(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0014】
1.全体構成
本実施形態のクランプは、工業機械に対象物を固定するために用いられる。クランプは、端部の所定の面(当接面)で対象物に当接して、工業機械に対象物を固定する。本明細書において工業機械とは、工業的に用いられる機械全般を指し、具体的には成形機および工作機が挙げられる。
【0015】
ここで、成形機の一例としての射出成形機10について、
図1を参照して説明する。射出成形機10は、樹脂を加熱溶融させて金型20に射出する射出ユニット30と、金型20の開閉、成形品の突出しを行なう型締めユニット40とを備える。射出成形機10においては、対象物としての金型20を可動側取り付け板23および固定側取り付け板22に固定するために、本実施形態のクランプ50が用いられる。
【0016】
射出ユニット30は、樹脂を収容するシリンダー32、シリンダー32内に樹脂を供給するホッパー33、シリンダー32を加熱するヒーター34、加熱溶融した樹脂をシリンダー32のノズル(図示せず)から金型20内に押し出すスクリュー35、およびスクリュー35を駆動するモーター36を備える。シリンダー32内には、スクリュー35の先端に逆止防止弁37が設けられている。
【0017】
型締めユニット40は、移動して金型20を開閉するクロスヘッド42と、開放された金型20のキャビティ内から成形品(図示せず)を突き出すエジェクタ機構44とを備えている。
【0018】
射出ユニット30と型締めユニット40との間には、ダイバー28により支えられた固定側取り付け板22と可動側取り付け板23とが離間して配置されている。ダイバー28は、金型20の開閉動作を案内する。
【0019】
加熱溶融した樹脂を成形する金型20は、固定側取り付け板22と可動側取り付け板23との間に挟持される。図示していないが、金型20は、樹脂の種類に応じた成形温度(固化温度)に一定に保つために、温水や油、ヒーター等で温度管理されている。固定側取り付け板22と金型20との間、および可動側取り付け板23と金型20との間には、断熱板24が配置される。本実施形態においては、断熱板24は、固定側取り付け板22の金型20側の面、および可動側取り付け板23の金型20側の面に設けられている。断熱板24は、金型20の固定取り付け板22側の端面、および金型20の可動取り付け板23側の端面に設けることもできる。
【0020】
金型20側の面に断熱板24が設けられた可動側取り付け板23には、本実施形態のクランプ50によって金型20が固定される。図示していないが、金型20側の面に断熱板24が設けられた固定側取り付け板22への金型20の固定にも、本実施形態のクランプ50を用いることができる。以下においては、簡略化ために可動側取り付け板23側のクランプ50について説明するが、固定側取り付け板22側のクランプ50も同様である。
【0021】
本実施形態のクランプ50においては、金型20に接触する部分に第1の断熱体が一体的に設けられている。クランプ50については、追って詳細に説明する。
【0022】
断熱板24が設けられた固定側取り付け板22には、円形の位置合わせ穴22aが形成されている。この位置合わせ穴の直径と同等の直径の凹部20aが、金型20の固定側取り付け板22に接する面に設けられている。固定側取り付け板22の位置合わせ穴22aから金型20の凹部20aに亘って、ロケートリング26が挿入される。
【0023】
ロケートリング26は、
図2に示すような円筒形状を有している。上述したように、ロケートリング26は固定側取り付け板22の位置合わせ穴に挿入されるため、ロケートリング26の外径d1は、位置合わせ穴への挿入に適した大きさである。一方、ロケートリング26の内側には、射出ユニット30のシリンダー32のノズル(図示せず)が挿入される。このため、ロケートリング26の内径d2は、シリンダー32のノズルを挿入するのに適した大きさである。ロケートリング26においては、成形機側端面EF1から金型側端面EF2に貫通する取付け穴27が2つ設けられている。本実施形態においては、ロケートリング26は、全体が断熱材で構成された第3の断熱体126からなる。
