(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6630900
(24)【登録日】2019年12月20日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】逆止め弁
(51)【国際特許分類】
F16K 15/14 20060101AFI20200106BHJP
E03C 1/298 20060101ALI20200106BHJP
E03C 1/292 20060101ALI20200106BHJP
E03F 7/04 20060101ALI20200106BHJP
【FI】
F16K15/14 C
E03C1/298
E03C1/292
E03F7/04
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-34208(P2015-34208)
(22)【出願日】2015年2月24日
(65)【公開番号】特開2016-156435(P2016-156435A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2018年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000157212
【氏名又は名称】丸一株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 嘉浩
【審査官】
所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】
特表2006−511768(JP,A)
【文献】
特開2014−015719(JP,A)
【文献】
実開昭63−166772(JP,U)
【文献】
実公昭36−011658(JP,Y1)
【文献】
実開平06−069536(JP,U)
【文献】
特開2013−061045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 15/14
E03C 1/292
E03C 1/298
E03F 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下流側に負圧が生じる配管上に配置される逆止め弁であって、
逆止め弁は、略筒体形状にして弾性を有する素材からなり、
流体が流下する開口が形成された開口部と、
開口部の下方に形成され、下流側に進むにつれて対向する面に対して漸次近接する近接部と、
近接部の更に下流側であって、平素の状態では対向する二つの面が当接することで閉塞する開閉部と、からなり、
開閉部の、開閉部の対向する二つの面に対して側面に、当該側面を外端まで切断する切り込み部を備え、該切り込み部は開閉部の端部から近接部に達しない任意の位置にまで備えられてなることを特徴とする逆止め弁。
【請求項2】
上記逆止め弁において、開閉部の対向する二つの面が共に平坦面である事を特徴とする、請求項1に記載の逆止め弁。
【請求項3】
上記排水配管上に配置される逆止め弁において、
開閉部は閉塞して成形され、
成形後に切断することによって、開閉部の開口及び切り込み部を構成することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の逆止め弁。
【請求項4】
上記逆止め弁が配置される配管が、下流側に他の排水配管との接続箇所を備えた排水配管であることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の逆止め弁。
【請求項5】
上記逆止め弁が配置される配管が、下流側に他の流体との接続箇所を備え、該流体との配管側に、配管外の空気を供給するための吸気管であることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の逆止め弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方へ流れようとする気体、液体、泡などの流体の圧力に対して開口して流体を通過させると共に、他方へ流れようとする流体の圧力に対しては閉塞した状態を維持して流体の通過を防止する逆止め弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
排水配管や通気管、吸気管等の配管の内部には、下流側からの排水や臭気、害虫等の逆流を防ぐために逆止め弁が配置されていることがある。当該逆止め弁は、上流側又は下流側からの流体の圧力に対して開閉する弁部分である開閉部を有し、当該開閉部によって逆流防止機能を構成する。
