(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記非水溶性樹脂(A)が、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、及びポリオレフィン系樹脂からなる群より選択される1種類又は2種類以上である、請求項2又は3に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
前記水溶性樹脂(B)が、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、セルロース誘導体、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンのモノエーテル化合物、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリグリセリンモノステアレート化合物、及びポリオキシエチレンプロピレン共重合体からなる群より選択される1種類又は2種類以上である、請求項2〜4のいずれか一項に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
前記水溶性樹脂(B)が、質量平均分子量50,000以上1,000,000以下である高分子水溶性樹脂(b1)と、質量平均分子量1,000以上30,000以下である低分子水溶性樹脂(b2)と、を含み、
前記高分子水溶性樹脂(b1)が、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、及びセルロース誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含み、
前記低分子水溶性樹脂(b2)が、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンのモノエーテル化合物、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリグリセリンモノステアレート化合物、及びポリオキシエチレンプロピレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種を含む、
請求項5に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
前記樹脂組成物が、前記非水溶性樹脂(A)と前記水溶性樹脂(B)の合計量100質量部に対して、20〜80質量部の前記非水溶性樹脂(A)と、80〜20質量部の前記水溶性樹脂(B)とを含む、請求項2〜6のいずれか一項に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
前記樹脂組成物の層が、前記非水溶性樹脂(A)の水分散体と、前記水溶性樹脂(B)とを用いて形成されたものである、請求項2〜7に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、一方で、金属箔と樹脂組成物の層の間に接着層を設けると、樹脂組成物の潤滑効果を接着層が妨げるため、ドリル孔あけ用エントリーシートに要求される重要な特性である、孔位置精度が悪化する場合がある。このため、金属箔と樹脂組成物の層の間に接着層を設けることなく、金属箔と樹脂組成物の層との接着強度が強く、かつ孔位置精度が優れたドリル孔あけ用エントリーシートの開発が切望されている。
【0008】
本発明の課題は、こうした現状に鑑み、金属箔と該金属箔上に接着層を介在させることなく形成された樹脂組成物の層からなる形態のドリル孔あけ用エントリーシートであって、金属箔と樹脂組成物の層との接着強度が強く、更にはドリル孔あけ加工の際の孔位置精度に優れるドリル孔あけ用エントリーシート、及びそれを用いたドリル孔あけ加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するため種々の検討を行った結果、樹脂組成物の層の金属箔に接する面の表面自由エネルギーの分散項γSDと極性項γSPが特定の範囲であるドリル孔あけ用エントリーシートが、金属箔と樹脂組成物の層との接着強度が強く、更にはドリル孔あけ加工の際の孔位置精度に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
金属箔と、該金属箔上に接着層を介在させることなく形成された樹脂組成物の層と、を備え、
前記樹脂組成物の層の金属箔に接する面の表面自由エネルギーの分散項γSDが27.0〜37.0mJ/m
2の範囲であり、且つ前記表面自由エネルギーの極性項γSPが0〜5.0mJ/m
2の範囲である、ドリル孔あけ用エントリーシート。
〔2〕
前記樹脂組成物が、非水溶性樹脂(A)、及び水溶性樹脂(B)を含有する、〔1〕に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
〔3〕
前記非水溶性樹脂(A)の表面自由エネルギーの分散項γSDが32.0〜38.1mJ/m
2の範囲であり、且つ前記表面自由エネルギーの極性項γSPが0〜6.0mJ/m
2の範囲である、〔2〕に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
〔4〕
前記非水溶性樹脂(A)が、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、及びポリオレフィン系樹脂からなる群より選択される1種類又は2種類以上である、〔2〕又は〔3〕に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
〔5〕
前記水溶性樹脂(B)が、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、セルロース誘導体、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンのモノエーテル化合物、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリグリセリンモノステアレート化合物、及びポリオキシエチレンプロピレン共重合体からなる群より選択される1種類又は2種類以上である、〔2〕〜〔4〕のいずれか一項に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
〔6〕
前記水溶性樹脂(B)が、質量平均分子量50,000以上1,000,000以下である高分子水溶性樹脂(b1)と、質量平均分子量1,000以上30,000以下である低分子水溶性樹脂(b2)と、を含み、
前記高分子水溶性樹脂(b1)が、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、及びセルロース誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含み、
