(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ボールレンズを支持し、デジタルカメラ機能、及び画像表示部を備えた携帯端末装置のカメラレンズの前面に該ボールレンズが配置されるように前記携帯端末装置にセットされるボールレンズユニットと、精液試料を保持する試料保持面を一面に有すると共に他面に前記ボールレンズと接触する接触面を有した透明シートと、を備えた試料観察用キットを用いた精液試料の観察方法であって、
前記ボールレンズが前記カメラレンズの前面に配置されるように前記ボールレンズユニットを前記携帯端末装置にセットするステップと、
前記試料保持面に精液試料を保持させた状態で前記透明シートの接触面が前記ボールレンズと接触するように前記透明シートを前記ボールレンズユニットにセットするステップと、
前記携帯端末装置のデジタルカメラ機能を作動させて前記ボールレンズにより拡大された前記精液試料の画像を取込み、前記画像表示部に表示させるステップと、
前記画像表示部に表示された前記画像内において、精子の数をカウントするステップと、
前記精子の数が、前記携帯端末装置の機種に基づいて定められている第1の所定値以上であるか否かを判断し、前記第1の所定値よりも少ない場合に不妊症の可能性があると判断し、前記第1の所定値以上である場合に正常であると判断するステップと、
を含むことを特徴とする試料観察用キットを用いた精液試料の観察方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、材質、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。なお、図中同一又は相当部分には同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0014】
(試料観察用キット200の構成)
図1は、本発明の実施形態に係る試料観察用キット200の概略構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の試料観察用キット200は、デジタルカメラ部310、及び画像表示部320を備えた携帯端末装置300のカメラレンズ311の前面に配置され、デジタルカメラ部310によって精液試料Sの画像を取込み、画像表示部320に表示させることを可能とする製品である。試料観察用キット200は、携帯端末装置300上に固定されるボールレンズユニット210と、精液試料Sを保持し、ボールレンズユニット210上に配置される試料保持ユニット220と、によって構成されている。
【0015】
(ボールレンズユニット210の構成)
図2は、本実施形態のボールレンズユニット210の構成を説明する図であり、
図2(a)は平面図であり、
図2(b)は、
図2(a)のA−A線断面図である。
図2(a)及び(b)に示すように、ボールレンズユニット210は、本体シート211、鉄粉シート212、レンズ支持部材213、ボールレンズ215、粘着シート(粘着部、スペーサ)216等を備えている。
【0016】
本体シート211は、柔軟性を有した樹脂等からなる細長薄板状(例えば、厚さ0.5mm)の部材である。本体シート211の略中央部には、円形の貫通孔211aが形成されており、後述するレンズ支持部材213が貫通孔211aに挿通されて、円環状の粘着テープ214によって本体シート211の下面に取り付けられている。また、本体シート211の下面には、ボールレンズユニット210を携帯端末装置300に固定するための自己粘着性を有したウレタンゲル製の一対の矩形状の粘着シート216が固定されている。自己粘着性ウレタンゲルは自由に何度でも取付け、取外しが可能であり、機種に応じて最適な箇所に装着できる。
【0017】
鉄粉シート212は、本体シート211と略同形のシート(例えば、厚さ0.6mm)であり、鉄粉等の磁性体粉をゴム、樹脂等に混ぜてシートとしたものであり、本体シート211の上面に両面テープ等の接着手段によって固定されている。鉄粉シート212の略中央部には、貫通孔211aと連通する貫通孔212aが形成されており、レンズ支持部材213に支持されるボールレンズ215が、鉄粉シート212の上面から僅かに突出するように配置されている。鉄粉シート212は、試料保持ユニット220がボールレンズユニット210上に配置されたときに試料保持ユニット220のマグネットシート222に吸着されて固定される。
