特許第6631979号(P6631979)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6631979
(24)【登録日】2019年12月20日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】ワイヤーロープ
(51)【国際特許分類】
   D07B 1/06 20060101AFI20200106BHJP
【FI】
   D07B1/06 Z
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-94523(P2018-94523)
(22)【出願日】2018年5月16日
(62)【分割の表示】特願2016-563867(P2016-563867)の分割
【原出願日】2016年5月11日
(65)【公開番号】特開2018-168521(P2018-168521A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2018年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111523
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 良文
(72)【発明者】
【氏名】橋本 貴弥
【審査官】 斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−256792(JP,A)
【文献】 特開平11−309509(JP,A)
【文献】 特開平06−184965(JP,A)
【文献】 特開平08−311788(JP,A)
【文献】 特開2015−137428(JP,A)
【文献】 特開昭57−195948(JP,A)
【文献】 特開平10−305308(JP,A)
【文献】 特開2001−226888(JP,A)
【文献】 特開2004−124342(JP,A)
【文献】 実開昭55−163528(JP,U)
【文献】 実開昭54−112947(JP,U)
【文献】 特開昭55−001317(JP,A)
【文献】 特開平07−003675(JP,A)
【文献】 中国実用新案第201351246(CN,Y)
【文献】 特開昭62−041387(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2436808(EP,A1)
【文献】 国際公開第2015/020571(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0201047(US,A1)
【文献】 特表2002−512730(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0233587(US,A1)
【文献】 特開2006−156346(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0130905(US,A1)
【文献】 特表2015−523475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D07B 1/00 − 9/00
A61M 25/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金属素線を巻回して形成されたワイヤーロープにおいて、
前記複数の金属素線のうちの1本が、前記ワイヤーロープの中心に配置されたステンレス鋼の芯線であり
他の前記複数の金属素線が、前記芯線の外側に配置され、それぞれが前記芯線に接触する、ステンレス鋼またはタングステンの側線であり
前記複数の金属素線のうち前記芯線のみが、その断面における外周の硬度がその断面における中心の硬度よりも高い硬度分布を有することを特徴とするワイヤーロープ。
【請求項2】
前記芯線及び前記複数の側線の断面を円形としたことを特徴とする請求項1に記載のワイヤーロープ。
【請求項3】
前記芯線の断面を円形とし、前記複数の側線の断面を略台形状としたことを特徴とする請求項1に記載のワイヤーロープ。
【請求項4】
請求項3に記載のワイヤーロープを複数本撚って形成したことを特徴とするワイヤーロープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の金属素線からなるワイヤーロープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の金属素線を撚り合わせて構成されたワイヤーロープが知られている。ワイヤーロープは、一般に、一本の金属素線に比べ、耐衝撃性に優れ、柔軟性に富む等の利点がある。また、ワイヤーロープは、通常、繰り返し折り曲げされることから、そのような使用状態において耐久性に富むことが望ましい。
