特許第6630770号(P6630770)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6630770保護セラミックコーティングを有するセラミックス基複合材料(CMC)の処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6630770
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】保護セラミックコーティングを有するセラミックス基複合材料(CMC)の処理方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 41/87 20060101AFI20200106BHJP
   C04B 35/80 20060101ALI20200106BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20200106BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20200106BHJP
【FI】
   C04B41/87 M
   C04B35/80 600
   F02C7/00 C
   F02C7/00 D
   F01D25/00 L
【請求項の数】20
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-79603(P2018-79603)
(22)【出願日】2018年4月18日
(65)【公開番号】特開2018-177635(P2018-177635A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2018年6月8日
(31)【優先権主張番号】62/487,284
(32)【優先日】2017年4月19日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/589,181
(32)【優先日】2017年11月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516257383
【氏名又は名称】ロールス−ロイス ハイ テンペラチャー コンポジッツ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スンボ シム
【審査官】 小川 武
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−130056(JP,A)
【文献】 特開2017−024978(JP,A)
【文献】 特開2007−119333(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0159066(US,A1)
【文献】 特表2012−510890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00−35/84、41/80−41/91
F01D 25/00
F02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護セラミックコーティングを有するセラミックス基複合材料の製造方法であって、
粒子状物質を充填したセラミック繊維骨格を含む含浸繊維プリフォームの外表面上に第1の表面スラリーを塗布するステップであって、第1の表面スラリーがケイ素を含む流動性プレセラミックポリマー中に分散したセラミック固体粒子を含むステップ、
流動性プレセラミックポリマーを硬化させて複合層を外表面上に形成するステップであって、複合層が、セラミック固体粒子が分散された硬化したプレセラミックポリマーを含むステップ、
硬化したプレセラミックポリマーを熱分解して外表面上に炭化ケイ素を含む多孔質セラミック層を形成するステップ、
含浸繊維プリフォーム及び多孔質セラミック層にケイ素を含む溶融材料を浸透させるステップ、並びに
浸透後、溶融材料を冷却して、それによって保護セラミックコーティングを上に有するセラミックス基複合体を形成するステップ
を含む方法。
【請求項2】
第1の表面スラリーを塗布する前に、外表面上に炭素繊維ベールを配置するステップをさらに含み、外表面に第1の表面スラリーを塗布するステップが炭素繊維ベールの上に第1の表面スラリーを堆積させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
セラミック固体粒子が炭化ケイ素及び/又は窒化ケイ素を含み、
第1の表面スラリーが、カーボンブラック、ダイヤモンド、グラファイト、モリブデン及びタングステンからなる群から選択される、1つ以上の反応性元素をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
熱分解の後及び浸透の前に、
第2の表面スラリーを多孔質セラミック層上に塗布して熱分解中に形成されたクラックを埋めるステップであって、第2の表面スラリーが水性又は有機溶媒中に分散したセラミック粒子を含むステップ、及び
