(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
  以下、本発明の実施形態を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
  
図1は、本発明の一実施形態に係る摩耗度合い情報取得装置の機能構成を示す概略ブロック図である。同図に示すように、摩耗度合い情報取得装置10は、左上電力線測定部110aと、左下電力線測定部110bと、右上電力線測定部110cと、右下電力線測定部110dと、位置推定用レーザセンサ130と、タイミング検出部140と、摩耗度合い情報取得装置本体200とを備える。
 
【0015】
  左上電力線測定部110aは、第一上側レーザセンサ121aと、第一下側レーザセンサ122aとを備える。左下電力線測定部110bは、第二上側レーザセンサ121bと、第二下側レーザセンサ122bとを備える。右上電力線測定部110cは、第三上側レーザセンサ121cと、第三下側レーザセンサ122cとを備える。右下電力線測定部110dは、第四上側レーザセンサ121dと、第四下側レーザセンサ122dとを備える。
  摩耗度合い情報取得装置本体200は、通信部210と、操作入力部220と、表示部230と、記憶部280と、制御部290とを備える。制御部290は、摩耗度合い情報取得部291と、位置推定部292とを備える。
  摩耗度合い情報取得装置10は、車両900に備え付けられている。
 
【0016】
  以下、左上電力線測定部110aと、左下電力線測定部110bと、右上電力線測定部110cと、右下電力線測定部110dとを総称して電力線測定部110と表記する。また、第一上側レーザセンサ121aと、第二上側レーザセンサ121bと、第三上側レーザセンサ121cと、第四上側レーザセンサ121dとを総称して上側レーザセンサ121と表記する。第一下側レーザセンサ122aと、第二下側レーザセンサ122bと、第三下側レーザセンサ122cと、第四下側レーザセンサ122dとを総称して下側レーザセンサ122と表記する。
 
【0017】
  摩耗度合い情報取得装置10は、車両900に電力を供給する電力線の摩耗度合いを検出する。
  
図2は、電力線の配置例を示す説明図である。同図は、車両900が走行する軌道の概略構成を示している。
  同図に示すように、軌道800は、路面810と、ガイドレール820と、分岐レール830と、左上電力線840aと、左下電力線840bと、右上電力線840cと、右下電力線840dと、碍子850とを備える。
  以下、左上電力線840aと、左下電力線840bと、右上電力線840cと、右下電力線840dとを総称して電力線840と表記する。
 
【0018】
  軌道800は、車両900の走行経路を構成する。
  路面810は、車両900が走行する面である。路面810は、例えばコンクリートの表面にておよそ水平に形成されている。
  ガイドレール820は、車両900が路面810上を走行するように車両900の向きを制約する。ガイドレール820は軌道800の両側それぞれ(路面810の両脇それぞれ)に設けられている。車両900は、案内輪をガイドレール820に当てながら(当接させながら)走行する。これにより、車両900は路面810上から逸脱しないように向きを制約される。
 
【0019】
  分岐レール830は、は、軌道800の分岐箇所に設けられており、分岐箇所を走行する車両900を分岐先のいずれかの軌道へと導く。分岐レール830は可動部分を有しており、車両900が進むべき経路に応じて可動部分の向きを切り替える。車両900は、分岐レール830の可動部分の向きに応じて左右いずれか一方の分岐レール830に分岐輪を添わせる。分岐輪が分岐レール830に沿って動くことで、車両900は進むべき分岐先へと導かれる。
 
【0020】
  電力線840は、新交通システムの電源設備が出力する電力を送電して車両900に供給する。
  左上電力線840aが正極、左下電力線840bが負極になっており、左上電力線840aと左下電力線840bとの組み合わせで車両900に直流電力を供給する。
  また、軌道800の分岐部分では、車両900がいずれの分岐先へ移動する場合も電力供給が途切れないよう、軌道800の左右の両方に電力線840が設けられている。
図2の例では、車両900の進行方向に向かって左側の左上電力線840a及び左下電力線840bに加えて、進行方向に向かって右側に右上電力線840c及び右下電力線840dが設けられている。右上電力線840cが正極、右下電力線840dが負極になっており、右上電力線840cと右下電力線840dとの組み合わせで車両900に直流電力を供給する。
  電力線840の各々は、碍子850を用いて設置されている。
  摩耗度合い情報取得装置10が摩耗検出対象とする電力線840の数は1つ以上であればよい。また、摩耗度合い情報取得装置10が摩耗検出対象とする電力線840は、交流電力を供給する電力線であってもよい。
 
【0021】
  電力線測定部110は、車両900に電力を供給する電力線840のうち、車両900に接触する摩耗部分、車両900に接触しない非摩耗部分それぞれについて、車両900の所定位置からの距離を測定する。
  上側レーザセンサ121は、電力線840の斜め上から電力線840にレーザ(レーザ光線)を照射して、上側レーザセンサ121自らと電力線840との距離を測定する。上側レーザセンサ121が設置されている位置は、車両900の所定位置の例に該当する。
  上側レーザセンサ121は、レーザの照射方向を上下に変化させて電力線840の摩耗部分と非摩耗部分との両方にレーザを当てる。これにより、上側レーザセンサ121は、上側レーザセンサ121自らと摩耗部分との距離、及び、上側レーザセンサ121自らと非摩耗部分との距離の両方を測定する。
 
【0022】
  下側レーザセンサ122は、電力線840の斜め下から電力線840にレーザを照射して、下側レーザセンサ122自らと電力線840との距離を測定する。下側レーザセンサ122が設置されている位置は、車両900の所定位置の例に該当する。
  下側レーザセンサ122は、レーザの照射方向を上下に変化させて電力線840の摩耗部分と非摩耗部分との両方にレーザを当てる。これにより、下側レーザセンサ122は、下側レーザセンサ122自らと摩耗部分との距離、及び、下側レーザセンサ122自らと非摩耗部分との距離の両方を測定する。
 
