【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
後述する製造例で得られた積層樹脂の物性測定、および実施例ならびに比較例で得られた合成樹脂積層体の評価は、以下のように行った。
【0046】
<AlとSiO
2の蒸着>
電子銃/抵抗加熱蒸着装置 BMC−800T(河合光学製)を使用し、基材層(A)にアルゴンでRFプラズマ処理後、Alを100μm蒸着し、さらにSiO
2を20μm蒸着した。その蒸着品についてLyssy水蒸気透過率計 L80−5000(PBI Dansenor製)を使用し、水蒸気透過率の測定を行うと水蒸気透過率0.2g/m
2・dayであり、タッチパネル用のセンサーを貼り合せた時とほぼ同様な値を示した。
【0047】
<85℃環境下の引張弾性率>
軸径50mmの単軸押出機にアダプター、Tダイとを有する単層押出装置を用いて、高硬度層と基材層の各種材料から、厚さが1mmの合成樹脂単層体をそれぞれ成形し、成形品の中央部でダンベル試験片を作成した。ダンベル試験片は23℃水中に3日間水漬けした後、水分を拭き取り、冷凍機式高温高湿槽を付属したオートグラフAGS−5kNX(島津製作所製)を使用して、85℃でJISK−7161記載の引張試験方法に準拠して、引張弾性率を測定した。
【0048】
<カール形状の評価(曲率半径Rと凹凸の方向)>
高温高湿環境に放置した後の積層体はカール形状をしているため、カールの形状を曲率半径と凹凸の方向を高硬度層(B)側を凸、又は基材層(A)側を凸で評価した。曲率半径(m)={弧長[m](=試験片の長さ)}
2/(8×矢高さ[m])と定義した。
【0049】
<高温高湿環境下に放置した後のカール形状の評価>
試験片を10cm×6cm四方に切り出した。試験片を2点支持型のホルダーにセットして温度23℃、相対湿度50%に設定した環境試験機に24時間以上投入して状態調整した後、ホルダーを温度85℃、相対湿度85%に設定した環境試験機の中に投入し、その状態で120時間保持した。さらに温度23℃、相対湿度50%に設定した環境試験機の中にホルダーごと移動し、その状態で4時間保持後にh(=矢高さ[m])を測定した。 矢高さの測定には、電動ステージ具備の3次元形状測定機を使用し、取り出した試験片を上に凸の状態で水平に静置し、1mm間隔でスキャンし、中央部の盛り上がりを矢高さとして測定し、(曲率半径[m])={0.116(=弧長[m])}
2/(8×h[m])でカールの形状を積層体のみとAlとSiO
2の蒸着した積層体(蒸着品)で評価した。
(積層体のみの場合)
良好(合格):高硬度層側を凸に、曲率半径R≧2.0mとなる。
不良(不合格):上記の範囲以外。
(蒸着品の場合)
良好(合格):高硬度層凸側を凸に、曲率半径R≧3.2mとなる。または、基材層側を凸に、曲率半径R≧3.2mとなる。
不良(不合格):上記の範囲以外。
【0050】
<鉛筆引っかき硬度試験>
JIS K 5600−5−4に準拠し、表面に対して角度45度、荷重750gで基材層(樹脂(A)の層)の表面に次第に硬度を増して鉛筆を押し付け、傷跡を生じなかった最も硬い鉛筆の硬度を鉛筆硬度として評価した。
(積層体のみの場合)
良好(合格):鉛筆硬度F以上。
不良(不合格):上記の範囲以外。
(塗装品の場合)
良好(合格):鉛筆硬度2H以上。
不良(不合格):上記の範囲以外。
【0051】
<各種材料例>
熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)について、下記に示す材料を例示するが、これに限定されるわけではない。
A1:ポリカーボネート樹脂:三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製ユーピロンS−1000
S−1000を用いた厚さが1mmの合成樹脂単層体の85℃環境下の引張弾性率は1977MPaであった。
B1:特定の芳香族ビニル−(メタ)アクリル酸エステル−不飽和ジカルボン酸共重合体:電気化学工業(株)R−200
B2:特定の芳香族ビニル−(メタ)アクリル酸エステル−不飽和ジカルボン酸共重合体:電気化学工業(株)R−100