第2の表面スラリーを乾燥させて多孔質セラミック層上に表面層を形成するステップをさらに含み、
浸透及び冷却が、保護セラミックコーティング上に緻密化された表面層を形成するための表面層の浸透及び冷却を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
セラミック粒子が炭化ケイ素及び/又は窒化ケイ素を含み、
第2の表面スラリーが、グラファイト、ダイヤモンド、カーボンブラック、モリブデン及びタングステンからなる群から選択される、1つ以上の反応性元素をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
第2の表面スラリーが、約10体積%〜約70体積%の固体含量を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
緻密化された表面層が、保護セラミックコーティングよりも多量の残留ケイ素を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
流動性プレセラミックポリマーを硬化させるステップが、150℃〜400℃の範囲の温度で加熱するステップを含み、
熱分解するステップが、複合層を850℃〜1300℃の範囲の温度に加熱するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
硬化させるステップが、圧力を加えるステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
プレセラミックポリマーが、有機ケイ素ポリマー及び/又は無機ケイ素ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
セラミックス基複合体が、炭化ケイ素マトリックスに埋め込まれた炭化ケイ素繊維を含み、
保護セラミックコーティングが、20体積%以下の残留ケイ素で炭化ケイ素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
保護セラミックコーティングを有するセラミックス基複合材料の製造方法であって、
粒子状物質を充填したセラミック繊維骨格を含む含浸繊維プリフォームの外表面上に第1の表面スラリーを塗布するステップであって、第1の表面スラリーが溶媒中に分散したセラミック固体粒子を含むステップ、
第1の表面スラリーを乾燥させてセラミック固体粒子を含む乾燥多孔質層を形成するステップ、
ケイ素を含む流動性プレセラミックポリマーを乾燥多孔質層に浸透させるステップ、
流動性プレセラミックポリマーを硬化させて複合層を外表面上に形成するステップであって、複合層が、セラミック固体粒子が分散された硬化したプレセラミックポリマーを含むステップ、
硬化したプレセラミックポリマーを熱分解して外表面上に炭化ケイ素を含む多孔質セラミック層を形成するステップ、
含浸繊維プリフォーム及びその外表面上の多孔質セラミック層にケイ素を含む溶融材料を浸透させるステップ、並びに
溶融材料による浸透後、溶融材料を冷却して、保護セラミックコーティングを上に有するセラミックス基複合体を形成するステップ
を含む方法。
【請求項13】
流動性プレセラミックポリマーを硬化させるステップが、150℃〜400℃の範囲の温度で加熱するステップを含み、
熱分解するステップが、複合層を850℃〜1300℃の範囲の温度に加熱するステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
硬化させるステップが、圧力を加えるステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
プレセラミックポリマーが、有機ケイ素ポリマー及び/又は無機ケイ素ポリマーを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
熱分解の後及び浸透の前に、
第2の表面スラリーを多孔質セラミック層上に塗布して熱分解中に形成されたクラックを埋めるステップであって、第2の表面スラリーが水性又は有機溶媒中に分散したセラミック粒子を含むステップ、及び
第2の表面スラリーを乾燥させて多孔質セラミック層上に表面層を形成するステップをさらに含み、
浸透及び冷却が、保護セラミックコーティング上に緻密化された表面層を形成するための表面層の浸透及び冷却を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
セラミック粒子が炭化ケイ素及び/又は窒化ケイ素を含み、
第2の表面スラリーが、グラファイト、ダイヤモンド、カーボンブラック、モリブデン及びタングステンからなる群から選択される、1つ以上の反応性元素をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
第2の表面スラリーが、約10体積%〜約70体積%の固体含量を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
緻密化された表面層が、保護セラミックコーティングよりも多量の残留ケイ素を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