【0024】
断熱材としては、有機または無機のガラス繊維材からなる主基材と主材料とを含有し、成形機等において一般的に使用される断熱素材を用いることができる。主材料としては、例えば、エポキシ樹脂、ケイ酸塩素系バインダー、リン酸塩素系バインダー、およびホウ酸塩素系バインダーなどが挙げられる。
【0025】
このようなロケートリング26は、金型側端面EF2を金型20に向けて凹部20aに固定され、成形機側端面EF1を射出ユニット30に向けて固定側取り付け板22の位置合わせ穴22aに挿入される。このロケートリング26によって、金型20は射出ユニット30のシリンダー32に対して位置合わせされる(
図1参照)。本明細書においては、クランプ50とロケートリング26とを備えた構造を金型保持構造と称する。
【0026】
以下に、
図3を参照して、本実施形態のクランプ50について説明する。クランプ50は、対象物としての金型20に当接面で当接するクランプ本体52、金型20とクランプ本体52との距離を調整するとともに当接面を決定するブロック57、およびクランプ本体52を金型20に押し付けて、金型20を射出成形機10に固定する第2の締結部材としてのボルト58を備えている。クランプ本体52は、当接面以外の部分は金属製である。ブロック57およびボルト58は金属製であり、追って説明するその他の部分も金属製である。具体的には、金属としては鉄が用いられている。
【0027】
クランプ本体52は、二又に分割された略直方体状を有している。クランプ本体52の長手方向の一方の端部は、金型20に当接する当接側となる。クランプ本体52の長手方向の他方の端部には、ブロック57が接続される。また、クランプ本体52の当接側端部と接続側端部との間の領域には、ボルト差し込み穴55が厚さ方向に貫通して設けられている。このボルト差し込み穴55の一端から接続側端部に達するように、矩形状スリット部56が厚さ方向に貫通して設けられている。クランプ本体52は、矩形状スリット部56とボルト差し込み穴55とによって、二又に分割されている。
【0028】
クランプ本体52の当接側端部は、厚さが低減された段部53からなる。当接側端部の表面(段部53を有する面)は、当接面53aとなり、当接側端部の裏面(段部53を有しない面)は、当接面53bとなる。追って説明するように、ブロック57をクランプ本体52の回りで移動させることによって、当接面53aまたは当接面53bのいずれかで、クランプ本体52を金型20に当接させることができる。
図3に示す状態では、当接面53bが金型20に接することになる。
【0029】
本実施形態においては、クランプ本体52の当接側端部の表面および裏面に第1の断熱体54が設けられている。具体的には、当接側端部の表面側および裏面側では、所定の厚さの金属部分が層状の第1の断熱体54に置き換えられている。したがって、クランプ本体52は、当接側端部に設けられた第1の断熱体54で金型20に接触する。なお、当接側端部の裏面の当接面53bの高さは、金属部分の表面の高さと実質的に一致している。
【0030】
第1の断熱体54を構成する断熱材としては、成形機等において一般的に使用される断熱素材を、金型の温度・圧縮強度等に応じて適宜選択して用いることができる。第1の断熱体54は、第1の締結部材としてのネジ51によってクランプ本体52の当接側端部における金属部分の上下両面にそれぞれ固定されている。表面側においては、ネジ51は、ネジ頭部が当接面53aより凹んで設けられている。
図3には示されていないが、裏面側の当接面53bにおいても、ネジ51のネジ頭部は当接面53bより凹んでいる。
【0031】
金型20に接触する部分に第1の断熱体54が設けられているので、金型20からクランプ本体52への熱伝導の経路は遮断される。その結果、金型20からクランプ50への熱の移動は抑制されるので、クランプ50を介して金型20から射出成形機10へ熱が移動するおそれも低減されることとなる。このような断熱効果を発揮することができれば、第1の断熱体54の材質および厚さは適宜設定することができる。
