(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6630417
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】回転体のストッパ
(51)【国際特許分類】
F16D 63/00 20060101AFI20200106BHJP
F16D 41/10 20060101ALI20200106BHJP
F16D 41/067 20060101ALI20200106BHJP
F16D 65/16 20060101ALI20200106BHJP
F16D 127/04 20120101ALN20200106BHJP
F16D 127/10 20120101ALN20200106BHJP
【FI】
F16D63/00 Z
F16D41/10
F16D41/067
F16D65/16
F16D127:04
F16D127:10
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-178277(P2018-178277)
(22)【出願日】2018年9月25日
【審査請求日】2019年8月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000103976
【氏名又は名称】株式会社オリジン
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100102417
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【弁理士】
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋裕
【審査官】
羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】
特許第6064067(JP,B1)
【文献】
特開2015−232367(JP,A)
【文献】
特開2015−215033(JP,A)
【文献】
特開2014−185669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 41/00−47/06
F16D 49/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体を回転可能な状態と停止状態とに切り換えるストッパであって、
前記回転体の外周を取り囲んで設置された固定部材を備え、
前記固定部材には、前記回転体の外周との距離が周方向に変化するカム面の形成された複数の空間部が設けられ、前記複数の空間部は、隣接する空間部において前記距離の増大する方向が相互に逆となるように設定されて、前記隣接する空間部が一対の組み合わせ空間部をなし、前記組み合わせ空間部が、複数、前記回転体の外周に配置され、
前記空間部の各々には、前記距離が減少する方向にばねにより押圧された転動体と、前記転動体を前記距離が増大する方向に移動させる押圧片とが設置され、さらに、前記押圧片を同時に作動させる操作手段が備えられており、
前記操作手段には、前記回転体の外周に配置された複数の前記一対の組み合わせ空間部のそれぞれにおける、周方向片側の前記空間部に設置された前記押圧片の全てが、周方向他側の前記空間部に設置された前記押圧片の全てがそれぞれ固着されて、共に前記回転体の中心軸の回りを回動する一対の作動部材と、前記固定部材に固着された固定ピンを軸として回動し、前記一対の作動部材の各々を反対方向に回動させるよう前記一対の作動部材の各々に接続されたリンク片とが設けられると共に、前記一対の作動部材のいずれか一方に連結されてこれを回動させる回転駆動部材とが設けられている、ことを特徴とするストッパ。
【請求項2】
前記複数の組み合わせ空間部が、前記回転体の外周に均等な間隔で配置されている請求項1に記載のストッパ。
【請求項3】
前記一対の作動部材の各々の間には、各々の前記作動部材に固着された前記押圧片が相互に接近する方向に、各々の前記作動部材を押圧する補助ばねが配置されている、請求項1又は2に記載のストッパ。
【請求項4】