セラミックス基複合体が、炭化ケイ素マトリックスに埋め込まれた炭化ケイ素繊維を含み、
保護セラミックコーティングが、20体積%以下の残留ケイ素で炭化ケイ素を含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本特許文献は、米国特許法第119条(e)の下で、2017年11月21日に出願された米国特許出願第62/589,181号、及び2017年4月19日に出願された米国特許出願第62/487,284号に対する優先権の利益を主張する。これらの出願は両方とも、参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、セラミックス基複合材料(セラミックマトリックス複合材料)(CMC)の製造に関し、より詳細には、保護セラミックコーティング及び任意選択の表面層を有するCMCの製造に関する。
【背景技術】
【0003】
セラミックマトリックスに埋め込まれたセラミック繊維を含むセラミックス基複合材料は、ガスタービンエンジン構成部品などの、軽量であることに加えて優れた熱的特性及び機械的特性が要求される工業用途にとって、有望な候補となる特性の組合せを呈する。CMCは、セラミック繊維プリフォームの溶融含浸法(溶融浸透法)によって製造することができる。後続の機械加工作業中又はガスタービンエンジンでの使用中など、浸透後処理中及び使用中の、物理的及び環境的損傷から繊維を保護するために、複合材料に表面層を適用(塗布)することは有益となり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
保護セラミックコーティングを上に含む、セラミックス基複合材料の製造方法を、本明細書に記載する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本方法は、第1の実施形態によれば、含浸繊維プリフォームの外表面上に、表面スラリーを塗布するステップを含む。表面スラリーは、ケイ素を含む流動性プレセラミックポリマー中に分散したセラミック固体粒子を含み、含浸繊維プリフォームは、粒子状物質を充填したセラミック繊維骨格を含む。流動性プレセラミックポリマーを硬化させて、それにより、セラミック固体粒子が分散された硬化したプレセラミックポリマーを含む複合層を、外表面上に形成する。次いで、硬化したプレセラミックポリマーを熱分解して炭化ケイ素を含む多孔質セラミック層を形成し、含浸繊維プリフォーム及び多孔質セラミック層に、ケイ素を含む溶融材料を浸透させる。浸透後、溶融材料を冷却して、保護セラミックコーティングを上に有するセラミックス基複合体を形成する。
【0006】
第2の実施形態によれば、本方法は、含浸繊維プリフォームの外表面上に、表面スラリーを塗布するステップを含み、この場合、表面スラリーは、溶媒中に分散したセラミック固体粒子を含み、含浸繊維プリフォームは、粒子状物質を充填したセラミック繊維骨格を含む。表面スラリーを乾燥させて、セラミック固体粒子を含む乾燥多孔質層を形成し、ケイ素を含む流動性プレセラミックポリマーを乾燥多孔質層に浸透させる。流動性プレセラミックポリマーを硬化させて、それにより、セラミック固体粒子が分散された硬化したプレセラミックポリマーを含む複合層を、外表面上に形成する。次いで、硬化したプレセラミックポリマーを熱分解して炭化ケイ素を含む多孔質セラミック層を形成し、含浸繊維プリフォーム及び多孔質セラミック層に、ケイ素を含む溶融材料を浸透させる。浸透後、溶融材料を冷却して、保護セラミックコーティングを上に有するセラミックス基複合体を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態による方法の例示的なステップを示す流れ図である。
図2】別の実施形態による方法の例示的なステップを示す流れ図である。
図3】第2の表面スラリーから形成された表面層が、どのように含浸繊維プリフォーム上を覆っている多孔質セラミック層中の熱分解クラックに侵入し得るかを示す概略図である。
図4】本方法の一実施形態により調製された保護セラミックコーティングを含む、例示的なセラミックス基複合体の断面を示す光学画像である。
図5】本方法の別の実施形態により調製された保護セラミックコーティングを含む、例示的なセラミックス基複合体の断面を示す光学画像である。
図6】本方法の別の実施形態により調製された保護セラミックコーティング及び表面層を上に含む、例示的なセラミックス基複合体の断面を示す光学画像である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
保護セラミックコーティングによって完全に又は部分的に覆われたセラミックス基複合材料を製造する改良された方法が開発されている。本方法により、後続の処理中に下にあるセラミック繊維を損傷から保護することができる、緻密なセラミックコーティングを形成することが可能になり、また、使用中のセラミックス基複合材料に、耐環境性を付与し得る。保護セラミックコーティングは、炭化ケイ素、及び任意選択に、極小量の遊離(未反応)ケイ素を有する他のセラミック相を含んでもよい。外側層は、保護セラミックコーティング上を覆ってもよい。
