特許第6632135号(P6632135)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6632135
(24)【登録日】2019年12月20日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】油水分離器
(51)【国際特許分類】
   B01D 17/022 20060101AFI20200106BHJP
【FI】
   B01D17/022 502H
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-125365(P2016-125365)
(22)【出願日】2016年6月24日
(65)【公開番号】特開2017-225950(P2017-225950A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2018年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】谷津 亨
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 照
【審査官】 小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−131810(JP,A)
【文献】 特開2011−11157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 17/02−17/025
B01D 29/04
C02F 1/24,1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油水を回収しながら油と水とを分離する油水分離器であって、
前記油水が溜められた槽から吸引管を介して前記油水を吸引する吸引部と、
前記吸引部の駆動により吸引された油水を溜めるタンクと、
前記吸引部の駆動により前記タンク内のガスを排気するための排気管と、
前記排気管の先端側に設けられ、前記排気管の径よりも小径に形成されるとともに先端開口された排気排水管と、
前記タンク内に設けられ、前記油水から水を分離して下方に流す親水撥油膜と、
前記タンク内において前記親水撥油膜の下方に設けられ、前記排気排水管に接続されるとともに、前記親水撥油膜により分離された水を前記排気排水管に流す排水管とを備えることを特徴とする油水分離器。
【請求項2】
前記排気管の径に対する前記排気排水管の径の比率は、1/3.5以下であることを特徴とする請求項1に記載された油水分離器。
【請求項3】
前記排水管は、前記タンク内への気液の逆流を防止するための逆止弁を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載された油水分離器。
【請求項4】
前記タンク内において、前記親水撥油膜を上下に貫通する通気管を備え、親水撥油膜の上下の空間が連通していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載された油水分離器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油水分離器に関し、例えば、飲食店などから排出される含油排水を回収し、これを油と水とを分離して、分離した油を回収する作業に用いる油水分離器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、飲食店の厨房、或いは工場やガソリンスタンドなどから排出される含油排水(以下、油水と呼ぶ)を回収し、これを油と水とに分離する油水分離用処理装置がある。例えば、特許文献1には、図3に示すような油水分離用処理装置が開示されている。
図3において、油水分離用処理装置50は、第1の処理タンク51と第2の処理タンク52とを備え、第1の処理タンク51上方に第2の処理タンク52が配置された2段構成となっている。
【0003】
油水分離用処理装置50では、吸引手段59(バキューム手段)が駆動すると、貯留部60から第1処理タンク51内に油水30を吸引回収して、この油水30を第1処理タンク51内のフィルタ53により油31や固形残渣と水32とに分離する。油31や固形残渣はフィルタ53で捕捉され、水32はフィルタ53を透過する。
また、第2処理タンク52は、第1処理タンク51で分離された水32(分離水と呼ぶ)を吸引回収し、かつ分離水32を一時的に一定量溜める構成となっており、第2処理タンク52内に分離水32が一定量溜められると、第1処理タンク51への油水30の供給を一時的に停止するとともに第2処理タンク52内の分離水32をタンク外へ排出する。
【0004】
そして、第2処理タンク52内の分離水32のレベルが下限レベルに達した時点で、上記動作を繰り返し実行するように構成されている。
