特許第6632652号(P6632652)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6632652
(24)【登録日】2019年12月20日
(45)【発行日】2020年1月22日
(54)【発明の名称】画像処理装置および画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/00 20060101AFI20200109BHJP
   A61C 19/04 20060101ALI20200109BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20200109BHJP
   A61B 1/04 20060101ALI20200109BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20200109BHJP
【FI】
   A61C19/00 B
   A61C19/04 Z
   A61B6/03 377
   A61B1/04 511
   G06T1/00 290Z
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-65650(P2018-65650)
(22)【出願日】2018年3月29日
(65)【公開番号】特開2019-170923(P2019-170923A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2018年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141598
【氏名又は名称】株式会社吉田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 直輝
(72)【発明者】
【氏名】友江 剛
(72)【発明者】
【氏名】内田 祐也
【審査官】 村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−202313(JP,A)
【文献】 特開2003−250812(JP,A)
【文献】 特開2004−159998(JP,A)
【文献】 特開2013−034764(JP,A)
【文献】 特開2010−259497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/00
A61B 1/04
A61B 6/03
A61C 19/04
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
術者の診療位置を設定する診療位置設定手段と、
歯牙の画像を表示手段に表示させると共に、前記診療位置を示すマーク画像を前記歯牙の画像に重畳するように前記表示手段に表示させる表示制御手段と、を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記診療位置設定手段は、患者の頭頂側であることを示す第1位置と、患者の頬側であることを示す第2位置と、のいずれか一方を前記診療位置として設定する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記診療位置を示すマーク画像は、術者の視線方向を示す画像である請求項1または請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記診療位置設定手段は、操作者による入力を受け付けることで前記診療位置を設定する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記診療位置設定手段は、術者の診療位置を検出する検出手段から検出信号を取得することで前記診療位置を設定する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記検出手段はカメラである請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記検出手段はセンサである請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記診療位置設定手段は、術者、患者、治療種類のうちの少なくとも1つに対応付けて前記診療位置を設定する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記歯牙の画像は、X線撮影により取得されたデンタル画像、パノラマ画像、CT断層画像、X線CTデータから作成された3D画像、CG画像からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記歯牙の画像は、マイクロスコープによって取得された画像を含む請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記表示手段は、ヘッドマウントディスプレイである請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項12】