【0023】
  図3は、上側レーザセンサ121及び下側レーザセンサ122の配置例を示す説明図である。同図は、車両900を車両900の上から見た様子を示している。
  
図3に示すように、新交通システム700は、軌道800と車両900とを備える。
図2を参照して説明したように、軌道800は、路面810と、ガイドレール820と、左上電力線840aと、左下電力線840bと、右上電力線840c、右下電力線840dとを備える。車両900は、車両本体910と、支持物920と、案内輪930と、分岐輪940と、集電装置950と、走行用タイヤ960とを備える。
図1を参照して説明したように、車両900は、さらに第一上側レーザセンサ121aと、第二上側レーザセンサ121bと、第三上側レーザセンサ121cと、第四上側レーザセンサ121dと、第一下側レーザセンサ122aと、第二下側レーザセンサ122bと、第三下側レーザセンサ122cと、第四下側レーザセンサ122dと、を備える。
 
【0024】
  車両900は、軌道800が構成する走行経路を走行する。車両900は、例えば乗客又は貨物を搬送する。
  車両本体910は、例えば乗客又は貨物など搬送対象を収容する。また、車両本体910の下部には走行用タイヤ960が設けられている。また、車両本体910から両横に突出して支持物920が設けられている。また、
図3に示すように、車両本体910には、第一上側レーザセンサ121aと、第二上側レーザセンサ121bと、第三上側レーザセンサ121cと、第四上側レーザセンサ121dと、第一下側レーザセンサ122aと、第二下側レーザセンサ122bと、第三下側レーザセンサ122cと、第四下側レーザセンサ122dとが設置されている。
 
【0025】
  支持物920は、案内輪930、分岐輪940及び集電装置950を支持している。具体的には、支持物920の左右それぞれの端部に、案内輪930、分岐輪940及び集電装置950が設けられている。支持物920は、案内輪930、分岐輪940および集電装置950と車両本体910との間隔をおよそ一定に保っている。
 
【0026】
  案内輪930は、車両900が走行する際にガイドレール820に当たることで、車両900が路面810上を走行するように車両900の向きを制約する。
  分岐輪940は、軌道800の分岐箇所にて分岐レール830に沿って移動することで、車両900を分岐先の軌道800のいずれかへ導く。
  集電装置950は、電力線840に接触して電力線840から電力の供給を受ける。
  走行用タイヤ960は、車両本体910の下側(路面810に近い側)に設けられ、路面810に接している。走行用タイヤ960が回転することで、車両900が移動(走行)する。
 
【0027】
  図4は、電力線840の接触部分と非接触部分との位置関係の例を示す説明図である。同図は、電力線840の断面における各部の概略形状を示している。
  
図4に示すように、電力線840は、電力線本体841と、接触用部材842とを備える。また、集電装置950は、擦り板951とばね952とを備える。
  電力線本体841は、アルミニウムで構成されており、導電性が高く比較的柔らかい。仮に電力線840全体をアルミニウムで構成すると電力線840の摩耗が激しくすぐに交換が必要になってしまう。そこで、電力線840が擦り板951と接触する部分に接触用部材842が設けられている。接触用部材842は、ステンレス鋼で構成されており、アルミニウムの電力線本体841よりも硬く摩耗しにくい。
 
【0028】
  電力線本体841は非接触部分の例に該当する。接触用部材842のうち擦り板951と接触する部分が接触部分の例に該当する。
図4では、領域A11が接触部分の例に該当する。
  擦り板951は、電力線840に接触して電力線840から電力の供給を受ける。擦り板951は、例えばカーボン系の導電素材で構成される。
  ばね952は、擦り板951を電力線840に押し当てる。
 
【0029】
  図5は、上側レーザセンサ121及び下側レーザセンサ122の上下方向の向きの例を示す説明図である。
  
図5は、車両900の後方側から車両900の進行方向に向かって見た様子を示しており、上側レーザセンサ121および下側レーザセンサ122のうち第一上側レーザセンサ121a、第三上側レーザセンサ121c、第一下側レーザセンサ122a及び第三下側レーザセンサ122cが示されている。
 
【0030】
  第一上側レーザセンサ121aは、左上電力線840aの斜め上に左上電力線840aに向けて設置されている。これにより、第一上側レーザセンサ121aは、左上電力線840aにレーザを照射して第一上側レーザセンサ121a自らと左上電力線840aとの距離を測定する。
  第一下側レーザセンサ122aは、左上電力線840aの斜め下に左上電力線840aに向けて設置されている。これにより、第一下側レーザセンサ122aは、左上電力線840aにレーザを照射して第一下側レーザセンサ122a自らと左上電力線840aとの距離を測定する。
 
【0031】
  第三上側レーザセンサ121cは、右上電力線840cの斜め上に右上電力線840cに向けて設置されている。これにより、第三上側レーザセンサ121cは、右上電力線840cにレーザを照射して第三上側レーザセンサ121c自らと右上電力線840cとの距離を測定する。
  第三下側レーザセンサ122cは、右上電力線840cの斜め下に右上電力線840cに向けて設置されている。これにより、第三下側レーザセンサ122cは、右上電力線840cにレーザを照射して第三下側レーザセンサ122c自らと右上電力線840cとの距離を測定する。
 
