(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記学習部は、カーブ手前の制御区間にて、前記運転者がアクセル操作部(20a)をオフ状態にしたときからブレーキ操作部(20b)をオン状態にするまでの踏替時間(Tc)を学習し、
前記タイミング判定部は、前記踏替時間が長い前記運転者ほど、前記カーブ通知のタイミングを早くする請求項1に記載の提示制御装置。
前記タイミング判定部は、前記搭乗時間に基づき前記自動運転に不慣れと推定される前記運転者への前記カーブ通知のタイミングを、設定可能な範囲のうちで最も早いタイミングに設定する請求項6に記載の提示制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。そして、複数の実施形態及び変形例に記述された構成同士の明示されていない組み合わせも、以下の説明によって開示されているものとする。
【0015】
(第一実施形態)
本開示の第一実施形態による提示制御装置の機能は、
図1に示すHMI(Human Machine Interface)制御装置40によって実現されている。HMI制御装置40は、車両制御装置60等の電子制御ユニットと共に車両Aに搭載されている。HMI制御装置40及び車両制御装置60は、直接的又は間接的に互い電気接続されており、相互に通信可能である。HMI制御装置40及び車両制御装置60は、運転者に代わって運転操作を行う自動運転機能を実現する処理装置であって、協調して車両Aを自律走行させることができる。
【0016】
HMI制御装置40は、車両制御装置60に加えて、提示装置10、車載センサ群20、自律走行用のユニット群30、及びDSM(Driver Status Monitor)37等と接続されている。これらの構成により、車両Aの車載システムが構築されている。
【0017】
車両制御装置60は、車両Aの挙動を制御する電子制御ユニットである。車両制御装置60は、HMI制御装置40との連携により、車両Aの自律走行を可能にする。車両制御装置60は、処理部61、RAM62、メモリ装置63、及び入出力インターフェース等を有するコンピュータを主体に構成されている。
【0018】
処理部61は、CPU(Central Processing Unit)及びGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサを少なくとも一つ含んでいる。メモリ装置63は、フラッシュメモリ及びハードディスク等の不揮発性の記憶媒体を有している。車両制御装置60は、メモリ装置63に記憶された車両制御プログラムを処理部61に実行させることで、車両Aの加減速制御及び操作制御等を実施する。
【0019】
車両制御装置60は、車載アクチュエータ群80と電気接続されている。車載アクチュエータ群80は、車両Aの加速、減速及び操舵を実行する駆動装置群である。車載アクチュエータ群80には、例えばスロットルアクチュエータ、インジェクタ、ブレーキアクチュエータ、駆動用及び回生用のモータジェネレータ、並びに操舵アクチュエータ等が含まれている。
【0020】
提示装置10は、車両Aに搭乗中の運転者に対し、視覚刺激、聴覚刺激及び触覚刺激等によって情報提示を行う機器である。提示装置10には、CID(Center Information Display)11、メータ12、HUD(Head-Up Display)13、スピーカ14及び触覚刺激装置15等が含まれている。CID11は、センタクラスタの上方に配置された表示器である。メータ12は、運転席の前方に配置された表示器である、HUD13は、運転席の前景に虚像を重畳表示させる表示器である。スピーカ14は、音声メッセージ及び報知音等の再生により、運転者に情報を提示する。触覚刺激装置15は、例えばステアリングホイールのリム部分及び運転席の座面等に設けられている。触覚刺激装置15は、振動の発生により、運転者に触覚を通じた情報提示を行う。
【0021】
車載センサ群20には、アクセルペダルセンサ21、ブレーキペダルセンサ22、車速センサ23、舵角センサ24、及び勾配センサ25が含まれている。アクセルペダルセンサ21は、アクセルペダル20aに設けられており、アクセルペダル20aへ入力される運転操作(ペダル操作)を検出する。ブレーキペダルセンサ22は、ブレーキペダル20bに設けられており、ブレーキペダル20bへ入力される運転操作(ペダル操作)を検出する。車速センサ23は、車両Aの走行速度を計測する。舵角センサ24は、ステアリングホイールの操舵角(ステアリング角)を検出する。勾配センサ25は、車両Aの姿勢の検出により、車両Aが走行中の道路の勾配を計測する。各センサ21〜25は、検出した車両情報を、HMI制御装置40及び車両制御装置60へ向けて逐次出力する。
【0022】
自律走行用のユニット群30は、自律走行に必要な車外情報を取得する。自律走行用のユニット群30から提供される車外情報に基づき、HMI制御装置40及び車両制御装置60の少なくとも一方が、車両Aの周囲の走行環境を認識し、自車位置の特定及び走行計画の生成等の処理を実行する。自律走行用のユニット群30には、ミリ波レーダ31、カメラ32、V2X通信器33、及びロケータ34等が含まれている。
【0023】
ミリ波レーダ31は、車両Aの進行方向へ向けてミリ波を照射し、進行方向に存在する移動物体及び静止物体等で反射されたミリ波を受信する外界センサである。カメラ32は、車両Aの進行方向を撮影し、進行方向に存在する移動物体及び静止物体等を、前方画像から抽出する外界センサである。ミリ波レーダ31及びカメラ32は、他車両及び歩行者等の移動物体並びに区画線及び道路標識等の静止物体を検出し、進行方向の走行環境を認識した認識情報と共に、車外情報としてHMI制御装置40及び車両制御装置60に逐次出力する。
【0024】
V2X通信器33は、路車間通信及び車車間通信により、交通情報及び他車両から送信された他車情報等を受信する。ロケータ34は、車両Aの現在位置を測定する。ロケータ34は、車両Aの周囲及び進行方向の道路形状を示す道路マップを取得する。V2X通信器33及びロケータ34は、取得した車外情報を、HMI制御装置40及び車両制御装置60へ向けて逐次出力する。
