特許第6631022号(P6631022)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6631022
(24)【登録日】2019年12月20日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】粘着剤およびそれを用いた粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/14 20060101AFI20200106BHJP
   C09J 133/24 20060101ALI20200106BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20200106BHJP
   C09J 133/08 20060101ALI20200106BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20200106BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20200106BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20200106BHJP
【FI】
   C09J133/14
   C09J133/24
   C09J133/06
   C09J133/08
   C09J11/06
   C09J7/30
   G02B5/30
【請求項の数】7
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-59466(P2015-59466)
(22)【出願日】2015年3月23日
(65)【公開番号】特開2016-180018(P2016-180018A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2018年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福田 克哲
(72)【発明者】
【氏名】石津 智世
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−102322(JP,A)
【文献】 特開2016−079256(JP,A)
【文献】 特開2013−127012(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/121122(WO,A1)
【文献】 特開2013−075980(JP,A)
【文献】 特開平09−288214(JP,A)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系共重合体と、イソシアネート系硬化剤と、シランカップリング剤とを含み、前記アクリル系共重合体が、水酸基含有モノマー(A)、アミド基含有モノマー(B)(ただし、前記モノマー(A)を除く)、ホモポリマーのガラス転移温度が0〜50℃のモノマー(C)(ただし、前記モノマー(A)およびモノマー(B)を除く)、ホモポリマーのガラス転移温度が60〜150℃のモノマー(D)(ただし、前記モノマー(A)およびモノマー(B)を除く)、その他モノマー(E)を含むモノマー混合物を重合してなり、
前記モノマー(D)は、炭素数1〜3のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、または(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルであり、
前記モノマー混合物全量中、水酸基含有モノマー(A)0.05〜5重量部、ホモポリマーのガラス転移温度が0〜50℃のモノマー(C)10〜40重量部であることを特徴とする粘着剤。
【請求項2】
前記モノマー(C)が、炭素数1〜3のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル、または、アクリル酸シクロアルキルエステルであることを特徴とする請求項1記載の粘着剤。
【請求項3】
前記アクリル系共重合体の分子量分布が10〜40であることを特徴とする請求項1または2記載の粘着剤。
【請求項4】
前記モノマー混合物全量中、アミド基含有モノマー(B)0.1〜5重量部、ホモポリマーのガラス転移温度が60〜150℃のモノマー(D)2〜30重量部、その他モノマー(E)20〜93.85重量部であることを特徴とする、請求項1〜いずれか1項に記載の粘着剤。
【請求項5】
基材と、請求項1〜いずれか1項に記載の粘着剤から形成されてなる粘着剤層とを備えてなる粘着シート。
【請求項6】
偏光板と、請求項1〜いずれか1項に記載の粘着剤から形成されてなる粘着剤層とを備えてなる偏光板粘着シート。
【請求項7】
ガラス板と、請求項1〜いずれか1項に記載の粘着剤から形成されてなる粘着剤層と、光学部材とを備えてなる液晶セル部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックやガラス等の部材に使用できる粘着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
電子計算機、電子時計、携帯電話、テレビジョン等の家庭用・業務用電化製品など様々な機器に使用される液晶ディスプレイ等の表示装置は、大型化が進んでおり、特に液晶テレビやプラズマテレビ等は大型化が顕著である。また、近年ではスマートフォンやタブレットをはじめとするタッチパネル方式の液晶ディスプレイが急速に普及しており、今後も大きな市場拡大が期待されている。一方で、液晶ディスプレイは、カーナビゲーションなど車載機器等にも使用されており、高温高湿雰囲気などの過酷な車内環境下で使用できる耐久性が必要とされている。
そして、液晶ディスプレイには、様々な光学的機能を有する偏光板や位相差板等が用いられており、これらは粘着剤を介してガラスや透明なプラスチックを使用した液晶セル等の被着体に貼付される。
【0003】
前記偏光板は、一般にポリビニルアルコールフィルムがトリアセチルセルロース系フィルムやシクロオレフィン系フィルムにより、挟まれた構成の積層体である。そして、これらのフィルムは、それぞれ機械特性が異なるため加熱時の寸法変化率が異なる、そのため高温雰囲気下に置かれた場合、前記積層体に反りが生じることが多い。
【0004】
ここで例えば、偏光板/粘着剤層/ガラス(ガラスは液晶セルの表面部材)の液晶セル用部材を高温雰囲気に放置すると、偏光板の構成部材間の寸法変化率に由来する反りが発生したり、粘着剤層とガラスとの貼着界面に気泡(発泡)が発生したり、偏光板がガラスから浮き上がり剥がれるといった問題が発生する場合がある。また、反りに起因して液晶セル用部材の応力分布が不均一となり、応力が液晶セル用部材の周辺端部へ集中する結果、液晶セル用部材の四隅や周辺端部から光が漏れる、いわゆる「光漏れ現象」という問題が生じる場合がある。前記の問題は、高温高湿雰囲気でも同様に発生する。
【0005】
他方、液晶ディスプレイ等の製造工程では、偏光板を液晶セルなどの光学部品に貼合せるときに、貼合せ位置にずれが生じた場合など、貼合せてから一定の時間が経過した後に偏光板を剥離し、高価な液晶セルを再利用することが行われている。そのため、粘着剤には貼付から一定時間が経過した後に偏光板を液晶セルから再剥離できる特性(リワーク性)が求められている。
【0006】
これらの問題を解決すべく、特許文献1では、粘着剤に可塑剤など添加することで、粘着剤層を適度に軟らかくして応力緩和性を付与し、光漏れを防止する技術が開示されている。しかし、可塑剤を添加した場合、偏光板を剥離した際に被着体を汚染するブリードアウトの原因となる上、凝集力を低下させるため、貼合せてから一定時間経過後(経時)において、浮きや剥がれが生じやすく、過剰量の可塑剤添加によって、塗膜の白化が生じる等の問題があった。