【0032】
  同様に、第二上側レーザセンサ121bは、左下電力線840bの斜め上に左下電力線840bに向けて設置されている。これにより、第二上側レーザセンサ121bは、左下電力線840bにレーザを照射して第二上側レーザセンサ121b自らと左下電力線840bとの距離を測定する。
  第二下側レーザセンサ122bは、左下電力線840bの斜め下に左下電力線840bに向けて設置されている。これにより、第二下側レーザセンサ122bは、左下電力線840bにレーザを照射して第二下側レーザセンサ122b自らと左下電力線840bとの距離を測定する。
 
【0033】
  第四上側レーザセンサ121dは、右下電力線840dの斜め上に右下電力線840dに向けて設置されている。これにより、第四上側レーザセンサ121dは、右下電力線840dにレーザを照射して第四上側レーザセンサ121d自らと右下電力線840dとの距離を測定する。
  第四下側レーザセンサ122dは、右下電力線840dの斜め下に右下電力線840dに向けて設置されている。これにより、第四下側レーザセンサ122dは、右下電力線840dにレーザを照射して第四下側レーザセンサ122d自らと右下電力線840dとの距離を測定する。
 
【0034】
  なお、
図3の例のように第一上側レーザセンサ121aと第一下側レーザセンサ122aとは車両900の長手方向(進行方向)にずれた位置に設置されている。これにより、第一上側レーザセンサ121aが出力するレーザ項と第一下側レーザセンサ122aが出力するレーザとが干渉して距離の測定精度が低下することを回避できる。
  第二上側レーザセンサ121bと第二下側レーザセンサ122bとの組み合わせ、第三上側レーザセンサ121cと第三下側レーザセンサ122cとの組み合わせ、第四上側レーザセンサ121dと第四下側レーザセンサ122dとの組み合わせについても同様である。
 
【0035】
  図6は、上側レーザセンサ121及び下側レーザセンサ122によるレーザ照射範囲の例を示す説明図である。
図5を参照して説明したように、上側レーザセンサ121は電力線840の斜め上に位置し、電力線840に向けてレーザを照射する。下側レーザセンサ122は電力線840の斜め下に位置し、電力線840に向けてレーザを照射する。
  上側レーザセンサ121は、角度A21の範囲でレーザの向きを上下に変化させる。これにより、上側レーザセンサ121は、電力線840の摩耗部分(
図4の領域A11の部分)の少なくとも一部と、非摩耗部分(電力線本体841の部分)の一部とを走査し、上側レーザセンサ121自らと走査した部分との距離を測定する。線L11は、上側レーザセンサ121がレーザの向きを変化させる範囲の中心(角度A21の中心)を示している。
 
【0036】
  下側レーザセンサ122は、角度A22の範囲でレーザの向きを上下に変化させる。これにより、下側レーザセンサ122は、電力線840の摩耗部分の少なくとも一部と、非摩耗部分の一部とを走査し、下側レーザセンサ122自らと走査した部分との距離を測定する。線L12は、下側レーザセンサ122がレーザの向きを変化させる範囲の中心(角度A22の中心)を示している。
  このように、上側レーザセンサ121と下側レーザセンサ122とがそれぞれ電力線840を走査する。これにより、上側レーザセンサ121と下側レーザセンサ122とうちいずれか一方からは摩耗部分に死角が生じる場合でも、上側レーザセンサ121と下側レーザセンサ122との組み合わせにより摩耗部分全体を走査することができる。上側レーザセンサ121と下側レーザセンサ122とが摩耗部分全体を走査することで、摩耗度合い情報取得部291が電力線840の摩耗を検出できる可能性を高めることができる。
  但し、電力線測定部110が上側レーザセンサ121及び下側レーザセンサ122のうち何れか一方のみを備えるようにしてもよい。これにより、電力線測定部110の構造を簡単にすることができる。あるいは、電力線測定部110が3つ以上のレーザセンサを備えるようにしてもよい。
 
【0037】
  なお、電力線測定部110が上側レーザセンサ121と下側レーザセンサ122とを備えるなど複数のレーザセンサを備える場合、摩耗度合い情報取得装置10が、レーザセンサ毎にデータを管理するようにしてもよいし、複数のレーサセンサのデータを1つに合成するようにしてもよい。例えば、
図10を参照して後述する電力線840の形状を示す図を、摩耗度合い情報取得部291が複数のレーザセンサについて合成して1つの図にしてもよい。複数のレーザセンサのデータを1つに合成する場合、
図2を参照して説明したようにレーザセンサ毎に車両900の進行方向における設置位置が異なることに留意する必要がある。例えば、摩耗度合い情報取得部291は、車両900の進行方向における設置位置の違いを時間に換算した分だけ異なるタイミングのデータを合成する。
 
【0038】
  位置推定用レーザセンサ130は、車両900の位置推定用に位置推定用レーザセンサ130と周囲物との距離を測定する。具体的には、位置推定用レーザセンサ130は、照射するレーザの向きを水平方向(左右)に変化させながら距離の測定を繰り返す。
  
図7は、位置推定用レーザセンサ130が測定する距離の例を示すグラフである。同図のグラフの横軸は時刻を示し、縦軸は位置推定用レーザセンサ130が照射するレーザの向きを示す。縦軸の下側ほど、レーザの向きが車両900の前方(車両900の進行方向)に近いことを示し、縦軸の上側ほど、レーザの向きが車両900の後方(車両900の進行方向と反対側)に近いことを示す。
  位置推定用レーザセンサ130とレーザが照射された物との距離をグレースケールで示す。線L21、線L22、及び、線L23は、いずれも他の部分と比べて黒っぽく(濃く)なっており、位置推定用レーザセンサ130に比較的近い物にレーザが当たったことを示している。
 
