(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明において、放射性セシウムとは、セシウムの放射性同位体であるセシウム134及びセシウム137である。
【0017】
図1は、本発明に係る放射性セシウムの除去装置の一実施の形態を示し、この放射性セシウム除去装置1は、調合装置2と、焼成装置7と、排ガス処理装置10とで構成される。
【0018】
調合装置2は、放射性セシウムで汚染された土壌や焼却灰等の廃棄物Wを貯留する貯槽3と、反応促進剤としての酸化カルシウム源(以下「CaO源」という。)を貯留する貯槽4と、反応促進剤としての塩素源(以下「Cl源」という。)を貯留する貯槽5と、貯槽3〜5に貯留される廃棄物W、CaO源及びCl源を引き出して調合する定量供給機(不図示)と、調合物Mを貯留する貯槽6とを備える。
【0019】
上記CaO源として石灰石粉、炭酸カルシウム、生石灰、消石灰、石灰石、ドロマイト、高炉スラグ等を含むものを用いることができる。また、Cl源は、放射性セシウムの塩化揮発を促進し、かつ揮発回収物を減容化するために用いられ、塩化カルシウム(CaCl
2)、塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩素を有する廃プラスチック等があるが、このうちCaCl
2は、効果的に放射性セシウムを除去できるので好ましい。
【0020】
焼成装置7は、ロータリーキルン(加熱炉)8と、クリンカクーラ9とで構成され、ロータリーキルン8は、調合装置2からの調合物Mが供給される投入口8aや、微粉炭等の化石燃料を噴出するバーナ8b等を備え、調合物M等を焼成して焼成物(加熱生成物)を得る。
【0021】
排ガス処理装置10は、焼成装置7の後段に配置され、ロータリーキルン8から排出された排ガスG1を冷却する冷却塔11と、冷却塔11の後段に配置されたサイクロン12と、サイクロン12で回収された粗粉Cの放射性セシウム濃度を測定する測定装置13と、粗粉Cの搬送ルート15(15A−15G)と、測定装置13の測定結果に基づいて粗粉Cの搬送ルート15を切り替える切替装置14と、第1集塵機16と、第2集塵機17と、両集塵機16、17によって濃縮セシウム塩等のダストが除去された排ガスG5を脱硝する脱硝装置18と、脱硝装置18の排ガスG6を系外へ排気する煙突19とで構成される。
【0022】
冷却塔11は、ロータリーキルン8の排ガスG1を冷却し、廃棄物Wから揮発した放射性セシウム等を固体状として回収するために備えられる。排ガスG1の冷却は、冷却塔11の下端部に設置された散水装置11aから水を噴霧することにより行う。尚、この散水装置11aは、揮発した塩化セシウムを固体状として排ガスG1に含まれるダストに付着させて回収し得る程度の機能を備えていればよい。水による冷却ではなく、冷却塔内に冷却空気を導入することによって冷却してもよく、水と冷却空気を併用してもよい。
【0023】
分級機としてのサイクロン12は、高濃度の放射性セシウムを含む微粉を第1集塵機16で捕集し、カルシウムやシリカ成分を主体とする粗粉Cを回収するために設けられる。
【0024】
測定装置13は、例えば、ゲルマニウム半導体検出器やNaIシンチレーション検出器であって、ホッパー内の表面線量率から試料の放射能濃度を算出したり、ホッパーを囲うように設置された放射能濃度測定器にて粗粉C放射能濃度を測定する。外部から測定する場合は、表面線量率と試料の放射能濃度との関係(係数)を事前に確認しておく必要がある。あるいは対象試料を専用容器に充填又は規定の形状にした後にコンベアに乗せて流し、あるいはコンベア上で所定の形状に揃えた後に流し、コンベアを囲うように設置された(NaI検出器等で構成された)放射能濃度測定装置に通すことでて試料の放射能濃度を連続的に測定する。これらのうち、粗粉の外部への漏えいを防止する観点からホッパー方式が望ましい。粗粉は、冷却されているので、直接表面を測定したり、ホッパーに充填された粗粉内に検出器を配置して測定することができる。