本体シート211,鉄粉シート212,及び粘着シート216の合計厚さ(ボールレンズ215の突出長を含む)は、例えば2.5〜2.7mm(平均2.6mm)程度であり、スペーサとしても機能する粘着シート216の厚さを調整して携帯端末装置のカメラレンズとの距離を微調整することにより、最適な精子の映像を得るための最適な位置関係を確保することができる。
粘着シート216の厚みを所定値、例えば1mmに調整することにより、ボールレンズ215と携帯端末装置側のカメラレンズとの距離を調整して画像表示部に表示される画像の視野範囲を調整することができる。画像表示部上の視野範囲調整の基準の設定の仕方としては、目視で精子数をカウントし易い少ない数、例えば10個以内の数の精子が映るような面積の視野範囲を得ることができるように設定する。
本発明では、画像表示部上に最適な視野範囲の画像が投映されるので、この視野の範囲内で合焦点状態にある精子数をカウントすればよい。
なお、ボールレンズ215と携帯端末装置側のカメラレンズとの距離を調整する手段(スペーサ)として粘着シート216を用いるのは一例に過ぎない。本体シート211、鉄粉シート212の厚みを機種に対応して最適の厚みに設定することにより上記距離を調整することもできる。
【0018】
レンズ支持部材213は、無底円錐状のプラスチック製の部材であり、貫通孔211aに挿通されて、本体シート211に固定されている。レンズ支持部材213の頂点部には、ボールレンズ215が嵌まり込む円形の開口部213aが形成されている。また、レンズ支持部材213の円錐面の端部は、外側に向かって拡がっており、円環状の固定部213bが形成されている。レンズ支持部材213を貫通孔211aに挿通すると、固定部213bが粘着テープ214の下面に当て付いて位置決めされるようになっている。つまり、レンズ支持部材213は、固定部213bを覆うように配置される円環状の粘着テープ214によって本体シート211の下面に取り付けられる。
【0019】
ボールレンズ215は、ガラス又はプラスチック製の球形レンズであり、本実施形態においては、直径:約0.8mmのものを用いている。ボールレンズ215は、レンズ支持部材213の頂点部の開口部213aに嵌合した状態で接着剤等によって固定されており、上述したように、鉄粉シート212の上面から僅かに突出するように配置される。そして、試料保持ユニット220がボールレンズユニット210上に配置されると、ボールレンズ215は、試料保持ユニット220の透明シート225の接触面225bに密着するようになっている。なお、ボールレンズユニット210が携帯端末装置300上に配置されたときに、携帯端末装置300とボールレンズ215との間隔は約2.6mmに設定されている。また、本実施形態のボールレンズ215の光学特性は、以下のとおりである。
(1)明視距離: 250mm
(2)有効焦点距離: 0.45mm
(3)倍率: 555倍
【0020】
(試料保持ユニット220の構成)
図3は、本実施形態の試料保持ユニット220の構成を説明する図であり、
図3(a)は平面図であり、
図3(b)は、
図3(a)のB−B線断面図である。
図3(a)及び(b)に示すように、試料保持ユニット220は、マグネットシート222、透明シート225を備えている。
【0021】
マグネットシート222の直径約8mmの貫通孔222aは、精液試料Sを保持する試料保持部Pを形成している。マグネットシート222の他端部(
図3の右側端部)は、試料保持ユニット220をボールレンズユニット210上に配置するときにユーザが把持する把持部である。
【0022】
マグネットシート222(例えば、厚さ0.8mm)は、試料保持ユニット220がボールレンズユニット210上に配置されたときにボールレンズユニット210の鉄粉シート212を吸着して固定する。
【0023】
透明シート225は、例えば、厚さ0.03mm程度の透明樹脂(ポリエステル、ポリエチレン、PET、塩化ビニル等)フィルムであり、貫通孔222aを塞ぐように、マグネットシート222の下面に接着剤によって固定されている。透明シート225は予め片面に接着剤を塗布した粘着テープとすることによりマグネットシート222の一面に接着するのが好ましい。親水性を有する接着剤を用いることにより、滴下される精液とのなじみを良くすることができ、精子を透明シート面に密着させることができる。その結果、カウントに適した正確な映像を得ることができる。