【0039】
  位置推定用レーザセンサ130は、車両900の進行方向に対して横向き(水平方向)に、車両900の前方側から車両900の後方側へ一定の角速度で所定の角度だけレーザの向きを変化させながら距離を測定する。所定の角度に達したら、位置推定用レーザセンサ130は距離の測定を行わずにレーザの向きを元の向き(距離測定開始時の向き)に戻す。レーザの向きが元の向きに戻った後、位置推定用レーザセンサ130は、再び、車両900の前方側から車両900の後方側へ一定の角速度で所定の角度だけレーザの向きを変化させながら距離を測定する。このように、位置推定用レーザセンサ130は、レーザの向きを車両900の前方側から車両900の後方側へ変化させながら距離の測定を繰り返す。
 
【0040】
  位置推定用レーザセンサ130が車両900の走行速度に対して十分速い速さでレーザを振る(レーザの向きを変化させる)ことで、位置推定用レーザセンサ130と同じ物との距離を繰り返し測定することになる。これにより、
図7の例のように、位置推定用レーザセンサ130が測定した距離を示すグラフに線(筋)が現れる。特に、線L21、線L22、及び、線L23の部分では、いずれも位置推定用レーザセンサ130に比較的近い物にレーザが当たったことで黒っぽい線になっている。
 
【0041】
  具体的には、位置推定用レーザセンサ130は、レーザが
図2の碍子850に当たる高さでレーザを照射する。碍子850にレーザが当立ったタイミングでは、他のタイミングよりも位置推定用レーザセンサ130とレーザが当たった物との距離が近くなる。碍子850が軌道800の側方に複数設置されていることで、線L21、線L22、及び、線L23のように黒っぽい線が複数生じている。
  但し、位置推定用レーザセンサ130がレーザを照射する高さは碍子850に当たる高さに限らず、レーザが当たる位置に位置推定用レーザセンサ130からの距離が異なる物がある高さであればよい。
 
【0042】
  ここで、車両900が停止している場合、毎回の走査でレーザの向きが同じ向きになったタイミングで同じ物にレーザが照射される。このため、
図7のグラフのように横軸に時刻をとり縦軸にレーザの向きをとると、横軸に平行な線が現れる。
  一方、車両900が走行している場合、位置推定用レーザセンサ130に対するレーザ照射対象物(レーザが当たる物)の相対位置は、時間が経過するにつれて車両900の後方側(車両900の進行方向と反対側)に移動する。このため、
図7の例のように線に傾きが生じる。車両900の速度が速いほど、線の傾きが大きくなる。
 
【0043】
  この傾きから、位置推定用レーザセンサ130に対するレーザ照射対象物の相対速度を求めることができる。碍子850のように静止している物にレーザを照射することで、この相対速度は、車両900の速度を示す。
  具体的には、
図7の点P11及び点P12のように、レーザが最も車両900の前方側の向き(点P11)と、最も車両900の後方側の向き(点P12)とで同一の物に照射されたそれぞれのタイミングで、位置推定用レーザセンサ130が測定した距離を取得する。
 
【0044】
  図8は、位置推定用レーザセンサ130とレーザ照射対象物との位置関係の例を示す説明図である。
  同図の点P21は、位置推定用レーザセンサ130の位置を示す。点P22は、レーザが最も車両900の前方側の向きでレーザ照射対象物に照射したとき(
図7の点P11)の、レーザ照射対象物の向きを示す。点P23は、レーザが最も車両900の後方側の向きでレーザ照射対象物に照射したとき(
図7の点P12)の、レーザ照射対象物の向きを示す。また、矢印B11は、車両900の進行方向を示す。
 
【0045】
  点P21と点P22との距離D11、及び、点P21と点P23との距離D12は、いずれも位置推定用レーザセンサ130が測定している。また、位置推定用レーザセンサ130がレーザの向きを変化させる角度A31は既知である。これら距離D11、距離D12及び角度A31から、点P22と点P23との距離D13を求めることができる。この距離D13を、照射対象物が点P22に位置してから点P23に位置するまでの時間T11(
図7)で除算することで、位置推定用レーザセンサ130に対する照射対象物の位置が求まる。碍子850のように静止している物にレーザを照射することで、この相対速度は、車両900の速度を示す。
  位置推定部292は、このようにして車両900の走行速度を求め、得られた走行速度を積分することで車両900の位置をキロ程にて求める。
 
【0046】
  このように、位置推定部292は、位置推定用レーザセンサ130による距離の測定結果に基づいて車両900の速度を求めることで、車両900の既存の機器に配線を接続する必要無しに車両900の速度を求めることができる。例えば、既存の車両900に摩耗度合い情報取得装置10を後付けで設置する場合、摩耗度合い情報取得装置10が既存の機器から速度情報を取得するための配線を行う必要がない。この点で、摩耗度合い情報取得装置10の設置作業が簡単になる。特に、摩耗度合い情報取得装置10を設置する際、車両900の既存の配線を把握する手間を軽減させることができ、また、配線間違いによって不具合が発生する可能性を軽減させることができる。
 
【0047】
  タイミング検出部140は、車両900が一定間隔走行する毎にサンプリングタイミング信号を出力する。タイミング検出部140は、例えば車両900の走行用モータのモータカップリングハブの回転に基づいて、サンプリングタイミングを検出する。
  
図9は、モータカップリングハブの回転を検出する方法の例を示す説明図である。同図の例では、モータカップリングハブ970の外周に一定間隔で線状のマークが付されている。タイミング検出部140は、ファイバセンサ141aを備えてマークを検出することで、モータカップリングハブ970が一定角度回転したことを検出する。これにより、タイミング検出部140は、車両900が一定間隔走行したことを検出してサンプリングタイミング信号を出力する。
 