【0009】
図1の流れ図を参照すると、本方法は、炭化ケイ素又は他のセラミック粒子などの粒子状物質を充填したセラミック繊維骨格を含む含浸繊維プリフォームの外表面上に、第1の表面スラリーを塗布するステップ100を含む。骨格は、例えば、セラミック繊維の2次元又は3次元織りであってもよい。含浸繊維プリフォームは、当該技術分野で知られている繊維集合(ファイバーアセンブリ(fiber assembly))プロセス及びスラリー浸透プロセスを使用して、第1の表面スラリーを塗布する前に形成し得る。
【0010】
第1の表面スラリーは、一例(「例A」)において、ケイ素を含む流動性プレセラミックポリマー中に分散したセラミック固体粒子を含んでもよい。別の例(「例B」)において、第1の表面スラリーは、水性又は有機溶媒中に分散したセラミック固体粒子を含んでもよい。後者の場合には、外表面に塗布した後、第1の表面スラリーを乾燥させて102、外表面上にセラミック固体粒子を含む乾燥多孔質層を形成してもよく、この場合、第1の表面スラリーを乾燥するステップ102は、溶媒を除去する(例えば留去する)ステップを含む。次いで、ケイ素を含む流動性プレセラミックポリマーを乾燥多孔質層に浸透させてもよい104。例A及び例Bの流動性プレセラミックポリマーは、有機ケイ素ポリマー及び/又は無機ケイ素ポリマーを含んでもよい。一般に、ケイ素を含むプレセラミックポリマーは、化学元素ケイ素(Si)を含むポリマーであると理解してもよい。典型的には、流動性プレセラミックポリマーは、コーティング及び浸透を容易にするために、約10cp〜約1000cpの範囲の粘度を有する。
【0011】
図1の流れ図を再度参照すると、流動性プレセラミックポリマーを硬化させて106、ケイ素を含む硬化したプレセラミックポリマー中に分散したセラミック固体粒子を含む複合層を形成してもよい。硬化106後、硬化したプレセラミックポリマーを熱分解して108、外表面上に炭化ケイ素を含む多孔質セラミック層を形成してもよい。多孔質セラミック層は、炭化ケイ素に加えて、他のセラミック相も含んでもよい。本方法で使用する流動性プレセラミックポリマーを、硬化106及び熱分解108の後に所望のセラミック相(1つ又は複数)を得るために選択してもよい。一例では、流動性プレセラミックポリマーは、ポリカルボシラン及び/又はポリシロキサンを含んでもよく、それは、これらが好適な熱分解温度に加熱すると、炭化ケイ素に転化し得るからである。
【0012】
熱分解108後、含浸繊維プリフォーム及びその外表面上の多孔質セラミック層に、複合材料を緻密化するために、ケイ素を含む溶融材料を浸透させてもよい110。溶融浸透中、溶融材料は、多孔質セラミック層及び含浸繊維プリフォームを通って流れ、流路内で任意の反応性元素と反応する。溶融物を冷却すると112、浸透させた多孔質セラミック層は、1つ以上の炭化物、窒化物、ケイ化物及び/又はホウ化物などの1つ以上のセラミックを含む緻密なセラミックコーティングになる。このようにして、保護セラミックコーティングを上に有するセラミックス基複合体を形成する。セラミックマトリックス及び保護セラミックコーティングは、(a)溶融材料と繊維プリフォーム又は多孔質セラミック層中の任意の反応性元素(1つ又は複数)との間の反応から生じるセラミック反応生成物、及び(b)溶融浸透の前に存在している任意のセラミック相(例えば、SiC粒子)を含む。セラミックマトリックス及び保護セラミックコーティングは、残留量の未反応金属、典型的にはケイ素又はケイ素合金を含んでいてもよく、残留量の炭素も存在してもよい。好ましくは、約30体積%以下、約20体積%以下、又は約10体積%以下の未反応金属又は残留炭素が存在する。理想的には、未反応金属量又は残留炭素量は、約5体積%以下である。保護セラミックコーティングは、必要であれば、コーティングの厚さ又は部品の形状を調整するために機械加工してもよい。
【0013】
図2の流れ図は、熱分解108の後及び溶融浸透110の前に、熱分解108中に形成され得るクラックを埋めるために、第2の表面スラリーを多孔質セラミック層に塗布する114、別の実施形態を示す。(本方法は、上に記載され、熱分解ステップ108までの図1の流れ図に示すステップに従って進めてもよいと理解される)。第2の表面スラリーは、水性又は有機溶媒中に分散したセラミック粒子及び任意選択に1つ以上の反応性元素を含んでもよい。第2の表面スラリーは、どんな熱分解クラックにも浸透が可能な粘度を有するように設計されている。第2の表面スラリーの粘度は固体含量(solids loading)と共に増加し、したがって固体含量は約60又は70体積%より低く維持される。多孔質セラミック層への塗布114の後、第2の表面スラリーを乾燥させて116、多孔質セラミック層上に表面層を形成する。図3の概略図で見ることができるように、第2の表面スラリーから形成された表面層320は、含浸繊維プリフォーム326上を覆っている多孔質セラミック層324中の熱分解クラック322に侵入する。典型的には、表面層は、約0.03mm〜約0.3mmの厚さを有する。表面層と多孔質セラミック層とを合わせて、約0.08mm〜約1.3mmの厚さを有してもよい。