透明シート225の上面は、貫通孔222aを通して精液試料Sが滴下されたときに、該精液試料Sを保持する試料保持面225aを形成している。また透明シート225の下面は、試料保持ユニット220がボールレンズユニット210上に配置されたときに、ボールレンズ215と接触する接触面225bとなっている。なお、透明シートは必ずしも厳密な意味の透明であることが絶対要件ではなく、精液の撮影、観察に支障がない程度の透明性があればよい。従って、透明度が若干低下していても撮影、観察に支障がなければ問題ない。
【0024】
(試料観察用キット200を用いた精液試料Sの観察方法)
図4は、本実施形態の試料観察用キット200を用いた精液試料Sの観察方法を説明するフローチャートである。
【0025】
図4に示すように、本実施形態の試料観察用キット200を用いて精液試料Sを観察する場合、先ず、ボールレンズ215が携帯端末装置300のカメラレンズ311の前面に配置されるように(つまり、ボールレンズ215の光軸とカメラレンズ311の光軸が略一致するように)ボールレンズユニット210を携帯端末装置300にセットする(
図4:S101)。
【0026】
次いで、試料保持ユニット220の試料保持面225aに約10μl程度の精液試料Sを滴下し、試料保持面225aに精液試料Sを保持させた状態で透明シート225の接触面225bがボールレンズ215と接触するように、試料保持ユニット220をボールレンズユニット210上にセットする(
図4:S103)。
【0027】
図5は、試料保持ユニット220をボールレンズユニット210上にセットした状態を示す断面図である。
図5に示すように、試料保持ユニット220をボールレンズユニット210上にセットすると、ボールレンズ215の光軸、カメラレンズ311の光軸、及び携帯端末装置300内の撮像素子312の光軸が略一致するように配置される。
【0028】
次いで、携帯端末装置300のデジタルカメラ部310を機能させてボールレンズ215により拡大された精液試料Sの画像を取込み、画像表示部320に表示させる(
図4:S105)。
【0029】
図6は、携帯端末装置300の構成を説明するブロック図である。
図6に示すように、携帯端末装置300は、デジタルカメラ部310と、画像表示部320と、ユーザからの入力操作を受け付けるタッチパネル330と、各種アプリケーションプログラムが格納されているフラッシュメモリ340と、アプリケーションプログラムが展開されるRAM(Random Access Memory)350と、携帯端末装置300の各部を制御するプロセッサ360等から構成されている。
【0030】
ユーザが、タッチパネル330を操作してデジタルカメラ部310を機能させると、プロセッサ360は、フラッシュメモリ340に記憶された、デジタルカメラ部310を制御するためのアプリケーションプログラムをRAM350に展開して実行する。そして、プロセッサ360は、カメラ制御回路313を制御して撮像素子312を駆動し、カメラレンズ311を通して撮像素子312に結像される画像を画像データ(動画、或いは静止画)として取り込み、画像表示部320に出力する。
【0031】
上述したように、本実施形態においては、ボールレンズ215の光軸、カメラレンズ311の光軸、及び携帯端末装置300内の撮像素子312の光軸が略一致しており、また上述したようにボールレンズ215の有効焦点距離が0.45mmと短いため(つまり、焦点深度が浅いため)、透明シート225の接触面225bのボールレンズ215が接触している領域において、接触面225bと対向する試料保持面225aの表面近傍に位置する精液試料Sがボールレンズ215によって拡大されて、カメラレンズ311を通して、撮像素子312に結像する。従って、デジタルカメラ部310を機能させると、精液試料Sの拡大画像が画像データとして取り込まれ、画像表示部320に表示されることとなる。
【0032】
図7は、本実施形態の携帯端末装置300の画像表示部320に表示される精液試料Sの拡大画像の一例を示す図である。
図7に示すように、本実施形態においては、ボールレンズ215の倍率とデジタルカメラ部310の仕様(撮像素子312のサイズ等)で定まる所定の総合倍率で拡大される結果、精液試料Sに含まれる精子の画像が画像表示部320に表示される。
【0033】
精液試料Sに含まれる精子の画像が画像表示部320に表示されたら、次いで、画像表示部320に表示された画像内において、精子の数をカウントする(
図4:S107)。
具体的には、画像表示部320に表示された画像内において、常に動いている生きた精子(つまり、運動精子)の数と、動きの停止した死んだ精子(つまり、不動精子)の数をカウントし、それらの和(つまり、総精子数)を求めている。なお、このような生死の違いの判断では、静止画による観察よりも動画による観察が適している。従って、所定時間をかけて映像を撮影した後で、任意の時間、例えば1秒間映像を動画として再生することにより一目で生きている精子を判別してその数をカウントすることができる。
