特許第6630852号(P6630852)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6630852四元モリブデン/タングステンテルル酸塩結晶の使用及びデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6630852
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】四元モリブデン/タングステンテルル酸塩結晶の使用及びデバイス
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/11 20060101AFI20200106BHJP
   G02F 1/33 20060101ALI20200106BHJP
【FI】
   G02F1/11 501
   G02F1/33
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-554737(P2018-554737)
(86)(22)【出願日】2017年9月30日
(65)【公表番号】特表2019-516135(P2019-516135A)
(43)【公表日】2019年6月13日
(86)【国際出願番号】CN2017104968
(87)【国際公開番号】WO2018107876
(87)【国際公開日】20180621
【審査請求日】2018年10月18日
(31)【優先権主張番号】201611161381.7
(32)【優先日】2016年12月15日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】594196624
【氏名又は名称】山東大学
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】陶 緒堂
(72)【発明者】
【氏名】高 沢亮
(72)【発明者】
【氏名】孫 友軒
(72)【発明者】
【氏名】呉 倩
【審査官】 廣崎 拓登
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第102031563(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第1958883(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第104562204(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第102623886(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第103014868(CN,A)
【文献】 Z. GAO et al.,"Temperature Dependence of Elastic Properties and Piezoelectric Applications of BaTeMo2O9 Single Crystal",IEEE Transactions on Ultrasonics, Ferroelectrics, and Frequency Control,2011年12月,Vol. 58, No. 12,pp. 2753-2757
【文献】 Z. GAO et al.,"Biaxial crystal α-BaTeMo2O9: theory study of large birefringence and wide-band polarized prism design",Optics Express,2015年 2月 9日,Vol. 23, No. 4, ,pp. 3851-3860
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00− 1/125
1/21− 7/00
H01S 3/00− 4/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
四元モリブデン/タングステンテルル酸塩はテルル(Te)及びタングステン(W)又はモリブデン(Mo)を同時に含む四元酸化物である四元モリブデン/タングステンテルル結晶を音響光学材料とする
ことを特徴とする使用。