前記固定部材は、ハウジングと、前記ハウジングの内側に固定される固定リングとを含んでいる、請求項1乃至3のいずれかに記載のストッパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動を容易にする目的で、荷物運搬用の台車或いは家具等の脚部に取り付けられるキャスタなどの回転体(回転軸を含む)に用いられ、その回転体を停止状態に保持するストッパに関するものである。
【背景技術】
【0002】
荷物運搬用の台車、キャリーバック等には、スムースな移動を可能とするため、小車輪であるキャスタが装着される。キャスタは、設置場所を頻繁に移動するキャビネットや椅子、介護用ベッドなどの家具でも常套的に使用されている。
キャスタを装着した場合には、例えば、装着した台車が荷物の積み降ろし時等に不測の動き出しを起こすことのないよう、キャスタを回転不能状態に拘束するストッパを設けることが多い。このようなストッパとしては、キャスタ又はそれに固着された回転体に摩擦板等を押し付けて回転不能とするもの、あるいは、多数の凹凸部を備えた歯車状の掛止め部材をキャスタに固着し、掛止め部材に固定側部材を噛み合わせて回転不能に固定するものなどが知られている。
【0003】
キャスタ等に設置するストッパとして、本願の出願人は、特許文献1に記載されたストッパを創案した。これは、楔形空間内に配置されたローラーの噛み込み作用で回転体を停止させる、いわゆるローラー型の一方向クラッチの原理を応用したものであって、このストッパについて
図11及び
図12により説明する。
図11はストッパの全体的な構造を示す図であって、
図12は各部断面図である。
【0004】
図11及び
図12を参照して説明すると、回転体RSは固定リングFRによって取り囲まれた状態で設置されている。
図12のD−D断面図に示すとおり、固定リングFRには、回転体RSの外周との距離Xが周方向に変化するカム面CSの形成された空間部S、つまり楔状の断面をなす空間部、が6個設けられ、この空間部Sは隣接する空間部Sにおいて上記距離Xの増大する方向が相互に逆となるように設定されている。そして、隣接する空間部Sは一対の組み合わせ空間部PSをなし、この組み合わせ空間部PSが回転体RSの外周に周方向に間隔をおいて3個配置されている。空間部Sの各々には、上記距離Xが減少する方向にばねSPにより押圧された転動体RBが設置されると共に、転動体RBを上記距離Xが増大する方向に移動させる押圧片Pが設置されており、全ての押圧片Pは操作手段CMによって同時に作動される。
図12のB−B断面図及びC−C断面図に示すとおり、操作手段CMには、回転体RSの中心軸oの周りを回動する一対の作動部材MM及びMM´と、一対の作動部材MM及びMM´の各々の相対的角度位置を変化させるカム体CBとが設けられている共に、カム体CBの姿勢を変更させる回転駆動部材RDとが設けられている。一対の作動部材MM及びMM´の各々には、回転体RSの周方向に一つおきの空間部Sに設置された押圧片Pの全てがそれぞれ固着されている。
図12のB−B断面図に示すとおり、カム体CBは径方向中間部に配置されてこれには従動歯車PGが固着されていると共に、回転駆動部材RDは径方向中央に配置されてこれには駆動歯車AGが固着されており、従動歯車PGと駆動歯車AGとは噛み合っている。従って、回転駆動部材RDを操作して駆動歯車AGを回転させることで、これと噛み合う受動歯車PGが回動することとなる。回転駆動部材RDは
図12(a)に示す片側操作位置と、
図12(b)に示す他側操作位置との間で移動可能である。
【0005】
回転駆動部材RDが片側操作位置にある状態にあっては、
図12(a)のD−D断面図に示すとおり、押圧片Pは転動体RBから離隔し、転動体RBはばねSPのばね力によって上記距離Xが減少する方向に移動した状態に位置する。そうすると、転動体RBはカム面CSと回転体RSとの間で噛み合い、回転体RSは回転不能となる(双方向ロック状態)。一方、回転駆動部材RDが他側操作位置にある状態にあっては、