B3:ビニル系単量体を含有する樹脂:クラレ(株)製メチルメタクリレート樹脂パラペットHR−L
B4:(メタ)アクリル酸エステルと脂肪族ビニルを構成単位とする樹脂:合成樹脂(D12)
【0052】
製造例1〔樹脂(B11)ペレットの製造〕
芳香族ビニル−(メタ)アクリル酸エステル−不飽和ジカルボン酸共重合体(b1)としてR−200(電気化学工業製、重量平均分子量:185,000、芳香族ビニル単量体:(メタ)アクリル酸エステル単量体:不飽和ジカルボン酸無水物単量体の比=55:25:20)50質量%と、ビニル系単量体を構成単位とする樹脂(b2)であるメチルメタクリレート樹脂としてパラペットHR−L(クラレ製)50質量%と、りん系添加剤PEP36(ADEKA製) 500ppm、およびステアリン酸モノグリセリド(製品名:H−100、理研ビタミン製) 0.2%を仕込みブレンダーで20分混合後、スクリュー径26mmの2軸押出機(東芝機械製、TEM−26SS、L/D≒40)を用い、シリンダー温度240℃で溶融混錬して、ストランド状に押出してペレタイザーでペレット化した。ペレットは安定して製造できた。
上記のペレットを用いた厚さが1mmの合成樹脂単層体の85℃環境下の引張弾性率は1716MPaであった。
【0053】
製造例2〔樹脂(B12)ペレットの製造〕
特定の芳香族ビニル−(メタ)アクリル酸エステル−不飽和ジカルボン酸共重合体(b1)としてR−200を60質量%と、ビニル系単量体を構成単位とする樹脂(b2)であるメチルメタクリレート樹脂としてパラペットHR−Lを40質量%と、りん系添加剤PEP36を500ppmおよびステアリン酸モノグリセリドを0.2%にし、製造例1と同様に混合、ペレット化を行った。ペレットは安定して製造できた。
上記のペレットを用いた厚さが1mmの合成樹脂単層体の85℃環境下の引張弾性率は1891MPaであった。
【0054】
製造例3〔樹脂(B13)ペレットの製造〕
特定の芳香族ビニル−(メタ)アクリル酸エステル−不飽和ジカルボン酸共重合体(b1)としてR−200を70質量%と、ビニル系単量体を構成単位とする樹脂(b2)であるメチルメタクリレート樹脂としてパラペットHR−Lを30質量%と、りん系添加剤PEP36を500ppmおよびステアリン酸モノグリセリドを0.2%にし、製造例1と同様に混合、ペレット化を行った。ペレットは安定して製造できた。
上記のペレットを用いた厚さが1mmの合成樹脂単層体の85℃環境下の引張弾性率は1996MPaであった。
【0055】
製造例4〔樹脂(B14)ペレットの製造〕
特定の芳香族ビニル−(メタ)アクリル酸エステル−不飽和ジカルボン酸共重合体(b1)としてR−100(電気化学工業製、重量平均分子量:170,000、芳香族ビニル単量体:(メタ)アクリル酸エステル単量体:不飽和ジカルボン酸無水物単量体の比=65:20:15)65質量%と、ビニル系単量体を構成単位とする樹脂(b2)であるメチルメタクリレート樹脂としてパラペットHR−Lを35質量%と、りん系添加剤PEP36を500ppmおよびステアリン酸モノグリセリドを0.2%にし、製造例1と同様に混合、ペレット化を行った。ペレットは安定して製造できた。
上記のペレットを用いた厚さが1mmの合成樹脂単層体の85℃環境下の引張弾性率は1885MPaであった。
【0056】
製造例5〔樹脂(B15)ペレットの製造〕
特定の芳香族ビニル−(メタ)アクリル酸エステル−不飽和ジカルボン酸共重合体(b1)としてR−100を75質量%と、ビニル系単量体を構成単位とする樹脂(b2)であるメチルメタクリレート樹脂としてパラペットHR−Lを25質量%と、りん系添加剤PEP36を500ppmおよびステアリン酸モノグリセリドを0.2%にし、製造例1と同様に混合、ペレット化を行った。ペレットは安定して製造できた。
上記のペレットを用いた厚さが1mmの合成樹脂単層体の85℃環境下の引張弾性率は2089MPaであった。
【0057】
製造例6〔樹脂(B16)ペレットの製造〕