前記低分子水溶性樹脂(b2)が、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンのモノエーテル化合物、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリグリセリンモノステアレート化合物、及びポリオキシエチレンプロピレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種を含む、
〔5〕に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
〔7〕
前記樹脂組成物が、前記非水溶性樹脂(A)と前記水溶性樹脂(B)の合計量100質量部に対して、20〜80質量部の前記非水溶性樹脂(A)と、80〜20質量部の前記水溶性樹脂(B)とを含む、〔2〕〜〔6〕のいずれか一項に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
〔8〕
前記樹脂組成物の層が、前記非水溶性樹脂(A)の水分散体と、前記水溶性樹脂(B)とを用いて形成されたものである、〔2〕〜〔7〕に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
〔9〕
前記樹脂組成物の層の厚さが、0.02〜0.3mmである、〔1〕〜〔8〕のいずれか一項に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
〔10〕
前記金属箔の厚さが、0.05〜0.5mmである、〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
〔11〕
〔1〕〜〔10〕のいずれか一項に記載のドリル孔あけ用エントリーシートを用いて、積層板又は多層板に孔を形成する孔形成工程を有する、ドリル孔あけ加工方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、金属箔と樹脂組成物の層との間に接着層が存在しなくても、金属箔と樹脂組成物の層との接着強度が強く、かつドリル孔あけ加工の際の孔位置精度に優れるドリル孔あけ用エントリーシート、及びそれを用いたドリル孔あけ加工方法を提供することができる。また、接着層を有しないドリル孔あけ用エントリーシートは、その原料及びエントリーシートの製造工程の両面において経済的である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0014】
[I:ドリル孔あけ用エントリーシート]
本実施形態のドリル孔あけ用エントリーシートは、金属箔と、該金属箔上に接着層を介在させることなく形成された樹脂組成物の層と、を備え、前記樹脂組成物の層の金属箔と接する面の表面自由エネルギーの分散項γSDが27.0〜37.0mJ/m
2の範囲であり、且つ前記表面自由エネルギーの極性項γSPが0〜5.0mJ/m
2の範囲である。
【0015】
本実施形態のドリル孔あけ用エントリーシートは、金属箔と、該金属箔上に接着層を介在させることなく形成された樹脂組成物の層とからなる。すなわち、金属箔と樹脂組成物の層との間に、金属箔と樹脂組成物を接着させるための接着層(樹脂皮膜)を有さず、金属箔と樹脂組成物の層とが直接接触している形態である。これは、上述した構成であれば、接着層を介在させなくても、接着強度が十分に実用的であることによる。本実施形態のドリル孔あけ用エントリーシートは接着層を形成しなくても良いので、原材料費、及び接着層を形成する工程が不要であり、従来のドリル孔あけ用エントリーシートよりも経済性の点でも優れる。樹脂組成物の層は、金属箔の片面に形成された形態であってよく、両面に形成された形態であってもよい。両面に樹脂組成物の層を形成する場合、層の樹脂組成物の組成は同じであっても異なっていてもよい。
【0016】
[II:樹脂組成物の層]
本実施形態における樹脂組成物の層は、その金属箔と接する面の表面自由エネルギーの分散項γSDが27.0〜37.0mJ/m
2の範囲であり、且つ表面自由エネルギーの極性項γSPが0〜5.0mJ/m
2の範囲であることを特徴とする。なかでも、分散項γSDが30.0〜37.0mJ/m
2の範囲であり、且つ極性項γSPが0〜5.0mJ/m
2の範囲であるのが特に好ましい。分散項γSD及び極性項γSPが、上記範囲内であることにより、金属箔と樹脂組成物の層の接着強度が強く、かつドリル孔あけ加工の際の切削性が良好なため、ドリル孔あけ加工の際の孔位置精度に優れる。
【0017】
ここで、表面自由エネルギーについて説明する。一般に、樹脂内部に存在する分子は周囲の分子との相互作用によって安定化された状態で存在しているが、樹脂表面に存在する分子は表面を形成している分、周囲の分子による安定化作用が少ない。このため、表面に存在する分子は、内部に存在する分子よりも大きな自由エネルギーを持つことになる。このエネルギーを表面自由エネルギーという。
【0018】
一般に物質表面が持つ表面自由エネルギーは、分散項γSDと極性項γSPによって表すことができる。この表面自由エネルギーの分散項γSD及び極性項γSPは、次のようにして算出される。表面自由エネルギーの分散項γSD及び極性項γSPは、樹脂組成物の層の金属箔と接触する面を上にして、その面上に表面張力γL、表面張力の分散項γLD、表面張力の極性項γLPが既知の溶媒を1〜2μL滴下して得られる接触角をθとすると、次の式(1)の関係にあることが知られている。
γL(1+cosθ)=2(γSD×γLD)
0.5+2(γSP×γLP)
0.5
(1)
【0019】
すなわち、表面張力γL、表面張力の分散項γLD、及び表面張力の極性項γLPの3つが既知である2種類の溶媒を用いて、溶媒と樹脂組成物の層の金属箔と接触する面との接触角θを測定し、それらを上記式(1)に代入して連立方程式を解くことにより、樹脂組成物の層の金属箔と接触する面の表面自由エネルギーの分散項γSD、極性項γSPを求めることができる。
【0020】
以下に、具体的な測定方法を述べる。樹脂組成物の層の金属箔と接触する面の表面自由エネルギーの分散項γSD、極性項γSPは、樹脂組成物の層からなる皮膜を作製して、算出する。樹脂組成物の皮膜の作製方法としては、金属箔上に樹脂組成物の皮膜を形成した後に樹脂組成物の層を剥離させて得ることができるが、簡便には、市販の離型剤付剥離フィルムまたは離型紙上に樹脂組成物の皮膜を形成させた後に樹脂組成物の層のみを剥離させる方法で作製してもよい。これは、金属箔を用いて作成した場合でも離型剤付剥離フィルムまたは離型紙を用いて作成した場合でも、表面自由エネルギーの分散項γSD、極性項γSPの値は変わらないからである。
【0021】
上記した方法で得られる樹脂組成物の皮膜の金属箔または剥離フィルムと接触していた面上に、上述した表面張力γL、表面張力の分散項γLD、及び表面張力の極性項γLPが既知の2種類の溶媒を1〜2μL滴下する。その液滴を、デジタルマイクロスコープ(例えば、KEYENCE製VHX−100)を用いて真横から撮影する。次いで、前記皮膜と液滴がなす接触角θを前述のデジタルマイクロスコープ付属の計測ソフトなどを用いて測定する。得られた2種類の溶媒の接触角θ、表面張力γL、表面張力の分散項γLD、表面張力の極性項γLPを、上述した式(1)に代入して得られる連立方程式を解くことにより、樹脂組成物の層の表面自由エネルギーの分散項γSD、極性項γSPを得ることができる。