図12(b)のD−D断面図に示すとおり、押圧片Pが転動体RBをばねSPのばね力に抗して上記距離Xが増大する方向に移動させる。そうすると、転動体RBの噛み込みは解除され、回転体RSは回転可能な状態となる(双方向フリー状態)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6064067号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したストッパは、回転駆動部材RDの操作によって回転体を回転可能な状態と停止状態とに容易に切り換えることができる。しかしながら、上述したストッパにおいては、カム体CBの姿勢を変更させるのに、歯車の噛み合いを利用している。そのため、回転駆動部材RDの操作量及び操作トルクが駆動歯車AGと従動歯車PGとの間の変速比に依存してしまう。つまり、駆動歯車AGによって従動歯車PGが減速されるときは、回転駆動部材RDの操作量は増大するがその操作トルクは低下し、増速されるときはその逆となり、操作性が良好でない。駆動歯車AGと従動歯車PGの歯数を同一にして上記変速を回避することも考えられるが、そうすると従動歯車PGが大きくなり、装置全体が大型化してしまう。また、歯車のバックラッシによって応答性が低下してしまうこともある。
本発明は、回転体を回転可能な状態と停止状態とに容易に切り換えることが可能なストッパを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題に鑑み、本発明は、一対の作動部材の各々をリンク片で接続すると共に、一対の作動部材のいずれか一方に回転駆動部材を連結し、回転駆動部材を回動させることで、一対の作動部材の各々を反対方向に回動させるようにしたものである。即ち、本発明は、
「回転体を回転可能な状態と停止状態とに切り換えるストッパであって、
前記回転体の外周を取り囲んで設置された固定部材を備え、
前記固定部材には、前記回転体の外周との距離が周方向に変化するカム面の形成された複数の空間部が設けられ、前記複数の空間部は、隣接する空間部において前記距離の増大する方向が相互に逆となるように設定されて、前記隣接する空間部が一対の組み合わせ空間部をなし、前記組み合わせ空間部が、複数、前記回転体の外周に配置され、
前記空間部の各々には、前記距離が減少する方向にばねにより押圧された転動体と、前記転動体を前記距離が増大する方向に移動させる押圧片とが設置され、さらに、前記押圧片を同時に作動させる操作手段が備えられており、
前記操作手段には、
前記回転体の外周に配置された複数の前記一対の組み合わせ空間部のそれぞれにおける、周方向片側の前記空間部に設置された前記押圧片の全てが、周方向他側の前記空間部に設置された前記押圧片の全てがそれぞれ固着されて、共に前記回転体の中心軸の回りを回動する一対の作動部材と、前記固定部材に固着された固定ピンを軸として回動し、前記一対の作動部材の各々を反対方向に回動させるよう前記一対の作動部材の各々に接続されたリンク片とが設けられると共に、前記一対の作動部材のいずれか一方に連結されてこれを回動させる回転駆動部材とが設けられている」
ことを特徴とするストッパとなっている。
【0009】
前記複数の組み合わせ空間部が、前記回転体の外周に均等な間隔で配置されているのがよい。
前記一対の作動部材の各々の間には、各々の前記作動部材に固着された前記押圧片が相互に接近する方向に、各々の前記作動部材を押圧する補助ばねが配置されているのがよい。
前記固定部材は、ハウジングと、前記ハウジングの内側に固定される固定リングとを含んでいるのがよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のストッパでは、回転体を取り囲む固定部材には、回転体の外周との距離が周方向に変化するカム面の形成された複数の空間部が設けられる。隣接する空間部は一対の組み合わせ空間部をなし、空間部の各々には、上記距離が減少する方向にばねにより押圧された転動体と、転動体を上記距離が増大する方向に移動させる押圧片とが設置され、全ての押圧片は操作手段によって同時に作動される。操作手段は、
回転体の外周に配置された複数の一対の組み合わせ空間部のそれぞれにおける、周方向片側の空間部に設置された押圧片の全てが、周方向他側の空間部に設置された押圧片の全てがそれぞれ固着されて、共に回転体の中心軸の周りを回動する一対の作動部材と、一対の作動部材の各々の姿勢を変えるための回転駆動部材とを備えており、回転駆動部材は片側操作位置と他側操作位置との間で移動可能である。