【請求項2】
前記四元モリブデン/タングステンテルル酸塩は、β−BaTeMo、α−BaTeMo、CsTeMo12、CsTeW12、NaTeW又はCdTeMoOである
請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記四元モリブデン/タングステンテルル酸塩結晶を音響光学媒体として音響光学デバイスを製造する
請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記音響光学デバイスは、音響光学変調器、音響光学偏向器又は音響光学フィルターであることを特徴とする請求項3に記載の使用。
【請求項5】
音響光学媒体、圧電トランスデューサ及びインピーダンス整合ネットワークを含む音響光学デバイスであって、前記音響光学媒体は請求項1に記載の前記四元モリブデン/タングステンテルル結晶である
ことを特徴とする音響光学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料及び電気光学機能を持つデバイス分野に属し、四元モリブデン/タングステンテルル酸塩結晶の使用及びデバイス、特に高性能の音響光学デバイスにおける使用に関する。
【背景技術】
【0002】
音響光学効果は1930年代にすでに発見され、使用される音響光学媒体のほとんどが水やガラスのような等方性媒体であり、これは「超音波格子」として知られている。しかしながら、音響光学効果による光の周波数及び方向の変化はいずれも非常に小さいので、レーザーが出現する前に十分な注目を受けなかった。1960年代には、レーザーの出現によって音響光学デバイスの開発が推し進められてきた。レーザーの単色性及び方向性が良くて輝度が高く、且つそれがコヒーレント光を有するので、レーザービームエネルギーのすべてを回折限界のようなサイズのスポットに集束することができるという特性などを有する。したがって、音響光学の相互作用によってレーザービームの周波数、方向及び強度を迅速的且つ効果的に制御することができる。それにより、レーザーの使用範囲が大幅に拡大され、ひいては音響光学デバイスの発展が推し進められていた。1960年代半ばから1970年代半ばにかけて、PbMoO、TeO、LiNbO等の新規な高性能の音響光学結晶の出現に伴って、音響光学デバイスの性能は急速に向上され、且つレーザービームのどの特性を制御することに関係なく、使用される音響光学デバイスの作動原理、構造及び製造プロセスは基本的に同じであり、設計を適切に調整すれば、さまざまな需要に応じ、ひいては、一つのデバイスだけであっても同時に複数の役割を果たすことができる。これは他の光電デバイスが達成できないものである。光導波路技術と弾性表面波技術の発展は、表面波音響光学デバイスの発展を推進してきた。表面弾性波と光導波はいずれも媒体表面の厚さが波長の大きさ程度である薄層内で集中しており、エネルギーが非常に集中しているので、表面波音響光学デバイスはわずかな駆動力のみが必要であり、また、表面波音響光学デバイスは、比較的簡単で柔軟なプレーナプロセスを用いて製作されるものであり、構造が複雑なトランスデューサに容易に製作することができるため、バルク波デバイスよりも大きな帯域幅が得られる。近年、音響光学デバイスは光ファイバ通信、レーザーアドレッシング、レーザーマーキング、レーザーパルス、レーザー周波数安定化、レーザー出力安定化、レーザーファクシミリ、レーザプリンティング等の分野で重要な役割を果たしている。
【0003】
典型的な音響光学材料としては、液体、ガラス及び単結晶の三大類型がある。液態材料において、水は比較的良い音響光学の相互作用媒体と考えられているが、その音響減衰が比較的大きく、且つ、音波及び熱の作用に対して乱されやすく、安定した光学性能を維持することができないため、使用価値が失われる。ガラス(SiO)は最も一般的な音響光学媒体材料の一つであるが、ガラスの音響減衰が大きく、光透過波帯(transmissive wave band)が中赤外線波帯を覆うことは難しく、同時に、可視スペクトル領域で屈折率が2.1より大きい透明ガラスを得ることは困難であり、且つ、その光弾性係数が小さいので、音響周波数が100MHz未満の音響光学デバイスのみに適用する。初期に使用される音響光学結晶としてはLiNbO、LiTaO、α−Al及びRAl12などがあるが、それらの結晶はいずれも音響光学性能が悪い。