【0022】
表面自由エネルギーの分散項γSD、極性項γSPの測定に使用できる溶媒は、表面張力γL、表面張力の分散項γLD、表面張力の極性項γLPが既知であれば特に限定されないが、使用する2種類の溶媒は、分散項γLD及び極性項γLPが大きく異なるものが好ましい。具体的には、分散項γLDのみを有し、極性項γLPが零(0)である、流動パラフィン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ドデカン、n−テトラデカン、n−ヘキサデカン等の炭化水素溶媒;分散項γLD及び極性項γLPの両方を有するヨウ化メチレン、テトラブロモエタン、テトラクロロエタン、ヘキサクロロブダジエン、ポリジメチルシロキサン、水、グリセリン、ホルムアミド、エチレングリコール、ジエチレングリコール等から選択できる。中でも、流動パラフィンとグリセリンの組合せが特に好ましい。
【0023】
樹脂組成物の層を構成する樹脂成分としては、特に限定されず、例えば、非水溶性樹脂、水溶性樹脂、又はこれらの混合物が挙げられる。このなかでも、非水溶性樹脂(A)及び水溶性樹脂(B)を併用することが好ましい。非水溶性樹脂(A)及び水溶性樹脂(B)を併用することにより、金属箔と樹脂組成物の層との接着強度がより向上し、かつ、ドリル孔あけ加工の際の孔位置精度に優れる傾向にある。なお、本実施形態において、「水溶性」とは水と混合した場合に溶解する性質をいい、「非水溶性」とは水と混合した場合に溶解しない性質をいう。
【0024】
樹脂組成物の層の形成方法については後で詳しく説明するが、樹脂組成物の層は、非水溶性樹脂(A)の水分散体と水溶性樹脂(B)とを用いて形成された層であることが、特に好ましい。非水溶性樹脂(A)を水分散体として用いることにより、非水溶性樹脂(A)と水溶性樹脂(B)の相溶性がより向上し、かつ金属箔と樹脂組成物の層との接着強度がより向上する傾向にある。
【0025】
[III−1:非水溶性樹脂(A)]
本実施形態に用いることができる非水溶性樹脂(A)としては、非水溶性の樹脂であれば特に限定されないが、非水溶性樹脂(A)の表面自由エネルギーの分散項γSDが32.0〜38.1mJ/m
2の範囲であり、且つ前記表面自由エネルギーの極性項γSPが0〜6.0mJ/m
2の範囲であることが好ましく、分散項γSDが33.0〜37.0mJ/m
2の範囲であり、且つ前記表面自由エネルギーの極性項γSPが0〜5.0mJ/m
2の範囲であることが特に好ましい。非水溶性樹脂(A)の表面自由エネルギーの分散項γSD及び極性項γSPが上記範囲であることにより、金属箔と樹脂組成物の層が強固に接着し、ドリル孔あけ加工時に剥離せず孔位置精度に優れる。なお、非水溶性樹脂(A)の表面自由エネルギーも樹脂組成物の層の表面自由エネルギーと同様にして測定できる。
【0026】
樹脂組成物中の非水溶性樹脂(A)の含有量は、非水溶性樹脂(A)と水溶性樹脂(B)の合計量100質量部に対して、20〜80質量部であることが好ましく、30〜70質量部であることがより好ましく、30〜60質量部であることがさらに好ましい。非水溶性樹脂(A)の含有量が20質量部以上であることにより、金属箔と樹脂組成物の層との接着強度がより向上し、ドリル孔あけ加工時に樹脂組成物の層の剥離がより起こりにくい傾向にある。一方、非水溶性樹脂(A)の含有量が80質量部以下であることにより、ドリル孔あけ加工の際の孔位置精度により優れる傾向にある。
【0027】
非水溶性樹脂(A)としては、特に限定されず、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂が挙げられる。このなかでも、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、及びポリオレフィン系樹脂からなる群より選択される1種類又は2種類以上が好ましい。このような非水溶性樹脂(A)を用いることにより、上述した樹脂組成物の層の金属箔に接する面の表面自由エネルギーの分散項γSDが27.0〜37.0mJ/m
2の範囲であり、且つ前記表面自由エネルギーの極性項γSPが0〜5.0mJ/m
2の範囲になりやすく、金属箔と樹脂組成物の層との接着強度がより向上する傾向にある。これらの樹脂は、1種単独で用いてもよく、または2種以上組合せて用いてもよい。
【0028】
[III−2:ポリウレタン樹脂]
本実施形態において非水溶性樹脂(A)として用いることができるポリウレタン樹脂としては、ポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、必要に応じて他の化合物とを反応させて得られた樹脂が挙げられる。ポリウレタン樹脂の合成反応としては、アセトン法、プレポリマーミキシング法、ケチミン法、ホットメルトディスパージョン法等が例示できる。
【0029】
ポリイソシアネート化合物は、特に限定されず、例えば、通常のポリウレタン樹脂の製造に使用される、分子内にイソシアネート基を2個以上有する有機ポリイソシアネート化合物が挙げられる。具体的には、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、メチルシクロヘキシル−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキシル−2,6−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類;1,5’−ナフテンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ジフェニルメチルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;リジンエステルトリイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−イソシアネート−4,4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリメチロールプロパンとトルイレンジイソシアネートとのアダクト体、トリメチロールプロパンと1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートとのアダクト体等のトリイソシアネート類などが挙げられる。これらの化合物は、1種単独で用いてもよく、又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