【0003】
例えば、特許文献1には、最外アルミ撚線層14の内側の撚線間隙にグリース6を充填させ、寿命を向上させたアルミ撚線(ワイヤーロープ)が記載されている(図1等参照)。
【0004】
また、特許文献2には、金属素線16の表面に凸凹面を形成し、凸凹面が形成された複数本の金属素線16を撚り合わせて素撚り線17を形成し、その素撚り線17を複数本撚り合わせた後、その周りに樹脂コーティング18を施し、樹脂コーティング18と素撚り線17との間にグリスを充填し、寿命を向上させた撚り線ワイヤーロープが記載されている(図2等参照)。
【0005】
さらに、引用文献3には、側ストランドに異形加工を施し、芯ストランドと側ストランドとを面接触させ、芯ストランド・側ストランド間に潤滑油を封止し、耐摩耗性等を向上させたインナーワイヤーロープが記載されている(図1等参照)。
【0006】
しかしながら、引用文献1乃至引用文献3に記載のワイヤーロープは、ワイヤロープ内にグリスを充填していることから、ワイヤーロープの耐久性は向上するものの、ワイヤーロープ製造の際には常にグリスを充填させる工程が必要であった。
【0007】
また、引用文献1乃至引用文献3に記載のワイヤーロープは、ワイヤロープ内にグリスを充填していることから、これらのワイヤーロープを、患者の体内に挿入される医療装置で使用することができず、医療装置で使用する為に、グリスを使用せずに耐久性を向上させたワイヤーロープの開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−327254号公報
【特許文献2】特開平8−144182号公報
【特許文献3】特開2004−124342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、内部にグリスを使用せずに耐久性を向上させたワイヤーロープ、特に、患者の体内に挿入される医療装置に使用可能であって、耐久性を向上させたワイヤーロープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するために、本発明の第1の態様は、複数の金属素線を巻回して形成されたワイヤーロープにおいて、前記複数の金属素線の内、少なくとも1本の特殊金属素線は、その断面における外周の硬度が、その断面における中心の硬度よりも高いことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の第2の態様は、第1の態様の発明において、前記特殊金属素線を中心に配置したことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の第3の態様は、第2の態様の発明において、前記複数の金属素線は、前記特殊金属素線と、その特殊金属素線に接触する複数の側金属素線のみからなることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の第4の態様は、第3の態様の発明において、前記特殊金属素線の断面を円形とし、前記複数の側金属素線の断面を略台形状としたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の第5の態様は、第4の態様のワイヤロープを複数本撚って形成したことを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明の第6の態様は、第1の態様の発明において、複数の前記特殊金属素線を撚った撚線を中心に配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の態様の発明によれば、複数の金属素線を巻回して形成されたワイヤーロープにおいて、複数の金属素線の内、少なくとも1本の特殊金属素線は、その断面における外周の硬度が、その断面における中心の硬度よりも高いので、内部にグリスを使用せずに医療装置に使用可能であって、耐久性を向上させる効果を奏する。
【0017】
また、第2の態様の発明によれば、第1の態様の発明において、特殊金属素線をワイヤーロープの中心に配置したので、第1の態様の発明の効果に加え、耐久性をさらに向上させる効果を奏する。
【0018】
また、第3の態様の発明によれば、第2の態様の発明において、複数の金属素線は、特殊金属素線と、その特殊金属素線に接触する複数の側金属素線のみからなるので、第2の態様の発明の効果に加え、耐久性をさらに向上させる効果を奏する。
【0019】
また、第4の態様の発明によれば、第3の態様の発明において、特殊金属素線の断面を円形とし、複数の側金属素線の断面を略台形状としたので、第3の態様の発明の効果に加え、耐久性をさらに向上させる効果を奏する。
【0020】
また、第5の態様の発明によれば、ワイヤーロープを、第4の態様のワイヤロープを複数本撚って形成したので、耐久性をさらに向上させる効果を奏する。
【0021】