【0025】
搬送ルート15として、粗粉Cをロータリーキルン8へ戻す第1〜第5搬送ルート15A〜15Eと、粗粉Cを放射性セシウム除去装置1の系外へ排出する第6搬送ルート15F及び第7搬送ルート15Gの7つの搬送ルート15A〜15Gが存在する。詳細は後述するが、第1〜第5搬送ルート15A〜15Eは、粗粉Cをロータリーキルン8に直接又は間接的に戻すものや、処理装置を経て最終的にロータリーキルン8に戻すものである。
【0026】
第6搬送ルート15F及び第7搬送ルート15Gは、粗粉Cを放射性セシウム除去装置1の系外へ排出するためのものであり、詳細は後述するが、第6搬送ルート15Fは、粗粉Cを直接系外へ排出し、第7搬送ルート15Gは、粗粉Cを直接系外へ排出しないが、ロータリーキルン8を経ないで系外へ排出するルートである。
【0027】
第1集塵機16は、サイクロン12の排ガスG3から、上述のようにして濃縮されたセシウム塩等を含むダストD1を集塵するために備えられ、バグフィルタ等が用いられる。
【0028】
第2集塵機17は、セシウム塩等を除去した後の排ガスG4に含まれる酸性ガス等を除去するために設けられ、カルシウム成分を含んでいる中和剤Nを中和剤添加装置(不図示)から添加し、酸性ガス等を吸着したダストD2を回収する。この第2集塵機17にもバグフィルタ等が用いられる。
【0029】
脱硝装置18は、第2集塵機17の排ガスG5にアンモニアガス(NH
3)を注入してNOxを窒素に還元して無害化するために設けられる。
【0030】
次に、上記構成を有する放射性セシウムの除去装置1の動作について、
図1を参照しながら説明する。
【0031】
調合装置2において、放射性セシウムで汚染された廃棄物Wと、反応促進剤としてのCaO源及びCl源を貯槽3〜5から引き出して調合して調合物Mを得る。調合物Mは、焼成した場合にC
3S(エーライト)が生成しない土工資材や、C
3Sを含むセメントクリンカの組成とする。
【0032】
土工資材を製造する場合には、調合物M中のCaO、SiO
2及びMgOの関係が(CaO+1.39×MgO)/SiO
2=1.0〜2.7を満たすように、廃棄物WとCaO源をその種類や配合割合を定めた上で調合することが好ましい。式中、CaO、MgO、SiO
2は、各々カルシウムの酸化物換算の質量、マグネシウムの酸化物換算の質量、珪素の酸化物換算の質量を表す。上記式CaO、MgO、及びSiO
2の各々の質量によって算出される上記式の右辺の値(質量比)は、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.9〜2.4である。尚、上記関係式において、CaOの1モルの質量は、MgOの1.39モルの質量に相当することから、MgOの質量に1.39を乗じている。
【0033】
上記質量比が1.0未満であると、焼成温度が高温になるにつれて液相が生じ易くなり、放射性セシウムの揮発量が減少するおそれがある。上記質量比が2.7を超えると、放射性セシウムで汚染された廃棄物W及び調合物M中のカリウム及びナトリウムの揮発量の総和が増加し、粗粉C中のアルカリ成分が増加したり、排ガスG2を冷却して得られるダストの量が増加するおそれがある。
【0034】
一方、セメントクリンカを製造する場合には、調合物M中のCaO、SiO
2及びMgOの関係が(CaO+1.39×MgO)/SiO
2=2.7〜3.7を満たすように、廃棄物WとCaO源をその種類や配合割合を定めた上で調合することが好ましい。
【0035】
