボトル、又はポンプなどの外圧源から供給される流体(気体又は液体)及び配管を用いて膨張させることができる。クランプ部材80は、膨張させた際、接続チャンネル壁構造25の組織を突起群50、55に対して押し付ける膨張可能な部材80であることもできる。膨張可能な内部部材及び膨張可能な部材80のいずれも、防水性、耐圧性の素材、例えばクランプ部材80に関して上述した素材又はポリマー、又は他のいずれの適切な素材からなることができる。
図11a及び
図11bに関して、膨張可能な部材は、物質を(例えば輸送チューブ(不図示)を介して)膨張可能な部材に注入する及び/又は膨張可能な部材から排出することができる孔76(例えば弁、例えば開口部)を有することができる。孔76は、選択的に物質の透過を可能にする(すなわち「開放状態」を有する)ことができ、また、物質の透過を遮断する(すなわち「閉鎖状態」を有する)ことができる。孔76は、膨張可能な部材の断面径を変化させるように膨張可能な部材を満たす又はその中身を出す(例えば空にする)ために用いることができる。クランプ部材80及び/又は細長い外部部材75は、緩衝/クッション機能を備えるために、弾性を有する素材(例えばポリマー及び/又は金属)からなってもよく、及び/又は圧縮可能な(例えば弾性を有する)物質(例えば気体及び/又は発泡体の素材及び/又はヒドロゲル)で満たされてもよい。膨張可能な部材を満たす物質は気体、液体、又は他のいずれの物質でもあってもよく、又は膨張可能な部材の中で相(気相、液相、固相)が変化する物質であってもよい(例えば液相から固相に変化する物質)。物質は、膨張可能な部材中で硬化可能な物質であってもよく、概して剛性を有するクランプ部材80及び/又は細長い外部部材75を提供することができる。
【0066】
クランプ部材80は、例えば長手方向の軸について半径方向に拡張する際に、溝45の向かい合う側壁48、49に対して力を加えることができる。この力は、第1部分31と第2部分32の間の距離及び/又は筒状体30の(軸35に関する)軸方向の両端の間の距離を増加又は減少させることができる。筒状体30は(例えばメッシュ構造及び/又は弾性を有する素材を含むことで)弾性を有するように製造することができる。クランプ部材80によって生じる力によって、溝45の外周に沿った溝の底部46の周を拡張又は縮小することができ、及び/又は(軸35に関する)軸方向の溝45の位置における筒状体30の径R1を拡大又は縮小することができる。クランプ部材80及び/又は細長い外部部材75(これらは同じ部材であっても又は別の部材であってもよい)は、長手方向の軸35に関する筒状体30の半径方向及び/又は長手方向の力を発生させないこともできる。従って、クランプ部材80及び/又は細長い外部部材75は、筒状体30に対してクランプ力を加えずに、第1の突起群50及び/又は第2の突起群55の突起が組織を刺し通すのに加えて、又はこれに代わって、単に接続チャンネル10の外周の壁構造25、クランプ部材80、及び/又は筒状体30の間の締まり嵌めを提供し、接続チャンネル10の組織を置換する置換部材として作用することができる。
【0067】
クランプ部材80及び/又は細長い外部部材75は、その一部分のみが第1の突起群50及び/又は第2の突起群55の半径方向の内側に位置してもよく、突起群のいずれか又は両方によって刺し通されるように位置して筒状体30に対して保持されてもよい。細長い外部部材75及び/又はクランプ部材80は、一つの突起群50、55のみによって刺し通されることができ、他方の突起群はクランプ部材80/細長い外部部材75を刺し通さなくてもよい(一つの突起群のみを(外周溝45の片側に)有する人工弁1の場合は、他方の突起群を有さなくてもよい)。突起群50及び/又は55は、突起群50、55のそれぞれの自由端60、65がクランプ部材80の中で終止するように、又は突起群50、55のそれぞれの自由端60、65がクランプ部材80を貫通し、クランプ部材から出て、自由端60、65がクランプ部材80の外側に位置するように、クランプ部材80を刺し通すことができる。
【0068】