【0007】
また、特許文献2では、芳香環含有モノマーを使用したアクリル系共重合体を含ませることにより、応力緩和性を高め、光漏れを防止する技術が開示されている。しかし、特許文献2に挙げられている芳香環含有モノマーを使用した粘着剤は、光漏れ評価において、白抜けが発生し、また光学特性が劣るという問題があった。
【0008】
一方で、特許文献3では、再剥離性を付与するために、重量平均分子量50万以上の高分子量アクリル系重合体に対し、酸価が高く、重量平均分子量0.2〜10万の低分子量アクリル系重合体をブレンドする技術が開示されている。しかし、特許文献3記載の粘着剤は、粘着剤の乾燥条件が制限されるという問題があった。
【0009】
さらには、特許文献4では、カルボキシル基を有する重量平均分子量70万以上のアクリル系重合体と、重量平均分子量800〜5万のアクリル系重合体とを併用する事で、応力緩和性を高める技術が開示されている。しかし、特許文献4記載の粘着剤は、凝集力が著しく低下するという問題があった。
【0010】
また、特許文献5では、2種以上のモノマーを使用したブロックポリマーを使用することで、加熱や加湿条件下での耐久性や粘着特性を向上させる技術が開示されている。しかし、特許文献5記載の粘着剤は、加熱や加湿条件下での透過率が低下するという問題があった。
【0011】
また、特許文献6では、ガラス転移温度が−55℃以上0℃未満のアクリル系共重合体と、ガラス転移温度が0℃以上180℃以下のアクリル系共重合体とを含む、水分散型粘着剤によって、偏光解消を起こしにくく、かつ、リワーク性、リサイクル性を付与する技術が開示されている。しかし、特許文献6記載の粘着剤は、粘着剤に使用される種々の添加剤によって、ガラス等の被着体を汚染するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平9−87593号公報
【特許文献2】特開2007−169329号公報
【特許文献3】特開2010−100710号公報
【特許文献4】特開2004−69975号公報
【特許文献5】特開2013−82772号公報
【特許文献6】特開2014−1365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、上記諸問題を解決すべく、粘着フィルムに用いたときに、剥離性に優れ、高温環境下や高温高湿環境下に曝された後、被着体からの浮きや剥がれが発生しにくい粘着剤およびそれを用いた粘着シートを提供することを目的とする。さらに偏光板固定用に用いたとき、光漏れ評価が良好であり、高温高湿環境下に曝された場合においても高い透明性を維持できる良好な粘着力を有し、また、ガラス等の被着体を汚染することが無い粘着剤およびそれを用いた粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に至った。
即ち、本発明は、アクリル系共重合体と、イソシアネート系硬化剤と、シランカップリング剤とを含み、前記アクリル系共重合体が、水酸基含有モノマー(A)、アミド基含有モノマー(B)(ただし、前記モノマー(A)を除く)、ホモポリマーのガラス転移温度が0〜50℃のモノマー(C)(ただし、前記モノマー(A)およびモノマー(B)を除く)、ホモポリマーのガラス転移温度が60〜150℃のモノマー(D)(ただし、前記モノマー(A)およびモノマー(B)を除く)、その他モノマー(E)を含むモノマー混合物を重合してなることを特徴とする粘着剤に関する。
【0015】
また、本発明は、前記モノマー(C)が、炭素数1〜3のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル、または、アクリル酸シクロアルキルエステルである前記粘着剤に関する。
【0016】
また、本発明は、前記モノマー(D)が、炭素数1〜3のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、または、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルである前記粘着剤に関する。
【0017】
また、本発明は、前記アクリル系共重合体の分子量分布が10〜40である前記粘着剤に関する。
【0018】
また、本発明は、前記モノマー混合物全量中、水酸基含有モノマー(A)0.05〜5重量部、アミド基含有モノマー(B)0.1〜5重量部、ホモポリマーのガラス転移温度が0〜50℃のモノマー(C)4〜40重量部、ホモポリマーのガラス転移温度が60〜150℃のモノマー(D)2〜30重量部、その他モノマー(E)20〜93.85重量部である前記粘着剤に関する。
【0019】
また、本発明は、基材と、前記粘着剤から形成されてなる粘着剤層とを備えてなる粘着シートに関する。
【0020】
また、本発明は、偏光板と、前記粘着剤から形成されてなる粘着剤層とを備えてなる偏光板粘着シートに関する。
【0021】
また、本発明は、ガラス板と、前記粘着剤から形成されてなる粘着剤層と、光学部材とを備えてなる液晶セル部材に関する。
【発明の効果】
【0022】
上記のように構成した本発明によれば、粘着剤から形成した粘着剤層はアクリル系共重合体と、イソシアネート系硬化剤とが架橋反応をおこし、樹脂ネットワークを形成する。当該粘着剤層は凝集力を損なわず、応力緩和に優れるため、高温雰囲気下または高温高湿雰囲気下に曝された場合にも、浮きおよび剥がれが生じにくく、光漏れが生じにくいという効果を有する。また、粘着剤層の透明性が高く、高温高湿環境下に曝された場合においても高い透明性を維持できるという効果を有する。さらには、低分子およびオリゴマー成分のブリードアウトが生じないため、被着体汚染を低減できるという効果を有する。
【0023】
本発明により再剥離性に優れ、高温環境下や高温高湿環境下に曝された後に、例えばガラスやプラスチックス等に被着体から浮きや剥がれが生じにくく、光漏れが生じにくい粘着シートを作成できる粘着剤を提供できた。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の粘着剤は、アクリル系共重合体と、イソシアネート系硬化剤と、シランカップリング剤とを含み、前記アクリル系共重合体が、水酸基含有モノマー(A)、アミド基含有モノマー(B)(ただし、前記モノマー(A)を除く)、ホモポリマーのガラス転移温度が0〜50℃のモノマー(C)(ただし、前記モノマー(A)およびモノマー(B)を除く)、ホモポリマーのガラス転移温度が60〜150℃のモノマー(D)(ただし、前記モノマー(A)およびモノマー(B)を除く)、その他モノマー(E)を含むモノマー混合物を重合してなることを特徴とする。
本発明の粘着剤は、塗工、乾燥することで粘着剤層を形成した粘着テープとして使用することが好ましい。当該粘着テープは、光学部材用、特に液晶ディスプレイの部材を接着する用途に使用することが好ましい。
【0025】
本発明においてアクリル系共重合体は、水酸基含有モノマー(A)を含有する。水酸基含有モノマー(A)を含むアクリル系共重合体は、イソシアネート系硬化剤との架橋反応によりポリマーネットワークを形成することで、浮きおよび剥がれの抑制、光漏れの抑制ができる効果が得られる。なお、本発明において(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルを含む。
【0026】
本発明における水酸基含有モノマー(A)としては、具体的には、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルや、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリル酸エステルなどのグリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸エステル、などが挙げられる。また、これらは単独または2種以上を併用できる。