上記質量比が2.7以上であると、調合物Mが溶融し難くなるため、放射性セシウムをより多く揮発させることができる。一方、上記質量比が3.7を超えると、セメントクリンカに含まれるフリーライム(遊離石灰)が増加するためセメントの品質が低下するおそれがある。これらをより確実に防止するため、上記質量比が2.8〜3.5を満たすことが好ましい。さらに、調合物Mのケイ酸率(S.M.)を1.3〜3.0、鉄率(I.M.)を1.3〜2.8に調整することで、所望のセメントクリンカを製造することができる。
【0036】
また、上記Cl源の量は、土工資材及びセメントクリンカのいずれを製造する場合にも、廃棄物Wに含まれる放射性セシウムに対して当量以上となるように調合することが好ましい。Cl源の量の上限は、塩素と、セシウム及びカリウムとのモル比Cl/(Cs+K)が好ましくは1.5以下、より好ましくは1.0以下になる量である。このモル比が1.0以下であると、カリウムやナトリウムの揮発量を抑制しながら放射性セシウムが揮発するため、放射性セシウム含有廃棄物の減容化を図ることができる。
【0037】
尚、土工資材を製造する場合には、土工資材(焼成物B)の酸化カルシウム濃度が50質量%以上となるように、上記調合及び下記焼成を行うことが好ましい。これにより、硫黄分が土工資材中に保持されたり、後述する第1集塵機16において硫黄化合物として、排ガスG3のダストD1として集塵されるため、硫黄分の循環を抑制でき、排ガス処理の負荷の増大やコーチングの増加を低減することができる。
【0038】
貯槽6から調合物Mを投入口8aを介してロータリーキルン8に投入し、1200℃以上1550℃以下で焼成して焼成物Bを得る。ここで、ロータリーキルン8内の酸素分圧を3%以上、好ましくは5%以上とする。これにより、ロータリーキルン8内での硫黄化合物の分解が抑制され、硫黄分の循環が抑制されるので、中和剤使用量の増加及びロータリーキルン8や冷却塔11へのコーチング付着量の増加を抑制することができる。
【0039】
一方、調合物Mの廃棄物Wに含まれていた放射性セシウムは、ロータリーキルン8内でCl源から生じた塩素と反応して塩化セシウムとなって揮発し、排ガスG1に含まれた状態でサイクロン12へ導入される。
【0040】
排ガスG1は、冷却塔11において、散水装置11aから噴霧された水によって急激に冷却され、排ガスG1に含まれていた塩化セシウムが固体状のセシウム塩となる。そして、ほとんどのセシウム塩は微粉のままダストD1として回収されるが、一部は粗粉ダストに付着する。
【0041】
冷却塔11の排ガスG2に含まれるダストをサイクロン12で分級し、分級して得られた粗粉Cを測定装置13へ供給し、測定装置13において粗粉Cの放射性セシウム濃度を測定する。
【0042】
ここで、測定装置13によって測定された粗粉Cの放射性セシウム濃度が比較的低い場合には、切替装置14によって第1〜第5搬送ルート15A〜15Eのいずれかに切り替え、粗粉Cをロータリーキルン8へ戻し、この濃度が比較的高い場合には、切替装置14によって第6搬送ルート15F又は第7搬送ルート15Gのいずれかに切り替え、粗粉Cを放射性セシウム除去装置1の系外へ排出する。
【0043】
上記粗粉Cをロータリーキルン8へ戻すか系外へ排出するかを決定する放射性セシウム濃度は、土工資材のみを製造の場合は、対応可能な濃度である20万Bq/kg以下とする。骨材及びセメント、あるいはセメントのみを製造の場合は、セメント組成で対応可能な濃度である100万Bq/kg以下とする。セメントの数値が高いのは、セメントのほうがCa量が多い分高温でも溶融し難く、焼成によるセシウムの揮発率が高くなるためである。したがって、20万Bq/kgを超え100万Bq/kg以下の粗粉Cはセメントクリンカの組成として加熱する対応をとり、100万Bq/kgを超える粗粉Cは系外へ排出することとなる。
