(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6632612
(24)【登録日】2019年12月20日
(45)【発行日】2020年1月22日
(54)【発明の名称】ボールねじ機構用のスピンドル及びスピンドルを製造する方法
(51)【国際特許分類】
B21H 8/00 20060101AFI20200109BHJP
F16H 25/24 20060101ALI20200109BHJP
F16H 25/22 20060101ALI20200109BHJP
B21D 51/10 20060101ALI20200109BHJP
B24B 9/00 20060101ALI20200109BHJP
B23P 15/00 20060101ALI20200109BHJP
【FI】
B21H8/00 A
F16H25/24 A
F16H25/22 M
B21D51/10
B24B9/00 602F
B23P15/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-514674(P2017-514674)
(86)(22)【出願日】2015年9月3日
(65)【公表番号】特表2018-500170(P2018-500170A)
(43)【公表日】2018年1月11日
(86)【国際出願番号】DE2015200450
(87)【国際公開番号】WO2016041555
(87)【国際公開日】20160324
【審査請求日】2018年8月31日
(31)【優先権主張番号】102014218405.3
(32)【優先日】2014年9月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ファーバー
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン ヴュッボルト−ゴルバテンコ
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ドーア
(72)【発明者】
【氏名】フリッツ カメラー
【審査官】
山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/029842(WO,A1)
【文献】
特開2001−225131(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/013266(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21H 8/00
B21D 51/10、53/10
B21D 15/04、15/12
F16H 19/00 − 31/00、
35/10、37/00 − 37/16
B24B 5/04、9/00
B23G 9/00
B23P 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールねじ機構用のスピンドル(40,80)を製造する方法であって、
ねじプロファイル(12;52)をフラットな材料切片(10;50)に少なくとも部分的に設けるステップと、
前記材料切片(10;50)を中空円柱状のジャケット(30;70)へと変形加工するステップであって、このとき、前記中空円柱状のジャケット(30;70)の2つの長手方向エッジ(18,20;58,60)を互いに突き合わせ、かつ前記ねじプロファイル(12;52)を半径方向外向きに方向付けて形成するステップと、
前記中空円柱状のジャケット(30;70)の前記2つの長手方向エッジ(18,20;58,60)を結合するステップと、
前記中空円柱状のジャケット(30;70)の半径方向内側に少なくとも部分的に支持構造(42;82)を形成し、前記スピンドル(40;80)を完成させるステップと、
を含み、
前記中空円柱状のジャケット(30)の前記2つの長手方向エッジ(18,20)を結合するステップを、前記中空円柱状のジャケット(30)の両軸方向の端部区分(22,24)の各々をそれぞれ1つのリング(34,36)内に圧入することにより実施することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記材料切片(10;50)は、ウェブ状の金属薄板半製品から切り出された金属薄板切片であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ボールねじ機構の玉状の転動体を収容する前記ねじプロファイル(12;52)を、少なくとも1つのねじ山(16;56)を有する丸ねじ(14;54)として形成することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記中空円柱状のジャケット(30)の軸方向の端部区分(22,24)が、プロファイルが付与されずに形成されるように、前記中空円柱状のジャケット(30)を製造することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記支持構造(42;82)をプラスチック材料による射出成形により形成することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記支持構造(42,82)は、前記中空円柱状のジャケット(30;70)に対して同心に形成される円環形の横断面幾何学形状を有することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項にしたがって製造されるボールねじ機構用のスピンドル(40;80)であって、前記スピンドル(40;80)は、半径方向外側に形成されるねじプロファイル(12;52)を有する中空円柱状のジャケット(30;70)を備え、かつ前記中空円柱状のジャケット(30;70)の半径方向内側に支持構造(42;82)が形成されていることを特徴とするスピンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールねじ機構用のスピンドル及びスピンドルを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両技術において、ボールねじ機構は、回転運動を直線運動に、そして反対に直線運動を回転運動に低損失に変換できるので、とりわけアクチュエータとして広く使用されている。この種のボールねじ機構は、主としてスピンドルと、スピンドルを同軸に包囲するナットあるいはスリーブとを備え、スピンドルと、ナットあるいはスリーブとの間には、玉状の転動体が配置されている。ボールねじ機構に必要とされるこれらのコンポーネントを中実材料から製造することは、切削法では要求度が高く、それゆえハイコストになってしまう。
【0003】
従来技術において、ボールねじ機構の比較的簡単な、それゆえ比較的低コストの製造を可能にする様々な方法及びボールねじ機構の構造形態が公知となっている。独国特許出願公開第10028968号明細書において、ねじ機構用のこのようなスリーブが公知であり、この公知のスリーブは、当初平らな金属薄板ブランクから形成されている。金属薄板ブランクには、片側にねじプロファイルが設けられ、金属薄板ブランクは、最後に、ねじプロファイルが雌ねじをスリーブに形成するように曲げられて、長手方向スリットの入った中空円柱状のスリーブを形成する。スリーブの雌ねじ及びねじスピンドルの雄ねじに沿って、ねじ機構の転動体が転動し、回転運動を並進運動に変換する。しかし、スリーブの製造プロセスの過程で、長手方向スリットがスリーブに生じ、長手方向スリットは、スリーブを、これに対応する嵌め合い部を有した孔内に圧入することで初めて完全に閉鎖される。欠点は、ねじ機構の転動体が、この長手方向スリットの領域でリアクションなしに転動できない点にある。
【0004】
さらに、独国特許出願公開第102011081966号明細書において、ねじ部品を複合部品として製造する方法、転動型ねじ機構、リニアアクチュエータ、及びこのような複合部品を備える電気機械式のブレーキ倍力装置が公知である。ねじ部品は、ねじ山と管形の支持部とからなる複合部品として形成されており、ねじ山は、変形加工プロセス(Umformprozess)により製造される。
【0005】
管形の支持部は、好ましくは、一次成形(Urformen)、例えば射出成形又はダイカストにより製造され、このプロセスの過程で同時にねじ山と素材結合(stoffschluessig)又は形状結合(formschluessig)を介して結合される。好ましくは、支持部の製造は、金属からダイカストにより、又はプラスチックから射出成形により実施される。この刊行物に紹介された一実施の形態によれば、ねじ部品は、フラットな長方形の横断面を有する金属薄板ストリップをヘリックス状あるいは螺旋状に巻回することで形成されており、金属薄板ストリップ内には、浅い溝状の凹部が、ねじ山として圧刻されている。金属薄板ストリップの巻回体は、例えば点溶接により、軸方向で延びる溶接シームにより又は螺旋状の溶接シームにより、金属薄板ストリップの、互いに突き合わされた長手方向縁部に沿って互いに結合されて、ねじ部品を形成している。ねじ部品は、続いて支持部の射出成形に際し、支持部のプラスチック内に埋め込まれる。欠点は、特に、高い精度で形成すべき少なくとも1つの溶接シームを形成しなければならない点にある。加えて、溶接シームは、大きな長手方向延在長さを有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の根底にある課題は、ボールねじ機構用のスピンドルを製造する簡単にした方法を提供することである。さらには、付加的な半径方向外側の囲い構造なしで済ませたボールねじ機構用のスピンドルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、中空円柱状の金属薄板成形部品の製造が、平らな材料ブランクの巻成により、特に巻成された材料ブランクの結合すべきエッジのシーム長さが最小化されることで簡単になるという着想から出発している。