こうした点は、
図11等に記載した従来のストッパと同じであるが、本発明においては、一対の作動部材の各々はリンク片で接続されていると共に、一対の作動部材のいずれか一方が回転駆動部材に連結されている。
【0011】
本発明のストッパの作動も、基本的には従来のストッパと同様である。回転駆動部材の位置が上記片側操作位置にあるとき、つまり後述する
図2(a)で示す状態にあるときにおいては、押圧片は転動体から離隔し、転動体はばねによって上記距離の減少する方向に押圧され、カム面と回転体との間で噛み込み、回転体は、回転不能な状態となる。一方、回転駆動部材の位置が上記他側操作位置にあるとき、つまり後述する
図2(b)で示す状態においては、押圧片は転動体と当接して、これをばねの押圧力に抗して上記距離の増大する方向に移動させ、回転体は回転可能な状態となる。
【0012】
ここで、本発明のストッパにあっては、一対の作動部材の各々は固定部材に固着された固定ピンを軸として回動可能なリンク片を介して接続され、一対の作動部材のいずれか一方には回転駆動部材が連結されている。そのため、回転駆動部材が回動すると、一対の作動部材の各々はリンク機構によって同時に反対方向に回動される。このとき、回転駆動部材に入力された操作量は何らの変速機構を介さず一対の作動部材に直接伝達されるため、変速比に起因して操作性が不良となることもなく、また、回転駆動部材から一対の作動部材の各々へは何らの歯車機構も用いられていないことから、バックラッシも存在せず応答性が良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のストッパの実施例の全体的な構造を示す図である。
【
図2】
図1に示すストッパの各部断面を示す図である。
【
図3】
図1に示すストッパを構成する部品の組み立て図である。
【
図4】
図2(b)のC−C断面における組み合わせ空間部の一つを拡大した図である。
【
図5】
図1に示すストッパのハウジングの単体図である。
【
図6】
図1に示すストッパの固定リングの単体図である。
【
図7】
図1に示すストッパの回転体の単体図である。
【
図8】
図1に示すストッパの作動部材の単体図である。
【
図9】
図1に示すストッパのリンク片を拡大して示す図である。
【
図10】
図1に示すストッパの回転駆動部材の単体図である。
【
図11】出願人が創案した従来のストッパの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて、回転体を回転可能な状態と停止状態とに切り換える本発明のストッパについて説明する。
図1及び
図2には、本発明のストッパの全体図を示し、
図4には、主要な構成部品の組み立て図を斜視図によって示し、
図5乃至
図10には、主要な構成部品を単品で夫々示す。
【0015】
図1乃至
図3に示すように、本実施例のストッパは固定部材2を備え、固定部材2の内側には、回転可能な状態と、停止状態とに切り換える対象物である回転体4と、回転体4の動作状態を切り換える転動体6と、転動体6を押圧するばね7と、ばね7の押圧に抗して転動体6を作動させる押圧片8と、押圧片8を作動させる操作手段10とが配設されている。
【0016】
固定部材2は、合成樹脂製のハウジング12と、これの内側に固定される金属製の固定リング14とを含んでいる。主に
図5を参照して説明すると、ハウジング12は、略円環板形状の基板16と、基板16の外周縁からこれに対して垂直に延びる円筒形状の外周壁18とを有している。外周壁18の内側における基板16の径方向中間部には、一点鎖線c1で示す比較的小径の仮想円上に等角度間隔をおいて配置された3個の内側ピン20と、一点鎖線c2で示す比較的大径の仮想円上に等角度間隔をおいて配置された6個の外側ピン22とが夫々設けられている。内側ピン20と外側ピン22は共に断面円形であるが、外側ピン22は内側ピン20に比べて径が大きく且つ長い。基板16の径方向中間部には更に、環状突条24も同心上に3つ形成されている。基板16の外周縁部には、周方向に等角度間隔をおいて3個の貫通穴部26が形成されている。貫通穴部26は何れも周方向に延在する略矩形形状であって、半径方向外側に位置する辺は外周壁18の内周面を超えて半径方向外側に位置している。