【0014】
プリフォームに溶融材料を浸透させ110、それを冷却した112後、表面層は、保護セラミックコーティング上の緻密化された表面層になる。緻密化された表面層は、(a)溶融材料と表面層中の任意の反応性元素(1つ又は複数)との間の反応から生じるセラミック反応生成物、及び(b)溶融浸透の前に表面層に存在している任意のセラミック相(例えば、SiC粒子)を含んでもよい。緻密化された表面層は、保護セラミックコーティングよりも多量の残留ケイ素を含有してもよい。緻密化された表面層は、異なる残留ケイ素含有量を有する副層を含む多層構造を有し、それにより、緻密化された表面層にわたって残留ケイ素濃度の漸次的又は段階的な勾配を形成し得ることも考えられる。下にある保護セラミックコーティングよりも多量の残留ケイ素含有量(すなわち、炭化ケイ素含有量がより少量である)で緻密化された表面層を有することは、表面の機械加工性を向上させるのに役立ち、また、保護セラミックコーティングとセラミックス基複合体との間のCTE(熱膨張係数)の不整合によって引き起こされる残留引張応力を低減するのにも役立ち得る。残留引張応力の低減により、機械的特性をより良好にすることができ、クラック充填表面層によって保護セラミックコーティングの完全性を保証することにより、複合体の環境劣化に対する耐性を向上させることができる。
【0015】
本方法はまた、第1の表面スラリーを含浸繊維プリフォームの外表面に塗布する前に、炭素繊維マット又はベールを外表面上に配置するステップを含んでもよい。この場合、第1の表面スラリーの外表面への塗布は、第1の表面スラリーによる浸透が生じるように、炭素繊維マットの上に第1の表面スラリーを広げる又は堆積させるステップを含んでもよい。好適な炭素繊維マット又はベールは、非常に薄く(例えば、厚さ約0.1mm)、典型的にはポリマー結合剤で拘束されたランダム配置の炭素繊維を含む。このような炭素繊維製品は、様々な業者から市販されている。
【0016】
炭素繊維ベールは、以下にさらに論じるように、硬化中に、硬化したプレセラミックポリマーに埋め込んでもよい。プレセラミックポリマーを熱分解し、多孔質セラミック層を形成した後に溶融浸透を行う場合、炭素繊維ベール由来の炭素は、多孔質セラミック層中の反応性元素として作用し、溶融ケイ素又はケイ素合金がそこ全体に浸透するにつれて、溶融ケイ素又はケイ素合金から炭化ケイ素の形成を促進し得る。
【0017】
含浸繊維プリフォームの骨格として機能するセラミック繊維は、典型的には炭化ケイ素を含むが、別のセラミック、例えば窒化ケイ素、アルミナ、アルミノシリケート又はカーボン(炭素)も更に、又は代わりに含んでもよい。含浸繊維プリフォームに含有される粒子状物質は、溶融浸透の後にセラミックマトリックスの一部となるセラミック粒子を含む。典型的には、これらのセラミック粒子は炭化ケイ素を含むが、窒化ケイ素、アルミナ、アルミノシリケート及び/又は炭化ホウ素若しくは別の耐熱性(耐火性)炭化物を更に、又は代わりに含んでもよい。好ましい実施形態では、セラミック繊維は炭化ケイ素を含み、セラミック粒子(及び最終的にセラミックマトリックス)もまた炭化ケイ素を含む。この場合に形成されるセラミックス基複合材料は、炭化ケイ素/炭化ケイ素複合材料又はSiC/SiC複合材料と呼ばれることもある。含浸繊維プリフォームの外表面上に多孔質セラミック層を形成するために使用されるセラミック固体粒子は、繊維プリフォームに含有されるものと同じか又は異なるセラミック粒子を含んでもよい。典型的には、多孔質セラミック層のセラミック粒子もまた炭化ケイ素を含む。本明細書で使用する場合、「炭化ケイ素」という用語は、化合物SiC及び他のケイ素含有炭化物を広く意味する。
【0018】
上記のように、含浸繊維プリフォームは、第1の表面スラリーを塗布する前に、当該技術分野で知られているスラリー浸透プロセスによって形成してもよい。スラリー浸透は、溶媒及び粒子状物質(及び任意選択に反応性元素)を含むスラリー組成物を、繊維骨格を含む繊維プリフォームに浸透させ、続いて溶媒を乾燥除去するステップを含んでもよい。第1の表面スラリーの塗布は、スラリー浸透の前に行われてもよく、その場合、第1の表面スラリーは、粒子状物質が(まだ)含浸していない繊維プリフォームに塗布してもよいと考えられる。スラリー浸透はさらに、当該技術分野で知られている繊維集合方法を使用した繊維プリフォームの構築によって、及び化学気相浸透プロセスによって、進めてもよい。
【0019】
