(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず本発明における活性エネルギー線とは、(メタ)アクリロイル基が基底状態から遷移状態に励起するのに必要なエネルギーを有する紫外線、電子線等を意味する。
(メタ)アクリレート化合物は、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有する化合物である。
【0012】
本発明の活性エネルギー線硬化型印刷インキ(以下、印刷インキという)は、(メタ)アクリレート化合物と、有機金属化合物と、極性基含有分散剤と、顔料とを含み、
前記有機金属化合物が、アルミニウム、チタンおよびジルコニウムからなる群より選択される金属のアルコシキド、そのアシレート、またはその錯体である。
【0013】
印刷インキは、例えばオフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等、公知の印刷方法で使用できるところ、オフセット印刷が好ましい。
印刷インキを使用した印刷物は、連続印刷したときに初期の印刷品質が終期でも再現し易い連続印刷適性を有するため、損紙(汚れ、濃度不足による廃棄となる印刷物)を抑制できる。また、インキの静置流動性が良好であるため、印刷中のインキつぼ内の撹拌やインキ交換の頻度が無い、または減らせたことで印刷物の生産性を向上できた。
【0014】
なお、静置流動性は、印刷インキを印刷機に供給すると、インキつぼ内部で印刷インキ(非乳化状態)が外力を得ることなく流動性を保持し続ける適性である。また、連続印刷性能は、印刷機上で湿し水が混入し乳化状態にある印刷インキを印刷版に安定的に供給できる流動性を保持し続ける適性をいう。
【0015】
本発明において(メタ)アクリレート化合物は、(メタ)アクリロリル基を1つ以上有する化合物である。(メタ)アクリレート化合物は、通常、活性エネルギー線硬化型印刷インキに用いられる化合物を使用できる。(メタ)アクリレート化合物は、例えば、単官能モノマー、2官能モノマー、3官能モノマー、4官能以上のモノマーを使用することができるところ、特に印刷物の乾燥性(硬化性ないし重合性ともいう)の観点から3官能以上のモノマーを組み合わせて使用することが好ましい。乾燥性が不十分な場合、ブロッキング(重ね置きした印刷物の下側印刷物のインキが上側印刷物の裏側に付着すること)、擦れ(印刷部が他の紙面とのこすれなどで傷がつくこと)等が発生する場合がある。
【0016】
3官能モノマーとしては、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリカプロラクトネートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールヘキサントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールオクタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0017】
4官能以上のモノマーとしては、例えばペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラカプロラクトネートテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラカプロラクトネートテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールエタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールブタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールオクタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールポリアルキレンオキサイドヘプタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0018】
(メタ)アクリレート化合物は、上記化合物に加えて、脂肪族アルコール化合物のアルキレンオキサイド付加体(メタ)アクリレートも好ましい。
脂肪族アルコール化合物のアルキレンオキサイド付加体(メタ)アクリレートモノマーは、脂肪族アルコール化合物のモノまたはポリ(例えば、2〜20付加体)アルキレン(C2〜C20)オキサイド付加体が好ましい。アルキレンオキサイドは、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、ペンチレンオキサイド、ヘキシレンオキサイド等と結合した(メタ)アクリレートが好ましい
【0019】
3官能モノマーとしてグリセリンポリ(2〜20)アルキレン(C2〜C20)オキサイド付加体トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリ(2〜20)アルキレン(C2〜C20)オキサイド付加体トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンポリ(2〜20)アルキレン(C2〜C20)オキサイド付加体トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールヘキサンポリ(2〜20)アルキレン(C2〜C20)オキサイド付加体トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールオクタンポリ(2〜20)アルキレン(C2〜C20)オキサイド付加体トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリ(2〜20)アルキレン(C2〜C20)オキサイド付加体トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0020】