コンピュータに、
歯牙の画像を表示手段に表示させる表示ステップと、
術者の診療位置を設定する診療位置設定ステップと、
前記診療位置を示すマーク画像を前記歯牙の画像に重畳するように前記表示手段に表示させる表示制御ステップと、を実行させるための画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置および画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科において、表示部に根管長測定画面と同時に歯牙のX線画像を表示した上で、術者が歯牙のX線画像をチェックしながら根管治療を行うことが特許文献1に記載されている。このように根管治療を行うときに表示部に歯牙の画像を表示することで、術者は治療歯の内部情報を容易に把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−327519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、術者が診療の際にどのような向きで患者に接するかによって治療歯の見え方は異なっている。そのため、歯牙の画像を確認しながら治療を行う場合、術者は、自分の診療位置を考慮しなければ、歯牙の画像の読み取りミスが生じる虞がある。したがって、歯牙の画像を確認しながら治療を行う術者にとっては、歯牙の画像を正確に読み取ることが負担となる。
【0005】
そこで、本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、治療中に術者に参照される歯牙の画像の読み取りを支援することのできる画像処理装置および画像処理プログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る画像処理装置は、術者の診療位置を設定する診療位置設定手段と、歯牙の画像を表示手段に表示させると共に、前記診療位置を示すマーク画像を前記歯牙の画像に重畳するように前記表示手段に表示させる表示制御手段と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、治療中に術者に参照される歯牙の画像の読み取りを支援することができる。したがって、本発明によれば、治療中に術者による歯牙の画像の読み取り負担を軽減し、読み取りミスを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る画像処理装置の構成を模式的に示すブロック図である。
図2】歯科用治療設備の一例を示す模式図である。
図3】術者の診療位置を示す模式図であって、(a)は第1の位置である12時のポジション、(b)は第2の位置である9時のポジションを示している。
図4】第2の位置である9時のポジションの場合に表示される画面例を示す模式図である。
図5】本発明の実施形態に係る画像処理装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図6】(a)〜(d)は、術者の診療位置とCT断層画像との関係を示す模式図である。
図7】第1の位置である12時のポジションの場合に表示される画面例を示す模式図である。
図8図7の画面例の変形例を示す模式図である。
図9】画面表示の他の例を示す模式図であって、(a)は第2の位置、(b)は第1の位置にそれぞれ対応している。
図10】ヘッドマウントディスプレイの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る画像処理装置について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る画像処理装置の構成を模式的に示すブロック図である。
画像処理装置1は、例えば、一般的なコンピュータで実現することができ、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、HDD(Hard Disk Drive)と、入力/出力インタフェースとを含んで構成されている。このコンピュータには、3次元CTデータ21からX線CTの各断層画像や3D画像を生成して表示する画像表示プログラムや、術者の診療位置を歯牙の画像に重畳する動作プログラムがインストールされている。なお、歯牙の画像は、例えばX線CT(Computed Tomography)装置により撮影された断面画像、CTデータから作成された3D画像、または、CTデータから作成された仮想的な内視鏡画像であってもよい。また、歯牙の画像は、X線撮影装置により撮影されたデンタル画像、または、パノラマ画像であってもよい。