【0025】
DSM37は、運転者の状態を監視する状態監視装置である。DSM37は、運転者の顔を撮影する顔用カメラ、撮影のための近赤外光を放射する光源部、並びに顔用カメラ及び光源部を制御する制御部等によって構成されている。DSM37は、運転席に着座した搭乗中の運転者の顔画像を、認識情報としてHMI制御装置40に逐次出力する。
【0026】
HMI制御装置40は、提示装置10を用いた運転者への情報提示を制御する電子制御ユニットである。HMI制御装置40は、処理部41、RAM42、メモリ装置43、及び入出力インターフェース等を有するコンピュータを主体に構成されている。処理部41は、CPU及びGPU等のプロセッサを少なくとも一つ含んでいる。メモリ装置43は、フラッシュメモリ及びハードディスク等の不揮発性の記憶媒体を有している。メモリ装置43に記憶された提示制御プログラムを処理部41が実行することにより、HMI制御装置40には、情報提示を制御するための複数の機能ブロックが構築される。HMI制御装置40には、車両情報取得部51、環境判定部52a、カーブ認識部52、運転者識別部53、タイミング学習部54、タイミングデータベース59、モデル選択部55、タイミング判定部56、提示制御部57、及び累積記録部58等が構築される。
【0027】
車両情報取得部51は、車載センサ群20から出力される車両情報、自律走行用のユニット群30から出力される車外情報、及びDSM37から出力される認識情報を取得する。車両情報取得部51は、取得した各情報を、他の機能ブロックに提供する。
【0028】
環境判定部52aは、進行方向の走行環境の認識情報を取得する。環境判定部52aは、取得ている認識情報の中に、運転者の不安感を高める要因として予め設定された特定走行環境を示す認識情報が有るか否かを判定する。特定走行環境には、雨等によって路面が濡れている環境、道路脇に壁がある環境、道路面積が狭く見通しの悪い環境、運転者の視界を遮るような先行車がいる環境、区画線にかすれがある環境等が含まれている。
【0029】
カーブ認識部52は、進行方向の走行環境の認識情報、進行方向の道路マップ、及び走行中の道路の勾配情報等を統合し、車両Aの進行方向にあるカーブの形状を認識する。カーブ認識部52は、具体的には、カーブの曲率半径、カーブ区間の長さ及び道路勾配等を、カーブ情報として取得する。
【0030】
運転者識別部53は、車両の運転席に着座している運転者を識別する。運転者識別部53は、DSM37から認識情報として出力される顔画像に基づき、搭乗中の運転者の個人認証を行う。搭乗中の運転者が、以前に車両Aに搭乗したことがある場合、運転者識別部53は、過去の履歴情報から搭乗中の運転者を選択する。一方、搭乗中の運転者が車両Aに初めて搭乗した人物である場合、運転者識別部53は、搭乗中の運転者に新規の識別番号を付与し、新たな個人として登録する。
【0031】
タイミング学習部54は、自動運転機能が停止しており、運転者が運転操作を行う手動運転の状態にて、搭乗中の運転者の運転操作の特性を、運転特性情報として学習する。運転特性情報には、運転者の運転操作を計測した計測結果と、計測結果に基づいて生成又は選定される特定モデルが含まれている。タイミング学習部54は、個々の運転者がカーブ手前の制御区間にて行う運転操作のうちで、アクセルペダル20aからブレーキペダル20bに踏み変える踏替時間Tcの計測結果を学習する(
図2参照)。踏替時間Tcは、運転者がアクセルペダル20aをオフ状態にしたときから、ブレーキペダル20bをオン状態にするまでの時間である。
【0032】
ここで、
図2に示す踏替時間Tcを計測する意味を説明する。
図2〜
図4に示すように、運転特性の類型の一種として、運転者は、アクセル主体で減速を行う運転者Daと、ブレーキ主体で減速を行う運転者Dbとに分類可能である。アクセル主体の運転者Daは、カーブの入口Xs(
図5参照)から離れた位置でアクセルペダル20aを離し、走行抵抗によって車両Aを減速させる状態を暫く維持した後、ブレーキペダル20bを踏む。このように、アクセル主体の運転者Daは、カーブ手前での速度調整を、アクセルオフによるエンジンブレーキによって、緩やかに時間をかけて実行する。一方で、ブレーキ主体の運転者Dbは、アクセル主体の運転者Daよりもカーブの入口Xsに近い位置でアクセルペダル20aを踏むのを止めて、そのままブレーキペダル20bに踏み替える。このように、ブレーキ主体の運転者Dbは、カーブ手前での速度調整を、ブレーキペダル20bへの操作によって短時間で実行する。
【0033】
アクセル主体の運転者Daの踏替時間Tcは、ブレーキ主体の運転者Dbの踏替時間Tcよりも長くなる(
図2参照)。加えて、アクセル主体の運転者Daは、ブレーキ主体の運転者Dbよりも、カーブの入口Xsから遠い位置で車両Aの減速を開始させる。故に、自動運転によって同一の走行速度で同一の曲率半径のカーブに進入する場合でも、アクセル主体の運転者Daが不感を感じ始める不安タイミングは、ブレーキ主体の運転者Dbの不安タイミングよりも、カーブの入口Xsから遠い位置となる。こうした傾向が、
図3及び
図4に示されている。尚、
図3及び
図4の縦軸の縮尺は、同一である。
【0034】
また、アクセル主体の運転者Daでも、ブレーキ主体の運転者Dbでも、カーブに進入する速度が同一であれば、カーブの曲率半径が小さくなるほど、運転者は、カーブの入口Xsから遠い位置で、不安を感じ始める。さらに、カーブの曲率半径が同一であれば、カーブに進入する走行速度が高いほど、運転者は、カーブの入口Xsから遠い位置で、不安を感じ始める。
【0035】
ここまで説明したように、運転者の不安タイミングは、カーブへ進入するときの車速及びカーブ形状と、運転者の運転特性とに基づき、判定され得る。故に、
図1のタイミング学習部54は、運転者毎の踏替時間Tcを基準として、カーブ情報及び車速情報から不安タイミングを算出可能な特性モデルを生成する。特性モデルは、車速情報及びカーブ情報が代入される関数であって、カーブの入口Xsまでの距離Xi又はカーブの入口Xsまでの時間Tiを、不安タイミングとして出力する(
