特許第6632018号(P6632018)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6632018トンネル止水工法、トンネル止水システム、及び止水材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6632018
(24)【登録日】2019年12月20日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】トンネル止水工法、トンネル止水システム、及び止水材
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20200106BHJP
【FI】
   E21D9/06 301Z
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-138240(P2019-138240)
(22)【出願日】2019年7月26日
【審査請求日】2019年8月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594203999
【氏名又は名称】株式会社タック
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】大橋 健司
(72)【発明者】
【氏名】星 光二郎
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 信二
(72)【発明者】
【氏名】アシュトン,ポール ジョン
(72)【発明者】
【氏名】藤本 理大
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−320851(JP,A)
【文献】 特開2018−193689(JP,A)
【文献】 特開2007−077682(JP,A)
【文献】 社団法人日本グラウト協会,新訂 正しい薬液注入工法,日刊建設工業新聞社,2007年 5月14日,初版,頁10 表2.2.3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 1/00〜 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴体と、前記胴体の前部に回転可能に支承されるカッタヘッドとを備え、前記カッタヘッドを回転させて地山を掘削しながら進むことでトンネルを構築するシールド掘進機に対する周辺地盤からの地下水を遮断するトンネル止水工法であって、
前記シールド掘進機の掘進を停止させた状態で、前記シールド掘進機の胴体と周辺地盤との間において前記カッタヘッドのオーバカットにより生じた空隙に、硬化しても前記シールド掘進機が再掘進可能な止水材を充填する止水材充填工程を包含するトンネル止水工法。
【請求項2】
前記シールド掘進機の掘進方向の掘削面である切羽の前方の地盤亀裂にグラウト材を充填するグラウト材充填工程を包含する請求項1に記載のトンネル止水工法。
【請求項3】
前記止水材を一軸圧縮強度が0.025〜0.20N/mmとなるように硬化させる硬化工程を包含する請求項1又は2に記載のトンネル止水工法。
【請求項4】
胴体と、前記胴体の前部に回転可能に支承されるカッタヘッドとを備え、前記カッタヘッドを回転させて地山を掘削しながら進むことでトンネルを構築するシールド掘進機に対する周辺地盤からの地下水を遮断するトンネル止水システムであって、
前記シールド掘進機の掘進を停止させた状態で、前記シールド掘進機の胴体と周辺地盤との間において前記カッタヘッドのオーバカットにより生じた空隙に、硬化しても前記シールド掘進機が再掘進可能な止水材を充填する止水材充填装置を備えるトンネル止水システム。
【請求項5】
前記シールド掘進機の掘進方向の掘削面である切羽の前方の地盤亀裂にグラウト材を充填するグラウト材充填装置を備える請求項4に記載のトンネル止水システム。
【請求項6】
胴体と、前記胴体の前部に回転可能に支承されるカッタヘッドとを備え、前記カッタヘッドを回転させて地山を掘削しながら進むことでトンネルを構築するシールド掘進機に対する周辺地盤からの地下水を遮断するために、前記シールド掘進機の胴体と周辺地盤との間において前記カッタヘッドのオーバカットにより生じた空隙に充填される、硬化しても前記シールド掘進機が再掘進可能な止水材であって、
硬化を促進する硬化材を含有し、
硬化後の一軸圧縮強度が0.025〜0.20N/mmとなる止水材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地山を掘進してトンネルを構築するシールド掘進機に対する周辺地盤からの地下水を遮断するトンネル止水工法、トンネル止水システム、止水材、及びグラウト材に関する。
【背景技術】
【0002】
地中にトンネルを構築する際には、例えば、密閉式のシールド掘進機が用いられる。シールド掘進機の代表的なものとしては、泥水式のシールド掘進機や、泥土圧式のシールド掘進機が挙げられる。泥水式のシールド掘進機は、掘進方向の掘削面(切羽)に泥水圧を作用させて切羽の安定を図りつつ掘削を行うものである。一方、泥土圧式のシールド掘進機は、掘削土砂を泥土化し、それに所定の圧力(泥土圧)を与えて切羽の安定を図りつつ掘削を行うものである。
【0003】
