(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ロール間に掛架され、被ヒートシール体を挟持して搬送する一対のベルトと、該ベルトを裏側から抑えて加熱し、被ヒートシール体をヒートシールする一対の加熱体よりなるバンドシーラにおいて、その一方の加熱体を吊り紐で宙吊りにし、ベルトの進行方向に揺動可能に設けたことを特徴とするバンドシーラ
【背景技術】
【0002】
プラスチックのフイルムやシートの製袋、密封加工には加熱体の押し付けで、接触面を簡単に熱接着できるヒートシール技法が多用され、包装容器への利用に貢献している。
【0003】
この加熱接着法(ヒートシール)は半世紀以前から汎用化されている。
加熱法には(1)1組の発熱体をヒートシールされる被加熱体(ワーク)の表面に間欠的に直接圧接して、二面からの材料の熱伝導を利用して、接着面を集中加熱するJAW方式、(2)一対のベルトでワークを挟み、ベルトの背面を一対の加熱体に摺動接触して接着面を集中加熱するバンドシーラ方式、(3)一方のみに発熱体を構成する片面加熱方式、(4)接着面付近に局部発熱をさせる方法(超音波、電磁誘導発熱、電界損発熱、熱風吹き付け等)に大別できる。
【0004】
上記の(1)、(3)、(4)は回分方式であり、加熱体の設計寸法によって、加熱できるワークの寸法が決定される。
それに対し、(2)のバンドシーラ方式はベルトの走行によってよって、連続的な加熱/圧着でシールされるので、ワークの長さに制限がなく100mに及ぶ長さのワークを熱接着ができる特徴がある。
【0005】
熱接着(ヒートシール)はプラスチックの熱可塑性現象を利用している。
その特性は
図1示すように加熱温度(接着面温度)と加熱速さがパラメータ([Hishinuma効果])になっている。
【0006】
熱接着強さの発現は接着面の温度上昇と共に接着強さが上昇する剥がれシール帯(界面接着帯)となる。加熱温度が一定温度以上に到達すると溶融状態のペースト状になり、冷却すると接着面が一体になるモールド状の凝集接着となる。
【0007】
一般的には、界面接着の温度帯の幅は3〜10℃である。通常の用途では、界面接着と凝集接着の境界温度帯(適正温度帯)に接着面を加熱調整することが材料の特性を巧く利用でき、熱接着の品質を確保することになる。
【0008】
バンドシーラ方式ではワークをベルトで挟んで、走行ベルトの背面の発熱体との摺動伝熱によってワークの接着面を加熱する。
【0009】
その一例の概略を
図2に示す。この装置は、対向する一対の摺動ベルトとそれに接する加熱体よりなり、加熱体にはヒーターが埋設され、その近傍には温度調節センサが、加熱体の摺動ベルトに接する面には加熱体表面温度を測定するセンサが取り付けられている。ヒートシール材料1を摺動ベルトの入口側から挿入して搬送させると加熱体部を通過する間にヒートシールされてベルトの出口側から排出される。上、下の加熱体はいずれも固定され、いずれか一方又は両方、通常は上部の加熱体に、上、下加熱体の間隔を調整するための、ネジ機構等を利用した上下動機構が付設されている。
【0010】
通常のバンドシーラではベルトの加熱搬送中に同時に圧着をしている。
【0011】
摺動面の摩擦力(F)は、式(1)で示されるように摩擦係数(μ)、圧着圧(N)とすると
F=μN (1)となる。
【0012】
バンドシーラの系では、熱伝熱に不可欠な圧着圧(N)を高めると圧着条件は向上するが、摩擦力(F)は圧着圧(N)に比例して増大する。すると、ベルト駆動力が増大するので、ベルトに掛かるテンションが大きくなる。更にベルトと加熱体の摺動面の摩耗の増加や高テンションによるベルトの破断につながる問題が起こる。
【0013】
摺動面の応力は付加荷重である圧着圧に比例し、摺動面積に反比例するから加熱体を長くして同一応力を掛けようとすれば、ベルトに掛かる引っ張り力(総摩擦力)が比例的に増加するからベルトに接する加熱体の寸法の拡大に制限が生まれる。
【0014】
摩擦係数(μ)の小さい材料を選択すれば、その分の圧着圧(N)を増加させて、摩擦力(F)の同一又は低下を図れる。
【0015】
このような要件は装置の設計に制約を要求している。熱伝導性の高い金属ベルトは、加熱体との摩擦力が大きいので止むを得ず適用を避けている。
【0016】