図10bに関して、細長い外部部材75及び/又はクランプ部材80は、外周溝45内で、突起群50、55の半径方向に内側に、細長い外部部材75及び/又はクランプ部材80が突起群50、55によって刺し通されないように設けられてもよい。いくつかの実施形態では、クランプ部材80は、筒状体30と第1の突起群50及び/又は第2の突起群55との間に定められる外周溝45内に自然弁の弁尖及び/又は腱索の少なくとも一部を捕捉することができる。例えば、自然弁の弁尖及び/又は腱索は、外周溝45内のクランプ部材80と第2の突起群55の間に配置される。細長い外部部材75/クランプ部材80は、外周溝45、接続チャンネル壁構造25の組織、及び/又は外周溝45内の突起群50、55との締まり嵌め又は締まり嵌めと摩擦嵌合によって保持することができる(例えば膨張させた場合や拡張させた場合)。さらに、
図10bに概略的に示すように、細長い外部部材75/クランプ部材80は、実質的に楕円形であってもよく、又は三角形、長方形、若しくは多角形など他のいずれの断面形状を有することもできる。
図10bに示される細長い外部部材75/クランプ部材80の実質的に楕円形の形状は、例えば(拡張したときに)実質的に楕円形の形状を有する筒状構造を備えた細長い外部部材75/クランプ部材80の設計などによっても生じ得る。また、突起群50、55、外周の壁構造25の組織、及び/又は溝45から細長い外部部材75/クランプ部材80に作用する異方性の力によっても生じる。すなわち、細長い外部部材75/クランプ部材80は、外力が作用しないとき実質上円形の断面を有し、移植された(また、例えば拡張された)際に異なる形状(例えば楕円形)をとることができる。
【0069】
例えば
図10cに関して、拡張可能及び/又は縮小可能な細長い外部部材75(例えばクランプ部材80)は、拡張された際に外周溝45の幅W1よりも大きい径D2を有することができ、細長い外部部材75が溝45の外側に伸びて、外周の壁構造25と心臓内腔(例えば心室20及び/又は心房15)を形成する組織との間の空間を占めることができる。すなわち、細長い外部部材75は、拡張(例えば完全に拡張)された際に接続チャンネル壁構造25と心臓内腔(例えば心室20)の壁の組織/筋との間に設置される(例えば隣接する)形状をとることができる。従って、細長い外部部材75は、外周溝45の(軸35に関する)半径方向の外側に(例えば部分的に、例えばその一部分が)位置することができ、溝45の半径方向の外側に(例えば部分的に、例えば細長い外部部材75の一部分が)位置しながら、軸35に対して平行に、筒状体30の第1及び第2部分31、32のうち一つ以上に沿って(例えば第2部分32に沿って)伸びていてもよい。従って、細長い外部部材75は、軸35に対してほぼ半径方向に、外周溝45の方向に伸びる第1角度部75aと、筒状体30の軸35に対してほぼ平行であり、筒状体30の外側に(例えば第1部分31及び/又は第2部分32に沿って)伸びる第2角度部75bとを伴う、角張った形状の(例えば実質的に約90°の角度を描く)断面を有することができる。すなわち、細長い外部部材75(例えばその第2角度部75b)は、第1部分31及び/又は第2部分32と心室20及び/又は心房15などの心臓内腔の壁を形成する組織/筋との間に位置することができる。
図10a〜
図10cでは、細長い外部部材75/クランプ部材80は人工弁1の片側にのみ示されているが、これらは(
図11a〜
図11dに示されるように)人工弁1(例えば外周溝45)の周り全体に又は部分的に伸びていてもよい。細長い外部部材75/クランプ部材80は、長手方向の中心軸の方向に、互いに連結されていない及び/又は隣接しない、すなわち互いに距離を置いた自由端77、78(例えば2つの自由端77、78)を有することができる。自由端77、78は、軸35に対して例えば180°未満、90°未満、45°未満、又は10°未満の角度によって定められる角距離によって(例えば溝45内で、例えば溝45内で膨張した際に)互いに隔てられる。これらの自由端77、78のうちの一つに孔76を設けてもよく、又は自由端77、78のそれぞれに孔76を設けてもよい。細長い外部部材75/クランプ部材80が外周溝45の周りに部分的にのみ伸びており、自由端を有する場合、物質、例えば(硬化させることができる)硬化性物質によって剛性を付与することができる。