ポリオール化合物は、特に限定されず、例えば、通常のポリウレタンの製造に使用される、分子内に水酸基を2個以上有するポリオール化合物が挙げられる。具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の多価アルコール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルポリオール化合物;アジピン酸、セバシン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸等のジカルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,3−プロパンジオール、トリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の多価アルコールとから得られるポリエステルポリオール化合物;ポリカプロラクトンポリオール、ポリβ−メチル−δ−バレロラクトン等のポリラクトン系ポリエステルポリオール化合物;ポリブタジエンポリオール又はその水添物、ポリカーボネートポリオール、ポリチオエーテルポリオール、ポリアクリル酸エステルポリオールなどが例示される。これらの化合物は、1種単独で用いてもよく、又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
上述したように、非水溶性樹脂(A)として使用されるポリウレタン樹脂は、水分散体の態様で、本実施形態の樹脂組成物の層の形成に使用するのが好ましい。ポリウレタン樹脂の水分散体中に含まれる樹脂固形分の含有量は特に限定されないが、水分散体の安定性の観点から、20〜50質量%が好ましい。ポリウレタン樹脂の水分散体の製造方法は特に限定されず、公知の方法で製造できる。なかでも、水中でのポリウレタン樹脂成分の分散性向上の点から、上述した化合物等から合成されるポリウレタン樹脂は、分子内に親水性基を有することが好ましい。親水性基としては、スルホニル基、カルボキシル基等のアニオン性基が好ましく、カルボキシル基が特に好ましい。
【0032】
親水性基がアニオン性基である場合、アニオン性基は中和剤によって中和されているのが好ましい。中和剤としては、特に限定されず、例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の3級アミン化合物;水酸化ナトリウム等の無機アルカリ化合物;アンモニアなどが挙げられる。
【0033】
ポリウレタン樹脂の水分散体を製造する際、必要に応じて鎖延長剤となる化合物を使用しても良い。鎖延長剤としては、特に限定されず、例えば、エチレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミンなどのジアミン;トリエタノールアミンなどの三級アミノアルコール;メタノール、エタノール、ブタノールなどのモノアルコールなどが挙げられる。
【0034】
ポリウレタン樹脂の水分散体を製造する際の溶媒は、通常は水溶媒であるが、更に、イソシアネート基を含有しない有機溶剤を併用することもできる。例えば、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノールなどを使用できる。これらの有機溶剤の添加量は、ポリウレタン樹脂の水分散体中の水分100質量部に対して、通常1〜100質量部である。
【0035】
ポリウレタン樹脂の水分散体は、市販品をそのまま用いてもよい。ポリウレタン樹脂の水分散体の市販品としては、スーパーフレックス820(第一工業製薬株式会社製)、スーパーフレックス860(第一工業製薬株式会社製)、スーパーフレックス740(第一工業製薬株式会社製)、ユープレンUXA307(三洋化成工業株式会社製)、ハイドランAP201(DIC株式会社製)、ハイドランHW140SF(DIC株式会社製)、ハイドランWLS201(DIC株式会社製)が例示できる。これらの非水溶性樹脂(A)の水分散体を用いることにより、金属箔と樹脂組成物の層の接着強度がより向上する傾向にある。
【0036】
[III−3:ポリエステル樹脂]
本実施形態において非水溶性樹脂(A)として用いることができるポリエステル樹脂としては、2つ以上のヒドロキシル基を有するポリオール化合物と2つ以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸からなる原料を縮重合して得られるポリエステル樹脂が挙げられる。
【0037】
ポリオール化合物は2つ以上のヒドロキシル基を有していれば、特に限定されず、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、トリエチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、2−メチル−3−メチル−1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどである。また、2価の芳香族構造を含むグリコールとしてのビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独で用いてもよく、又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
多価カルボン酸は2つ以上のカルボキシル基を有していれば、特に限定されず、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシルー2−メチル−2−メチレンカルボキシルプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸が挙げられる。これらの化合物は、1種単独で用いてもよく、又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
上述したように、非水溶性樹脂(A)として使用されるポリエステル樹脂は、水分散体の態様で、本実施形態の樹脂組成物の層の形成に使用するのが好ましい。ポリエステル樹脂の水分散体中に含まれる樹脂固形分の含有量は特に限定されないが、水分散体の安定性の観点から、20〜50質量%が好ましい。ポリエステル樹脂の水分散体の製造方法は特に限定されず、公知の方法で製造できる。なお、ここでいうポリエステル樹脂の水分散体とは、ポリエステル樹脂が、その分子内に疎水性部分と親水性部分を有し、水中において親水性部分が疎水性部分を取り囲む形で安定的に分散しているものを指す。
【0040】
ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂の水分散性を向上させる目的で、カルボキシル基やスルホン酸基などの親水性基を有する成分を更に共重合させた樹脂であってもよい。親水性基を有する成分としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、トリメシン酸などが使用でき、得られた共重合体をアミン化合物、アンモニア、水酸化ナトリウムなどの無機アルカリ化合物などで中和したポリエステル樹脂が使用できる。
【0041】
ポリエステル樹脂の水分散体は、市販品をそのまま用いてもよい。ポリエステル樹脂の水分散体の市販品としては、バイロナールMD1480(東洋紡績株式会社製)、バイロナールMD1985(東洋紡績株式会社製)が例示できる。これらの水分散体は、本実施形態の樹脂組成物の層を形成する際に用いることができる非水溶性樹脂(A)の水分散体として、特に好ましい。これは、金属箔と樹脂組成物の層の接着強度を特に強くできるからである。
【0042】
[III−4:アクリル系樹脂]