また、カウントの対象となるのは、合焦点の位置にある精子だけであり、合焦点状態にあるか否かの判断に際しては例えば精子の頭部に焦点が合っている精子をカウント対象とする。更に具体的には、合焦点状態にあるために頭部が明確に見える精子をカウント対象にする。実験では、目視確認した際に合焦点状態にあるものは誰によっても容易に判別でき、その判別は極めて容易であった。例えば、
図7中の精子S1は合焦点状態にあるということができる。本発明では、このような映像を用いた判別、カウント方法を実施することにより、熟練や経験、知識の有無に関係なく誰が実施してもほぼ同一のカウント結果を得ることが可能となる。
【0034】
本実施形態の構成においては、使用する携帯端末装置300によってデジタルカメラ部310の仕様(撮像素子312のサイズ等)が異なるため、画像表示部320に表示される画像の視野範囲が異なり、画像表示部320に表示される画像内の総精子数も使用する携帯端末装置300によって異なることとなる。しかしながら、本発明の発明者等は、鋭意検討した結果、後述するように、本発明の観察方法によって得られる総精子数と、一般的な精液検査で用いられるCASA(Computer-Aided Sperm Analysis)システムによって計測した精子濃度との間には強い相関(第1の相関)があり、使用する携帯端末装置300に応じて所定の閾値(第1の所定値)を設定することにより、不妊症の可能性の有無を判断できることを見出した。また、本発明の観察方法によって得られる運動精子の数と総精子数から求まる精子の運動率(運動精子の数÷総精子数)と、CASAシステムによって計測した精子の運動率との間には強い相関(第2の相関)があり、使用する携帯端末装置300に応じて所定の閾値(第2の所定値)を設定することにより、不妊症の可能性の有無を判断できることを見出した。
【0035】
そこで、本実施形態の観察方法においては、画像表示部320に表示された画像内の総精子数及び運動率が、夫々所定値以上であるか否かを判断し、所定値よりも少ない場合に不妊症の可能性があると判断し、所定値以上である場合に正常であると判断している(
図4:S109)。
なお、精子は略丸い頭部、及び推進運動を行う尾部とから概略構成されているが、本発明装置を用いた実際の観察においては画像内には全体形状が明確な映像として現れるものと、頭部のみが現れるものと、不明瞭な映像として現れるもの等が混在している。このような状況下において、今回の観察では主として頭部が合焦点状態で明確な映像として現れる精子のみ(
図7の精子S1)をカウント対象とした。
【0036】
(試料観察用キット200を用いた精液試料Sの観察方法とCASAシステムとの相関)
図8〜
図10は、本実施形態の観察方法とCASAシステムとの相関を調べるために、本発明の発明者等が行った第1の実験の結果であり、
図11〜
図13は、第2の実験の結果である。
【0037】
図8〜
図10に示す第1の実験においては、50人のボランティアから提供された精液サンプルを用いて、本実施形態の観察方法によって総精子数(運動精子の数+不動精子の数)を求め、また研究所ベースのCASAシステムによって精子濃度を求めた。
また、
図11〜
図13に示す第2の実験においては、50人のボランティアから提供された精液サンプルを用いて、本実施形態の観察方法によって得られた運動精子の数と総精子数から精子の運動率(運動精子の数÷総精子数)を求め、また研究所ベースのCASAシステムによって精子の運動率を求めた。
なお、本実施形態の観察方法によって総精子数(運動精子の数+不動精子の数)を求めるにあたっては、携帯端末装置300としてアップル社製iPhone(登録商標)6S、アップル社製iPhone(登録商標)5S、及びLGエレクトロニクス社製Optimus(登録商標)Exceed 2を使用し、画像表示部320に表示された画像内において、ピントが合った、頭部の形状を明確に視認できる精子(頭部と尾部が共に明確な精子を含む)だけを目視によってカウントした。
【0038】
図8は、携帯端末装置300としてアップル社製iPhone(登録商標)6Sを使用した場合の、本実施形態の観察方法によってカウントされた総精子数とCASAシステムで計測された精子濃度との関係を示すグラフである。
