特許第6631785号(P6631785)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6631785ガラスフィルム積層体の製造方法及び製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6631785
(24)【登録日】2019年12月20日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】ガラスフィルム積層体の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/06 20060101AFI20200106BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20200106BHJP
   B65H 5/02 20060101ALI20200106BHJP
【FI】
   C03C27/06
   B32B17/10
   B65H5/02 C
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-248152(P2015-248152)
(22)【出願日】2015年12月21日
(65)【公開番号】特開2017-114688(P2017-114688A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100129148
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 淳也
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 博司
(72)【発明者】
【氏名】鑑継 薫
【審査官】 若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/047273(WO,A1)
【文献】 特開2013−155053(JP,A)
【文献】 特開2014−129189(JP,A)
【文献】 特開2011−183792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/00−29/00
B32B 17/00−17/12
B65H 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持面を有する上ステージで保持する支持ガラスと、支持面を有する下ステージで支持するガラスフィルムとを積層することによりガラスフィルム積層体を製造する方法であって、
前記上ステージの前記保持面に前記支持ガラスを吸着させる工程と、
前記下ステージの前記支持面に樹脂フィルムを載置する工程と、
前記樹脂フィルム上に前記ガラスフィルムを載置する工程と、
前記樹脂フィルムを前記下ステージの前記支持面に吸着させる工程と、
前記樹脂フィルムを前記下ステージの前記支持面に吸着させた後に、前記上ステージに保持されている前記支持ガラスと前記下ステージに支持されている前記ガラスフィルムとを密着させる工程と、
を備えることを特徴とするガラスフィルム積層体の製造方法。
【請求項2】
前記ガラスフィルムを搬送装置によって所定の搬送方向に搬送する工程をさらに備え、
前記搬送装置は、前記樹脂フィルムを移動させることにより前記ガラスフィルムを搬送する請求項1に記載のガラスフィルム積層体の製造方法。
【請求項3】
前記搬送装置は、前記ガラスフィルムを前記樹脂フィルムに移送する搬入コンベアを含む請求項2に記載のガラスフィルム積層体の製造方法。
【請求項4】
前記搬送装置は、前記ガラスフィルムが載置される前記樹脂フィルムの上下位置を変更する位置変更部を備える請求項2又は3に記載のガラスフィルム積層体の製造方法。
【請求項5】
前記位置変更部は、前記樹脂フィルムによって前記ガラスフィルムを前記下ステージの前記支持面に向かって搬送するときに前記樹脂フィルムが前記支持面から離間するように前記樹脂フィルムを上昇させ、前記樹脂フィルムを前記支持面に吸着させるときに上昇させた前記樹脂フィルムを下降させる請求項4に記載のガラスフィルム積層体の製造方法。