4官能以上のモノマーとしては、例えばペンタエリスリトールポリ(2〜20)アルキレン(C2〜C20)オキサイド付加体テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンポリ(2〜20)アルキレン(C2〜C20)オキサイド付加体テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンポリ(2〜20)アルキレンオキサイドテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラカプロラクトネートテトラ(メタ)アクリレートジトリメチロールエタンポリ(2〜20)アルキレン(C2〜C20)オキサイド付加体テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールブタンポリ(2〜20)アルキレン(C2〜C20)オキサイド付加体テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールヘキサンポリ(2〜20)アルキレン(C2〜C20)オキサイド付加体テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールオクタンポリ(2〜20)アルキレン(C2〜C20)オキサイド付加体テトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(5〜20)アルキレン(C2〜C20)オキサイド付加体ペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(2〜20)アルキレン(C2〜C20)オキサイド付加体ヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサカプロラクトネートポリ(2〜20)アルキレン(C2〜C20)オキサイド付加体ヘキサ(メタ)アクリレートトリペンタエリスリトールポリ(2〜20)アルキレン(C2 〜C20)オキサイド付加体ヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールポリ(2〜20)アルキレン(C2 〜C20)オキサイド付加体オクタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールポリ(2〜20)アルキレン(C2 〜C20)オキサイド付加体ヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリレート化合物は、単独または2種類以上併用できる。
【0021】
(メタ)アクリレート化合物は、インキを作製することが可能であれば任意の含有量で印刷インキ中に使用することができる。例えば、印刷インキ中に10〜60質量%の範囲で使用することが好ましく十分な乾燥性が得られる。
【0022】
本発明において有機金属化合物は、アルミニウム、チタンおよびジルコニウムからなる群より選択される金属のアルコシキド、そのアシレート、またはその錯体である。
有機金属化合物は、顔料の極性基(及び極性基含有分散剤の極性基)にそれぞれ配位して分散状態の安定化に寄与するため印刷インキの流動性が向上する。なお、有機金属化合物は、顔料以外の化合物である。
【0023】
金属アルコキシドは、例えばアルミニウムエチレート、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムジソプロピレートモノセカンダリーブチレート、アルミニウムセカンダリーブトキシド、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ターシャリーアミルチタネート、テトラターシャリーブチルチタネート、テト ラステアリルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラオクチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ノルマルプロピルジルコネート、ノルマルブチルジルコネート等が挙げられる。
【0024】
金属アシレートは、例えばアルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、チタンイソステアレート、オクチル酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム等が挙げられる。
【0025】
金属錯体は、例えばアルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、チタンオクチレングリコレート、リン酸チタン化合物、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンオクチレングリコレート化合物、チタン−1,3−プロパンジオキシビス(エチルアセトアセテート)、ドデシルベンゼンスルホン酸チタン化合物、チタンジエタノールアミネート、チタンアミノエチルアミノエタノレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムエチルアセトアセテート、塩化ジルコニウム化合物、ジルコニウムラクテートアンモニウム塩等が挙げられる。
【0026】
有機金属化合物は、顔料100質量部に対して、0.25〜10質量部使用することが好ましく、0.25〜6質量部がより好ましい。有機金属化合物をこの範囲で使用すると静置流動性、および連続印刷性能がより向上する。またこの範囲で使用すると印刷インキの長期保存安定性がより向上する。