【0070】
図15a、
図15b、及び
図15cに示されるように、挿入部材130によって、クランプ部材80を細長い外部部材75上及び外周溝内に誘導することができる。挿入部材130は、例えば取り外し可能な結合部材133によって、クランプ部材80に結合することができる。挿入部材130は、例えばクランプ部材80を細長い外部部材75上及び外周溝内に誘導するように構成される。いくつかの実施形態では、挿入部材130は、クランプ部材80を押すように構成される。結合部材133としては、クランプ部材80と挿入部材130の間の締まり嵌めするものなどが挙げられる。また、結合部材133は、ルアーロックやその他の適切な取り外し可能な掛け金であってもよい。結合部材133は、挿入部材130からクランプ部材80を選択的に離すように、及び/又はクランプ部材80を挿入部材130に再連結するように構成することができる。
【0071】
クランプ部材80/細長い外部部材75は(例えば上記したように、弾性を有する及び/又は圧縮可能な素材を含む場合)心臓(例えば心臓内腔)と人工弁1(例えば筒状体30)の間の緩衝及び/又はクッション部材として作用することによって、(例えば脈拍などの鼓動によって生じる)心臓の運動を緩衝する役割を果たし、鼓動を行う心臓によって生じて人工弁1に作用する力を緩衝、低減して、人工弁1を心臓に対してよりよく固定することができる。従って、クランプ部材80/細長い外部部材75は、人工弁1の脈動を弱める、又は避けるために(心室壁などの(例えば心室20の乳頭筋の))動きを吸収することができる。クランプ部材80は、心臓の組織(例えば心室20及び/又は心房15の壁)と人工弁1の間の距離を保つ役割を果たし、これによって人工弁1の配置及び/又は固定をよりよく行うことができる。このように、細長い外部部材75及び/又はクランプ部材80は、緩衝部材及び/又はスペーサー部材としての役割を果たすことができる。クランプ部材80及び/又は細長い外部部材75、曳いては溝45は、生体弁の弁輪部から見たとき、心室の片側に弁輪部から距離を置いて取り付けることができる。
【0072】
筒状体30の長手方向の軸(例えば軸35)に沿った断面形状は変化させることができる。カテーテル部材90は、(軸35に関する)軸方向の断面に対して実質上直径方向に(例えば接続チャンネル壁構造25の外側から)接続チャンネル壁構造25を通り抜け、筒状体30を通り抜けるように配置することができる貫通部材を有する、又は提供することができる。貫通部材は中空であってもよく、接続チャンネル壁構造25の径のカテーテル部材90に対して遠位の位置で、接続チャンネル壁構造25上に固定装置を置くことを可能にする。この固定装置は、縦材(例えばつなぎ線)の長手方向の端に設けることができる。反対側の長手方向の端には第2の固定装置を設けることができる。第2の固定装置は、貫通部材を接続チャンネル壁構造25から回収する際に、貫通部材によって、前述の接続チャンネル壁構造25の径の(カテーテル部材90に対して)近位の位置に配置することができる。前述の縦材の長さは、第1及び第2の固定装置によって誘起されて縦材に対して作用する力による張力下で、筒状体30を実質上楕円形に変形するように、例えば筒状体30に対して外力が作用しないときは筒状体30の径より縦材が短くなるように設計することができる。縦材は、筒状体30の内腔を横切るように、弁40の機能を妨げない位置に、例えば弁40から幾何学的に離れた位置に配置することができる。縦材は、筒状体30内の血流に顕著な影響を与えないように十分に小さく、例えば100μm〜1000μmの範囲の半径又は直径を有することができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、経カテーテル式人工弁1は、筒状体の周りに少なくとも部分的に位置する布120を含むことができる。例えば、
図16a及び
図16bに示されるように、布120は筒状体30の外周周りに、突起55の第2の端69を覆うように設置され、筒状体30と突起55の間に袋