【請求項6】
前記位置変更部は、前記下ステージの上流側で前記樹脂フィルムを支持する昇降可能な第1支持部と、前記下ステージの下流側で前記樹脂フィルムを支持する昇降可能な第2支持部とを備え、前記樹脂フィルムを下降させるときに、前記第1支持部を下降させた後に前記第2支持部を下降させる請求項5に記載のガラスフィルム積層体の製造方法。
【請求項7】
前記搬送装置は、前記支持ガラスと前記ガラスフィルムとを密着させてなるガラスフィルム積層体を前記樹脂フィルムから搬出する搬出コンベアを含む請求項2から6のいずれか1項に記載のガラスフィルム積層体の製造方法。
【請求項8】
前記搬送装置は、前記支持ガラスと前記ガラスフィルムとを密着させてなるガラスフィルム積層体を前記樹脂フィルムから搬出する搬出コンベアを含み、
前記搬出コンベアによって前記樹脂フィルム上の前記ガラスフィルム積層体を搬出するときに、前記位置変更部は、前記樹脂フィルムが前記支持面から離間するように、前記樹脂フィルムを上昇させる請求項4から6のいずれか一項に記載のガラスフィルム積層体の製造方法。
【請求項9】
ガラスフィルムと支持ガラスとを有するガラスフィルム積層体を製造する装置であって、
前記支持ガラスを吸着する保持面を有する上ステージと、樹脂フィルムを介して前記ガラスフィルムを支持する支持面を有する下ステージと、を備え、
前記下ステージの前記支持面は、前記樹脂フィルムを吸着するように構成され、
前記支持面によって前記樹脂フィルムを吸着した状態で、前記上ステージに保持される前記支持ガラスと、前記下ステージに支持されるガラスフィルムとを密着させることによりガラスフィルム積層体を形成することを特徴とするガラスフィルム積層体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持ガラスにガラスフィルムを積層してなるガラスフィルム積層体の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
省スペース化の観点から、従来普及していたCRT型ディスプレイに替わり、近年は液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイが普及している。
【0003】
フラットパネルディスプレイ等のデバイスに使用される基板やカバーガラスには、高い可撓性と更なる大型化を実現することへのニーズが高まっている。ガラス基板に可撓性を付与するには、ガラス基板を薄く形成することが有効であり、特許文献1には、厚みが200μm以下のガラスフィルム(超薄板ガラス)が開示されている。
【0004】
フラットパネルディスプレイ等のデバイスに使用されるガラス基板には、加工処理や洗浄処理等、様々な製造関連処理が施される。ところが、これらの電子デバイスに使用されるガラス基板を薄く形成すると、ガラスは脆性材料であるため、応力変化により破損に至り、上記の製造関連処理を行う際に、取扱いが大変困難であるという問題がある。加えて、厚みが200μm以下のガラスフィルムは可撓性に富むため、処理を行う際に位置決めを行い難いという問題もある。
【0005】
ガラスフィルムの取り扱い性を向上させるために、特許文献1では、支持ガラス上にガラスフィルムを積層させたガラスフィルム積層体が開示されている。これによれば、単体では強度や剛性のないガラスフィルムを剛性の高い支持ガラスに積層しているため、処理の際にガラスフィルム積層体全体として位置決めが容易となる。
【0006】