例Aの第1の表面スラリーは、ポリカルボシラン及び/又はポリシロキサンなどのケイ素を含む流動性プレセラミックポリマーと、炭化ケイ素及び/又は窒化ケイ素の粒子などのセラミック固体粒子とを一緒に混合することによって調製してもよい。典型的な粒径は、約1ミクロン〜約30ミクロンの範囲である。表面スラリーは、炭素(例えば、カーボンブラック、グラファイト及び/又はダイヤモンド)及び/又は耐熱性(耐火性)金属(例えば、モリブデン及び/又はタングステン)などの、溶融浸透中に所望のセラミック相(1つ又は複数)の形成を促進し得る1つ以上の反応性元素を、さらに含んでもよい。典型的には、第1の表面スラリーは、約5体積%〜約60体積%の固体含量を有する。第1の表面スラリーは、ディップコーティング、溶液キャスト、スプレーコーティング及び/又ははけ塗り(brushing)などのコーティング方法によって、繊維プリフォームの外表面上に堆積又は広げてもよい。第1の表面スラリーの外表面への塗布は、典型的には室温(例えば、約15℃〜約25℃)で行う。
【0020】
例Bの第1の表面スラリーは、水性又は有機溶媒と、炭化ケイ素及び/又は窒化ケイ素の粒子などのセラミック固体粒子とを一緒に混合することによって調製してもよい。典型的な粒径は、約1ミクロン〜約30ミクロンの範囲である。上記のような1つ以上の反応性元素もまた、第1の表面スラリーに含まれてもよく、第1の表面スラリーは、約20体積%〜約75体積%の固体含量を有してもよい。表面スラリーに使用する水性又は有機溶媒は、水、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、及び/又はトルエンから選択してもよい。第1の表面スラリーはさらに、ポリエチレングリコール、アクリレートコポリマー、ラテックスコポリマー及び/若しくはポリビニルブチラールなどの結合剤、並びに/又はポリアクリル酸アンモニウム、ポリビニルブチラール、リン酸エステル、ポリエチレンイミン、若しくはBYK(登録商標)110(Byk USA、Wallingford、CT)などの分散剤を含んでもよい。第1の表面スラリーの、繊維プリフォームの外表面への塗布は、典型的には室温(例えば、約15℃〜約25℃)で行う。乾燥多孔質層を形成するための第1の表面スラリーの乾燥は、室温又は高温(例えば、約40℃〜約150℃)で、周囲環境において、又は真空条件下若しくは不活性ガス雰囲気中などの、制御環境において、行ってもよい。乾燥は、約2時間〜約24時間の持続時間にわたって行ってもよい。ケイ素を含む流動性プレセラミックポリマーによる浸透は、浸透が生じ得るように、乾燥多孔質層上に流動性プレセラミックポリマーを堆積又は広げるステップを含んでもよい。
【0021】
例Bで使用する第1の表面スラリーと同様に、第2の表面スラリーは、水性又は有機溶媒と、炭化ケイ素及び/又は窒化ケイ素の粒子などのセラミック粒子(例えば、上記のセラミック固体粒子)とを一緒に混合することによって調製してもよい。典型的な粒径は、約1ミクロン〜約30ミクロンの範囲である。上記のような1つ以上の反応性元素(例えば、グラファイト、ダイヤモンド、カーボンブラック、モリブデン、及び/又はタングステン)もまた、第2の表面スラリーに含まれてもよい。第2の表面スラリーは、約10体積%〜約70体積%、より典型的には約30体積%〜約60体積%の固体含量を有してもよい。表面スラリーに使用する水性又は有機溶媒は、水、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、及び/又はトルエンから選択してもよい。第2の表面スラリーはさらに、ポリエチレングリコール、アクリレートコポリマー、ラテックスコポリマー及び/若しくはポリビニルブチラールなどの結合剤、並びに/又はポリアクリル酸アンモニウム、ポリビニルブチラール、リン酸エステル、ポリエチレンイミン、若しくはBYK(登録商標)110(Byk USA、Wallingford、CT)などの分散剤を含んでもよい。第2の表面スラリーの多孔質セラミック層上への塗布は、典型的には室温(例えば、約15℃〜約25℃)で行う。表面層を形成するための第2の表面スラリーの乾燥は、室温又は高温(例えば、約40℃〜約150℃)で、周囲環境において、又は真空条件下若しくは不活性ガス雰囲気中などの、制御環境において、行ってもよい。乾燥は、約2時間〜約24時間の持続時間にわたって行ってもよい。
【0022】
第1及び/又は第2の表面スラリーは、本方法で形成された保護コーティング及び/又は表面層が、含浸繊維プリフォームの一部又は全部を覆うように、外表面の一部のみ又は全体に(例えば、単一の表面又は複数の表面に)塗布してもよい。塗布後、余分な表面スラリー又はプレセラミックポリマーは、外表面から除去してもよい。
【0023】
複合層を形成するための流動性プレセラミックポリマーの硬化は、約150℃〜約400℃の範囲の温度で加熱するステップを含んでもよい。より典型的には、硬化は、約200℃〜約250℃の範囲の硬化温度で行う。硬化は、光(例えば、紫外線)又は化学的硬化剤によって活性化してもよいことも考えられる。
【0024】
一例では、硬化は、例えば、圧縮成形プロセスを使用してプレセラミックポリマーでコーティングされたプリフォームに熱及び圧力を加えるステップを含んでもよく、この場合、コーティングされたプリフォームは、ダイ又はモールドなどの装置においてホットプレスされる。硬化は、高温真空バギングを更に、又は代わりに伴ってもよい。典型的には、約1分〜約120分の持続時間にわたって硬化を行って複合層を形成し、この複合層は、硬化したプレセラミックポリマー中に分散したセラミック固体粒子を含み、いくつかの実施形態では、埋め込まれた炭素繊維ベールをさらに含んでもよい。
