(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材1、脱離層、並びに、絵柄層および/または基材2をこの順に有する印刷物ないし積層体から、絵柄層および/または基材2を剥離させて、基材1をリサイクルするための脱離層を形成することに用いられる有機溶剤系印刷インキであって、
前記有機溶剤系印刷インキは、バインダー樹脂として、酸価15〜70mgKOH/g、かつ、水酸基価1〜35mgKOH/gであるポリウレタン樹脂を含有する、有機溶剤系印刷インキ。
ポリウレタン樹脂は、ポリオール由来の構成単位を含み、前記ポリオールは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、およびポリカーボネートポリオールから選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1に記載の有機溶剤系印刷インキ。
基材1、脱離層、並びに、絵柄層および/または基材2をこの順に有する印刷物ないし積層体から、絵柄層および/または基材2を剥離させて、基材1をリサイクルするための脱離層を形成することに用いられる有機溶剤系印刷インキであって、
前記有機溶剤系印刷インキは、バインダー樹脂として酸価15〜70mgKOH/gのポリウレタン樹脂を含有し、前記ポリウレタン樹脂は、ポリオール由来の構成単位を含み、
前記ポリオールは、エステル結合濃度4〜11mmol/gであるポリエステルポリオールを50質量%以上含む、有機溶剤系印刷インキ。
前記二塩基酸の有するカルボキシル基同士を直鎖で結ぶ炭素数、および、前記ジオールの有する水酸基同士を直鎖で結ぶ炭素数の、両方が、炭素数1〜6である、請求項6に記載の有機溶剤系印刷インキ。
有機溶剤系印刷インキは、更に、セルロース系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ロジン系樹脂、アクリル樹脂、スチレン−マレイン酸共重合樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂を含有する、請求項1〜7いずれかに記載の有機溶剤系印刷インキ。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施形態を詳細に説明するが、以下に記載する実施形態または要件の説明は、本発明の実施態様の一例であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0024】
以下の説明において、「有機溶剤系印刷インキ」を単に「印刷インキ」または「インキ」と略記する場合があるが同義である。また、有機溶剤系印刷インキより形成される層は、「基材からの脱離能を有する脱離層」と同一であり、単に「脱離層」または「インキ層」という場合もあるが同義である。これに対して基材に直接印刷されず当該脱離機能に影響しない印刷インキは「絵柄インキ」と称呼し、その印刷層は「絵柄インキ層」または「絵柄層」と称呼する。
【0025】
本発明における実施形態1は、基材からの脱離能を有する脱離層を形成するための、有機溶剤系印刷インキであって、当該印刷インキは、バインダー樹脂として酸価15〜70mgKOH/g、かつ水酸基価1〜35mgKOH/gのポリウレタン樹脂を含有する有機溶剤系印刷インキである。当該ポリウレタン樹脂は、酸価が15mgKOH/g以上、水酸基価が1mgKOH/g以上において、水酸基による親水性と酸価によるアルカリとの中和の相互作用により、アルカリ水溶液でのインキ層の脱離が容易になる。酸価が70mgKOH/g以下かつ水酸基価が35mgKOH/g以下の場合には、プラスチックフィルムへの密着性および耐水性が良好となり、その結果耐レトルト適性が良好となる。
【0026】
また本発明における実施形態2は、基材からの脱離能を有する脱離層を形成するための有機溶剤系印刷インキであって、当該印刷インキは、バインダー樹脂として酸価15〜70mgKOH/gのポリウレタン樹脂を含有し、ポリウレタン樹脂は、ポリオール由来の構成単位を含み、ポリオールは、ポリオール総質量中に、エステル結合濃度4〜11mmol/gであるポリエステルポリオールを50質量%以上含む、有機溶剤系印刷インキである。所定酸価範囲は上記と同様の効果を奏し、更に、エステル結合濃度4〜11mmol/gであるポリエステルポリオールを50質量%以上使用することでポリエステルポリオールの加水分解能も寄与してインキ層の脱離をより促すものである。
【0027】
ただし、上記有機溶剤系印刷インキはインキ中において前記ポリウレタン樹脂の酸価が中和されている場合を除くものである。
【0028】
上記「脱離」とは塩基性水溶液(アルカリ水溶液)での中和・溶解等により脱離することをいう。当該塩基性水溶液に使用する塩基性物質は特に制限は無いが、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)
2)、アンモニア、水酸化バリウム(Ba(OH)
2)、炭酸ナトリウム(Na
2CO
3)等が好適に挙げられる。好ましくはNaOHおよび/またはKOHである。ただし、本願発明の脱離条件の形態はこれらに限定されない。なお、脱離とは、基材から脱離層が溶解して剥離する場合および、溶解せずに剥離する場合との両方の形態を含む。
【0029】
上記アルカリ水溶液で基材から脱離するのは、上記脱離層であるが、脱離層の脱離とともに後述の絵柄層、接着剤層、脱離層と接しない基材等が脱離する場合を含む。
「基材からの脱離能を有する」とは、基材から脱離する層が脱離層の一部ということではない。本発明は脱離後の基材を、リサイクル基材・再生基材として得ることを目的とし、基材から脱離層、絵柄層その他の層をできる限り多く除く態様が好適である。具体的には、脱離層100質量%のうち、面積や膜厚方向において少なくとも50質量%以上の脱離層が脱離するということである。好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上を除去する態様で使用することが好ましい。
【0030】
脱離層は再生基材を得ることを目的とするために設けられている。従って、ソルダーレジストやカラーレジストなどの場合ではアルカリ水溶液により層の一部を溶解させる工程を有するが、活性エネルギー線での硬化層は、アルカリ水溶液処理後も、一定量残すことを目的とするため、本発明における脱離層とは技術的思想が異なる。従って、本発明における脱離層はソルダーレジストやカラーレジストその他の感光性樹脂組成物からなる層である場合を除く。
【0031】
脱離のメカニズムとして、推測されるのは、脱離層を含むラミネート積層体(例えば基材1/脱離層/基材2などの態様)にあっては基材同士の隙間からアルカリ水溶液が浸透して脱離層と接触し、脱離層の溶解等により基材からの脱離することが考えられる。断面に脱離層を有する形態で脱離工程を行うことが好ましい。ここで、ラミネート積層体あるいはそれを用いた包装袋において、アルカリ水溶液が浸透する隙間が無くとも、脱離工程において当該積層体を裁断し、その断面が脱離層を有していれば足る。
一方、脱離層を含む印刷層を有する表刷り印刷物(例えば基材1/脱離層/絵柄層などの態様)では、断面以外に、アルカリ水溶液は絵柄層を浸透して脱離層へ接触するため、断面に制限なく脱離ができる。ただし、表刷り印刷物またはラミネート積層体いずれの形態においても、裁断して脱離処理する態様であることが好ましい。
【0032】
(脱離層)
本発明の実施形態における脱離層は、以下に説明する有機溶剤系印刷インキより形成される。まず、有機溶剤系印刷インキにバインダー樹脂として含まれるポリウレタン樹脂について説明する。バインダー樹脂とは脱離層を形成するための主たる樹脂成分をいう。「主たる」とは脱離層を構成する樹脂成分総量のうち50質量%以上であることをいう。
【0033】
<ポリウレタン樹脂>
本発明の実施形態1において、有機溶剤系印刷インキに使用するポリウレタン樹脂の酸価は15〜70mgKOH/gかつ、水酸基価1〜35mgKOH/gであることを特徴とする。また、本発明の実施形態2において、酸価は15〜70mgKOH/gであり、エステル結合濃度等を規定する。
酸価は、酸をアルカリで滴定して算出した樹脂1g中の酸量を、水酸化カリウムのmg数に換算した値である。水酸基価は、樹脂中の水酸基をエステル化またはアセチル化し、残存する酸をアルカリで逆滴定して算出した樹脂1g中の水酸基量を、水酸化カリウムのmg数に換算した値である。酸価および水酸基価はいずれもJISK0070に従って行った値である。アルカリ水溶液による脱離性と耐レトルト適性とのバランスの観点から、ポリウレタン樹脂は、酸価が20〜50mgKOH/gが好ましく、酸価が25〜40mgKOH/gであることがなお好ましい。更に水酸基価は10〜30mgKOH/gであることが好ましく、水酸基価が15〜27mgKOH/gであることがなお好ましい。
【0034】
前記ポリウレタン樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は6以下であることが好ましい。Mwとは重量平均分子量を表し、Mnは数平均分子量を表す。Mw/Mnは6以下である場合、過剰な高分子量成分および、未反応成分、副反応成分その他の低分子量成分に起因する影響を回避することができ、脱離性、乾燥性、耐レトルト適性が良好となる。また、より分子量分布が小さい(分子量分布がシャープである)とアルカリ水溶液との均一に接触する作用を奏し、アルカリによる脱離性がより良好となる。分子量分布としては5以下であることがなお好ましく、4以下であることが更に好ましい。また、分子量分布は1.5以上が好ましく、1.2以上がなお好ましい。なお、Mw、MnおよびMw/Mnはゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)により求めることができる、ポリスチレン換算値を使用した値である。なお分子量分布が該当範囲であり、かつ上記酸価範囲であればアルカリによる脱離性と乾燥性、基材密着性、耐レトルト適性等を満たす。
【0035】