122を形成することができる。袋122は、組織及び/又はクランプ部材80が筒状体と突起55の間を過度にスライドすることを防ぐ役割を果たす。例えば、袋122は、筒状体30と突起群50及び/又は55の間に位置する空間66と一致してもよい。いくつかの実施形態では、筒状体30は第2の突起群55を含み、布120は第2の突起群55の第2の端69を覆う(
図16b)。別の実施形態では、布120は第1及び第2の突起群50、55の両方を覆う。
【0074】
布120は、上述したようなライナー33bを含むことができ、
図16a及び
図16bに示されるように、筒状体30の流入端に取り付けられる第1の端124と第2の端126を有することができる。布120は、第1の端124と第2の端126の間に袋122を形成するのに十分なたるみを有し得る。いくつかの実施形態では、第2の端126は、筒状体30の流出端の近傍で、筒状体30に取り付けることができる。これに代わって、布120の第2の端126は、
図17a、
図17b、
図17c、
図17d、及び
図17eに示されるように、突起50、55の第2の端69に取り付けることができる。第2の端126は、第2の端69の最端に取り付けられてもよく(
図17a)、又は第2の端126は、第2の端69の最端と接する連結部167に取り付けられてもよい(
図17c及び
図17d)。布120は、例えば、縫合糸、接着剤、クランプ、又は別の既知の留め具によって筒状体30又は突起50、55に取り付けることができる。いくつかの実施形態では、第2の端126は、
図18に示されるように、筒状体30には取り付けられず、自由端を有する。第2の端126の自由端は、実質的にステント30の全長にわたって伸びることができ(
図16a、
図16b、及び
図18)、又は第2の端126の自由端は、
図17b〜
図17eに示されるようにステントの長さより短くてもよい。別の実施形態において、第2の端126の長さは、
図16a〜
図18に示される実施形態より短くても長くてもよい。
【0075】
布120は、一つ以上の構成部分を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、布120は、筒状体30を完全に取り囲む一つの構成部分のみを含む。別の実施形態では、布120は、複数の、例えば2つ、4つ、又は6つの構成部分を含むことができる。複数の構成部分は空間的に隔てられ、隣接する構成部分の間に隙間があってもよい。これに代わって、又はこれに加えて、一部の又は全ての隣接する構成部分は、重なっていてもよい。布120は、例えばライナー33b(
図6b)と連続していてもよい。布の素材としては、ポリエステル生地(例えばダクロン(登録商標)又は他のPTFEグラフト素材)などが挙げられる。
【0076】
細長い外部部材75及びクランプ部材80は、
図17eに示されるように、袋122内に移動され、袋122内に組織を捕捉することができる。細長い外部部材75及び/又はクランプ部材80を袋122内に移動することによって、袋122に張力を付加し、布120を張ることができる。これにより、組織を筒状体30と突起55の間に捕捉することができる。布120は、筒状体30と捕捉された組織の部分(例えば自然弁の弁尖及び/又は腱索)との間、及び捕捉された組織の部分と突起55の間に位置することができる。
【0077】
いくつかの実施形態では、布120は袋を形成するのに十分なたるみを伴って筒状体30に取り付けられるが、細長い外部部材75及び/又はクランプ部材80が筒状体30と突起55の間で布120に接するように移動するまで、袋122が形成されない。その後、細長い外部部材75及び/又はクランプ部材80は、細長い外部部材75及び/又はクランプ部材80の大きさと袋122の大きさが一致するように、袋122を形成する。
【0078】
図26及び
図27に示されるように、掛かり230が自然弁の弁尖及び/又は腱索の部分を少なくとも部分的に刺し通す際に、掛かり230を布120に少なくとも部分的に刺し通すことができる。掛かり230によって布120を刺し通すことによって、人工弁を自然弁の弁尖及び/又は腱索に固定することを補助することができる。