【0027】
前記水酸基含有モノマー(A)は、モノマー混合物100重量部中、0.05〜5重量部含むことが好ましく、0.5〜3重量部がより好ましい。含有量が0.05重量部以上になることで凝集力がより向上する。また、含有量が5重量%以下になることで凝集力と応力緩和性を両立しやすくなる。
【0028】
本発明においてアクリル系共重合体は、アミド基含有モノマー(B)を含有する。本明細書でいう「アミド基」とは、窒素原子上の水素原子が、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基等の置換基によって置換されていても良いカルバモイル基を意味し、該置換基は互いに結合し環を形成しても良い。一般的なアクリル系共重合体では、重合終期に生成するオリゴマーのブリードアウトによって、耐久性低下を引き起こす場合がある。本発明においては、アミド基含有モノマー(B)は重合速度が遅く、重合終期に重合を開始するため、アクリル系共重合体のうち、オリゴマーに多く含有される。アミド基を含有するオリゴマーは、微極性を有するためブリードアウトを起こしにくく、耐久性低下を抑制する効果が得られる。
【0029】
本発明におけるアミド基含有モノマー(B)としては、具体的には、(メタ)アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−(ブトキシメチル)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド系の化合物、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、などの複素環を含有した化合物、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミドなどが挙げられる。また、これらは単独または2種以上を併用できる。
【0030】
前記アミド基含有モノマー(B)は、モノマー混合物100重量部中0.1〜5重量部含むことが好ましく、0.2〜3重量部がより好ましい。含有量が0.1重量部以上になることで凝集力がより向上する。また、含有量が5重量%以下になることで凝集力と応力緩和性を両立しやすくなる。
【0031】
本発明においてアクリル系共重合体は、ホモポリマーのガラス転移温度が0〜50℃のモノマー(C)を含有する。一般的なアクリル系共重合体では、高温雰囲気下または、高温高湿雰囲気下に曝された際の発泡を抑制する目的に高分子量体を得るため、ホモポリマーのガラス転移温度が0℃未満のモノマーで構成する。しかしながら、発泡は抑制できるものの、得られる粘着剤層の弾性が十分で無いため、高い接着強度を得ることが出来ず、高温雰囲気下に長期にわたり曝された際、浮きや剥がれが生じる場合がある。本発明においては、アクリル系共重合体がホモポリマーのガラス転移温度が0〜50℃のモノマー(C)を含有することで、十分な弾性を得ることができ、高い接着強度が得られるため、高温雰囲気下に長期にわたり曝された際、発泡、浮き、剥がれを抑制する効果が得られる。
【0032】
本発明におけるホモポリマーのガラス転移温度が0〜50℃のモノマー(C)としては、具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec-ブチル、メタクリル酸ステアリル、などが挙げられる。これらの中でもアクリル酸メチル、アクリル酸シクロヘキシルが良好な粘着性能を得やすいという点から好ましい。これらは単独または2種以上を併用できる。
【0033】
前記ホモポリマーのガラス転移温度が0〜50℃のモノマー(C)は、モノマー混合物100重量部中4〜40重量部含むことが好ましく、10〜30重量部がより好ましい。含有量が4重量部以上になることで凝集力がより向上する。また、含有量が40重量%以下になることで凝集力と応力緩和性を両立しやすくなる。
【0034】
本発明においてアクリル系共重合体は、ホモポリマーのガラス転移温度が60〜150℃のモノマー(D)を含有する。一般的なアクリル系共重合体では、高温雰囲気下または、高温高湿雰囲気下に曝された際の粘着剤層の収縮を抑制する目的に、高分子量体を得るため、ホモポリマーのガラス転移温度が0℃未満のモノマーで構成する。しかしながら、粘着剤層の収縮は抑制できるものの、得られる粘着剤層の弾性が十分で無いため、高い接着強度を得ることが出来ず、高温雰囲気下に長期にわたり曝された際、浮きや剥がれが生じる場合がある。本発明においては、アクリル系共重合体がホモポリマーのガラス転移温度が60〜150℃のモノマー(D)を含有することで、十分な塗膜強度を得ることができるため、高温雰囲気下または、高温高湿雰囲気下に長期にわたり曝された際、粘着剤層の収縮、浮きや剥がれを抑制する効果が得られる。
【0035】
本発明におけるホモポリマーのガラス転移温度が50〜150℃のモノマー(D)としては、具体的には、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、などが挙げられる。これらの中でもアクリル酸イソボルニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸シクロヘキシルが良好な粘着性能を得やすいという点から好ましい。これらは単独または2種以上を併用できる。
【0036】
前記ホモポリマーのガラス転移温度が60〜150℃のモノマー(C)は、モノマー混合物100重量部中2〜30重量部含むことが好ましく、5〜20重量部がより好ましい。含有量が2重量部以上になることで凝集力がより向上する。また、含有量が30重量%以下になることで凝集力と応力緩和性を両立しやすくなる。
【0037】
本発明においてアクリル系共重合体は、その他モノマー(E)を含有する。その他モノマー(E)は高温雰囲気下または、高温高湿雰囲気下に曝された際の発泡、粘着剤層の収縮を抑制する目的とし、高分子量体を得るために使用する。
【0038】
本発明におけるその他モノマー(E)としては、ホモポリマーのガラス転移温度が0℃未満の(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび、カルボキシル基を含有するモノマー、エポキシ基を含有するモノマー、アミノ基を含有するモノマー、アルキレンオキサイド単位を有するモノマー、酢酸ビニル、クロトン酸ビニル、スチレン、アクリロニトリルなどが挙げられる。
【0039】
前記ホモポリマーのガラス転移温度が0℃未満の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、具体的には、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、などが挙げられる。これらの中でもアクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルが良好な粘着性能を得やすいという点から好ましい。これらは単独または2種以上を併用できる。
【0040】
前記カルボキシル基を含有するモノマーは、例えば(メタ)アクリル酸、p−カルボキシベンジルアクリル酸エステル、エチレンオキサイド変性(付加モル数:2〜18)フタル酸アクリル酸エステル、コハク酸モノヒドロキシエチルアクリル酸エステル、アクリル酸β−カルボキシエチル、アクリル酸2−(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)エチル、マレイン酸、モノエチルマレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、及びフマル酸などが挙げられる。
【0041】
前記エポキシ基を含有するモノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチルなどが挙げられる。
【0042】