分子量分布(Mw/Mn)を上記範囲とするためには、ポリウレタン樹脂合成においてウレタン合成原料/有機溶剤の比率(固形分比率)、ポリイソシアネートなどの反応性原料の滴下速度、更には反応中の撹拌速度や反応液の均一性などを適切に設定することで分子量分布(Mw/Mn)を範囲内とすることができる。なお、更に鎖延長反応を行う場合には特に後述のポリアミンとウレタンプレポリマーの滴下・接触速度および撹拌速度のバランス、更に鎖延長時の温度範囲制御をも一定幅とすることが分子量分布を所定範囲とすることに効果的である。
また、反応原料の仕込み比率を適切な比率に設定することで分子量分布を所定範囲とすることに効果的である。当該仕込み比率とは、例えばポリオールおよびヒドロキシ酸の水酸基、更にポリイソシアネートのイソシアネート基の比率である、NCO/OH比率が挙げられ、ポリアミンのアミノ基と、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基との比率である、アミノ基/NCO比率などが挙げられる。また、分子量分布を制御するためには過剰な重合反応を防止する目的で重合停止剤(反応停止剤ともいう)を用いることが好ましい。重合停止剤としてはモノアルコールやモノアミンが好適に挙げられる。
【0036】
上記ポリウレタン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10000〜100000であることが好ましい。15000〜70000であることがなお好ましく、15000〜50000であることが更に好ましい。耐ブロッキング性および有機溶剤系印刷インキの印刷工程における作業効率、印刷適性などが良好となるためである。また、更に上記分子量分布(Mw/Mn)であることによってアルカリ水溶液による脱離性が良好となる。
【0037】
上記ポリウレタン樹脂はアミン価を有していてもよく、アミン価を有する場合は0.1〜20mgKOH/gであることが好ましく、1〜10mgKOH/gであることがなお好ましい。基材密着性が良好となるためである。
【0038】
ポリウレタン樹脂は、その製造方法により限定されるものではないが、例えばポリイソシアネート、ポリオールおよびヒドロキシ酸を反応させてなるポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。
また、ポリイソシアネート、ポリオールおよびヒドロキシ酸を反応させてなるウレタンプレポリマーを、さらにポリアミンと反応させて(鎖延長反応という)なるポリウレタン樹脂を用いることがなお好ましい。ポリウレタン樹脂は、上記いずれの場合においてもヒドロキシ酸を使用することで、ポリウレタン樹脂に酸価を付与させることができる。
【0039】
(ポリイソシアネート)
有機溶剤系印刷インキに使用されるポリウレタン樹脂に用いるポリイソシアネートとしてはジイソシアネートおよびまたはトリイソシアネートが好ましく、芳香族、脂肪族または脂環族のジイソシアネートを好適に使用することができる。
例えば、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4、4’−ジベンジルイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、o−キシリレンジイソシアネートおよび2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネートその他の芳香族ジイソシアネート、
テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートその他の脂肪族ジイソシアネート、
シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネートやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネートその他の脂環族ジイソシアネートが好適に挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0040】
上記のうち、反応性等の面から、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートから選ばれる少なくとも一種の使用が好ましい。なお、これらジイソシアネートは三量体となりイソシアヌレート構造を有するトリイソシアネートである場合も好ましい。
【0041】
(ポリオール)
上記ポリウレタン樹脂はポリオール由来の構成単位を有し、ポリオールとしては特に制限は無く以下に限定されないが、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどが好適に用いられる。ポリオールとは一つの分子内に水酸基を少なくとも二つ持った化合物の総称であるが、後述のヒドロキシ酸を含まないものとする。
更にポリオールは、その他ダイマージオール、水添ダイマージオール、ひまし油変性ポリオールなどを使用しても良い。当該ポリウレタン樹脂はポリエーテル構成単位、ポリエステル構成単位およびポリカーボネート構成単位から選ばれる少なくとも一種の構成単位を有することが好ましく、ポリエステルポリオール由来の構成単位を含有することがより好ましい。
ポリウレタン樹脂総質量中にポリオール由来の構成単位を10〜75質量%含むことが好ましく、15〜70質量%含むことがなお好ましい。20〜65質量%含むことが更に好ましい。
【0042】
ポリオールの使用形態としては、ポリオール由来の構成単位の総質量中、ポリエステルポリオール由来の構成単位を5質量%以上含むことが好ましい。30質量%以上含むことがなお好ましく、40質量%以上含むことが更に好ましい。なお、後述するヒドロキシ酸をポリウレタン樹脂に組み込むことでアルカリによる脱離性、すなわちアルカリ水溶液によってプラスチック基材から脱離層および絵柄層を脱離する性能を付与することができる作用に加え、ポリエステルポリオールのエステル結合部位がアルカリ加水分解することにより脱離性がさらに向上させるためには、50質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上含むことがなお好ましい。80質量%以上含むことが更に好ましい。
【0043】
ポリオールの数平均分子量は500〜10000であることが好ましい。ここでポリオールに用いる数平均分子量は水酸基価から算出されるものである。なお当該水酸基価とはJISK0070による測定値をいう。ポリオールの数平均分子量が10000以下であると、プラスチックフィルムに対する耐ブロッキング性に優れる。また、ポリオールの数平均分子量が500以上であると、ポリウレタン樹脂被膜の柔軟性に優れプラスチックフィルムへの密着性に優れる。以上の理由より、より好ましくは数平均分子量が1000〜5000である。
【0044】
(ポリエステルポリオール)
ポリエステルポリオールとしては例えば、二塩基酸とジオールとの縮合物からなるポリエステルポリオールや、環状エステル化合物の開環重合物であるポリラクトンポリオールからなるポリエステルポリオールが好適に挙げられる。ポリエステルジオールであることが好ましい。当該二塩基酸としてはアジピン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸、グルタル酸、1、4−シクロヘキシルジカルボン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸等が好適に挙げられ、中でもアジピン酸、コハク酸などが好ましい。
当該ジオールとしてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,3,5−トリメチルペンタンジオール、2、4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,12−オクタデカンジオール、1,2−アルカンジオール、1,3−アルカンジオール、1−モノグリセライド、2−モノグリセライド、1−モノグリセリンエーテル、2−モノグリセリンエーテル、ダイマージオール、水添ダイマージオール等が好適に挙げられる。ポリエステルポリオールは単独で、または2種以上を混合して用いることができる。さらにポリエステルポリオールの原料としてヒドロキシル基を3個以上有するポリオール、カルボキシル基を3個以上有する多価カルボン酸を併用することもできる。上記環状エステル化合物としては、α-アセトラクトン、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトンなどが好適に挙げられる。
【0045】
(エステル結合濃度)
本発明における実施形態2においては、上記ポリオールはエステル結合濃度4〜11mmol/gであるポリエステルポリオールをポリオール総質量中に50質量%含有することを必要とする。ここでいうエステル結合濃度は、以下の式(1)で算出される数値である。
式(1)エステル結合濃度(mmol/g)=ポリエステルポリオールの有するエステル結合の総モル数(mmol)/ポリエステルポリオールの固形分総質量(g)
インキ層の脱離性を良好とするためには、ポリエステルポリオールのエステル結合濃度は7〜11mmol/gであることが好ましく、8〜11mmol/gであることがなお好ましく、9〜11mmol/gであることがなお好ましい。
【0046】
本発明における実施形態2において、例えば、ポリエステルポリオールは以下の一般式(1)で表される構造単位を有する場合などが好適である。
【0048】
(式中、R
1およびR
2は、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキレン基であり、R
1およびR
2は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、nは自然数である。)
上記ポリエステルポリオールは二塩基酸とジオールの縮重合により得られる。その場合(ジオールの有する水酸基のモル数/二塩基酸の有するカルボキシル基のモル数)>1の条件において製造され、