【0079】
経カテーテル式人工弁1の全ての実施形態は、筒状体30及び/又は細長い外部部材75及び/又はクランプ部材80の相対的な及び/又は絶対的な位置決めを容易にするための位置決め及び/又は方位決め装置を有することができる。これらの装置は、筒状体30及び/又は細長い外部部材75及び/又はクランプ部材80に取り付けられる複数のパッシブマーカーを含むことができる。パッシブマーカーは、例えば磁気共鳴又はX線に基づくイメージング技術を用いた医療的なイメージング中でコントラストを向上させるために、筒状体30及び/又は細長い外部部材75及び/又はクランプ部材80と異なる素材からなることができる。パッシブマーカーは、放射線透過性が低い素材からなることができ、これによって、患者の身体に対する経カテーテル式人工弁1の構成部分の相対的な及び/又は絶対的な位置を正確に捕捉することができる。パッシブマーカーは、絶対的及び/又は相対的な位置及び方位を判定することを可能にするため、またこれによって筒状体30及び/又は細長い外部部材75及び/又はクランプ部材80の位置及び方位を判定することを可能にするために、非対称の形状をそれぞれ有することができる。複数のパッシブマーカーは同一の形状を有することもでき、方向の認識を可能にするために、互いに対して一定の配置で取り付けることができる。筒状体30の外周溝45及び/又は筒状体30及び/又は細長い外部部材75及び/又はクランプ部材80には、イメージング技術を用いてこれらを互いに位置決めするのを容易にするためにパッシブマーカーを取り付けることができる。例えば、電磁波放射に基づくイメージング技術(X線イメージングなど)を用いるときには放射線透過性が低い素材からなるパッシブマーカーが用いられる。これに加えて、及び/又はこれに代わって、筒状体30の外周溝45及び/又は他の部分/構成部分及び/又は細長い外部部材75及び/又はクランプ部材80は、放射線不透過性の素材からなることができる。
【0080】
上述の経カテーテル式人工弁1を用いる方法は、以下の工程を含む。
【0081】
経カテーテル式人工弁1を、房室弁、例えばヒト又は動物の心臓の僧帽弁又は三尖弁の中に、カテーテルによる挿入を介して配置する工程。経カテーテル式人工弁1は、例えば
図1に示すように、心室20と心房15の間で接続チャンネル壁構造25内に配置することができる。
【0082】
心臓の弁の中に経カテーテル式人工弁1を配置するために、以下のアプローチを用いることができる。1)大動脈から心臓内腔に進入する動脈逆行性アプローチ、2)静脈アクセス及び心房中隔穿刺を介したアプローチ(経中隔アプローチ)、3)心尖を貫通する穿刺によるアプローチ(経心尖アプローチ)、4)心臓の外側から心房壁を穿刺するアプローチ、5)動脈アクセス(例えば鼠径の穿刺を介した大腿動脈からのアクセス)、又は6)当業者に知られた他のアプローチ。弁へのアプローチは、筒状体30が半径方向に圧縮可能かつ拡張可能であるため、例えばアプローチの最中に折りたたんでカテーテル内に詰め、接続チャンネル壁構造25内で元のように拡張することで、容易に達成できる。経カテーテル式人工弁1はクランプ部材80を含んでもよく、あるいは、前述のアプローチのうち一つを介して(例えばカテーテルを用いて)クランプ部材80を別途挿入し、筒状体30が接続チャンネル壁構造25内に位置する際、筒状体30の外周溝45内に配置することもできる。クランプ部材80は圧縮可能かつ拡張可能なものとすることができる。
【0083】
本発明の方法は、経カテーテル式人工弁1を心臓の中で弁に対して固定する工程を含む。
【0084】