本実施形態において非水溶性樹脂(A)として用いることができるアクリル系樹脂は、不飽和カルボン酸化合物を主な構成成分とする共重合体であれば特に限定されない。不飽和カルボン酸としては、特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n―ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロへキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロへキシル(メタ)アクリルレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート及びポリエチレンーポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のα、β―不飽和カルボン酸エステル(エチレン性不飽和カルボン酸エステルともいう);イタコン酸モノエチルエステル、フマル酸モノブチルエステル等の不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のα、β−不飽和カルボン酸(エチレン性不飽和カルボン酸ともいう)及び不飽和ジカルボン酸;アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシブチルアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド等のα、β―不飽和カルボン酸アミド(エチレン性不飽和カルボン酸アミドともいう)及びそのN−置換化合物;アリルアルコール等の不飽和アルコール;(メタ)アクリロニトリルなどのα、β―不飽和ニトリル(エチレン性不飽和ニトリルともいう)、酢酸ビニル等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独で用いてもよく、又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
上述したように、非水溶性樹脂(A)として使用されるアクリル系樹脂は、水分散体の態様で、本実施形態の樹脂組成物の層の形成に使用するのが好ましい。アクリル系樹脂の水分散体中に含まれる樹脂固形分の含有量は特に限定されないが、水分散体の安定性の観点から、20〜50質量%が好ましい。アクリル系樹脂の水分散体の製造方法は特に限定されず、公知の方法で製造できる。具体的には、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチルなどの有機溶剤中でアクリル化合物を共重合させ、上記有機溶剤を蒸発させた後に水溶媒中でカルボキシル基をアミン化合物、アンモニア、水酸化ナトリウムなどの無機アルカリ化合物で中和して分散させる方法、水溶媒中でアクリル化合物とカルボキシル基やスルホン酸基などのアニオン性の親水性基を有する乳化剤、あるいはポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどのモノエーテル化合物やモノエステル化合物などの非イオン性の親水性基を有する化合物と混合して、乳化重合させる方法、さらにはカルボキシル基やスルホン酸基などの親水性を有する成分とアクリル化合物とを共重合させて自己乳化させる方法などが挙げられる。
【0044】
アクリル系樹脂の水分散体は、市販品をそのまま用いてもよい。アクリル系樹脂の水分散体の市販品としては、ボンコートAK3090(DIC株式会社製)、ボンコートAN678E(DIC株式会社製)、ボンコートMAT200E(DIC株式会社製)が例示できる。これらの水分散体は、本実施形態の樹脂組成物の層を形成する際に用いることができる非水溶性樹脂(A)の水分散体として、特に好ましい。これは、金属箔と樹脂組成物の層の接着強度を特に強くできるからである。
【0045】
[III−5:ポリオレフィン系樹脂]
本実施形態において非水溶性樹脂(A)として用いることができるポリオレフィン系樹脂としては、エチレンやプロピレンなどのオレフィンが主な構成成分である樹脂が挙げられる。そのような樹脂としては、例えば、オレフィンと不飽和カルボン酸との共重合体(以下、本明細書では、「オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体」ともいう。)が挙げられる。オレフィンとしては、特に限定されないが、エチレン、プロピレン、ブチレンが好ましく、このなかでもエチレンが特に好ましい。不飽和カルボン酸としては、特に限定されないが、(メタ)アクリル酸(すなわち、アクリル酸又はメタクリル酸)、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸が好ましく、このなかでも(メタ)アクリル酸がより好ましい。オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体としては、エチレンと(メタ)アクリル酸の共重合体、プロピレンと(メタ)アクリル酸共重合体が、特に好ましい。
【0046】
上述したように、非水溶性樹脂(A)として使用されるポリオレフィン系樹脂は、水分散体の態様で、本実施形態の樹脂組成物の層の形成に使用するのが好ましい。ポリオレフィン系樹脂の水分散体中に含まれる樹脂固形分の含有量は特に限定されないが、水分散体の安定性の観点から、20〜50質量%が好ましい。ポリオレフィン系樹脂の水分散体の製造方法は特に限定されず、公知の方法で製造できる。例えば、上述したオレフィン・不飽和カルボン酸共重合体、水性溶媒、及び必要に応じて塩基や乳化剤などのその他の成分を、固液撹拌装置などを用いて撹拌する方法が挙げられる。
【0047】
ポリオレフィン系樹脂の水分散体の製造に使用される塩基としては、アンモニア、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等のアミン化合物や水酸化ナトリウムなどが挙げられる。
【0048】
ポリオレフィン系樹脂の水分散体は市販品をそのまま用いてもよい。ポリオレフィン系樹脂の水分散体の市販品としては、ザイクセンAC(住友精化株式会社製)、ザイクセンNC(住友精化株式会社製)、ハイテックS3148K(東邦化学工業株式会社製)、ハイテックS9242(東邦化学工業株式会社製)が例示できる。これらの水分散体は、本実施形態の樹脂組成物の層を形成する際に用いることができる非水溶性樹脂(A)の水分散体として、特に好ましい。これは、金属箔と樹脂組成物の層の接着強度を特に強くできるからである。
【0049】
[IV:水溶性樹脂(B)]
水溶性樹脂(B)は、水溶性の樹脂であれば特に限定されないが、高分子水溶性樹脂(b1)と低分子水溶性樹脂(b2)とを併用することが好ましい。
【0050】
樹脂組成物中の水溶性樹脂(B)の含有量は、非水溶性樹脂(A)と水溶性樹脂(B)の合計量100質量部に対して、20〜80質量部であることが好ましく、30〜70質量部であることがより好ましく、40〜70質量部であることがさらに好ましい。水溶性樹脂(B)の含有量が20質量部以上であることにより、より均一な樹脂組成物の層を形成できる傾向にある。一方、水溶性樹脂(B)の含有量が80質量部以下であることにより、ドリル孔あけ加工の際に孔位置精度により優れる傾向にある。