上記のシールド掘進機は、円筒状の胴体と、切羽に臨ませるように胴体の前部に支承されるカッタヘッドとを備え、カッタヘッドの回転により、切羽を掘削することができるように構成されている。シールド掘進機においては、カッタヘッドの後方に胴体を前後に仕切るような隔壁が設けられ、隔壁とカッタヘッドとの間にチャンバが区画形成されている。チャンバは、泥水又は泥土を収容可能で、泥水圧又は泥土圧により、切羽の土水圧と対抗して切羽の崩壊を防ぐ役目をする。また、シールド掘進機の胴体の内部には、掘進用のシールドジャッキや、トンネルの外壁を構成する円環状のセグメントを組み立てるためのセグメントエレクタ、掘削された土砂を排土するための排土装置等が組み込まれている。
【0004】
上記のようなシールド掘進機においては、前回の掘進工程において既に組み立てられているセグメントの前端面にシールドジャッキを押し当て、シールドジャッキを伸長させて、シールドジャッキの1ストローク分の長さのトンネルを掘削する。その後、セグメントエレクタを用いて、既設のセグメントに新たなセグメントを連結するように組み立て、組み立てた新たなセグメントにシールドジャッキを押し当てて伸長させるという動作を繰り返し行うことにより、セグメントで構成された外壁を有するトンネルが構築される。
【0005】
ところで、シールド掘進機のチャンバ内部の点検やカッタヘッド等の点検を行う際には、チャンバを開放する必要がある。チャンバを開放すると、シールド掘進機の周辺地盤からの地下水がシールド掘進機内に流入し、これが原因でシールド掘進機の周囲の地盤が緩み、地盤沈下や陥没に至る虞がある。従って、点検を安全に行うためには、シールド掘進機に対する周辺地盤からの地下水を遮断しなければならない。
【0006】
従来、地下水を遮断するために用いられる方法としては、例えば、注入剤としてセメントミルク又はセメントベントナイトを、圧力機器を用いて地盤に加圧注入する薬液注入法(ケミカルグラウト工法)により、予め地上から地盤改良を施すというものがある(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−132592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の薬液注入法により地下水を遮断するものでは、通常、地上から薬液を注入するため、地上の交通確保の制約等により、地上からの薬液注入が困難になる場合がある。また、地盤の深度が大きい箇所を止水する場合、十分な止水効果を得るのが難しい。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、シールド掘進機に対する周辺地盤からの地下水を簡易且つ確実に遮断することができるトンネル止水工法、トンネル止水システム、止水材、及びグラウト材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明に係るトンネル止水工法の特徴構成は、
地山を掘進してトンネルを構築するシールド掘進機に対する周辺地盤からの地下水を遮断するトンネル止水工法であって、
前記シールド掘進機の掘進を停止させた状態で、前記シールド掘進機の胴体と周辺地盤との間の空隙に、硬化しても前記シールド掘進機が再掘進可能な止水材を充填する止水材充填工程を包含することにある。
【0011】
本構成のトンネル止水工法においては、例えば、シールド掘進機のチャンバ内部の点検やカッタヘッド等の点検を行う際、シールド掘進機の掘進を停止させた状態で、シールド掘進機の胴体と周辺地盤との間の空隙に、硬化してもシールド掘進機が再掘進可能な止水材を充填する止水材充填工程が実施される。止水材充填工程は、シールド掘進機側から周辺地盤との間の空隙に止水材を充填する工程であり、地上から薬液を注入する従来の薬液注入法と比べて、地上の交通確保の制約等がなく、簡易に実施することができる。また、充填された止水材は、硬化すれば十分な止水効果を発揮するので、シールド掘進機の周辺地盤のうち、特に、シールド掘進機の胴体回りの周辺地盤からの地下水を簡易且つ確実に遮断することができる。さらに、充填された止水材が硬化しても、シールド掘進機は再掘進可能であるので、点検作業等が終了すれば、速やかに掘進を再開することができる。なお、本明細書において、「シールド掘進機に対する周辺地盤からの地下水を遮断する」とは、シールド掘進機に対する周辺地盤からの地下水の浸入を完全に止めることと、シールド掘進機内に流入する地下水の流量が、例えば、カッタヘッド等の点検を安全に行うことができる許容流量以下になるように、シールド掘進機内への地下水の浸入を抑えることとの両方を含むものである。
【0012】
本発明に係るトンネル止水工法において、
前記シールド掘進機の掘進方向の掘削面である切羽の前方の地盤亀裂にグラウト材を充填するグラウト材充填工程を包含することが好ましい。
【0013】
本構成のトンネル止水工法においては、シールド掘進機の掘進方向の掘削面である切羽の前方の地盤亀裂にグラウト材を充填するグラウト材充填工程が実施される。グラウト材充填工程は、シールド掘進機側から切羽前方の地盤亀裂にグラウト材を充填する工程であり、地上から薬液を注入する従来の薬液注入法と比べて、地上の交通確保の制約等がなく、簡易に実施することができる。従って、シールド掘進機の周辺地盤のうち、特に、シールド掘進機の前方の切羽側からの地下水を簡易且つ確実に遮断することができる。
【0014】
本発明に係るトンネル止水工法において、
前記止水材を一軸圧縮強度が0.025〜0.20N/mmとなるように硬化させる硬化工程を包含することが好ましい。
【0015】
本構成のトンネル止水工法においては、止水材を一軸圧縮強度が0.025〜0.20N/mmとなるように硬化させる硬化工程が実施される。硬化した止水材の一軸圧縮強度は、0.025〜0.20N/mm程度であるため、掘進停止状態のシールド掘進機が再び掘進できないくらいにシールド掘進機を地盤に固着することなく周辺地盤を支えることができる。