有機金属化合物は、単独または2種類以上併用できる。
【0027】
本発明において極性基含有分散剤は、顔料の分散性を向上させるために使用する。この分散性の向上は、有機金属化合物との相乗効果により、良好な、静置流動性、および連続印刷性能が得られる。また、極性基含有分散剤は、(メタ)アクリレート化合物と相溶性が良好である。極性基は、酸性基、塩基性基、その他の官能基が挙げられる。
酸性基は、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基等が挙げられる。塩基性基は、アミノ基等が挙げられる。その他の官能基は、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。極性基含有分散剤は、2種類以上の極性基を有していることもできる。なお、極性基含有分散剤は、ジアリルフタレート樹脂、極性基を含有する光重合開始剤、光重合開始剤の触媒を含まない。特に塩基性基含有分散剤を使用することが好ましい。
【0028】
酸性基含有分散剤は、市販品では、ソルスパース26000等の酸価を有するソルスパースシリーズ(ルーブリゾール社製)等が挙げられる。
塩基性含有分散剤は、市販品では、例えばアジスパーPB821等のアミン価を有するアジスパーシリーズ、ソルスパース24000、ソルスパース32000等のアミン価を有するソルスパースシリーズ(ルーブリゾール社製)等が挙げられる。その他の官能基含有分散剤は、例えばビニルアルコールの共重合体等が挙げられる。
【0029】
極性基含有分散剤は、顔料100質量部に対して、0.25〜10質量部含有することが好ましい。この範囲で含有すると静置流動性、および連続印刷性能がより向上する。この範囲を超えると極性官能基の影響により印刷インキの乳化率が過剰となり連続印刷性能が損なわれる。なお、含有量は、0.25〜6質量部がより好ましい。この範囲で使用するとさらに印刷インキの長期保存安定性がより向上する。極性基含有分散剤は、単独または2種類以上併用できる。
【0030】
本発明において顔料は、公知の顔料であり、無機顔料、有機顔料が好ましい。
有機顔料は、β−ナフトール系、β−オキシナフトエ酸系、β−オキシナフトエ酸系アニリド系、アセト酢酸アニリド系、ピラゾロン系等の溶性アゾ顔料;
β−ナフトール系、β−オキシナフトエ酸系アニリド系、アセト酢酸アニリド系モノアゾ、アセト酢酸アニリド系ジスアゾ、ピラゾロン系などの不溶性アゾ顔料;
銅フタロシアニンブルー、ハロゲン化(例えば、塩素化または臭素化)銅フタロシアニンブルー、スルホン化銅フタロシアニンブルー、金属フリーフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料;
キナクリドン系、ジオキサジン系、スレン系(ピラントロン、アントアントロン、インダントロン、アントラピリミジン、フラバントロン、チオインジゴ系、アントラキノン系、ペリノン系、ペリレン系など)、イソインドリノン系、金属錯体系、キノフタロン系、ジケトピロロピロール系等の多環式顔料および複素環式顔料、カーボンブラックなどの公知公用の各種顔料が使用可能である。
【0031】
有機顔料をC.I.カラーインデックスで示すと、例えばピグメントイエロー(以下P
Yと略す)1、PY3、PY12、PY13、PY14、PY17、PY18、PY24、PY74、PY83、PY93、PY94、PY95、PY100、PY108、PY104、PY138、PY139、PY174、PY150、PY151、PY154、PY155、PY167、PY180、PY185等、ピグメントレッド(以下PRと略す)1、PR3、PR5、PR21、PR114、PR48、PR49、PR50、PR52、PR57、PR57:1、PR81、PR83、PR90、PR122、PR144、PR146、PR147、PR148、PR150、PR166、PR170、PR176、PR177、PR168、PR169、PR172、PR173、PR174、PR184、PR185、PR187、PR193、PR202、PR214、PR242、PR254、PR255、PR264、PR266、PR269等、ピグメントブルー(以下PBと略す)1、PB2、PB14、PB15、PB15:1、PB15:2、PB15:3、PB15:4、PB15:6、PB60、PB62等、ピグメントバイオレット(以下PVと略す)1、PV2、PV3、PV4、PV12、PV23、PV39、ピグメントグリーン(以下PGと略す)1、PG2、PG3、PG4、PG7、PG36、PG45、PG58等、ピグメントブラウン25、ピグメントオレンジ(以下POと略す)5、PO13、PO34、PO36、PO38、PO39、PO51、PO74等、ピグメントブラック(以下PBLと略す)1、PBL7、PBL20、PBL31、PBL32等が挙げられる。
【0032】
顔料は、印刷紙面上に目的の濃度が再現可能であれば任意の含有量で印刷インキ中に使用することが可能である。例えば、印刷インキ中に5〜30質量%含有することが一般的である。
【0033】