特許文献1に開示された油水分離用処理装置50によれば、油水30を吸引すると同時に油31や残渣と水32とを分離することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−270797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記油水分離用処理装置50にあっては、油水を吸引して溜める第1処理タンク51と分離水32を溜める第2処理タンク52の2つの大型のタンクが必要となり、装置全体が大きくなって作業場所間を移動するのが容易ではないという課題があった。
また、第2処理タンク52に溜まった分離水32を排水する場合、吸引手段59(バキューム手段)の駆動を停止し第1処理タンク51への油水30の吸引を停止する必要があり、その際に作業が中断され、効率が悪いという課題があった。
【0007】
本発明は、前記した点に着目してなされたものであり、油水を回収しながら油と水とを分離し、同時に分離水を排水することで効率的に油水分離回収作業を行うことができ、且つ小型軽量とすることで作業場所間を容易に移動することのできる油水分離器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決するために、本発明に係る油水分離器は、油水を回収しながら油と水とを分離する油水分離器であって、前記油水が溜められた槽から吸引管を介して前記油水を吸引する吸引部と、前記吸引部の駆動により吸引された油水を溜めるタンクと、前記吸引部の駆動により前記タンク内の空気(ガス)を排気するための排気管と、前記排気管の先端側に設けられ、前記排気管の径よりも小径に形成されるとともに先端開口された排気排水管と、前記タンク内に設けられ、前記油水から水を分離して下方に流す親水撥油膜と、前記タンク内において前記親水撥油膜の下方に設けられ、前記排気排水管に接続されるとともに、前記親水撥油膜により分離された水を前記排気排水管に流す排水管とを備えることに特徴を有する。
尚、前記排気管の径に対する前記排気排水管の径の比率は、1/3.5以下であることが望ましい。
また、前記排水管は、前記タンク内への気液の逆流を防止するための逆止弁を有することが望ましい。
また、前記タンク内において、前記親水撥油膜を上下に貫通する通気管を備え、親水撥油膜の上下の空間が連通していることが望ましい。
【0009】
このような構成により、タンクに回収した油水を親水撥油膜により油と水に分離し、分離水を排水管に流すとともに、油水の吸引に用いる吸引部の駆動により排気される空気(ガス)を排気管から排気排水管に流し、ベンチュリー効果により前記排気排水管に生じた負圧によって排気排水管に接続された前記排水管内の分離水を吸引し排水するものとした。
この構成により油水を油と水に分離すると同時に、分離した水を直ぐさま排水することができる。即ち、油水の吸引動作を止めること無く、油水分離作業を継続することができ、効率的に作業を行うことができる。
また、吸引した油水を溜めるタンクは1つで実現でき、小型軽量な構成により作業現場間の移動を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、油水を回収しながら油と水とを分離し、同時に分離水を排水することで効率的に油水分離回収作業を行うことができ、且つ小型軽量とすることで作業場所間を容易に移動することのできる油水分離器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明に係る油水分離器を模式的に示した断面図である。
図2図2は、図1の油水分離器が備える排気管とベンチュリー管の径の比率を説明するための管の一部拡大図である。
図3図3は、従来の油水分離用処理装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明にかかる油水分離器の実施の形態につき、図面に基づいて説明する。尚、本発明に係る油水分離器は、例えば飲食店や工場において排出された油を含む廃液(油水と呼ぶ)を吸引して油と水とを分離し、分離した水を排水して油を回収するものである。
【0013】
図1は、本発明に係る油水分離器の全体構成を模式的に示した断面図である。図1に示す油水分離器1は、油水からなる廃液を回収するための例えば鋼鉄製のペール缶2(タンク)を備える。このペール缶2の大きさ及び形状は特に限定されるものではないが、一般的な円筒状の20リットル缶などを用いることができる。
【0014】
前記ペール缶2は、その上部に開口部2aを有し、この開口部2aは蓋部材3によって塞がれている。前記蓋部材3は、上方に延びる筒状部3aを有し、この筒状部3a内の空間上部に駆動源であるモータ4と、モータによって回転可能なファン5とからなる吸引部6(少なくとも真空圧が21.8kPa以上)が配置されている。
また、前記筒状部3aには、作業場所に廃液が排出されたグリストラップ槽20から廃液30を吸引するための蛇腹ホース状の吸引管7(例えば直径32mm程度)と、ペール缶2内の排気を行うための排気管8とがそれぞれ接続されている。
【0015】