この場合、エステル結合濃度は下記式(2)で表される。
式(2)
エステル結合濃度(mmol/g)=カルボキシル基の総モル数(mmol)/ポリエステルポリオールの固形分総質量(g)
ここで、カルボキシル基の総モル数とは、ポリエステルポリオールを製造する際に用いられる二塩基酸の有するカルボキシル基の総モル数をいう。
【0049】
上記実施形態1あるいは実施形態2において、ポリエステルポリオールを製造するための、二塩基酸の有するアルキレン基(R
1)は、置換もしくは無置換のアルキレン基である。当該二塩基酸の有するカルボキシル基同士を直鎖で結ぶ炭素数が、炭素数1〜6あることが好ましい。当該炭素数は1〜3であることがなお好ましい。ここで、二塩基酸の有するアルキレン基(R
1)とは、上記一般式(1)においてのR
1と同一である。R
1を有する二塩基酸は、例えば、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸等が該当する。
上記実施形態1あるいは実施形態2において、ポリエステルポリオールを製造するための、ジオールの有するアルキレン基(R
2)は、置換もしくは無置換のアルキレン基であって、ジオールの有する水酸基同士を直鎖で結ぶ炭素数が、1〜6であることが好ましい。当該炭素数は1〜3であることがなお好ましい。なお、ジオールの有するアルキレン基(R
2)とは、上記一般式(1)においてのR
2と同一である。R
2を有するジオールは、例えば、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールなどが該当する。
【0050】
既述した「カルボキシル基同士を直鎖で結ぶ炭素数/水酸基同士を直鎖で結ぶ炭素数」とは、上記R
1、R
2において分岐炭素や置換基として有する炭素は含めない炭素数という意味であり、例えば、3−メチル−1,5−ペンタンジオールの炭素数は6だが、「水酸基同士を直鎖で結ぶ炭素数」は5である。また同様に2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールの炭素数は9だが、「水酸基同士を直鎖で結ぶ炭素数」は3である。二塩基酸の場合も同様に定義される。
なお、「直鎖で結ぶ炭素数」を「直鎖炭素数」という場合があるが同義である。
【0051】
ポリエステルポリオールは、アルキレン基(R
1)の両端にカルボキシル基を有する二塩基酸と、アルキレン基(R
2)の両端に水酸基を有するジオールと、の縮合物であり、前記二塩基酸の有するカルボキシル基同士を直鎖で結ぶ炭素数、または、前記ジオールの有する水酸基同士を直鎖で結ぶ炭素数のいずれか一方は、炭素数1〜6であることが好ましく、炭素数1〜3であることがなお好ましい。
【0052】
またポリエステルジオールは分岐構造を有するジオールと二塩基酸の縮合物であるポリエステル由来の構成単位を含む場合も好ましい。またプラスチック基材との密着性や耐レトルト性を向上させることができるためである。なお、分岐構造を有するジオールとは、アルキレングリコールの少なくとも1つの水素原子がアルキル基で置換された構造を有するジオールであることが好ましく、分岐構造を有するジオールとしては、例えば、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−1,4−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオールなどが好適に挙げられる。中でも好ましいのは1,2−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールから選ばれる少なくとも1種であり、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)および/または3−メチル−1,5−ペンタンジオールを含むポリエステルポリオールの使用がなお好ましい。
【0053】
(ヒドロキシ酸)
ヒドロキシ酸とは、活性水素基である水酸基と酸性官能基の両方を一分子中に有する化合物をいう。上記ヒドロキシ酸としては特に限定されないが、例えば2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール吉草酸等のジメチロールアルカン酸が好ましい。これらは単独または2種以上を混合して用いることができ、ポリウレタン樹脂の酸価が15〜70mgKOH/gとなるように適宜調整して使用すればよい。なお当該酸価とはJISK0070による測定値をいう。
【0054】
なお、上記において酸性官能基とは酸価を測定する際に、水酸化カリウムで中和されうる官能基を示し、具体的にはカルボキシル基やスルホン酸基等があげられ、カルボキシル基であることが好ましい。なお、ポリウレタン樹脂の合成過程において当該酸性基はイソシアネート基とは未反応である確率が高いためポリウレタン樹脂において酸価を保持させることができるものである。
【0055】
また、ポリウレタン樹脂は上記のように、ポリイソシアネート、ポリオールおよびヒドロキシ酸を反応させてなる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを、さらにポリアミンと反応させて(鎖延長反応という)なるポリウレタン樹脂であることが好ましい。この場合ウレタン結合に加え、ウレア結合が生成する。当該ポリイソシアネート、ポリオールおよびヒドロキシ酸としては上記と同様のものを用いることが好ましい。
【0056】
(ポリアミン)
上記ポリアミンとしては、ジアミンを有することが好ましく、以下に限定されないが、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミン、さらにダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に転化したダイマージアミン等などのジアミンが好適に挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。
特に好ましくは、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミンなどの、水酸基を有するジアミンである。これらを使用することでポリウレタン樹脂製造工程において水酸基が一定量未反応で残存し、ポリウレタン樹脂に水酸基価を含有させることができる。
なお、鎖延長にはアミノ酸も使用することができる。アミノ酸とは、アミノ基と酸性官能基の両方を一分子中に有する化合物をいい、グルタミン、アスパラギン、リジン、ジアミノプロピオン酸、オルニチン、ジアミノ安息香酸、ジアミノベンゼンスルホン酸等が好適に挙げられる。なお、ポリウレタン樹脂の合成過程において当該酸性基はイソシアネート基と未反応である確率が高いためポリウレタン樹脂において当該酸価を保持させることができるものである。
【0057】
(重合停止剤)
上記ポリアミンと併用して重合停止剤を使用することもできる。かかる重合停止剤としては、例えば、ジ−n−ジブチルアミンなどのジアルキルアミン化合物、
モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ブタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、トリ(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、N−ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、N−ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、N−ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等の水酸基を有するアミン化合物、
さらにグリシン、アラニン、グルタミン酸、タウリン、アスパラギン酸、アミノ酪酸、バリン、アミノカプロン酸、アミノ安息香酸、アミノイソフタル酸、スルファミン酸などのモノアミン型アミノ酸化合物が挙げられる。ポリウレタン樹脂に水酸基価を含有させるためには水酸基を有するアミン化合物を用いることが好ましい。
【0058】
(ポリウレタン樹脂の合成)
本発明の実施形態におけるポリウレタン樹脂の合成方法について説明する。ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネート、ポリオールおよびヒドロキシ酸を反応させてなる(ウレタン化工程という)。ポリイソシアネートと、ポリオールおよびヒドロキシ酸と、の反応比(NCO/OH)は1.05〜3.0、より好ましくは1.1〜2.8であることが好ましい。ウレタン化反応工程は、必要に応じイソシアネート基に不活性な有機溶剤を用い、また、さらに必要であれば触媒を用いて70〜90℃の温度で2〜8時間かけて行われることが好ましい。この際ポリオールおよび有機溶剤を混合撹拌しているところでポリイソシアネートを適当な速度で滴下することもできる。反応中の撹拌速度は反応液が均一に混合されることが好ましく、過剰に遅い撹拌または過剰に速い撹拌でなく適切な速度でかつ均一であることが好ましい。
【0059】
ポリウレタン樹脂は、前記ウレタン化反応工程により得られた末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーとして更にポリアミンと鎖延長反応を行う場合(ウレア化反応工程という)は、ウレタンプレポリマーないしポリアミンの固形分を適切に設定してうえで行うことが好ましく、滴下速度を比較的ゆっくり一定速度として制御することが好ましい。ウレア化反応工程は反応が進むにつれて粘度が大きく変化するので、均一な反応液とすることが好ましく、撹拌速度も速めで設定することが好ましい。なおウレタンプレポリマーのイソシアネート基とポリアミンの有するアミノ基の比率であるアミノ基/NCOは0.7〜1.3であることが好ましく、当該反応は20〜60℃の温度範囲で1〜8時間かけて行われることが好ましい。
【0060】
(ウレタン結合濃度)
ウレタン結合濃度は次式で表わされる値をいう。
上記において(NCOモル数/OHモル数)>1の場合は下記式(3)で表される。