さらに、第6の態様の発明によれば、第1の態様の発明において、複数の前記特殊金属素線を撚った撚線を中心に配置したので、第1の態様の発明の効果に加え、柔軟性を向上させる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態のワイヤロープの断面図である。
図2】第1実施形態のワイヤロープに使用する特殊金属素線断面の第1の硬度分布を示す図である。
図3】第1実施形態のワイヤロープに使用する特殊金属素線断面の第2の硬度分布を示す図である。
図4】第2実施形態のワイヤロープの側面図である。
図5図4のA−A断面図である。
図6】第3実施形態のワイヤロープの側面図である。
図7図6のB−B断面図である。
図8】第4実施形態のワイヤロープの断面図である。
図9】第5実施形態のワイヤロープの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、上述した本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態のワイヤロープの断面図であり、図2は、第1実施形態のワイヤロープに使用する特殊金属素線断面の第1の硬度分布を示す図であり、図3は、第1実施形態のワイヤロープに使用する特殊金属素線断面の第2の硬度分布を示す図である。
【0024】
図1において、ワイヤロープ1は、中心に位置する芯線3(本発明の「特殊金属素線」に相当)と、その芯線3の周りに巻回された6本の側線5(5a、5b、5c、5d、5e及び5f)とを備えている。
【0025】
芯線3は、ワイヤーロープ1の中心を先端から基端まで延びる、断面円形の金属素線である。芯線3の材料は特に限定されるものではないが、本実施形態では、ステンレス鋼が使用されている。
【0026】
ここで、芯線3は、断面における外周部の硬度が断面における中心部の硬度よりも高くなっている。すなわち、芯線3の表面のみを硬化させ、芯線3の内部を硬化させない構造とした。これによって、芯線3の柔軟性を維持すると共に、側線5との接触による耐摩耗性を向上させることができた。
【0027】
なお、金属素線の断面における外周部の硬度を断面における中心部の硬度よりも高くするには、スエージング及びダイス引き等従来の公知の製法が利用可能である。
【0028】
また、芯線3の表面のみを硬化させ、芯線3の内部を硬化させない構造とは、例えば、図2に示すように、芯線3の硬度が、ワイヤロープ1の断面中心から外周に向って2次曲線的に増大する構造の他、1次直線的に増大する場合の構造、また、図3に示すように、芯線3の硬度が、ワイヤーロープ1の中心部近傍では平坦であって、その平坦部から外周に向って増大する場合の構造であっても良い。
【0029】
なお、図2及び図3における硬度は、ビッカース硬度計により測定したビッカース硬度を示しており、単位は「HV」である。
【0030】
また、図2において、芯線3の硬度は、ワイヤロープ1の断面中心では650HV程度、外周では700HV程度であり、その差は50HVである。また、図3において、芯線3の硬度は、ワイヤーロープ1の中心部近傍では650HV程度で平坦であり、外周では700HV程度であり、その差は50HVである。
【0031】
なお、本出願人による実験によれば、断面中央における硬度を550HV、断面外周における硬度を580HVまで下げた場合であっても柔軟性及び耐摩耗性の向上は認められた。
【0032】
一方、ワイヤーロープ1の断面全体の硬度を例えば700HVにした場合には、ワイヤーロープ1の柔軟性が損なわれ、耐久性が低下した。
【0033】
側線5(5a、5b、5c、5d、5e及び5f)は、芯線3の周りに長手方向に向って螺旋状に巻回された、断面円形の金属素線である。側線5(5a、5b、5c、5d、5e及び5f)の材料も特に限定されるものではないが、本実施形態では、ステンレス鋼が使用されており、その他タングステンを使用することも可能である。
【0034】
本実施形態のワイヤーロープ1によれば、断面における外周部の硬度を中心部の硬度よりも高くした芯線3をワイヤーロープ1の中心に配置し、複数の側線5(5a、5b、5c、5d、5e及び5f)をすべて芯線3に接触するようにしたので、ワイヤーロープの耐久性を向上させることができる。
【0035】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態を説明するが、第1実施形態と共通する部分については説明を省略し、図中では同じ符号を付することとする。
図4は、第2実施形態のワイヤロープの側面図であり、図5は、図4のA−A断面図である。
【0036】
図4及び図5において、ワイヤロープ11は、中心に位置する芯線3と、その芯線3の周りに巻回された6本の側線15(15a、15b、15c、15d、15e及び15f)とを備えている。
【0037】