図5参照)。特性モデルは、車速情報及びカーブ情報に関連付けられたモデル式であり、具体的には、以下の式1又は式2である。式1及び式2のいずれを用いた場合であっても、不安タイミングは、同一の位置となる。
(式1) 距離の場合 : Xi[m] = fx(R,v) + α
(式2) 時間の場合 : Ti[s] = ft(R,v) + α
R:カーブの曲率半径, v: 車速, α:調整項
【0036】
タイミングデータベース(以下、「タイミングDB」)59は、上述の式1又は式2に示す特性モデルを複数記憶している。タイミングDB59には、タイミング学習部54によって学習された運転者毎の特性モデル(SubA,SubB参照)と、予め設定された標準の特性モデルとが格納されている。運転者毎に学習された特性モデルには、個々の運転者に割り振られた識別番号が紐付けられている。
【0037】
モデル選択部55は、タイミングDB59に格納された運転者毎の特性モデルの中から、運転者識別部53にて識別された搭乗中の運転者に対応する特性モデルを選択する。搭乗中の運転者に対応する特性モデルがタイミングDB59に無い場合、又は搭乗中の運転者を運転者識別部53が識別できない場合、モデル選択部55は、標準の特性モデルを選択する。
【0038】
タイミング判定部56は、自動運転の状態にて、運転者に対し行われるカーブ通知の提示のタイミングを判定する。タイミング判定部56は、カーブ情報及び車速情報に基づき、特性モデルを用いて、カーブ通知のタイミングを設定する。カーブ通知は、自動運転にて走行を予定している進行方向のカーブの存在を、運転者に知らせる内容の通知である。カーブ通知は、カーブ手間の制御区間にて、少なくとも一回行われる。
【0039】
ここで、カーブ通知を行う理由を説明する。自動運転機能によって走行中の挙動は、運転者の普段の運転による挙動と異なってくる。こうした挙動の違いにより、特にカーブの手前にて、運転者は、「本当に車両がカーブを認識しているのか」或いは「操舵を制御する準備ができているのか」、といった不安をいっそう感じ易くなる。こうした不安を解消するために、「車両がカーブを認識していること」或いは「車両がカーブに対する制御の準備ができていること」をカーブ通知として運転者に情報提示する必要がある。
【0040】
こうしたカーブ通知は、運転者が不感を感じる前に実施される必要がある。そのためタイミング判定部56は、手動運転の状態で運転者が減速を開始するタイミングを基準として、カーブ通知のタイミングを設定する。具体的に、タイミング判定部56は、カーブの曲率半径R及び車速vを、モデル選択部55にて選択された特性モデルに代入し、算出される距離Xi又は時間Tiを基準にカーブ通知のタイミングを設定する。カーブ通知のタイミングは、搭乗中の運転者の不安タイミングと同時、又は不安タイミングよりも僅かに早いタイミングとされる。
【0041】
タイミング判定部56は、特定走行環境を示す認識情報が環境判定部52aにて取得されていた場合に、特性モデルの調整項αの値の調整により、カーブ通知のタイミングを、特定走行環境を示す認識情報が取得されていない場合と比較して、早める。一例として、タイミング判定部56は、カメラ32の画像認識によって観測された路面状況に基づき、雨などの影響で路面の摩擦係数が低い場合には、カーブ通知のタイミングを早める。タイミング判定部56は、運転者に圧迫感を与えるような道路脇に壁が認識されている場合には、カーブ通知のタイミングを早める。タイミング判定部56は、運転者から見える進行方向の道路面積に基づき、道路面積が狭くなるほど、即ち、見通しが悪くなるほど、カーブ通知のタイミングを早める。タイミング判定部56は、運転者の視界を遮るような先行車がいる場合には、カーブ通知のタイミングを早める。タイミング判定部56は、走行中の車線を区画する区画線にかすれ等があり、鮮明ではない場合には、カーブ通知のタイミングを早める。
【0042】
タイミング判定部56は、カーブ通知について、予め設定された中止条件が成立しているか否かを判定する。提示制御部57は、中止条件が成立している場合には、カーブ通知のタイミングを設定せず、カーブ通知を中止する決定を行う。タイミング判定部56は、進行方向のカーブの曲率が所定の曲率閾値よりも低い場合、中止条件が成立していると判定する。タイミング判定部56は、車両Aの走行速度が所定の速度閾値よりも遅い場合、中止条件が成立していると判定する。
【0043】
提示制御部57は、提示装置10による運転者への情報提示を制御する機能部である。提示制御部57は、運転者に対する情報提示が必要な場合に、情報提示に用いるデバイスを選択し、選択したデバイスを制御することにより、運転者に対して適切なタイミングで情報を報知する。提示制御部57は、車両Aが自動運転の状態において、情報提示の一つとして、上述のカーブ通知を行う。提示制御部57は、
図5に示すように、タイミング判定部56にて設定されたタイミング、即ち、カーブの入口Xsまで距離Xi又は時間Tiとなる地点を情報提示位置として、カーブ通知を開始する。
【0044】
カーブ通知の情報提示位置が不安タイミングを基準に設定される上述の設定により、カーブの入口Xsから情報提示位置までの距離(以下、「情報提示距離」)Xiは、
図6に示すように、走行予定のカーブの曲率半径が小さくなるに従って長くなる。加えて、カーブへの進入速度が高くなるほど、情報提示距離Xiは長くなる。
【0045】
尚、カーブの入口Xsは、自動運転機能によるカーブ走行のための操舵が開始される地点に設定されている。また、地点Xcは、操舵操作が開始されなかった場合に、車線から車両Aが逸脱するポイントである。
図5のカーブの形状は、簡略化された一定の曲率で示されているが、円弧区間と直線区間の間にクロソイド曲線に従った形状のクロソイド区間が設けられていてもよい。こうしたカーブの場合、クロソイド区間と直線区間との接続点が、カーブの入口Xsとなる。
【0046】