式(3)
ウレタン結合濃度(mmol/g)=総水酸基モル数(mmol)/固形分総質量(g)
ここで、総水酸基モル数とはウレタンを形成する反応において用いられるポリオール、ヒドロキシ酸などの有する水酸基の総モル数をいう。また、総固形分とはポリウレタン樹脂となる不揮発成分の総質量をいう。
上記において(NCOモル数/OHモル数)<1の場合の場合は下記式(4)で表される。
式(4)
ウレタン結合濃度(mmol/g)=総イソシアネート基モル数(mmol)/固形分総質量(g)
ここで、総イソシアネート基モル数とはウレタンを形成する反応において用いられるポリイソシアネートの有するイソシアネート基の総モル数をいう。
【0061】
(ウレア結合濃度)
ウレア結合濃度は次式で表わされる値をいう。
上記(NCOモル数/OHモル数)>1の条件で末端イソシアネート基を有するプレポリマーを合成した後にポリアミンで鎖延長し、ポリウレタン樹脂の末端にアミノ基を有する場合、下記式(5)で表される。
式(5)
ウレア結合濃度(mmol/g)=[総イソシアネート基モル数(mmol)−総水酸基モル数(mmol)]/固形分総質量(g)
上記(NCOモル数/OHモル数)>1の条件で末端イソシアネート基を有するプレポリマーを合成した後にポリアミンで鎖延長し、ポリウレタン樹脂の末端にイソシアネート基を有する場合、下記式(6)で表される。
式(6)
ウレア結合濃度(mmol/g)=(総アミノ基モル数(mmol))/固形分総質量(g)
ここで総アミノ基モル数とは、末端イソシアネート基を有するプレポリマーと反応させてウレア結合を生成するために用いられるポリアミンの有する、1級および/または2級であるアミノ基の総モル数をいう。
【0062】
ポリウレタン樹脂の有するウレタン結合濃度としては1〜3mmol/gであることが好ましく、1.5〜2mmol/gであることがなお好ましい。また上記ウレア結合濃度としては0〜3mmol/gであることが好ましく、0.2〜1mmol/gであることがなお好ましい。更にウレタン結合濃度とウレア結合濃度の合計は1〜6mmol/gであることが好ましく、1.7〜3mmol/gであることがなお好ましい。ウレタン結合濃度および/またはウレア結合濃度を該当範囲に設定することで脱離および基材密着性が良好となるためである。
【0063】
(併用樹脂)
本発明の実施形態においてバインダー樹脂は上記ポリウレタン樹脂以外にもその他樹脂を併用する場合も好適であり、例としては、以下に限定されるものではないが、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−アクリル系共重合樹脂などの塩化ビニル系樹脂、ロジン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ダンマル樹脂、スチレン−マレイン酸共重合樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、ポリアセタール樹脂、石油樹脂、およびこれらの変性樹脂などを挙げることができる。これらの樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。中でも塩化ビニル系樹脂、アクリル樹脂、セルロース系樹脂、スチレン−マレイン酸共重合樹脂、ロジン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の使用が好ましい。塩化ビニル系樹脂、スチレン−マレイン酸共重合樹脂、ロジン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種であることがなお好ましい。ポリウレタン樹脂と当該併用樹脂との比率は前者:後者が95:5〜50:50であることがなお好ましい。脱離した絵柄層などの回収が容易となるためである。
【0064】
<有機溶剤>
本発明の実施形態の有機溶剤系印刷インキは有機溶剤を含む。有機溶剤は以下に限定されるものではないが、使用される有機溶剤としては、トルエン、キシレンといった芳香族系有機溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンといったケトン系有機溶剤、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、エステル系有機溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどのアルコール系有機溶剤、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤など公知の有機溶剤を使用でき、混合して使用することが好ましい。中でも炭化水素系ワックスを含有した場合のグラビアインキの経時安定性が良好となるため、トルエン、キシレンといった芳香族系有機溶剤を含まない有機溶剤(ノントルエン系有機溶剤)が好ましく、ケトン系有機溶剤を含むことがなお好ましく、エステル系有機溶剤およびアルコール系有機溶剤を含むことが更に好ましい。エステル系有機溶剤およびアルコール系有機溶剤を含む場合、エステル系有機溶剤:アルコール系有機溶剤を質量比90:10〜40:60で含有する混合有機溶剤がより好ましい。更にインキ100質量%中、5質量%以下の量でグリコールエーテル系有機溶剤を含んでよい。
【0065】
<添加剤>
有機溶剤系印刷インキは、添加剤として従来公知のものを適宜含むことができ、グラビアインキの製造においては必要に応じて添加剤、例えば顔料誘導体、分散剤、湿潤剤、接着補助剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、粘度調整剤、金属キレート、トラッピング剤、ブロッキング防止剤、上記以外のワックス成分、イソシアネート系硬化剤、シランカップリング剤などを使用することができる。
【0066】
<有機溶剤系印刷インキ>
本発明の実施形態の有機溶剤系印刷インキとは、クリアインキまたはカラーインキである形態を含むものである。ただし、本発明の趣旨を変更しない範囲で、有機溶剤や他のインキ等を更に含む形態を除外するものではない。
【0067】
<クリアインキ>
クリアインキとしてはインキまたは印刷層が、およそ白濁もしくは無色・透明である形態を意味し、バインダー樹脂や体質顔料、添加剤等に起因する僅かな着色等をも除外するものではない。クリアインキはインキ総質量中の固形分は5〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがなお好ましい。更にバインダー樹脂はインキ総質量中に固形分で0.5〜50質量%含有することが好ましく、5〜30質量%含有することがなお好ましい。上記範囲であることによってクリアインキの粘度が適性となり、任意の印刷方式を用いてインキをプラスチックフィルムに塗布した際の、網点再現性などの印刷適性が良好となる。なお、「固形分」とは不揮発成分の総質量%をいう。
【0068】
(体質顔料)
クリアインキは体質顔料を含有することが好ましい。体質顔料としては、シリカ、硫酸バリウム、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムや、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の金属酸化物などが好ましい。これらは流動性,被膜強度,光学的性質の改善のために用いられる。中でもシリカの使用が好ましく、親水性であることが好ましい。体質顔料は平均粒子径が0.5〜10μmであることが好ましく、1〜8μmであることがなお好ましい。体質顔料はインキ総質量中に0.5〜10質量%含有することが好ましく、1〜5質量%含有することがなお好ましい。絵柄インキを重ね印刷するとき絵柄インキの濡れ性が良好となるためである。
【0069】
<カラーインキ>
カラーインキとは着色剤を含有する有機溶剤系印刷インキをいい、上記クリアインキである場合を含まない。当該着色剤成分としては着色染料および/または着色顔料であることが好ましい。カラーインキはインキ総質量中の固形分は5〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがなお好ましい。着色剤は、インキの濃度・着色力を確保するのに充分な量、すなわちインキ総質量中に1〜50質量%含有することが好ましく、3〜15質量%含有することがなお好ましい。バインダー樹脂はインキ総質量中に固形分で0.5〜50質量%含有することが好ましく、5〜30質量%含有することがなお好ましい。上記範囲であることによってカラーインキの粘度が適性となり、任意の印刷方式を用いてインキをプラスチックフィルムに塗布した際の、網点再現性などの印刷適性が良好となる。カラーインキは、補助的に体質顔料を使用してもよく、体質顔料としては上記クリアインキの場合と同様のものが好ましい。
【0070】
(着色顔料)
上記着色剤は顔料であることが好ましく、バインダー樹脂と着色顔料の質量比率(バインダー樹脂/顔料)は99/1〜10/90であることが好ましい。更には80/20〜20/80であることがより好ましい。なお、着色顔料は、有機顔料、無機顔料であることが好ましく、無機顔料では酸化チタンを含むもの、有機顔料では、有機化合物、有機金属錯体からなるものの使用が好ましい。
【0071】
着色顔料のうち有機顔料は、以下の例には限定されないが、溶性アゾ系、不溶性アゾ系、アゾ系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラキノン系、アンサンスロン系、ジアンスラキノニル系、アンスラピリミジン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、フラバンスロン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系、インダンスロン系、カーボンブラック系などの顔料が挙げられる。また、例えば、カーミン6B、レーキレッドC、パーマネントレッド2B、ジスアゾイエロー、ピラゾロンオレンジ、カーミンFB、クロモフタルイエロー、クロモフタルレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンレッド、インダンスロンブルー、ピリミジンイエロー、チオインジゴボルドー、チオインジゴマゼンタ、ペリレンレッド、ペリノンオレンジ、イソインドリノンイエロー、アニリンブラック、ジケトピロロピロールレッド、昼光蛍光顔料等が挙げられる。