従来は、摩擦係数の小さいテフロン(登録商標)材が常用されている。
しかし、テフロン材は熱伝導率が小さいので、運転の低速化を容認しなくてはならない。(
図8参照)
【0017】
一方、本発明者は、ヒートシールについて永く研鑽を重ね、ピロー袋やガセット袋等の折り重ね部がある袋では、その重ね段差の部位で微細な貫通孔が残ること、これを帯状の剥がれシールの長手方向に線条のシールを付加した複合ヒートシール構造とすることによって、微細な貫通孔も閉止できることを見出して、これについて特許を取得している(特許文献1)。
【0018】
また、この複合ヒートシール構造を連続的に形成できる手段として、バンドシーラに、線条シールを形成するダイロール圧着部を付加したヒートシール装置を開発し、これについても特許を取得している(特許文献2)。その際、ベルトと加熱体のギャップを0.1mm程度に調整して、微圧着にすることによって、摩擦力は大幅に低減でき、金属ベルトの適用を可能した。
【0019】
そして、新方式は、従来の数々の課題(ベルトと加熱体の高摩擦力、ベルトと加熱体表面の摩耗、伝熱の低速化、ベルトの破断、加熱体の長さ制限)を改善している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
ところで、バンドシーラのベルトと加熱体間には(1)適正な熱伝達、(2)適正な圧着圧の付与、(3)軽微なベルトのテンション、(4)加熱体長さの設計の自由度、(5)ワークへの細かい塑性変形工作がある。
【0022】
本発明は、バンドシーラのベルトと加熱体間のギャップを自動的に0.1mm程度に制御して摩擦力の低減化を図り、上記の(1)、(3)、(4)の課題の改革を果す。
【0023】
バンドシーラのベルトと加熱体の摺動面の接触状態は、(1)適正な温度伝達、(2)摺動面材料の摩耗、(3)駆動されているベルトへのテンション、(4)加熱体の長さ方向寸法への制約条件となっている。
【0024】
本発明者は、前述のように既にベルトと加熱体を微圧接状態(約0.1mm)にすれば摺動面の摩耗力を極小化でき、バンドシーラの課題が解消できることを発見している。(
図8参照)
【0025】
しかし、対象のワークが代わるとその厚さは、通常0.01〜1mm位の範囲に変化する。従って、一対のヒートバーの取り付け位置を厚さの変化に合わせて、0.1mmオーダーの調整を人手でしていた。
【0026】
運転状態に応じた便利な微調整方法又は自動調節が必要であり、追加の技術開発が求められている。
【0027】
本発明の目的は、機械の歪やワークの厚さの変動によって維持が容易でなく、頻繁に微調整が必要な0.1mm程度という極微細なギャップを専門性の高い人手でなく自動化で行ないうる手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明者は、上記課題を抱え、考え悩んでいたところ、ある時に急に宙吊り方式を閃いた。そこで、早速実験機を作成して試験を行ない、用いた材料の摩擦係数範囲でギャップが0.05〜0.15mm程度の微圧着状態を形成できることを見出した。
【0029】
本発明は、係る知見に基いてなされたものであり、ロール間に掛架され、ワークを挟持して搬送する一対のベルトと、該ベルトを裏側から抑えて加熱し、ワークをヒートシールする一対の加熱体よりなるバンドシーラにおいて、その一方の加熱体を吊り紐で吊って、ベルトの進行方向に揺動可能に設けたことを特徴とするバンドシーラを提供するものである。
【0030】
(本発明の自動調節法の原理説明)
長方形の加熱体の宙吊り方式で、本発明の基本原理を説明する。
【0031】
図4にモデル形を示した。上部に位置する一対の片方の加熱体(1−1)を自由運動ができるように、対称的な4点を吊り紐(耐熱性のある柔軟な細い針金)(2)で宙吊りの構成を図る。他方の加熱体(1−2)は固定する。
【0032】
加熱体(1−1)を加熱体(1−2)との合わせ位置より5mm程度上流側に置く。この位置を原点とする。固定板(3)は、加熱体(1−1)の上部に配置する。吊り紐(2)の片方を調整ネジ(8)によって、固定板(3)に確保する。
【0033】
固定板(3)は支え板(9)を介して装置本体に構築し、ユニット全体の位置調整をする。調整ネジ(8)は止めねじと固定版(3)の間にワッシャーを入れて固定したり、バイオリンの絃のテンションを調整するような機構を利用するとよい。