【0016】
次に、上記課題を解決するための本発明に係るトンネル止水システムの特徴構成は、
地山を掘進してトンネルを構築するシールド掘進機に対する周辺地盤からの地下水を遮断するトンネル止水システムであって、
前記シールド掘進機の掘進を停止させた状態で、前記シールド掘進機の胴体と周辺地盤との間の空隙に、硬化しても前記シールド掘進機が再掘進可能な止水材を充填する止水材充填装置を備えることにある。
【0017】
本構成のトンネル止水システムにおいては、例えば、シールド掘進機のチャンバ内部の点検やカッタヘッド等の点検を行う際、シールド掘進機の掘進を停止させた状態で、シールド掘進機の胴体と周辺地盤との間の空隙に、硬化してもシールド掘進機が再掘進可能な止水材を充填する止水材充填工程が止水材充填装置を用いて実施される。止水材充填装置を用いた止水材充填工程は、シールド掘進機側から周辺地盤との間の空隙に止水材を充填する工程であり、地上から薬液を注入する従来の薬液注入法と比べて、地上の交通確保の制約等がなく、簡易に実施することができる。また、充填された止水材は、硬化すれば十分な止水効果を発揮するので、シールド掘進機の周辺地盤のうち、特に、シールド掘進機の胴体回りの周辺地盤からの地下水を簡易且つ確実に遮断することができる。さらに、充填された止水材が硬化しても、シールド掘進機は再掘進可能であるので、点検作業等が終了すれば、速やかに掘進を再開することができる。
【0018】
本発明に係るトンネル止水システムにおいて、
前記シールド掘進機の掘進方向の掘削面である切羽の前方の地盤亀裂にグラウト材を充填するグラウト材充填装置を備えることが好ましい。
【0019】
本構成のトンネル止水システムは、シールド掘進機の掘進方向の掘削面である切羽の前方の地盤亀裂にグラウト材を充填するグラウト材充填工程がグラウト材充填装置を用いて実施される。グラウト材充填装置を用いたグラウト材充填工程は、シールド掘進機側から切羽前方の地盤亀裂にグラウト材を充填する工程であり、地上から薬液を注入する従来の薬液注入法と比べて、地上の交通確保の制約等がなく、簡易に実施することができる。従って、シールド掘進機の周辺地盤のうち、特に、シールド掘進機の前方の切羽側からの地下水を簡易且つ確実に遮断することができる。
【0020】
次に、上記課題を解決するための本発明に係る止水材の特徴構成は、
地山を掘進してトンネルを構築するシールド掘進機に対する周辺地盤からの地下水を遮断するために、前記シールド掘進機の胴体と周辺地盤との間の空隙に充填される、硬化しても前記シールド掘進機が再掘進可能な止水材であって、
硬化を促進する硬化材を含有し、
硬化後の一軸圧縮強度が0.025〜0.20N/mmとなることにある。
【0021】
本構成の止水材によれば、硬化を促進する硬化材を含有し、硬化後の一軸圧縮強度が0.025〜0.20N/mmとなるため、掘進停止状態のシールド掘進機が再び掘進できないくらいにシールド掘進機を地盤に固着することなく周辺地盤を支えることができる。充填された止水材は、硬化すれば十分な止水効果を発揮するので、シールド掘進機の周辺地盤のうち、特に、シールド掘進機の胴体回りの周辺地盤からの地下水を簡易且つ確実に遮断することができる。
【0022】
次に、上記課題を解決するための本発明に係るグラウト材の特徴構成は、
地山を掘進してトンネルを構築するシールド掘進機に対する周辺地盤からの地下水を遮断するために、前記シールド掘進機の掘進方向の掘削面である切羽の前方の地盤亀裂に充填されるグラウト材であって、
硬化を促進する硬化材と、
粒径加積曲線測定による85%粒径が10μm以下の目詰め材と、
流動性を高めるとともに前記硬化材によって硬化が進む際に体積を増加させる流動膨張剤と、
を含有することにある。
【0023】
本構成のグラウト材は、硬化を促進する硬化材と共に、目詰め材、及び流動膨張剤を含有する。目詰め材は、粒径加積曲線測定による85%粒径が10μm以下とされる。グラウト材全体の粒径加積曲線測定による85%粒径は20μm以下とされる。これにより、切羽前方の地盤亀裂に目詰め材をスムーズに通過させることができる。流動膨張剤は、硬化材や目詰め材の凝集を防止するとともに、硬化材によって硬化が進む際に体積を増加させるため、硬化材や目詰め材を切羽側の地盤に深く浸透させることができるとともに、例えば、シールド掘進機のチャンバ内部の点検やカッタヘッド等の点検を行う際のチャンバ開放に伴う減圧時に、切羽側の地盤に浸透したグラウト材がシールド掘進機側に引き戻されるのを防ぐことができる。以上のことから、本構成のグラウト材によれば、点検等のためにシールド掘進機のチャンバが開放されても、切羽前方の地盤亀裂を確実に塞ぐことができ、シールド掘進機の周辺地盤のうち、特に、シールド掘進機の前方の切羽側からの地下水を簡易且つ確実に遮断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の第一実施形態に係るトンネル止水工法の実施に供する泥水式のシールド掘進機の縦断面方向の概略図である。
図2図2は、本発明の第一実施形態に係るトンネル止水工法の実施の手順を示すフローチャートである。
図3図3は、本発明の第二実施形態に係るトンネル止水工法の実施に供する泥土圧式のシールド掘進機の縦断面方向の概略図である。
図4図4は、本発明の第二実施形態に係るトンネル止水工法の実施の手順を示すフローチャートである。