【0072】
着色顔料のうち無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化クロムなどの白色無機顔料が挙げられる。無機顔料の中では酸化チタンの使用が特に好ましい。酸化チタンは、白色を呈し、着色力、隠ぺい力、耐薬品性、耐候性の点から好ましく、印刷性能の観点から該酸化チタンはシリカおよび/またはアルミナ処理を施されているものが好ましい。
【0073】
着色顔料のうち白色以外の無機顔料としては、例えば、アルミニウム粒子、マイカ(雲母)、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられ、アルミニウムは粉末またはペースト状であるが、取扱い性および安全性の面からペースト状で使用するのが好ましく、リーフィングタイプまたはノンリーフィングタイプいずれでもよい。
【0074】
<有機溶剤系印刷インキの製造>有機溶剤系印刷インキは、バインダー樹脂、体質顔料または着色顔料等を有機溶剤中に溶解および/または分散することにより製造することができる。
例えば、顔料、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂等のバインダー樹脂、シリカ粒子および必要に応じて有機溶剤を分散させておき、顔料分散体に、ポリウレタン樹脂、必要に応じて有機溶剤、その他樹脂や添加剤などを配合することにより有機溶剤系印刷インキを製造することができる。また、有機溶剤系印刷インキの粘度や色味は分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度などを適宜調節することにより、調整することができる。分散機としては一般に使用される、例えばローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。サンドミルを用いて製造することが好ましい。
【0075】
有機溶剤系印刷インキの粘度は、20〜500mPa・sの範囲であることが好ましく、30〜300mPa・sであることがなお好ましい。印刷工程において適切な印刷適性が得られるためである。印刷インキの粘度は上記ポリウレタン樹脂その他のバインダー樹脂の量や、有機溶剤量、更には顔料の分散条件にて調節をすることができる。
【0076】
(絵柄インキ)
絵柄インキとは、上記脱離機能を有さない印刷インキをいい、スクリーンインキ、グラビアインキ、フレキソインキ、インクジェットインキ、オフセットインキその他の印刷インキが好適に挙げられ、例えば、特開2005−298618号公報、特開2006−299136号公報、特開2009−249388号公報、特開2013−127038号公報、特開2017−19991号公報、特開2006−131844号公報、特開2013−40248号公報、特開2007−231148号公報、特開2006−257302号公報等に記載されている印刷インキを好適に使用することができる。ただしこれらに限定されない。中でも、グラビアインキ、フレキソインキ、インクジェットインキの使用が好ましく、グラビアインキおよび/またはフレキソインキの使用がなお好ましい。
【0077】
<有機溶剤系印刷インキの印刷>
有機溶剤系印刷インキの印刷法としては、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、ドライオフセット印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷などの印刷法を好適に使用できる。中でもグラビア印刷またはフレキソ印刷であることがなお好ましい。
【0078】
<グラビア印刷>
(グラビア版)グラビア版は金属製の円筒状のものであり、彫刻または腐蝕・レーザーにて凹部が各色用に作製される。彫刻とレーザーは使用に制限は無く、柄に合わせて任意に設定が可能である。線数としては100線〜300線のものが適宜使用され、線数の大きいものほど目の細かい印刷が可能である。印刷層の厚みとしては、0.1μm〜100μmが好ましい。
(印刷機)
グラビア印刷機において一つの印刷ユニットには上記グラビア版およびドクターブレードを備えている。印刷ユニットは多数あり、有機溶剤系印刷インキおよび絵柄インキに対応する印刷ユニットを設定でき、各ユニットはオーブン乾燥ユニットを有する。印刷は輪転により行われ、巻取印刷方式である。版の種類やドクターブレードの種類は適宜選択され、仕様に応じたものが選定できる。
【0079】
<フレキソ印刷>
(フレキソ版)フレキソ印刷に使用される版としてはUV光源による紫外線硬化を利用する感光性樹脂版またはダイレクトレーザー彫刻方式を使用するエラストマー素材版が挙げられる。フレキソ版の画像部の形成方法に関わらず版のスクリーニング線数において75lpi以上のものが使用される。版を貼るスリーブやクッションテープについては任意のものを使用することができる。
(印刷機)
フレキソ印刷機としてはCI型多色フレキソ印刷機、ユニット型多色フレキソ印刷機等があり、インキ供給方式についてはチャンバー方式、2ロール方式が挙げることが出来、適宜の印刷機を使用することができる。
【0080】
<印刷物および積層体>
本発明の実施形態における印刷物および積層体の形態は、限定されるものではないが、以下の態様が好適に挙げられる。
・基材1/脱離層(クリア)/絵柄層
・基材1/脱離層(カラー)/絵柄層
・基材1/脱離層(クリア)/接着剤層/基材2
・基材1/脱離層(カラー)/接着剤層/基材2
・基材1/脱離層(クリア)/絵柄層/接着剤層/基材2
・基材1/脱離層(カラー)/絵柄層/接着剤層/基材2
・絵柄層/脱離層(クリア)/基材1/接着剤層/基材2
・絵柄層/脱離層(カラー)/基材1/接着剤層/基材2
・基材1/脱離層(クリア)/絵柄層/脱離層(クリア)/接着剤層/基材2
・基材1/脱離層(カラー)/絵柄層/脱離層(カラー)/接着剤層/基材2
上記において「クリア」とはクリアインキを表し、「カラー」とはカラーインキを表す。
【0081】
<基材1>
有機溶剤系印刷インキを適用できる基材としては、ポリエチレンおよびポリプロピレンその他のポリオレフィン基材、ポリカーボネート基材、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸その他のポリエステル基材、ポリスチレン基材、AS樹脂もしくはABS樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリアミド基材、ポリ塩化ビニル基材、ポリ塩化ビニリデンの各種基材、セロハン基材、紙基材もしくはアルミニウム箔基材など、もしくはこれらの複合材料からなるフィルム状、またはシート状のものがある。中でも、ガラス転移温度が高いポリエステル基材、ポリアミド基材が好適に用いられる。
【0082】
上記基材は、金属酸化物などを表面に蒸着コート処理および/またはポリビニルアルコールなどコート処理が施されていてもよく、例えば、酸化アルミニウムを基材表面に蒸着させた凸版印刷株式会社製GL−AEや、大日本印刷株式会社製IB−PET−PXB等が挙げられる。さらに、必要に応じて帯電防止剤、紫外線防止剤などの添加剤を処理したものや、基材の表面をコロナ処理あるいは低温プラズマ処理したものなども使用することができる。
【0083】
<基材2>
基材2は基材1と同様のものが挙げられ、同一でも異なっていてもよい。なお、熱可塑性基材(シーラントと称する場合がある)であることが好ましく、無延伸ポリエチレン基材、無延伸ポリプロピレン基材、無延伸ポリエステル基材等が好ましい。
【0084】
<接着剤層>
基材1と基材2とを貼り合わせるには接着剤を用いたラミネート加工工程を必要とする。ラミネート加工の代表例として、エクストルジョンラミネート法、ドライラミネート法、ノンソルベントラミネート法等が挙げられる。ラミネート加工は、印刷物のいずれかの面に接着剤層を塗工・乾燥等により具備させ、更に基材2と圧着して積層する方法である。接着剤層は、以下に限定されないが、アンカー剤層、溶融樹脂層、ウレタン系接着剤層、アクリル系接着剤層などが好適に挙げられ、溶融押し出し法や、塗工法等により得られる。例えば、ウレタン系接着剤としてはポリオールおよびイソシアネート硬化剤の混合物からなる2液型接着剤などが好適であり、ポリオールとしてはポリエステル系、ポリエーテル系などが挙げられる。具体的には東洋モートン株式会社製TM−250HV/CAT−RT86L−60、TM−550/CAT−RT37、TM−314/CAT−14B等が挙げられる。
【0085】
(脱離工程)
本発明の実施形態におけるリサイクル基材製造方法は、印刷物またはラミネート積層体を塩基性水溶液(アルカリ水溶液)に浸漬する工程を含む。本発明の実施形態における脱離層等(脱離層、絵柄層、その他の各層)の除去条件として、アルカリ水溶液の濃度としては0.5〜15質量%であることが好ましく、1〜5質量%であることがなお好ましい。濃度が上記範囲内にあることで、アルカリ水溶液は脱離に充分なアルカリ性を保持することができる。
脱離において、印刷物にあってはその印刷層表面、ラミネート積層体にあっては端部分からアルカリ水溶液が浸透して脱離層と接触して脱離層が溶解するため脱離ができる。より好ましくは印刷物または積層体の断面に脱離層を有している場合であり、より短時間で絵柄インキ層・基材等を脱離することができる。
【0086】
塩基性水溶液への浸漬時間としては1分〜12時間、更に好ましくは1分〜6時間である。その後水洗・乾燥してリサイクル基材を得ることができる。基材1、基材2などの基材から脱離層とそれに伴う絵柄層・接着剤層などの除去率は、脱離層の脱離能が面方向に一様であるならば(部分硬化などしていない)、基材の脱離層のうち好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上である。なお、浸漬時には撹拌をしながら脱離を行う事が好ましい。例えば、撹拌装置回転羽根で撹拌する場合、80〜250rpmであることが好ましく、80〜200rpmであることがなお好ましい。