【0044】
次に、切替装置14による搬送ルートの切替について詳細に説明する。
【0045】
測定装置13によって測定された粗粉Cの放射性セシウム濃度が廃棄物Wの20倍以下、好ましくは10倍以下である場合には、
図2に示すように、切替装置14によって搬送ルートを第1搬送ルート15Aに切り替え、粗粉Cを直接ロータリーキルン8へ戻す。粗粉の量は、質量比で投入原料の通常2%、短期間に最大でも5%であるので、20倍以下であれば、焼成物の放射性Csに大きく影響することはない。それ以上になると、焼成物の放射性Cs濃度が100Bq/kg以上となる頻度が高くなる。
【0046】
また、
図3に示すように、粗粉Cを直接ロータリーキルン8へ戻さずに、切替装置14によって搬送ルートを第2搬送ルート15Bに切り替えて廃棄物Wの貯槽3へ戻して貯槽4、5に貯留されるCaO源や、Cl源との調合を行うこともできる。
【0047】
一方、測定装置13によって測定された粗粉Cの放射性セシウム濃度が廃棄物Wの40倍以下、好ましくは20倍以下である場合には、
図4に示すように、切替装置14によって搬送ルートを第3搬送ルート15Cに切り替え、水洗装置21によって粗粉Cを水洗し、固液分離機22によって水洗装置21からのスラリーSを脱水し、得られた脱水ケーキDCをロータリーキルン8へ戻す。これにより、粗粉Cに含まれる放射性セシウムやアルカリの一部が除去され、焼成物Bの放射性セシウム濃度の増加を防止することができる。尚、脱水ケーキDCを貯槽6に戻してもよく、この際には貯槽6に乾燥手段を設ける必要がある。
【0048】
上記固液分離機22として、フィルタープレスを用いると脱水ケーキDCが塊状となり、これを破砕するだけで造粒物を得ることができるので好ましい。別途、パグミル、皿型ペレタイザー、ドラム型造粒機、押出成型機等の造粒機を使用してもよい。造粒物の粒度は、粒径10〜100mmが好ましい。造粒によって比表面積を減少させて造粒物の溶融を防止し、造粒物に含まれる放射性セシウムの揮発を促進させる。また、ロータリーキルン8内の発塵も少なくなるので、発生する放射性セシウム含有廃棄物の量も少なくなる。ここで、粒径が100mmより大きいと造粒機が過大となって装置及び運転コストが増加し、一方、粒径が10mmを下回ると比表面積が大きくなって造粒による効果が薄れるため好ましくない。
【0049】
尚、上記固液分離機22における固液分離を厳密に行う必要はなく、例えば、遠心分離や沈降分離のように、脱水ケーキDCにろ液Fの一部が多少混入していてスラリー状となっていてもよい。逆にろ液Fに粗粉が多少混入していてもよい。
【0050】
一方、固液分離機22からのろ液Fは、散水装置11aを介して冷却塔11で噴霧することで、ろ液Fの水分を蒸発させ、固体状の放射性セシウムを後述する第1集塵機16でダストD1として回収する。
【0051】
尚、このろ液Fを、サイクロン12の排ガスG3に添加してもよい。冷却塔11にろ液Fを供給すると、ろ液Fに含まれる放射性セシウムがサイクロン12の粗粉C側に付着して循環するおそれがあるが、排ガスG3に添加することで、放射性セシウムの循環を確実に防止することができる。この場合、冷却塔11で必ずしも放射性セシウムが固体となる温度まで冷却する必要はなく、第1集塵機16で放射性セシウムが固体となる温度まで冷却すればよい。その結果、粗粉C1の放射線セシウム濃度は低くなり、ダストD1に放射性セシウムをより多く濃縮することができる。
【0052】
さらに、測定装置13によって測定された粗粉Cの放射性セシウム濃度が廃棄物Wの100倍以下、好ましくは50倍以下である場合には、