【0010】
画像処理装置1には、例えば、マイクロスコープ2、検出手段3、入力手段4および表示手段5が接続されている。
【0011】
マイクロスコープ2は、従来公知の歯科手術用マイクロスコープを用いることができる。マイクロスコープの使用形態としては、歯科医師がマイクロスコープの接眼部を直接的に覗いて使用する場合と、マイクロスコープの接眼部側にカメラを取り付けて使用する場合がある。本実施形態では、一例としてマイクロスコープ2にカメラを取り付けて使用するものとしている。このカメラからの出力信号は、画像処理装置1に出力される。なお、歯科医師の治療方針によっては、歯科医師がマイクロスコープの接眼部を直接的に覗いて使用する場合や、マイクロスコープを使用しない場合もある。そのような場合、マイクロスコープ2から画像処理装置1への入力信号はない。
【0012】
検出手段3は、術者の診療位置を検出するものである。検出手段3は、例えば、センサやカメラである。センサとしては、一般的な人感センサを用いることができる。人感センサは、赤外線、超音波、可視光等を用いて人間の所在を検知するためのセンサである。人感センサは、反射型でも透過型でも構わない。検出手段3が、例えば赤外線を用いた反射型のセンサである場合、センサの投光素子から投光された赤外線が、人体(術者)によって反射し、センサの受光素子に到達することで術者を検出することができる。
【0013】
このような検出手段3を設置する場所は、歯科医院の診察室の壁、机、歯科用ユニット等任意の個所で構わない。図2に示すように、検出手段3を、例えば患者用椅子31に取り付けてもよい。ここでは、患者用椅子31の基台において、背もたれの下に相当する個所と、肘掛けの下に相当する個所に、それぞれ反射型のセンサからなる検出手段3を配設している。検出手段3は、人体(術者)そのものを検出してもよいし、例えばフットコントローラ34の位置を検出しても構わない。術者がフットコントローラ34を使用する場合、自分の診療位置において、フットコントローラ34を自分の足が届く範囲に設置するからである。
【0014】
検出手段3が透過型のセンサである場合、投光素子と受光素子とを別体にして、受光素子を、患者用椅子31の基台において、背もたれの下に相当する個所と、肘掛けの下に相当する個所に、それぞれを配設してもよい。この場合、投光素子を、診察室の壁や机など固定された箇所に配設しておき、光が遮られることで、術者の診療位置を検出することができる。
【0015】
検出手段3がカメラである場合、カメラの種類は特に限定されない。一般的な可視光カメラであってもよいし、赤外線カメラであってもよい。カメラの設置場所は、歯科用ユニット32の術者用ハンガー、アシスタント用ハンガー、アーム部、図示しない柱状のスタンドや無影灯、または術者用の椅子33に設置してもよい。また、カメラ用マーカを、術者の診療位置に対応した位置、例えば背もたれの下や肘掛けの下等の固定された位置に設置しておくことが好ましい。これにより、カメラ用マーカを術者と共に検出することで、術者の診療位置を検出することができる。
【0016】
図1に戻って、画像処理装置1の構成の説明を続ける。
入力手段4は、画像処理装置1で行う処理や、表示手段5に表示する断層の設定など制御のために必要な情報を入力するものであり、例えばキーボードやマウス等のデバイスである。表示手段5は、歯牙の画像等を表示するものであり、例えば、液晶ディスプレイ等である。画像処理装置1に接続された表示手段5の画面上には、GUI(Graphical User Interface)により、ウィンドウ、アイコン、ボタン等が表示され、操作者はそれらをマウス等の入力手段4で選択する操作を行うことができる。
【0017】
画像処理装置1は、処理手段10と、記憶手段20と、を備えている。
記憶手段20は、画像処理に用いる各種データ、処理結果、画像表示プログラム、術者の診療位置を歯牙の画像に重畳する動作プログラム等を記憶するものである。記憶手段20は、例えば磁気ディスク、光ディスク、一般的な画像メモリ等から構成される。
図1では、一例として、記憶手段20は、3次元CTデータ21と、デンタル画像22と、パノラマ画像23と、仮想内視鏡画像24と、を記憶している。なお、診療位置25は、処理手段10の処理結果として得られた情報である。
【0018】