【0034】
圧着圧は加熱体(1−1)の自重を主体にするが、不足する場合は加熱体(1−1)の中心線に沿って、圧縮ばね(6−1,2)を荷重が直角かつ点状に掛かるようにピボット接触の構成をする。逆に過荷重になる場合は圧縮ばねを引張りばねに置き換える。
【0035】
4本の吊り紐のテンションを弛みがない程度に張って固定する。この時、上側の加熱体(1−1)の全重量をベルト(4−1)、ベルト(4−2)を挟んで、下側の加熱体(1−2)に均一に荷重されるようにする。この時、加熱体(1−1,2)とベルト(4−1,2)間には加熱体(1−1)の自重による摩擦力が発生している。
【0036】
ベルト(4−1,2)は、同一の駆動源なので走行に差はなくベルト間は摺動しない。
【0037】
以上のように調整した状態で、ベルト(4−1,2)が駆動されると加熱体(1−1)はベルト(4−1)との摩擦力で同走する。しかし加熱体(1−1)は4本の吊り紐(細い針金)(2)で宙吊りになっているので、下流方向の移動に見合った分が吊り上げられ、幾何学的な間隙が生成する。この間隙はベルトと
加熱体の表面の平滑性(摩擦力)に依存して、自動的に平衡状態になるから、加熱体とベルト間のギャップの自己調節機能に成る。(
図5、表1参照)
【0038】
(本発明の基本性能の検証)
4本の吊り紐(2−1,2)の動作を
図4で説明する。
【0039】
吊り紐(2)は加熱体(1−1)の荷重で吊り下げられるから、吊り紐がベルト(4−1)とベルトの走行方向と直角になるように調整ネジ(8)の取り付け位置を決める。
【0040】
更に、吊り紐(2)は加熱体が走行中心に自己収斂するように加熱体の吊り間隔をより少しだけ広くなるように固定板(3)に取付穴を設定する。
【0041】
ベルトが駆動されると加熱体(1−1)は摩擦力で走行の下流方向に移動して、シフト量(L)に応じた円運動が起こり、加熱体(1−1)は浮き上る。この浮き上り量(G)は、吊り紐(2−1)の長さ(r1)、角度(θ1)の函数で決まり、次の式(2)、(3)で表すことができる。(
図5参照)
G1=r1・(1-cosθ1) (2)
L=r1・sinθ1 (3)
【発明の効果】
【0042】
本発明は、下記の課題の適格化と改善を可能にした。
(1)加熱体へのベルトの圧接によって発生する摩擦力が加熱体とベルトに磨耗損傷を起こしている。
(2)金属ベルトは熱伝導が良いので加熱の高速化が図れるが、摩擦力が大きいので、利用できなかった。
(3)摩擦力は加熱体の加熱面積に比例するので、加熱体の長さに制限がでる。(4)摩擦力の合計はベルトのテンションになるので、加熱面積の増加はベルトの駆動力の増加負担になっている。
(5)ワークの厚さが変わるとその都度、圧着圧の調整を行っていた。
(6)困難な圧着圧の調整に専門的な技能を充てていた。
(7)従来は止むを得ず
(イ)金属ベルトを避けて、熱伝導性の低く摩擦係数の小さいテフロン含浸ベルトを採用している。
(ロ)加熱バーの寸法を一駆動当たり20cm以下に制限されるので、加熱時間を確保するためベルト速さに制約があった。
(ハ)運転速度の減速による生産性低下を容認してきた。
(ニ)磨耗で発生する磨耗紛の清掃に苦労している。
(8)加熱体とベルトの摩擦力を利用した微圧着調節法(ギャップ調整法)の開発で
(イ)加熱体の圧着調整を不要化した。
(ロ)ワークの厚さ変動に対しても特別の調整が不要となった。
(ハ)金属ベルトの適用が可能になり加熱速さの短縮化が図れた。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明のバンドシーラは、ロール間に掛架され、ワークを挟持して搬送する一対のベルトと、該ベルトを裏側から加熱して該ワークをヒートシールする一対の加熱体よりなる。
【0045】
ロールの数は、各ベルト当り最低2個であり、加熱体を吊り紐で吊る側は、その空間を確保するために3個ないし4個あるいはそれ以上を設けることができる。ロールの位置は、ワークを搬送する部位では、ワークの最大の厚みを挟持したベルトが通過できる間隔にする。ベルトの走行レベルを拘束しない位置に加熱体の入口側と出口側に(駆動のない)ガイドロールを配置する。一方は固定するが、他方はワークの厚さ変動に対応できる軽い荷重で圧着する。こうすることで一対のベルトは密接状態で加熱体間を走行する。