特定の芳香族ビニル−(メタ)アクリル酸エステル−不飽和ジカルボン酸共重合体(b1)としてR−100を85質量%と、ビニル系単量体を構成単位とする樹脂(b2)であるメチルメタクリレート樹脂としてパラペットHR−Lを15質量%と、りん系添加剤PEP36を500ppmおよびステアリン酸モノグリセリドを0.2%にし、製造例1と同様に混合、ペレット化を行った。ペレットは安定して製造できた。
上記のペレットを用いた厚さが1mmの合成樹脂単層体の85℃環境下の引張弾性率は2152MPaであった。
【0058】
製造例7〔高硬度層に被覆する光硬化性樹脂組成物(C11)の製造〕
撹拌翼を備えた混合槽に、トリス(2−アクロキシエチル)イソシアヌレート(Aldrich社製)60質量部と、ネオペンチルグリコールオリゴアクリレート(大阪有機化学工業社製、商品名:215D)40質量部と、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン社製、商品名:DAROCUR TPO)1質量部と、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Aldrich社製)0.3質量部と、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(チバ・ジャパン社製、商品名:TINUVIN234)1質量部からなる組成物を導入し、40℃に保持しながら1時間撹拌して光硬化性樹脂組成物(C11:後述の表1参照)を得た。
【0059】
製造例8〔ポリカーボネート基材層に被覆する光硬化性樹脂組成物(C12)の製造〕
撹拌翼を備えた混合槽に、1,9−ノナンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業社製、商品名:ビスコート#260)40質量部と、6官能ウレタンアクリレートオリゴマー(新中村化学工業社製、商品名:U−6HA)40質量部と、コハク酸/トリメチロールエタン/アクリル酸のモル比が1/2/4である縮合物20質量部と、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン社製、商品名:DAROCUR TPO)2.8質量部と、ベンゾフェノン(Aldrich社製)1質量部と、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(チバ・ジャパン社製、商品名:TINUVIN234)1質量部からなる組成物を導入し、40℃に保持しながら1時間撹拌して光硬化性樹脂組成物(C12)を得た。
【0060】
比較製造例1〔樹脂(D11)ペレットの製造〕
パラペットHR−L100質量%と、りん系添加剤PEP36を500ppm、およびステアリン酸モノグリセリドを0.2%にし、製造例1と同様に混合、ペレット化を行った。ペレットは安定して製造できた。
上記のペレットを用いた厚さが1mmの合成樹脂単層体の85℃環境下の引張弾性率は1015MPaであった。
【0061】
比較製造例2〔樹脂(D12)ペレットの製造〕
メタクリル酸メチル酸メチル(三菱ガス化学製)77.000モル%とスチレン(和光純薬工業製)22.998モル%と、重合開始剤としてt−アルミパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(アルケマ吉富製、商品名:ルぺロックス575)0.002モル%からなる混合液を、ヘルカルリボン翼付き10L完全混合層に1kg/hで連続的に供給し、平均滞留時間2.5時間、重合温度150℃で連続重合を行い、重合槽の液面が一定となるように底部から連続抜き出し、脱溶媒装置に導入してペレット状のビニル共重合樹脂を得た。そのビニル共重合樹脂をイソ酪酸メチル(関東化学製)に溶解し、10質量%イソ酪酸メチル溶液を調製した。1000mLオートクレーブ装置に10質量%イソ酪酸メチル溶液を500質量部、10質量%Pd/C(NEケムキャット製)を1質量部仕込み、水素圧9MPa、200℃で15時間保持して、ビニル共重合樹脂の芳香族二重結合部位を水素化した。フィルターにより触媒を除去し、脱溶剤装置に導入して得られたペレットとりん系添加剤PEP36を500ppmおよびステアリン酸モノグリセリドを製造例1と同様に混合、ペレット化を行った。ペレットは安定して製造できた。