また、ガラスフィルム積層体は、処理終了後にガラスフィルムを破損することなく速やかに支持ガラスから剥離することが可能である。さらに、ガラスフィルム積層体の厚みを従来のガラス基板の厚みと同一とすれば、従来のガラス基板用の電子デバイス製造ラインを共用して、電子デバイスを製造することも可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−183792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ガラスフィルム積層体を製造する際には、ガラスフィルムに歪みが生ずることなく、しかもガラスフィルムと支持ガラスとの間に泡(気泡)が生ずることのないように、ガラスを支持ガラスに貼り合せる必要がある。従来、この貼り合せは手作業(手貼り)によって行われていた。しかしながら、近年におけるデバイスの大型化の傾向に伴い、手貼りによって大型のガラスフィルム積層体を製造することが困難になりつつある。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、大型のガラスフィルム積層体の製造も可能な製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、保持面を有する上ステージで保持する支持ガラスと、支持面を有する下ステージで支持するガラスフィルムとを積層することによりガラスフィルム積層体を製造する方法であって、前記上ステージの前記保持面に前記支持ガラスを吸着させる工程と、前記下ステージの前記支持面に樹脂フィルムを載置する工程と、前記樹脂フィルム上に前記ガラスフィルムを載置する工程と、前記樹脂フィルムを前記下ステージの前記支持面に吸着させる工程と、前記樹脂フィルムを前記下ステージの前記支持面に吸着させた後に、前記上ステージに保持されている前記支持ガラスと前記下ステージに支持されている前記ガラスフィルムとを密着させる工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、上ステージの保持面に支持ガラスを吸着させ、下ステージの支持面に支持されるガラスフィルムを支持ガラスに密着させることにより、ガラスフィルム積層体を形成できる。ガラスフィルム積層体を形成するにあたり、ガラスフィルムは、樹脂フィルムを介して下ステージの支持面に支持される。この樹脂フィルムは、支持面に吸着されることから、この樹脂フィルムに支持されるガラスフィルムは、支持ガラスに密着する際に、その位置がずれることがない。また、ガラスフィルムと下ステージの支持面との間に樹脂フィルムを介在させているため、ガラスフィルムに歪みや泡(気泡)が発生することもない。
【0012】
すなわち、樹脂フィルムを使用することなくガラスフィルムを支持ガラスに密着させる場合を考えると、このガラスフィルムを支持面に吸着させることになるが、このとき、支持面における孔や溝等の面性状がガラスフィルムに転写され、これによる凹凸等がガラスフィルムに生じてしまう。したがって、このガラスフィルムを支持ガラスに密着させると、ガラスフィルムに歪が生じ、支持ガラスとの間で泡が発生してしまう。本発明では、樹脂フィルムを下ステージの支持面に吸着させることで、このようなガラスフィルム積層体の不良の発生を防止できる。これにより、大型のガラスフィルム積層体であっても好適に製造することが可能である。
【0013】
また、本発明に係るガラスフィルム積層体の製造方法は、前記ガラスフィルムを搬送装置によって所定の搬送方向に搬送する工程をさらに備え、前記搬送装置は、前記樹脂フィルムを移動させることにより前記ガラスフィルムを搬送することが可能である。このように、樹脂フィルムを移動させることでガラスフィルムを搬送することにより、ガラスフィルムの搬送と支持面への設置とを効率良く行うことができる。
【0014】
前記搬送装置は、前記ガラスフィルムを前記樹脂フィルムに移送する搬入コンベアを含むことが望ましい。これにより、ガラスフィルム積層体をより効率的に搬送できる。
【0015】
また、前記搬送装置は、前記ガラスフィルムが載置される前記樹脂フィルムの上下位置を変更する位置変更部を備え得る。前記位置変更部は、前記樹脂フィルムによって前記ガラスフィルムを前記下ステージの前記支持面に向かって搬送するときに前記樹脂フィルムが前記支持面から離間するように前記樹脂フィルムを上昇させ、前記樹脂フィルムを前記支持面に吸着させるときに上昇させた前記樹脂フィルムを下降させることができる。これにより、樹脂フィルムは、下ステージの支持面と接触することなくガラスフィルムを搬送でき、支持面の所定位置にガラスフィルムを載置できる。
【0016】