3次元CTデータ21は、コーンビームを用いる歯科用CT(CBCT:Cone-Beam Computed Tomography)による撮影により得られた3次元データ(ボリュームデータ)に基づいている。このボリュームデータは、例えば512×512×512個のボクセルに分けられる。そして、各ボクセルの画素値を計算して画像を再構成したものを3次元CTデータ21としている。この3次元CTデータ21としては、例えば、各ボクセルの画素値が予め計算されているデータを事前に入力しておく。
【0019】
デンタル画像22は、口腔内の一部の歯牙を撮影するデンタル撮影により取得されたX線画像である。
パノラマ画像23は、歯全体を撮影するパノラマ撮影により取得されたX線画像である。
仮想内視鏡画像24は、CTデータから、CG(Computer Graphics)により作成された画像である。
【0020】
処理手段10は、マイクロスコープ画像入力手段11と、診療位置設定手段12と、表示制御手段13と、を備えている。なお、処理手段10は、例えば、記憶手段20に格納されたプログラムをCPUがRAMに展開し実行することにより実現される。
以下、各手段について詳細に説明する。
【0021】
マイクロスコープ画像入力手段11は、マイクロスコープ2に取り付けられた図示しないカメラから伝送されてくるマイクロスコープ画像を入力する所定のインタフェースである。マイクロスコープ画像は動画であり、表示制御手段13によって表示手段5に表示される。
【0022】
診療位置設定手段12は、術者の診療位置を設定するものである。ここで、術者の診療位置とは、患者を囲む360°方向のいずれかの方向を示す。例えば、図2の検出手段3の備える患者用椅子31の形状が丸みを帯びている場合、1つのセンサ(検出手段3)によって、患者周囲の180°の区域であればどこにでも、術者の診療位置を設定することができる。また、検出手段3がカメラである場合、患者周囲のいずれの方向であっても術者の診療位置を設定することができる。
歯科では、術者の診療位置を、時計の針の位置で示す方式が採用されることがある。この方式に対応させると、術者の診療位置とは、例えば、9時の位置、10時の位置、11時の位置、12時の位置等、どの位置でもよい。以下では、術者の診療位置として代表的な2つの位置を例示して説明する。第1位置は12時のポジションのことであり、第2位置は9時のポジションのことである。以下、第1位置や第2位置のことを、適宜、12時のポジションや9時のポジションと呼称する場合もある。
【0023】
診療位置設定手段12は、例えば患者の頭頂側であることを示す第1位置と、患者の頬側であることを示す第2位置と、のいずれか一方を術者の診療位置として設定するようにしてもよい。図3(a)は、第1位置で患者Pを診療中の術者Dの一例を示す図である。図3(b)は、第2位置で患者Pを診療中の術者Dの一例を示す図である。
【0024】
本実施形態では、診療位置設定手段12は、一例として、術者の診療位置を検出する検出手段3から検出信号を取得することで診療位置を設定することとした。つまり、自動で診療位置を設定することとした。
【0025】
表示制御手段13は、歯牙の画像を表示手段5に表示させるものである。表示制御手段13は、例えば、3次元CTデータ21を読み込み、CTの断層画像を構築し、表示手段5に表示させる。表示制御手段13は、診療位置を示すマーク画像を歯牙の画像に重畳するように表示手段5に表示させる。なお、自動検出の場合、診療位置を途中で変更した場合、変更に伴って、マーク画像の表示も変更される。
【0026】
ここで、画面表示の一例について図4を参照して説明する。この例では、表示手段5の画面に、X線画像用のウィンドウ41〜43と、オプション画像用のウィンドウ44〜46と、を同時に表示した状態を模式的に示している。ただし、これらのウィンドウを個別に表示しても構わない。
【0027】
ウィンドウ41には、アキシャル(軸位断、横断)画像が表示される。ウィンドウ42には、コロナル(冠状断、前額断)画像が表示される。ウィンドウ43には、サジタル(矢状断)画像が表示される。なお、ここでは、アキシャル画像にだけ、直交する2つの直線を表示し、他の画像では省略しているが、CT画像のビューワでは、一般的に、それぞれの画像に断層位置を示す直線が表示される。これらの直線の位置や角度を変更することにより、目的とする断層の抽出を簡単に行うことができる。
【0028】