図1に示す累積記録部58は、運転者の自動運転への慣れの度合いを推定する指標として、自動運転の状態にある車両Aへの累積での搭乗時間(以下、「累積自動運転時間」)を運転者毎に記録する。累積記録部58は、運転者識別部53にて識別された運転者に紐付けられた累積自動運転時間を計測し、当該運転者に対応する特性モデルに累積自動運転時間を紐付けて、タイミングDB59に保存する。
【0047】
累積記録部58は、タイミング学習部54と連携して、上述の式1及び式2における調整項αの値を設定する。累積記録部58は、累積自動運転時間を加味し、運転者が自動運転に慣れるほど、特性モデルの調整項αの値を小さく設定する。以上により、自動運転への慣れに起因した運転者の不安度合いの違いが調整される。その結果、カーブ通知は、累積自動運転時間の短い運転者に対しては早期に提示され、累積自動運転時間の短い運転者に対しては、遅いタイミングで提示される。
【0048】
さらに累積記録部58は、累積自動運転時間が殆ど無い自動運転に不慣れな運転者を、例えば閾値によって判別する。累積自動運転時間が閾値未満となる運転者へのカーブ通知のタイミングは、設定可能な範囲で最も早いタイミングに設定される。一方で、累積自動運転時間が閾値以上であり、自動運転に慣れた運転者へのカーブ通知のタイミングは、その運転特性に係らず、自動運転に不慣れな運転者への通知タイミングよりも遅い範囲で設定される。
【0049】
以上のHMI制御装置40にて実施される運転特性の学習処理、自動運転への慣れの学習処理、及びカーブ進入時の情報提示処理を、
図7〜
図9に示すフローチャートに基づき、
図1等を参照しつつ、順に説明する。
【0050】
図7に示す運転特性の学習処理は、例えば車両Aのイグニッションがオン状態に切り替えられたことに基づき、主にタイミング学習部54によって開始される。運転特性の学習処理は、車両Aが手動運転の状態にある期間にて、繰り返し実施される。
【0051】
S101では、DSM37の認識情報に基づく個人認証を行い、S102に進む。S101では、運転席に着座する搭乗中の運転者を識別する。S102では、車両Aの進行方向にあるカーブのカーブ情報を取得し、S103に進む。
【0052】
S103では、車両情報として、アクセルペダルセンサ21及びブレーキペダルセンサ22の検出結果を車両情報として取得する。そして、取得した車速情報に基づき、各ペダル20a,20bへのペダル操作のタイミングを検出する。S103では、搭乗中の運転者の踏替時間Tcを学習し、S104に進む。
【0053】
S104では、S103にて計測された踏替時間Tcに基づき、タイミングDB59を更新する。具体的に、S104では、S101にて識別された運転者に紐付く特性モデルのf(R,v)及び調整項αを、カーブ情報及び踏替時間Tcに基づき更新する。こうした特性モデルの更新は、運転者の運転特性に起因する調整分として、カーブ通知のタイミングに反映される。
【0054】
図8に示す自動運転への慣れの学習処理は、例えば車両Aのイグニッションがオン状態に切り替えられたことにより、主に累積記録部58によって開始される。
【0055】
S111では、S101(
図7参照)と同様に、DSM37の認識情報に基づく個人認証を行い、運転席に着座する搭乗中の運転者を識別して、S112に進む。S112では、自動運転機能が作動しているか否かを判定する。車両Aが手動運転の状態であれば、S112の判定を繰り返す。一方、車両Aが自動運転の状態であれば、S112からS113に進む。
【0056】
S113では、搭乗中の運転者について、累積自動運転時間の計測を開始し、S114に進む。S114では、自動運転機能が停止されたか否かを判定する。車両Aが自動運転の状態であれば、S114の判定を繰り返す。一方、車両Aが手動運転の状態に切り替えられていれば、S114からS115に進む。
【0057】
S115では、S114にて計測を開始した累積自動運転時間を記録し、タイミングDB59を更新する。具体的に、S115では、累積自動運転時間に基づき、特性モデルの調整項αの値を更新する。こうした特性モデルの更新は、運転者の自動運転への慣れによる変動分として、カーブ通知のタイミングに反映される。
【0058】
図9に示す情報提示処理は、例えば車両Aのイグニッションがオン状態に切り替えられ、車両Aが走行可能な状態になったことにより、主にモデル選択部55及びタイミング判定部56によって開始される。情報提示処理は、車両Aのイグニッションがオフ状態に切り替えられるまで、繰り返し実施される。
【0059】
S121では、S101(
図7参照)及びS111(
図8参照)と同様に、DSM37の認識情報に基づく個人認証を行い、運転席に着座する搭乗中の運転者を識別して、S122に進む。S122では、S112(
図8参照)と同様に、自動運転機能が作動しているか否かを判定する。車両Aが手動運転の状態であれば、S122の判定を繰り返す。一方、車両Aが自動運転の状態であれば、S122からS123aに進む。
【0060】
S123aでは、カメラ32等の外界センサから車両Aの進行方向の認識情報を取得し、特定走行環境を示す認識情報の有無を判定し、S123に進む。S123では、車両Aの進行方向にあるカーブのカーブ情報を取得し、S124に進む。S124では、車速情報及び自車の位置情報を取得し、S124aに進む。
【0061】
S124aでは、S123〜S124にて取得した情報に基づき、カーブ通知の中止条件が成立しているか否かを判定する。S124aにて、中止条件が成立していると判定した場合、S125〜S130をスキップし、情報提示処理を一旦終了する。一方、S124aにて、中止条件が成立していないと判定した場合、S125に進む。
【0062】
S125では、S121にて識別された運転者に対応する特性モデルを選択する。S125では、選択した特性モデルをタイミングDB59から読み出し、S126に進む。S126では、カーブ通知のタイミングを判定し、S127に進む。S126では、S123にて取得のカーブ情報及びS124にて取得の車速情報に基づき、S125にて読み出した特性モデルを用いて、情報提示距離Xi又は情報提示時間Tiを演算する。