【0008】
本発明は、まず、ボールねじ機構用のスピンドルを製造する方法に関する。冒頭に挙げた課題は、
ねじプロファイルをフラットな材料切片に少なくとも部分的に設けるステップと、
材料切片を中空円柱状のジャケットへと変形加工するステップであって、このとき、中空円柱状のジャケットの2つの長手方向エッジを互いに突き合わせ、かつねじプロファイルを半径方向外向きに方向付けて形成するステップと、
中空円柱状のジャケットの2つの長手方向エッジを結合するステップと、
中空円柱状のジャケットの半径方向内側に少なくとも部分的に支持構造を形成し、スピンドルを完成させるステップと、
を含む方法により解決される。
【0009】
この方法により、ボールねじ機構用の雄ねじを備えるスピンドルを極めて低コストに製造できる。変形加工工程後、互いに突き合わされている、中空円柱状のジャケットの真っ直ぐな両長手方向エッジに沿って、中空円柱状のジャケットを結合したことで、例えばヘリックス状に巻かれて管を形成し、それぞれ縁部側で結合される金属薄板ストリップと比較して、必要な結合シーム長さが大幅に減少している。さらに、本発明に係る方法は、特に連続的な製造に好適である。さらに、この方法は、極めて有利には、様々な直径及び/又はねじプロファイルを備えるスピンドルの製造を可能にする。
【0010】
この方法の一形態によれば、材料切片は、僅かな材料厚さを有する金属薄板切片である。金属薄板を材料切片として使用することで、本方法により製造されたスピンドルの高い機械的な耐荷量及び耐久性を実現することができる。好ましくは、金属薄板切片は、ウェブ状の金属薄板半製品から切り出される。これにより、特に、本発明により形成されるスピンドルを製造する連続的な製造プロセスが可能である。ねじプロファイルは、材料切片を無端のウェブ状の半製品から切り出す前に連続的に設けてもよいし、材料切片を切り出した後に、切り出した材料切片に設けてもよい。
【0011】
方法の別の好適な一形態によれば、ボールねじ機構の玉状の転動体を収容するねじプロファイルを、少なくとも1つのねじ山を有する丸ねじとして形成する。これにより、ボールねじ機構において一般に使用される玉状の転動体は、問題なくねじプロファイル内で案内され、ねじプロファイル内を転動できる。
【0012】
方法の別の一形態において、中空円柱状のジャケットの2つの長手方向エッジを結合するステップを、長手方向シームを形成するように少なくとも部分的に接合することにより実施する。これにより、中空円柱状のジャケットの、変形加工プロセス後に互いに突き合わされている長手方向エッジが、信頼性高く機械的に結合され、長手方向エッジは、間隙なしに互いに突き合わされ、スピンドルの長手方向延在長さ全体にわたって、スピンドルの中空円柱状のジャケットの拡開が確実に排除される。
【0013】
方法の別の一形態によれば、長手方向シームを表面処理、例えば研削、研磨又はホーニングにかける。これにより、本方法により製造したスピンドルを装備したボールねじ機構のがたつきのない動作特性が達成される。これは、ボールねじ機構の転動体が、長手方向シームを越えるときも実質的にリアクションなしに転動できることによる。
【0014】
別の一実施態様によれば、中空円柱状のジャケットの2つの長手方向エッジを結合するステップを、中空円柱状のジャケットの両軸方向の端部区分の各々をそれぞれ1つのリング内に圧入することにより実施する。これにより、中空円柱状のジャケットの、変形加工プロセス後に互いに突き合わされている長手方向エッジを接合するために、さもなければ必要な、少なくとも部分的に形成すべき溶接シームが省略される。方法のこの代替的な態様において溶接シームが不要となることで、プロセス技術的に顕著に容易化される。それというのも、溶接シームは、薄い金属薄板部品では技術的に困難であり、多くの場合、コストあるいは手間のかかるレーザ溶接でしか製造することができないからである。さらに、中空円柱状のジャケットの、場合によっては必要な硬化プロセスを、もはや、必ずしも長手方向エッジの結合後に実施しなくてもよくなる。それというのも、もはや、熱を利用した接合プロセスが硬化に影響を及ぼすおそれがないからである。また、硬化工程によって生じる幾何学形状の変化も、より容易に補償でき、熱を利用した接合による歪みが回避される。