【0004】
目下、最も広く使用されている音響光学結晶は主にTeO及びPbMoOである。そのうち、TeOは正方晶系に属し、高品質係数を有する音響光学材料であり、その屈折率(n=2.430、n=2.074)が高く、可視光に対する透明度が高く、光弾性係数が大きく、[110]方向に沿って伝播されるせん断波の音速(0.62×10cm/s)が遅く、このような遅いせん断波は高い音響光学メリット値(M=793×10-18/g)を有し、(001)平面でX軸と35.9°の角度をなす方向に沿って伝播される横波はゼロ温度係数を有し、且つそのメリット値(M=200×10-18/g)も高い。広い帯域幅、高解像度を必要とする異方性の音響光学偏向器及びフィルタに用いられる。しかしながら、TeO結晶の成長技術が複雑であり、成長コストが高く、高品質のバルク単結晶を得ることは容易ではない。PbMoOも正方晶系に属し、良好な光学性能を有し、音響減衰係数が小さい。なお、PbMoOのc軸はY軸と重なり合うため、音響光学回折効率は入射光の偏光に関係がなく、音響光学変調器及び偏向器に広く用いられ、高解像度の音響光学偏向器にも用いられ得る。しかしながら、当該結晶は毒性元素Pbを含み、且つその硬度(モース硬度が約3である)が比較的小さく、加工されやすくない。
【0005】
特許文献1には、希土類イオンで変性したタングステン酸鉛の結晶により製造された音響光学変調器が開示されており、PMo又はTeO結晶の代わりにLa3+:PWO又はY3+:PWOを用いて音響光学変調器を製造する。設計及び構造を基本的に変更しないことを前提に、変調器の性能を有意に改善し、特に作動波帯は近紫外領域に向かって60〜70nm程度広がって、良好な耐照射性が付与される。当該特許文献において、PWO結晶の音響光学デバイス性能が改善されているが、結晶に毒性元素Pbが含まれるという問題はまだ解決されていない。
【0006】
特許文献2には、フルオロホウ酸ベリリウム酸カリウムファミリー結晶(potassium fluroboratoberyllate family crystal:KBBF-family crystal)材料(フルオロホウ酸ベリリウム酸カリウム、フルオロホウ酸ベリリウム酸ルビジウム及びフルオロホウ酸ベリリウム酸セシウムを含む)の用途及び音響光学デバイスが開示されている。ここで、フルオロホウ酸ベリリウム酸カリウムファミリー結晶材料の用途は、音響光学デバイスにおける音響光学媒体に用いられることを含み、ここで、前記音響光学媒体へ入射した光が紫外線であり、前記音響光学デバイスにより生じた音波が前記音響光学媒体へ入射した方向は、前記フルオロホウ酸ベリリウム酸カリウムファミリー結晶のc軸方向であり、前記紫外線が前記音響光学媒体へ入射した方向は前記c軸方向と垂直になる。当該特許文献に係るフルオロホウ酸ベリリウム酸カリウムファミリー結晶は、大寸法であり、且つ高品質の単結晶を成長させる面で一定の困難がある。また、このような材料の光透過性波帯は中赤外線波帯を覆うことができず、音響光学効果が低いので、実用化になるのが困難である。
【0007】
レーザー技術及びレーザー装置の発展、特に中赤外線レーザー装置の使用に伴って、音響光学デバイスの総合性能、特に光透過波帯に対する要求が高まっている。性能に優れた音響光学材料は、高性能の音響光学デバイスの基礎である。単結晶材料は品質因子Mが大きく、音響減衰が低く、且つ優れた光透過特性に優れたため、音響光学材料の開発に優先的に選択される。良好な音響光学材料にとっては、高い音響光学の相互作用性能のほか、良好な光学性能及び音響性能も要求される。一般的に、人々は主に材料の音響光学メリット値(音響光学品質因子ともいう)に基づいて材料の音響光学の相互作用性能を評価する。音響光学デバイスの材料の光学性能に対する要求は、一般的な光学デバイスの材料に対する要求と基本的に同じである。即ち、(1)使用される光の波長範囲内で光透過率が高く、屈折率が比較的高いこと;(2)高い化学的安定性が高く、機械的寿命が長いこと;(3)光損傷閾値が高く、機械的に加工されやすいこと;(4)各物理定数の温度係数が小さいこと;(5)高品質且つ大寸法の結晶が得られる結晶成長技術が確立されており、材料の良好な音響性能は、低い音響減衰、小さな非線形音響係数及び小さな音速温度係数などに表されること;(6)重イオンを含み、結晶密度が高いことなどが要求される。