上記のペレットを用いた厚さが1mmの合成樹脂単層体の85℃環境下の引張弾性率は1527MPaであった。
【0062】
実施例1
軸径32mmの単軸押出機と、軸径65mmの単軸押出機と、全押出機に連結されたフィードブロックと、フィードブロックに連結されたTダイとを有する多層押出機に各押出機と連結したマルチマニホールドダイとを有する多層押出装置を用いて合成樹脂積層体を成形した。軸径32mmの単軸押出機に製造例1で得た樹脂(B11)を連続的に導入し、シリンダー温度240℃、吐出量を2.1kg/hの条件で押し出した。また軸径65mmの単軸押出機にポリカーボネート樹脂(A1)(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、商品名:ユーピロンS−1000、重量平均分子量:27,000)を連続的に導入し、シリンダー温度270℃、吐出量を30.0kg/hで押し出した。全押出機に連結されたフィードブロックは2種2層の分配ピンを備え、温度270℃にして(B11)と(A1)を導入し積層した。その先に連結された温度270℃のTダイでシート状に押し出し、上流側から温度130℃、140℃、180℃とした3本の鏡面仕上げロールで鏡面を転写しながら冷却し、(B11)と(A1)の積層体(E11)を得た。得られた積層体(E11)の全体厚みは1.0mm、(B11)から成る層の厚みは中央付近で60μmであった。鉛筆引っかき硬度試験の結果はHで合格であり、高温高湿環境下に放置した後のカール形状の評価は、積層体のみでは、高硬度層側を凸に曲率半径が42.5m>R≧11.6mで合格であり、蒸着品では、基材層側を凸に曲率半径が20.3m>R≧14.2mで合格であり、総合判定で合格であった。
【0063】
実施例2
実施例1で使用した高硬度層(B11)の吐出量を3.5kg/hとし、ポリカーボネート樹脂(A1)の吐出量を28.7kg/hとした以外は、実施例1と同様として(B11)と(A1)の積層体(E12)を得た。得られた積層体の全体厚みは1.0mm、(B11)から成る層の厚みは中央付近で100μmであった。鉛筆引っかき硬度試験の結果はHで合格であり、高温高湿環境下に放置した後のカール形状の評価は、積層体のみでは、高硬度層凸側を凸に曲率半径が5.9m>R≧2.7mで合格であり、蒸着品では、高硬度層側を凸に曲率半径が17.1m>R≧9.9mで合格であり、総合判定で合格であった。
【0064】
実施例3
高硬度層を製造例2で得た樹脂(B12)とした以外は、実施例1と同様にして(B12)と(A1)の積層体(E13)を得た。得られた積層体の全体厚みは1.0mm、(B12)から成る層の厚みは中央付近で60μmであった。鉛筆引っかき硬度試験の結果はHで合格であり、高温高湿環境下に放置した後のカール形状の評価は、積層体のみでは、高硬度層側を凸に曲率半径が3.7m>R≧2.4mで合格であり、蒸着品では、基材層側を凸に曲率半径が79.1m>R≧26.4mで合格であり、総合判定で合格であった。
【0065】
実施例4
高硬度層を製造例3で得た樹脂(B13)とした以外は、実施例1と同様にして(B13)と(A1)の積層体(E14)を得た。得られた積層体の全体厚みは1.0mm、(B13)から成る層の厚みは中央付近で60μmであった。鉛筆引っかき硬度試験の結果はHで合格であり、高温高湿環境下に放置した後のカール形状の評価は、積層体のみでは、高硬度層側を凸に曲率半径が4.1m>R≧2.0mで合格であり、蒸着品では、高硬度側を凸に曲率半径が16.9m>R≧9.1mで合格であり、総合判定で合格であった。
【0066】
実施例5
高硬度層を製造例4で得た樹脂(B14)とした以外は、実施例1と同様にして(B14)と(A1)の積層体(E15)を得た。得られた積層体の全体厚みは1.0mm、(B14)から成る層の厚みは中央付近で60μmであった。鉛筆引っかき硬度試験の結果はFで合格であり、高温高湿環境下に放置した後のカール形状の評価は、積層体のみでは、高硬度側を凸に曲率半径が27.5m>R≧20.7mで合格であり、蒸着品では、基材層側を凸に曲率半径が4.6m>R≧3.3mで合格であり、総合判定で合格であった。