【0015】
方法の別の有利な一形態に応じて、中空円柱状のジャケットの軸方向の端部区分は、プロファイルが付与されずに形成される。これにより、中空円柱状のジャケットの両軸方向の端部区分のそれぞれに、各リングが、理想的な形で全面的に、ゆえに特に堅固に嵌合される。これとは異なり、リングは、例えば熱を利用して、中空円柱状のジャケットの、プロファイルなしの軸方向の端部区分に収縮嵌めされてもよい。
【0016】
方法の別の好適な一形態は、支持構造を特に射出成形法でプラスチック材料から形成する。好ましくは射出成形法で中空円柱状のジャケットに注入されるプラスチックにより、機械的に緊密な結合、特に素材結合及び形状結合が、半径方向内側の支持構造と、支持構造を同軸に取り巻く、雄ねじプロファイルを有する中空円柱状のジャケットとの間に生じる。支持構造が主として、完成したスピンドルの曲げ剛性を高める一方、金属薄板から形成された中空円柱状のジャケットは、主に、ねじプロファイル内を転動する玉状の転動体により惹起される点荷重を受容し、この点荷重を、支持構造に導入されてしまう前に、より大きな面積に分散する。このようにして提供されるハイブリッド構造に基づいて、本発明により製造されるスピンドルは、低重量であると同時に製造コストが低く、それでいながら機械的な耐荷量及び耐摩耗性が比較的高くなる。これとは異なり、支持構造は、金属の材料、例えば焼結金属、発泡金属又は中空円柱状のジャケット内に射出される金属から形成されてもよい。
【0017】
別の一形態によれば、支持構造は、本製造方法において中空円柱状のジャケットに対して同心に形成される円環形の横断面幾何学形状を有している。中空円柱状のジャケット内部の支持構造を好ましくは管状に形成したことに基づいて、このようにして形成されるスピンドルは機械的な剛性が高くなり、完全に充填される中空円柱状のジャケットに比べて明らかに重量が小さくなる。
【0018】
本発明はさらに、ボールねじ機構用のスピンドルに関する。本発明に係るスピンドルにおいて、スピンドルは、半径方向外側に形成されるねじプロファイルを有する中空円柱状のジャケットを備え、かつ中空円柱状のジャケットの半径方向内側に支持構造が形成されている。これにより、スピンドルの簡単かつ連続的な、しかもコスト面で最適な製造が可能であり、さらにスピンドルは、比較的軽量でありながら、優れた耐摩耗性を提供し、ひいては車両技術における使用に適している。
【0019】
本発明の理解の一助として、明細書に図面を添付した。同じ構造的な構成要素には、それぞれ同じ符号を付した。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1の実施の形態のボールねじ機構用のスピンドルを製造する第1の態様の方法の流れを説明する図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態のボールねじ機構用のスピンドルを製造する第1の態様の方法の流れを説明する図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態のボールねじ機構用のスピンドルを製造する第1の態様の方法の流れを説明する図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態のボールねじ機構用のスピンドルを製造する第1の態様の方法の流れを説明する図である。
【
図5】本発明の第1の実施の形態のボールねじ機構用のスピンドルを製造する第1の態様の方法の流れを説明する図である。
【
図6】本発明の第1の実施の形態のボールねじ機構用のスピンドルを製造する第1の態様の方法の流れを説明する図である。
【
図7】本発明の第2の実施の形態のボールねじ機構用のスピンドルを製造する第2の態様の方法を簡略的に説明する図である。
【
図8】本発明の第2の実施の形態のボールねじ機構用のスピンドルを製造する第2の態様の方法を簡略的に説明する図である。
【
図9】本発明の第2の実施の形態のボールねじ機構用のスピンドルを製造する第2の態様の方法を簡略的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1乃至6は、第1の実施の形態のボールねじ機構用のスピンドルを製造する第1の態様の方法の流れを説明する図である。平らな長方形の材料切片10は、第1の方法ステップの過程で、図示しない無端のウェブ状の半製品から切り出される。