外周壁18の内周面には、貫通穴部26の半径方向外側に位置する辺から外周壁18の自由端縁に向かって直線状に延びる溝28が形成されている。溝28の周方向中央部分における外周壁18の自由端縁部には、半径方向内側に僅かに延びる爪部30が形成されている。外周壁18の自由端縁部の内径は、溝28が形成された部分を除いて幾分拡径されており、円弧形状の肩部32が複数形成されている。外周壁18の自由端縁部の周方向所定角度領域には切欠き34が形成されている。切欠き34には係合突出部36が付設されており、これには径方向内側を向いた係合凹部36aが設けられている。外周壁18の基端部の外周面には、周方向に等角度間隔をおいて3個の耳部38が固着されている。耳部38の中央部には本発明のストッパが取り付けられるための装着穴40が形成されている。
【0017】
図6を参照して説明を続けると、固定リング14の外周は円形である。一方、固定リング14の内周には、内側に向かって開放された凹部42が周方向に等角度間隔をおいて6個形成され、周方向に隣接する凹部42の間にはカム面43が形成されている。カム面43については後に更に言及する。
回転体4は金属製であり、
図7に示すとおり、共に円板形状であって同軸に固着された比較的大径の主部44と、比較的小径の軸部46とを有している。回転体4の中央には軸方向に貫通して延びる断面が非円形の軸孔47が形成されている。この軸孔47に例えばキャスタの回転軸が挿通される。
転動体6は金属製であり、
図3を参照することによって理解されるとおり、円柱形状のローラーである。所望ならば、転動体は球形状のボールであってもよい。
ここで、後述するとおり、転動体6は固定部材2のカム面43と回転体4との間で噛み込みを生じるため、固定部材2における少なくともカム面43が形成されている部位は金属製である必要がある。しかしながら、固定部材2全体を金属製とすると、装置全体の重量が著しく増大してしまう。そこで、図示の実施形態においては、固定部材2を合成樹脂製のハウジング12と金属製の固定リング14の2部品から構成されるようにし、装置全体の軽量化を図っている。
【0018】
次に、操作手段10について主に
図8乃至
図10を参照して説明する。操作手段10には、回転体4の中心軸oの周りを回動する一対の作動部材48(48a及び48b)と、固定部材2に固着された内側ピン20(固定ピン)を軸として回動するリンク片50とが設けられると共に、一対の作動部材48a及び48bのいずれか一方に連結される回転駆動部材52とが設けられている。
【0019】
図8(a)に示すとおり、作動部材48aは円環形状の主部54aを備え、主部54aの外周面には周方向に等角度間隔をおいて6個の押圧片8aが固着されている。押圧片8aは何れも主部54aに対して垂直に延びる棒状であって、その基端は主部54aと整合している。主部54aの径方向中間部は肉薄にされ、比較的大きい扇形状の穴部56aが周方向に等角度間隔をおいて3個形成されている。穴部56aの周方向片端に隣接する部位における主部54aの片側面には膨出部58aが配設され、この膨出部58aには周方向他側に突出する突出片60aが形成されている。突出片60aの断面は円形であり、先端部は半球形状に丸められている。主部54aの片側面において、周方向に見て隣接する2つの穴部56aの中央位置には夫々作動ピン62aが固着されている。夫々の作動ピン62aの径方向外側には比較的小さい扇形状の窓部64aが形成されている。
【0020】
図8(b)に示すとおり、作動部材48bは円環形状の主部54bを備え、主部54bの外周面には周方向に等角度間隔をおいて6個の押圧片8bが固着されている。押圧片8bは何れも主部54bに対して垂直に延びる棒状であって、その基端は同図中央に示すA−A断面図において主部54aよりも幾分左側に位置している。主部54bの径方向中間部は肉薄にされ、比較的大きい扇形状の穴部56bが周方向に等角度間隔をおいて3個形成されている。穴部56bの周方向他端に隣接する部位における主部54bの両側面には膨出部58bが配設され、この膨出部58bには周方向片側に突出する突出片60bが形成されている。突出片60bの断面は円形であり、先端部は半球形状に丸められている。主部54bの径方向中間部において、周方向に見て隣接する2つの穴部56bの中央位置には夫々比較的小さい扇形状の窓部64bが形成されている。夫々の窓部64bの径方向外側における主部54bの片側面には作動ピン62bが形成されている。