図5図5は、セメント(硬化材)量と一軸圧縮強度との関係を示すグラフである。
図6図6は、グラウト材の粒径加積曲線の測定結果を示すグラフである。
図7図7は、目詰め材の粒径加積曲線の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明について、図1図7を参照しながら説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることは意図しない。
【0026】
〔第一実施形態〕
<シールド掘進機>
図1は、本発明の第一実施形態に係るトンネル止水工法の実施に供する泥水式のシールド掘進機の縦断面方向の概略図である。図1に示されるシールド掘進機1Aは、掘進方向の掘削面(切羽)に泥水圧を作用させて切羽の安定を図りつつ掘削を行うものである。このシールド掘進機1Aは、円筒状の胴体2と、胴体2の前部に回転可能に支承されるカッタヘッド3とを備え、胴体2に内蔵される図示されない回転駆動装置によってカッタヘッド3を回転駆動することにより、カッタヘッド3の前面側に装着されたカッタビット4等で切羽を掘削することができるように構成されている。カッタヘッド3の後方には、胴体2を前後に仕切るような隔壁5が設けられ、隔壁5とカッタヘッド3との間にチャンバ6が区画形成されている。チャンバ6は、泥水を収容可能で、泥水圧により、地山の土水圧と対抗して地山の崩壊を防ぐ役目をする。胴体2の内部には、掘進用のシールドジャッキ(図示省略)や、トンネルの外壁を構成する円環状のセグメント7を組み立てるためのセグメントエレクタ(図示省略)等が組み込まれている。なお、シールド掘進機1Aの胴体2と周辺地盤との間には、カッタヘッド3のオーバカット分だけ空隙が生じる。
【0027】
シールド掘進機1Aの胴体2の内部には、止水材充填装置11と、グラウト材充填装置12とが配設されている。止水材充填装置11は、シールド掘進機1Aが掘進停止状態にあるときに、シールド掘進機1Aの胴体2と周辺地盤との間の空隙に、硬化してもシールド掘進機1Aが再掘進可能な止水材15を充填する装置である。一方、グラウト材充填装置12は、切羽前方の地盤亀裂にグラウト材16を充填する装置である。
【0028】
<止水材充填装置>
止水材充填装置11は、二液(A液、B液)を混合するための混合装置21と、掘削した地盤に臨ませるように胴体2の外周壁に装着される所要の止水材注入ノズル22とを備えている。混合装置21は、流体流れの上流側から下流側に向かって順に配設される第一ポート部23、第二ポート部24、及び所要の止水材吐出部25を有している。第一ポート部23には、A液供給配管26を介してA液タンク27が接続されている。第二ポート部24には、B液供給配管28を介してB液タンク29が接続されている。止水材吐出部25には、止水材供給配管30を介して止水材注入ノズル22が接続されている。
【0029】
A液供給配管26の途中には、A液タンク27内のA液を混合装置21へと圧送するA液圧送ポンプ31が介設されている。また、B液供給配管28の途中には、B液タンク29内のB液を混合装置21へと圧送するB液圧送ポンプ32が介設されている。なお、A液供給配管26、及びB液供給配管28のそれぞれの配管途中には、A液圧送ポンプ31、B液圧送ポンプ32以外に、図示されない圧力スイッチ、圧力センサ、流量計等が適宜に配設されている。
【0030】
<グラウト材充填装置>
グラウト材充填装置12は、チャンバ6の下部にグラウト材16を注入可能に隔壁5に装着されるグラウト材注入ノズル41を備えている。グラウト材注入ノズル41は、グラウト材供給配管42を介してグラウト材タンク43に接続されている。グラウト材供給配管42の途中には、グラウト材タンク43内のグラウト材16をグラウト材注入ノズル41へと圧送するグラウト材圧送ポンプ44が介設されている。なお、グラウト材供給配管42の配管途中には、グラウト材圧送ポンプ44以外に、図示されない圧力スイッチ、圧力センサ、流量計等が適宜に配設されている。
【0031】
なお、止水材15とグラウト材16とは、注入時期が異なる。このため、A液タンク27とグラウト材タンク43とを一つのタンクで兼用するとともに、A液圧送ポンプ31とグラウト材圧送ポンプ44とを一つの圧送ポンプで兼用し、A液供給配管26及びグラウト材供給配管42に所要の開閉弁を設けて、当該開閉弁の切換により、A液注入とグラウト材注入とを切り換えるように構成してもよい。
【0032】
<止水材>
A液タンク27には、硬化材、助材、安定剤、及びゲル化促進剤を含有する水溶液であるA液が貯留されている。一方、B液タンク29には、塑性強度を高める塑強調整剤(特殊水ガラス)としてのB液が貯留されている。止水材15は、A液タンク27からA液供給配管26を介して供給されるA液と、B液タンク29からB液供給配管28を介して供給されるB液とを混合装置21で混合することによって調製される。止水材15は、A液とB液との混合により、ゲルタイム(液体から可塑状になるまでの時間)15〜60秒以内にゲル化し、200〜300dPsの粘性を確保し、硬化工程を経て硬化した後の一軸圧縮強度が0.025〜0.20N/mmとなる。止水材15は、硬化により十分な止水効果を発揮するとともに、掘進停止状態のシールド掘進機1Aが再び掘進できないくらいにシールド掘進機1Aを地盤に固着することなく周辺地盤を支えることができる。止水材15の目標性状を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
[硬化材]