より具体的には、前記位置変更部は、前記下ステージの上流側で前記樹脂フィルムを支持する昇降可能な第1支持部と、前記下ステージの下流側で前記樹脂フィルムを支持する昇降可能な第2支持部とを備え、前記樹脂フィルムを下降させるときに、前記第1支持部を下降させた後に前記第2支持部を下降させることができる。ガラスフィルムのサイズや重量にもよるが、第1支持部と第2支持部とを同時に下降させると、このガラスフィルムの位置がずれるおそれがある。これに対し、本方法では、搬送方向における上流側に位置する第1支持部を下降させた後に下流側の第2支持部を下降させることにより、ガラスフィルムと樹脂フィルムの接触を維持することで、ガラスフィルムの位置ずれを防止し、支持面の所定位置に確実に載置できる。
【0017】
また、前記搬送装置は、前記支持ガラスと前記ガラスフィルムとを密着させてなるガラスフィルム積層体を前記樹脂フィルムから搬出する搬出コンベアを含むことが望ましい。これにより、ガラスフィルム積層体を効率良く搬送できる。また、前記搬出コンベアによって前記樹脂フィルム上の前記ガラスフィルム積層体を搬出するときに、前記位置変更部は、前記樹脂フィルムが前記支持面から離間するように、前記樹脂フィルムを上昇させることが望ましい。これにより、樹脂フィルムが下ステージの支持面に接触することなく、形成されたガラスフィルム積層体を搬出できる。
【0018】
本発明は、上記の課題を解決するためのものであり、ガラスフィルムと支持ガラスとを有するガラスフィルム積層体を製造する装置であって、前記支持ガラスを吸着する保持面を有する上ステージと、樹脂フィルムを介して前記ガラスフィルムを支持する支持面を有する下ステージと、を備え、前記下ステージの前記支持面は、前記樹脂フィルムを吸着するように構成され、前記支持面によって前記樹脂フィルムを吸着した状態で、前記上ステージに保持される前記支持ガラスと、前記下ステージに支持されるガラスフィルムとを密着させることによりガラスフィルム積層体を形成することを特徴とする。
【0019】
かかる構成によれば、上ステージの保持面に支持ガラスを吸着させ、下ステージの支持面に支持されるガラスフィルムを支持ガラスに密着させることにより、ガラスフィルム積層体を形成できる。ガラスフィルム積層体を形成するにあたり、ガラスフィルムは、樹脂フィルムを介して下ステージの支持面に支持される。この樹脂フィルムは、支持面に吸着されていることから、この樹脂フィルムに支持されるガラスフィルムは、支持ガラスに密着する際に、その位置がずれることがない。また、ガラスフィルムと下ステージの支持面との間に樹脂フィルムを介在させているため、ガラスフィルムに歪みや泡(気泡)が発生することもない。
【0020】
すなわち、樹脂フィルムを使用することなくガラスフィルムを支持ガラスに密着させる場合、このガラスフィルムを支持面に吸着させることになるが、このとき、支持面における孔や溝等の面性状がガラスフィルムに転写され、これによる凹凸等がガラスフィルムに生じてしまう。したがって、このガラスフィルムを支持ガラスに密着させると、ガラスフィルムに歪が生じ、支持ガラスとの間で泡が発生してしまう。本発明では、樹脂フィルムを下ステージの支持面に吸着させることで、このようなガラスフィルム積層体の不良の発生を防止できる。これにより、大型のガラスフィルム積層体であっても好適に製造することが可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、大型のガラスフィルム積層体であっても製造が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態に係るガラスフィルム積層体の製造装置を示す側面図である。
図2】ガラスフィルム積層体の製造方法の一工程を示す製造装置の側面図である。
図3】ガラスフィルム積層体の製造方法の一工程を示す製造装置の側面図である。
図4】ガラスフィルム積層体の製造方法の一工程を示す製造装置の側面図である。
図5】ガラスフィルム積層体の製造方法の一工程を示す製造装置の側面図である。
図6】ガラスフィルム積層体の製造方法の一工程を示す製造装置の側面図である。