図5に示すように、切替装置14によって搬送ルートを第4搬送ルート15Dに切り替え、粗粉CにCaO源を添加した後造粒機23によって粗粉Cを造粒し、得られた造粒物GRをロータリーキルン8へ戻すことができる。この造粒により、比表面積を減少させて造粒物GRの溶融を防止し、造粒物GRに含まれる放射性セシウムの揮発を促進させることができる。
【0053】
また、CaO源の添加量は、焼成した場合にC
3S(エーライト)が生成する組成とする。C
3Sを含むセメントクリンカとすることで、市販されているポルトランドセメントと同等品質のセメントを製造することができる。ここで、造粒物GR中のCaO、SiO
2及びMgOの関係が、(CaO+1.39×MgO)/SiO
2=2.7〜3.7、より好ましくは2.8〜3.5を満たすようにCaO源を添加することが好ましい。
【0054】
上記CaO、MgO、及びSiO
2の各々の質量によって算出される上記式の右辺の値(質量比)が2.7以上であると、造粒物GRが溶融し難くなるため、放射性セシウムがより多く揮発する。一方、上記質量比が3.7を超えると、得られるセメントクリンカCLに含まれるフリーライム(遊離石灰)が増加するため得られるセメントの品質が低下するおそれがある。電気炉試験では、上記式の値が2.96の場合、Cs除去率は99.995%であるが、2.0の場合99.955%である。また、造粒物GRのケイ酸率(S.M.)を1.3〜3.0、鉄率(I.M.)を1.3〜2.8に調整することで、所望のセメントクリンカCLを製造する。
【0055】
また、放射性セシウムの塩化揮発を促進し、かつ揮発回収物を減容化する目的でCl源として、さらに、塩化カルシウム(CaCl
2)を添加してもよい。Cl源の量の上限は、塩素と、セシウム及びカリウムとのモル比(Cl/(Cs+K))が好ましくは1.0以下、より好ましくは0.5以下になる量である。該モル比が1.0以下であると、カリウムやナトリウム等の揮発量を抑制しながら放射性セシウムが多く揮発するため、放射性物質含有廃棄物の減容化を図ることができる。
【0056】
上記造粒機23としては、例えばパグミル、皿型ペレタイザー、ドラム型造粒機、押出成型機等が挙げられる。造粒物GRの粒度は、粒径10〜100mmが好ましい。ここで、粒径が100mmより大きいと造粒機23が過大となって装置及び運転コストが増加し、一方、粒径が10mmを下回ると比表面積が大きくなって造粒による効果が薄れるため好ましくない。尚、Ca源添加後の粗粉C1を
図4に示した水洗及び固液分離後に造粒してもよい。
【0057】
また、測定装置13によって測定された粗粉Cの放射性セシウム濃度が廃棄物Wの200倍以下、好ましくは100倍以下である場合には、
図6に示すように、切替装置14によって搬送ルートを第5搬送ルート15Eに切り替え、粗粉CにCaO源を添加して一時的に貯槽24に貯留し、貯槽24からの粗粉C1をロータリーキルン8へ戻して調合物Mとは別に焼成する。
【0058】
調合物Mとは別に粗粉C1を焼成するために、粗粉C1を保管しておいて、粗粉C1と調合物Mの焼成日をずらしたり、焼成タイミングをずらす。粗粉C1を単独で焼成するので、調合原料Mの焼成(放射性セシウムの揮発)に影響を及ぼすことはない。単独で焼成するので、焼成時間や焼成量を調整することで粗粉C1の放射線濃度が高くても放射性Cセシウム濃度の低い焼成物Bを得ることができる。尚、CaO源の添加方法、組成調整方法は、
図5の造粒機23を設置した場合と同様であり、さらに水洗工程や造粒工程を加えるとより安定的に放射性セシウム濃度の低いセメントを得ることができる。
【0059】
一方、測定装置13によって測定された粗粉Cの放射性セシウム濃度が廃棄物Wの200倍を超える場合には、