ウィンドウ44には、3D画像(3次元画像)が表示される。ここでは、3次元CTデータ21から作成した歯牙の3D画像を表示している。なお、表示制御手段13は、3D画像を歯牙のX線画像と並べて表示することができる。ここで、3D画像とは、CTBTのコーンビームが照射される領域に含まれる歯牙の画像であればよい。例えば、ビームの照射範囲内に含まれる患者の頭部、上顎全体、下顎全体、複数の歯牙、あるいは単独の歯牙をレンダリングしたそれぞれの画像であってもよい。また、レンダリング処理としては、例えば、ボリュームレンダリング処理(volume rendering)や、サーフェイスレンダリング処理(surface rendering)等であっても構わない。
【0029】
ウィンドウ41〜44では、歯牙の画像にマーク画像50が重畳されている。図4は、一例として、第2の位置である9時のポジションの場合に表示される画面例を示す模式図である。マーク画像50は、術者の診療位置を示すことができれば、その形状は特に限定されず、例えば、三角形、四角形、多角形、円、楕円等であってもよい。本実施形態では、マーク画像50は、矢印の形状であって、術者の視線方向を示す画像であることとした。すなわち、矢印の基端部が診療位置を示し、矢印の先端部が術者の視線の先を示している。このように、マーク画像50が術者の視線方向を示す画像であると、術者は、マーク画像50が重畳された歯牙の画像の向きを直感的に認識することができる。
【0030】
ウィンドウ45には、仮想内視鏡画像24が表示される。仮想内視鏡画像24は、3次元CTデータ21からCGで作成した3D画像である。ここで、破線の2つの円は、それぞれ根管を示している。これによれば、実際の内視鏡を診療に用いていなくても、表示制御手段13は、3次元CTデータ21を用いることで、あたかも内視鏡で撮影されたかのような歯牙の内部構造を立体的な画像として提示することができる。なお、表示制御手段13は、仮想内視鏡画像24を、歯牙のX線画像と並べて表示することができる。
【0031】
カメラが接続されたマイクロスコープ2を診療に用いる場合、ウィンドウ46には、マイクロスコープ画像が表示される。なお、表示制御手段13は、マイクロスコープ2によって取得された歯牙のマイクロスコープ画像を、歯牙のX線画像と並べて表示することができる。
【0032】
図4は、マーク画像50が重畳された複数の歯牙の画像を同時に表示した画面表示例を示している。このようにマーク画像50が重畳される歯牙の画像は、X線撮影により取得された画像や3次元CTデータ21から作成された画像であってもよい。ここで、X線撮影により取得された画像には、図1に示すデンタル画像22、パノラマ画像23や、CT断層画像を含む。また、CT断層画像には、サジタル画像、コロナル画像、および、アキシャル画像が含まれる。また、3次元CTデータ21から作成された画像には、歯牙の3D画像(3次元画像)や、仮想内視鏡画像24を含む。
【0033】
すなわち、マーク画像が重畳される歯牙の画像は、デンタル画像22、パノラマ画像23、CT断層画像、3次元CTデータ21から作成された3次元画像、3次元CTデータ21から作成された仮想内視鏡画像24からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0034】
さらに、マーク画像が重畳される歯牙の画像は、マイクロスコープ2によって取得された画像であっても構わない。すなわち、マイクロスコープ画像に、マーク画像50を重畳してもよい。例えば歯牙のCT画像をチェックしながら根管治療を行う際に、カメラが接続されたマイクロスコープ2を用いる場合、通常、歯牙のCT画像の1歯を拡大表示すると共に、高倍率のマイクロスコープ画像を表示している。このような場合、肉眼で見る画像とは異なり、高倍率のマイクロスコープ画像では、画像が拡大される分だけ顕微鏡の視野が狭くなってしまう。そして、表示されたマイクロスコープ画像を観察する術者にとっては、視野が狭いことによって情報が絞られることから、患者の顔の向きや自分の診療位置といった相対的に大きな位置関係に混乱を生じやすくなる。しかし、マイクロスコープ画像にマーク画像50を重畳表示すれば歯牙の画像の読み取りが支援される。これにより、術者が高倍率のマイクロスコープ画像を観察しながら手術を行っている場合でも歯牙の画像の読み取りミスを防止することができる。
【0035】
次に、画像処理装置1による処理の流れについて図5を参照(適宜、図1参照)して説明する。ここでは、歯牙の画像の一例をCTの断面画像であるものとして説明する。まず、画像処理装置1は、操作者の操作にしたがって、表示制御手段13によって、3次元CTデータ21を読み込む(ステップS1)。なお、ここでは、3次元CTデータ21を画像処理装置1の内部の記憶手段20から表示制御手段13によって、読み込むこととしたが、3次元CTデータ21を外部のCT装置から読み込むこととしてもよい。
【0036】