前記排気管8の先端部には、排気管8よりも径が細いベンチュリー管9が設けられている。具体的には、図2に示すように排気管8の径d1に対するベンチュリー管9の径d2の比率d2/d1が1/3.5とされており、これにより排気管8を通過する排気がベンチュリー管9において速度を上昇するようになっている。尚、本実施形態にあっては、前記比率d2/d1を1/3.5としたが、本発明にあってはそれに限定されるものではなく、1/3.5以下であればよい。
また、前記ペール缶2内の下部には、水平に親水撥油膜10が張架されている。この親水撥油膜10は、油を通さず、水のみを通過させるための膜である。
【0016】
前記親水撥油膜10の下方には、この親水撥油膜10を通過した分離水32を一方向に流すための漏斗部材11が配置されている。この漏斗部材11の所謂、足となる排水管部11aには、気液の逆流を防止するための逆止弁12が設けられ、さらに前記排水管部11aは、ペール缶2の外側に延びて前記ベンチュリー管9の側部に接続され、ベンチュリー管9から排水溝15に分離水32を排水できるようになっている。
【0017】
また、ペール缶2内において前記親水撥油膜10には通気管13が上下に貫通する状態に設けられている。これにより、親水撥油膜10の上下の空間が連通され、互いの気圧が等しく保つようにされている。即ち、親水撥油膜10の上表面を油が覆い空気(ガス)が通らなくなった際、親水撥油膜10の下方の空間(漏斗部材11内の空間)とベンチュリー管9内の空間との差圧が無くなり、排水されなくなることを防止するために設けられている。
【0018】
続いて、このように構成された油水分離器1を用いて作業員が排液回収作業を行う際の油水分離器1の動作について説明する。
作業員は、油水分離器1を作業現場に移動し、作業現場のグリストラップ槽20に吸引管7の先端を導入する。
また、排気管8の先端側に接続されたベンチュリー管9の先端を排水溝15付近に配置する。
【0019】
次いで、作業員は、吸引部6のモータ4を駆動させ、ファン5を回転させて、ペール缶2内の空気(ガス)を排気管8から排気する。
これによりペール缶2内は負圧となり、吸引管7を通じてグリストラップ槽20内の廃液、即ち油水30がペール缶2内(親水撥油膜10の上側の空間内)に吸引される。
ペール缶2内においては、親水撥油膜10の上面側に油水30が溜まると、水32のみが親水撥油膜10を通過し、下方の漏斗部材11に分離水32として落下する。即ち、親水撥油膜10の上面には水32と分離された油31が溜まっていくことになる。
【0020】
一方、排気管8を流れる空気(ガス)は、ベンチュリー管9においてベンチュリー効果により速度を上げ、これによりベンチュリー管9に生じた負圧によって排水管11aに設けられた逆止弁12が開く。この逆止弁12が開くことによって、漏斗部材11に落下した前記分離水32がベンチュリー管9に流れて排水溝15に排水される。
【0021】
このように油水分離器1においては、グリストラップ槽20からの油水30の吸引と、油水30の油31と水32との分離を同時に行うだけでなく、分離した水32の排出を同時に行うことができる。
また、前記したように作業が進むとペール缶2において親水撥油膜10の上には水32と分離した油31が溜まることになる。ペール缶2内が油31で一杯になると、吸引もできなくなるため、吸引部6のモータ4の駆動を停止し、溜まった油31を例えば別のペール缶に移し替えることにより、再び油水30の吸引を行うことができる。
グリストラップ槽20から油水30が無くなると、作業員は吸引部6のモータ4の駆動を停止し、その現場での作業を終了する。
そして、次の作業現場がある場合には、油水分離器1を移動させ、再び油水30の分離回収作業を行うことになる。
【0022】
以上のように本発明に係る実施の形態によれば、ペール缶2に回収した油水30を親水撥油膜10により油31と水32に分離し、分離水32を漏斗部材11から排水管11aに流すとともに、油水30の吸引に用いる吸引部6の駆動により排気される空気を排気管8からベンチュリー管9に流し、前記ベンチュリー管9に生じた負圧によりベンチュリー管9に接続された前記排水管11a内の分離水32を吸引し排水するものとした。
この構成により油水30を油31と水32に分離すると同時に、分離した水32を直ぐさま排水することができる。即ち、油水30の吸引動作を止めること無く、油水分離作業を継続することができ、効率的に作業を行うことができる。
また、吸引した油水30を溜めるタンクとして1つのペール缶2のみで実現でき、小型軽量な構成により作業現場間の移動を容易に行うことができる。
【0023】
尚、前記実施の形態においては、油水30を溜めるタンクとして、ペール缶を用いるものとしたが、本発明の油水分離器にあっては、その形態に限定されるものではない。
即ち、ある程度の容量を有する容器であれば、その形状にかかわらず油水30を吸引回収するためのタンクとして用いることができる。
【符号の説明】
【0024】
1 油水分離器
2 ペール缶(タンク)
3 蓋部
4 モータ
5 ファン
6 吸引部
7 吸引管
8 排気管
9 ベンチュリー管
10 親水撥油膜
11 漏斗部材
11a 排水管
12 逆止弁
13 通気管
15 排水溝
20 グリストラップ槽
30 油水
31 油
32 水
図1
図2
図3