【0046】
掛架されるロールの少なくとも1個は通常駆動ロールであり、他はギアー又はチェーンで結合する従動ロールである。
【0047】
駆動ロールは回転速度を調整する機構を設けて搬送速度を変えられるようにする。また、ベルトは、テフロン含浸グラスウール織布のような従来のものでもよいが、熱効率を高めるために金属製のものが好ましい。ところが、前述のように金属製のベルトは加熱体との摩擦力が大きいので適用されないできた。
【0048】
加熱体に真鍮を用い、ベルト材には厚さ0.25mmのテフロン含浸グラスウール織布と厚さ0.1mmのステンレススチールを用いて、加熱体によるベルトの圧接圧を0.05MPaから0.6MPaまで変え、加熱体表面温度を15℃から160℃まで変えて滑り強さ(摩擦力)を測定した結果を
図3に示す。同図に示すように、バンドシーラに汎用的に使用されているテフロン処理されたベルトは、
(1)室温状態の滑り強さは加熱状態より大きな値を示した。
(2)圧接圧の増加と共に比例的に滑り強さは増加する。
(3)加熱温度が高くなると低下傾向(滑りやすくなる)が観られる。
強さ表示は1cm
2当たりであるが、総合の滑り強さはヒートバーとの接触面積を乗じた大きさになる。
【0049】
従来は避けられている金属シート(ステンレス)の滑り強さの計測結果を併せて
図3中に示した。テフロン含浸シートに対して約5倍程度大きく、熱伝導性が大きい特長のある金属ベルトの適用が困難であることを実測で確認した。
【0050】
一方、テフロン含浸グラスウール織布は金属製のベルトより熱伝導性が格段に劣っている。これを、従来のベルトの代表例として、厚さ0.25mmテフロン含浸グラスウール織布、金属製のベルトの代表例として厚さ0.1mmのステンレスシートを用い圧接圧を0.03MPa、0.09MPa、0.18MPaに変えて0.1mmのギャップの溶着面温度応答をMTMSキット(特許第3465741号)を適用して計測した。この結果を
図8に示した。
【0051】
その結果、テフロン含浸シートは0.1mmのギャップ(非接触)のある応答は他の計測よりかけ離れて遅い。0.03MPaから0.09MPaの圧接では溶着面温度の応答が早まる。加熱応答に限ってみれば高圧着化が有効となっている。
【0052】
圧接下のステンレスシートの利用は摩擦力が非常に大きいので実用性に難があるが、無接触では摩擦力はゼロになるので、金属ベルトの問題は解消される。統合的に診たステンレスシートに代表される金属製のベルトの優位性を確認した。
【0053】
金属製のベルトは、ステンレススチール、アルミニウム、真鍮などの200℃程度の加熱で錆が出にくい高伝熱性シートで形成され、厚みは0.01〜0.2mm程度である。幅は、ヒートシール幅か、それよりやや広い程度である。ヒートシール幅は通常5〜20mm程度であるので、このベルトの幅は5〜25mm程度が適当である。表面は、両面とも平滑面である。
【0054】
加熱体は、ベルトを通じてヒートシール材料を加熱するものであり、通常はアルミニウム、真鍮、ステンレススチールなどの250℃程度の加熱で錆が出にくい伝熱性材料で形成される。加熱体の熱源には、通常電気ヒーターが用いられ、これは加熱体の内部に設置される。
【0055】
ところで、加熱体材質が黄銅(真鍮)で、ベルト材質にステンレスを選んで摺動させたところ、圧着圧が約0.03MPa以上になると両材料の表面には走行痕が発生して、連続運転には不適当であることが分かった。
【0056】
摺動材料間の摩擦係数の低減化は、摩擦力の低下分を圧着圧の増加に置き換えることができる。そこで、テフロン材、シリコン材、ポリイミド材等の耐熱性プラスチック材を加熱体の表面に薄膜を形成したり、フイルムを貼り付けて改善を図ることができる。
【0057】
加熱体の加熱面は、通常はベルトの走行方向に、長尺の長方形状とされ、その長さは必要な加熱ができるように定められる。また、幅は、通常ヒートシール幅より5〜10mm程度大きくする。
【0058】
本発明では、この一方の加熱体を宙吊りにし、他方の加熱体を固定することによって、宙吊りにされた加熱体をベルトとの摩擦力で移動させ、ベルトと加熱体の間に適正なギャップ形成をさせるところに特徴がある。