【0048】
  タイミング検出部140がサンプリングタイミング信号を出力する毎に、上側レーザセンサ121及び下側レーザセンサ122がレーザを出力して距離を測定する。そして、摩耗度合い情報取得部291は、距離の測定結果に基づいて電力線840の摩耗度合いを判定する。
  このように、摩耗度合い情報取得部291は、タイミング検出部140がサンプリングタイミング信号を出力する毎に電力線840の摩耗度合いを示す情報を取得する。これにより、摩耗度合い情報取得部291は、車両900の速度に依存せずに、車両900の進行方向に同一の間隔で電力線840の摩耗度合いを判定することができる。従って、車両900が高速走行している場合でも、サンプリング間隔が広くなりすぎて電力線840の摩耗度合いの判定精度が低下することを回避できる。また、車両900が低速走行している場合でも、電力線840の長さあたりのサンプリング回数が増加してデータ量が膨大になることを回避できる。
 
【0049】
  なお、ファイバセンサ141bは、モータカップリングハブ970の回転方向を検出するために設けられている。モータカップリングハブ970には、ファイバセンサ141aが検出するマークと異なる位相で(例えば位相を90度ずらして)さらにマークが付されており、ファイバセンサ141bは、このマークを検出する。
  モータカップリングハブ970の回転方向が逆になると、ファイバセンサ141aがマークを検出してからファイバセンサ141bがマークを検出するまでの時間と、ファイバセンサ141bがマークを検出してからファイバセンサ141aがマークを検出するまでの時間との関係も逆になる。そこで、タイミング検出部140は、ファイバセンサ141aがマークを検出してからファイバセンサ141bがマークを検出するまでの時間と、ファイバセンサ141bがマークを検出してからファイバセンサ141aがマークを検出するまでの時間とを比較することで、モータカップリングハブ970の回転方向を検出することができる。
  モータカップリングハブ970の回転方向を検出する必要がない場合は、タイミング検出部140がファイバセンサ141bを備えていなくてもよい。
 
【0050】
  なお、タイミング検出部140が一定時間毎にサンプリングタイミング信号を出力するなど、車両900が一定間隔走行した毎以外のタイミングでサンプリングタイミング信号を出力するようにしてもよい。例えば、一定時間毎にサンプリングタイミング信号を出力する場合、タイミング検出部140は、タイマを備えて一定時間の経過をカウントすればよい。この点でタイミング検出部140の構成を簡単にすることができる。
 
【0051】
  あるいは、摩耗度合い情報取得部291が、車両900の速度に応じてサンプリング周期を設定するようにしてもよい。例えば、摩耗度合い情報取得部291が、位置推定部292が算出する車両900の速度を取得し、取得した速度に応じてサンプリング周期を設定するようにしてもよい。摩耗度合い情報取得部291は、車両900の速度が速いほどサンプリング周期を短く設定する。
  このように、摩耗度合い情報取得部291が車両900の速度に応じてサンプリング周期を設定する場合、タイミング検出部140が不要になる。すなわち、摩耗度合い情報取得装置10がタイミング検出部140を備える必要がなく、この点で摩耗度合い情報取得装置10の構成を簡単にすることができる。
 
【0052】
  摩耗度合い情報取得装置本体200は、電力線測定部110が上側レーザセンサ121及び下側レーザセンサ122にて測定する距離に基づいて、電力線840の摩耗度合いを判定する。摩耗度合い情報取得装置本体200は、例えばコンピュータを用いて構成される。
  通信部210は、電力線測定部110、位置推定用レーザセンサ130及びタイミング検出部140と通信を行う。通信部210は、電力線測定部110及び位置推定用レーザセンサ130から距離の測定値を取得する。また、通信部210は、タイミング検出部140が出力するサンプリングタイミング信号を取得する。通信部210は、例えば摩耗度合い情報取得装置本体200が備える通信回路を用いて構成される。
 
【0053】
  表示部230は、例えば液晶パネル又はLED(Light Emitting Diode)パネル等の表示画面を有し、各種画像を表示する。特に、表示部230は、摩耗度合い情報取得部291による電力線840の摩耗度合いの判定結果を表示する。
  操作入力部220は、表示部230の表示画面に設けられてタッチパネルを構成するタッチセンサなどの入力デバイスを備え、ユーザ操作を受ける。
 
【0054】
  記憶部280は、各種情報を記憶する。記憶部280は、例えば摩耗度合い情報取得装置本体200が備える記憶デバイスを用いて構成される。
  制御部290は、摩耗度合い情報取得装置10の各部を制御して各種処理を実行する。制御部290は、例えば摩耗度合い情報取得装置本体200が備えるCPU(Central Processing Unit、中央処理装置)が、記憶部280からプログラムを読み出して実行することで構成される。
 
【0055】
  摩耗度合い情報取得部291は、車両900の所定位置から電力線840の摩耗部分までの距離と車両900の所定位置から非摩耗部分までの距離との相違に基づいて電力線840の摩耗度合いを示す情報を取得する。
  
図10は、摩耗部分と非摩耗部分との位置関係を示す表示画面の例を示す説明図である。以下では、上側レーザセンサ121が電力線840を走査して得られる情報を例に説明する。下側レーザセンサ122が電力線840を走査して得られる情報からも同様に、電力線840の摩耗度合いを判定することができる。
同図の線L311は、上側レーザセンサ121が電力線840の非摩耗部分を走査して得られた形状を示す。線L321は、電力線840が摩耗してない状態で、上側レーザセンサ121が摩耗部分を走査して得られた形状を示す。線L322は、電力線840が摩耗している場合に、上側レーザセンサ121が摩耗部分を走査して得られた形状を示す。
 