図7】ガラスフィルム積層体の製造方法の一工程を示す製造蔵置の側面図である。
図8】ガラスフィルム積層体の製造方法の一工程を示す製造装置の側面図である。
図9】第2実施形態に係るガラスフィルム積層体の製造装置を示す側面図である。
図10】ガラスフィルム積層体の製造方法に係る一工程を示す製造装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。図1乃至図8は、本発明に係るガラスフィルム積層体の製造方法及び製造装置の第1実施形態を示す。なお、本発明によって製造されるガラスフィルム積層体LGは、透明な矩形状の支持ガラスSGに、同じく透明な矩形状のガラスフィルムGFを積層してなるものである。ガラスフィルムGFとしては、厚みが200μm以下の超薄板ガラスが用いられるが、これに限定されるものではない。
【0024】
図1に示すように、本発明に係る製造装置1は、支持ガラスSGを保持する上ステージ2と、ガラスフィルムGFを支持する下ステージ3と、ガラスフィルムGF及びガラスフィルム積層体LGを搬送する搬送装置4とを備える。
【0025】
上ステージ2は、支持ガラスSGが固定される保持面5を有する。図1に示すように、保持面5には、支持ガラスSGを吸着する複数の孔5aが形成されている。各孔5aは、図示しない真空ポンプに接続されている。保持面5は、この孔5aを介して支持ガラスSGとの間に負圧を生じさせることで、この支持ガラスSGを吸着する。このように、上ステージ2は、真空吸着法により支持ガラスSGを吸着するが、これに限らず、静電吸着法により支持ガラスSGを吸着するように構成してもよい。また、保持面5として、自己粘着性部材をその全面、好ましくは一部の面に使用することで、支持ガラスSGを保持してもよい。
【0026】
上ステージ2は、図示しない反転装置により、保持面5が上方を向く第1姿勢(図1において二点鎖線で示す姿勢)と、保持面5が下方を向く第2姿勢(図1において実線で示す姿勢)とに姿勢変更可能に構成される。
【0027】
下ステージ3は、ガラスフィルムGFを支持する支持面6を有する。図1に示すように、支持面6には、搬送装置4の一部を吸着可能な複数の孔6aが形成されている。各孔6aは、図示しない真空ポンプに接続されている。支持面6は、この孔6aを介して搬送装置4の一部との間に負圧を生じさせることで、この搬送装置4の一部を吸着する。このように、下ステージ3は、真空吸着法により搬送装置4の一部を吸着するが、これに限らず、静電吸着法によりこれを吸着するように構成してもよい。
【0028】
また、下ステージ3は、支持面6が上方を向く状態で、第2姿勢となった上ステージ2の保持面5と対向するように配置されている。また、図1に示すように、下ステージ3は、その下部に設けられる昇降装置7により、上下動自在に構成される。
【0029】
搬送装置4は、ガラスフィルムGFを下ステージ3の近傍位置まで搬送する第1搬送装置4aと、第1搬送装置4aからガラスフィルムGFを受け取って、下ステージ3に係る支持面6の所定位置に載置する第2搬送装置4bと、ガラスフィルムGFと支持ガラスSGとを密着させることにより形成されるガラスフィルム積層体LGを下ステージ3から搬出する第3搬送装置4cとを備える。
【0030】
第1搬送装置4aは、第2搬送装置4bよりも搬送方向の上流側に配置されている。第1搬送装置4aは、ローラコンベアにより構成されるが、これに限定されず、ベルトコンベアその他の既存の各種搬送装置を使用し得る。第1搬送装置4aは、ガラスフィルムGFを第2搬送装置4bへと移送することにより、このガラスフィルムGFを下ステージ3へと搬入するコンベア(搬入コンベア)として機能する。
【0031】
第2搬送装置4bは、ガラスフィルムGFを搬送する樹脂フィルム8と、この樹脂フィルム8を所定の方向に移動させる駆動部9と、樹脂フィルム8の一部における上下方向の位置を変更する位置変更部10とを備える。
【0032】