印刷インキは、さらに樹脂を含むことが好ましい。樹脂は、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂が好ましい。樹脂を含むと印刷インキは、粘度が向上し耐乳化性を向上する。樹脂は、(メタ)アクリレート化合物との相溶性が良好で、溶解可能な樹脂が好ましい。前記溶解は、樹脂50gおよびジトリメチロールプロパンテトラアクリレートまたはジペンタエリスリトールヘキサアクリレート50gとを容器に仕込み、100℃で熱溶解させる。次いで25℃で一日放置後、樹脂の析出ないし溶液の濁り等が新たに生じないことである。なお、前記熱溶解後、前記溶液には、印刷物の品質に影響がない程度の濁りがあっても良い。樹脂の例としては、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、石油(系)樹脂、セルロース誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース)、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、ポリアマイド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ブタジエン−アクリルニトリル共重合体のような合成ゴム等が挙げられる。これらの樹脂は、その中の1種または2種以上を用いることができる。さらに、本発明において使用される樹脂は、活性エネルギー線硬化型印刷インキに含有される(メタ)アクリレート化合物、特に分子量が100〜6000であるモノマーあるいはオリゴマーへの溶解性のある樹脂が好ましい。
【0034】
樹脂の質量平均分子量(Mw)は、1000〜1000000が好ましく、10000〜100000がより好ましい。樹脂は、単独または2種類以上併用できる。
【0035】
樹脂は、顔料100質量部に対して、5〜20質量部含有することが好ましい。この範囲であれば耐乳化性がより向上する。
【0036】
印刷インキは、さらに極性基含有顔料誘導体を含むことができる。極性基含有顔料誘導体は、極性基含有分散剤以外の化合物であり、既に説明した有機顔料を変性する方法、または顔料の原料に置換基をあらかじめ導入し、その後合成することによって極性基を導入する方法等によって得られる化合物である。極性基含有顔料誘導体を含む印刷インキは、極性基含有顔料誘導体により顔料の分散状態がさらに安定化するため、静置流動性と連続印刷性能がさらに向上する。極性基含有有機顔料誘導体の構造は、印刷インキに使用する顔料と親和性が高ければ任意に組み合わせて使用できる。
かかる効果は、特にフタロシアニン系顔料を用いた印刷インキでより効果的である。
【0037】
極性基は、酸性基、塩基性基、その他の官能基が挙げられる。極性基は、酸性基、塩基性基が好ましく塩基性基がより好ましい。酸性基は、例えばカルボキシル基、スルホニル基が挙げられる。塩基性基は、アミノ基が挙げられる。
有機顔料の変性方法は、公知の方法で行えばよい。例えば特開2007−191699に記載された方法が挙げられる。シアン顔料の場合は、例えばフタロシアニン顔料を変性して極性基含有顔料誘導体を合成する。マゼンタ顔料の場合は、例えばPR57:1の原料に置換基を導入し極性基含顔料誘導体を合成する。イエロー顔料の場合は、例えばPY12の原料に置換基を導入し極性基含顔料誘導体を合成する。
【0038】
極性基含有顔料誘導体は、顔料100質量部に対して、0.25〜6質量部含有することが好ましい。この範囲であれば静置流動性と連続印刷性能をさらに向上する。
【0039】
印刷インキが、光硬化型インキの場合、光重合開始剤を含むことができる。光重合開始剤は、一般的な光開裂型開始剤、水素引き抜き型開始剤を使用できる。光開裂型開始剤は、アシルフォスフィンオキサイド化合物、アセトフェノン化合物等が挙げられる。水素引き抜き型開始剤は、ベンゾフェノン化合物、チオキサントン化合物等が挙げられる。
【0040】
アシルフォスフィンオキサイド化合物は、例えば2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドまたは2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0041】
アセトフェノン化合物は、例えば2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)- 2-ベンジル-1-ブタノンまたは2-ジメチルアミノ)-2-(4メチルベンジル)-1^-4モルホリノフェニル)ブタン-1オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2-ヒドロキシ-1-[4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル]-2-メチル-プロパン-1-オンまたはオリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]等が挙げられる。
【0042】
ベンゾフェノン化合物は、例えば4,4’−ビス−(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス−(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等の4,4’−ジアルキルアミノベンゾフェノン類、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド等が挙げられる。
【0043】
チオキサントン化合物は、例えば2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−ジイソプロピルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9Hチオキサントン−2−イロキシ−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミン塩酸塩等が挙げられる。
【0044】
その他として、例えば2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン等が挙げられる。
【0045】
光重合開始剤を使用する場合は、目的の乾燥性を得ることができれば任意の含有量で印刷インキ中に使用することが可能である。例えば、印刷インキ中に3〜20質量%の範囲が一般的である。