【0056】
  記憶部280は、線L311及び線L321のように電力線840が摩耗していない状態での非摩耗部分及び摩耗部分の形状を、非摩耗部分と摩耗部分との位置関係を含めて予め記憶しておく。
  そして、上側レーザセンサ121が電力線840を走査して距離情報を取得すると、摩耗度合い情報取得部291が、上側レーザセンサ121がレーザを照射した向きと上側レーザセンサ121が検出した距離とが対応付けられた情報を、形状を示す情報に変換する。これにより、摩耗度合い情報取得部291は、線L311及び線L322の例のように、非摩耗部分と摩耗部分とを含む形状を示す情報を取得する。
 
【0057】
  摩耗度合い情報取得部291は、電力線840が摩耗していない状態での非摩耗部分及び摩耗部分の形状及び非摩耗部分と摩耗部分との位置関係を示す情報を記憶部280から読み出し、上側レーザセンサ121の走査によって得られた電力線840の形状と、記憶部280が記憶している電力線840が摩耗していない状態での形状とを重ね合わせる。
  具体的には、摩耗度合い情報取得部291は、
図10の例のように上側レーザセンサ121の走査によって得られた電力線840の形状と、記憶部280が記憶している電力線840が摩耗していない状態での形状との非摩耗部分を重ね合わせる。これにより、電力線840の摩耗の度合いが分かる。
図10の例では、線L321と線L322との間の部分が、電力線840が摩耗した部分に相当する。
  
図10に示す電力線840の形状を示す情報は、電力線840の摩耗度合いを示す情報の例に該当する。
 
【0058】
  摩耗度合い情報取得部291は、上記のように上側レーザセンサ121の走査によって得られた電力線840の形状と電力線840が摩耗していない状態での電力線840の形状とを非摩耗部分で重ね合わせた状態で、両者の摩耗部分の距離を算出する。
  例えば、線L321で例示される電力線840が摩耗していない状態での摩耗部分の形状について1つ以上のサンプリング点を予め定めておく。そして、摩耗度合い情報取得部291は、サンプリング点毎に、上側レーザセンサ121の走査によって得られた電力線840の形状における摩耗部分と当該サンプリング点との距離を求める。そして、摩耗度合い情報取得部291は得られた距離の平均を算出する。摩耗度合い情報取得部291は、得られた平均値と所定の閾値とを比較し、得られた平均値が閾値よりも大きい場合、電力線840の保守を促すメッセージを、該当位置を示す情報と共に表示部230に表示させる。
 
【0059】
  あるいは、摩耗度合い情報取得部291が、電力線840が摩耗していない状態での摩耗部分と、上側レーザセンサ121の走査によって得られた電力線840の形状における摩耗部分との距離が最も大きい場所を検出するようにしてもよい。摩耗度合い情報取得部291は、検出した場所における電力線840が摩耗していない状態での摩耗部分と、上側レーザセンサ121の走査によって得られた電力線840の形状における摩耗部分との距離と所定の閾値とを比較する。得られた距離が閾値よりも大きい場合、電力線840の保守を促すメッセージを、該当位置を示す情報と共に表示部230に表示させる。
  このように、摩耗度合い情報取得部291が、電力線840が摩耗していない状態での摩耗部分と、上側レーザセンサ121の走査によって得られた電力線840の形状における摩耗部分との距離が最も大きい場所を検出することで、局所的な摩耗を検出できる可能性が高まる。
 
【0060】
  なお、摩耗度合い情報取得部291が電力線840の摩耗度合いを示す情報の取得に用いる、車両900の所定位置から電力線840の摩耗部分までの距離と車両900の所定位置から非摩耗部分までの距離との相違は、それらの距離の差分に限らない。
  例えば、摩耗度合い情報取得部291が、下側レーザセンサ122の走査で得られた電力線840の形状における非摩耗部分と摩耗部分との距離を、電力線840が摩耗していない状態での非摩耗部分と摩耗部分との距離で乗算した割合を算出するようにしてもよい。そして、算出した割合が所定の閾値よりも小さい場合に、摩耗度合い情報取得部291が、電力線840の保守を促すメッセージを、該当位置を示す情報と共に表示部230に表示させるようにしてもよい。
 
【0061】
  なお、電力線840の摩耗度合いの判定をユーザが行うようにしてもよい。例えば、表示部230が、
図10の例のように、上側レーザセンサ121の走査によって得られた電力線840の形状と、電力線840が摩耗していない状態での形状とを重ね合わせて表示する。
  そして、ユーザは得られた表示に基づいて電力線840のメンテナンスの要否を判定し、操作入力部220を用いて判定結果を摩耗度合い情報取得装置10に入力するようにしてもよい。
 
【0062】
  表示部230が
図10の例のように上側レーザセンサ121の走査によって得られた電力線840の形状と、電力線840が摩耗していない状態での形状とを重ね合わせて表示することで、ユーザは、電力線840の摩耗の度合いを視覚的把握することができる。
  但し、表示部230が摩耗部分と非摩耗部分との位置関係を表示することは必須ではない。例えば、摩耗度合い情報取得部291が電力線840の摩耗を検出した位置を示す情報のみを表示部230が表示するようにしてもよい。
 
【0063】
  位置推定部292は、車両900の位置を推定する。具体的には、位置推定部292は、
図7を参照して説明したように、位置推定用レーザセンサ130による距離の測定結果に基づいて車両900の位置をキロ程で算出する。
  摩耗度合い情報取得部291は、電力線840の摩耗を検出した場合、検出結果を示す情報と位置推定部292が算出するキロ程とを対応付けて表示部230に表示させ、また、記憶部280に記憶させる。これにより、摩耗度合い情報取得装置10のユーザは、電力線840の保守が必要な位置を把握することができる。
 