【0087】
浸漬時の塩基性水溶液の温度は25〜110℃が好ましく、30〜90℃であることがより好ましく、30〜80℃であることが更に好ましい。浸漬時間としては1分〜24時間、更に好ましくは1分〜12時間である。その後プラスチック基材(リサイクル基材)を水洗・乾燥したときの、脱離層とそれに伴う絵柄インキ層・接着剤層等の除去率は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上である。なお、表刷り印刷形態の場合はアルカリ水溶液の濃度としては0.5〜15質量%であることが好ましく、浸漬温度は30〜80℃が好ましく、浸漬時間としては1〜12時間であることが好ましい。裏刷り(ラミネート積層体)ではアルカリ水溶液の濃度としては1〜15質量%であることが好ましく、浸漬温度は30〜80℃が好ましく、浸漬時間としては1〜12時間であることが好ましい。
【0088】
アルカリ性水溶液の使用量は、印刷物または積層体の質量に対して100〜100万倍量が好ましい。また、効率向上のために循環式の洗い流し、印刷物または積層体の粉砕、撹拌を行ってもよい。
【0089】
本発明の実施形態によれば、印刷物あるいは積層体に対し、アルカリ水溶液中で脱離層の除去を行い、基材を水洗・乾燥することで、再生プラスチック基材(リサイクル基材)を得ることができる。また、再生プラスチック基材を押出機等によりペレット状に再生して再利用することができる。
【0090】
<実施形態の例>
本発明の好ましい実施形態の例を以下に挙げる。本発明の実施形態は以下の例に限定されない。
【0091】
[1]基材1、脱離層、並びに、絵柄層および/または基材2をこの順に有する印刷物ないし積層体から、絵柄層および/または基材2を剥離させて、基材1をリサイクルするための脱離層を形成することに用いられる有機溶剤系印刷インキであって、
前記有機溶剤系印刷インキは、バインダー樹脂として、酸価15〜70mgKOH/g、かつ、水酸基価1〜35mgKOH/gであるポリウレタン樹脂を含有する、有機溶剤系印刷インキ。
【0092】
[2]ポリウレタン樹脂は、ポリオール由来の構成単位を含み、前記ポリオールは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、およびポリカーボネートポリオールから選ばれる少なくとも一種を含む、上記有機溶剤系印刷インキ。
【0093】
[3]基材1、脱離層、並びに、絵柄層および/または基材2をこの順に有する印刷物ないし積層体から、絵柄層および/または基材2を剥離させて、基材1をリサイクルするための脱離層を形成することに用いられる有機溶剤系印刷インキであって、
前記有機溶剤系印刷インキは、バインダー樹脂として酸価15〜70mgKOH/gのポリウレタン樹脂を含有し、前記ポリウレタン樹脂は、ポリオール由来の構成単位を含み、
前記ポリオールは、エステル結合濃度4〜11mmol/gであるポリエステルポリオールを50質量%以上含む、有機溶剤系印刷インキ。
【0094】
[4]有機溶剤系印刷インキは、有機溶剤系クリアインキである、上記有機溶剤系印刷インキ。
【0095】
[5]ポリウレタン樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、6以下である、上記有機溶剤系印刷インキ。
【0096】
[6]ポリエステルポリオールは、アルキレン基(R
1)の両端にカルボキシル基を有する二塩基酸と、アルキレン基(R
2)の両端に水酸基を有するジオールと、の縮合物であり、
前記二塩基酸の有するカルボキシル基同士を直鎖で結ぶ炭素数、および、前記ジオールの有する水酸基同士を直鎖で結ぶ炭素数の、いずれか一方は、炭素数1〜6であり、
前記アルキレン基(R
1)および(R
2)は、置換もしくは未置換のアルキレン基である、上記有機溶剤系印刷インキ。
【0097】
[7]前記二塩基酸の有するカルボキシル基同士を直鎖で結ぶ炭素数、および、前記ジオールの有する水酸基同士を直鎖で結ぶ炭素数の、両方が、炭素数1〜6である、上記有機溶剤系印刷インキ。
【0098】
[8]有機溶剤系印刷インキは、更に、セルロース系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ロジン系樹脂、アクリル樹脂、スチレン−マレイン酸共重合樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂を含有する、上記有機溶剤系印刷インキ。
【0099】
[9]有機溶剤系印刷インキは、更に、体質顔料を含有する、上記有機溶剤系印刷インキ。
【0100】
[10]基材1上に、上記有機溶剤系印刷インキから構成された脱離層を有する印刷物。
【0101】
[11]少なくとも基材1、上記有機溶剤系印刷インキからなる脱離層および基材2を有する積層体。
【0102】
[12]印刷物を塩基性水溶液に浸漬する工程を含むリサイクル基材製造方法であって、
前記印刷物は、基材1と、請求項1〜9いずれかに記載の有機溶剤系印刷インキにより形成された脱離層と、絵柄層と、をこの順に有してなり、
前記塩基性水溶液は、塩基性化合物を塩基性水溶液全体の0.5〜10質量%含み、かつ浸漬時の塩基性水溶液の水温は30〜120℃である、リサイクル基材製造方法。
【0103】
[13]積層体を塩基性水溶液に浸漬する工程を含むリサイクル基材製造方法であって、
前記積層体は、基材1と基材2の間に、請求項1〜9いずれかに記載の有機溶剤系印刷インキにより形成された脱離層、並びに、絵柄層および/または接着剤層を有してなり、
前記塩基性水溶液は、塩基性化合物を塩基性水溶液全体の0.5〜10質量%含み、かつ浸漬時の塩基性水溶液の水温は30〜120℃である、リサイクル基材製造方法。
【実施例】
【0104】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における部および%は、特に注釈の無い場合、質量部および質量%を表わす。
【0105】
(分子量および分子量分布)
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定を行い、ポリスチレンを標準物質に用いた換算分子量として求めた。
GPC装置:昭和電工社製 Shodex GPC−104
カラム:下記カラムを直列に連結して使用した。
昭和電工社製 Shodex LF−404 2本
昭和電工社製 Shodex LF−G
検出器:RI(示差屈折計)
測定条件:カラム温度40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:0.3mL/分
【0106】
(酸価および水酸基価)
以下において、JISK0070(1992)に記載の方法に従って酸価および水酸基価を測定した。
【0107】
[合成例1](ポリウレタン樹脂P1の作製)
還流冷却管、滴下漏斗、ガス導入管、撹拌装置、及び温度計を備えた反応器中で窒素ガスを導入しながら、PPA(数平均分子量2000のポリ(プロピレングリコール)アジペートジオール)を198.0部、2,2−ジメチロールブタン酸(DMBA)13.3部、イソホロンジイソシアネート(IPDI)76.0部、メチルエチルケトン(MEK)200部を仕込み、90℃で5時間反応させて末端イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの樹脂溶液を得た。得られた末端イソシアネート基ウレタンプレポリマー樹脂溶液に対し、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール(AEA)12.2部、エタノールアミン(MEA)0.4部、イソプロピルアルコール(IPA)350部を混合したものを室温で60分かけて滴下し、更に70℃で3時間反応させた。更にMEK150部を用いて固形分を調整した。
固形分30%、重量平均分子量33000、Mw/Mn=2.9、酸価16.8mgKOH/g、水酸基価23.2mgKOH/gのポリウレタン樹脂(P1)溶液を得た。なお、P1中のポリオール中のポリエステルポリオール比率は100質量%である。
【0108】
なお、以下に製造したポリウレタン樹脂は、各表に記載のMw/Mnおよび重量平均分子量となるように滴下量、滴下速度、温度調節および撹拌速度などの合成条件により調節した。
【0109】
[合成例2〜14,16](ポリウレタン樹脂P2〜P14,16の作製)
表1−1に記載の原料および仕込み比率を使用した以外は合成例1と同様の操作で、ポリウレタン樹脂(P2〜P14,16)を得た。Mw、Mw/Mnおよび酸価等の性状は表1−2に記した。
合成例1で使用していない表1−1に記載された原料化合物の略称は以下に表されるものである。
PMPA:数平均分子量2000のポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオール)アジペートジオール
PCL:数平均分子量2000のポリカプロラクトンジオール(ダイセル社製 プラクセル220 エステル結合濃度:8.3mmol/g)
PC:3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=9/1で有する、数平均分子量2000、25℃で液状のポリカーボネートジオール
PPG:数平均分子量2000のポリプロピレングリコール
IPDA:イソホロンジアミンDBA:ジ−n−ブチルアミン
【0110】
[合成例15](ポリウレタン樹脂P15の作製)
還流冷却管、滴下漏斗、ガス導入管、撹拌装置、及び温度計を備えた反応器中で窒素ガスを導入しながら、PPAを212.1部、DMBAを27.8部、IPDIを60.1部、MEKを200部仕込み、90℃で7時間反応させた。その後、MEK150部、IPA350部で固形分調整を行い、固形分30%、重量平均分子量40000、Mw/Mn=3.5、酸価35.1mgKOH/g、水酸基価8.7mgKOH/gのポリウレタン樹脂(P15)溶液を得た。なお、P15中のポリオール中のポリエステルポリオール比率は100質量%である。