【0063】
S126では、S123aにて特定走行環境を示す認識情報を取得していた場合に、カーブ通知を早める調整を行う。S126の調整により、路面が濡れている場合、道路脇に壁がある場合、見通しの悪い道路環境である場合、先行車がいる場合、区画線にかすれがある場合等で、カーブ通知のタイミングが早められる。
【0064】
S127では、自車の位置情報を再び取得し、S128に進む。S128では、S127にて取得した位置情報に基づき、カーブ通知を行う情報提示位置に車両Aが到達したか否かを判定する。S128では、カーブの入口Xsから現在位置までの残余距離と、S127にて演算した情報提示距離Xiとが比較される。残余距離が情報提示距離Xiよりも長い場合、情報提示位置に到達していないとして、S128の判定を繰り返す。一方、残余距離が情報提示距離Xiよりも短くなった場合、情報提示位置に到達したとして、S128からS129に進む。尚、S128の判定は、情報提示時間Tiを用いて、カーブの入口Xsまでの残余時間を基準に実施されてもよい。
【0065】
S129では、提示装置10に含まれるデバイスの中から、情報提示に用いるデバイスを選定し、S130に進む。S130では、S129にて選定したデバイスを用いて、カーブ通知を行い、情報提示処理を一旦終了する。S130の処理に基づき、提示装置10は、自動運転機能による進行方向のカーブの認識を運転者に対し提示する。一例として、旋回方向を示す湾曲した矢印状の画像がHUD13によって虚像表示され、「右カーブを走行します」という音声メッセージがスピーカ14によって再生される。
【0066】
ここまで説明した第一実施形態では、提示装置10によるカーブ通知のタイミングは、個々の運転者に対応するよう選択された運転特性情報(特性モデル)を用いて、カーブ情報及び車速情報から判定される。この運転特性情報は、手動運転の状態にて、個々の運転者について学習された情報である。故に、カーブ通知のタイミングは、車両Aに搭乗している運転者の運転操作の特性を反映したタイミングとなり得る。したがって、自動運転機能への運転者の不安は、軽減可能となる。
【0067】
加えて第一実施形態では、踏替時間Tcが長くなるアクセル主体の運転者Daほど、カーブ通知のタイミングは、カーブの入口Xsに対して早く調整される。上述したように、踏替時間Tcが長い運転者Daほど、減速開始のタイミング、ひいては不安タイミングが早くなる。故に、踏替時間Tcが長いほど情報提示距離Xiを長くする調整によれば、カーブ通知のタイミングには、運転者の運転特性が精度良く反映され得る。その結果、自動運転機能に運転者が不安を感じるシーンは、少なくなる。
【0068】
また第一実施形態のタイミング学習部54は、運転者毎の特性モデルを生成し、タイミングDB59に記録する。このように、運転者毎の特性モデルが個別に生成されれば、特性モデルを用いて設定されるカーブ通知のタイミングは、個々の運転者が不安を感じる直前に精度良く調整され得る。
【0069】
さらに第一実施形態では、運転者毎の累積自動運転時間が計測され、累積自動運転時間の短い運転者ほど、カーブ通知のタイミングが早められる。こうした調整によれば、自動運転に不安を感じ易い運転者に対しても、不安を感じる直前の適切なタイミングでカーブ通知が実施され得る。また、自動運転に慣れた運転者へのカーブ通知が不必要に早いタイミングで実施されてしまう事態も、回避され得る。
【0070】
加えて第一実施形態では、自動運転に不慣れな運転者へのカーブ通知のタイミングは、自動運転に慣れた運転者に対し設定可能なタイミングの範囲よりも、さらに早い時期に設定される。こうしたタイミングの設定によれば、カーブ通知は、運転者の自動運転への慣れを鑑みて、不安を感じない最適な時期に実施され得る。
【0071】
また第一実施形態では、運転者の不安感を高める要因が進行方向にある場合、タイミング判定部56は、カーブ通知のタイミングを早める。このように、カーブ通知のタイミングがカーブの道路状況に応じて適宜調整されれば、自動運転機能への運転者の不安は、いっそう軽減され得る。
【0072】
さらに第一実施形態では、不安を感じ難いシーン或いは不安を実質的に感じ無いようなシーンでは、中止条件を成立させる処理により、不要なカーブ通知の実施が中止される。以上によれば、不安を感じていない運転者へのカーブ通知の実施が回避できる。よって、運転者は、カーブ通知を煩わしく感じ難くなる。
【0073】
尚、第一実施形態では、HMI制御装置40が「提示制御装置」に相当し、アクセルペダル20aが「アクセル操作部」に相当し、ブレーキペダル20bが「ブレーキ操作部」に相当し、車両情報取得部51が「速度情報取得部」に相当する。また、カーブ認識部52が「カーブ情報取得部」に相当し、環境判定部52aが「認識情報取得部」に相当し、タイミング学習部54が「学習部」に相当し、モデル選択部55が「特性選択部」に相当し、タイミングDB59が「記憶部」に相当する。
【0074】
(第二実施形態)
図10及び
図11に示す本開示の第二実施形態は、第一実施形態の変形例である。カーブ通知のタイミングに運転者の運転操作の特性を反映させる第一実施形態に対し、第二実施形態では、カーブ手前にて減速を開始するタイミングに運転者の運転特性が反映される。車両制御装置60は、処理部61による車両制御プログラムの実行により、減速制御部271を有する。
【0075】
減速制御部271は、自動運転機能が運転操作を行う自動運転の状態にて、進行方向にあるカーブの形状に合わせて、車両Aがカーブを安定的に走行できるよう、車両Aの減速を制御する。減速制御部271は、車載アクチュエータ群80の制御により、車両Aにマイナス方向の加速度(減速度)を発生させ、走行速度を低減させる。
【0076】
HMI制御装置40は、処理部41による提示制御プログラムの実行により、車両情報取得部51、カーブ認識部52、運転者識別部53、タイミング学習部54、タイミングDB59、モデル選択部55、提示制御部57、及び累積記録部58を有する。加えてHMI制御装置40には、タイミング判定部256が構築される。