止水材15において、硬化材は、硬化を促進する目的で使用される。硬化材は、水硬性セメント類の一種で、石灰質原料と粘土質原料とを混合して焼成・粉砕した無機系の材料である。硬化材の配合量は、好ましくは50〜110kg/mであり、より好ましくは75〜100kg/mである。なお、図5に示されるように、硬化材が110kg/mで一軸圧縮強度が0.3N/mm程度の強度発現が予想される。一軸圧縮強度が0.3N/mmを超えると、掘進停止状態のシールド掘進機1Aが再び掘進できないくらいに地盤に固着される虞があるため、硬化材の上限は110kg/m程度となる。また、図5に示されるように、硬化材が50kg/mを下回ると、硬化後の一軸圧縮強度が0.01N/mm未満となることが予想される。一軸圧縮強度が0.01N/mm未満であると、チャンバ6の開放時の圧力変動に伴い、止水材15がシールド掘進機1Aの前面側に引き込まれ、地下水の流入を誘発する虞があるため、硬化材の下限は50kg/m程度となる。
【0035】
[助材]
止水材15において、助材は、ブリージングや材料分離を抑制する目的で使用される。助材は、セリサイト(絹雲母系粘土)、及びモンモリロナイトを主成分とする無機系の材料であり、鉱物結晶が微細で粘稠性に富んでいる。助材の配合量は、好ましくは150〜250kg/mであり、より好ましくは200〜225kg/mである。
【0036】
[安定剤]
止水材15において、安定剤は、A液の流動性を確保するとともに、凝結を遅延させる目的で使用される。安定剤は、シュクロースを主成分とする材料であり、硬化材による硬化遅延を目的としながら塑強調整剤(B液)の添加・混合によって瞬時に凝結が開始され、強度発現を阻害しない材料である。安定剤の配合量は、好ましくは3.5〜10kg/mであり、より好ましくは4〜6kg/mである。
【0037】
[ゲル化促進剤]
止水材15において、ゲル化促進剤は、地下水による水希釈を抑制する目的で使用される。ゲル化促進剤は、塩化マグネシウム、及び/又は塩化カルシウムを主成分とする材料である。ゲル化促進剤の配合量は、好ましくは1〜5kg/mであり、より好ましくは2〜3kg/mである。
【0038】
[塑強調整剤]
止水材15において、塑強調整剤は、その中に含まれる添加物がコロイダルシリカの硬化機構に対して触媒的に作用し、塑性時間、及び圧縮強度を調整する性質を有する水ガラス系の材料である。塑強調整剤の配合量は、20〜75L/mであり、より好ましくは40〜60L/mである。
【0039】
<グラウト材>
グラウト材タンク43には、硬化材、目詰め材、流動膨張剤を含有する水溶液であるグラウト材16が貯留されている。グラウト材16の目標性状を表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
[硬化材]
グラウト材16に使用される硬化材は、止水材15に使用される硬化材と基本的に同じであり、水硬性セメント類の一種で、石灰質原料と粘土質原料とを混合して焼成・粉砕した無機系の材料である。硬化材の配合量は、好ましくは200〜270kg/mであり、より好ましくは230〜250kg/mである。
【0042】
[目詰め材]
グラウト材16において、目詰め材は、止水材15において助材として配合されるセリサイト(絹雲母系粘土)、及びモンモリロナイトを主成分とする無機系の材料である。この目詰め材においては、ある粒径のふるい目を通過した土の量の重量百分率(%)を縦軸に、粒径を対数目盛の横軸にしてプロットした粒径加積曲線による測定から重量百分率85%にあたる粒径が10μm以下である微粒子注入材としての特徴を持つ材料である。目詰め材の配合量は、好ましくは80〜120kg/mであり、より好ましくは90〜110kg/mである。
【0043】
[流動膨張剤]
グラウト材16において、流動膨張剤は、流動性を高めるとともに硬化材によって硬化が進む際に体積を増加させる目的で使用される。流動膨張剤は、リグニンスルフォン酸化合物(流動化剤)、アルミニウム粉末(膨張剤)、及び炭酸カルシウムを含有する材料である。流動膨張剤の配合量は、好ましくは1〜3.5kg/mであり、より好ましくは2〜3kg/mである。
【0044】
<シールド掘進機の掘進動作>
シールド掘進機1Aにおいては、図示されない送泥ポンプにより送泥管51を介して泥水をチャンバ6へと送り、圧力をかけて地盤の土水圧に対抗させて切羽の安定を図りつつ、掘削した土砂を泥水と共に図示されない排泥ポンプにより排泥管52を介して図示されない流体処理設備に流体輸送する。また、シールド掘進機1Aにおいては、前回の掘進工程において既に組み立てられているセグメント7の前端面にシールドジャッキを押し当て、シールドジャッキを伸長させて、シールドジャッキの1ストローク分の長さのトンネルを掘削する。その後、セグメントエレクタを用いて、既設のセグメント7に新たなセグメント7を連結するように組み立て、組み立てた新たなセグメント7にシールドジャッキを押し当てて伸長させるという動作を繰り返し行うことにより、セグメント7で構成された外壁を有するトンネルが構築される。なお、トンネルの外壁となるセグメント7と周辺地盤との間には、カッタヘッド3のオーバカット等により、空隙(テールボイド)が生じる。テールボイドには、地盤沈下や既設構造物への悪影響を未然に防ぐために、胴体2のテール部に装備される図示されない裏込め材注入装置により裏込め材を注入して、セグメント7を固定する。
【0045】