【0032】
クランプ本体52の厚さ方向に貫通して設けられたボルト差し込み穴55は、長円形状であり、具体的には、短辺が外側に湾曲した矩形状を有している。ボルト差し込み穴55の長辺および短辺の方向は、クランプ本体52の長辺および短辺の方向とそれぞれ一致している。ボルト差し込み穴55の一方の短辺には、矩形状スリット部56が連続して設けられている。本実施形態のクランプ50においては、クランプ本体52の二又に分割されている側が接続側端部となる。
【0033】
クランプ本体52の接続側端部には、直方体状のブロック57が接続される。クランプ本体52とブロック57との接続には、一対のカバー板62、クランプ本体側リベット64、およびブロック側リベット66が用いられている。
【0034】
カバー板62は、クランプ本体52の接続側端部の側面の一部と、ブロック57の側面の一部とを一括して覆うように、クランプ本体52の左右両側に配置される。カバー板62には、クランプ本体52およびブロック57にわたって楕円形の開口62aが形成されている。カバー板62の開口62a内においては、クランプ本体側リベット64によってクランプ本体52が軸支され、ブロック側リベット66によってブロック57が軸支される。
【0035】
ブロック57は、ブロック側リベット66を軸として回転して、向きを変えることができる。ブロック57が90°回転すると、クランプ本体52に接する面が変わるので、クランプ本体52から突出する高さが変化することになる。さらに、クランプ本体側リベット64を軸としてブロック57を回転させた場合には、ブロック57はクランプ本体52の他方の側に移動する。ブロック57が移動することによって、当接面53aを金型20に接する側とすることができる。クランプ50で金型20を固定する際には、このようにブロック57によって、クランプ50と金型20との距離を調整することが可能である。
【0036】
クランプ本体52のボルト差し込み穴55には、押え板60およびワッシャー59を介してボルト58が挿入される。ボルト58を可動側取り付け板23のボルト穴(図示せず)に締め付けることによって、金型20を射出成形機10に固定することができる。
【0037】
ボルト58の締め付けを妨げなければ、ボルト58とクランプ本体52との間の任意の個所に第2の断熱体を設けてもよい。例えば、ワッシャー59を第2の断熱体により構成することができる。あるいは、押え板60の下面のクランプ本体52に接する部分を、第2の断熱体により構成してもよい。ここで用いる第2の断熱体は、第1の断熱体と同様の材質とすることができる。
【0038】
2.作用及び効果
射出成形機10においては、金型20を一定の成形温度に維持するために温度が管理されている。金型20の熱が、この金型20を固定しているクランプ50に移動した場合には、金型20の温度が低下してしまう。金型20の温度を所定の成形温度に保つためには、再度、成形温度に昇温しなければならない。
【0039】
本実施形態に係るクランプ50においては、クランプ本体52の金型20に接触する部分に第1の断熱体54が設けられていることにより、金型20からクランプ50への熱伝導の経路は遮断されている。金型20からクランプ50への熱の移動は抑制されるので、熱の移動に起因して金型20の温度が低下するおそれは小さい。過度に温度が低下しない限り金型20を昇温する必要はなく、金型20の温度制御は容易となって、稼働コストの削減にもつながる。
【0040】
第1の断熱体54は、ネジ51によりクランプ本体52の当接側端部に固定されてクランプ50に一体化されているので、クランプと金型との間に別個の断熱板を介在させる場合よりも取り扱いが簡便となる。必要な際には、第1の断熱体54の交換も容易に行うことができる。なお、第1の断熱体54を固定するネジ51は、ネジ頭部が当接面53a、53bから凹んでいるので、ネジ51は金型20からクランプ50への熱伝導の経路となることはない。
【0041】