【0111】
[合成例A1](ポリエステルポリオールA1の合成)
攪拌装置、温度計、分水器および窒素ガス導入管を備えた丸底フラスコに、1,10−デカンジカルボン酸54.3部、1,10−デカンジオール45.7部、テトラブチルチタネート0.002部を仕込み、窒素気流下に230℃で縮合により生じる水を除去しながらエステル化を8時間行った。ポリエステルの酸価が15以下になったことを確認後、真空ポンプにより徐々に真空度を上げ反応を終了した。これにより数平均分子量2000、水酸基価56.1mgKOH/g、酸価0.3mgKOH/gのポリエステルポリオ−ル(A1)を得た。エステル結合濃度は4.5mmol/gであり、R
1の直鎖炭素数は10、R
2の直鎖炭素数は10である。
【0112】
[合成例A2〜A17](ポリエステルポリオールA2〜A17の合成)
表2に記載の原料および仕込み比率を用いた以外は、合成例A1と同様の方法で、ポリエステルポリオールA2〜A17を得た。R
1、R
2の直鎖炭素数およびエステル結合濃度も表2に示した。
【0113】
[合成例1a](ポリウレタン樹脂U1の作製)
還流冷却管、滴下漏斗、ガス導入管、撹拌装置、及び温度計を備えた反応器中で窒素ガスを導入しながら、ポリエステルポリオールA1を158.7部、PPG15.9部、DMBA27.6部、IPDI88.2部、MEK200部を仕込み、90℃で5時間反応させて末端イソシアネート基プレポリマーの樹脂溶液を得た。得られた末端イソシアネート基プレポリマーに対し、AEA9.1部、MEA0.5部、IPA350部を混合したものを室温で60分かけて滴下し、更に70℃で3時間反応させた。更にMEK150部を用いて固形分を調整した。
固形分30%、重量平均分子量45000、Mw/Mn=3.9、酸価34.9mgKOH/gのポリウレタン樹脂(U1)溶液を得た。なお、ウレタン結合濃度は1.83mmol/g、ウレア結合濃度は0.61mmol/g、ウレタン結合濃度とウレア結合濃度の合計は2.43mmol/gであった。またポリオール中のポリエステルポリオール比率は90.9質量%であった。
【0114】
[合成例2a〜25a](ポリウレタン樹脂U2〜U25の作製)
表2−1に記載の原料および仕込み比を使用した以外は合成例1aと同様の操作で、ポリウレタン樹脂(U2〜U25)を得た。Mw、Mw/Mnおよび酸価、結合濃度等の性状は表2−2に記した。
【0115】
[合成例26a](ポリウレタン樹脂U26の作製)
還流冷却管、滴下漏斗、ガス導入管、撹拌装置、及び温度計を備えた反応器中で窒素ガスを導入しながら、ポリエステルポリオ−ルA17を141.1部、PPGを14.1部、DMBA27.7部、IPDI92.4部、MEK200部を仕込み、90℃で5時間反応させて末端イソシアネート基プレポリマーの樹脂溶液を得た。次いでAEA9.2部、IPDA15.0部、MEA0.4部、IPA350部を混合したものへ、得られた末端イソシアネート基プレポリマーの樹脂溶液を室温で60分かけて滴下し、更に70℃で3時間反応させた。更にMEK150部を用いて固形分を調整した。
固形分30%、重量平均分子量35000、Mw/Mn=3.3、酸価35.0mgKOH/gのポリウレタン樹脂(U26)溶液を得た。なお、ウレタン結合濃度は1.76mmol/g、ウレア結合濃度は1.01mmol/g、ウレタン結合濃度とウレア結合濃度の合計は2.77mmol/gであった。またポリオール中のポリエステルポリオール比率は90.9質量%であった。
【0116】
[比較合成例1〜4](ポリウレタン樹脂PP1〜4の作製)
表3−1に記載の原料および仕込み比を用いた以外は合成例1aと同様の操作で、ポリウレタン樹脂(PP1〜4)溶液を得た。
【0117】
[比較合成例5](ポリウレタン樹脂PP5の作製)
還流冷却管、滴下漏斗、ガス導入管、撹拌装置、及び温度計を備えた反応器中で窒素ガスを導入しながら、PPAを132.7部、PPGを29.5部、DMBAを27.7部、IPDIを96.5部、MEKを200部仕込み、90℃で5時間反応させて末端イソシアネート基プレポリマーの樹脂溶液を得た。得られた末端イソシアネート基プレポリマーに対し、AEA13.6部、IPA150部を混合したものを室温で60分かけて滴下し、次に、28%アンモニア水10.0部及びイオン交換水690部を上記溶剤型ポリウレタン樹脂溶液に徐々に添加して中和することにより水溶化し、さらにMEK及びIPAを減圧留去することで、酸価35.0mgKOH/g、重量平均分子量43000である、固形分30%の水性ポリウレタン樹脂(PP5)水溶液を得た。ただし、PP5における酸価とは中和前の値である。
【0118】
[比較合成例6〜7](ポリウレタン樹脂PP6〜7の作製)
表3−1に記載の原料および仕込み比を用いた以外は合成例1aと同様の操作で、ポリウレタン樹脂(PP6〜7)溶液を得た。
【0119】
[比較合成例B1](ポリエステルポリオールB1の合成)
1,10−デカンジカルボン酸54.3部をエイコサン二酸53.1部に変更し、また、1,10−デカンジオール45.7部を1,16−ヘキサデカンジオールに変更した以外は合成例A1と同様の方法により数平均分子量2000、水酸基価56.1mgKOH/g、酸価0.3mgKOH/gのポリエステルポリオ−ルB1を得た。エステル結合濃度は2.9mmol/gであり、R
1の直鎖炭素数は18、R
2の直鎖炭素数は16である。
【0120】
[比較合成例8](ポリウレタン樹脂PP8の作製)
還流冷却管、滴下漏斗、ガス導入管、撹拌装置、及び温度計を備えた反応器中で窒素ガスを導入しながら、ポリエステルポリオールB1を143.1部、PPGを31.8部、DMBAを27.7部、IPDIを88.4部、MEKを200部仕込み、90℃で5時間反応させて末端イソシアネート基プレポリマーの樹脂溶液を得た。得られた末端イソシアネート基プレポリマーに対し、AEA9.1部、IPA150部を混合したものを室温で60分かけて滴下し、次に、28%アンモニア水10.0部及びイオン交換水690部を上記溶剤型ポリウレタン樹脂溶液に徐々に添加して中和することにより水溶化し、さらにMEK及びIPAを減圧留去することで、酸価34.9mgKOH/g、重量平均分子量48000である、固形分30%の水性ポリウレタン樹脂(PP8)水溶液を得た。ただし、PP8における酸価とは中和前の値である。
【0121】
各ポリウレタン樹脂PP1〜PP8の製造に用いた原料および配合比率は表3−1に示した。また、分子量、分子量分布、酸価、水酸基価、ポリエステルポリオール比率、および結合数等の値は表3−2に示した。
【0122】
[実施例1](クリアインキS1の作製)
ポリウレタン樹脂P1溶液(固形分30%)を87部、酢酸エチル(EA)5部、IPA5部、シリカ(水澤化学社製 平均粒子径3.8μmの親水性シリカ粒子 P−73)3部を、ディスパーを用いて撹拌混合して、クリアインキS1を得た。
【0123】
[実施例2〜13、15〜23](クリアインキS2〜S13、S15〜S23の作製)
表1−3および表1−4に示した原料および配合比率を使用した以外は実施例1と同様の手法により、クリアインキS2〜S13およびS15〜S23を得た。なお、実施例1で使用していない原料の表中の略称は以下を示す。
塩化ビニル系樹脂:塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(塩化ビニル:酢酸ビニル:ビニルアルコール=88:1:11)(固形分30%)
アクリル系樹脂:重量平均分子量40000、酸価60mgKOH/gのスチレン−アクリル共重合樹脂(固形分30%溶液)
ポリエチレン粒子:三井化学(株)製 ハイワックス220P
硫酸バリウム:堺化学工業(株)製 バリエースB30
【0124】
[実施例14](カラーインキS14の作製)
銅フタロシアニン藍(トーヨーカラー社製 フタロシアニン LIONOL BLUE FG−7358−G)10部、ポリウレタン樹脂(P5)40部、EA3部、IPA3部を撹拌混合し、更にサンドミルで20分顔料分散した後、更にポリウレタン樹脂溶液(P10)40部、EA2部、IPA2部を攪拌混合し、藍色カラーインキ(S14)を得た。なお、表1−3および表1−4に示した各成分については合計の値を示した。
【0125】
[実施例24〜26](カラーインキS24〜S26の作製)
表1−4に示した原料および配合比率を使用した以外は実施例14と同様の手法により、カラーインキS24〜26を得た。
【0126】
(実施例1a〜26a)(クリアインキT1〜T26の製造)
表2−3および表2−4に示した原料および配合比率を使用した以外は実施例1と同様の手法により、クリアインキT1〜T26を得た。
【0127】
[実施例27a〜29a](カラーインキT27〜T29の作製)
表2−3および表2−4に示した原料および配合比率を使用した以外は実施例14と同様の手法により、カラーインキT27〜T29を得た。
【0128】
(比較例1〜8)(インキSS1〜SS8の作製)
表3−3に示した原料を記載された配合率を用いた以外は実施例1と同様の手法によりインキSS1〜SS9を得た。
【0129】
[比較例9](カラーインキSS9の作製)
表3−3に示した原料および配合比率を使用した以外は実施例14と同様の手法により、カラーインキSS9を得た。
【0130】
<クリアインキS1を用いた印刷物の作成>
(印刷構成A:PET基材/脱離層/絵柄層)
クリアインキS1をEA/IPA混合溶剤(質量比70/30)でザーンカップ#3(離合社製)15秒(25℃)になるように希釈した。その後、コロナ処理ポリエチレンテレフタレート(PET)基材(厚さ12μm)に対し、クリアインキS1、およびPANNECO AM 92墨(東洋インキ社製 有機溶剤系グラビアインキ)を、版深35μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機にてこの順で印刷し、50℃にて乾燥し、PET基材/脱離層(S1)/絵柄層である表刷り印刷物を得た。