側線15(15a、15b、15c、15d、15e及び15f)は、芯線3の周りに長手方向に向って螺旋状に巻回された、異形加工され略台形状の金属素線である。側線15(15a、15b、15c、15d、15e及び15f)の材料は特に限定されるものではないが、本実施形態では、ステンレス鋼が使用されており、その他タングステンを使用することも可能である。
【0038】
本実施形態のワイヤーロープ11によれば、断面における外周部の硬度を中心部の硬度よりも高くした芯線3をワイヤーロープ1の中心に配置し、断面形状が略台形状の6本の側線15をすべて芯線3に対して面接触するようにし、かつ、ワイヤーロープ11の断面外周を略円形状としたので、ワイヤロープ11のトルク伝達性(ワイヤーロープの一端を回転された場合の、ワイヤーロープの他端でのトルク伝達性)を向上させることができるとともに、ワイヤーロープの耐久性を向上させることができる。
【0039】
(第3実施形態)
以下、本発明の第3実施形態を説明するが、第1実施形態と共通する部分については説明を省略し、図中では同じ符号を付することとする。
図6は、第3実施形態のワイヤロープの側面図であり、図7は、図6のB−B断面図である。
【0040】
図6及び図7において、ワイヤロープ101は、中心に位置する、第2実施形態の芯ワイヤロープ11と、その芯ワイヤロープ11の周りに巻回された6本の側ワイヤロープ21、31、41、51、61及び71とを備えている。
【0041】
側ワイヤロープ21、31、41、51、61及び71は、各々が芯ワイヤロープ11の周りに長手方向に向って螺旋状に巻回された、芯ワイヤーロープ11と同様な構成の撚線である。
【0042】
すなわち、側ワイヤロープ21は、中心に位置する芯線3a(本発明の「特殊金属素線」に相当)と、その芯線3aの周りに巻回された6本の側線25(25a、25b、25c、25d、25e及び25f)とからなり、側ワイヤロープ31は、中心に位置する芯線3b(本発明の「特殊金属素線」に相当)と、その芯線3bの周りに巻回された6本の側線35(35a、35b、35c、35d、35e及び35f)とからなり、側ワイヤロープ41は、中心に位置する芯線3c(本発明の「特殊金属素線」に相当)と、その芯線3cの周りに巻回された6本の側線45(45a、45b、45c、45d、45e及び45f)とからなる。
【0043】
また、側ワイヤロープ51は、中心に位置する芯線3d(本発明の「特殊金属素線」に相当)と、その芯線3dの周りに巻回された6本の側線55(55a、55b、55c、55d、55e及び55f)とからなり、側ワイヤロープ61は、中心に位置する芯線3e(本発明の「特殊金属素線」に相当)と、その芯線3eの周りに巻回された6本の側線65(65a、65b、65c、65d、65e及び65f)とからなり、側ワイヤロープ71は、中心に位置する芯線3f(本発明の「特殊金属素線」に相当)と、その芯線3fの周りに巻回された6本の側線75(75a、75b、75c、75d、75e及び75f)とからなる。
【0044】
本実施形態のワイヤーロープ101によれば、断面における外周部の硬度を中心部の硬度よりも高くした芯線を中心に配置し、断面形状が略台形状の6本の側線をすべて芯線に面接触するようにし、かつ、断面外周を略円形状としたワイヤロープを複数本撚って、ワイヤーロープ101を形成したので、ワイヤロープ101のトルク伝達性(ワイヤーロープの一端を回転された場合の、ワイヤーロープの他端でのトルク伝達性)をさらに向上させることができるとともに、ワイヤーロープの耐久性をさらに向上させることができる。
【0045】
(第4実施形態)
以下、第4実施形態を説明する。図8は、第4実施形態のワイヤロープの断面図である。
【0046】
図8において、ワイヤロープ81は、中心に位置する芯撚線13と、その芯撚線13の外側に配置された4本の側線82と、芯撚線13及び側線82の周りに巻回された8本の側線85とを備えている。
【0047】
芯撚線13は、4本の金属素線(13a、13b、13c及び13d(本発明の「特殊金属素線」に相当))からなり、各金属素線は、断面円形である。金属素線(13a、13b、13c及び13d)の材料は特に限定されるものではないが、本実施形態では、ステンレス鋼が使用されている。
【0048】
ここで、芯撚線13を構成する各金属素線(13a、13b、13c及び13d)は、断面における外周部の硬度が断面における中心部の硬度よりも高くなっている。すなわち、各金属素線(13a、13b、13c及び13d)は、金属素線の表面のみを硬化させ、金属素線の内部を硬化させない構造とした。そして、芯撚線13は、この金属素線を4本撚ることによって構成されている。これによって、芯撚線13の柔軟性を向上させることができ、耐久性を向上させることができる。
【0049】
