(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)成分:式(1)で表されるアミノ酸系界面活性剤を0.1〜10質量%、
(b)成分:式(2)で表されるエーテルサルフェート型陰イオン性界面活性剤を1〜20質量%、
(c)成分:グリコール酸またはその塩を0.01〜3質量%
含有し、(a)成分と(b)成分との質量比((a)/(b))が0.1〜1である毛髪洗浄剤組成物。
【化1】
(式(1)中、R
1COは炭素数8〜22の脂肪族アシル基を示し、R
2は炭素数1〜4のアルキレン基を示し、R
3は
エチレン基を示し、M
1はアルカリ金属原子またはアルカノールアミンを示す。)
【化2】
(式(2)中、R
4は炭素数8〜22のアルキル基を示し、nは1〜15を示し、M
2はアルカリ金属原子またはアンモニウムを示す。)
【背景技術】
【0002】
毛髪洗浄剤の界面活性剤成分として、洗浄力の高さや配合のし易さから、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩が広く使用されており、数多くの配合処方が提案されている。中でも、泡のクリーミーさや弾力性などの泡質を高めたり、毛髪へのダメージをよりマイルドにしたりするために、アミノ酸系界面活性剤と組み合わせたものが多く知られている。例えば、特許文献1には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムとアシルアラニン塩と両性界面活性剤とカチオン化ポリマーを組み合わせた組成物が提案されている。
しかしながら、この組成物は洗髪時に弾力のある泡を与えるものの、毛髪を乾燥させた後に頭皮にややつっぱり感を生じ、頭皮のしっとり感が十分ではなかった。
【0003】
そのため、頭皮のしっとり感を向上させるための配合処方がいくつか提案されている。例えば、特許文献2には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムとアシルグルタミン酸塩とカチオン化ポリマーを組み合わせた組成物が提案されている。この組成物は乾燥後の頭皮にしっとり感を与えることができる。
さらに、頭皮のしっとり感が持続するような処方も提案されており、例えば、特許文献3には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムと水酸基を構造中に持つアシルヒドロキシアルキルβアラニン塩と両性界面活性剤を含有する組成物が提案されている。
しかしながら、これらの組成物は、乾燥後の頭皮のしっとり感とその持続性も向上させてはいるが、湿度の低い冬場の乾燥時期にはこれらの効果は必ずしも十分とはいえなかった。そのため、非常に低湿度で乾燥した環境下でも、乾燥後の頭皮に十分なしっとり感を与え、またそのしっとり感が持続できるような毛髪洗浄剤が求められていた。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を説明する。
本発明の毛髪洗浄剤組成物は、(a)成分、(b)成分および(c)成分を含有する。以下、各化合物を説明する。
【0014】
〔(a)成分〕
本発明に用いられる(a)成分は、式(1)で表されるアミノ酸系界面活性剤である。
式(1)中のR
1COは炭素数8〜22、好ましくは炭素数8〜18の脂肪族アシル基を示す。脂肪族アシル基には、炭素数8〜22の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸を由来とするアシル基が用いられる。例えば、カプロイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オレオイル基、ベヘニル基などが挙げられる。また、これら脂肪酸の二種以上を含む混合脂肪酸由来のアシル基も用いられ、例えば、ヤシ油脂肪酸アシル基やパーム核油脂肪酸アシル基などの天然脂肪酸由来のものも用いることができる。これらの中で、好ましくは、ラウロイル基、ミリストイル基、ヤシ油脂肪酸アシル基、パーム核油脂肪酸アシル基であり、特に好ましくは、ラウロイル基、ヤシ油脂肪酸アシル基、パーム核油脂肪酸アシル基である。ヤシ油脂肪酸アシル基に含まれる各アシル基の代表的な含有比率は、C8:C10:C12:C14:C16:C18=5:6:55:17:10:7(質量比)である。またパーム核油脂肪酸アシル基に含まれる各アシル基の代表的な含有比率は、C8:C10:C12:C14:C16:C18=3:7:47:14:9:20(質量比)である。
【0015】
式(1)中のR
2は炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキレン基を示す。R
2としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基などが挙げられ、好ましくはエチレン基、n-プロピレン基である。すなわち、式(1)中のR
2OHとしては、例えば、モノヒドロキシエチル基、モノヒドロキシプロピル基、モノヒドロキシイソプロピル基、モノヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基などが挙げられる。好ましくはモノヒドロキシエチル基、モノヒドロキシプロピル基である。より好ましくはモノヒドロキシエチル基である。