トンネル施工区間においては、所定距離(例えば、200m)毎にシールド掘進機1Aのチャンバ6内部の点検やカッタヘッド3等の点検を行う位置(以下、「カッタヘッド等点検位置」と称する。)が予め定められ、シールド掘進機1Aがカッタヘッド等点検位置に到達すると、カッタヘッド3等の点検を行わなければならない場合がある。カッタヘッド3等の点検を行う際には、チャンバ6を開放する必要がある。チャンバ6を開放すると、シールド掘進機1Aの周辺地盤からの地下水がシールド掘進機1A内に流入し、これが原因でシールド掘進機1Aの周囲の地盤が緩み、地盤沈下や陥没に至る虞がある。従って、点検を安全に行うためには、後述するトンネル止水工法の実施により、シールド掘進機1Aに対する周辺地盤からの地下水を遮断しなければならない。
【0046】
シールド掘進機1Aへの地下水の流入は、シールド掘進機1Aの後方からの流入、シールド掘進機1Aの胴体2の周囲からの流入、シールド掘進機1Aの前方からの流入の3つに分類される。これらのうち、シールド掘進機1Aの後方からの地下水の流入については、トンネルの外壁となるセグメント7と周辺地盤との間に生じるテールボイドに起因するものであり、裏込め材注入装置(図示省略)によって裏込め材をテールボイドに注入することによって確実に防ぐことができる。なお、シールド掘進機1Aのテール部から裏込め材が流出し、所定の圧力が確保できない場合は、掘進完了後に、セグメント7から裏込め材を補充注入するのがよい。
【0047】
一方、シールド掘進機1Aの胴体2の周囲からの地下水流入、及びシールド掘進機1Aの前方からの地下水流入については、以下に述べるトンネル止水工法の実施により防ぐことができる。
【0048】
<トンネル止水工法>
図2は、本発明の第一実施形態に係るトンネル止水工法の実施の手順を示すフローチャートである。なお、図2中記号「S」はステップを表わす(図4においても同様)。この図2を用いてトンネル止水工法の実施の手順について以下に説明する。
【0049】
[S1〜S3]
まず、シールド掘進機1Aがカッタヘッド等点検位置に到達すると(S1において「YES」)、シールド掘進機1Aの掘進を停止させて、カッタヘッド等点検位置における地盤の地質が岩層であるか否かを判断する(S2)。岩層である場合(S2において「YES」)、カッタビット4が岩層に食い込んだ状態ではカッタビット4の点検・交換作業ができないため、カッタヘッド3等の点検作業が不十分なものとなる。このため、カッタビット4の点検・交換作業が可能となるように、シールド掘進機1Aを所定距離(例えば、50〜100mm)だけ後退させる(S3)。なお、カッタヘッド等点検位置における地盤の地質が岩層でなく、土砂層等である場合(S2において「NO」)は、ステップS4に進む。
【0050】
[S4:止水材充填工程、硬化工程]
ステップS4においては、A液圧送ポンプ31、及びB液圧送ポンプ32をそれぞれ作動させることにより、A液タンク27内のA液を混合装置21へと圧送するとともに、B液タンク29内のB液を混合装置21へと圧送する。これにより、A液とB液とが混合装置21で混合されて止水材15が調製される。調製された止水材15は、混合装置21の止水材吐出部25から止水材供給配管30を介して止水材注入ノズル22へと圧送される。圧送された止水材15は、止水材注入ノズル22から噴出されて、シールド掘進機1Aの胴体2と周辺地盤との間の空隙に充填される。充填された止水材15は、ゲルタイム15〜60秒以内にゲル化し、200〜300dPsの粘性が確保され、硬化工程を経て、0.025〜0.20N/mmの一軸圧縮強度が発現される。これにより、掘進停止状態のシールド掘進機1Aが再び掘進できないくらいにシールド掘進機1Aを地盤に固着することなく周辺地盤を支えることができるとともに、シールド掘進機1Aの周辺地盤のうち、特に、シールド掘進機1Aの胴体2回りの周辺地盤からの地下水を簡易且つ確実に遮断することができる。
【0051】
[S5〜S8]
次いで、チャンバ6内に流入する地下水の流量を測定し(S5)、測定流量が、カッタヘッド3等の点検を安全に行うことができるとして予め設定された許容流量を超えているか否かを判断する(S6)。測定流量が許容流量を超えており(S6において「YES」)、且つ、カッタヘッド等点検位置における地盤の地質が岩層である場合(S7において「YES」)、チャンバ6内の泥水を清水に置換する(S8)。なお、測定流量が許容流量を超えており(S6において「YES」)、且つ、カッタヘッド等点検位置における地盤の地質が岩層でなく、土砂層等である場合(S7において「NO」)は、ステップS9に進む。
【0052】
[S9:グラウト材充填工程]
ステップS9においては、グラウト材圧送ポンプ44を作動させることにより、グラウト材タンク43内のグラウト材16をグラウト材注入ノズル41へと圧送する。ここで、ステップS8でチャンバ6内の清水置換を経た岩盤の場合、清水中に正規の配合のグラウト材16をチャンバ6内に注入すると、注入初期は水と硬化材との比(W/C)が大きく硬化材の量が少ない貧配合(W/C>1000%)のグラウト材16になっている。このように岩盤面の小さい亀裂には、最も浸透しやすい清水から次第に正規の配合のグラウト材16に置換していき、清水と完全に置換(W/C=(883/240)×100=368%)した後、グラウト材16の注入流量が一定となるまで注入する。なお、ステップS8でのチャンバ6内の清水置換を経ていない土砂の場合、岩盤に比べて比較的大きな亀裂のため、グラウト材16は、清水過程を経ることなく、泥水から徐々に正規の配合のグラウト材16をチャンバ6内に注入し、泥水と完全に置換した後、グラウト材16の注入流量が一定となるまで注入して、グラウト材16を地盤内に十分に浸透させる。
【0053】