【0021】
リンク片50は、
図9に示すとおり、長円形であって、中央に円形の中央孔66が、長径方向両端部には長穴68が夫々形成されている。
【0022】
図10に示すとおり、回転駆動部材52は円環板形状の主部70と、主部70の周方向所定角度位置において径方向外側に延びるレバー部72とを備えている。主部70の片側面には、環状突条74が同心上に3つ形成されている。最も外側に位置する環状突条74上には、周方向に等角度間隔をおいて6個の受け穴部76が形成されている。レバー部72との接続部近傍における主部70の片側面には、周方向に間隔をおいて一対の係止突部78が形成されている。一対の係止突部78には、
図2に示す弾性体80が係止されている。弾性体80は金属製の長板を所要形状に変形させたものであって、周方向中央には径方向外方に向かって突出する突部80aが形成されている。主部70の他側面における外周縁部には、円弧状の段部82が形成されている。
【0023】
図1乃至
図4を参照して説明を続けると、上述した各構成部品は例えば以下のようにして組み合わされる。
まず、ハウジング12に固定リング14が組み合わされる。この際には、外側ピン22が凹部42に嵌め合わされ、固定リング14はハウジング12に対して相対回転不能となる。次いで、一対の作動部材48a及び48bが固定リング14の内側に配置される。この際には、作動部材48aがハウジング12の基板16と軸方向に見て隣接するようにして、一対の作動部材48a及び48bが重ねて設置される。そうすると、膨出部58aが穴部56bに挿通されて突出片60aと突出片60bとが周方向に対向すると共に、作動ピン62aが窓部64bに挿通される。また、押圧片8aと押圧片8bとは周方向に隣接して位置することとなる。その後に、補助ばね84とリンク片50が配設される。補助ばね84の両端が突出片60a及び突出片60bに夫々接続され、押圧片8a及び8bが相互に接近する方向に、一対の作動部材48a及び48bの各々を周方向に相互に押圧する。リンク片50は、中央孔66にハウジング12の内側ピン22が挿通されると共に、長径68の各々に作動ピン62a及び62bの各々が挿通される。
【0024】
次いで、回転体4が、軸部46が一対の作動部材48a及び48bの中央孔に挿通されるようにして固定リング14の内側に配設される。そうすると、
図4に示すとおり、固定リング14(固定部材2)には、回転体4の外周との距離Xが周方向に変化するカム面43の形成された複数(図示の実施形態においては12個)の空間部86が設けられ、複数の空間部86は、隣接する空間部86において距離Xの増大する方向が相互に逆となるように設定されて、隣接する空間部86が一対の組み合わせ空間部88をなし、組み合わせ空間部88が、複数(図示の実施形態においては6個)、回転体4の外周に均等な間隔で配置されることとなる。その後に、空間部86の各々に、転動体6及びばね7が配置される。かくして、空間部86の各々には、距離Xが減少する方向にばね7により押圧された転動体6と、転動体6を距離Xが増大する方向に移動させる押圧片8とが設置されることとなる。
つまり、回転体4の外周に配置された複数の一対の組み合わせ空間部88のそれぞれにおける、図2のC−C断面図及び図4において時計方向下流側(周方向片側)の空間部86に設置された押圧片8aの全ては作動部材48aに、同図において時計方向上流側(周方向他側)の空間部86に設置された押圧片8bの全ては作動部材48bにそれぞれ固着されてい
る。
【0025】
その後に、(弾性体80と共に)回転駆動部材52がハウジング12に組み合わされる。この際には、
図1に示されるとおり、レバー部72が切欠き34と整合した状態で、主部70の外周縁部が外周壁18の肩部32と対向し且つ主部70の段部82に外周壁18の爪部30が係合され、回転駆動部材52はハウジング12に対して所定角度範囲内において回動可能となる。このとき更に、作動部材48aに固着された押圧片8aの先端部が受け穴部76に夫々挿通され、回転駆動部材52と作動部材48aとは一体的に回動可能となる。所望ならば、穴部76の位置を適宜変更して、作動部材48bに固着された押圧片8bの先端部が穴部76に挿通されるようにして、回転駆動部材52と作動部材48bとが一体的に回動可能となるようにしてもよい。