【0003】
特許文献1に記載されている逆止め弁は、略筒体状にしてゴム等の弾性体より成り、上方(上流)において流体が流入する開口が形成されているとともに、下方(下流)において対向する面同士が当接することによって開閉部を形成している。
上記特許文献1に記載のような逆止め弁は、逆止め弁に対し、上流側又は下流側から正圧も負圧も付与されていない状態において開閉部が閉塞を維持する構造となっている。
当該逆止め弁に対して上流側より排水等が流入した際、当該排水等によって開閉部が押し広げられて開口し、排水等を下流側へと流出させる。そして、上流からの排水等の流入が終了した際には自身の弾性によって復元し、閉塞状態となる。尚、下流側から排水等による正圧が加わった際には、開閉部が閉塞を維持し、上流側への逆流を防止する構造となっている。
即ち、上記逆止め弁は、開閉部の対向する二つの面同士が当接することによって閉塞状態を維持する構造となっているが、排水配管や通気管、吸気管等の配管はその内部に負圧が生じるがある。例えば、排水配管に多量の排水が生じた場合、配管内部の管路が満水状態となり、サイホン現象と呼ばれる引き込みによって配管内部が負圧となる。このような場合において、逆止め弁の上流側から下流側にかけて流体、特に空気・大気等の気体が通過する(逆止め弁内に気体が流入する)際に、以下の理由により逆止め弁より不快音が生じることがある。
【0004】
上流側より気体が逆止め弁に流入した際、当該気体によって逆止め弁は内部より開閉部が押し広げられて開口し、気体を下流側へと流出させる。この時、逆止め弁はゴム等の弾性体より成るため、当該開閉部は自身の弾性力によって閉塞しようとする。従って、気体の流入時には逆止め弁の開閉部が開口/閉塞を繰り返すことで細かく震え、開閉部の隙間が閉じたり開いたりを繰り返すことで上記のような不快音が生じるとともに、当該不快音は逆止め弁の下流側に接続された配管によって増幅される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−15719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は配管の下流側に負圧が生じる等して気体が逆止め弁内を通過する場合等であっても、不快音が生じることのない逆止め弁の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1に記載の本発明は、下流側に負圧が生じる配管上に配置される逆止め弁であって、
逆止め弁は、略筒体形状にして弾性を有する素材からなり、
流体が流下する開口が形成された開口部と、
開口部の下方に形成され、下流側に進むにつれて対向する面に対して漸次近接する近接部と、
近接部の更に下流側であって、平素の状態では対向する二つの面が当接することで閉塞する開閉部と、からなり、
開閉部の、開閉部の対向する二つの面に対して側面
に、当該側面を外端まで切断する切り込み部を備え、
該切り込み部は開閉部の端部から近接部に達しない任意の位置にまで備えられてなることを特徴とする逆止め弁である。
【0008】
尚、ここにいう「平素の状態」とは、逆止め弁に対し、上流側又は下流側から正圧も負圧も付与されていない状態を指すものである。
【0009】
請求項2に記載の本発明は、上記逆止め弁において、開閉部の対向する二つの面が共に平坦面である事を特徴とする、請求項1に記載の逆止め弁である。
【0010】
請求項3に記載の本発明は、上記排水配管上に配置される逆止め弁において、
開閉部は閉塞して成形され、
成形後に切断することによって、開閉部の開口及び切り込み部を構成することを特徴とする、請求項1
または請求項
2に記載の逆止め弁である。
【0011】
請求項4に記載の本発明は、上記逆止め弁が配置される配管が、下流側に他の排水配管との接続箇所を備えた排水配管であることを特徴とする、請求項1乃至請求項
3のいずれか一つに記載の逆止め弁である。
【0012】
請求項5に記載の本発明は、上記逆止め弁が配置される配管が、下流側に他の流体との接続箇所を備え、該流体との配管側に、配管外の空気を供給するための吸気管であることを特徴とする、請求項1乃至請求項
3のいずれか一つに記載の逆止め弁である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1及び請求項2に記載の本発明によれば、開閉部の対向する二つの面に対して側面