グラウト材16の注入流量は、対象地盤の透水係数と圧力差によって異なる。亀裂が大きい(透水係数が大きい)場合、多量のグラウト材16を注入する必要がある。亀裂が小さい(透水係数が小さい)場合は、少量のグラウト材16を注入することで安定する。以下の表3に示されるように、対象地盤の透水係数が1×10−4〜1×10−3m/sの場合、グラウト材16の注入流量は、466.5〜4665.3L/minであり、対象地盤の透水係数が1×10−7〜1×10−5m/sの場合、グラウト材16の注入流量は、0.5〜46.7L/minとなる。グラウト材圧送ポンプ44の吐出能力の観点から、透水係数が1×10−7〜1×10−5m/sの地盤に対して上記のグラウト材充填工程が有効である。なお、切羽における0.5〜1mm程度の幅の亀裂をグラウト材16によって遮断できれば、地下水の流入を相当低減することができる。
【0054】
【表3】
【0055】
ステップS9のグラウト材充填工程の実施により、チャンバ6内に流入する地下水の測定流量が、カッタヘッド3等の点検を安全に行うことができるとして予め設定された許容流量以下となれば(ステップS6において「NO」)、シールド掘進機1Aのチャンバ6を開放し、チャンバ6内部の点検やカッタヘッド3等の点検を行う(S10)。チャンバ6を開放しても、グラウト材16に含まれる流動膨張剤の作用により、切羽側の地盤に浸透したグラウト材16がシールド掘進機1A側に引き戻されるのを防ぐことができる。従って、点検等のためにシールド掘進機1Aのチャンバ6が開放されても、切羽前方の地盤亀裂を確実に塞ぐことができ、シールド掘進機1Aの周辺地盤のうち、特に、シールド掘進機1Aの前方の切羽側からの地下水を簡易且つ確実に遮断することができる。
【0056】
なお、ステップS4の止水材充填工程の実施により、チャンバ6内に流入する地下水の測定流量が許容流量以下となれば、グラウト材充填工程を実施することなく、シールド掘進機1Aのチャンバ6を開放し、チャンバ6内部の点検やカッタヘッド3等の点検を行う(S5、S6、S10)。
【0057】
カッタヘッド3等の点検のために掘進停止状態のシールド掘進機1Aは、再び掘進できないくらいに止水材15によって地盤に固着されておらず、再掘進可能であるので、点検作業等が終了すれば、速やかに掘進を再開することができる。
【0058】
〔第二実施形態〕
図3は、本発明の第二実施形態に係るトンネル止水工法の実施に供する泥土圧式のシールド掘進機の縦断面方向の概略図である。第二実施形態において、第一実施形態と同一又は同様のものについては、図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとし、以下においては、第二実施形態に特有の部分を中心に説明することとする。
【0059】
<シールド掘進機>
図3に示されるシールド掘進機1Bは、添加材を使用して掘削土砂を泥土化し、それに所定の圧力を与えて切羽の安定を図りつつ掘削を行うものである。このシールド掘進機1Bにおいては、掘進速度と排土量とを制御して土圧を保持しており、チャンバ6の下部に連通するように後方に向かって上向きに傾斜配置で接続されるスクリュコンベヤ60の回転数を増減させることにより排土量を制御する。なお、地盤の元々の粒度分布が良く添加材を使用しない場合があり、この場合、シールド掘進機1Bは、土圧式のシールド掘進機として機能する。
【0060】
シールド掘進機1Bは、チャンバ6内に止水材15を注入可能に隔壁5に装着される止水材注入ノズル45を備えている。止水材注入ノズル45と混合装置21とは、止水材供給配管46によって接続されている。これにより、混合装置21で調製された止水材15が、混合装置21から止水材供給配管46を介して止水材注入ノズル45へと圧送される。圧送された止水材15は、止水材注入ノズル45からチャンバ6の内部に注入される。また、シールド掘進機1Bにおいては、第一実施形態のシールド掘進機1Aで設けられるグラウト材充填装置12とは異なる構成のグラウト材充填装置62が設けられている。グラウト材充填装置62は、切羽に直接的にグラウト材16を注入可能にカッタヘッド3の前面側に装着される所要のグラウト材注入ノズル63を備えている。グラウト材注入ノズル63は、所要のスイベルジョイント(図示省略)を含みカッタヘッド3の中央部を通って胴体2の後方へと延設されるグラウト材供給配管64を介してグラウト材タンク65に接続されている。グラウト材供給配管64の途中には、グラウト材タンク65内のグラウト材16をグラウト材注入ノズル63へと圧送するグラウト材圧送ポンプ66が介設されている。なお、グラウト材供給配管64の配管途中には、グラウト材圧送ポンプ66以外に、図示されない圧力スイッチ、圧力センサ、流量計等が適宜に配設されている。
【0061】
<トンネル止水工法>
図4は、本発明の第二実施形態に係るトンネル止水工法の実施の手順を示すフローチャートである。この図4におけるステップS1〜ステップS7までの手順は、図2におけるそれと全く同じであるので説明を省略し、ステップS21〜ステップS23の手順について重点的に説明することとする。
【0062】
[S21]
ステップS5における測定流量が許容流量を超えている場合(S6において「YES」)、チャンバ6内等を不透水層に置換する(S21)。すなわち、泥土圧式のシールド掘進機1Bの場合、チャンバ6内を加圧すると、スクリュコンベヤ60から胴体2の作業室側に圧力が逃げる虞がある。このとき、止水材充填装置11により混合装置21から止水材供給配管46及び止水材注入ノズル45を介して止水材15をチャンバ6内に注入し、注入した止水材15とチャンバ6内の土砂とを混合して、チャンバ6内、及びスクリュコンベヤ60内を不透水層で置換することにより、チャンバ6内の圧力を保持する。止水材15の土砂との混合比は30%以上が好ましい。