図1に断面図で示した材料切片10は、好ましくは、薄い材料厚さの長方形の金属薄板切片である。次の方法ステップにおいて、
図2の断面図に略示するように、材料切片10にねじプロファイル12が設けられる。ねじプロファイル12は、好ましくは、丸ねじ14として形成される。図示しないボールねじ機構の、同じく図示しない玉状の転動体は、丸ねじ14内を低摩擦に転動可能である。ねじプロファイル12は、従来技術において公知の任意の方法、例えばねじ圧縮成形(Gewindedruecken)により設けてもよい。前に述べた方法の流れとは異なり、ねじプロファイル12を連続的にウェブ状の半製品に設け、続いて材料切片を切り出してもよい。
【0022】
ねじプロファイル12は、当初平らな材料切片10を巻成すると、転動体を収容する少なくとも1つの一貫したねじ山16が生じるように設けられる。ねじプロファイル12は、
図3に示した材料切片10の平面図で見て、材料切片10の、平行に延びる長手方向エッジ18,20あるいは短辺まで延在する一方、両軸方向の端部区分22,24は、プロファイルなしに形成されている。軸方向の端部区分22,24は、互いに鏡像的に形成されており、それぞれ概ね直角三角形の形状を呈している。
【0023】
図4に示すように、続いての方法ステップにおいて、プロファイルを付与した材料切片10を、好適な変形加工プロセスを用いて中空円柱状のジャケット30へと変形加工する。このとき、ねじプロファイル12は、中空円柱状のジャケット30の長手方向中心軸線32に関して半径方向外向きに方向付けられて配置される。材料切片10の両長手方向エッジ18,20は、この変形加工工程によって、理想的には完全に互いに突き合わされるように当接される。さらに
図4には、変形加工プロセスが完了した後のねじプロファイルのない軸方向の端部区分22,24が看取可能である。
【0024】
さらに続く方法ステップにおいて、
図5に示すように、それぞれ1つの中空円柱状のリング34,36を軸方向の端部区分22,24に被嵌するようにプレス嵌めする。両リング34,36により、長手方向エッジ18,20は、少なくとも軸方向の端部区分22,24の領域で機械的に堅固に互いに結合される。これにより、両長手方向エッジ18,20を接合するための技術的に要求度の高い溶接シーム又はろう接シームの形成が不要である。両リング34,36のプレス嵌め前又はプレス嵌め後、中空円柱状のジャケット30の、半径方向外側に配置されるねじプロファイル12を、硬化プロセスにかけてもよい。リング34,36の内径は、中空円柱状のジャケット30の軸方向の端部区分22,24の外径に対して、両者の間にそれぞれ少なくとも軽微なプレス嵌めが生じるように寸法設定されている。プロファイルなしの軸方向の端部区分22,24の幅bは、好ましくは、リング34,36の幅hに等しいか、又はそれよりも大きい。
【0025】
図6に示すように、中空円柱状のジャケット30の半径方向内側には、支持構造42が設けられている。これにより、結果として、本発明の特徴を有するボールねじ機構用のスピンドル40が提供される。図面の視認性を高めるため、
図6では、両リング34,36の図示を省略した。
【0026】
支持構造42は、ここでは例示的に、中空円柱状のジャケット30及び長手方向中心軸線32に対して同心に形成されている。支持構造42は、例えば繊維によって補強されたプラスチックからなっており、繊維によって補強されたプラスチックは、スピンドル40の機械的な耐荷量をさらに高める。支持構造42によってハイブリッド構造のスピンドル40が提供され、金属のジャケット30のねじプロファイル12が、玉状の転動体の点接触により発生する面圧を受容し、均等に分配する一方、支持構造42が、スピンドル40の必要な剛性を提供する。支持構造42のプラスチックだけでは、転動する玉の、発生する面圧を持続的に受容できない。これにより、ねじプロファイル12が設けられる中空円柱状のジャケット30だけに、機械的に耐荷量の高い、それゆえに高価な金属薄板あるいは金属の材料が必要であり、これに対して支持構造は、充填材料としての比較的低廉なプラスチックから形成することができる。
【0027】
支持構造42の形成は、例えば射出成形により実施可能である。射出成形工具の図示しない円柱状のコアを軸方向で中空円柱状のジャケット30内に導入し、その後、コアとジャケット30との間の中空円柱状の中空室に、支持構造42を形成すべく、支持構造42の素材を充填する。プラスチック射出成形により、機械的に特に緊密な結合、つまり形状結合及び素材結合が、これにより形成される支持構造42と、中空円柱状のジャケット30の、ねじプロファイル12のネガ形状としての波形の内面44との間に生じる。これにより、両リング34,36に加えて、付加的な結合が、中空円柱状のジャケット30の、突き合わされて位置する長手方向エッジ18,20間に形成されるので、このスピンドル40を装備したボールねじ機構の、がたつきのないスムーズな動作が達成される。