【0064】
  但し、位置推定部292が車両900の位置情報を取得する方法は、位置推定用レーザセンサ130による距離の測定結果を用いる方法に限らない。位置推定部292が車両900情報を取得する方法は、摩耗度合い情報取得部291が電力線840の摩耗を検出した場合に、摩耗箇所を特定可能な情報を取得できる方法であればよい。例えば、車両900がGNSS(Global Navigation Satellite System、全地球航法衛星システム)受信機を備えるなど、車両900自らの位置情報を取得する場合、位置推定部292が当該位置情報を車両900から取得するようにしてもよい。
 
【0065】
  なお、電力線測定部110が、車両900の進行方向に対して斜めに電力線840の摩耗部分を走査するようにしてもよい。この点について
図11及び
図12を参照して説明する。
  
図11は、電力線測定部110が車両900の進行方向に対しておよそ直角に電力線840の摩耗部分を走査する例を示す説明図である。同図は、上側レーザセンサ121を上側レーザセンサ121の真横から(特に、車両900の進行方向に対して直角方向から)見た場合の例を示している。
 
【0066】
  同図の線L41は、上側レーザセンサ121がレーザの向きを変化させる回転中心を示し、線L42は、レーザの軌跡の例を示している。また、車両900の進行方向を矢印B21で示している。
  上側レーザセンサ121は、レーザの向きを回転中心に対して直角方向に変化させる。
図11の例では、回転中心(線L41)が車両900の進行方向に設定されており、上側レーザセンサ121は、レーザの向きを車両900の進行方向に対して直角に変化させる。これにより、上側レーザセンサ121は、電力線840の摩耗部分を、車両900の進行方向におよそ直角に走査する。
 
【0067】
  図11は、電力線測定部110が車両900の進行方向に対しておよそ直角に電力線840の摩耗部分を走査する例を示す説明図である。同図は、上側レーザセンサ121を上側レーザセンサ121の真横から(特に、車両900の進行方向に対して直角方向から)見た場合の例を示している。
  同図の線L41は、上側レーザセンサ121がレーザの向きを変化させる回転中心を示し、線L42は、レーザの軌跡の例を示している。また、車両900の進行方向を矢印B21で示している。
 
【0068】
  上側レーザセンサ121は、レーザの向きを回転中心に対して直角方向に変化させる。
図11の例では、回転中心(線L41)が車両900の進行方向に設定されており、上側レーザセンサ121は、レーザの向きを車両900の進行方向に対して直角に変化させる。これにより、上側レーザセンサ121は、電力線840の摩耗部分をおよそ直角に走査する。
 
【0069】
  図12は、電力線測定部110が車両900の進行方向に対して斜めに電力線840の摩耗部分を走査する例を示す説明図である。同図は、上側レーザセンサ121を上側レーザセンサ121の真横から(特に、車両900の進行方向に対して直角方向から)見た場合の例を示している。
  同図の線L51は、上側レーザセンサ121がレーザの向きを変化させる回転中心を示し、線L52は、レーザの軌跡の例を示している。また、車両900の進行方向を
図11の場合と同じく矢印B21で示している。
 
【0070】
  図11の場合と異なり
図12の例では、回転中心(線L51)が車両900の進行方向に対して斜めに設定されており、上側レーザセンサ121は、レーザの向きを車両900の進行方向に対して斜めに変化させる。これにより、上側レーザセンサ121は、電力線840の摩耗部分を、車両900の進行方向に対して斜めに走査する。上側レーザセンサ121は、上側レーザセンサ121自らの位置から走査した各位置までの距離を測定する。そして、摩耗度合い情報取得部291は、電力線840の摩耗部分のうち電力線測定部110が走査した各位置における摩耗度合いを示す情報を取得する。
 
【0071】
  これにより、摩耗度合い情報取得部291が電力線840の摩耗部分に縦に発生している局所的な摩耗を検出できる可能性を高めることができる。
  具体的には、摩耗度合い情報取得部291は、電力線840の摩耗部分に縦に発生している局所的な摩耗に対して斜めに走査を行う。これにより、摩耗度合い情報取得部291が摩耗部分の方向と平行に走査を行う場合よりも、摩耗部分と走査線とが少なくとも1箇所で交わる可能性が高くなる。
  なお、以上では、上側レーザセンサ121の場合を例に説明したが、下側レーザセンサ122についても同様である。
 
【0072】
  次に
図13を参照して摩耗度合い情報取得装置10の動作について説明する。
  
図13は、摩耗度合い情報取得装置10が電力線の摩耗度合いを判定する処理手順の例を示すフローチャートである。摩耗度合い情報取得装置10は、タイミング検出部140にてサンプリングタイミングを検出する毎に、
図13の処理を行う。
  
図13の処理で、電力線測定部110は、レーザで電力線を走査して電力線測定部110の位置(上側レーザセンサ121の位置又は下側レーザセンサ122の位置)からレーザが照射された位置までの距離を測定する(ステップS101)。
 
【0073】
  次に、位置推定部292が、車両900の位置を推定する(ステップS102)。例えば、
図7及び
図8を参照して説明したように、位置推定部292は、位置推定用レーザセンサ130による距離の測定結果に基づいて車両900の位置をキロ程にて算出する。
  また、摩耗度合い情報取得部291は、電力線測定部110が測定した距離に基づいて、電力線840の摩耗度合いを判定する(ステップS103)。例えば、摩耗度合い情報取得部291は、電力線840が摩耗していない状態での電力線840の形状における摩耗部分と電力線測定部110の走査で得られた電力線840の形状における摩耗部分との距離を算出する。そして、摩耗度合い情報取得部291は、算出した距離と所定の閾値とを比較する。
 