【0016】
また、式(1)中のR
3は炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキレン基を示す。R
3としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基などが挙げられ、好ましくはエチレン基、n-プロピレン基である。すなわち、式(1)中のR
3COOHとしては、例えば、モノカルボキシメチレン基、モノカルボキシエチレン基、モノカルボキシプロピレン基、モノカルボキシイソプロピレン基、モノカルボキシブチレン基、モノカルボキシイソブチレン基などが挙げられる。好ましくはモノカルボキシエチレン基である。
【0017】
式(1)中のM
1はアルカリ金属原子またはアルカノールアミンを示す。アルカリ金属原子としては、例えば、ナトリウム、カリウムなどが挙げられ、好ましくはナトリウムである。また、アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられ、好ましくはトリエタノールアミンである。
【0018】
式(1)で表されるアミノ酸系界面活性剤の具体例としては、例えば、ラウロイルヒドロキシエチルアラニンナトリウム、ラウロイルヒドロキシエチルアラニントリエタノールアミン、ラウロイルヒドロキシプロピルアラニントリエタノールアミン、ヤシ油脂肪酸アシルヒドロキシエチルアラニントリエタノールアミン、パーム核油脂肪酸アシルヒドロキシプロピルアラニンナトリウムなどが挙げられる。
【0019】
本発明において(a)成分は、上記式(1)で包含される化合物のうち一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。
【0020】
〔(b)成分〕
本発明に用いられる(b)成分は、式(2)で表されるエーテルサルフェート型陰イオン性界面活性剤である。
式(2)中のR
4は炭素数8〜22、好ましくは炭素数10〜18のアルキル基を示す。アルキル基には、炭素数8〜22の飽和アルキル基または不飽和アルキル基が用いられる。例えば、カプリル基、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、オレイル基、ベヘニル基などが挙げられる。また、これらアルキル基の二種以上を含む混合脂肪酸由来のアルキル基も用いられ、例えば、ヤシ油アルキル基やパーム核油アルキル基なども用いることができる。これらの中で、好ましくは、ラウリル基、ミリスチル基、ヤシ油アルキル基、パーム核油アルキル基であり、より好ましくは、ラウリル基、ヤシ油アルキル基、パーム核油アルキル基であり、特に好ましくはラウリル基である。
式(2)中のnはエチレンオキサイドの平均付加モル数を示し、nは1〜15であり、好ましくは1〜8、より好ましくは2〜5、特に好ましくは2〜3である。
【0021】
式(2)中のM
2はアルカリ金属原子またはアンモニウムを示す。アルカリ金属原子としては、例えば、ナトリウム、カリウムなどが挙げられる。好ましくはナトリウム、アンモニウムである。
【0022】
式(2)で表されるエーテルサルフェート型陰イオン性界面活性剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウムなどが挙げられる。
本発明において(b)成分は、一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。
【0023】
〔(c)成分〕
本発明に用いられる(c)成分は、グリコール酸またはその塩である。グリコール酸塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩等が挙げられる。好ましくはナトリウム塩である。
本発明において(c)成分は、一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。
【0024】
〔毛髪洗浄剤組成物〕
次に、本発明の毛髪洗浄剤組成物における各成分の含有量について説明する。
本発明の毛髪洗浄剤組成物における(a)成分の含有量は、0.1〜10質量%であり、好ましくは0.5〜7質量%であり、さらに好ましくは1〜4質量%である。(a)成分の含有量が少なすぎる場合には、乾燥後の頭皮に十分なしっとり感が得られなかったり、その持続性も乏しくなったりすることがある。含有量が多すぎる場合には、泡の弾力が不足する可能性がある。
【0025】
本発明の毛髪洗浄剤組成物における(b)成分の含有量は、1〜20質量%であり、好ましくは2〜15質量%であり、さらに好ましくは4〜10質量%である。(b)成分の含有量が少なすぎる場合には、泡の弾力が不足する可能性がある。含有量が多すぎる場合には、乾燥後の頭皮のしっとり感が損なわれる可能性がある。
【0026】
本発明の毛髪洗浄剤組成物における(c)成分の含有量は、0.01〜3質量%であり、好ましくは0.05〜2質量%であり、さらに好ましくは0.1〜1質量%である。(c)成分の含有量が少なすぎる場合には、十分な泡の弾力や乾燥後の頭皮に十分なしっとり感が得られなかったり、その持続性も乏しくなったりすることがある。含有量が多すぎる場合には、シャンプーの粘度が高くなりすぎ、容器から吐出する際のハンドリングが損なわれる可能性がある。