【0025】
硬化したプレセラミックポリマーの熱分解は、複合層を約850℃〜約1300℃の範囲の温度に加熱するステップによって行ってもよい。その結果、典型的には約0.05mm〜約1mmの範囲の厚さを有する、含浸繊維プリフォームの外表面上の多孔質セラミック層が得られる。多孔質セラミック層は、硬化したプレセラミックポリマーを熱分解することによって形成されたセラミック相(1つ又は複数)及び元の表面スラリー配合物に組み込まれたセラミック固体粒子(例えば、炭化ケイ素粒子)を含む。好適なセラミック相は、例えば、炭化ケイ素及び/又は窒化ケイ素を含んでもよい。典型的には、熱分解は、排気し、所望の圧力の不活性ガス(例えば、アルゴン、ヘリウム及び/又は窒素)を再充填した真空チャンバなどの不活性ガス環境及び/又は真空環境において行う。あるいは、熱分解は、ガスが好適に選択されて所望のセラミック相(1つ又は複数)の形成を向上させる、反応性ガス環境において行ってもよい。熱分解によって形成された多孔質セラミック層は、炭素又は他の反応性元素も含んでいてもよく、少なくとも部分的にプレセラミックポリマーを使用することにより、含浸繊維プリフォームの内部よりも多量の固形部分(セラミック固体粒子、熱分解によって形成されたセラミック相及び反応性元素を含む)を有していてもよい。例えば、多孔質セラミック層中の固体含量は、約50体積%〜約95体積%で、残りの体積は多孔性(porosity)であってもよい。
【0026】
多孔質セラミック層は、溶融浸透の前後のいずれかにおいて、機械加工してもよい。多孔質セラミック層は、未焼成状態(green state)でより容易に機械加工することができるので、浸透前に多孔質セラミック層を機械加工することが有利となり得る。第2の表面スラリーから形成された表面層が存在する場合、その表面層に任意の機械加工又はグリットブラストを行うことが、さらに有利となり得る。機械加工は、多孔質層又は表面層の厚さだけでなく、表面仕上げも制御することが可能である。
【0027】
繊維プリフォーム、多孔質セラミック層及び任意選択の表面層を緻密化するために溶融浸透を行う温度は、溶融物を形成する金属又は合金に依存する。1414℃の溶融温度(Tm)を有するケイ素の場合、この温度は約1410℃〜約1500℃であってもよい。一般に、溶融浸透の温度は、金属又は合金のTm以上である。典型的には、溶融浸透は、部分的に、構成部品のサイズ及び複雑性により、数分から数時間の持続時間にわたって行う。溶融材料を冷却すると、保護セラミックコーティング及び任意選択の緻密化された表面層を上に有するセラミックス基複合体が形成される。複合体は、セラミックマトリックス中に分散したセラミック繊維を含み、約30体積%以下(好ましくは20体積%以下、10体積%以下、又は5体積%以下)の残留量の金属又は炭素を含有する。一例では、複合体は、炭化ケイ素マトリックスに埋め込まれた炭化ケイ素繊維を含み、残留金属はケイ素である。この複合体のマトリックスは、上記のように、他のセラミック相を更に、又は代わりに含んでいてもよい。同様に、複合体上の保護セラミックコーティングは、炭化ケイ素及び/又は別のセラミック、並びに若干量の残留ケイ素を含んでもよい。用途に依存して、追加の耐環境バリアコーティングを、保護セラミックコーティング及び/又は緻密化された表面層を覆ってCMC本体に塗布してもよい。保護セラミックコーティング及び任意選択の緻密化された表面層を有するCMC本体は、ガスタービンエンジン構成部品(例えば、シールセグメント、ブレード、ベーン又は燃焼器ライナー)として、又は別の高温用途に使用することができる。
【実施例】
【0028】
[実施例1]
SiC粒子を充填したSiC繊維骨格を含む含浸繊維プリフォームを、当該技術分野で知られている繊維集合方法及びスラリー浸透方法によって形成する。スラリー浸透の後、炭素繊維ベールを、この例ではサイズ約5cm×15cmのパネルである含浸繊維プリフォームの第1の表面に適合するように切断し、炭素繊維ベールを第1の表面に適用する。炭素繊維ベールの厚さは約0.13mmである。表面スラリーは、ポリカルボシランと公称サイズで約3.5ミクロンのSiC粒子とを混合することによって形成する。SiCボールを使用して、ボールミルで約4時間混合を行う。完全に混合した後、表面スラリーを炭素繊維ベールの上に広げて繊維プリフォームの表面に塗布し、余分な表面スラリーを除去する。繊維プリフォームを反対側にひっくり返して、繊維プリフォームの第2の表面を露出させ、炭素繊維ベールを第2の表面に適用するステップ、表面スラリー配合物を炭素繊維ベールの上に塗布するステップ、次いで余分な表面スラリーを除去するステップを含むプロセスを繰り返す。表面スラリーでコーティングした後、コーティングされたプリフォームを鋼板の間に置き、空気中で230℃の温度で1時間ホットプレスして、表面スラリー配合物を「プレス硬化」させて、硬化ポリカルボシランマトリックス中にSiC粒子及び炭素繊維ベールを含む複合層を形成する。硬化後、コーティングされたプリフォームを、制御環境において(例えば、アルゴン分圧下で)、1000℃の温度で1時間加熱して、硬化ポリカルボシランを熱分解させ、それによって、含浸繊維プリフォーム上に(炭素繊維ベール由来の)炭素を含む多孔質セラミックコーティングを形成する。熱分解後、含浸繊維プリフォーム及びその上を覆っているコーティングに、ケイ素の溶融温度(Tm)以上の温度でケイ素を含む溶融物を浸透させて、これにより、緻密化されたセラミックス基複合体及び保護セラミックコーティングを形成する。上記のように形成されたCMC本体430及び保護セラミックコーティング440の断面図を、図4の画像に示す。