光重合開始剤は、単独または2種類以上を併用できる。
【0046】
印刷インキが光重合開始剤を含む場合、触媒を配合できる。触媒は、第三級アミン化合物が好ましい。なお、第三級アミン化合物は、α−(ジメチル)アミノアルキルフェノン化合物、α−モルフォリノアルキルフェノン化合物およびジアルキルアミノベンゾフェノン化合物以外の化合物である。
第三級アミン化合物は、例えば、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、4−(ジメチルアミノ)安息香酸エチル、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、トリエチルアミンおよびN,N−ジメチルヘキシルアミン等が挙げられる。
第三級アミン化合物は、単独または2種類以上を併用できる。
【0047】
第三級アミン化合物は、目的の光重合開始剤の触媒効果が得られれば任意の含有量で印刷インキ中に使用することが可能である。例えば、印刷インキ中に0.3〜5質量%の範囲が一般的である。
【0048】
印刷インキは、さらに添加剤を配合できる。添加剤は、ワックス、重合禁止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗菌剤等が挙げられる。これらの添加剤は、単独または2種類以上を併用できる。
【0049】
ワックスは、印刷物に耐摩擦性、ブロッキング防止、スベリ性、スリキズ防止性を付与できる。ワックスは、天然ワックスおよび合成ワックスがある。天然ワックスは、例えばカルナバワックス、木ろう、ラノリン、モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。合成ワックスは、例えばフィッシャートロプスワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、ポリアミドワックスシリコーン化合物等が挙げられる。
【0050】
重合禁止剤は、印刷インキに保存安定性を付与できる。重合禁止剤は、例えば(アルキル)フェノール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、p −メトキシフェノール、t −ブチルカテコール、t −ブチルハイドロキノン、ピロガロール、1,1−ピクリルヒドラジル、フェノチアジン、p −ベンゾキノン、ニトロソベンゼン、2,5−ジ−tert−ブチル−p −ベンゾキノン、ジチオベンゾイルジスルフィド、ピクリン酸、クペロン、アルミニウムN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリ−p −ニトロフェニルメチル、N−(3−オキシアニリノ−1,3−ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ジブチルクレゾール、シクロヘキサノンオキシムクレゾール、グアヤコール、o−イソプロピルフェノール、ブチラルドキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシム等が挙げられる。
【0051】
印刷インキの作製は、顔料、(メタ)アクリレート化合物、有機金属化合物、極性基含有分散剤とを共に混練機に投入して製造することができる。樹脂、極性基含有顔料誘導体、光重合開始剤、光重合開始剤の触媒、添加剤等を使用する場合は、先の顔料等と共に混練機に投入して製造することができる。この際、顔料等の各材料を予め配合し予備的な攪拌を加えた後、混練機に投入し印刷インキを製造することも可能である。また、顔料以外の成分を予め(メタ)アクリレート化合物へ各々溶解しワニス状として添加することも可能である。また、公知のフラッシング法を使用して印刷インキを製造することもできる。
【0052】
混合の際、適宜、冷却して温度を20〜100℃程度に保持すると品質の良いインキが得やすくなる。混練機は、例えばニーダー、三本ロール、アトライター、サンドミル、ゲートミキサー等の練肉混合装置が挙げられる。
【0053】
印刷インキは、光硬化型印刷インキの場合、光重合開始剤を含むことが好ましい。また電子線(EB)硬化型印刷インキの場合、光重合開始剤を配合しなくても良い。
【0054】
印刷インキは、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色を基本色として、前述した顔料から得られる色のインキを任意に作製できる。
【0055】
本発明の印刷物は、基材と、印刷インキから形成してなる印刷層とを含む。印刷方法はオフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等、公知の印刷方法で使用できるところ、オフセット印刷が好ましい。なおオフセット印刷は、平版印刷ともいう。印刷層の厚みは、通常0.5〜4μm程度である。
【0056】
基材は、印刷物に使用されている公知の素材を使用できる。基材は、例えば上質紙等の非塗工紙、微塗工紙、アート紙、コート紙、軽量コート紙、キャストコート紙等の塗工紙、白板紙、ボールコート等の板紙、合成紙、アルミ蒸着紙、およびポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル等のプラスチックシートが挙げられる。
【0057】