このように金型20からクランプ50への熱の移動が抑制されることから、クランプ50のボルト58を介した熱伝導も低減される。具体的には、クランプ50のボルト58を介して金型20の熱が射出成形機10に移動することも、より確実に抑制される。射出成形機10への熱の移動がより確実に抑制されることによって射出成形機10が熱変形するおそれは低減されるので、得られる成形体の精度の低下も避けられる。上述したようにボルト58とクランプ本体52との間に第2の断熱体を設けた場合には、クランプ本体52からボルト58への熱伝導の経路はさらに確実に遮断されるので、金型20から射出成形機10への熱の移動を抑制する効果は、よりいっそう高められる。
【0042】
また、金型20が高温になったとしても、クランプ50では第1の断熱体54により金型20からの熱伝導の経路が遮断されているので、クランプ50自体が金型20と同程度の高温になることはない。このため、クランプ50によれば、取り外しの際における安全性を高めることができる。
【0043】
さらに、固定側取り付け板22に設けられるロケートリング26が第3の断熱体126により構成されていることによって、固定側取り付け板22に接する側においても、金型20から射出成形機10への熱伝導の経路が遮断される。ロケートリング26の取付け穴27には固定用のボルトが挿入されるが、第3の断熱体126が存在しているのでボルトを介した熱の移動は無視できる程度に小さいものとなる。その結果、本実施形態の金型保持構造においては、金型20から射出成形機10へのロケートリング26を介した熱の移動も、より確実に抑制することが可能となった。
【0044】
3.変形例
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することが可能である。
【0045】
上記実施形態においては、矩形状スリット部56とボルト差し込み穴55とによってクランプ本体52を二又に分割したが、U字状のボルト差し込み穴によってクランプ本体52を二又に分割することもできる。U字状のボルト差し込み穴70を設けたクランプ本体52A、52B、52Cを、変形例(1)〜(3)として
図4A、
図4B、
図4Cに示す。
【0046】
図4Aに示す変形例(1)のクランプ本体52Aにおいては、接続側端部をU字の開放側としたボルト差し込み穴70が形成されている。クランプ本体52Aでは、U字状のボルト差し込み穴70によって接続側端部が二又に分割されることになる。また、クランプ本体52Aにおいては、上述したクランプ52とは異なって、当接側端部の裏面の第1の断熱体54が凸状に設けられている。このようにクランプ本体52Aでは、当接側端部の裏面における当接面53bが金属部分に対して突出しているので、当接面53bを金型20に当接させて金型20を固定する際、クランプ本体52Aの金属部分が金型20に接触するおそれが低減される。
【0047】
U字状のボルト差し込み穴70は、クランプ本体の当接側端部をU字の開放側として設けることもできる(
図4B、
図4C)。クランプ本体52B、52Cの場合には、U字状のボルト差し込み穴70によって当接側端部が二又に分割されることになる。
図4Bに示す変形例(2)のクランプ本体52Bにおいては、上述のクランプ52の場合と同様に、当接側端部の表面側および裏面側に第1の断熱体54が設けられている。変形例(2)のクランプ本体52Bは、当接側端部が二又に分割されていることから、可動側取り付け板23の表面の一部に凸部が存在していても、安定に当接できる点で有利となる。
図4Cに示す変形例(3)のクランプ本体52Cにおいては、
図4Aに示したクランプ本体52Aと同様に、当接側端部の裏面の第1の断熱体54が凸状に設けられている。変形例(3)のクランプ本体52Cは、前述の2つのクランプ本体52A、52Bの利点を備えることができる。
【0048】
変形例(1)〜(3)のいずれかのクランプ本体を備えたクランプにおいても、金型20に接触する部分に第1の断熱体54が設けられている。したがって、上記実施形態のクランプ本体52を用いたクランプ50と同様、金型20からクランプへの熱伝導の経路は遮断されて、金型20から射出成形機10への熱の移動をより確実に抑制するという効果が得られる。
【0049】