前記アミノ基を含有するモノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノエステルなどが挙げられる。
【0043】
前記アルキレンオキサイド単位を有するモノマーは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等の単位を有することが好ましい。具体的には、例えば、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸2−フェノキシエチル、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
【0044】
前記その他モノマー(E)は、モノマー混合物100重量部中20〜93.85重量部含むことが好ましく、30〜80重量部がより好ましい。含有量が20重量部以上になることで凝集力がより向上する。また、含有量が93.85重量%以下になることで凝集力と応力緩和性を両立しやすくなる。
【0045】
ホモポリマーの「ガラス転移温度(Tg)」とは、加熱融解したポリマーをある条件のもと冷却していくと過冷却液体を経てガラス状態となるが、この状態が変化する際の温度を意味する。具体的に本明細書において、Tgは、JIS K7121により測定される値である。表1に測定したホモポリマーのガラス転移温度を示す。
【0046】
本発明の粘着剤において、アクリル系重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比率を表す分子量分布(Mw/Mn))は、10〜40が好ましい。前記範囲にあることで、浮きおよび剥がれが生じにくく、粘着力が寄り向上する。また、アクリル系重合体の重量平均分子量は50万〜200万が好ましく、70万〜180万がより好ましい。50万〜200万の範囲にあることで凝集力などがより向上するため、浮きおよび剥がれがより抑制でき、応力緩和性もより向上する。なお、上記重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。GPCの測定法の詳細は、実施例に記載する。
【0047】
本発明でアクリル系重合体は、単量体混合物を重合開始剤で重合することで得ることができる。重合は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合など公知の重合方法が可能であるが、本発明では溶液重合が好ましい。溶液重合で使用できる溶媒は、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、トルエン、キシレン、アニソール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどが好ましい。重合温度は、60〜120℃の沸点反応が好ましく、重合時間は5〜12時間が好ましい。
【0048】
重合開始剤は、重合を開始できる化合物であれば特に制限はなく、過酸化物およびアゾ化合物等の公知の化合物を使用できる。
前記過酸化物は、例えばジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3などのジアルキルパーオキサイド類;
t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンなどのパーオキシエステル類;
シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類;
2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレート、などのパーオキシケタール類;
クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルシクロヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類;
ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類;
ビス(t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート類などの有機過酸化物、又はこれらの混合物があげられる。
【0049】
前記アゾ化合物は、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(略称:AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などの2,2’−アゾビスブチロニトリル類;
2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などの2,2’−アゾビスバレロニトリル類;
2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)などの2,2’−アゾビスプロピオニトリル類;
1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)などの1,1’−アゾビス−1−アルカンニトリル類などが使用できる。
【0050】
重合開始剤は、単独または2種以上を併用できる。
【0051】
重合開始剤は、前記モノマー混合物100重量部に対し、0.01〜10重量部を使用することが好ましく、0.1〜2重量部がより好ましい。
【0052】
本発明でアクリル系共重合体は、1種類の共重合体を単独で使用しても、2種類以上の共重合体を併用して使用しても良い。1種類の共重合体を単独で使用する場合、使用する共重合体は上記の合成方法で得ることができる(以下、「合成方法1」という)。また、2種類以上のアクリル系共重合体(以下、「アクリル系共重合体の混合物」という)は、種々の方法で得ることができる。たとえば、2種類のアクリル系共重合体をそれぞれ別個に得ておき、両者を混合することよってアクリル系共重合体の混合物を得ることが可能である(以下、合成方法を「合成方法2」、混合方法を「アクリル系共重合体の調整」という)。また、共重合体を得た後、得られた共重合体の存在下でさらにモノマーを重合することで、2種類以上の共重合体を含む組成物としてアクリル系共重合体の混合物を得ることも可能である(以下、「合成方法3」という)。さらに、「合成方法3」には、使用するモノマー原料全てを仕込み、重合反応し共重合体を得た後、さらに重合反応を行なうことでアクリル系共重合体の混合物を得る方法(以下、「合成方法3−1」という)と、使用するモノマー原料の一部を仕込み、重合反応し共重合体を得た後、さらに残りのモノマー原料を再度仕込み重合反応を行なうことでアクリル系共重合体の混合物を得る方法(以下、「合成方法3−2」という)がある。
【0053】
本発明の粘着剤はイソシアネート系硬化剤を含む。イソシアネート系硬化剤は、アクリル系重合体と架橋反応し、樹脂ネットワークを形成することで、浮きおよび剥がれの抑制、光漏れの抑制、ならびに高温高湿環境下に曝された場合においても高い透明性を維持できる効果が得られる。
【0054】
本発明においてイソシアネート系硬化剤は、具体的には、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネートモノマー、具体的には芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等のイソシアネートモノマー、およびビュレット体、ヌレート体、及びアダクト体が好ましい。
【0055】
前記芳香族ポリイソシアネートは、例えば、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート等を挙げることができる。
【0056】
前記脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(別名:HMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0057】