【0026】
次いで、本発明のストッパの作動について、主に
図2を参照して説明を続ける。
本発明のストッパは、例えば上述したとおりにして組み合わされることで、回転駆動部材52は
図2(a)に示す片側操作位置と、
図2(b)に示す他側操作位置との間で移動可能となる。
【0027】
回転駆動部材52が片側操作位置にあるときには、
図2(a)のD−D断面図に示すとおり、リンク片50の姿勢は径方向と合致し、リンク片50を介して相互に接続された一対の作動部材48a及び48bの各々に固着された押圧片8a及び8bは相互に近接して位置する。従って、
図2(a)のC−C断面図に示すとおり、空間部86に配置された押圧片8a及び8bの夫々は転動体6から離隔し、転動体6はばね7によって距離Xの減少する方向に押圧され、カム面43と回転体4との間で噛み込み、回転体4は回転不能な状態となる。また、このとき、
図2(a)のB−B断面図に示すとおり、弾性体80の突部80aはハウジング12の係合突出部36に形成された係合凹部36aに弾性的に係合され、回転駆動部材52は片側操作位置で保持される。
【0028】
一方、回転駆動部材52が片側操作位置から他側操作位置に移動されると、回転駆動部材52と一体の作動部材48aは周方向片側に回動されると共に、これにリンク片50を介して接続された作動部材48bは周方向他側に回動される(つまり、一対の作動部材48a及び48bの各々は反対方向に回動する)。これにより、
図2(b)のD−D断面図に示すとおり、リンク片50は径方向に対して傾斜し、一対の作動部材48a及び48bの各々に固着された押圧片8a及び8bは相互に離隔して位置することとなる。従って、
図2(b)のC−C断面図に示すとおり、空間部86に配置された押圧片8a及び8bの夫々は転動体6と当接して、これをばね7の押圧力に抗して距離Xの増大する方向に移動させ、回転体4は回転可能な状態となる。また、このとき、
図2(b)のB−B断面図に示すとおり、弾性体80の突部80aがハウジング12の係合突出部36を弾性的に乗り越えると共に、レバー部72が切欠き34の周方向端縁にて外周壁18と当接することで、回転駆動部材52は他側操作位置で保持される。ここで、図示の実施形態においては、
図2のD−D断面図に示すとおり、補助ばね84が突出片60aと突出片60bとの間に配設され、補助ばね84が一対の作動部材48a及び48bの各々を相互に離隔する方向に押圧しているため、操作手段10を操作した際の節度感が良好なものとなる。
【0029】
このように、本発明のストッパにおいては、一対の作動部材48a及び48bの各々は固定部材2に固着された内側ピン20(固定ピン)を軸として回動可能なリンク片50を介して接続され、作動部材48aには回転駆動部材52が連結されている。そのため、回転駆動部材52が回動されると、一対の作動部材48a及び48bの各々はリンク機構によって同時に反対方向に回動される。このとき、回転駆動部材52に入力された操作量は何らの変速機構を介さず一対の作動部材48a及び48bに直接伝達されるため、変速比に起因して操作性が不良となることもなく、また、回転駆動部材52から一対の作動部材48a及び48bの各々へは何らの歯車機構も用いられていないことから、バックラッシも存在せず応答性が良好となる。
【符号の説明】
【0030】
2:固定部材
4:回転体
6:転動体
7:ばね
8a及び8b:押圧片
10:操作手段
12:ハウジング
14:固定リング
20:内側ピン(固定ピン)
43:カム面
48a及び48b:一対の作動部材
50:リンク片
52:回転駆動部材
86:空間部
88:組み合わせ空間部
【要約】 (修正有)
【課題】回転体を回転可能な状態と停止状態とに容易に切り換えることが可能なストッパを提供すること。
【解決手段】一対の作動部材48bの各々をリンク片50で接続すると共に、一対の作動部材48bのいずれか一方に回転駆動部材52を連結し、回転駆動部材52を回動させることで、一対の作動部材48bの各々を反対方向に回動させるようにする。
【選択図】
図2