次に、例えば、操作者が、入力手段4によって、所定の断層を指定することで、画像処理装置1は、表示制御手段13によって、表示手段5に歯牙の画像を表示させる(ステップS2)。具体的には、操作者は、例えば、上顎の全歯や下顎の全歯を一覧するアキシャル画像から、治療対象の歯(治療歯)として1歯を指定する。アキシャル画像は、歯牙の水平方向の断面画像である。なお、指定された歯の位置を示す座標については、アキシャル画像−サジタル画像間のように各断層画像間で各々の座標をマッチングさせることができる。操作者は、例えば、アキシャル画像上で、入力手段4によって、所望の断層位置を指定する。これにより、指定された断層位置に対応したサジタル画像またはコロナル画像を表示させ、その断層画像において関心領域を指定したりすることも可能である。
【0037】
次に、検出手段3が、術者の診療位置を検出した信号を画像処理装置1に出力する。これにより、画像処理装置1は、診療位置設定手段12によって、術者の診療位置を設定する(ステップS3)。そして、表示手段5は、X線画像に診療位置を示すマーク画像50を重畳表示する(ステップS4)。なお、本実施形態のように検出手段3を用いる場合、診療位置を設定するステップ(ステップS3)の順序は、任意である。
【0038】
ここで、前記ステップS4の詳細として、術者の診療位置と、患者の歯牙のCT断層画像との関係について図6(a)〜図6(d)を参照して説明する。
図6(a)は、術者Dの診療位置が12時のポジションであって、患者Pの歯牙におけるアキシャル断面Aの画像(アキシャル画像)やコロナル画像を参照する場合の模式図である。
図6(b)は、術者Dの診療位置が9時のポジションであって、患者Pの歯牙におけるサジタル断面Sの画像(サジタル画像)を参照する場合の模式図である。
図6(c)は、術者Dの診療位置が12時のポジションであって、患者Pの歯牙におけるサジタル断面Sの画像(サジタル画像)を参照する場合の模式図である。
図6(d)は、術者Dの診療位置が9時のポジションであって、患者Pの歯牙におけるアキシャル断面Aの画像(アキシャル画像)やコロナル画像を参照する場合の模式図である。
【0039】
例えばX線画像がアキシャル画像やコロナル画像であって、術者Dが12時のポジションにいる場合(図6(a)参照)には、術者Dは、このX線画像を自然に認識することができる。ただし、術者Dが9時のポジションを診療位置にしている場合(図6(d)参照)、従来技術では、注意が必要である。一方、本実施形態では、表示制御手段13は、設定された診療位置25(図1参照)に基づいて、現在の診療位置を示すマーク画像50を歯牙の画像に重畳するように表示手段5に表示させる。これにより、表示手段5は、このX線画像(アキシャル画像やコロナル画像)に診療位置を示すマーク画像50を重畳表示する。
【0040】
一方、例えばX線画像がサジタル画像である場合、術者Dが9時のポジションにいる場合(図6(b)参照)には、術者Dは、このX線画像を自然に認識することができる。ただし、術者Dが12時のポジションを診療位置にしている場合(図6(c)参照)、従来技術では、注意が必要である。一方、本実施形態では、表示制御手段13は、設定された診療位置25(図1参照)に基づいて、現在の診療位置を示すマーク画像50を歯牙の画像に重畳するように表示手段5に表示させる。これにより、表示手段5は、このX線画像(サジタル画像)に診療位置を示すマーク画像50を重畳表示する。
【0041】
まとめると、図6(a)、図6(b)の場合、治療中に参照する画像の向きと、治療中に実際に観察している歯牙の向きとが一致しているので、術者Dは、画像の読み取りに負担を感じにくく、読み取りミスも生じにくい。一方、図6(c)、図6(d)の場合、治療中に参照する画像の向きと、治療中に実際に観察している歯牙の向きとが一致していないので、術者Dは、画像の読み取りに負担を感じやすく、読み取りミスも生じやすい。本実施形態によれば、特に、図6(c)、図6(d)の場合に、歯牙の画像の読み取りミスを防止する効果が大きい。
【0042】
また、例えば、図4のウィンドウ43に表示された歯牙の画像と同様の画像がただ1つだけ画面表示されている場合、画像上では歯根が右に曲がっているように見える。そして、マーク画像等の情報がなければ、患者の治療歯の歯根も右に曲がっているように思いがちであるが、この画像が手前や奥に曲がっていることを示す画像である場合もある。そのような場合、思い違いによって、例えばファイル等の治療器具が、予期しない方向に刺さることで根管に損傷を与える虞もある。しかしながら、本実施形態によれば、歯牙の画像にマーク画像50を重畳表示することで歯牙の画像の読み取りが支援される。したがって、歯牙の画像を確認しながら治療を行う術者は、歯牙の画像の読み取り負担が軽減され、治療の成功率を向上させることができる。
【0043】