前記芳香脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0058】
前記脂環族ポリイソシアネートは、例えば、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:IPDI、イソホロンジイソシアネート)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0059】
前記ビュレット体は、前記イソシアネートモノマーが自己縮合したビュレット結合を有する自己縮合物をいう。具体的には、例えばヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体などが挙げられる。
【0060】
前記ヌレート体は、前記イソシアネートモノマーの3量体をいい、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体イソホロンジイソシアネートの3量体トリレンジイソシアネートの3量体などが挙げられる。
【0061】
前記アダクト体は、前記イソシアネートモノマーと2官能以上の低分子活性水素含有化合物が反応した2官能以上のイソシアネート化合物をいい、例えば、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物(トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとイソホロンジイソシアネートとを反応させた化合物、1,6−ヘキサンジオールとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物などが挙げられる。
【0062】
前記2官能以上の低分子活性水素含有化合物は、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ポリオキシエチレングリコール(エチレンオキサイドの付加モル数10以下)、ポリオキシプロピレングリコール(プロピレンオキサイドの付加モル数10以下)、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール,トリシクロデカンジメタノール、シクロペンタジエンジメタノール、ダイマージオール等の脂肪族あるいは脂環族ジオール類;
1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,2−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、4,4’−メチレンジフェノール、4,4’−(2−ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェノール、o−,m−,及びp−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−イソプロピリデンフェノール、あるいはビスフェノールAやビスフェノールF等のビスフェノール類にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させてなるビスフェノール類等の芳香族ジオール類;
1,1,1−トリメチロールプロパン、1,1,1−トリメチロールブタン、1,1,1−トリメチロールペンタン、1,1,1−トリメチロールヘキサン、1,1,1−トリメチロールヘプタン、1,1,1−トリメチロールオクタン、1,1,1−トリメチロールノナン、1,1,1−トリメチロールデカン、1,1,1−トリメチロールウンデカン、1,1,1−トリメチロールドデカン、1,1,1−トリメチロールトリデカン、1,1,1−トリメチロールテトラデカン、1,1,1−トリメチロールペンタデカン、1,1,1−トリメチロールヘキサデカン、1,1,1−トリメチロールヘプタデカン、1,1,1−トリメチロールオクタデカン、1,1,1−トリメチロールナノデカン、1,1,1−トリメチロール−sec−ブタン、1,1,1−トリメチロール−tert−ペンタン、1,1,1−トリメチロール−tert−ノナン、1,1,1−トリメチロール−tert−トリデカン、1,1,1−トリメチロール−tert−ヘプタデカン、1,1,1−トリメチロール−2−メチル−ヘキサン、1,1,1−トリメチロール−3−メチル−ヘキサン、1,1,1−トリメチロール−2−エチル−ヘキサン、1,1,1−トリメチロール−3−エチル−ヘキサン、1,1,1−トリメチロールイソヘプタデカンなどのトリメチロール分岐アルカン類、トリメチロールブテン、トリメチロールヘプテン、トリメチロールペンテン、トリメチロールヘキセン、トリメチロールヘプテン、トリメチロールオクテン、トリメチロールデセン、トリメチロールドデセン、トリメチロールトリデセン、トリメチロールペンタデセン、トリメチロールヘキサデセン、トリメトロールヘプタデセン、トリメチロールオクタデセン、1,2,6−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、グリセリン等の3官能ポリオール類;
ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、キシリトール等の4官能以上のポリオール類;
エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ペンチレンジアミン、ヘキシレンジアミン、ヘプチレンジアミン、オクチレンジアミン、ノニレンジアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリアミノプロパン等の脂肪族ポリアミン類;
フェニレンジアミン、トリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ポリアミン類;
エチレンジチオール、プロピレンジチオール、ブチレンジチオール、ペンチレンジチオール、ヘキシレンジチオール、ヘプチレンジチオール、オクチレンジチオール、ノニレンジチオール、ジメルカプトジシクロヘキシルメタン、3−メルカプトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオール、1,3−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトブチレート)等のポリチオール類を挙げることができる。
【0063】
これら多官能低分子活性水素含有化合物は、単独または2種以上を併用できる。
【0064】
前記イソシアネート系硬化剤は、十分な架橋構造を形成する観点から、3官能のイソシアネート化合物が好ましく、イソシアネートモノマーと3官能の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体がより好ましい。具体的にはヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのヌレート体、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体が好ましく、更にはトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンのアダクト体、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体等の芳香脂肪族系ポリイソシアネート化合物が好ましい。これらのポリイソシアネート化合物は、単独または2種以上を併用できる。
【0065】
前記イソシアネート系硬化剤は、アクリル系共重合体100重量部中に、0.05重量部〜20重量部以下含有することが好ましく、0.1重量部をこえて〜15重量部以下含有することがより好ましい。含有量が0.05重量部以上になることで凝集力がより向上する。含有量が20重量部以下になることで凝集力と応力緩和性を両立しやすくなる。
【0066】