図9は、携帯端末装置300としてアップル社製iPhone(登録商標)5Sを使用した場合の、本実施形態の観察方法によってカウントされた総精子数とCASAシステムで計測された精子濃度との関係を示すグラフである。また、
図10は、携帯端末装置300としてLGエレクトロニクス社製Optimus(登録商標)Exceed 2を使用した場合の、本実施形態の観察方法によってカウントされた総精子数とCASAシステムで計測された精子濃度との関係を示すグラフである。
図8〜
図10において、縦軸は、本実施形態の観察方法によってカウントされた精子数(n/FOV(Field Of View))を示し、横軸は、CASAシステムで計測された精子濃度(×10
6/ml)を示している。なお、
図8〜
図10における各直線は、各データから得られた回帰直線である。
【0039】
図11は、携帯端末装置300としてアップル社製iPhone(登録商標)6Sを使用した場合の、本実施形態の観察方法によって求めた精子の運動率(運動精子の数÷総精子数)とCASAシステムで計測された精子の運動率との関係を示すグラフである。
図12は、携帯端末装置300としてアップル社製iPhone(登録商標)5Sを使用した場合の、本実施形態の観察方法によって求めた精子の運動率(運動精子の数÷総精子数)とCASAシステムで計測された精子の運動率との関係を示すグラフである。また、
図13は、携帯端末装置300としてLGエレクトロニクス社製Optimus(登録商標)Exceed 2を使用した場合の、本実施形態の観察方法によって求めた精子の運動率(運動精子の数÷総精子数)とCASAシステムで計測された精子の運動率との関係を示すグラフである。
図11〜
図13において、縦軸は、本実施形態の観察方法によって求めた精子の運動率(%)を示し、横軸は、CASAシステムで計測された精子の運動率(%)を示している。なお、
図11〜
図13における各直線は、各データから得られた回帰直線である。
【0040】
(第1の実験結果の考察)
図8に示すように、携帯端末装置300としてアップル社製iPhone(登録商標)6Sを使用した場合、本実施形態の精液試料Sの観察方法によってカウントされた総精子数(運動精子の数+不動精子の数)は、CASAシステムで計測された精子濃度と強い相関(有意確率p<0.001)があることが分かった。また、
図8から、画像表示部320に表示される総精子数が8個よりも多ければ、2010年にWHO(World Health Organization)から発表された精子濃度の基準値(1,500万個/ml以上)を満たすことが分かる。つまり、画像表示部320に表示される総精子数が8個よりも多いか否かを判断し、8個以下である場合に不妊症の可能性があると判断し、8個よりも多い場合に正常であると判断することができることが分かった。なお、このような検査を行った場合、感度は87.5%であり、特異度は90.9%であることが分かった。
【0041】
図9に示すように、携帯端末装置300としてアップル社製iPhone(登録商標)5Sを使用した場合、本実施形態の精液試料Sの観察方法によってカウントされた総精子数(運動精子の数+不動精子の数)は、CASAシステムで計測された精子濃度と強い相関(有意確率p<0.001)があることが分かった。また、
図9から、画像表示部320に表示される総精子数が5個よりも多ければ、2010年にWHOから発表された精子濃度の基準値(1,500万個/ml以上)を満たすことが分かる。つまり、画像表示部320に表示される総精子数が5個よりも多いか否かを判断し、5個以下である場合に不妊症の可能性があると判断し、5個よりも多い場合に正常であると判断することができることが分かった。なお、このような検査を行った場合、感度は90.9%であり、特異度は88.2%であることが分かった。
【0042】
図10に示すように、携帯端末装置300としてLGエレクトロニクス社製Optimus(登録商標)Exceed 2を使用した場合、本実施形態の精液試料Sの観察方法によってカウントされた総精子数(運動精子の数+不動精子の数)は、CASAシステムで計測された精子濃度と強い相関(有意確率p<0.001)があることが分かった。また、
図10から、画像表示部320に表示される総精子数が5個よりも多ければ、2010年にWHOから発表された精子濃度の基準値(1,500万個/ml以上)を満たすことが分かる。つまり、画像表示部320に表示される総精子数が5個よりも多いか否かを判断し、5個以下である場合に不妊症の可能性があると判断し、5個よりも多い場合に正常であると判断することができることが分かった。なお、このような検査を行った場合、感度は75.0%であり、特異度は87.8%であることが分かった。