【0067】
実施例6
高硬度層を製造例4で得た樹脂(B14)とした以外は、実施例2と同様にして(B14)と(A1)の積層体(E16)を得た。得られた積層体の全体厚みは1.0mm、(B14)から成る層の厚みは中央付近で100μmであった。鉛筆引っかき硬度試験の結果はFで合格であり、高温高湿環境下に放置した後のカール形状の評価は、積層体のみでは、高硬度層側を凸に曲率半径が63.0m>R≧9.5mで合格であり、蒸着品では、基材層側を凸に曲率半径が5.1m>R≧3.8mで合格であり、総合判定で合格であった。
【0068】
実施例7
高硬度層を製造例5で得た樹脂(B15)とした以外は、実施例1と同様にして(B15)と(A1)の積層体(E17)を得た。得られた積層体の全体厚みは1.0mm、(B15)から成る層の厚みは中央付近で60μmであった。鉛筆引っかき硬度試験の結果はFで合格であり、高温高湿環境下に放置した後のカール形状の評価は、積層体のみでは、高硬度層側を凸に曲率半径が41.5m>R≧7.5mで合格であり、蒸着品では、基材層側を凸に曲率半径が10.8m>R≧6.1mで合格であり、総合判定で合格であった。
【0069】
実施例8
高硬度層を製造例5で得た樹脂(B15)とした以外は、実施例2と同様にして(B15)と(A1)の積層体(E18)を得た。得られた積層体の全体厚みは1.0mm、(B15)から成る層の厚みは中央付近で100μmであった。鉛筆引っかき硬度試験の結果はFで合格であり、高温高湿環境下に放置した後のカール形状の評価は、積層体のみでは、高硬度層側を凸に曲率半径が8.5m>R≧3.4mで合格であり、蒸着品では、高硬度層側を凸に曲率半径が77.3m>R≧10.4mで合格であり、総合判定で合格であった。
【0070】
実施例9
高硬度層を製造例6で得た樹脂(B16)とした以外は、実施例1と同様にして(B16)と(A1)の積層体(E19)を得た。得られた積層体の全体厚みは1.0mm、(B16)から成る層の厚みは中央付近で60μmであった。鉛筆引っかき硬度試験の結果はFで合格であり、高温高湿環境下に放置した後のカール形状の評価は、積層体のみでは、高硬度層側を凸に曲率半径が16.4m>R≧4.8mで合格であり、蒸着品では、基材層側を凸に曲率半径が18.5m>R≧11.8mで合格であり、総合判定で合格であった。
【0071】
実施例10
高硬度層を製造例6で得た樹脂(B16)とした以外は、実施例2と同様にして(B16)と(A1)の積層体(E20)を得た。得られた積層体の全体厚みは1.0mm、(B16)から成る層の厚みは中央付近で100μmであった。鉛筆引っかき硬度試験の結果はFで合格であり、高温高湿環境下に放置した後のカール形状の評価は、積層体のみでは、高硬度層側を凸に曲率半径が7.6m>R≧3.4mで合格であり、蒸着品では、高硬度層側を凸に曲率半径が26.6m>R≧11.3mで合格であり、総合判定で合格であった。
【0072】
実施例11
実施例3で得た積層体(E13)の高硬度層(B12)上に、製造例7で得た光硬化性樹脂組成物(C11)を硬化後の塗膜厚さが3〜8μmとなるようバーコーターを用いて塗布しPETフィルムで覆って圧着し、また(A1)から成る基材層上に製造例8で得た光硬化性樹脂組成物(C12)を硬化後の塗膜厚さが3〜8μmとなるようバーコーターを用いて塗布しPETフィルムで覆って圧着した。続いて、光源距離12cm、出力80W/cmの高圧水銀灯を備えたコンベアでラインスピード1.5m/分の条件で紫外線を照射し硬化させてPETフィルムを剥離し、高硬度層および基材層上にそれぞれ(C11)および(C12)から成るハードコート層を備えた積層体(F11)を得た。鉛筆引っかき硬度試験の結果は3Hで合格であり、高温高湿環境下に放置した後のカール形状の評価は、積層体のみでは、高硬度層側を凸に曲率半径が9.4m>R≧3.3mで合格であり、蒸着品では、基材層側を凸に曲率半径が58.6m>R≧12.5mで合格であり、総合判定で合格であった。