樹脂フィルム8は、その一部が下ステージ3の上流側の位置から下流側の位置にわたって水平状に架け渡されている。樹脂フィルム8は、第1搬送装置4aによって搬送されたガラスフィルムGFを受け取って下ステージ3の支持面6まで搬送するとともに、この製造装置1によって製造されたガラスフィルム積層体LGを、第3搬送装置4cへと移送する。
【0033】
駆動部9は、下ステージ3の下流側に位置する駆動ローラ11と、下ステージ3の上流側に位置する被動ローラ12とを有する巻取り装置である。駆動部9は、被動ローラ12に巻かれた樹脂フィルム8を駆動ローラ11によって巻き取ることによって、この樹脂フィルム8を移動させる。これにより、樹脂フィルム8は、第1搬送装置4aから受け取ったガラスフィルムGFを搬送方向に沿って移動させることができる。なお、駆動ローラ11は、図示しないモータ等の駆動手段により回転駆動される。
【0034】
位置変更部10は、下ステージ3よりも上流側に配置されるとともに、樹脂フィルム8を支持する昇降可能な第1支持部13と、下ステージ3よりも下流側に配置されるとともに、樹脂フィルム8を支持する昇降可能な第2支持部14とを備える。第1支持部13は、第1ローラ15と、この第1ローラ15を昇降させるアクチュエータ16とを備える。第2支持部14は、第2ローラ17と、この第2ローラ17を昇降させるアクチュエータ18とを備える。図1に示すように、樹脂フィルム8の一部は、第1ローラ15及び第2ローラ17により、張力を付与された状態で水平状に支持されている。
【0035】
位置変更部10は、第1支持部13及び第2支持部14の昇降動作により、樹脂フィルム8の一部の上下位置を変更する。具体的には、位置変更部10は、各アクチュエータ16,18の動作により、各ローラ15,17を上昇させて、支持面6から上方に離間する第1の位置と、各ローラ15,17を下降させて支持面6に接触する第2の位置とに樹脂フィルム8の位置を変更させることができる。
【0036】
すなわち、位置変更部10は、樹脂フィルム8によってガラスフィルムGFを下ステージ3の支持面6に向かって搬送するときに樹脂フィルム8が支持面6から離間するように樹脂フィルム8を上昇させ、樹脂フィルム8を支持面6に吸着させるときに上昇させた樹脂フィルム8を下降させる。
【0037】
第3搬送装置4cは、ガラスフィルムGFと支持ガラスSGとを密着させてなるガラスフィルム積層体LGを第2搬送装置4bの樹脂フィルム8から受け取って、下ステージ3から搬出するコンベア(搬出コンベア)である。第3搬送装置4cは、第1搬送装置4aと同様に、ローラコンベアにより構成されるが、これに限定されず、ベルトコンベアその他の既存の各種搬送装置を使用し得る。第3搬送装置4cによってガラスフィルム積層体LGを搬出する場合、第2搬送装置4bの位置変更部10は、樹脂フィルム8の一部を第1の位置から第2の位置へと変更する。
【0038】
以下、上記構成の製造装置1を使用して、ガラスフィルム積層体LGを製造する方法について図1乃至図8を参照しながら説明する。
【0039】
まず、図1に示すように、第1姿勢(二点鎖線で示す姿勢)にある上ステージ2の保持面5に支持ガラスSGを載置する。その後、真空ポンプの動作により、孔5aを介して保持面5に支持ガラスSGを吸着させる。その後、反転装置の動作により、上ステージ2は、その姿勢を第2姿勢(実線で示す姿勢)へと変更する。
【0040】
次に図2に示すように、第1搬送装置4aにより搬送されるガラスフィルムGFを第2搬送装置4bへと移送する。このとき、第2搬送装置4bは、第1ローラ15及び第2ローラ17を同時に上昇させ、樹脂フィルム8の一部を第2の位置から第1の位置へと変更する。これにより、樹脂フィルム8の一部は、下ステージ3の支持面6から離間して上方に位置することになる。その後、第2搬送装置4bは、駆動ローラ11を始動させて樹脂フィルム8を巻き取ることにより樹脂フィルム8を移動させる。これにより、樹脂フィルム8は、第1搬送装置4aから受け取ったガラスフィルムGFを搬送方向に沿って下流に移動させる。
【0041】
図3に示すように、ガラスフィルムGFを所定位置(支持ガラスSGの下方位置)まで移動させると、第2搬送装置4bは、駆動ローラ11を停止させ、樹脂フィルム8を停止させる。