【0051】
高分子水溶性樹脂(b1)としては、特に限定されず、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、及びセルロース誘導体からなる群より選択される1種類又は2種類以上であることが好ましい。これらの化合物は、1種単独で用いてもよく、又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。高分子水溶性樹脂(b1)の質量平均分子量は、50,000以上1,000,000以下であることが、樹脂組成物の層の製膜性向上の観点から好ましい。
【0052】
低分子水溶性樹脂(b2)としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のグリコール化合物;ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンのモノエーテル化合物;ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリグリセリンモノステアレート化合物、ポリオキシエチレンプロピレン共重合体などが挙げられる。このなかでも、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンのモノエーテル化合物、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリグリセリンモノステアレート化合物、及びポリオキシエチレンプロピレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。これらの化合物や共重合体は、1種単独で用いてもよく、又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。低分子水溶性樹脂(b2)の質量平均分子量は、1,000以上30,000以下であることが、ドリル孔あけ加工の際の潤滑性向上の観点から好ましい。
【0053】
上記のなかでも、水溶性樹脂(B)として、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、セルロース誘導体、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンのモノエーテル化合物、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリグリセリンモノステアレート化合物、及びポリオキシエチレンプロピレン共重合体からなる群より選択される1種類又は2種類以上を用いることが好ましい。このような水溶性樹脂(B)を用いることにより、樹脂組成物の層の製膜性及び孔位置精度がより向上する傾向にある。
【0054】
また、特に、水溶性樹脂(B)が、質量平均分子量50,000以上1,000,000以下である高分子水溶性樹脂(b1)と、質量平均分子量1,000以上30,000以下である低分子水溶性樹脂(b2)と、を含む場合においては、高分子水溶性樹脂(b1)が、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、及びセルロース誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含み、低分子水溶性樹脂(b2)が、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンのモノエーテル化合物、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリグリセリンモノステアレート化合物、及びポリオキシエチレンプロピレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。このような水溶性樹脂(B)を用いることにより、樹脂組成物の層の製膜性及び孔位置精度がより向上する傾向にある。
【0055】
高分子水溶性樹脂(b1)の含有量は、非水溶性樹脂(A)と水溶性樹脂(B)の合計量100質量部に対して、好ましくは1〜15質量部であり、より好ましくは2.5〜10質量部であり、さらに好ましくは5〜8質量部である。高分子水溶性樹脂(b1)の含有量が上記範囲内であることにより、樹脂組成物の層の製膜性及び孔位置精度がより向上する傾向にある。
【0056】
低分子水溶性樹脂(b2)の含有量は、非水溶性樹脂(A)と水溶性樹脂(B)の合計量100質量部に対して、好ましくは30〜75質量部であり、より好ましくは40〜75質量部であり、さらに好ましくは45〜72質量部である。低分子水溶性樹脂(b2)の含有量が上記範囲内であることにより、樹脂組成物の層の製膜性及び孔位置精度がより向上する傾向にある。
【0057】
[V:その他の成分]
樹脂組成物の層は、必要に応じて、添加剤を含有していてもよい。添加剤の種類は、特に限定されないが、例えば、表面調整剤、レベリング剤、帯電防止剤、乳化剤、消泡剤、ワックス添加剤、カップリング剤、レオロジーコントロール剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、光安定剤、ギ酸Naなどの核剤、黒鉛などの固体潤滑剤、有機フィラー、無機フィラー、熱安定化剤、および着色剤が挙げられる。
【0058】
本実施形態における樹脂組成物の層の厚さは、ドリル孔あけ加工する際に使用するドリルビット径や、加工する孔あけ対象物(例えば、積層板または多層板などのプリント配線板材料)の構成などによって適宜選択される。このなかでも、樹脂組成物の層の厚さは、0.02〜0.3mmの範囲であることが好ましく、0.02〜0.2mmの範囲であることがより好ましく、0.02〜0.1mmの範囲であることがさらに好ましい。樹脂組成物の層の厚さが0.02mm以上であることにより、より十分な潤滑効果が得られ、ドリルビットへの負荷が軽減されるので、ドリルビットの折損をさらに抑制することができる傾向にある。また、樹脂組成物層の厚さが0.3mm以下であることにより、ドリルビットへの樹脂組成物の巻き付きを抑制することができる傾向にある。
【0059】
[VI:金属箔]
本実施形態のドリル孔あけ用エントリーシートに使用される金属箔は、特に限定されないが、上記樹脂組成物層との密着性が高く、ドリルビットによる衝撃に耐え得る金属材料であると好ましい。金属箔の金属種としては、入手性、コストおよび加工性の観点から、例えばアルミニウムが挙げられる。アルミニウム箔の材質としては、純度95%以上のアルミニウムが好ましい、そのようなアルミニウム箔としては、例えば、JIS−H4160に規定される、5052、3004、3003、1N30、1N99、1050、1070、1085、8021が挙げられる。金属箔にアルミニウム純度95%以上のアルミニウム箔を用いることによって、ドリルビットによる衝撃の緩和、およびドリルビット先端部との食いつき性が向上し、樹脂組成物によるドリルビットの潤滑効果と相俟って、加工孔の孔位置精度を一層高めることができる。