【0043】
以上のように、本実施形態の精液試料Sの観察方法によってカウントされた総精子数は、CASAシステムで計測された精子濃度と強い相関があり、使用する携帯端末装置300に応じて所定の閾値を設定することにより(つまり、スマートフォンの機種を選ばず)、不妊症の可能性の有無を判断することができる。また、かかる検査方法は、感度及び特異度が高いことから、不妊症のスクリーニング検査として十分に機能するものであることが分かる。また、本実施形態の精液試料Sの観察方法は、精子数を目視によってカウントするものであり、特別なアプリケーションソフトを必要とせず、正確にカウントすることができる。
【0044】
(第2の実験結果の考察)
図11に示すように、携帯端末装置300としてアップル社製iPhone(登録商標)6Sを使用した場合、本実施形態の精液試料Sの観察方法によって求めた精子の運動率(運動精子の数÷総精子数)は、CASAシステムで計測された精子の運動率と強い相関(有意確率p<0.001)があることが分かった。また、
図11から、本実施形態の精液試料Sの観察方法によって求めた精子の運動率が50%よりも大きければ、2010年にWHOから発表された精子の総運動率の基準値(40%以上)を満たすことが分かる。つまり、本実施形態の精液試料Sの観察方法によって求めた精子の運動率が50%よりも大きいか否かを判断し、50%以下である場合に不妊症の可能性があると判断し、50%よりも大きい場合に正常であると判断できることが分かった。
【0045】
図12に示すように、携帯端末装置300としてアップル社製iPhone(登録商標)5Sを使用した場合、本実施形態の精液試料Sの観察方法によって求めた精子の運動率(運動精子の数÷総精子数)は、CASAシステムで計測された精子の運動率と強い相関(有意確率p<0.001)があることが分かった。また、
図12から、本実施形態の精液試料Sの観察方法によって求めた精子の運動率が55%よりも大きければ、2010年にWHOから発表された精子の総運動率の基準値(40%以上)を満たすことが分かる。つまり、本実施形態の精液試料Sの観察方法によって求めた精子の運動率が55%よりも大きいか否かを判断し、55%以下である場合に不妊症の可能性があると判断し、55%よりも大きい場合に正常であると判断することができることが分かった。
【0046】
図13に示すように、携帯端末装置300としてLGエレクトロニクス社製Optimus(登録商標)Exceed 2を使用した場合、本実施形態の精液試料Sの観察方法によって求めた精子の運動率(運動精子の数÷総精子数)は、CASAシステムで計測された精子の運動率と強い相関(有意確率p<0.001)があることが分かった。また、
図13から、本実施形態の精液試料Sの観察方法によって求めた精子の運動率が55%よりも大きければ、2010年にWHOから発表された精子の総運動率の基準値(40%以上)を満たすことが分かる。つまり、本実施形態の精液試料Sの観察方法によって求めた精子の運動率が55%よりも大きいか否かを判断し、55%以下である場合に不妊症の可能性があると判断し、55%よりも大きい場合に正常であると判断することができることが分かった。
【0047】
以上のように、本実施形態の精液試料Sの観察方法によって求めた精子の運動率(運動精子の数÷総精子数)は、CASAシステムで計測された精子の運動率と強い相関があり、使用する携帯端末装置300に応じて所定の閾値を設定することにより(つまり、スマートフォンの機種を選ばず)、不妊症の可能性の有無を判断することができる。
【0048】
以上が本発明の実施形態の説明であるが、本発明は、上記の実施形態の構成に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で様々な変形が可能である。例えば、本実施形態においては、直径:約0.8mmのボールレンズ215を用いる構成としたが、精子数を正確にカウントできる倍率を有するものであればよく、直径の異なるボールレンズを適用することもでき、また他の光学系を適用することも可能である。
【0049】
また、本実施形態の観察方法においては、画像表示部320に表示された画像内の総精子数及び運動率について、所定値以上であるか否かを判断するものとしたが、総精子数、又は運動率のいずれか一方について、所定値以上であるか否かを判断し、これによって不妊症の可能性があるか否かを判断してもよい。
【0050】