【0063】
[S22]
ステップS5における測定流量が許容流量を超えており(S6において「YES」)、且つ、カッタヘッド等点検位置における地盤の地質が岩層である場合(S7において「YES」)、カッタヘッド3の前面の空間に清水を充填する(S22)。清水は、添加材を注入するための添加材注入ノズル(図示省略)から添加材に替えて注入して充填する。
【0064】
[S23:グラウト材充填工程]
ステップS22で清水を充填したら、グラウト材充填装置62におけるグラウト材圧送ポンプ66を作動させて、グラウト材タンク65内のグラウト材16をグラウト材注入ノズル63へと圧送する。これにより、切羽とカッタヘッド3との間に清水から徐々に正規の配合のグラウト材16が注入され、グラウト材16が清水と完全に置換した後、グラウト材16の注入流量が一定となるまでグラウト材16を注入して、グラウト材16を地盤内に十分に浸透させる。
【実施例】
【0065】
次に、本発明のトンネル止水工法、トンネル止水システム、止水材、及びグラウト材の具体的な実施例について説明する。
【0066】
<止水材>
下記の表4に示される1.05mあたりの配合量にて止水材を調製した。ここで、硬化材、助材、安定剤、ゲル化促進剤、及び塑強調整剤の製造会社及び製品名は、以下の通りである。
硬化材:(株)タック、「タックメント」
助材 :(株)タック、「TAC−βII」
安定剤:(株)タック、「TAC−Re」
ゲル化促進剤:(株)タック、「TACゲル」
塑強調整剤 :(株)タック、「TAC−3G」
【0067】
【表4】
【0068】
表4に示される配合において、B液の配合量をそのままでゲル化促進剤の配合量を変化させる場合と、B液の配合量を減らしゲル化促進剤を配合しない場合との両方の場合の止水材の性状を表5に示す。
【0069】
【表5】
【0070】
また、1.05mあたりのB液が50L、及び20Lの場合における止水材と土砂との混合比率30%の性状を表6に示す。
【0071】
【表6】
【0072】
表5〜表6に示される結果から明らかなように、本発明の止水材は、一軸圧縮強度を0.1N/mm程度で保持することにより、掘進停止状態のシールド掘進機が再び掘進できないくらいにシールド掘進機を地盤に固着することなく周辺地盤を支えることができる。また、土砂(透水係数:1.1×10−4m/s)と止水材とを混合して得られる不透水層は、透水係数2.4×10−7〜4.9×10−7程度を実現している。
【0073】
<グラウト材>
下記の表7に示される1mあたりの配合量にてグラウト材を調製した。ここで、硬化材、目詰め材、及び流動膨張剤の製造会社及び製品名は、以下の通りである。
製品名
硬化材 :(株)タック、「タックメント」
目詰め材:(株)タック、「TAC−βII」
流動膨張剤:(株)タック、「FTA−S」
【0074】
【表7】
【0075】
表7に示される配合にて調製されたグラウト材の性状を表8に示す。
【0076】
【表8】
【0077】
上記のグラウト材に対して、レーザ回折・散乱法(掘場製作所:LA−920)による粒度分析を実施したところ、図6に示される粒径加積曲線測定によるグラウト材の85%粒径(重量比が85%にあたる粒径)が14μm程度となり、微粒子注入材に近い粒径を有していることが確認された。併せて、目詰め材の85%粒径が10μm以下(測定値7.5μm)であることを図7に示す。
【0078】
グラウト材の粒径と注入対象地盤の粒径から浸透可否を評価する指標として、グラウタビリティ比(GR)があり、GR=D15/G85の値が15〜25以上であれば、グラウト材16は注入対象地盤に浸透可能とされている。ここで、D15とは、地盤の粒径加積曲線測定による15%粒径であり、G85は、グラウト材の粒径加積曲線測定による85%粒径である。
【0079】
グラウト材の浸透可能領域を逆算すると、D15=GR×G85=(15〜25)×14μm=210〜350μmとなり、地盤の粒径加積曲線測定による15%粒径が210〜350μm程度まで浸透可能であることが分かる。これは、岩盤の亀裂幅に相当するため、本発明のグラウト材であれば、亀裂幅1mm以下、さらに0.5mm程度まで浸透可能である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明のトンネル止水工法、トンネル止水システム、止水材、及びグラウト材は、地山を掘進してトンネルを構築するシールド掘進機に対する周辺地盤からの地下水を遮断する用途において利用可能である。
【符号の説明】
【0081】
1A,1B シールド掘進機
2 胴体
11 止水材充填装置
12 グラウト材充填装置(第一グラウト材充填装置)
15 止水材
16 グラウト材
62 第二グラウト材充填装置
【要約】
【課題】シールド掘進機に対する周辺地盤からの地下水を簡易且つ確実に遮断することができるトンネル止水工法を提供する。
【解決手段】地山を掘進してトンネルを構築するシールド掘進機1Aに対する周辺地盤からの地下水を遮断するトンネル止水工法であって、シールド掘進機1Aの掘進を停止させた状態で、シールド掘進機1Aの胴体2と周辺地盤との間の空隙に、硬化してもシールド掘進機1Aが再掘進可能な止水材15を充填する止水材充填工程を包含するトンネル止水工法。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7