第1の断熱体54は、ネジ51を用いずに、嵌合によってクランプ本体52の当接側端部に固定することもできる。具体的には、クランプ本体52の当接側端部の上下両面に嵌合用突起を設け、この嵌合用突起に合わせた嵌合用溝を、第1の断熱体54のクランプ本体52側の面に設ければよい。あるいは、嵌合用溝をクランプ本体52の当接側端部の上下両面に設け、嵌合用突起を第1の断熱体54に設けることもできる。
【0050】
第1の断熱体54には、成形機等の断熱板として一般的に用いられる硬質断熱材または軟質断熱材と同様の断熱素材を用いることができる。硬質断熱材は、例えば、ミオレックスPMX−573(ミオレックスS)、ミオレックスPMX−561(ミオレックスHR−1)、ミオレックスPMX−562(ミオレックスHR−2)、ミオレックスPGX−595(ミオレックスHG)、PGE−6771、ミオナイト、ロスナボード、ベスサーモF、ベスサーモS、ベスサーモU、ベスサーモH、カルホン、カルライト、ヘミサル15、ヘミサル20、ルミボードL−14Z、ルミボードL−100、レジサル、マリンボード−I、キャスライトH、ファインフレックス、エコラックス、ネオアーク、ミルボード、マイカD581、ダンマ550L、ダンマ700L、TCボード、ニトロンR、スーパーヘミット、ブラグラ、S4000、スプラサーム、DME、HASCO、スターライトハイテムS、スターライトセルブ、スターライトALP、タイカライト1号、タイカライト2号、タイカライトウッド、タイカライトウッドマリン、U−ブリット、レセパル、マリライト、ハイラック、ニットウタイトH、ソルダーパレット、および耐火レンガ等として市販されている。また、軟質断熱材は、例えば、WDS、イソウールブランケット、イソウールボード、イソウールペーパー、ファインフレックス、セラミックファイバー、グラスウールおよびロックウール等として市販されている。
【0051】
こうした硬質断熱材、軟質断熱材は、ロケートリング26に用いることもできる。上記実施形態においては、ロケートリング26の全体を第3の断熱体126としたが、金型20から射出成形機10への熱伝導の経路を遮断できれば、金属等からなる伝熱体がロケートリングに含まれていてもよい。金属が含まれることによって、全体が断熱体の場合よりもロケートリングの強度が高まる場合もある。
【0052】
例えば、
図5Aに示すロケートリング26Aのように、金型側端面EF2近傍の外周側の領域は、伝熱体127とすることができる(変形例(1))。変形例(1)のロケートリング26Aは、
図5Bに示すように金型側端面EF2を金型20に向けて、断熱板24が設けられた固定側取り付け板22の位置合わせ穴に挿入して装着される。ロケートリング26Aの伝熱体127が金型20の一部に接するが、ロケートリング26Aは、成形機側端面EF1を含む残りの領域が第3の断熱体126からなる。金型20の熱がロケートリング26Aの伝熱体127に移動しても、第3の断熱体126によって熱伝導の経路は遮断されるので、金型20から射出成形機10への熱の移動は妨げられる。
【0053】
あるいは、
図6Aに示すロケートリング26Bのように、成形機側端面EF1から所定の距離の部分と金型側端面EF2から所定の距離の部分との2つに分割し、それぞれを伝熱体127および第3の断熱体126により構成することもできる(変形例(2))。変形例(2)のロケートリング26Bは、
図6Bに示すように、金型側端面EF2を金型20に向けて、断熱板24が設けられた固定側取り付け板22の位置合わせ穴に挿入して装着される。ロケートリング26Bにおいては、金型20に接するのは第3の断熱体126のみである。この第3の断熱体126によって金型20からの熱伝導の経路が遮断されるので、金型20から射出成形機10への熱の移動を避けることができる。
【0054】
またさらに、
図7に示すロケートリング26Cのように、金型側端面EF2、および金型側端面EF2近傍の外周面に第3の断熱体126を設けてもよい(変形例(3))。ロケートリング26Cは、
図7Aに示すように基本的には伝熱体127から構成される。
図7Bに示すように、金型側端面EF2の外周側に設けられた第3の断熱体126は、金型側端面EF2において内周側の伝熱体127より突出している。