【0042】
その後、位置変更部10は、樹脂フィルム8の一部を第2の位置から第1の位置へと変更する。具体的には、位置変更部10は、図4に示すように、第2支持部14の第2ローラ17を上方位置にて維持したままで、第1支持部13の第1ローラ15を先に下降させ、下方位置へと戻す。第1ローラ15が下方位置へと移動すると、第2搬送装置4bは、図5に示すように、第2ローラ17を上方位置から下降させて下方位置へと戻す。
【0043】
このように、第1支持部13の第1ローラ15を下降させた後に、第2支持部14の第2ローラ17を下降させることにより、樹脂フィルム8上のガラスフィルムGFを、位置ずれを生じさせることなく下ステージ3の支持面6に載置させることができる。すなわち、ガラスフィルムGFは、その厚みが200μm以下のものである場合、非常に軽量であることから、第1ローラ15と第2ローラ17とを同時に下降させてしまうと、樹脂フィルム8から浮き上がり、位置ずれを生じるおそれがある。これに対し、本実施形態では、上流側の第1ローラ15を先に下降させ、下流側の第2ローラ17を後に下降させることで、樹脂フィルム8とガラスフィルムGFとの間の摩擦力を利用することにより、ガラスフィルムGFの位置ずれを防止できる。
【0044】
当然ながら、第2ローラ17を先に下降させ、第1ローラ15を後に下降させることも可能であり、ガラスフィルムGFが十分な重量を有する場合には、第1ローラ15と第2ローラ17とを同時に下降させるようにしてもよい。
【0045】
上述のように、第1支持部13及び第2支持部14の動作により樹脂フィルム8の一部が下降して第2の位置に移動すると、ガラスフィルムGFは、下ステージ3の支持面6に載置される。下ステージ3は、真空ポンプを作動させ、支持面6の孔6aに樹脂フィルム8を吸着させる。これにより、樹脂フィルム8は支持面6に密着して固定される。その後、下ステージ3は、図6に示すように、昇降装置7の動作により、上方に移動する。これにより、下ステージ3に支持されるガラスフィルムGFは、上ステージ2に保持される支持ガラスSGに密着する。この状態を所定時間維持した後、上ステージ2は、真空ポンプを停止させ、支持ガラスSGの保持を解除する。
【0046】
その後、図7に示すように、下ステージ3は、昇降装置7の動作によって下降する。そうすると、上ステージ2に保持されていた支持ガラスSGは、ガラスフィルムGFと共に下ステージ3とともに下降する。支持ガラスSGが上ステージ2から離間することにより、下ステージ3には、ガラスフィルムGFと支持ガラスSGとが密着してなるガラスフィルム積層体LGが載置されることになる。
【0047】
次に、第2搬送装置4bの位置変更部10は、図8に示すように、第1支持部13の第1ローラ15及び第2支持部14の第2ローラ17を同時に上昇させ、樹脂フィルム8の一部を下ステージ3の支持面6から上方に離間させる。さらに、第2搬送装置4bは、駆動部9の駆動ローラ11を作動させ、樹脂フィルム8を移動させることで、ガラスフィルム積層体LGを第3搬送装置4cに向かって搬送する。最後に、ガラスフィルム積層体LGは、第2搬送装置4bから第3搬送装置4cへと移送され、下ステージ3から搬出される。
【0048】
以上説明した本実施形態に係るガラスフィルム積層体LGの製造方法及び製造装置1によれば、上ステージ2の保持面5に支持ガラスSGを吸着させ、この支持ガラスSGと、下ステージ3の支持面6に支持されるガラスフィルムGFとを密着させることにより、ガラスフィルム積層体LGを形成できる。
【0049】
ガラスフィルム積層体LGを形成するにあたり、ガラスフィルムGFは、樹脂フィルム8を介して下ステージ3の支持面6に支持される。樹脂フィルム8は、支持面6に吸着されることから、この樹脂フィルム8に支持されるガラスフィルムGFは、支持ガラスSGに密着する際に、その位置がずれることがない。また、ガラスフィルムGFと下ステージ3の支持面6との間に樹脂フィルム8を介在させているため、ガラスフィルムGFに歪みや泡(気泡)が発生することもない。
【0050】