【0073】
実施例12
高硬度層を製造例2で得た樹脂(B12)とし、ポリカーボネート樹脂(A1)の吐出量を20.4kg/hとした以外は、実施例1と同様にして(B12)と(A1)の積層体を得た。得られた積層体の全体厚みは0.7mm、(B12)から成る層の厚みは中央付近で60μmであった。得られた積層体以外は実施例11と同様として、高硬度層および基材層上にそれぞれ(C11)および(C12)から成るハードコート層を備えた積層体(F12)を得た。鉛筆引っかき硬度試験の結果は3Hで合格であり、高温高湿環境下に放置した後のカール形状の評価は、積層体のみでは、高硬度層側を凸に曲率半径が30.6m>R≧4.6mで合格であり、蒸着品では、高硬度層側を凸に曲率半径が18.4m>R≧5.3mで合格であり、総合判定で合格であった。
【0074】
比較例1
高硬度層を製造例2で得た樹脂(B12)とした以外は、実施例2と同様にして(B12)と(A1)の積層体(E21)を得た。得られた積層体の全体厚みは1.0mm、(B12)から成る層の厚みは中央付近で100μmであった。鉛筆引っかき硬度試験の結果はHで合格であり、高温高湿環境下に放置した後のカール形状の評価は、積層体のみでは、高硬度層側を凸に曲率半径が1.8m>R≧1.3mで不合格であり、蒸着品では、基材層側を凸に曲率半径が3.0m>R≧2.4mで不合格であり、総合判定で不合格であった。
【0075】
比較例2
高硬度層を製造例3で得た樹脂(B13)とした以外は、実施例2と同様にして(B13)と(A1)の積層体(E22)を得た。得られた積層体の全体厚みは1.0mm、(B13)から成る層の厚みは中央付近で100μmであった。鉛筆引っかき硬度試験の結果はHで合格であり、高温高湿環境下に放置した後のカール形状の評価は、積層体のみでは、高硬度層側を凸に曲率半径が1.6m>R≧1.0mで不合格であり、蒸着品では、基材層側を凸に曲率半径が2.4m>R≧2.2mで不合格であり、総合判定で不合格であった。
【0076】
比較例3
高硬度層を製造例2で得た樹脂(B12)とし、ポリカーボネート樹脂(A1)の吐出量を19.1kg/hとした以外は、実施例1と同様にして(B12)と(A1)の積層体(E23)を得た。得られた積層体の全体厚みは0.7mm、(B12)から成る層の厚みは中央付近で60μmであった。鉛筆引っかき硬度試験の結果はHで合格であり、高温高湿環境下に放置した後のカール形状の評価は、積層体のみでは、高硬度層側を凸に曲率半径が1.5m>R≧1.2mで不合格であり、蒸着品では、基材層側を凸に曲率半径が1.8m>R≧1.5mで不合格であり、総合判定で不合格であった。
【0077】
比較例4
高硬度層を製造例2で得た樹脂(B12)とし、ポリカーボネート樹脂(A1)の吐出量を19.1kg/hとした以外は、実施例1と同様にして(B12)と(A1)の積層体(E24)を得た。得られた積層体の全体厚みは0.7mm、(B12)から成る層の厚みは中央付近で100μmであった。鉛筆引っかき硬度試験の結果はHで合格であり、高温高湿環境下に放置した後のカール形状の評価は、積層体のみでは、高硬度層側を凸に曲率半径が1.3m>R≧0.9mで不合格であり、蒸着品でも、基材層側を凸に曲率半径が1.5m>R≧1.3mで不合格であり、総合判定で不合格であった。
【0078】
比較例5
比較例1で得た積層体(E21)に、実施例11と同様として、高硬度層および基材層上にそれぞれ(C11)および(C12)から成るハードコート層を積層させて積層体(F13)を得た。鉛筆引っかき硬度試験の結果は3Hで合格であり、高温高湿環境下に放置した後のカール形状の評価は、積層体のみでは、高硬度層側を凸に曲率半径が1.9m>R≧1.7mで不合格であり、蒸着品でも、高硬度層凸側を凸に曲率半径が3.0m>R≧2.7mで不合格であり、総合判定で不合格であった。
【0079】
比較例6