【0008】
以上をまとめると、既存の音響光学原理によれば、音響光学材料自体の特性は音響光学デバイスの特性及び適用範囲が決まる。したがって、性能に優れた音響光学材料及びそのデバイスを探索し、現在の科学技術の発展のニーズを満たすことは、目下、材料及びデバイスに対する研究分野において注目されているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】中国特許CN 1313517A(出願番号01112800.3 )
【特許文献2】中国特許CN105068280A(出願番号201510425255.7)
【特許文献3】中国特許CN102031563A
【特許文献4】中国特許CN1958883A
【特許文献5】中国特許CN102011189A
【特許文献6】中国特許CN104562204A
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Cryst. Growth Des. 10(9),4091−4095,2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記先行技術の欠陥に応じて、本発明は四元モリブデン/タングステンテルル酸塩結晶の適用及びデバイスを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願に係る発明は以下のとおりである。
【0013】
音響光学材料としての四元モリブデン/タングステンテルル酸塩結晶の適用において、四元モリブデン/タングステンテルル酸塩はテルル(Te)及びタングステン(W)又はモリブデン(Mo)を同時に含む四元酸化物である。
【0014】
本発明によれば、前記四元モリブデン/タングステンテルル酸塩は、β−BaTeMo、α−BaTeMo、CsTeMo12、CsTeW12、NaTeW、CdTeMoO等が挙げられるが、これらに限られない。
【0015】
本発明によれば、前記四元モリブデン/タングステンテルル酸塩結晶は音響光学媒体として音響光学変調器、音響光学偏向器、音響光学フィルター等のような音響光学デバイスを製造するために使用される。
【0016】
音響光学デバイスは音響光学媒体、圧電トランスデューサ及びインピーダンス整合ネットワークを含み、前記音響光学媒体は前記四元モリブデン/タングステンテルル酸塩結晶である。
【0017】
本発明に係る作動原理は以下のとおりである。図1に示すように、ドライバーによる高周波電力信号を音響光学デバイスに適用し、圧電トランスデューサは該信号を超音波信号に変換して音響光学媒体内を伝送して屈折率格子を形成する。レーザービームが一定の角度で通過する場合、音響光学の相互作用によりレーザービームが回折する。ここで、ブラッグ回折角θ=λf/(2V)において、λは作動波長であり、fは作動周波数であり、Vは結晶における縦波音速である。
【0018】
本発明に係る音響光学デバイスによれば、前記音響光学媒体の光透過方向の選択は、結晶異方性における光弾性係数及び光伝播特性に基づいて設計・最適化される。
【0019】
本発明に係る音響光学デバイスによれば、音波と音響光学媒体との相互作用を考慮して圧電トランスデューサの方向を配置する。
【0020】
本発明に係る四元モリブデン/タングステンテルル酸塩結晶は、当業における通常の成長方法により成長させ、成長が完了した後、当業における通常の方法により切断や研磨等の機械加工を行う。
【0021】
本発明に記載の前記音響光学デバイスは、当業における通常の方法により組み付けることができる。
【0022】
本発明の有利な効果は以下のとおりである。
本発明では、高性能の音響光学デバイスを製造するために、新規なモリブデン/タングステンテルル四元化合物が音響光学媒体として使用される。使用される材料は無毒であり、高品質且つ大寸法である単結晶が容易に得られ、結晶の物理的特性は高品質の音響光学材料に対する全の要求をほぼ満足するため、重要な潜在的な使用価値がある。このような材料は光透過波帯がいずれも3〜5umの波帯を覆うことができるということは注目に値する。このような材料は高結晶系結晶、中結晶系結晶及び低結晶系結晶を含む多様な構造を有するため、実用化の要求に応じて材料を選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の音響光学デバイスの回折原理説明図