【0131】
<実施例または比較例で得られた各インキを用いた印刷物の作製>
クリアインキS1以外の、上記実施例または比較例で得られた各インキについてもクリアインキS1を用いた印刷物の作製と同様の手順で、同様の印刷構成を有する印刷物をそれぞれ作製した。
【0132】
<クリアインキS1を用いたラミネート積層体の作製>
(積層構成A:OPP基材/脱離層/絵柄層/接着剤層/VMCPP基材)
クリアインキS1をEA/IPA混合溶剤(質量比70/30)でザーンカップ#3(離合社製)15秒(25℃)になるように希釈した。その後、コロナ処理延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(厚さ20μm)に対し、クリアインキS1、およびリオアルファS R92墨(東洋インキ社製 有機溶剤系グラビアインキ)を、版深35μmのグラビア版を備えたグラビア校正2色機にてこの順で印刷し、各ユニットで50℃にて乾燥し、OPP基材/脱離層(S1)/絵柄層の順で有する印刷物を得た。
ドライラミネート機を用いて、この印刷物の絵柄層上にドライラミネート用接着剤(東洋モートン社製TM−340V/CAT−29B)を塗工し、ライン速度40m/分にてVMCPP(アルミニウム蒸着無延伸ポリプロピレンフィルム 厚さ25μm)と貼り合わせ、OPP基材/脱離層(S1)/絵柄層/接着剤層/VMCPP基材の順で積層されたラミネート積層体を得た。
【0133】
<実施例または比較例で得られた各インキを用いたラミネート積層体の作製>
クリアインキS1以外の、上記実施例または比較例で得られた各インキについても上記と同様の手順で、同様のラミネート構成を有するラミネート積層体をそれぞれ得た。
【0134】
<クリアインキS1を用いた包装袋の作製>
(積層構成B:PET基材/脱離層/絵柄層/接着剤層/CPP基材)
クリアインキS1をEA/IPA混合溶剤(質量比70/30)でザーンカップ#3(離合社製)15秒(25℃)になるように希釈した。その後、コロナ処理ポリエチレンテレフタレート(PET)基材(厚さ12μm)に対し、クリアインキS1、およびリオアルファS R92墨(東洋インキ社製)を、版深35μmのグラビア版を備えたグラビア校正2色機にてこの順で印刷し、各ユニットで50℃にて乾燥し、PET基材/脱離層(S1)/絵柄層の順で有する印刷物を得た。
ドライラミネート機を用いて、この印刷物の絵柄層上にドライラミネート用接着剤(東洋モートン社製TM−250HV/CAT−RT86L−60)を塗工し、ライン速度40m/分でCPP(無延伸ポリプロピレン基材 厚さ30μm)と貼り合わせ、PET基材/脱離層(S1)/絵柄層/接着剤層/CPPの順で積層されたラミネート積層体を得た。当該ラミネート積層体について、15cm×25cmに切出し、180℃にて縁部分を熱圧着(ヒートシールという)して包装袋を得た。
【0135】
<実施例または比較例で得られた各インキを用いた包装袋の作製>
クリアインキS1以外の、上記実施例または比較例で得られた各インキについても上記と同様の手順で、同様のラミネート構成を有する包装袋をそれぞれ得た。
【0136】
<特性評価>
上記実施例および比較例において得られた有機溶剤系印刷インキ、それらの印刷物、ラミネート積層体および包装袋を用いて以下に記載の評価を行った。評価結果については表1−3および表1−4、表2−3および表2−4、並びに、表3−3に示した。
【0137】
<表刷り印刷物における脱離性評価>
上記実施例および比較例で作製した印刷構成Aの印刷物を、4cm×4cmに切出し、2%の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液50gに浸し、40℃にて撹拌して水洗・乾燥した後、PET基材からの絵柄層の剥離性を評価した。
5(優):撹拌20分以内に絵柄層等印刷層が100%PETフィルムから剥離
4(良):撹拌20分を超え1時間以内に絵柄層等印刷層が100%PETフィルムから
剥離
3(可):撹拌1時間を超え12時間以内に絵柄層等印刷層が80%以上100%以下PETフィルムから剥離
2(不可):撹拌12時間で絵柄層等印刷層の20%以上80%未満がPETフィルムから剥離。
1(劣):撹拌12時間で絵柄層等印刷層20%未満がPETフィルムから剥離。
3、4および5は実用上問題がない範囲である。
【0138】
<ラミネート積層体における脱離性評価>
上記実施例および比較例で作製した積層構成Aのラミネート積層体について、4cm×4cmに切出し、2%の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液50gに浸し、40℃、にて撹拌して水洗・乾燥した後、絵柄層のOPPフィルムからの剥離性を評価した。
5(優):撹拌20分以内に絵柄層等印刷層が100%OPPフィルムから剥離
4(良):撹拌20分を超え1時間以内に絵柄層等印刷層が100%OPPフィルムから剥離
3(可):撹拌1時間を超え12時間以内に絵柄層等印刷層が80%以上100%以下OPPフィルムから剥離
2(不可):撹拌12時間で絵柄層等印刷層の20%以上80%未満がOPPフィルムから剥離。
1(劣):撹拌12時間で絵柄層等印刷層20%未満がOPPフィルムから剥離。
3、4および5は実用上問題がない範囲である。
【0139】
<耐レトルト性評価>
上記実施例および比較例で作製した積層構成Bの包装袋について、120℃80分のレトルト試験を行い、レトルト直後のラミネート強度とレトルト前のラミネート強度とを比較評価した。
5(優):レトルト前後でラミネート強度低下が全く見られず、レトルト直後のラミネート強度が1.0N/15mm以上のもの
4(良):レトルト前後で1.0N/15mm未満のラミネート強度低下が見られるが、レトルト直後のラミネート強度が1.0N/15mm以上のもの
3(可):レトルト前後で1.0N/15mm以上のラミネート強度低下が見られるが、レトルト直後のラミネート強度が1.0N/15mm以上のもの
2(不可):レトルト前後で1.0N/15mm以上のラミネート強度低下が見られ、レトルト直後のラミネート強度が0.5N/15mm以上、1.0N/15mm未満のもの1(劣):レトルト前後で1.0N/15mm以上のラミネート強度低下が見られ、レトルト直後のラミネート強度が0.5N/15mm未満のもの
3、4および5は実用上問題がない範囲である。
【0140】
<乾燥性評価>
コロナ処理PETフィルム(厚さ12μm)に、温度25℃において、バーコーターNo.4を用いて上記実施例および比較例で得た有機溶剤系印刷インキを塗工した。塗工直後から5秒毎に指触し、べたつき(タックという)がなくなる時を乾燥の終点とし、乾燥性の評価をした。バーコーターは、第一理化株式会社製のミヤバーNo.4を用いた。
5(優):15秒未満で乾燥する。
4(良):15秒以上30秒未満で乾燥する。
3(可):30秒以上45秒未満で乾燥する。
2(不可):45秒以上60秒未満で乾燥する。
1(劣):60秒以上で乾燥する。
3、4および5は実用上問題がない範囲である。
【0141】
<表刷り印刷物における基材密着性(テープ密着性)評価>
上記実施例および比較例で作製した印刷構成Aの印刷物について、ニチバン社製セロテープ(12mm幅)を印刷層上に貼り、テープをゆっくり引き剥がし、途中から急激に引き剥がした時の、インキ被膜の剥離程度を評価した。
5(優):急激に剥がしてもインキ被膜が全く剥離しない。
4(良):急激に剥がした部分のうち25%未満の面積のインキ被膜が剥離する。
3(可):急激に剥がした部分のうち25%以上75%未満の面積のインキ被膜が剥離する。
2(不可):急激に剥がした部分のうち75%以上の面積のインキ被膜が剥離する、またはゆっくり剥がした部分のうちインキ被膜の一部が剥離する
1(劣):ゆっくり剥がした部分のインキ被膜が全面剥離する
3、4および5は実用上問題がない範囲である。
【0142】
<実施例27>
上記評価においてカラーインキS14を使用し、絵柄層は不使用とした以外は同様の方法にて印刷構成Aの印刷物、積層構成Aのラミネート積層体および積層構成Bの包装袋を作製した。以下に印刷構成および積層構成を示す。
(印刷物の印刷構成)
PET基材/脱離層(S14)
(ラミネート積層体の積層構成)
OPP基材/脱離層(S14)/接着剤層/VMCPP基材
(包装袋の積層構成)
PET基材/脱離層(S14)/接着剤層/CPP基材
それぞれを使用して上記と同様の特性評価を行ったところ、表刷り印刷物における脱離性評価:4、ラミネート積層体における剥脱離評価:3、テープ密着性評価:5、耐レトルト性評価:5、乾燥性評価:5であった。
【0143】
上記の評価結果より、本発明の実施形態の有機溶剤系印刷インキを用いれば、良好な印刷加工適性を有し、表刷り構成およびラミネート構成での積層体において、アルカリ水溶液によってプラスチックフィルムからインキ等を脱離することができ、かつラミネート構成においては良好なレトルト適性を発現することが示された。さらに、本発明の実施形態の有機溶剤系印刷インキを用いれば、表刷り構成において、良好な基材密着性を発現することが示された。
【0144】
【表1-1】
【0145】
【表1-2】
【0146】
【表1-3】
【0147】
【表1-4】
【0148】
【表2】
【0149】
【表2-1】
【0150】
【表2-2】
【0151】
【表2-3】
【0152】
【表2-4】
【0153】
【表3-1】
【0154】
【表3-2】
【0155】
【表3-3】
【課題】本発明は、良好な印刷加工適性を有し、表刷り構成およびラミネート構成での積層体において、アルカリ水溶液によってプラスチックフィルムからインキ等を脱離することができ、かつラミネート積層体においては良好なレトルト適性を発現する有機溶剤系印刷インキを提供することを目的とする。
前記印刷インキは、バインダー樹脂として、酸価15〜70mgKOH/g、かつ、水酸基価1〜35mgKOH/gであるポリウレタン樹脂を含有する、有機溶剤系印刷インキ。