【0060】
金属箔の厚さは、好ましくは0.05〜0.5mmであり、より好ましくは0.05〜0.3mmであり、さらに好ましくは0.05〜0.2mmである。金属箔の厚さが0.05mm以上であることにより、ドリル孔あけ加工時の孔あけ対象物(例えば、積層板)のバリの発生をより抑制することができる傾向にある。また、金属箔の厚さが0.5mm以下であることにより、ドリル孔あけ加工時に発生する切り粉の排出がより容易になる傾向にある。
【0061】
本実施形態のドリル孔あけ用エントリーシートを構成する各層の厚さは、次のようにして測定する。まず、クロスセクションポリッシャー(日本電子データム株式会社製、商品名「CROSS-SECTIONPOLISHERSM-09010」)、またはウルトラミクロトーム(Leica社製、品番「EMUC7」)を用いて、エントリーシートを、各層の積層方向に切断する。その後、SEM(走査型電子顕微鏡(ScanningElectronMicroscope)、KEYENCE社製品番「VE−7800」)を用いて、切断して現れた断面に対して垂直方向からその断面を観察し、構成する各層、例えば、金属箔及び樹脂組成物の層の厚さを測定する。1視野に対して、5箇所の厚さを測定し、その平均値を各層の厚さとする。
【0062】
[VII:ドリル孔あけ用エントリーシートの製造方法]
本実施形態のドリル孔あけ用エントリーシートの製造方法は、特に限定されず、例えば、次のようにして製造することができる。本実施形態のドリル孔あけ用エントリーシートは、金属箔の少なくとも片面上に樹脂組成物の層を形成して製造される。樹脂組成物の層を形成させる方法は特に限定されず、公知の方法が使用できる。そのような方法としては、例えば、非水溶性樹脂(A)の水分散体、及び水溶性樹脂(B)を溶媒に溶解又は分散させた樹脂組成物の溶液を、コーティング法などの方法で、金属箔上に塗工して、更に乾燥させる及び/又は冷却固化させる方法が挙げられる。
【0063】
コーティング法などによって、樹脂組成物の溶液を金属箔上に塗工して、乾燥させて樹脂組成物の層を形成する場合、樹脂組成物の溶液に用いられる溶媒は、水と水よりも沸点が低い溶媒とからなる混合溶液であることが好ましい。水と水よりも沸点が低い溶媒からなる混合溶液を用いることは、樹脂組成物の層中の残留気泡の低減に寄与する。水よりも沸点が低い溶媒の種類は、特に限定されないが、例えば、エタノール、メタノールやイソプロピルアルコールなどのアルコール化合物が挙げられ、メチルエチルケトンやアセトンなどの低沸点溶剤も用いることが可能である。その他の溶媒として、水やアルコール化合物に樹脂組成物との相溶性が高いテトラヒドロフランやアセトニトリルを一部混合させた溶媒などを用いることが可能である。
【0064】
[VIII:ドリル孔あけ加工方法]
本実施形態のドリル孔あけ加工方法は、上記ドリル孔あけ用エントリーシートを用いて、積層板又は多層板に孔を形成する孔形成工程を有する。また、そのドリル孔あけ加工は、直径(ドリルビット径)0.30mmφ以下のドリルビットによるドリル孔あけ加工であると、本実施形態の目的を更に有効かつ確実に奏することができる。特に、直径0.05mmφ以上0.30mmφ以下、さらには孔位置精度が重要になる直径0.05mmφ以上0.20mmφ以下の小径のドリルビット用途であると、孔位置精度およびドリル寿命を大きく向上させる点で好適である。なお、0.05mmφのドリルビット径は、入手可能なドリルビット径の下限であり、これよりも小径のドリルビットが入手可能になれば、上記の限りではない。また、直径0.30mmφ超のドリルビットを用いるドリル孔あけ加工に、本実施形態のドリル孔あけ用エントリーシートを採用しても問題ない。
【0065】
本実施形態のドリル孔あけ用エントリーシートは、例えば、プリント配線板材料、より具体的には、積層板又は多層板をドリル孔あけ加工する際に好適に用いることができる。具体的には、積層板又は多層板を1枚又は複数枚重ねたもの(プリント配線板材料)の少なくとも最上面に、金属箔側がプリント配線板材料に接するようにドリル孔あけ用エントリーシートを配置し、そのエントリーシートの上面(樹脂組成物の層側)から、ドリル孔あけ加工を行うことができる。
【実施例】
【0066】
以下に、本発明の実施例の効果を、本発明の範囲から外れる比較例と比較して説明する。なお、「ポリエチレングリコール」を「PEG」、「ポリエチレンオキサイド」を「PEO」、「ポリウレタン樹脂の水分散体」を「ポリウレタン樹脂」、「ポリエステル樹脂の水分散体」を「ポリエステル樹脂」、「アクリル系樹脂の水分散体」を「アクリル系樹脂」、「ポリオレフィン系樹脂の水分散体」を「ポリオレフィン系樹脂」と略記することがある。
【0067】
以下に、表面自由エネルギーの測定方法、接着力の測定方法、孔位置精度の測定方法について説明する。
【0068】
<表面自由エネルギーの分散項γSD、極性項γSPの測定>
表面自由エネルギーの分散項γSD、γSPの測定方法について説明する。
【0069】
(前処理)
実施例及び比較例で用いた樹脂組成物溶液、あるいは実施例及び比較例で用いた非水溶性樹脂(A)の水分散体を、剥離フィルム(リンテック社製 PET 38 AL−5)上に塗布し、120℃3分の乾燥条件で乾燥、冷却・固化させて樹脂組成物の皮膜(樹脂組成物の層)を得た。得られた皮膜を剥離フィルムから剥がし、両面テープ(日東電工製No.5000E)を用いて、得られた皮膜の、剥離フィルムと接していた面が上になるように板に貼り付けて測定試料とした。
【0070】
(測定)
測定試料の上に、表面張力γL、表面張力の分散項γLD、表面張力の極性項γLPが既知である2種の溶媒として、流動パラフィンとグリセリンをそれぞれ2μL滴下した。ここで、流動パラフィンは、γL/γLD/γLP=38.1/38.1/0である(いずれも単位はmJ/m
2)。一方、グリセリンは、(γL/γLD/γLP=63.4/37.0/26.4である(いずれも単位はmJ/m
2)。
【0071】
測定試料上に滴下した2種の溶媒の液滴をデジタルマイクロスコープ(KEYENCE製VHX−100)で真横から観察・撮影し、測定試料と液滴がなす接触角をデジタルマイクロスコープ付属の計測ソフトで直接測定し、2種の溶媒を使用したときのそれぞれの接触角を得た。
【0072】
得られた接触角θと、流動パラフィンとグリセリンの表面張力γL、表面張力の分散項γLD、表面張力の極性項γLPを下記の式(1)に代入して得られる連立方程式を解き、測定試料の表面自由エネルギーの分散項γSD、γSPを求めた。
γL(1+cosθ)=2(γSD×γLD)
0.5+2(γSP×γLP)
0.5
(1)
なお、本方法で測定して得られる表面自由エネルギーの分散項γSD、極性項γSPの値は、金属箔上に樹脂組成物溶液を塗布して得られる表面自由エネルギーの分散項γSD、極性項γSPの値と同じである。
【0073】
<接着力の測定方法>