【0077】
タイミング判定部256は、自動運転の状態にて、カーブ情報及び車速情報に基づき、特性モデルを用いて、減速制御部271による減速開始のタイミングを判定する。減速制御部271による減速の開始位置は、上述の式1又式2にて演算される不安タイミングを基準に設定される。減速の開始により、自動運転機能によって進行方向のカーブが認識されていることを、運転者は確認できる。タイミング判定部256は、カーブの曲率半径R及び車速vを、モデル選択部55にて選択された特性モデルに代入することで、減速開始のタイミングを設定する。即ち、減速開始のタイミングは、搭乗中の運転者の不安タイミングと同時、又は不安タイミングよりも僅かに早いタイミングとされる。
【0078】
タイミング判定部256は、運転者毎の特性モデルに基づくことにより、搭乗中の運転者の踏替時間Tc(
図2参照)が長いほど、減速開始のタイミングを早く設定する。加えてタイミング判定部256は、運転者の累積自動運転時間が短いほど、減速開始のタイミングを早める。さらに、累積自動運転時間が閾値未満であり、運転者が自動運転に不慣れと推定される場合の減速開始のタイミングは、設定可能な範囲のうちで最も早いタイミングに設定される。
【0079】
タイミング判定部256は、特定走行環境を示す認識情報が環境判定部52aにて取得されていた場合に、特性モデルの調整項αの値の調整により、減速開始のタイミングを、特定走行環境を示す認識情報が取得されていない場合と比較して、早める。特定走行環境として設定される環境は、第一実施形態と実質的に同一である。
【0080】
減速制御部271は、車両Aが自動運転の状態である場合に、タイミング判定部256にて判定されたタイミングで減速を開始する。具体的に、減速制御部271は、カーブの入口Xsまで距離Xi又は時間Tiとなる地点で、減速を開始する。カーブの入口Xsから減速開始位置までの距離(以下、「減速距離」)Xi又は時間(以下、「減速時間」)Tiは、走行予定のカーブの曲率半径が小さくなるに従って長くなる。加えて、減速距離Xi又は減速時間Tiは、カーブへの車両Aの進入速度が高くなるほど、長くなる。
【0081】
以上の車両制御装置60及びHMI制御装置40により実施されるカーブ突入時の制動制御処理の詳細を、以下説明する。尚、HMI制御装置40にて実施される運転特性の学習処理(
図7参照)及び自動運転への慣れの学習処理(
図8参照)は、第一実施形態と実質的に同一である。
【0082】
制動制御処理は、例えば車両Aのイグニッションがオン状態に切り替えられ、車両Aが走行可能な状態になったことによって開始される。制動制御処理は、車両Aのイグニッションがオフ状態に切り替えられるまで、繰り返し実施される。制動制御処理のS221〜S225の内容は、第一情報提示処理のS121〜S125(
図9参照)の内容と実質同一である。
【0083】
S226では、減速開始のタイミングを判定し、S227に進む。S226では、S223にて取得のカーブ情報及びS224にて取得の車速情報に基づき、S225にて読み出した特性モデルを用いて、減速距離Xi又は減速時間Tiを演算する。減速開始位置は、減速距離Xi又は減速時間Tiに基づく位置に設定される。さらにS226では、カーブ区間における車両Aの走行速度を設定する。S226では、減速開始位置からカーブの入口Xs(
図5参照)までの区間にて、目標とする減速度の大きさの推移を規定した減速スケジュールを演算する。
【0084】
S227では、自車の位置情報を再び取得し、S228に進む。S228では、S227にて取得した位置情報に基づき、減速開始位置に到達したか否かを判定する。S228では、カーブの入口Xsから現在位置までの残余距離と、S227にて演算した減速距離Xiとが比較される。残余距離が減速距離Xiよりも長い場合、減速開始位置に到達していないとして、S228の判定を繰り返す。
【0085】
一方、残余距離が減速距離Xiよりも短くなった場合、減速開始位置に到達したとして、S228からS229に進む。S229では、減速制御部271による制動制御が実施され、制動制御処理を一旦終了する。S229の処理により、車両Aは、カーブの入口Xsまでの制御区間にて、減速スケジュールに従って減速する。尚、S228の判定は、情報提示時間Tiを用いて、カーブの入口Xsまでの残余時間を基準に実施されてもよい。
【0086】
ここまで説明した第二実施形態の自動運転機能は、進行方向にあるカーブの認識を、減速の開始によって運転者に提示し得る。そして、減速開始のタイミングは、個々の運転者に対応するよう選択された運転特性情報(特性モデル)を用いて、カーブ情報及び車速情報から判定される。故に、減速開始のタイミングは、車両Aに搭乗している運転者の運転操作の特性を反映したタイミングとなり得る。したがって、自動運転機能への運転者の不安は、軽減可能となる。
【0087】
加えて第二実施形態では、踏替時間Tcが長くなるアクセル主体の運転者Daほど、減速開始のタイミングは、カーブの入口Xsに対して早く調整される。上述したように、踏替時間Tcが長い運転者Daほど、手動運転の際の減速開始のタイミングが早くなる。故に、踏替時間Tcが長いほど減速距離Xiを長くする調整によれば、減速開始のタイミングには、運転者の運転特性が精度良く反映され得る。その結果、自動運転機能に運転者が不安を感じるシーンは、少なくなる。
【0088】
また第二実施形態でも、第一実施形態と同様に、運転者毎の特性モデルが生成される。故に、特性モデルを用いて設定される減速開始タイミングは、個々の運転者が不安を感じる直前に精度良く調整され得る。
【0089】
さらに第二実施形態では、運転者毎の累積自動運転時間が計測され、累積自動運転時間の短い運転者ほど、減速開始のタイミングが早められる。こうした調整によれば、自動運転に不安を感じ易い運転者に対しても、不安を感じる直前の適切なタイミングで減速が開始され得る。また、自動運転に慣れた運転者が搭乗中に、不自然に早いタイミングで減速が開始されてしまう事態も、回避され得る。
【0090】