また、4本の側線82(82a、82b、82c及び82d)は、芯撚線13の外側に配置され、芯撚線13を構成する金属素線(13a、13b、13c及び13d)よりも細い径の金属素線から構成され、断面円形である。なお、側線82(82a、82b、82c及び82d)の材料は特に限定されるものではないが、本実施形態では、ステンレス鋼が使用されている。
【0050】
さらに、8本の側線85(85a、85b、85c、85d、85e、85f、85g及び85h)は、芯撚線13及び側線82(82a、82b、82c及び82d)の外側に配置され、断面円形の金属素線である。なお、側線85(85a、85b、85c、85d、85e、85f、85g及び85h)の材料は特に限定されるものではないが、本実施形態では、ステンレス鋼が使用されている。
【0051】
本実施形態のワイヤーロープ81によれば、断面における外周部の硬度を中心部の硬度よりも高くした金属素線を4本撚った芯撚線13を、ワイヤーロープ81の中心に配置したので、ワイヤロープ81の柔軟性をさらに向上させることができ、耐久性を向上させることができる。
【0052】
(第5実施形態)
以下、第5実施形態を説明する。図9は、第5実施形態のワイヤロープの断面図である。
【0053】
図9において、ワイヤロープ91は、中心に位置する芯撚線23と、その芯撚線23の外側に配置された4本の側線92と、芯撚線23及び側線92の周りに巻回された8本の側線95とを備えている。
【0054】
芯撚線23は、4本の金属素線(23a、23b、23c及び23d(本発明の「特殊金属素線」に相当))からなり、各金属素線は、断面円形である。金属素線(23a、23b、23c及び23d)の材料は特に限定されるものではないが、本実施形態では、ステンレス鋼が使用されている。
【0055】
ここで、芯撚線23を構成する金属素線(23a、23b、23c及び23d)の内、金属素線23dは、断面における外周部の硬度が断面における中心部の硬度よりも高くなっている。すなわち、金属素線23dは、金属素線の表面のみを硬化させ、金属素線の内部を硬化させない構造とした。
一方、金属素線23a、23b及び23cは、断面全体における硬度が略一定である。
【0056】
そして、芯撚線23は、金属素線を4本撚ることによって形成されている。これによって、芯撚線23の柔軟性をさらに向上させることができる。
【0057】
また、4本の側線92(92a、92b、92c及び92d)は、芯撚線23の外側に配置され、芯撚線23を構成する金属素線(23a、23b、23c及び23d)よりも細い径の金属素線から構成され、断面円形である。なお、側線92(92a、92b、92c及び92d)の材料は特に限定されるものではないが、本実施形態では、ステンレス鋼が使用されている。
【0058】
さらに、8本の側線95(95a、95b、95c、95d、95e、95f、95g及び95h)は、芯撚線23及び側線92(92a、92b、92c及び92d)の外側に配置され、断面円形の金属素線である。なお、側線95(95a、95b、95c、95d、95e、95f、95g及び95h)の材料は特に限定されるものではないが、本実施形態では、ステンレス鋼が使用されている。
【0059】
本実施形態のワイヤーロープ91によれば、断面における外周部の硬度を中心部の硬度よりも高くした金属素線を使用した芯撚線23を、ワイヤーロープ91の中心に配置したので、ワイヤロープ91の柔軟性を向上させることができ、耐久性を向上させることができる。
【0060】
以上、本発明の各種実施形態のワイヤーロープについて説明してきたが、本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更して実施することが可能である。
【0061】
例えば、第1実施形態乃至第3実施形態において、側線5、側線15、側線25、側線35、側線45、側線55、側線65及び側線75は、6本の金属素線によって形成するとしたが、金属素線の本数は6本に限定されず、3本以上であれば良い。
【0062】
また、第4実施形態及び第5実施形態において、芯撚線13及び芯撚線23は、4本の金属素線を撚ることによって形成するとしたが、金属素線の本数は4本に限定されず、複数本以上であれば良い。
【0063】
また、第4実施形態及び第5実施形態において、側線85及び側線95は、8本の金属素線としたが、金属素線の本数は8本に限定されず、芯撚線13又は芯撚線23を覆うように構成される本数であれば良い。
【0064】
また、第4実施形態及び第5実施形態において、側線82及び側線92を記載したが、側線82及び側線92は無くても良い。
【符号の説明】
【0065】
1,11,21,31,41,51,61,71,81,91,101・・・ワイヤーロープ
3・・・芯線
13,23・・・芯撚線
5,15,25,35,45,55,65,75,82,85,92,95・・・側線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9