【0028】
スピンドル40の、
図6に示した実施例とは異なり、中空円柱状のジャケット30の内室46は、スピンドルの重量がそれほど問題でなければ、プラスチックで完全に満たされてもよい。
【0029】
図7乃至9の簡略図は、第2の実施の形態のボールねじ機構用のスピンドルを製造する第2の態様の方法を示している。当初平らな材料切片50に、第1の方法ステップにおいて、やはり、ねじプロファイル52を設ける。ねじプロファイル52は、好ましくは、玉状の転動体用の丸ねじ54として形成されており、転動する転動体を案内する少なくとも1つのねじ山56を有する。
【0030】
ねじプロファイル52は、材料切片50の平行な2つの長手方向エッジ58,60間に延在している。しかし、
図1乃至6に示した方法の第1の態様とは異なり、ねじプロファイル52は、2つの軸方向の端部区分62,64の領域内まで延在している。材料切片50のその他の構成については、繰り返しを避けるため、
図1乃至3に対する説明を参照されたい。
【0031】
図8の斜視図から看取可能であるように、当初平らな材料切片50は、好適な変形加工プロセスによってやはり中空円柱状のジャケット70へと変形加工される。このとき、螺旋状に延びるねじ山56を有するねじプロファイル52は、ジャケット70の長手方向中心軸線72に関して半径方向外向きに方向付けられており、材料切片50の両長手方向エッジ58,60は、全面的に互いに突き合わされて位置する。
【0032】
方法の第1の態様とのさらなる相違点として、両長手方向エッジ58,60は、別の方法ステップにおいて、好ましくは熱を利用して、例えばレーザ溶接又はろう接により、連続して機械的に堅固に接合され、長手方向シーム74を形成する。これとは異なり、両長手方向エッジ58,60の結合は、接着、かしめ、圧接等により実施されてもよい。両長手方向エッジ58,60の、好ましくは熱を利用した接合による結合後、研削、研磨又はホーニングによる長手方向シーム74の表面処理が、ボールねじ機構の動作特性をさらに最適化すべく実施されてもよい。さらに、中空円柱状のジャケット70は、ジャケット70に設けられたねじプロファイル52とともに、好ましくは、その耐摩耗性を高めるべく、硬化処理にかけられる。
【0033】
図9の縦断面図に示すように、最後の方法ステップにおいて、やはり、第2の実施の形態のボールねじ機構用のスピンドル80の仕上げが、支持構造82を設けることで実施される。支持構造82は、好ましくは、場合によってはさらに付加的に繊維強化されたプラスチックから形成される。支持構造82のその他の構造的な詳細と、その製造については、
図6の説明の枠内でした説明を参照されたい。
【0034】
方法の第1の態様とは異なり、好ましくは溶接された長手方向シームを有する方法の第2の態様の場合、スピンドル80を、略任意の長さを有する連続する長尺材(Strang)として製造することが可能である。この目的で、無端のウェブ状の、当初平らな半製品に、まず、連続的にねじプロファイル52を設け、これに続いて中空円柱状のジャケット70を変形加工により形成し、最終的にジャケット70の長手方向エッジ58,60を少なくとも部分的に連続的に互いに溶接する。これと並行して連続的に、支持構造82を形成するプラスチックを、既に溶接した中空円柱状のジャケット70内に射出成形工具により注入する。最後に、このようにして完成した長尺材を短く切断して、略任意の長さを有するスピンドル80を形成することができる。
【符号の説明】
【0035】
10 平らな材料切片
12 ねじプロファイル、雄ねじ
14 丸ねじ
16 ねじ山
18 材料切片10の長手方向エッジ
20 材料切片10の長手方向エッジ
22 材料切片10の軸方向の端部区分
24 材料切片10の軸方向の端部区分
30 中空円柱状のジャケット
32 ジャケット30の長手方向中心軸線
34 第1のリング
36 第2のリング
40 スピンドル
42 支持構造
44 支持構造の内面
46 内室
50 平らな材料切片
52 ねじプロファイル、雄ねじ
54 丸ねじ
56 ねじ山
58 材料切片50の長手方向エッジ
60 材料切片50の長手方向エッジ
62 材料切片50の軸方向の端部区分
64 材料切片50の軸方向の端部区分
70 中空円柱状のジャケット
72 ジャケット70の長手方向中心軸線
74 長手方向シーム
80 スピンドル
82 支持構造
h リング34,36の幅
b プロファイルなしの端部区分22,24の幅