本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。また、以下のように変形してもよい。例えば、一般的なコンピュータを、画像処理装置として機能させる画像処理プログラムにより動作させることで実現することも可能である。このプログラムは、通信回線を介して提供することも可能であるし、CD−ROM等の記録媒体に書き込んで配布することも可能である。
【0044】
本実施形態によれば、歯科医院において一人の術者が常に所定の診療位置で診療する場合に、読み取り負担を軽減することは勿論、例えば、複数の術者それぞれの診療位置を設定することしても構わない。この場合、処理手段10の処理結果である診療位置25(図1参照)は、例えば、術者を識別する情報と、その術者の診療位置と、を対応付けた情報となる。ここで、術者を識別する情報は、例えば氏名等の個人を特定できる情報であればよい。また、画像処理装置1における治療前の操作モードで、術者が、術者を識別する情報を入力することとする。これにより、術者毎の診療位置25を一旦登録しておけば、術者の交代に追従して、複数の術者それぞれの診療位置に合わせた位置にマーク画像50を表示することができる。
【0045】
また、同様に、処理手段10の処理結果である診療位置25(図1参照)は、例えば、患者を識別する情報と、術者の診療位置と、を対応付けた情報としてもよい。ここで、患者を識別する情報は、例えば成人と子供を区別する情報、性別情報、あるいは患者名でも構わない。また、画像処理装置1における治療前の操作モードで、術者が、患者を識別する情報を入力することとする。これにより、患者毎の診療位置25を一旦登録しておけば、複数の患者それぞれに対応するように、術者の診療位置に合わせた位置にマーク画像50を表示することができる。
【0046】
また、同様に、処理手段10の処理結果である診療位置25(図1参照)は、例えば、治療種類を識別する情報と、術者の診療位置と、を対応付けた情報としてもよい。ここで、治療種類を識別する情報は、例えば治療方法の種類、治療段階の種類、治療歯の位置、治療器具の種類、マイクロスコープ利用の有無等の情報でも構わない。また、画像処理装置1における治療前の操作モードで、術者が、治療種類を識別する情報を入力することとする。これにより、治療種類毎の診療位置25を一旦登録しておけば、複数の治療種類それぞれに対応するように、術者の診療位置に合わせた位置にマーク画像50を表示することができる。
【0047】
すなわち、診療位置設定手段12は、術者、患者、治療種類のうちの少なくとも1つに対応付けて診療位置を設定することが好ましい。
【0048】
前記実施形態では、図4を参照して、術者の診療位置が、第2の位置である9時のポジションの場合に表示される画面例で、矢印形状のマーク画像50を説明したが、本発明は、これに限らない。術者の診療位置が、第1の位置である12時のポジションの場合には、矢印形状のマーク画像50は、図7に示す向きで表示される。さらに、図7の画面表示例の変形例を図8に示す。12時のポジションの場合、ウィンドウ42に表示される画像(コロナル画像)の向きは、術者が正面視している患者の向きと同様である。そのため、術者の視線方向を、図7に示す白抜き矢印で表してもよいし、例えば、矢印以外のマークを用いてもよい(図8参照)。図8では、ウィンドウ42に、ネジを基端側から視たようなクロス記号51によって、術者の視線が正面視であることを示している。術者の視線がX線画像の向きとは正反対であることを示す場合、ネジを先端側から視たようなドット記号52によって示すこともできる。なお、クロス記号51とドット記号52は1画像に対して一度に表示されるものではない。さらにウィンドウ44に表示される3D画像に対しては、術者の視線が正面視である場合、術者の視線方向を、図7に示すような、上向きの白抜き矢印で表してもよいし、例えば、3D矢印53を用いてもよい(図8参照)。3D矢印53によれば、上向きの白抜き矢印よりも、直感的に術者が正面視していることが分かり易くなる。
【0049】
前記実施形態では、図4および図7に表示される画面例でX線画像を説明したが、表示されるX線画像は、1つの歯牙に限定されるものではない。例えば2〜3個の歯牙であってもよいし、上顎や下顎の歯列の全体であってもよい。図9(a)および図9(b)に示すX線画像用のウィンドウ47には、上顎の歯列のアキシャル画像が表示されている。図9(a)は、術者の診療位置が第2の位置である9時のポジションの場合に表示される画面例であり、矢印形状のマーク画像50は、術者の視線方向を、画像中において左向きとしている。図9(b)は、術者の診療位置が第1の位置である12時のポジションの場合に表示される画面例であり、矢印形状のマーク画像50は、術者の視線方向を、画像中において上向きとしている。また、マーク画像を重畳する画像であって、複数の歯牙を表示するX線画像は、アキシャル画像に限らず、例えばコロナル画像やサジタル画像であってもよい。さらに、マーク画像を重畳する画像であって、複数の歯牙や歯列の画像は、断面画像に限らず、3D画像やCG画像であってもよい。