すなわち、樹脂フィルム8を使用することなくガラスフィルムGFを支持ガラスSGに密着させる場合を考えると、このガラスフィルムGFを支持面6に吸着させることになるが、このとき、支持面6における孔6a等の面性状がガラスフィルムGFに転写され、これによる凹凸等がガラスフィルムGFに生じてしまう。したがって、このガラスフィルムGFを支持ガラスSGに密着させると、ガラスフィルムGFに歪が生じ、支持ガラスSGとの間で泡(気泡)が発生してしまう。本実施形態では、樹脂フィルム8を下ステージ3の支持面6に吸着させることで、このようなガラスフィルム積層体LGの不良の発生を防止できる。これにより、大型のガラスフィルム積層体LGであっても好適に製造することが可能になる。
【0051】
図9及び図10は、本発明に係るガラスフィルム積層体LGの製造方法及び製造装置1の第2実施形態を示す。本実施形態では、下ステージ3の構成が第1実施形態とは異なる。
【0052】
図9に示すように、下ステージ3は、上下動可能なダイヤフラム19を有する。このダイヤフラム19はゴム等の弾性体により構成される。ダイヤフラム19には、複数の孔19aが貫通形成されている。ダイヤフラム19は、図示しないポンプ装置により、この孔19aを通じて樹脂フィルム8を吸着できる。
【0053】
また、ダイヤフラム19は、このポンプ装置により、図10に示すように、上方に凸となるように膨張できる。ダイヤフラム19は、この膨張により、樹脂フィルム8に支持されているガラスフィルムGFを上方に移動させ、上ステージ2に保持される支持ガラスSGに密着させる。
【0054】
ガラスフィルムGFが支持ガラスSGに密着すると、上ステージ2は支持ガラスSGの保持を解除し、膨張していたダイヤフラム19は、収縮して元の位置に戻る。これにより、支持ガラスSGは、ガラスフィルムGFと一体となって、すなわち、ガラスフィルム積層体LGとなってダイヤフラム19上に載置される。その後、このガラスフィルム積層体LGは、第1実施形態と同様に、第2搬送装置4bから第3搬送装置4cへと移送される。
【0055】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0056】
上記の実施形態では、搬送装置4によりガラスフィルムGFを搬送する構成を例示したが、これに限定されず、第1搬送装置4a及び第3搬送装置4cを省略することも可能である。また、第2搬送装置4bにおける駆動部9及び位置変更部10を省略してもよい。この場合には、ガラスフィルムGFは作業員によって下ステージ3の支持面6に載置される。具体的には、ガラスフィルムGFよりも大きな矩形の樹脂フィルム8を支持面6に載置した後に、ガラスフィルムGFをこの樹脂フィルム8上に載置でき、あるいはガラスフィルムGFを矩形の樹脂フィルム8に載置した後に、これらを支持面6に載置できる。
【0057】
上記の実施形態では、下ステージ3を昇降装置7によって上昇させることにより、ガラスフィルムGFを支持ガラスSGに密着させていたが、これに限定されない。例えば、上ステージ2を下ステージ3に向かって下降させることによって、支持ガラスSGをガラスフィルムGFに密着させ、ガラスフィルム積層体LGを形成してもよい。あるいは、上ステージ2から支持ガラスSGを落下させることで、ガラスフィルムGFに支持ガラスを密着させてもよい。
【0058】
上記の実施形態では、樹脂フィルム8を駆動ローラ11によって巻き取ることで樹脂フィルム8の移動、回収を行っていたが、これに限定されない。例えば、樹脂フィルム8の表裏面を図示しないニップローラで挟むことで樹脂フィルム8を移動させ、図示しない回収ボックス内にこの樹脂フィルム8を回収しても良い。
【符号の説明】
【0059】
1 ガラスフィルム積層体の製造装置
2 上ステージ
3 下ステージ
4 搬送装置
4a 第1搬送装置(搬入コンベア)
4b 第2搬送装置
4c 第3搬送装置(搬出コンベア)
5 保持面
6 支持面
8 樹脂フィルム
10 位置変更部
GF ガラスフィルム
LG ガラスフィルム積層体
SG 支持ガラス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10