【0059】
予備実験で得た知見を元に、前述の式(2)、(3)に、r1=50mm、θ1を[0〜10°]に変化した時の浮き上り量(G)とシフト(L)を検算した。この結果を表1に示した。
【0060】
式(2)、(3)から明らかなように、rとLの関係は反比例し、rが大きくなるとLは小さくなる。すなわち同じGを得るのにLは大きくなる。そこで、rとLの感度に注目し、0.05〜0.1mm付近の制御に適当な長さを示唆するために、表1ではr1、r2、r3の3つの長さを示したものである。
【0061】
図5(b)は正面図である。加熱体のシフト力は均一な接触で起こってくれるのが望ましいが、不均一に一部分が接触しても起こる。いかに均一接触させるかが課題になる。
図5(b)のような処置をして、rが異なるようにすれば、同一Lに対して浮き上り量Gが異なるので、加熱体の傾きを自動調整できる。その制御量の事例を(G2−G1)(G1−G3)表1の浮き上り差欄に例示してある。Δrの選び方で傾きの調整感度が選べる。
【0062】
吊り紐寸法(r1=50mm)の検算結果から、3〜6°の変移において、外部からの直接調整なしの自己制御で、所期の浮き上り量(G)の0.1mmが得られることが分った。
【0063】
この時のシフト量(L)は3〜5mmであった。角度が4°の時の浮き上り量(G)とシフト量(L)の関係を検討すると(3.49/0.12)≒29が得られた。
【0065】
この結果は、シフト量(L)の管理で、加熱体(1−1,2)とベルト(4−1,2)間の0.1mmオーダーのギャップがモニターできることが分かった。
【0066】
(加熱体の水平面自動調整機能の付加)
以上の説明で加熱体(1−1)が走行方向に10mm位シフトしても0.1mmオーダーの精密なギャップ調整が可能になることを証明した。
【0067】
(ギャップ調整の感度)
吊り紐の長さが変わるとシフト量と浮き上りギャップは変化する。
シフト量(L)を同一にして、rをr2=35mmとr3=75mmに変化した時のそれぞれの演算結果を表1に付記した。
【0068】
この結果をみると吊り紐(2)の長さ(r)を大きくすると同一のギャップの調整感度が低下して、ギャップの調整がより容易になることが分った。
【0069】
吊り紐は200℃程度の耐熱性があり、伸びない材質のものが好ましく、細いステンレスの針金や撚線等を用いることができる。吊り紐の太さは、加熱体が揺動しやすく、かつ長期間の使用に耐えられるよう定められ、針金では通常0.1〜0.5mm程度、50N程度の耐荷重の範囲内にする。
【0070】
(吊り紐長さの選択方法)
吊り紐(2)の長さによって、浮き上り量が定量的に変化する。その長さ(r)が短くなるとシフト量と浮き上り量の感度が大きくなって、走行中、加熱体(1−1)のシフト動作がハンチングを起こす。これを避けて、r=30mm以上に設定することが好ましい。0.1mmオーダーの安定した作動には、r=60mmの設定がより好ましい。
【0071】
(吊り紐の長さの選択範囲)
吊り紐長さが、r=75mm以上になるとシフト量(L)が一層大きくなる。実用的にはr=30〜70mm、特に50〜70mmの範囲から選択すればよい。また、吊り紐の長さは原則として初期状態で加熱体が10μm以内のギャップなるように調整する。1N位の引張強さを与えながら固定するとよい。
【0072】
表1に示したように、吊り紐(2)の長さを変化することによって、同一のシフト量(L)に対して、浮き上りギャップに相違があることに着目して、
図5(b)に示したように対面の吊り紐(2−1,2)と(2−3,4)の長さ違いを付ける。
シフト量(L)が同一なので、長さ(r)の短い方の吊り上げ量が大きくなる。
【0073】
この原理を利用して同一シフト量の中で走行の直角方向の面調整をする。
r=50mmを基準にして、シフト量(L)に対するr=35mmとr=75mmの浮き上り量はG2>G1>G3となる。浮き上り量の差(G2−G1)、(G1−G3)を表1に付記した。例えば、(
図5(b)の紐(2−1)の長さを50mmにしたとき、表1の浮き上り差を診るとΔrが15mmと25mmの差が見られる。Δrと浮き上り差はほぼ比例する。G1=0.07の(G2−G1)=0.014mmから0.014/15mm=0.001mm/1mmを得る0.01mmを制御するならΔrは約10mmとすればよい。そこで、この傾き調整のための吊り紐の長さの相違設定は10mm位がよい