【0029】
[実施例2]
SiC粒子を充填したSiC繊維骨格を含む含浸繊維プリフォームを、当該技術分野で知られている繊維集合方法及びスラリー浸透方法によって形成する。繊維プリフォームのスラリー浸透の後、表面スラリーを、水と公称サイズで約3.5ミクロンのSiC粒子とを混合することによって形成する。先の実施例と同様に、SiCボールを使用して、ボールミルで約4時間混合を行ってもよい。結合剤、分散剤及び/又は反応性元素(1つ又は複数)も表面スラリーに含まれていてもよい。この実施例における固体含量は約20体積%である。完全に混合した後、表面スラリーを含浸繊維プリフォームの表面に塗布し、乾燥して、SiC粒子の乾燥多孔質層を形成する。次に、乾燥多孔質層上にポリカルボシランを堆積して、SiC粒子間のスペースに浸漬又は浸透させ、余分なポリカルボシランを除去し、230℃で1時間加熱することにより硬化ポリカルボシラン及びSiC固体粒子を含む複合層を形成する。硬化後、複合層を、制御環境において(例えば、アルゴン分圧下で)、1000℃の温度で1時間加熱して、硬化ポリカルボシランを熱分解させ、含浸繊維プリフォーム上に多孔質セラミックコーティングを形成する。熱分解後、繊維プリフォーム及びその上を覆っている多孔質コーティングに、ケイ素の溶融温度(Tm)以上の温度でケイ素を含む溶融物を浸透させて、これにより、緻密化されたセラミックス基複合体及び保護セラミックコーティングを形成する。CMC本体530及び保護セラミックコーティング540の断面図を、図5の画像に示す。
【0030】
[実施例3]
6.3gのSMP-500(Starfire(登録商標)Systems)を、3gのSiC粉末と完全に混合する。得られたポリマー/SiCスラリー混合物(「第1の表面スラリー」)を、厚さ0.005"の炭素ベールに含浸させ、スラリー浸透した2"×6"繊維プリフォームの両面に塗布する。スラリーでコーティングされた含浸繊維プリフォームを、ステンレス工具の間に置き、第1の表面スラリーを230℃で硬化させてプリフォームの両面に複合層を形成する。次いで、複合層を部分Ar雰囲気の減圧下、1300℃で熱分解して、プリフォーム上に多孔質セラミック層を形成する。SiC粒子、分散剤、結合剤及び水を含む第2の表面スラリーを調製し、多孔質セラミック層に真空含浸させてすべての熱分解クラックを埋める。乾燥すると、第2の表面スラリーは、表面層を形成し、この表面層は、溶融浸透の前に(例えば、220グリットサンドペーパーで)研磨してもよい。図6の光学顕微鏡写真は、CMC本体630上を覆っている保護セラミックコーティング640上にある、得られた緻密化された表面層650の典型的な微細構造を示す。顕著な熱分解クラックは観察されない。
【0031】
「<A>、<B>、...及び<N>のうちの少なくとも1つ」、又は「<A>、<B>、...<N>のうちの少なくとも1つ又はそれらの組合せ」、又は「<A>、<B>、...及び/又は<N>」という語句は、使用を明確にし、こうすることによって一般に通知するために、これ以前又は以降における一切の他の黙示的な定義よりも優先し、本出願人により明示的にこれとは反対に主張されない限り、本出願人によって最も広義に定義されて、A、B、...及びNを含む群から選択される1つ以上の要素を意味する。すなわち、この語句は、任意の1つの要素単独、又は1つ以上の他の要素と組み合わせた1つの要素を含み、さらにまた、組合せのときは、記載されていない追加的な要素も含み得て、要素A、B、...又はNのうちの1つ以上の任意の組合せを意味するものである。
【0032】
特定の実施形態を参照してかなり詳細に説明したが、他の実施形態も可能である。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲は、本明細書に包含される好ましい実施形態の記載に限定されるべきではない。特許請求の範囲の意義に入るあらゆる実施形態は、文字通りに又は均等によって本発明の範囲内に包含される。
【0033】
さらに、上記の利点は必ずしも唯一の利点ではなく、記載された利点のすべてがあらゆる実施形態で達成されることは必ずしも予期されていない。
【符号の説明】
【0034】
320 表面層
322 熱分解クラック
324 多孔質セラミック層
326 含浸繊維プリフォーム
430 CMC本体
440 保護セラミックコーティング
530 CMC本体
540 保護セラミックコーティング
630 CMC本体
640 保護セラミックコーティング
650 表面層
図1
図2
図3
図4
図5
図6