に、当該側面を外端まで切断する切り込み部を備えたことにより、開閉部の対向する二つの面同士が密着しようとする向きに働く弾性力を抑えることが可能となる。従って、気体が逆止め弁内を通過した際において、開閉部が細かく震えることを防ぎ、不快音の発生を防ぐことができる。又、本発明によれば、開閉部の対向する二つの面が共に平坦面である場合のように、開閉部より不快音が発生し易い形状であっても当該不快音の発生を防ぐことが可能となる。
また、請求項
1に記載の本発明によれば、上記切り込み部を開閉部の端部から近接部に達しない任意の位置にまで備えることによって、逆止め弁本来の効果である逆止め効果を損なう事無く、不快音の発生を防ぐことができる。
請求項
3に記載の本発明によれば、上記切り込み部を逆止め弁の成形後に形成することにより、逆止め弁に対して上流及び下流側に負圧又は正圧が生じていない際において、開閉部及び切り込み部の密着性を向上させることができる。従って、逆止め弁の逆止め効果を向上させることが可能となる。
請求項
4及び請求項
5に記載の本発明によれば、本発明の逆止め弁が配置される配管を明確にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】逆止め弁本体を示す(a)正面図(b)側面図である。
【
図3】逆止め弁本体を示す(a)平面図(b)(a)のA−A'断面図である。
【
図5】逆止め弁本体の前段階を示す(a)平面図(b)(a)のA−A'断面図である。
【
図8】第二実施形態に係る逆止め弁の施工状態を示す参考図である。
【
図9】逆止め弁本体を示す(a)正面図(b)側面図である。
【
図10】逆止め弁本体を示す(a)平面図(b)(a)のA−A'断面図である。
【
図12】その他の実施形態に係る逆止め弁の施工状態を示す参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の逆止め弁1を説明する。尚、以下に記載する説明は実施形態の理解を容易にするためのものであり、これによって発明が制限して理解されるものではない。又、以下の実施形態においては
図1等に示す施工完了状態を基準として位置関係を説明する。
【0016】
本実施形態に係る逆止め弁1は、逆止め弁本体2と、ケーシング8と、蓋体11と、取付部材12とを備えている。尚、本実施形態に係る逆止め弁1は、図示しない設備機器からの排水を下水側へと排出する排水配管P上に配置され、上流側の排水配管Pである上流側配管100と下流側の排水配管Pである下流側配管200とを連結している。そして、当該排水配管Pは後述するように、下流側に負圧が生じる配管である。
【0017】
図2乃至
図4に基づいて、本実施形態に係る逆止め弁本体2を説明する。
逆止め弁本体2は筒体の一端を重ね合わせた形状であって、側面視略漏斗状であって内部に排水流路を有し、ゴムやシリコン等の弾性素材より成り、開口部3、近接部4、開閉部5、筒部7より構成されている。尚、逆止め弁本体2の背面図は正面図と同一であるため省略し、左側面図は右側面図と同一であるためその記載を省略している。
【0018】
開口部3は逆止め弁本体2の上端であって、外周及び内周が拡径して形成されている。
図3に示すように、開口部3は平面視において扁平形状を成しており、後述する近接部4の上方が短径側であって、長径側に比べて約1割程度短く形成されており、筒部7の上方が長径側となるように形成されている。又、開口部3の長径側は後述する開閉部5の当接面と略平行に伸びている。
【0019】
近接部4は逆止め弁本体2の正面及び背面において、開口部3の短径側の下方より下流側に向けて延設され、一方の近接部4が対向する近接部4に向けて漸次近接するように形成されている。即ち、
図2及び
図3に示すように、逆止め弁本体2は、下流側に進むにつれて近接部4が互いに逆止め弁本体2の中心軸へ向けて漸次近接し、近接部4下端において当接することで開閉部5を形成する。
【0020】
開閉部5は逆止め弁本体2の下端に形成され、前記近接部4同士が逆止め弁本体2の中心軸上で互いに当接し、当該当接状態のまま垂直方向に延設されることによって構成されている。即ち、開閉部5は上流側又は下流側から正圧も負圧も付与されていない状態(以下、「平素の状態」)、即ち、開閉部5に対して何ら応力が作用していない状態において対向する二つの平坦面が当接することで閉塞状態を維持し、下流側からの臭気や害虫の逆流を防ぐ機能(逆流防止機能)を有している。
ここで、本発明の逆止め弁本体2は
図2及び
図4に示すように、開閉部5の対向する二つの平坦面に対して側面に切り込み部6が形成されている。切り込み部6は開閉部5の下端から上端近傍まで設けられており、開閉部5において対向する二つの面が連続する部分に切り込みを入れて形成されたものである。従って、開閉部5の対向する二つの面は互いに当接しているが、開閉部5上端を除き、周方向において連続していない。