。
【0074】
このギャップ差の調整機能は一方向だけであるので、rの大きい方に所望の調整段差の約半分位(0.02〜0.05mm)のバイアス(h)をシムテープを使って初期調整時設定しておけば、シフトが発生する走行状態で、加熱体(1−1)とベルト(4−1)の摺動全面のギャップを0.01〜0.05mmに自動で調整できる。(
図5(b)参照)
【0075】
加熱体(1−1)の傾き調整機能を付加すると走行センタを外れる力が発生するので、
図4に示すように加熱体(1−1)の側両面に3〜4ヶの横ぶれ規制ガイド(7)を設置して、ベルトの走行センタに調整することが好ましい。この横ぶれ規制ガイド(7)は固定板(3)に取り付けた板で加熱体1−1の両側面に自由運動を妨げない様に1mm程度の間隔をおいて抑えるようにする。
【0076】
吊り紐の数は原則4本であり、宙吊りされる加熱体の4隅近傍の上面又は側面に取り付ける。しかしながら、小さければ3本でもよい。さらに、加熱体の両側面の抑え体を設ければ、加熱体の吊り紐自体は1本でもよい。
【0077】
演算結果を参照して、シフト量(L)を圧着圧調整バー(
図4(10))で強制的制限すれば、0.1mmオーダーのギャップ調節が簡単にできることが分った。
【0078】
この圧着圧調整バー(10)の具体的構造を
図11に示す。同図に示すように、圧着圧調整バー(10)は
、宙吊りされた加熱体(1−1)の後退範囲を規制する板の一端に支持棒が取り付けられ、この支持棒が、固定板(3)の側面に上端が固定されたアームの下端に取り付けられたリング内に挿入され、固定ネジで固定されている。この固定ネジを緩めて支持棒を進退させることによって加熱体(1−1)が後退できるシフト量(L)を規制している。
【0079】
(圧着圧とシフト量との関係)
シフト量と摺動面の荷重の関係モデルを
図6に示した。同図においては、圧着圧とシフト量との関係を、圧着圧を30N、60N、90Nの場合について示すとともに、シフト量と浮き上り量との関係を太い実線で示している。
【0080】
シフト量=0の時、摺動面の総荷重は付加荷重となる。ベルトの走行摺動によって、加熱体(1−1)は摩擦力によって、下流側に移動すると接触ギャップが大きくなって摩擦力は順次低下する。あるシフト位置で、発生ギャップは摩擦力との平衡状態となるので、加熱体(1−1)のシフトは停止する。実際はある定点を起点にして、わずかなハンチングをしている。加熱体の浮き上り量は荷重によって異なるが、定点は初期荷重に関係なくほぼ同一点なる。
【0081】
動作状態の圧着圧は荷重計の先端に幅10mmの厚さ0.05〜0.2mmシムテープを取り付け、その引き出し力(摩擦力)を計測して、圧着圧を計測するが、圧着圧の適正の是非は、溶着面温度応答を計測して、再現性のある平衡温度応答が得られるようにL値を変更する。
図6の結果、圧着圧はシフト量ゼロにおいて0.01〜0.1N程度、好ましくは0.03〜0.1N程度とするのがよい。本発明では、通常の対象領域よりかなり低い圧着圧領域を狙っている。
【0082】
(圧着圧の増強法)
圧着圧はシフト量=0の時最大となる。宙吊り方式の場合は加熱体(1−1)の自重を先ず利用する。これで不足する場合は加熱体(1−1)の長手方向の中心線に2ケの圧縮ばね(6−1,2)を装着して、均一に増強する。加熱体(1−1)と固定板(3)の接触点はピボットとして、荷重が面応力にならないように対策する。
【0083】
(圧着圧の簡易調整法)
シフト量とギャップの関係は[0063]で述べてあるように(約1:29)の相関がある。その詳細を
図4、
図5と
図6に示したようにシフト量を外部からの操作で規制すれば、初期荷重(最大)から、ほぼ“0”に近い微圧着の調整ができる。圧着圧調整バー(10)の(0〜8mm)の操作で(0.05〜0.8mmレベル)のギャップ調整を容易にできるようになった。
【0084】
加熱体の移動はワークの数mmの厚さ変動を吸収し、かつ0.05〜0.1mmの摺動面ギャップの調整ができるようになった。
【0085】
(圧着面が90°変わった場合)