【0074】
  そして、摩耗度合い情報取得部291は、ステップS103での摩耗度合いの判定結果に応じて保守の要否を判定する(ステップS104)。具体的には、ステップS103で算出した距離が閾値よりも大きいと判定した場合、摩耗度合い情報取得部291は保守が必要と判定する。一方、ステップS103で算出した距離が閾値以下であると判定した場合、摩耗度合い情報取得部291は保守不要と判定する。
 
【0075】
  保守が必要であると判定した場合(ステップS104:YES)、摩耗度合い情報取得部291は、判定結果を表示部230に表示させる。例えば、摩耗度合い情報取得部291は、保守を促すメッセージと、保守が必要と判定した位置を示す情報(ステップS102で得られた位置情報)と、
図10の例のように電力線840の形状とを表示部230に表示させる(ステップS111)。
 
【0076】
  そして、摩耗度合い情報取得部291は、摩耗を検出した旨の検出結果を記憶部280に記憶させる(ステップS112)。例えば、摩耗度合い情報取得部291は、摩耗を検出した旨の検出結果と、摩耗を検出した位置を示す情報(ステップS102で得られた位置情報)と、
図10の例のように電力線840の形状を示す情報とを組み合わせた情報を記憶部280に記憶させる。
  ステップS112の後、
図13の処理を終了する。
 
【0077】
一方、ステップS104で保守は不要であると判定した場合(ステップS104:NO)、摩耗度合い情報取得部291は、摩耗を検出していない旨の検出結果を記憶部280に記憶させる(ステップS121)。例えば、摩耗度合い情報取得部291は、摩耗を検出していない旨の検出結果と、摩耗を検出した位置を示す情報(ステップS102で得られた位置情報)と、
図10の例のように電力線840の形状を示す情報とを組み合わせた情報を記憶部280に記憶させる。
  ステップS121の後、
図13の処理を終了する。
 
【0078】
  なお、摩耗度合い情報取得装置本体200が車両900に搭載されていない構成であってもよい。例えば、摩耗度合い情報取得装置本体200が事務所に設置されており、車両900が走行して得られた情報を事後的に取得して電線の摩耗度合いを判定するようにしてもよい。
 
【0079】
  なお、摩耗度合い情報取得装置10の機能の一部を、他の機器が実行するようにしてもよい。例えば、位置推定部292による車両900の位置推定機能を、例えば車両基地など地上側に設けられたコンピュータで行うようにしてもよい。例えば、摩耗度合い取得装置10が、取得したデータを地上側のコンピュータに送信し、コンピュータが、受信したデータに基づいて車両900の位置を推定するようにしてもよい。
 
【0080】
  また、表示部230が表示する摩耗度合い及びメッセージなど各種画像の全部又は一部を、例えば車両基地など地上側に設けられた表示装置が行うようにしてもよい。例えば摩耗度合い取得装置10、或いは、摩耗度合い取得装置10からデータを受信したコンピュータが、摩耗度合い判定結果及びメッセージ等のデータを地上側の表示装置に送信し、表示装置が、受信したデータに基づいて摩耗度合い判定結果及びメッセージ等の画像を表示するようにしてもよい。
 
【0081】
  以上のように、電力線測定部110は、車両900に電力を供給する電力線840のうち、車両900に接触する摩耗部分、車両900に接触しない非摩耗部分それぞれについて、車両900の所定位置(上側レーザセンサ121の位置又は下側レーザセンサ122の位置)からの距離を測定する。そして、摩耗度合い情報取得部291は、車両900の所定位置から摩耗部分までの距離と車両900の所定位置から非摩耗部分までの距離との相違に基づいて電力線840の摩耗度合いを示す情報を取得する。
  これにより、摩耗度合い情報取得装置10は、電力線840が摩耗しても摩耗部分の幅がほぼ一定に保たれる場合でも電力線840の摩耗を検出することができる。例えば
図4に示す電力線840は、摩耗部分(領域A11で示されるように電力線840が擦り板951と接触する部分)が摩耗しても摩耗部分の幅はほぼ一定に保たれる。このような場合でも、上述したように摩耗度合い情報取得装置10は電力線840の摩耗を検出することができる。
  また、車両900が軌道800を1回走行すれば、軌道800が走行した全区間について電力線840の摩耗具合を判定することができる。従来は、保守点検員が軌道に入って目視点検等で電力線の摩耗具合を判定していたのに対し、摩耗度合い情報取得装置10によれば保守点検員の負担を軽減することができる。
 
【0082】
  また、タイミング検出部140は、車両900が一定間隔走行する毎にサンプリングタイミング信号を出力する。そして、摩耗度合い情報取得部291は、タイミング検出部140がサンプリングタイミング信号を出力する毎に電力線840の摩耗度合いを示す情報を取得する。
  これにより、摩耗度合い情報取得部291は、車両900の速度に依存せずに、車両900の進行方向に同一の間隔で電力線840の摩耗度合いを判定することができる。従って、車両900が高速走行している場合でも、サンプリング間隔が広くなりすぎて電力線840の摩耗度合いの判定精度が低下することを回避できる。また、車両900が低速走行している場合でも、電力線840の長さあたりのサンプリング回数が増加してデータ量が膨大になることを回避できる。
 
【0083】
  また、電力線測定部110は、車両900の進行方向に対して斜めに摩耗部分を走査して、車両900の所定位置(上側レーザセンサ121の位置又は下側レーザセンサ122の位置)から走査した各位置までの距離を測定する。そして、摩耗度合い情報取得部291は、摩耗部分のうち電力線測定部110が走査した各位置における摩耗度合いを示す情報を取得する。
  これにより、摩耗度合い情報取得部291が電力線840の摩耗部分に縦に発生している局所的な摩耗を検出できる可能性を高めることができる。
 
【0084】
  なお、制御部290の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
  また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
 
【0085】
  以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。