【0021】
筒部7は前記開口部3の長径側より垂設され、近接部4と隣接する筒状部である。又、筒部7は右側面側の筒部7と左側面側の筒部7にそれぞれ2箇所ずつ、合計4箇所にリブ71が形成されている。
リブ71は
図2に示すように、逆止め弁本体2の軸方向に対して平行に設けられた肉厚部分であって、逆止め弁本体2の他の部分よりも高い剛性、特に軸方向の圧力に対して高い剛性を有している。又、リブ71は筒部7の上端から近接部4に達する位置まで垂設されており、近接部4及び開閉部5上には設けられていない。
従って、逆止め弁本体2はリブ71が設けられている部分において軸方向に高い剛性を備え、下流側からの正圧による変形を防ぐとともに、近接部4や開閉部5にはリブ71を設けないようにして変形を阻害しないように構成されている。
【0022】
ここで、上記逆止め弁本体2の製造方法について説明する。まず、金型のキャビティにゴムやシリコン等の原料を充填し、加熱・加圧を行い、逆止め弁本体2の前段階となる逆止め弁本体21を成型する。ここで、
図5及び
図6に示すように、逆止め弁本体21は開閉部5の前段階となる開閉部51を有しており、当該開閉部51は閉塞している。
次に、金型より取り出された逆止め弁本体21の下流側端部より刃物を押し当て、開閉部5を形成する。この様に、開閉部5は元々一体成形されていた開閉部51を後加工により切断して形成されていることから、対向する二つの面の間には隙間が生じにくく、好適な密着性を確保することができる。
そして、開閉部5の対向する二つの面に対して側面に刃物を押し当て、任意の位置まで切り込み部6を形成する。尚、切り込み部6の高さについては逆流防止効果との兼ね合いより決定されるものである。即ち、切り込み部6を大きく形成すると開閉部5の振動に伴う不快音を低減させることができる一方で、逆流防止効果が低下することから、使用用途に合わせ、適宜切り込み部6の高さを変更しても良い。
又、切り込み部6が開閉部5の上端まで形成される場合等においては、開閉部5と切り込み部6を一度に成形しても良いものであって、刃物を押し当てる方向、順番等は特に限定されるものではない。
【0023】
ケーシング8は上流側配管100と下流側配管200に接続され、内部に逆止め弁本体2が配置される円筒状の継ぎ手部材であって、収納部9及び挿入口10を備えている。
収納部9はケーシング8の内部に形成された空間であって、逆止め弁本体2、蓋体11、取付部材12を内部に収納可能となっている。又、
図7に示すように、収納部9の上面は軸方向に対して傾斜しており、取付部材12が挿入された際、取付部材12の上面に設けられたパッキンが水密に当接する。
挿入口10はケーシング8の側面に形成された開口であって、蓋体11の周囲に設けられた溝部と係合する突起が内側に向けて突出している。
【0024】
蓋体11は上記挿入口10を遮蔽する蓋部と、取付部材12と係合する爪状の係合部より形成されている。蓋部はその外周が挿入口10の内周と略同径であるとともに、前記挿入口10に形成された突起と係合する溝部が周方向に向けて形成されている。
【0025】
取付部材12はケーシング8に逆止め弁本体2を取り付けるための部材であって、上記蓋体11の係合部に回動自在に係合される爪状の被係合部と、逆止め弁本体2の開口部3が嵌合する嵌合部13とを備えており、上面にはケーシング8と水密に当接するためのパッキンが配置されている。尚、取付部材12の上記嵌合部13は断面視正円形状の鍔状部であり、その外径は開口部3の内径よりも大きい。
【0026】
上記逆止め弁1は、以下のようにして施工される。
【0027】
まず、ケーシング8を上流側配管100及び下流側配管200に接着する。
次に、逆止め弁本体2の開口部3の内周面が取付部材12の嵌合部13の外周面に密着するよう、逆止め弁本体2を取付部材12に嵌合させる。この時、当該嵌合部13の外径は開口部3の内径よりも大きいことから、開口部3は内側から外側に向けて押し広げられる。又、前記逆止め弁本体2の開口部3は平面視扁平形状であるが、嵌合部13は正円形状となっていることから、開口部3の短径側は長径側に比べて大きく外側に向けて変形し、正円形となる。この時、逆止め弁本体2の開閉部5に対し、当接する面同士が互いに近接する方向に応力が加わる。言い換えると、上記嵌合によって開閉部5の互いの面が、対向する面へ向けて付勢される。従って、逆止め弁本体2が嵌合部13に外嵌めされる前の状態(逆止め弁本体2単体での状態)において、開閉部5に隙間が生じており、閉塞状態が維持されていない状態であっても、嵌合部13に取り付けられることにより平素の状態においては開閉部5がしっかりと閉塞される。