本発明の粘着剤には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その他硬化剤を併用することができる。具体的には、エポキシ化合物、アジリジン化合物、酸無水物基含有化合物、カルボジイミド化合物、N−メチロール基含有化合物および、金属キレート化合物等が挙げられる。
【0067】
前記エポキシ化合物は、例えばビスフェノールA−エピクロロヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1、3−ビス(N、N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'−テトラグリシジルアミノフェニルメタン等が挙げられる。
【0068】
前記アジリジン化合物は、例えばN,N’−ジフェニルメタン−4,4'−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリ−1−アジリジニルホスフィンオキサイド、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、2,2’−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタントリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1、3、5−トリアジン、4,4’−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等が挙げられる。
【0069】
前記カルボジイミド化合物は、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネート化合物を脱炭酸縮合反応させることによって生成した高分子量ポリカルボジイミドが挙げられる。このような高分子量ポリカルボジイミドとしては、日清紡績株式会社のカルボジライトシリーズが挙げられる。その中でもカルボジライトV−01、03、05、07、09は有機溶剤との相溶性に優れており好ましい。
【0070】
前記酸無水物基含有化合物は、カルボン酸無水物基を2つ以上有する化合物であり特に限定されるものではないが、テトラカルボン酸二無水物、ヘキサカルボン酸三無水物、ヘキサカルボン酸二無水物、無水マレイン酸共重合樹脂などが好ましい。なお、反応中に脱水反応を経由して無水物と成りうるポリカルボン酸、ポリカルボン酸エステル、ポリカルボン酸ハーフエステルなどは、本発明の「酸無水物基含有化合物」に含まれる。
【0071】
前記テトラカルボン酸二無水物は、例えば無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルフィドテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
【0072】
前記金属キレート化合物は、例えばアルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロムおよびジルコニウムなどの多価金属と、アセチルアセトンまたはアセト酢酸エチルとの配位化合物などが挙げられる。具体的には、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレートが挙げられる。
【0073】
これらその他硬化剤は、単独または2種以上を併用できる。
【0074】
本発明の粘着剤は、シランカップリング剤を含む。シランカップリング剤を用いることで高温雰囲気下または高温高湿雰囲気下に曝された場合における、浮きおよび剥がれを抑制することができる。
【0075】
前記シランカップリング剤は、例えば、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリブトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどの(メタ)アクリロキシ基を有するアルコキシシラン化合物;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシランなどのビニル基を有するアルコキシシラン化合物;
3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリプロポキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基を有するアルコキシシラン化合物;
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシランなどのメルカプト基を有するアルコキシシラン化合物;
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物;
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン化合物;
3−クロロプロピルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、分子内にアルコキシシリル基を有するシリコーンレジンなどが挙げられる。
【0076】
前記シランカップリング剤は、アクリル系共重合体(A)100重量部に対して、0.01〜2重量部を使用することが好ましく、0.05〜1重量部の範囲がより好ましい。
【0077】
本発明の粘着剤には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、任意成分として各種樹脂、オイル、軟化剤、染料、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、可塑剤、充填剤、老化防止剤及び帯電防止剤等を配合しても良い。
【0078】
本発明の粘着剤は、光学部材用粘着剤として好適であるほか、各種プラスチックシート、一般ラベル・シール、塗料、弾性壁材、塗膜防水材、床材、粘着性付与剤、粘着剤、積層構造体用粘着剤、シーリング剤、成形材料、表面改質用コーティング剤、バインダー(磁気記録媒体、インキバインダー、鋳物バインダー、焼成レンガバインダー、グラフト材、マイクロカプセル、グラスファイバーサイジング等)、ウレタンフォーム(硬質、半硬質、軟質)、ウレタンRIM、UV・EB硬化樹脂、ハイソリッド塗料、熱硬化型エラストマー、マイクロセルラー、繊維加工剤、可塑剤、吸音材料、制振材料、界面活性剤、ゲルコート剤、人工大理石用樹脂、人工大理石用耐衝撃性付与剤、インキ用樹脂、フィルム(ラミネート粘着剤、保護フィルム等)、合わせガラス用樹脂、反応性希釈剤、各種成形材料、弾性繊維、人工皮革、合成皮革等の原料として、又、各種樹脂添加剤およびその原料等としても非常に有用に使用できる。
【0079】
本発明の粘着シートは、基材と、本発明の粘着剤から形成した粘着剤層を備えている。前記粘着シートは、例えば、基材に粘着剤を塗工、乾燥することで粘着剤層を形成することで得られる。また、剥離性シートに粘着剤を塗工、乾燥することで粘着剤層を形成し、基材を貼り合わせることで得られる。なお粘着剤層は基材の少なくとも一方の面に設けられていれば良い。また、本発明でシート、フィルムおよびテープは同義語である。また、粘着剤層の基材と接していない面に剥離性シートを貼り合せることはいうまでも無い。
【0080】
粘着剤を塗工するときに、適当な液状媒体、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶剤;ジエチルエーテル、メトキシトルエン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、その他の炭化水素系溶剤等の有機溶剤を添加して、粘度を調整することができる。また粘着剤を加熱して粘度を低下させることもできる。ただし、水やアルコール等はアクリル系共重合体(B)とポリイソシアネート化合物との架橋反応を阻害するため、使用を避けることが好ましい。
【0081】