【0055】
変形例(3)のロケートリング26Cは、
図8Aに示すように、金型側端面EF2を金型20に向けて、断熱板24が設けられた固定側取り付け板22の位置合わせ穴に挿入して装着される。
図8A中の領域Aの拡大図を
図8Bに示す。
図8Bに示すように、ロケートリング26Cにおいて金型20に接するのは第3の断熱体126である。第3の断熱体126によって金型20からの熱伝導の経路が遮断されるので、ロケートリング26Cにおいても、金型20から射出成形機10への熱の移動を避けることができる。
【0056】
上記実施形態で説明したロケートリング26と同様、ロケートリング26A、26B、26Cにおいても、少なくとも金型20に接する部分の一部が第3の断熱体126であるので、上記実施形態で説明したように金型20からの熱伝導の経路が遮断される。これによって、金型20から射出成形機10への熱の移動をより確実に抑制するという効果が得られる。
【0057】
上記実施形態においては、工業機械として射出成形機を例に挙げて説明したが、本実施形態のクランプは、高温となる金型が用いられる成形機全般に適用することができる。例えば、ダイキャスト成形機、プレス成形機、およびゴム成形機などにおいても、本実施形態のクランプを用いて金型を固定することによって、金型からクランプへの熱伝導の経路が遮断し、金型から成形機への熱の移動をより確実に抑制して同様の効果が得られる。
【0058】
さらに本実施形態のクランプは、上述したような成形機の他、工作機に対象物を固定する際、熱伝導の経路を遮断するために用いることもできる。工作機としては、例えばフライス盤用、ボール盤用、立削盤用、および平削盤用などが挙げられる。こうした工作機のテーブルには、工作物を固定するマシンバイスが固定される。本実施形態のクランプは、対象物としてのマシンバイスを工作機のテーブルに固定するために用いて、熱伝導の経路を遮断することも可能である。
【0059】
工作機に対象物を固定するためのクランプ(変形例(4))には、例えば
図9に示すクランプ本体80が含まれる。クランプ本体80は、マシンバイスに接触する部分に第1の断熱体84が設けられている以外は、一般的なバイス取り付用クランプと同様である。第1の断熱体84は、すでに説明したような断熱材を用いて構成することができる。クランプ本体80は、ボルト差し込み穴81が設けられた金属製である。クランプ本体80は、当接面80aでマシンバイスに接し、支持面80bで工作機のテーブルに接する。
【0060】
クランプ本体80においては、対象物としてのマシンバイスに接触する部分に第1の断熱体84が設けられている。こうしたクランプ本体80を含むクランプを用いてマシンバイスを工作機に固定する際には、マシンバイスからクランプへの熱伝導の経路は、第1の断熱体84によって遮断されることになる。これによって、マシンバイスの熱がクランプを介して工作機に移動するのをより確実に抑制することができ、工作機が熱変形するおそれは低減される。
【0061】
なお、上述したようなクランプを用いてマシンバイスを工作機のテーブルに固定する際には、マシンバイスの底面に熱伝導抑制板を配置することによって、マシンバイスから工作機への熱の移動をより確実に抑制することができる。熱伝導抑制板の例を、
図10に示す。
図10Aに示す第1の熱伝導抑制板90Aにおいては、下側金属板94aと上側金属板94bとの間に断熱板92が配置され、マシンバイスの底面に取り付けるための締結穴91が設けられている。断熱板92は、すでに説明したような断熱材を用いて構成することができる。断熱板92が存在することによって、マシンバイスから工作機のテーブルへの熱伝導がより確実に抑制される。
【0062】
上側金属板94bには、
図10Bに示す第2の熱伝導抑制板90Bのように、長手方向に沿って冷却水流路96を設けることもできる。冷却水流路96を設ける場合には、
図10Cに示す第3の熱伝導抑制板90Cのように金属板94のみで構成してもよい。いずれの熱伝導抑制板を用いた場合でも、マシンバイスから工作機への熱伝導をより確実に抑制することができる。