【0050】
表示手段5は、例えば、液晶ディスプレイ等であるものとして説明したが、ヘッドマウントディスプレイであってもよい。図10に示すヘッドマウントディスプレイ71は、操作者である術者Dが眼鏡のように装着して使用する透過型(シースルー)のものである。ヘッドマウントディスプレイ71としては、例えば、所謂、光学シースルーグラスを採用してもよい。これにより、操作者は、光を透過するグラス越しに外界(患者)を目視しながらグラスに配置された小型画面に表示されたX線画像等を認識することができる。このように表示手段5をヘッドマウントディスプレイ71で実現することで、患者位置と据置き型のモニタ装置との間を往復する手間や時間を省くことができる。
【0051】
ヘッドマウントディスプレイが透過型である場合、前記光学シースルーグラスの他、所謂、ビデオ透過(ビデオシースルー)方式の装置を採用してもよい。ビデオシースルー方式の装置は、ユーザの眼の前に外界を撮影するカメラを備え、この装置を装着したユーザが観察するスクリーン(シースルースクリーン)にカメラを通じた外の様子を映し出す。カメラを通じてシースルースクリーンに映し出される外の様子は、ユーザがヘッドマウントディスプレイを装着しなかった場合に見る景色に一致する。この装置は、ユーザの眼前の現実環境の患者と、内視鏡の撮影位置が分かるX線画像等とを合成して一緒に表示することができる。なお、ヘッドマウントディスプレイの投影方式は、虚像投影の他、網膜投影であってもよい。
【0052】
また、ヘッドマウントディスプレイは、非透過型のものであってもよく、例えば、所謂、VR(Virtual Reality)ゴーグルを用いてもよい。VRゴーグルは、この装置を装着したユーザが、VR、または、AR(Augmented Reality)やMR(Mixed Reality)を体験可能なものである。VRゴーグルは、外界を撮影するためのカメラを予め備えているタイプの他、スマートフォン等のカメラ付きモバイルが装着されるタイプのものであってもよい。VRゴーグルのカメラは、装着したユーザが観察するディスプレイにカメラを通じた外の様子を映し出すことができる。これによれば、VRゴーグルのカメラから取得した情報と、術者の治療位置が分かるX線画像とを一緒に表示することもできる。
なお、ヘッドマウントディスプレイを装着するユーザは、歯科医師の他、歯科衛生士や歯科助手等であっても構わない。
【0053】
前記実施形態では、検出手段3として、一般的な人感センサやカメラを例示したが、その他、触覚センサ、圧力センサ、振動センサ、磁気センサ等を用いることも可能である。
【0054】
検出手段3は必須ではなく、この場合、診療位置設定手段12は、入力手段4から例えば第1位置や第2位置の入力を受け付けることで診療位置を設定することとしてもよい。つまり、手動で診療位置を設定することが可能である。この場合、図5のフローチャートでは、前記ステップS2に続いて、例えば治療歯のサジタル画像が表示されているときに、操作者が、入力手段4によって、術者の診療位置を指定する。これにより、画像処理装置1は、診療位置設定手段12によって、治療歯のサジタル画像における診療位置の入力を受け付ける(ステップS3)。このとき、操作者は、画像上で診療位置に対応する図示しないアイコンを例えばマウス等でクリックする操作を行うことで診療位置を設定してもよい。
【0055】
また、装着者の視線方向が自動的に検出可能なヘッドマウントディスプレイを表示手段5として採用した場合、ヘッドマウントディスプレイ(表示手段5)を検出手段3として兼務させて用いることができる。したがって、例えばセンサ等の検出手段3を診療室内に配置することなく手動で診療位置を入力する形態の変形として、上記の視線方向が検出可能なヘッドマウントディスプレイを用いることは、手動による入力の手間を省くことができるという観点から、術者にとって好ましい。
【符号の説明】
【0056】
1 画像処理装置
2 マイクロスコープ
3 検出手段
4 入力手段
5 表示手段
10 処理手段
11 マイクロスコープ画像入力手段
12 診療位置設定手段
13 表示制御手段
20 記憶手段
50 マーク画像
71 ヘッドマウントディスプレイ
図1
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図10