図7に示すように、切替装置14によって搬送ルートを第6搬送ルート15Fに切り替え、第1集塵機16のダストD1に合流させて放射性セシウム除去装置1の系外へ直接排出することができる。また、粗粉Cを放射性セシウム除去装置1の系外へ直接排出せず、切替装置14によって搬送ルートを第7搬送ルート15Gに切り替え、サイクロン12の排ガスG3に合流させてもよい。
【0060】
以上で切替装置14による搬送ルート(15A〜15G)の切替についての説明を終了し、次にサイクロン12の後段の処理について説明する。
【0061】
図1のサイクロン12の排ガスG3に含まれるダストを第1集塵機16でダストD1として回収する。回収したダストD1は、必要に応じて圧縮、水洗、吸着等により、さらに減容化処置をした後、コンクリート製の容器等に密閉して保管することができ、放射性セシウムを含む廃棄物を外部に漏洩させることなく減容化し、保管することができる。また、最終処分として地中に埋めて処理することもできる。
【0062】
濃縮セシウム塩を回収した後の排ガスG4は、酸性ガス等の有害ガスが含まれているため、排ガスG4に中和剤Nを中和剤添加装置から添加した後、第2集塵機17によって、排ガスG4から酸性ガス等を吸着したダストD2を回収する。ここで、中和剤Nとして、消石灰、生石灰、ドロマイト、軽焼ドロマイト及び水酸化ドロマイトからなる群から選択される一以上を含むものを用いることができる。
【0063】
第2集塵機17で集塵したダストD2は、消石灰、石膏、塩化カルシウムが主成分であるので、CaO源やCl源として調合装置2に戻して廃棄物Wに添加して再利用する。
【0064】
第2集塵機17の排ガスG5にNOxが含まれている場合は、脱硝装置18で除去する。清浄化した排ガスG6は、煙突19を介して系外に排気する。
【0065】
以上のように、本実施の形態によれば、放射性セシウムが濃縮したダストD1を得て放射性セシウムで汚染された廃棄物Wの減容化を図る際に、ロータリーキルン8の排ガスを分級して得られた粗粉Cの放射性セシウム濃度を測定し、測定結果に応じて粗粉Cをロータリーキルン8に戻したり廃棄処理するため、放射性セシウムの循環濃縮を防止して焼成物Bの放射性セシウム濃度を低いレベルに維持することができる。
【0066】
尚、放射性セシウムで汚染された廃棄物Wとして、放射性セシウムで汚染された土壌、焼却灰を例示したが、これらの他に、伐採木、ごみ由来の溶融スラグ、下水汚泥、下水汚泥乾粉、浄水汚泥、建設汚泥、下水スラグ、貝殻、草木、がれき等の廃棄物であって放射性セシウムを含むものすべてを対象とすることができ、これらの群に含まれる1種を単独で、又は2種以上を組み合わせることができる。さらに、放射性セシウムをほとんど含まない部分(土壌の場合には、砂や石)を予め取り除いて得られる、放射性セシウムが濃縮された中間処理物も、本発明における放射性セシウムで汚染された廃棄物Wに含まれる。
【0067】
尚、上記実施の形態では、貯槽4からCaO源を供給したが、CaO源に代えて又はCaO源と共に酸化マグネシウム源(MgO源)を供給することもできる。MgO源には、炭酸マグネシウム(MgCO
3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)、ドロマイト、蛇紋岩、フェロニッケル合金スラグ等を含むものを用いることができる。
【0068】
また、調合物Mを加熱するにあたって、ロータリーキルン8及びクリンカクーラ9を備えた焼成装置7を用いたが、他の加熱炉等を用いることもできる。
【0069】
さらに、得られた土工資材は、必要に応じて解砕や粉砕を行い、セメント混合材、骨材(コンクリート用骨材、アスファルト用骨材)、埋め戻し材、盛り土材、路盤材等として利用することができる。一方、得られたセメントクリンカは、石膏と、必要に応じて配合される他の材料を混合して粉砕することなどによって、セメントを得ることができる。