加えて第一実施形態では、自動運転に不慣れな運転者が搭乗している場合の減速開始タイミングは、自動運転に慣れた運転者に対し設定可能なタイミングの範囲よりも、さらに早い時期に設定される。こうしたタイミングの設定によれば、カーブ手前における車両Aの減速は、運転者の自動運転への慣れを鑑みて、不安を感じない最適な時期に実施可能となる。
【0091】
また第二実施形態では、運転者の不安感を高める要因が進行方向にある場合、減速開始のタイミングが早められる。このように、減速開始のタイミングがカーブの道路状況に応じて適宜調整されれば、自動運転機能への運転者の不安は、いっそう軽減され得る。尚、第二実施形態では、HMI制御装置40及び車両制御装置60が「自動運転制御装置」に相当する。
【0092】
(第三実施形態)
本開示の第三実施形態は、
図1に示す第一実施形態の変形例である。第三実施形態では、第一実施形態と同様に、運転者の運転操作の特性がカーブ通知のタイミングに反映される。第三実施形態のタイミングDB59には、予め生成された複数の特性モデルが記憶されている。各特性モデルは、互いに運転特性の異なる運転者を想定した内容に予め設定されている。以下、
図12に示す第三実施形態の運転特性の学習処理の詳細を、
図1を参照しつつ説明する。
【0093】
学習処理では、DSM37の認識情報に基づく個人認証(S301)と、カーブ情報の取得(S302)とが順に実施される。タイミング学習部54は、踏替時間Tc(
図2参照)に替えて、カーブ手前の制御区間にて車両Aに作用する減速度の大きさを学習する(S303)。タイミング学習部54は、計測結果として、カーブ手前での減速度の最大値を学習してもよく、減速度の平均値又は中央値を学習してもよい。
【0094】
タイミング学習部54は、減速度の計測結果に基づき、タイミングDB59に記憶された複数の特性モデルの中から、運転中の運転者の運転特性に最も適合する特性モデルを選択する。そして、選択した特性モデルを、運転中の運転者に割り当てられた識別番号に紐付ける(S304)。
【0095】
ここで、制御区間にて発生させる減速度が大きい運転者ほど、減速開始位置は、カーブの入口Xsに接近する。即ち、不安タイミングは、減速度が大きくなるに従って、カーブの入口Xsに近づく傾向となる。故に、タイミング学習部54は、制御区間にて発生させる減速度が大きい運転者ほど、距離Xi又は時間Tiが小さい値となる特性モデルを運転者毎の識別番号に紐付ける。一方で、タイミング学習部54は、制御区間にて発生させる減速度が低い運転者ほど、距離Xi又は時間Tiが大きい値となる特性モデルを運転者毎の識別番号に紐付ける。
【0096】
モデル選択部55は、情報提示処理(
図9参照)にて、運転者識別部53にて識別された運転者に紐付けられている特性モデルを選択する(
図9 S125)。タイミング判定部56は、モデル選択部55によって選択された特性モデルを用いて、カーブ通知のタイミングを演算する(
図9 S126)。その結果、制御区間にて発生させる減速度が低い運転者ほど、カーブ通知のタイミングが早められ、減速度が高い運転者ほどカーブ通知のタイミングが遅くされる。
【0097】
ここまで説明した第三実施形態のように、複数の特性モデルの中から運転者の運転特性に適合する一つが選択される構成でも、第一実施形態と同様の効果を奏し、カーブ通知は、搭乗中の運転者の運転特性を反映したタイミングで実施され得る。加えて第三実施形態のように、運転者毎の特性モデルが個別に生成されない構成であれば、多数の運転者が共有する車両Aにおいても、タイミングDB59の記憶容量は、抑制され得る。
【0098】
加えて第三実施形態では、カーブ手前での減速度が小さい運転者ほど、カーブ通知のタイミングは、カーブの入口Xsに対して早く調整される。上述したように、減速度が小さい運転者ほど、減速開始のタイミング、ひいては不安タイミングが早くなる。その結果、自動運転機能に対し運転者が不安を感じるシーンは、少なくなる。
【0099】
(第四実施形態)
本開示の第四実施形態は、
図10に示す第二実施形態の変形例である。第四実施形態では、第二実施形態と同様に、運転者の運転操作の特性がカーブ手前での減速開始のタイミングに反映される。第四実施形態のタイミングDB59(
図10参照)には、第三実施形態と同様に、予め生成された複数の特性モデルが記憶されている。学習処理(
図12参照)にて、タイミング学習部54は、計測結果として学習された減速度の大きさに基づき、複数の特性モデルの中から、運転中の運転者の運転特性に最も適合する特性モデルに、当該運転者の識別番号に紐付ける(
図12 S304)。
【0100】
制動制御処理(
図11参照)にて、モデル選択部55は、搭乗中の運転者に紐付けられている特性モデルを選択し、タイミングDB59から読み出す(
図11 S225)。タイミング判定部256は、モデル選択部55によって選択された特性モデルを用いて、減速開始のタイミング及び減速スケジュールを演算する(
図11 S226)。その結果、制御区間にて発生させる減速度が小さい運転者ほど、カーブ通知のタイミングが早められる。一方で、減速度が大きい運転者ほどカーブ通知のタイミングは遅くされる。
【0101】
ここまで説明した第四実施形態のように、複数の特性モデルの中から運転者に適合する一つが選択される構成でも、第二実施形態と同様の効果を奏し、カーブ手前での減速は、搭乗中の運転者の運転特性を反映したタイミングで開始される。加えて第四実施形態のように、運転者毎の特性モデルが個別に生成されない構成であれば、多数の運転者が共有する車両Aであっても、タイミングDB59の記憶容量は、抑制され得る。
【0102】
加えて第四実施形態では、カーブ手前での減速度が小さい運転者ほど、減速開始のタイミングは、カーブの入口Xsに対して早く調整される。上述したように、減速度が小さい運転者ほど、減速開始のタイミングは早くなる。故に、自動運転機能に対し運転者が不安を感じるシーンは、少なくなる。
【0103】
(他の実施形態)
以上、本開示の複数の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0104】