ここまでの本発明は、熱接着面が水平の宙吊り方式で説明してきたが、熱接着面を垂直に構成するニーズもある。垂直方式では加熱体の自重は利用できないので力学系から排除して、加熱体の自由運動を確保しながらの圧着荷重を創成する必要がある。対処モデルを
図7に示した。
【0086】
このモデルでは加熱体(1−1)を別の吊り紐(2−5〜2−8)で吊り、重力方向の荷重をホールドする。摺動面への圧着圧は圧縮ばね(6)を使う。
【0087】
後は水平方向モデルと同様の扱いをする。
【0088】
(ワークの厚さに対する自動対応の説明)
ワークの厚さが0.1mmより大きい範囲に変化した場合、入り込んだワークには、順次、加熱体(1−1)の自重(含む追加のバネ荷重)が掛かるので、摩擦力が増加して、加熱体はシフトして、厚さの変動を自動的に吸収する。そして摩擦力の支配で決まる0.05〜0.1mmの摺動面が形成される。
【0089】
(加熱速さの短縮化の説明)
本発明の応用の一つは、金属ベルトの利用を可能にして、加熱応答の高速化による生産性の改善、加温エネルギーを回収して予熱に利用し、応答の高速化に利用している。本発明を適用した加熱応答の改善結果を
図8に示す。
【0090】
同図は、金属ベルトの代表として厚さ0.1mmのステンレスシート、従来通常使用されている厚さ0.25mmのテフロン含浸シートについて、加熱時間と溶着面温度応答との関係を測定した結果を示している。
【0091】
同図から、約0.1mmのギャップの微圧着による加熱の95%応答の比較でテフロンベルトの3.4s(17.6ショット/分)から本発明は0.7s(85.7ショット/分)に改善ができたことが分かる。
【0092】
本発明のバンドシーラは、特許文献2記載のダイロール圧着部を付加することによって、本発明者が先に開発した帯状の剥がれシールの長手方向に線条のシールを付加した複合ヒートシール構造を形成することができる。
このダイロール圧着部は、線条ロールと弾性体ロールよりなる。
線条ロールは、剛性のロールで、ステンレススチール、真鍮等の金属、セラミックス、テフロンやDLCのコート等で形成される。
直径は40〜100mm程度で、弾性体ロールと接する面の幅は、帯状の剥がれシールの幅である。線条突起の位置と高さと幅は、形成する線条シールに一致させる。
【0093】
線条ロールに加熱機構を設けてもよいが、ヒートシール材料と接する時間は材料の熱応答より短いのであまり効果がない。連続運転によって余熱で温度上昇を起こしても好ましい方向である。
【0094】
弾性体ロールは、全体に弾性体で形成されていてもよいが、通常のロールの周面に弾性体シートを被着させたものでよい。弾性体の材料は、必要な弾性があり、ヒートシール温度に耐えるものであればよいが、例えばシリコンゴムを使用することができる。例えば、厚さが3〜5mmで硬さがA50〜A80程度のものが好ましい。
弾性体ロールの径は、連続運転による弾性体の消耗を考え通常40〜100mm程度であり、幅は線条ロールと圧接する両端よりいずれも2mm以上の余裕があるようにするのがよい。
【0095】
線条ロールと弾性体ロールは、少なくともヒートシール材料の厚さの変化と圧着圧による弾性体の圧縮変形代の合計寸法に対応する上下運動ができるよう少なくとも一方を必要荷重下で自由移動ができる構造にする。また、所定の定圧着圧に調整できるようにする。
【0096】
また、本発明のバンドシーラから搬送されてくるワークの搬送速度に一致するよう、線条ロールおよび弾性体ロールの双方を同一回転数で駆動させる。
ダイロールの円周速さは搬送ベルト速さに正確に一致させる必要があるので、
ベルトとダイロールの駆動源と同一にしたり、回転数の電気制御を用いる。
また、特許文献2に記載されている保温板等をバンドシーラとダイロール圧着部の間に設けてその間の温度低下を抑制することが好ましい。
【0097】
本発明のバンドシーラの操作方法は、基本的に従来のバンドシーラと同様であり、装置が駆動されると宙吊りにされた加熱体がベルトとの摩擦抵抗で後方に移動してベルトとの間に適正なギャップを形成する。ベルトの走行速度は加熱の応答性が決まる。加熱体長さが20cm(0.2m)とするとステンレスベルトの95%応答は0.7s、テフロンベルトでは3.4sになる。
ステンレスベルト:(0.2m/0.7s)×60=17m/min.
テフロンベルト:(0.2/3.4s)×60=3.5m/min.