心臓弁を機能的に置換するため、経カテーテル式人工弁1は接続チャンネル壁構造25に対して固定され、接続チャンネル壁構造25内で、経カテーテル式人工弁1の外側の血流に対して密閉される。これを達成するため、例えば、外周溝45に隣接する接続チャンネル壁構造25の組織は、第1の突起群50及び第2の突起群55の半径方向の内側に位置するように、外周溝45に押し込まれるか外周溝45内に配置される。これにより、組織が外周溝45から滑り出るのを第1の突起群50及び/又は第2の突起群55によって防ぐことができる。このとき、第1の突起群50及び/又は第2の突起群55の自由端60、65は、組織を貫通してもよい。接続チャンネル壁構造25の組織は、突起群50、55によって(完全に)貫通されるか、又は例えば部分的に穿孔されることによって、外周溝45から滑り出るのを防ぐことができる。接続チャンネル壁構造25の組織を能動的に自由端60、65に対して押しつけ、組織が自由端60、65とかみ合うようにするために、クランプ部材80又は2つ以上のクランプ部材80を外周溝45内に設けてもよい。これによって、経カテーテル人工弁1はその位置により堅固に保持され、筒状体30の外側と接続チャンネル壁構造25の間の血流に対して密閉されることができる。
【0085】
組織を筒状体30の外周溝45内に置くため、本発明の経カテーテル式人工弁1を用いる方法は、接続チャンネル壁構造25の組織を半径方向に内側に外周溝45内に押し込むために細長い外部部材75を用いることを含むことができる(これはクランプ部材80を含んでもよく、含まなくてもよい)。
図3に関して、細長い外部部材75は、接続チャンネル壁構造25の外側の、外周溝45の位置に設置されることができる。次に、
図6bに関して、接続チャンネル壁構造25の組織を外周溝45に押し込んで組織を外周溝45内に固定するように、細長い外部部材75と筒状体の軸35の間の距離R5を短縮する(すなわち筒状体30の外周溝45の底部46と細長い外部部材75の間の距離も短縮する)ことができる。いくつかの実施形態では、接続壁構造25の組織を外周溝45に押し込むために、細長い外部部材75を部分的に展開された筒状体30の傾斜に沿ってスライドさせる。細長い外部部材75を接続チャンネル壁構造25の近傍に持ってくるために、細長い外部部材75はカテーテル部材90を介して扱うことができ、経カテーテル式人工弁1に関して上述したアプローチ又は他のいずれのアプローチも用いることができる。
【0086】
組織が溝45内に固定されるように細長い外部部材75を外周溝45内に設置し、筒状体を完全に展開させた後、クランプ部材80を細長い外部部材75に沿って誘導し、クランプ部材80を細長い外部部材75の環と同軸上に設置することができる。例えば、細長い外部部材75上をスライドさせるように、クランプ部材80を少なくとも二つのステントストラット107間及び/又は突起間から推進させてもよい。その後、クランプ部材80は外周溝45内の組織(例えば自然弁の弁尖及び/又は腱索)を捕捉することができる。いくつかの実施形態では、挿入部材130によってステントストラット107間からクランプ部材80を押し入れ、細長い外部部材75上に位置させることができる。結合部材133によって、クランプ部材80から挿入部材130を切り離してもよい。
【0087】
いくつかの実施形態では、クランプ部材80は、筒状体30が部分的に展開された際に外周溝45内に移動させられる。例えば、外周溝45の開口が相対的に(筒状体30が完全に展開された状態の開口よりも)大きくなるように搬送カテーテルから筒状体30の流入端でなく流出端のみを展開させた際に、クランプ部材80を外周溝45内に移動させてもよい。クランプ部材80を筒状体30に沿って(例えば筒状体30の流出端から流入端の方向に)スライドさせ、外周溝45内に配置させることで、溝内に組織を捕捉することができる。
【0088】
接続チャンネル壁構造25の組織が突起群50、55によって外周溝45内に保持されるとき、細長い外部部材75(及びカテーテル部材90)は心臓から除去することができる。また、
図7に示すように、カテーテル部材90の結合手段91を用いて、細長い外部部材75の2つの(自由)端を永続的に結合して端を任意に切断し、細長い外部部材75を接続チャンネル壁構造25の外側の、筒状体30の外周溝45の位置に永続的に残して、接続チャンネル壁構造25の組織を外周溝45内にさらに保持するようにしてもよい。
【0089】