上記実施形態では、カーブが運転者に不安を与える要因に着目し、運転者の運転特性を考慮した上で、車両挙動の予告提示又は車両挙動の制御のいずれか一方を行うことで、運転者に安心感が提供されていた。しかし、車両挙動を予告提示するカーブ通知のタイミングと減速開始のタイミングの両方が、運転操作の特性を反映して、調整されてもよい。
【0105】
上記実施形態におけるカーブ通知は、例えば累積自動運転時間が所定の時間を超過した運転者に対しては、実施されなくてもよい。また、カーブ通知は、例えば運転者による入力操作に基づいて、実施されないように設定されてもよい。
【0106】
上記実施形態では、カーブの走行に伴って行う運転操作として、アクセルペダルからブレーキペダルへの踏替時間Tc、又はカーブ手前での減速度が計測されていた。しかし、学習される運転操作は、これらの運転操作に限定されない。例えば、タイミング学習部は、カーブ区間における横方向の加速度を、運転特性情報のうちの計測結果として学習し、旋回中の加速度に基づいて特性モデルを生成又は選定してもよい。尚、タイミング学習部は、カーブ区間における加速度の最大値を学習してもよく、或いはカーブ区間における加速度の平均値又は中央値を学習してもよい。
【0107】
上記第三,第四実施形態では、予め生成された複数の特性モデルがタイミングDBに格納されていた。このように、タイミングDBに保存された特性モデルの数は、適宜変更されてもよい。例えば、タイミングDBに格納される特性モデルは、「標準」の特性モデルと、アクセル主体の運転者のための特性モデルと、ブレーキ主体の運転者のための特性モデルの三つだけであってもよい。尚、「標準」の特性モデルは、自動運転に不慣れな運転者が搭乗している場合又は運転者を識別できない場合に、モデル選択部によって選択される。「標準」の特性モデルは、複数の特性モデルの中で、情報提示タイミング及び減速開始タイミングを最も早く設定する。
【0108】
上記実施形態では、自動運転に不慣れと推定される運転者に対する提示タイミング及び減速開始タイミングは、自動運転に慣れた運転者よりも早い時期に設定されていた。しかし、累積自動運転時間に基づくタイミングの調整は、省略されてもよい。
【0109】
上記実施形態では、カーブ情報のうちで、カーブの曲率半径のみを用いて、特性モデルの更新と提示タイミングの演算とが実施されていた。しかし、カーブ情報として取得される他の情報、具体的には、カーブ区間の距離及びカーブの勾配情報等が、特性モデルの値に反映されてよい。
【0110】
例えば、道路勾配に応じて不安タイミングは異なってくる。故に、カーブの入口へ向かう区間が下り勾配である場合、提示タイミング及び減速開始タイミングは、早められる。一方で、カーブの入口へ向かう区間が上り勾配である場合、提示タイミング及び減速開始タイミングは、遅く調整される。さらに、勾配の傾斜が大きくなるほど、距離及び時間の調整代も大きくされる。
【0111】
このように、勾配の有無及び勾配の大きさに起因する調整は、特性モデルにおける調整項αの値の更新により、実現されてよい。また、カーブ通知の提示タイミング及び減速開始のタイミングは、仮に自動運転機能がカーブを認識できていなかったときに、車線から逸脱する地点Xcへの到達前に運転者によるリカバリーが可能な時間を確保できるよう設定されてよい。こうした調整も、特性モデルにおける調整項αの値の更新により、実現されてよい。
【0112】
第一実施形態における中止条件は、適宜変更されてよい。例えば、追従走行の対象となるような先行車がいる場合、タイミング判定部は、中止条件が成立していると判定してもよい。さらに、カーブが二つ以上連続する場合、タイミング判定部は、二つ目以降のカーブ通知のタイミングを、最初のカーブに対して設定するタイミングよりも、遅らせてもよい。
【0113】
さらにタイミング判定部は、情報提示に用いる提示装置がいずれの構成であるかを考慮し、情報提示に対する運転者の認知時間を考慮して、カーブ通知のタイミングを調整してもよい。例えば、触覚を通じた情報提示は、運転者に直感的に伝わり得る。故に、想定される認知時間は、短くてよい。対して、スピーカを用いた音声メッセージによる情報提示及びHUDに表示させた文章による情報提示は、内容の解釈に時間を要する。故に、想定される認知時間は、触覚を通じた情報提示よりも、長くなる。以上のように、運転者の認知時間を鑑みて、タイミング判定部は、スピーカ及びHUD等を情報提示の構成として選定している場合に、触覚刺激装置を選定している場合よりも、カーブ通知のタイミングを早める調整を行う。
【0114】
上記実施形態にて、カーブ通知のタイミング及び減速開始のタイミングを規定する基準位置は、カーブの入口Xsであった。しかし、タイミングを規定する基準位置は、適宜変更可能である。例えば基準位置は、カーブに追従せずに直進した車両Aが車線逸脱する位置(
図5 Xc参照)、又は直進した車両Aが道路脇と接触する位置等であってもよい。
【0115】
上記実施形態の車速情報及びカーブ情報の取得方法は、適宜変更されてよい。また、運転者を識別するための認識情報は、DSMとは異なる構成から取得してもよい。例えば、運転席のシートポジション等、運転者によって入力された情報に基づき、運転者の識別が実施されてもよい。
【0116】
本開示の提示制御方法及び自動運転制御方法を実現する各処理は、車載システムを構成する複数の電子制御ユニットのいずれの処理部によって実施されてもよい。例えば、タイミング学習部、モデル選択部、及びタイミング判定部等は、車両制御装置に構築される機能ブロックであってもよい。
【0117】
さらに、提示制御プログラム及び自動運転制御プログラムを記憶するメモリ装置43,63(
図1参照)には、種々の非遷移的実体的記憶媒体(non- transitory tangible storage medium)が採用可能である。加えて、これらプログラムを記憶する記憶媒体は、HMI制御装置及び車両制御装置のメモリ装置に限定されず、当該メモリ装置へのコピー元となる光学ディスク及び汎用コンピュータのハードディスクドライブ等であってもよい。