そこで金属ベルトでは、〜17m/分程度にできる。これに対してテフロンベルトでは、〜3.5m/分となる。
【実施例】
【0098】
実施例1
図4に示す装置を用いた。ベルト4−1、4−2にはいずれも幅15mm、厚さ0.1mmのステンレススチール製シートを用い、加熱体1−1、1−2には長さ200mm×幅30mm(ベルトの接触部を15mmに加工)×高さ35mmの真鍮製で内部にヒートパイプが埋め込まれているものを用いた。上部加熱体の重量は3Kgであった。吊り紐2−1、2−2、2−3、2−4にはいずれも太さ0.3mmのステンレス製撚線の針金を用いた。固定板3の下面と加熱体側面の取付部との間の各針金の長さはいずれも50mmで、吊り下げられている上部加熱体1−1はベルト4−1の上面に吊り紐2−1、2−2、2−3、2−4がいずれも弛まない状態で圧着圧約0.02MPaで当接している。この長さは固定板上部に取り付けられた調整ネジで調整できるようになっている。吊り紐2−1と2−2、2−3と2−4はいずれも側面方向から見ると(
図4左図)平行であり、走行方向から見ると(
図4右図)それぞれ垂直方向と5°の角度で上方に向かって拡径している。吊り下げられた上部加熱体1−1のワーク5の進入側の端部は下部加熱体1−2の端部より3mm上流側にずらしている。
【0099】
両ベルト4−1、4−2の間隔は約0.1mmになっている。また、下部加熱体1−2の上面であるベルト対向面とベルト4−2の裏面との間隔も0.1mmになっている。
【0100】
ワーク5には、厚さ30μmのOPP層と厚さ20μmのイージーピールシーラント層よりなる積層フイルム2枚をシーラント層を向い合せに重ねたものを用いた。
【0101】
加熱体1−1、1−2の溶着面であるベルト対向面の温度を110〜150℃に加熱して、ベルト速さ2〜10m/min.で装置を作動させた。そうすると、上部加熱体1−1が走行方向に後退して下部加熱体1−2と端面がほぼ一致し、上部加熱体1−1の下面であるベルト対向面とベルト4−1の裏面との間隔が約0.1mmになり、ヒートシールを連続して円滑に行うことができた。
【0102】
ただ、始動、停止を繰返していると徐々に走行痕が発生してきたので両加熱体1−1、1−2のそれぞれベルト対向面にポリイミド膜0.025mm(粘着層込)を貼り付けて損傷の防御性の改善を検討した。その結果、損傷が起こらず、圧着圧を0.1MPaに高めることができた。
【0103】
実施例2
図9、10に示す装置を用いた。
図9の右側のバンドシーラ部分は実施例1と同じである。
【0104】
ダイロール圧着部11は、周面に高さが0.3mmで断面が半円状の一条突起13が周方向に設けられた線条ロール12と弾性体ロール14よりなっている。弾性体ロール14は幅が25mmで、通常のロールの上に厚さが4mmで硬さがA70のシリコンゴム弾性体15のシートが被着された構造になっている。
【0105】
線条ロール12は、幅20mm直径50mmφで、
図10に示すように、回転軸に圧着圧調整スプリング16が取り付けられ、これにより線条ロール12をバネ圧力の付加で圧着圧を調整できるようになっている。
【0106】
加圧装置にエアーシリンダを適用すれば、空気圧の調整で容易に圧着荷重の調整ができる。更に定圧着下で自動上下運動が可能となる。
又運転待機時に弾性体ロール14への荷重を容易に開放でき、弾性体の損耗を軽減できる。
【0107】
線条ロール12と弾性体ロール14は歯車を歯合させて同期回転させる。駆動源は電気的に微調整できるモータを適用し、ワークの進入速さに一致させた。
【0108】
バンドシーラ部とダイロール圧着部11の間には、その間の移送におけるワーク5の温度低下を避けるための保温板17が設けられている。
【0109】
この保温板17は、平行に配置された上下2枚の保温板17の右辺が、ヒーターを内蔵した加熱体に固定され、外面が保温材で覆われた構造をしている。
【0110】
ワーク5には実施例1と同じものを用いた。このような装置を用いてヒートシールを行なうと、まず、
図9の図面の右側からワーク5が搬入され、一対のベルト4−1、4−2に挟持されて搬送されている間に加熱体1−1、1−2によって上下方向から加熱され、ヒートシール層が軟化して界面接着状態になる。
【0111】
次いで、ロール間から放出され、保温板17で保温されてダイロール圧着部11に送られる。そこでは、線条ロール12と弾性体ロール14によって、先ず一条突起13でワーク5の対応部が弾性体15内に陥没して、一条密封が形成されるとともに、4枚部と2枚部の平面段差相当部分も弾性体15の流動的変形でさらに圧着される。
【0112】
得られた標本を「探傷液法」[文献番号:日本包装学会誌:Vol.27, No.4, p.217-224 (2018)]で密封性、引張試験で易開封性試験を行い所定の性能が滞りなく達成されていることを確認した。
【0113】
上記と同じ運転条件で、ワークの厚さ(2枚重ね寸法)を0.03〜0.5mmに変化して、それぞれの熱伝導特性をMTMSキット[特許番号:第3318866号]で確認し、ベルト速さを2〜10m/min.から選択して、ワークの厚さ変動に対して、本発明の自動ギャップ調整構成が正常に作動して、所定の接着強さが獲得できることを確認した。
【課題】機械の歪やワークの厚さの変動に対して維持が容易で、頻繁に微調整が必要な0.1mm程度という極微細なギャップを自動的に行なうことの出来る自動調節構造を提供する。
【解決手段】ロール間に掛架され、被ヒートシール体5を挟持して搬送する一対のベルト4−1、4−2と、ベルトを裏側から抑えて加熱し、被ヒートシール体5をヒートシールする一対の加熱体1−1、1−2よりなるバンドシーラにおいて、その一方の加熱体1−1を吊り紐2−1、2−2、2−3で吊って、ベルトの進行方向に揺動可能なバンドシーラを設けた。