(本発明の構成、作用、効果のまとめ)
本発明に係る試料観察用キット200は、デジタルカメラ部310、及び画像表示部320を備えた携帯端末装置300のカメラレンズ311の前面に配置され、デジタルカメラ部310によって精液試料Sの画像を取込み、画像表示部320に表示させることを可能とする試料観察用キット200であって、ボールレンズ215を支持し、カメラレンズ311の前面に該ボールレンズ215が配置されるように携帯端末装置300上にセットされるボールレンズユニット210と、精液試料Sを保持する試料保持面225aを一面に有すると共に他面にボールレンズ215と接触する接触面225bを有した透明シート225を有し、ボールレンズユニット210上に配置される試料保持ユニット220と、を備え、ボールレンズ215は、精液試料Sを所定の倍率で拡大し、デジタルカメラ部310に結像することを特徴とする。
更に、画像表示部上に拡大して表示された精子試料の視野範囲を、該視野範囲内の精子数がCASAシステムで計測した精子濃度に対して所定の相関関係を有するように設定するか,又は前記視野範囲内の精子の運動率が前記CASAシステムで計測した精子の運動率に対して所定の相関関係を有するように設定する。
このような構成によれば、携帯端末装置300のデジタルカメラ部310を利用して、精液試料Sの拡大画像を容易に得ることができる。つまり、簡単かつ安価な構成で精液試料Sを観察できる試料観察用キット200が実現される。
即ち、携帯端末装置用の格別の高価なソフトウェアを使用することなく、簡単かつ安価な構成で、しかも携帯端末装置の画像表示部に映った比較的少ない(目視でカウントし易い程度の)数の精子数から不妊症の可能性、有無を簡易に観察できる試料観察用キットを提供すること、及び不妊症の可能性の有無を判断可能な試料観察用キットを用いた精液試料の観察方法を提供することができる。
目視でカウントし易い精子数とは、例えば0〜15個の範囲を例示できるが、視野範囲との関係で視野範囲内の精子の密度(個数)がカウントするのに問題ない程度に低ければ16個以上であってもよい。
【0051】
本発明に係る試料観察用キット200は、ボールレンズユニット210及び試料保持ユニット220の少なくともいずれか一方が、他方を吸着する磁性体部(鉄粉シート212)、或いは磁石部(マグネットシート222)を有することを特徴とする。
このような構成によれば、ボールレンズユニット210と試料保持ユニット220との位置合わせを容易に行うことができる。
【0052】
本発明に係る試料観察用キット200は、磁性体部(鉄粉シート212)、又は磁石部(マグネットシート222)が、ボールレンズユニット210の試料保持ユニット220と対向する面、及び試料保持ユニット220のボールレンズユニット210と対向する面に形成されていることを特徴とする。
【0053】
本発明に係る試料観察用キット200は、ボールレンズユニット210が、携帯端末装置300と対向する面上に、ボールレンズユニット210を携帯端末装置300に着脱自在に固定する粘着部(粘着シート216)を有することを特徴とする。
このような構成によれば、ボールレンズユニット210を携帯端末装置300上に容易に固定することができる。また、粘着部の厚さを携帯端末装置の機種に応じて調整することにより、ボールレンズと携帯端末装置側のカメラレンズとの距離を微調整して画像表示部に投映される映像の視野範囲を最適なものに設定することができる。視野範囲(倍率)は、人間にとってカウントし易い少ない数の精子を含むように設定されるため、例えば、視野範囲内にある総精子数が5個を越えれば不妊症ではない(正常である)等と、素人であっても簡易に判定を行うことが可能となる。
【0054】
本発明に係る試料観察用キット200は、ボールレンズ215が、ボールレンズユニット210の試料保持ユニット220と対向する面から突出していることを特徴とする。
このような構成によれば、試料保持ユニット220をボールレンズユニット210上に配置したときに、透明シート225の接触面225bがボールレンズ215に確実に接触する。
【0055】
本発明に係る試料観察用キット200は、ボールレンズ215が、接触面225bのボールレンズ215が接触している領域において、接触面225bと対向する試料保持面225aの表面近傍の精液試料Sをデジタルカメラ部310に結像することを特徴とする。
【0056】
本発明に係る試料観察用キット200は、試料保持ユニット220が、ボールレンズユニット210と対向する面上に透明シート225を有し、試料保持面225aが露出するように形成された開口部(貫通孔222a)を有することを特徴とする。