比較例4で得た積層体(E24)に、実施例11と同様として、高硬度層および基材層上にそれぞれ(C11)および(C12)から成るハードコート層を積層させて積層体(F14)を得た。鉛筆引っかき硬度試験の結果は3Hで合格であり、高温高湿環境下に放置した後のカール形状の評価は、積層体のみでは、高硬度層側を凸に曲率半径Rが1.8m>≧1.3mで不合格であり、蒸着品でも、高硬度層側を凸に曲率半径が2.0m>R≧1.5mで不合格であり、総合判定で不合格であった。
【0080】
比較例7
高硬度層を比較製造例1で得た樹脂(D11)とした以外は、実施例1と同様にして(D11)と(A1)の積層体を得た。得られた積層体の全体厚みは1.0mm、(D11)から成る層の厚みは中央付近で60μmであった。得られた積層体以外は実施例11と同様として、高硬度層および基材層上にそれぞれ(C11)および(C12)から成るハードコート層を備えた積層体(F15)を得た。鉛筆引っかき硬度試験の結果は4Hで合格であり、高温高湿環境下に放置した後のカール形状の評価は、積層体のみでは、基材層側を凸に曲率半径が1.5m>R≧1.2mで不合格であり、蒸着品でも、基材層側を凸に曲率半径が1.1m>R≧0.9mで不合格であり、総合判定で不合格であった。
【0081】
比較例8
高硬度層を比較製造例2で得た樹脂(D12)とした以外は、実施例1と同様にして(D12)と(A1)の積層体を得た。得られた積層体の全体厚みは1.0mm、(D12)から成る層の厚みは中央付近で60μmであった。得られた積層体に、実施例11と同様として、高硬度層および基材層上にそれぞれ(C11)および(C12)から成るハードコート層を積層させて積層体(F16)を得た。鉛筆引っかき硬度試験の結果は4Hで合格であり、高温高湿環境下に放置した後のカール形状の評価は、積層体のみでは、基材層側を凸に曲率半径が36.1m>R≧15.7mで不合格であり、蒸着品でも、高硬度層側を凸に曲率半径が3.0m>R≧2.1mで不合格であり、総合判定で不合格であった。
【0082】
実施例及び比較例、表1により、i)高硬度層(B)の鉛筆硬度がF以上であり、ii)積層体のみの高温高湿環境下に放置した後のカール形状が高硬度層(B)側を凸に曲率半径R≧2.0mとなる合成樹脂積層体が、水蒸気透過率を低下させるAl+SiO2蒸着した積層体の高温高湿環境下に放置した後のカール形状が高硬度層(B)側を凸、又は基材層(A)側を凸に曲率半径R≧3.2mに収めることが確認された。
【表1】
【0083】
以上のように、本発明の合成樹脂積層体は、高硬度と基材層とが積層されていて、基材層側の水蒸気透過率が小さい状態において、高温高湿環境下に放置した後のカールを抑制する特徴を有する。例えば、
図1(A)に示すように、基材層22と表層24(高硬度層)とハードコート層28を積層させた本発明の合成樹脂積層体20は、そのままの状態で高温高湿環境下におくと、表層24(高硬度層)を凸とするように、若干のカールを生じる。そして
図1(B)に示すように、合成樹脂積層体20をITO層26に張り合わせた状態で高温高湿環境下におくと、基材層22側と表層24(高硬度層)側との水蒸気透過率に差が生じる結果、カールの発生を大幅に抑制することができる。なお、
図1中の矢印の大きさは、水蒸気透過率の値を概略的に示しており、大きい矢印が付されている部材は、水蒸気透過率が高いことを意味する。
一方、例えば、
図2(A)に示すように、従来例の合成樹脂積層体10では、そのままの状態で高温高湿環境下に放置した後、基材層12を凸とするようにカールが生じる。このような従来例の合成樹脂積層体10をITO層16に張り合わせた状態で高温高湿環境下に放置した後、
図2(B)に示すように、大きなカールが発生してしまう。この結果、合成樹脂積層体10を含む部材の表面の外観を損なう上に、長期的には、合成樹脂積層体10がITO層16から剥離してしまう可能性が高まる。
また、基材層と表層(高硬度層)の引張弾性率を高くし、かつ、基材層の引張弾性率の値と表層(高硬度層)の引張弾性率の値との差を小さく抑えた各実施例においては、上述のように良好な結果が認められるのに対し、引張弾性率の値の低い表層(高硬度層)を採用し、基材層の引張弾性率の値と表層(高硬度層)の引張弾性率の値との差が大きい比較例7および8においては、特に、高温高湿環境下に放置後の積層体のカールが大きくなった。