前記基材は、例えばセロハン、プラスチック、ゴム、発泡体、布帛、ゴムびき布、樹脂含浸布、ガラス板、木材等が挙げられる。基材は板状でもフィルム状でも良い。また基材は、単独または、複数の基材を積層した構成も好ましい。
【0082】
前記プラスチックは、例えば、ポリビニルアルコールやトリアセチルセルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリノルボルネン系樹脂、ポリアリレート系樹脂(PAR:ビスフェノールAとフタル酸の共重合樹脂です)、ポリアクリル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂(エポキシ基含有樹脂とポリアミン又は無水カルボン酸を反応させた樹脂です)などが挙げられる。
【0083】
本発明において粘着剤は、公知の方法で塗工できる。例えばマイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ−ター、スピンコーター等が挙げられる。乾燥方法には特に制限はなく、熱風乾燥、赤外線や減圧法を利用したものが挙げられる。乾燥条件は、通常60〜160℃程度の熱風加熱でよい。
【0084】
粘着剤層の厚さは、0.1〜300μmが好ましく、1〜100μmがより好ましい。0.1μmに満たない場合、十分な粘着力が得られないことがあり、300μmを超えても粘着力等の性能はそれ以上向上しない場合が多い。
【0085】
本発明の粘着シートは、光学部材の貼合わせに好適に用いることができる。すなわち基材に光学部材を使用することが好ましい。光学部材は、具体的には、偏光板、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルム等を挙げることができる。
【0086】
基材に光学部材を使用した本発明の粘着シートは、液晶セルのガラス部材に貼り付けて液晶セル部材として使用することも好ましい。前記光学部材が偏光板の場合、高温雰囲気及び高温高湿雰囲気に放置されたときにも、粘着剤層は応力緩和性が良好であるため偏光板の反りに起因する光漏れを抑制できる。
【0087】
本発明の粘着シートは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、タッチパネル、電極周辺部材等各種エレクトロニクス関連の部材やプロテクトフィルム、建材や車輌の窓ガラス等のガラス部材に好ましく使用できるが、ポリオレフィン、ABS、アクリル等のプラスチック、ダンボール、木材、合板、ステンテス、アルミ等の金属にも使用できる。
【実施例】
【0088】
次に本発明の実施例を示して更に詳細を説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。例中、「部」とは「重量部」、「%」とは「重量%」をそれぞれ意味するものとする。
【0089】
[合成方法1]
1種類のアクリル系共重合体を得る方法。
<合成例1:アクリル系共重合体>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と記述する。)にアクリル酸2−ヒドロキシエチル1.0部、アクリルアミド1.0部、アクリル酸メチル15部、メタクリル酸メチル5、アクリル酸ブチル78部、アセトン100部、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNという)0.025部を仕込み、この反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。その後、窒素雰囲気下で撹拌しながら、80℃まで加熱し反応を開始した。その後、反応溶液を還流温度で7時間反応させた。反応終了後、冷却し、酢酸エチルで希釈して不揮発分30%、粘度8000mPa・sの共重合体溶液を得た。また、GPCを用いてアクリル共重合体の重量平均分子(Mw)を測定したところ、重量平均分子量は150万、分子量分布(Mw/Mn)15であった。得られた共重合体をアクリル系共重合体(A−1)とする。
【0090】
<合成例2〜10>
表2の重量比率に従って各種原料を仕込み、合成例1と同様の方法でアクリル共重合体を合成した。得られたアクリル共重合体の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を表2に示す。
【0091】
[合成方法2]
2種類のアクリル系共重合体をそれぞれ別個に得ておき、両者を混合することよってアクリル系共重合体の混合物を得る方法。
【0092】
<合成例11〜15>
表2の重量比率に従って各種原料を仕込み、合成例1と同様の方法でアクリル共重合体を合成した。得られたアクリル共重合体の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を表2に示す。
【0093】
<合成例16〜20>
表2の重量比率に従って各種原料を仕込み、合成例1のアセトン100重量部をメチルエチルケトン100重量部に変更し、その他は同様の方法でアクリル共重合体を合成した。得られたアクリル共重合体の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を表2に示す。
【0094】
[アクリル系共重合体の調整]
<調整例1〜10>
合成例11〜20で得られた共重合体溶液中のアクリル系共重合体を表3の重量比率(不揮発分換算)で混合し、アクリル系共重合体の混合物(B−1)〜(B−10)を得た。得られたアクリル共重合体の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を表3に示す。
【0095】
[合成方法3]
アクリル系共重合体を含む共重合体を得た後、得られた共重合体の存在下でモノマーを重合してアクリル系共重合体の混合物を得る方法。
【0096】
[合成方法3−1]
モノマー(A)〜(E)全てを仕込み、重合反応し共重合体を得た後、さらに重合反応を行なうことでアクリル系共重合体の混合物を得る方法。
<合成例21>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と記述する。)にアクリル酸2−ヒドロキシエチル0.5部、アクリルアミド1.0部、アクリル酸メチル15部、メタクリル酸メチル5、アクリル酸ブチル78.5部、アセトン130重量部、AIBN0.025部を仕込み、この反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。その後、窒素雰囲気下で撹拌しながら、この反応溶液を還流温度で2時間反応させて単量体の重合転化率が45%の重量平均分子量が160万の共重合体と単量体との混合溶液を得た。次いで、メチルエチルケトン140部、和光純薬工業社製V−65(2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、以下「V−65」と記述する。)0.2部を添加し、2時間反応させ、さらにV−65を0.2部添加し、単量体の重合転化率が90%以上になるまでさらに6時間反応させた。反応終了後、冷却し、酢酸エチルで希釈して不揮発分20重量部、粘度2500mPa・sの共重合体(C−1)の溶液を得た。得られたアクリル系共重合体の混合物の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を表4に示す。
【0097】
<合成例22〜25>
合成例21のモノマーおよびその配合量を表4に記載した通りに変更した以外は、合成例21同様に合成することでそれぞれアクリル系共重合体を得た。得られたアクリル系共重合体の混合物の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を表4に示す。
【0098】
[合成方法3−2]
モノマー(A)、(C)および(E)を仕込み、重合反応し共重合体を得た後、モノマー(B)、(D)を仕込み、さらに重合反応を行なうことでアクリル系共重合体の混合物を得る方法。