本発明に係る試料観察用キット200は、前記画像表示部上に拡大して表示された前記精液試料の視野範囲を15個以内の数の精子が映るような面積の視野範囲に設定するようにしてもよい。
視野範囲(倍率)は、医学的知識を備えない一般の人間にとってカウントし易い少数の精子を含むように設定されているが、その数値は例えば15個以内である。
なお、画像表示部の面上に、所定の開口面積、開口形状の開口部を備えたテンプレートを配置して開口部から映像を視認できるようにすることにより、当該開口部によって視野範囲を設定することも可能ではある。これによれば、ボールレンズと携帯端末装置側のカメラレンズとの距離を微調整して画像表示部に投映される映像の視野範囲を最適なものに調整せずに開口部内の精子の数をカウントするだけで不妊症の有無について判定することが可能となる。
【0057】
本発明に係る試料観察用キット200を用いた精液試料Sの観察方法は、ボールレンズ215を支持し、デジタルカメラ機能(デジタルカメラ部310)、及び画像表示部320を備えた携帯端末装置300のカメラレンズ311の前面に該ボールレンズ215が配置されるように携帯端末装置300にセットされるボールレンズユニット210と、精液試料Sを保持する試料保持面225aを一面に有すると共に他面にボールレンズ215と接触する接触面225bを有した透明シート225と、を備えた試料観察用キット200を用いた精液試料Sの観察方法であって、ボールレンズ215がカメラレンズ311の前面に配置されるようにボールレンズユニット210を携帯端末装置300にセットするステップ(S101)と、試料保持面225aに精液試料Sを保持させた状態で透明シート225の接触面225bがボールレンズ215と接触するように透明シート225をボールレンズユニット210にセットするステップ(S103)と、携帯端末装置300のデジタルカメラ機能(デジタルカメラ部310)を作動させてボールレンズ215により拡大された精液試料Sの画像を取込み、画像表示部320に表示させるステップ(S105)と、画像表示部320に表示された画像内において、精子の数をカウントするステップ(S107)と、を含むことを特徴とする。
このような構成によれば、スマートフォン等の携帯端末装置300を利用して、目視によって精子数を正確にカウントすることができる。
【0058】
本発明に係る試料観察用キット200を用いた精液試料Sの観察方法は、精子の数が、所定数以上であるか否かを判断し、所定数よりも少ない場合に不妊症の可能性があると判断し、所定数以上である場合に正常であると判断するステップ(S109)をさらに含むことを特徴とする。
このような構成によれば、不妊症のスクリーニング検査を容易に行うことができる。
【0059】
本発明に係る試料観察用キット200を用いた精液試料Sの観察方法は、精子の数が、精液試料SをCASAシステムで計測した精子濃度との間で所定の相関を有し、所定数が、相関に基づいて定められていることを特徴とする。
【0060】
本発明に係る試料観察用キット200を用いた精液試料Sの観察方法は、所定数が、携帯端末装置300の機種に基づいて定められていることを特徴とする。
このような構成によれば、携帯端末装置300として様々な機種を選択することが可能となる。
【0061】
本発明に係る試料観察用キット200を用いた精液試料Sの観察方法は、精子の数が、運動精子の数と不動精子の数の和であり、精子の数に対する運動精子の数から運動率を求め、該運動率が第2の所定値以上であるか否かを判断し、第2の所定値よりも少ない場合に不妊症の可能性があると判断し、第2の所定値以上である場合に正常であると判断するステップをさらに含むことを特徴とする。
このような構成によれば、不妊症のスクリーニング検査を容易に行うことができる。
【0062】
本発明に係る試料観察用キット200を用いた精液試料Sの観察方法は、運動率が、精液試料をCASAシステムで計測した運動率との間で第2の相関を有し、第2の所定値が、第2の相関に基づいて定められていることを特徴とする。
【0063】
本発明に係る試料観察用キット200を用いた精液試料Sの観察方法は、第2の所定値が、携帯端末装置300の機種に基づいて定められていることを特徴とする。
このような構成によれば、携帯端末装置300として様々な機種を選択することが可能となる。
【0064】
なお、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。