印刷層の形成は、印刷で得られた印刷層に対して活性エネルギー線を照射して乾燥(硬化)することで形成できる。 活性エネルギー線は、例えば紫外線、電子線、X線、α線、β線、γ線のような電離放射線、マイクロ波、高周波等であるところ、ラジカル性活性種を発生させ得るならばいかなるエネルギー線でも良く、可視光線、赤外線、レーザー光線でもよい。紫外線の光源は、例えば超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、ヘリウム・カドミニウムレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー、アルゴンレーザー、LEDランプ等がある。光源は、オフセット印刷等の光硬化型インキに用いられるものであればよい。具体的には、例えば、メタルハライドランプ、水銀ランプなどでは40W〜240W、LEDランプでは2W〜20W程度の光源が好ましい。なお、印刷速度、装置構成上の印刷物とランプの距離、印刷層の乾燥状態に合わせ、ランプ本数等を調整して使用できる。
【0058】
本発明の印刷物は、例えばフォーム用印刷物、各種書籍用印刷物、カルトン紙等の各種包装用印刷物、各種プラスチック印刷物、シール/ラベル用印刷物、美術印刷物、金属印刷物(美術印刷物、飲料缶印刷物、缶詰等の食品印刷物)、広告、チラシ、パンフレット用印刷物などに使用できる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。本発明中、「部」は「質量部」を、
「%」は「質量%」を表す。
【0060】
1.樹脂ワニスの作製
活性エネルギー線硬化型インキを製造するに先立ちワニスを製造した。ワニスは、ジ アリルフタレート樹脂/ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート/ハイドロキノン を 質量比で30/69.9/0.1の割合で仕込み、空気気流下、100℃で熱溶解 させて製造した。
【0061】
2.活性エネルギー線硬化型印刷インキの作製
(実施例1)
ピグメントレッド57:1 18部、樹脂ワニス45部、ジペンタエリスリトールヘ キサアクリレート10部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート10.6部、 エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンテトラアクリレート10.0部、2− メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン 3.0部、4,4´−ビス−(ジエチルア ミノ)ベンゾフェノン2.0部、2,4− ジエチルチオキサントン1.0部、アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプ ロピレート 0.2部、アジスパーPB821 0.2部を測り取り、攪拌した後、3 本ロールミルにて分散し、ろ過を行うことでインキを得た。
【0062】
(実施例2〜38)
実施例1の配合を表1〜4に記載された通り変更した以外は実施例1と同様の方法で 行い、それぞれ実施例2〜38のインキを得た。
【0063】
(比較例1〜3)
実施例1の配合を表5に記載された通り変更した以外は実施例1と同様の方法で行い、それぞれ比較例1〜3の印インキを得た。
【0064】
<極性基含有分散剤>
・アジスパーPB―821(アミン価を有する分散剤 味の素ファインケミカル社製)
・ソルスパース26000(酸価を有する分散剤 ルーブリゾール社製)
【0065】
<極性基含有顔料誘導体>
・ソルスパース5000(アンモニウム塩系銅フタロシアニン誘導体(ルーブリゾール社製)
・A:下記化学式に示す塩基性基含有顔料誘導体(有機顔料 PB15:3の変性体)
【0066】
化学式1
【化1】
【0067】
・B:下記化学式2に示す塩基性基含有顔料誘導体
【0068】
化学式2
【化2】
【0069】
得られたインキについて以下の試験を行った。
【0070】
<連続印刷性>
得られたインキについて、下記印刷機を使用して連続印刷テストを行い、それぞれ3000枚、8000枚、12000枚、16000枚毎にサンプリングを行い印刷物の汚れの有無を目視観察することで連続印刷性を評価した。なお、評価基準は下記の通りである。
〇:良好な印刷物が得られた。
△:印刷物に僅かな汚れがみられた。実用域
×:印刷物が大きく汚れた。実用不可
(印刷条件)
・オフセット印刷機:LITHRONE26(小森コーポレーション製)
・PS版:XP−F (FFGS社製)
・用紙:パールコートN(三菱製紙社製)
・湿し水:水道水/アストロマーク3(株式会社日研化学研究所社製)/イソプロピルアル
コール=95重量%/2重量%/3重量%の組成で混合
・印刷条件:室温25±1℃、印刷速度 8000枚/時
・印刷操作条件:湿し水供給装置の目盛りを印刷物に汚れが生じない程度に湿し水最小供 給量に設定した。
【0071】
<保存安定性>
得られたインキを60℃で放置し、2週間後、および4週間後のインキ状態を目視と、金属ヘラによる触診により観察することで保存安定性を評価した。なお、評価基準は下記の通りである。
〇:4週間後、インキに異常が無かった。良好
△:2週間後、インキに異常が無かったが、4週間後にインキがゲル化した。実用域
×:2週間後にインキがゲル化した。実用不可
【0072】
<静置流動性>
得られたインキを25℃雰囲気で60°に傾けた真鍮製の傾斜板の上に3g垂らし、
インキの着地点から10分間に流動した距離を測定し静置流動性として評価した。なお、評価基準は、インキの流れた長さが長いほど良好であるとした。単位はmmで表記する。
【0073】
<光沢評価>
上記連続印刷性評価で作製した印刷物のうち1000枚目をサンプリングして試料とした。当該試料について、Gloss Meter GM‐26D(村上色彩技術研究所社製)を用いて60°反射光沢を測定した。なお、評価基準は、数値の高いほど光沢に優れる。数値は反射率(%)を表す。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
【表4】
【0078】
【表5】