図2】本発明の実施例1〜6に係る音響光学デバイスのQスイッチング光路説明図。
図3】本発明の実施例1に係るQスイッチングレーザー出力表示図
図4】本発明の実施例2に係るQスイッチングレーザー出力表示図
図5】本発明の実施例3に係るQスイッチングレーザー出力表示図
図6】本発明の実施例4に係るQスイッチングレーザー出力表示図
図7】本発明の実施例5に係るQスイッチングレーザー出力表示図
図8】本発明の実施例6に係るQスイッチングレーザー出力表示図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施例及び図面を参照しながら、本発明を詳細に説明するが、それらに限定されるものではない。
【0025】
実施例に記載の結晶はいずれも先行技術により製造される。
ここで、α−BaTeMo結晶は特許文献3により製造されるものであり、β−BaTeMo結晶は特許文献4により製造されるものであり、CsTeMo12結晶は特許文献5により製造されるものであり、CsTeW12結晶は特許文献6により製造されるものであり、NaTeW結晶は非特許文献1により製造されるものである。
【0026】
<実施例1:α−BaTeMo結晶>
α−BaTeMo結晶は、二軸結晶、斜方晶系、mm2点群に属する。結晶は光透過範囲が0.38〜5.53μmであり、透過率が80%程度であり、コーティングされた後の透過率が99%以上に達し、比較的大きな屈折率(n=2.42@0.4μm)を示す。α−BaTeMo結晶は、大寸法且つ高品質の単結晶を容易に成長させる性能、耐潮解性、耐劈開性、適度な硬度(Mohs〜4.7)、機械的に加工されやすい性能、比較的大きな光損傷閾値等の優れた物理的化学的性能を有する。
【0027】
音響光学デバイスは、音響光学媒体と圧電トランスデューサとインピーダンス整合ネットワークとからなるものである。音響光学媒体としてα−BaTeMo結晶を選択し、結晶音響光学係数及び光の結晶における伝播特性に基づいて設計・最適化される。(本実施例では、z軸を光透過方向として選択し、圧電トランスデューサをx軸に置く)。光透過方向において結晶を研磨し、光学的反射防止膜@1064nmをコーティングする。音響光学デバイスはアルミニウム製シェルで封止される。
【0028】
ドライバーは信号生成と電力増幅回路とからなるものである。作動電圧は直流+24Vであり、「電力出力」端は駆動力を出力し、高周波ケーブルを介して光変調器デバイスに接続され、「入力」端により変調信号を入力する。
【0029】
本実施例に係る音響光学デバイスをQスイッチレーザに適用する場合、音響光学デバイスQスイッチング光路図は図2に示した通りであり、音響光学素子Qスイッチング光路は順に接続された励起光源1、集束系2、入力ミラー3、レーザー結晶4(Nd:YAG)、音響光学変調器5及び出力ミラー6を含み、音響光学変調器5の音響光学媒体はα−BaTeMo結晶材料である。音響光学デバイスは、電気音響変換によって超音波を形成し、変調媒体の屈折率を周期的に変化させ、入射光に対して回折格子の役割を果たし、回折損失が発生し、Q値が低下するため、レーザ発振が発生できない。光ポンプの励起下で、その上準位の反粒子ビームは連続的に蓄積されて飽和値に達する。この時点で、超音波場を急に除去すると、回折効果が直ちに消失し、腔内のQ値が急増し、レーザ発振が迅速に回復され、そのエネルギーがジャイアントパルスの形で出力される。図3のように表される。
<実施例2:β−BaTeMo結晶>
【0030】
β−BaTeMo結晶は二軸結晶、単斜晶系、2点群に属する。結晶は光透過範囲が0.5〜5μmであり、透過率が80%程度であり、コーティングされた後の透過率が99%以上に達し、比較的大きな屈折率(n=2.32@0.4μm)を示す。β−BaTeMo結晶も、大寸法且つ高品質の単結晶を容易に成長させる性能、耐潮解性、耐劈開性、適度な硬度(Mohs〜4.7)、機械的に加工されやすい性能、比較的大きな光損傷閾値等の優れた物理的化学的性能を有する。
【0031】