【0027】
本発明の毛髪洗浄剤組成物は、(b)成分に対する(a)成分の質量比〔(a)/(b)〕が0.1〜1であり、好ましくは0.10〜0.60であり、より好ましくは0.15〜0.50であり、さらに好ましくは0.20〜0.40である。質量比〔(a)/(b)〕が大きすぎる場合や小さすぎる場合には、泡の弾力が十分ではないことがある。
【0028】
本発明の毛髪洗浄剤組成物は、通常の方法に従って製造することができる。本発明の毛髪洗浄剤組成物は、(a)〜(c)の各成分と水の総含有量が100質量%である。また、本発明の毛髪洗浄剤組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲内で、毛髪の洗浄剤に一般的に用いられている成分を含有していてもよい。
【実施例】
【0029】
〔実施例1〜10および比較例1〜7〕
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明する。
表1および表2の界面活性剤成分を用いて、表3および表4に記載の配合に基づいて、常法に従い、毛髪洗浄剤組成物としてシャンプー組成物を調製した。
実施例および比較例で得られたシャンプー組成物を用いて、下記のとおり評価を行い、その結果を表3および表4にまとめた。
【0030】
(1)泡の弾力
1000mLメスシリンダーに40℃のシャンプー希釈液(シャンプー組成物をイオン交換水で3質量%に希釈)100gを泡立たないように入れる。次に、金魚ポンプ((株)ニチドウ製、エアポンプ ノンノイズS 200)のエアストーン部分を水溶液中に入れて、流量1000mL/分で、1000mLまで泡立てる。錘(5g)をつけた浮き(蛍光合成玉15号、重さ10g)を泡内に入れて、浮きの中心線が1000mLから500 mLまで通過するときの時間を測定し、以下の基準で泡の弾力を評価した。
◎:通過時間が15秒以上;泡の弾力が非常に強い。
○:通過時間が10秒以上15秒未満;泡の弾力が強い。
△:通過時間が5秒以上10秒未満;泡の弾力が弱い。
×:通過時間が5秒未満;泡の弾力がない。
【0031】
(2)頭皮のしっとり感(乾燥直後)
20人の男女(24〜47才)をパネラーとし、シャンプー組成物5mLを用いて洗髪を行い、すすぎ後、毛髪をドライヤーで乾燥させた。その際に、頭皮のしっとり感が得られると感じた場合を2点、頭皮のしっとり感があまり得られないと感じた場合を1点、頭皮のしっとり感が得られないと感じた場合を0点として20名の合計点を求め、以下のように評価した。
◎:合計点が35点以上;頭皮のしっとり感が十分に得られる。
○:合計点が30点以上35点未満;頭皮のしっとり感がやや得られる。
△:合計点が20点以上30点未満;頭皮のしっとり感があまり得られない。
×:合計点が20点未満;頭皮のしっとり感が得られない。
【0032】
(3)頭皮のしっとり感(持続性)
20人の男女(24〜47才)をパネラーとし、シャンプー組成物5mLを用いて洗髪を行い、すすぎ後、毛髪をドライヤーで乾燥させた。湿度20%に調整された恒温恒湿室で1時間順化させた後、頭皮のしっとり感を評価した。その際に、頭皮のしっとり感が得られると感じた場合を2点、頭皮のしっとり感があまり得られないと感じた場合を1点、頭皮のしっとり感が得られないと感じた場合を0点として20名の合計点を求め、以下のように評価した。
◎:合計点が35点以上;頭皮のしっとり感が十分に得られる。
○:合計点が30点以上35点未満;頭皮のしっとり感がやや得られる。
△:合計点が20点以上30点未満;頭皮のしっとり感があまり得られない。
×:合計点が20点未満;頭皮のしっとり感が得られない。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
【表4】
【0037】
実施例1〜10はいずれの項目においても良好な評価であった。
一方、比較例1は(a)成分が含まれていないことから、泡の弾力、乾燥後の頭皮のしっとり感およびその持続性はいずれも不十分であった。
比較例2では(b)成分を含有していないことから、泡の弾力に乏しいものであった。
比較例3は、質量比((a)/(b))が本発明規定範囲の上限値を超えていることから、頭皮のしっとり感やその持続性は良好であったが、泡の弾力が劣っていた。
一方、比較例4は、質量比((a)/(b))が本発明規定範囲の下限値未満であることから、泡の弾力が劣っており、また乾燥後のしっとり感およびその持続性は不十分であった。
比較例5では(a)成分に替えてラウロイルメチルアラニンナトリウムを含有していることから、泡の弾力は良好であったが、乾燥後の頭皮のしっとり感およびその持続性はいずれも不十分であった。
比較例6では(c)成分を含有していないことから、乾燥後の頭皮のしっとり感およびその持続性はいずれも不十分であった。
比較例7は、(c)成分に替えてクエン酸を含有していることから、泡の弾力は良好であったが、乾燥後の頭皮のしっとり感やその持続性は不十分であった。