次に、取付部材12、逆止め弁本体2をケーシング8の挿入口10から挿入する。この時、ケーシング8の収納部9上面は傾斜していることから、パッキンを介してケーシング8と取付部材12は水密に当接する。
そして、蓋体11を回転させることで挿入口10の突起と蓋体11の溝部を係合させ、挿入口10を遮蔽することで施工が完了する。
【0028】
上記逆止め弁1は、平素の状態においては開閉部5において逆止め弁本体2の内面同士が当接することによって閉塞状態を維持し下流側からの排水や臭気、害虫の侵入を防ぐ逆流防止機能を形成する。尚、その他の場合には以下のように作動する。
【0029】
逆止め弁1の下流側より正圧が発生した場合、逆止め弁1は閉塞状態を維持し下流側からの排水や臭気、害虫の侵入を防ぐ。
【0030】
逆止め弁1の上流側より排水が生じた場合、当該排水は上流側の排水配管Pである上流側配管100を通り、逆止め弁本体2の内部へと流入する。逆止め弁本体2へと流入した排水は、逆止め弁本体2内部より近接部4及び開閉部5に対して水勢と排水の自重によって圧力(正圧)を加え、内側より開閉部5を押し広げる。そして、開閉部5が一時的に開口状態となることによって、内部に流入した排水が下流側へと排出される。そして、上流側からの排水が終了すると、開閉部5は自身の弾性力によって復元するため、開閉部5は再び閉塞状態となる。
【0031】
上記のように、自身が処理した排水にて管内が満水となることによって生じる自己サイホン現象や、下流側の配管に他の排水機器等の排水が流れることで生じる誘導サイホン現象その他の理由により、逆止め弁1の下流側配管200が負圧となった場合、逆止め弁1の上流側から下流側にかけて空気・大気等の気体が通過する。この時、当該気体によって逆止め弁本体2は内部より開閉部5が押し広げられて開口し、気体を下流側へと流出させる。
ここで、前記従来技術に記載された逆止め弁においては、気体を下流側へ流出させる際に開閉部が自身の弾性力(復元力)によって閉塞しようとし、開閉部が開口/閉塞を繰り返すことで細かな振動が生じる。しかし、本発明における逆止め弁1は開閉部5の対向する二つの面に対して側面に切り込み部6が形成されていることから、従来技術のように、開閉部5が自身の弾性力(復元力)によって閉塞しようとする力が抑えられており、開閉部5に細かな振動が生じない。従って、本発明の逆止め弁1は下流側の配管が負圧となった際において、従来技術のように不快音が生じることはない。
【0032】
本発明の第一実施形態は以上であるが、本発明の逆止め弁1は第一実施形態の形状に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えても良い。
例えば、上記第一実施形態において、開閉部5に形成された切り込み部6は開閉部5の下端から上端近傍まで設けられていたが、
図8乃至
図11に示す本発明の第二実施形態のように、切り込み部6が開閉部5よりも上方にまで形成されていても良い。即ち、切り込み部6の長さはその使用箇所や要求される逆流防止能力等によって決定されるものであって、特に限定されるものではない。
【0033】
尚、本発明は上記実施形態において、空調用のドレン排水流路を形成する排水配管P中に配置されている例を挙げたが、本発明の逆止め弁1はシンク、洗面台、風呂等、使用によって排水が生じる設備機器の排水流路中に配置されて良いものであって、その使用用途が限定して解釈されるものではない。即ち、本発明の逆止め弁1は
図12に示すように、配管の枝管に備えられ、配管外の空気を配管内に供給することを目的とした吸気管上に配置されても良い。又、第一実施形態の排水に代えて、配管内を空気が流れることを目的とした通気管上に配置されても良い。
【0034】
又、上記各実施形態において記載した逆止め弁本体2は、近接部4の下端より開閉部5が形成されているが、前記従来技術のように、近接部4と開閉部5の間に隙間等(従来技術における第二傾斜面・第二開閉部)なんらかの構造を有するものであっても良いものであって、逆止め弁本体2の形状は発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 逆止め弁
2、21 逆止め弁本体
3 開口部
4 近接部
5、51 開閉部
6 切り込み部
7 筒部
71 リブ
8 ケーシング
9 収納部
10 挿入口
11 蓋体
12 取付部材
13 嵌合部
100 上流側配管
200 下流側配管
P 排水配管