【0099】
<合成例26>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と記述する。)にアクリル酸2−ヒドロキシエチル2.0部、シクロヘキシルアクリレート10部、アクリル酸ブチル82.0部、アセトン130重量部、AIBN0.025部を仕込み、この反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。その後、窒素雰囲気下で撹拌しながら、この反応溶液を還流温度で2時間反応させて単量体の重合転化率が45%の重量平均分子量が160万の共重合体と単量体との混合溶液を得た。次いで、メチルエチルケトン140部、ダイアセトンアクリルアミド1.0部、メタクリル酸メチル5、和光純薬工業社製V−65(2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、以下「V−65」と記述する。)0.2部を添加し、2時間反応させ、さらにV−65を0.2部添加し、単量体の重合転化率が90%以上になるまでさらに6時間反応させた。反応終了後、冷却し、酢酸エチルで希釈して不揮発分20重量部、粘度2500mPa・sの共重合体(C−1)の溶液を得た。得られたアクリル系共重合体の混合物の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を表4に示す。
【0100】
<合成例27〜30>
合成例26のモノマーおよびその配合量を表4に記載した通りに変更した以外は、合成例26同様に合成することでそれぞれアクリル系共重合体を得た。得られたアクリル系共重合体の混合物の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を表4に示す。
【0101】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
重量平均分子量(Mw)の測定は島津製作所製GPC「LC−GPCシステム」を用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、重量平均分子量(Mw)の決定はポリスチレン換算で行った。
装置名 : 島津製作所製、LC−GPCシステム「Prominence」
カラム : 東ソー(株)製GMHXL 4本、東ソー(株)製HXL-H 1本を連結した。
移動相溶媒 : テトラヒドロフラン
流量 : 1.0ml/min
カラム温度 : 40℃
【0102】
(実施例1)
合成例1で得られた共重合体溶液中のアクリル系共重合体(A−1)100部、イソシアネート系硬化剤としてトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンのアダクト体0.5重量部、シランカップリング剤として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.1重量部を配合し、更に酢酸エチルを加えて不揮発分を20%に調整して粘着剤を得た。
【0103】
前記粘着剤を、基材として厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート製剥離性シート(セラピールMF:東レフィルム加工株式会社製)に、乾燥後の厚さが25μmになるように塗工し、100℃で2分間熱風乾燥することで粘着剤層を形成した。次いで、この粘着剤層に、光学部材として、ポリビニルアルコール(PVA)系偏光板(HLC2−5618:SANRITZ製)の両面をトリアセチルセルロース系フィルム(以下、「TACフィルム」という)で挟んだ積層構造の偏光板の片面を貼り合せ、次いで、温度35℃相対湿度55%の条件で1週間熟成させて「剥離フィルム/粘着剤層/TACフィルム/PVA/TACフィルム」という構成の偏光板粘着シートを得た。
【0104】
(実施例2〜30、比較例1〜10)
表5及び表6の配合比率に従って、実施例1と同様にして粘着剤を得た。更に実施例1と同様に行うことで偏光板粘着シートを得た。
【0105】
得られた偏光板粘着シートを以下の方法で評価した。
(1)耐熱性および耐湿熱性評価
得られた偏光板粘着シートを幅160mm、縦120mmの大きさに準備した。次いで剥離性シートを剥がして無アルカリガラス板(1737:コーニング社製)に、ラミネータ(VA−770A:大成ラミネーター株式会社)を用いて貼着し液晶セル用部材を得た。続いて、この偏光板粘着シートが貼り付けられた前記ガラス板を50℃、5気圧の条件のオートクレーブ内に20分保持して各部材を密着させることで測定試料を得た。前記測定試料を、高温雰囲気での耐性評価として耐熱性を評価した。すなわち測定試料を85℃で500時間放置した後に発泡、浮き、剥がれの有無を目視で観察した。また、前記測定試料を、高温高湿雰囲気での耐性評価として耐湿熱性を評価した。すなわち測定試料を60℃、相対湿度95%で500時間放置した後に発泡、浮き、剥がれの有無を目視で観察した。耐熱性、および耐湿熱性は、以下の基準に基づいて評価した。
◎:「発泡、浮き、剥がれが全く認められず、良好である」
○:「0.5mm以下の発泡、浮き、剥がれのいずれかが認められるが、実用上問題がない」
×:「全面的に発泡、浮き、剥がれがあり、使用できない」
【0106】
(2)光漏れ性評価
得られた偏光板粘着シートを幅160mm、縦120mmの大きさに2枚準備した。次いで剥離性シートを剥がして無アルカリガラス板の両面に2枚の積層体をその偏光板の吸収軸が直交するようにラミネータを用いて貼着した。続いて、前記圧着物を50℃、5気圧の条件のオートクレーブ内に20分保持させて各部材を密着させることで測定試料を得た。前記測定試料を、85℃で500時間放置した後、偏光板に光を透過させたときの光漏れを目視で観察した。光漏れ性は、以下の基準に基づいて評価した。
◎:「白抜けが無く、良好である」
○:「わずかに白抜けが有るが、実用上問題がない」
×:「全面的に白抜けがあり、使用できない」
【0107】
(3)再剥離性(汚染性)評価
得られた偏光板粘着シートを幅160mm、縦120mmの大きさに準備した。次いで剥離性シートを剥がして無アルカリガラス板にラミネータを用いて貼り付けた。続いて、50℃、5気圧の条件のオートクレーブ内に20分保持させて各部材を密着させることで測定試料を得た。前記測定試料を、85℃で3時間放置した後に、23℃、相対湿度50%の環境下で、引張試験機を用いて、180°方向に300mm/分の速度で引っ張る、剥離試験を行った。次いで、剥離後のガラス表面の曇りを目視で観察し、以下の基準に基づいて評価した。
○:「糊残り、曇りが認められず、良好である」
×:「糊残り、曇りが認められ、実用不可である」
【0108】
(4)粘着力評価
得られた偏光板粘着シートを幅25mm、縦100mmの大きさに準備した。次いで剥離性シートを剥がして無アルカリガラス板にラミネータを用いて貼り付けた。続いて、50℃、5気圧の条件のオートクレーブ内に20分保持させて各部材を密着させることで測定試料を得た。前記測定試料を、23℃で1日放置した後に、23℃、相対湿度50%の環境下で、引張試験機(オリエンテック社製「テンシロン」)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件で粘着力を測定した(貼合せ1日後の粘着力測定)。また、前記測定試料を、23℃で14日放置した後に、同様の方法で粘着力を測定した(貼合せ14日後の粘着力測定)。
【0109】
表7および表8の結果から実施例1〜30に示すように本発明の粘着剤は、高温雰囲気および高温高湿雰囲気での耐久性、応力緩和性、ならびに再剥離性が優れている。一方、比較例1〜10は、前記特性を全て満たすことはできなかった。
【0110】
【表1】
【0111】
【表2】
【0112】
【表3】
【0113】
【表4】
【0114】
【表5】