β−BaTeMo結晶の音響光学デバイスは実施例1に類似している。異なるのは、本実施例では、結晶方位は、結晶の屈折率主軸であるZ軸を音響光学デバイスの光透過方向として選択し、圧電トランスデューサをY軸に置くことである。同様に、図2に示されるレーザー光路に基づき、Qスイッチレーザの出力を実現でき、図4のように表される。
<実施例3:CsTeMo12結晶>
【0032】
CsTeMo12結晶は一軸結晶、六方晶系、6点群に属する。結晶は光透過範囲が0.43〜5.38μmであり、透過率が80%程度であり、コーティングされた後の透過率が99%以上に達し、比較的大きな屈折率(n=2.03@0.4μm、n=2.23@0.48μm)を示す。CsTeMo12結晶は、大寸法且つ高品質の単結晶を容易に成長させる性能、耐潮解性、耐劈開性、適度な硬度(Mohs〜4.7)、機械的に加工されやすい性能、比較的大きな光損傷閾値等の優れた物理的化学的性能を有する。
【0033】
CsTeMo12結晶の音響光学デバイスは実施例1に類似している。該実施例において、結晶の屈折率Z軸を結晶の光透過方向として選択し、トランスデューサを屈折率X軸に置く。同様に、図2に示されるレーザ光路に基づき、Qスイッチレーザの出力を実現できる。図5のように表される。
<実施例4:CsTeW12結晶>
【0034】
CsTeW12結晶は一軸結晶、六方晶系、6点群に属する。結晶は光透過範囲が0.41〜5.31μmであり、透過率が80%程度であり、コーティングされた後、その透過率が99%を超え、比較的大きな屈折率(n=1.98@0.4μm、n=2.20@0.48μm)を示す。CsTeW12結晶は、大寸法且つ高品質の単結晶を容易に成長させる性能、耐潮解性、耐劈開性、適度な硬度(Mohs〜4.5)、機械的に加工されやすい性能、比較的大きな光損傷閾値等の優れた物理的化学的性能を有する。
【0035】
CsTeW12結晶の構造及び性能はCsTeMo12結晶に類似している。該実施例において、結晶の光透過方向はCsTeMo12結晶と完全に同じである。同様に、図2に示されるレーザ光路に基づき、Qスイッチレーザの出力を実現できる。図6のように表される。
<実施例5:CdTeMoO結晶>
【0036】
CdTeMoO結晶は一軸結晶、正方結晶系、−42m点群に属する。結晶は光透過範囲が0.345〜5.40μmであり、透過率が80%程度であり、コーティングされた後、その透過率が99%を超え、比較的大きな屈折率を示す。CdTeMoO結晶は、大寸法且つ高品質の単結晶を容易に成長させる性能、耐潮解性、適度な硬度、加工性されやすい性能、優れた熱安定性及び化学的安定性、比較的大きな光損傷閾値等の優れた物理的化学的性能を有する。
【0037】
CdTeMoO結晶の音響光学デバイスは実施例1に類似している。結晶屈折率Z軸を結晶の光透過方向として選択し、、トランスデューサを屈折率X軸に置く。同様に、図2に示されるレーザ光路に基づき、スイッチレーザの出力を実現できる。図7のように表される。
<実施例6:NaTeW結晶>
【0038】
NaTeW結晶は二軸結晶、単斜晶系、m点群に属する。結晶は光透過範囲が0.45〜5.0μmであり、透過率が80%程度であり、コーティングされた後、その透過率が99%を超える。比較的大きな屈折率(n=2.12@0.6μm)を示す。NaTeW結晶は、大寸法且つ高品質の単結晶を容易に成長させる性能、耐潮解性、耐劈開性、適度な硬度、機械的に加工されやすい性能、比較的大きな光損傷閾値等の優れた物理的化学的性能を有する。
【0039】
NaTeW結晶の音響光学デバイスは実施例1に類似している。結晶屈折率Z軸を結晶の光透過方向として選択し、トランスデューサ屈折率X軸に置く。同様に、図2に示されるレーザ光路に基づき、Qスイッチレーザの出力を実現できる。図8のように表される。
【0040】
実施例1〜6における結晶、通常の融解石英及びTeOの性能を測定した結果を以下の表1に表す。
【0041】
【表1】
【0042】
表1から分かるように、本発明に係る結晶の基本的な物理的特性はTeO結晶に近く、そのうち、α−BaTeMo結晶の音響光学デバイスの性能パラメータの中で、回折角も回折効率もTeO音響光学デバイスよりやや高い。
【符号の説明】
【0043】
1 励起光源
2 集束系
3 入力ミラー
4 レーザー結晶
5 音響光学変調器
6 出力ミラー

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8