いくつかの実施形態では、細長い外部部材75は、接続チャンネル壁構造25の組織が筒状体30と突起55の間の布120に接するように半径方向の内側に力を加えることができる。この細長い外部部材75の動きによって、自然弁の弁尖及び/又は腱索が筒状体30と突起55の間に形成された外周溝45内に誘導される。細長い外部部材75が外周溝45に向かって動くことで、自然弁の弁尖及び/又は腱索が布120と接触するように誘導され、袋122を形成する。このように、布120はたるんだ状態から張った状態になり、袋122を形成する。さらに、クランプ部材80を袋122内に推進させて、袋122内に組織を捕捉することもできる。
【0090】
いくつかの実施形態では、挿入部材130によって、クランプ部材80を細長い外部部材75上及び外周溝45内に押すことができる。例えば、挿入部材130によってクランプ部材80を少なくとも二つのステントストラット107の間から外周溝45内に押すことができる。クランプ部材80を外周溝45内に配置した後、結合部材133によって、挿入部材130からクランプ部材80を選択的に離してもよい(
図15c)。いくつかの実施形態では、筒状体30から細長い外部部材75を離し、除去することで、挿入部材130からクランプ部材80を切り離すことができる。クランプ部材80及び挿入部材130は、挿入部材130からクランプ部材80を切り離した後、再び連結部材130を用いて連結することができる。その後、クランプ部材80は、患者内部に再配置されてもよい。これに加えて、筒状体30及び細長い外部部材75を患者の内部に再配置することもできる。クランプ部材80を患者の内部に再配置した後、連結部材133によって、挿入部材130からクランプ部材80を再び離してもよい。
【0091】
本発明の経カテーテル式人工房室弁1を用いる方法であれば、経カテーテル式人工弁1を接続チャンネル壁構造25に対して固定し、クランプ部材80及び/又は永続的に設置された細長い外部部材75で任意に補助しながら、自由端60、65によって外周溝45内に保持される組織を介して、人工弁を堅固にその位置に保持することができる。
【0092】
また、本発明の経カテーテル式人工房室弁1を用いる方法によって、患者の弁の閉塞を最小限に抑えながら、筒状体30を接続チャンネル壁構造25に固定することができる。例えば、第1の搬送カテーテルを用いて、患者の大腿動脈などを介して、細長い外部部材75を患者の自然弁に推進させる。この細長い外部部材75によって、弁を実質的に閉塞させずに、患者の自然弁の周りに環を形成する。第2の搬送カテーテルを用いて、患者の心房壁などを介して、筒状体30を患者の自然弁に推進させる。第2の搬送カテーテルから筒状体30の流入端でなく流出端のみを展開させるように、第2の搬送カテーテルから筒状体30を部分的に展開する。筒状体30が部分的に展開している短い時間のみ、患者の自然弁は実質的に閉塞し得る。次に、筒状体30が部分的に展開している際に、細長い外部部材75を外周溝45内に移動させることで、患者の自然弁の弁尖及び/又は腱索を溝45内に移動させる。筒状体30を完全に展開させると、患者の自然弁の実質的な閉塞は解消される。従って、本方法は、筒状体30が部分的に展開し、細長い外部部材75によってまだ定位置に固定されていないときのみ、自然弁を実質的に閉塞し得る。これに加えて、自然弁を実質的に閉塞させずに、クランプ部材80を細長い外部部材75上に推進させることもできる。例えば、上述したように、クランプ部材が完全に又は部分的に展開された筒状体30の周りに、細長い外部部材75上に推進させることができる。
【0093】
ここ(明細書及び/又は図面及び/又は特許請求の範囲)で説明されている経カテーテル式人工房室弁1の特徴及び経カテーテル式人工房室弁1を含む方法で、第1の突起群50及び/又は第2の突起群を有する経カテーテル式人工房室弁1に言及するものは、一つの突起群(50、55)のみを有する経カテーテル式人工房室弁1にも適用される。逆もまた同じである。特に、本出願(明細書、特許請求の範囲、図面)内で第1及び第2の突起群の突起についてさらに定義するために説明されている特徴は、例えば人工弁が第1の突起群のみを有する場合には、第1の突起群にのみ適用することもできる。ここで説明されているすべての特徴は、経カテーテル式人工房室弁1の全ての実施形態の間で交換可能なものであることが開示される。