接着力は、次のようにして測定した。まず、実施例及び比較例で作製したドリル孔あけ用エントリーシートを3mm幅、100mmの長さに切った試料を3つ用意した。次に、試料の樹脂組成物の層の表面の全体に両面テープを貼り付けた。その後、両面テープを貼り付けた試料の片端を10mmはがし、はがした試料の金属箔部分にバネ秤を取り付けるための治具を取り付けた。治具にバネ秤(SANKO製、最大計測可能値1000gf)を取り付け、1cm/秒の速さで引っ張り、バネ秤の指す数値を読み取った。測定を3つの試料について行い、3回の平均値を接着力の数値とした。金属箔と樹脂組成物の層とが剥がれなかった場合は「>1000」と表記した。
【0074】
<孔位置精度の測定>
孔位置精度は、次のようにして測定した。厚さ0.2mmの銅張積層板(商品名:HL832、銅箔厚さ12μm、両面板、三菱ガス化学株式会社製)を5枚積み重ねた銅張積層板の上面に、実施例及び比較例で作製したドリル孔あけ用エントリーシートをその樹脂組成物の層側が上面になるように配置し、積み重ねた銅張積層板の最下板の裏面(下面)に厚さ1.5mmの当て板(紙フェノール積層板PS1160−G、利昌株式会社製)を配置した。0.2mmφドリルビット(商品名:C−CFU020S、タンガロイ株式会社製)、回転数:200,000rpm、送り速度:2.6m/min、孔あけ回数:ドリルビット1本につき3,000孔の条件で、計6,000孔のドリル孔あけ加工を行った。
【0075】
3000孔目(ドリルビット1本目)と6000孔目(ドリルビット2本目)の孔につき、積み重ねた銅張積層板の最下板の裏面(下面)における孔位置と指定座標とのズレを、ホールアナライザー(型番:HA−1AM、日立ビアメカニクス株式会社製)を用いて測定した。ドリルビット1本分ごとに、そのズレについて、平均値及び標準偏差(σ)を計算し、「平均値+3σ」を算出した。その後、ドリル孔あけ加工全体の孔位置精度として、使用した2本のドリルビットについてそれぞれの「平均値+3σ」の値に対する平均値を算出した。孔位置精度の算出に用いた式は、下記の式(2)のとおりである。
【数1】
(2)
ここで、nは使用したドリルの本数を示す。
【0076】
表1に、実施例及び比較例のドリル孔あけ用エントリーシートの製造に用いた非水溶性樹脂(A)、水溶性樹脂(B)、添加剤、溶媒、金属箔の仕様を示した。表1中の非水溶性樹脂(A)中の樹脂固形分は、非水溶性樹脂(A)の水分散体中の樹脂固形分の量(質量%)を表す。
【0077】
【表1】
【0078】
以下に、実施例及び比較例のドリル孔あけ用エントリーシートの製造方法を説明する。
<実施例1>
高分子水溶性樹脂(b1)として質量平均分子量560,000のポリエチレンオキサイド(明成化学工業株式会社製、アルコックスE−45)4.3質量部と、低分子水溶性樹脂(b2)として質量平均分子量3,300のポリエチレングリコール(三洋化成工業株式会社製、PEG4000S)38.6質量部と、ポリウレタン樹脂の水分散体(第一工業製薬株式会社製、スーパーフレックス740、固形分濃度40%)142.75質量部(樹脂固形分換算で57.1質量部)を、樹脂組成物溶液の固形分濃度が30%となるように水/メタノール混合溶媒に溶解させた。水/メタノール混合溶媒の混合割合は50/50とした。この樹脂組成物溶液をアルミニウム箔(使用アルミニウム箔:JIS−A1100H、厚さ0.1mm、三菱アルミニウム株式会社製)の片面に、バーコーターを用いて乾燥後の樹脂組成物の層の厚さが50μmとなるように塗布し、乾燥機にて120℃、3分間乾燥させ、常温まで冷却して、ドリル孔あけ用エントリーシートを作製した。上述した方法で、接着力測定、表面自由エネルギーの分散項γSD、極性項γSPの測定を行い、結果を表2に示した。
【0079】
<実施例2〜50、比較例1〜48>
実施例1に準じて、表2〜5に示す各材料の種類及び含有割合にて樹脂組成物の溶液を調製し、乾燥・固化後の樹脂組成物の層の厚さが50μmのドリル孔あけ用エントリーシートを作製した。得られたドリル孔あけ用エントリーシートの金属箔と樹脂組成物の層との間の接着力、樹脂組成物の層の表面自由エネルギーの分散項γSD、極性項γSPを測定した。これらの結果を表2〜5に示した。
【0080】
表2〜5に示した接着力の判定基準は次のとおりである。ドリル孔あけ加工の際、加工時の負荷がエントリーシートにかかるため、金属箔と樹脂組成物の層との接着力が弱いと樹脂組成物の層が剥離してしまう。本発明者らが、鋭意研究した結果、接着力が200gf以上であれば、ドリル孔あけ加工時に樹脂組成物の層が剥離しないことが判明したので、接着力の判定基準は、200gf以上であれば「○」、200gf未満であれば「×」と定めた。
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【0083】
【表4】
【0084】
【表5】
【0085】
表6は、表面自由エネルギー、接着力、及び孔位置精度の関係を示す表である。孔位置精度の判定基準は、次のとおりである。上記式(2)の方法で算出された孔位置精度が20μm以下のとき、特性が優れている『○』と表記し、20μmより大きいとき『×』と表記した。また孔位置精度判定と接着力判定の両方が『○』であれば、金属箔と樹脂組成物の層との接着強度が強く孔位置精度に優れており、総合判定として『○』と表記し、孔位置精度判定と接着力判定の少なくとも一方が『×』であるとき、総合判定として『×』と表記した。
【0086】
【表6】
【0087】
図1は、実施例及び比較例における樹脂組成物の層の表面自由エネルギーのγSDとγSPをプロットしたものである。
図1より、表面自由エネルギーの分散項γSDが27.0〜37.0mJ/m
2の範囲であり、極性項γSPが0〜5.0mJ/m
2の範囲である場合に、接着力が良好となることがわかる。
【0088】
表6より、表面自由エネルギーの分散項γSDが27.0〜37.0mJ/m
2の範囲であり、極性項γSPが0〜5.0mJ/m
2の範囲である実施例1、7、8、12、18、24、26、32、38、43、50のドリル孔あけ用エントリーシートの金属箔と樹脂組成物の層との接着力は強く、孔位置精度も良好であることがわかる。一方、表面自由エネルギーの分散項γSDが27.0mJ/m
2未満又は37.0mJ/m
2を超える、あるいは極性項γSPが5.0mJ/m
2を超える、比較例1、2、8、9、10、13、14、16、20、24、25、30、34、42、44、48のドリル孔あけ用エントリーシートの金属箔と樹脂組成物の層との接着力は弱く、ドリル孔あけ加工時に樹脂組成物の層の剥離が発生し、孔位置精度は悪かった。
【0089】
すなわち、表2〜6の結果から、樹脂組成物の層の金属箔と接触する面の表面自由エネルギーの分散項γSDが27.0〜37.0mJ/m
2の範囲を外れると、又は極性項γSPが0〜5.0mJ/m
2の範囲を外れると、金属箔と樹脂組成物の層との接着強度が弱く、ドリル孔あけ加工の際に樹脂組成物の層が剥離してしまい、孔位置精度が悪化することがわかる。
【0090】
本出願は、2015年3月19日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2015−056156)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。