特許第6632908号(P6632908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィの特許一覧

特許6632908衛星地上間統合ネットワークにおいてリソースを再割り当てする方法及びデバイス並びにコンピュータープログラム
<>
  • 特許6632908-衛星地上間統合ネットワークにおいてリソースを再割り当てする方法及びデバイス並びにコンピュータープログラム 図000007
  • 特許6632908-衛星地上間統合ネットワークにおいてリソースを再割り当てする方法及びデバイス並びにコンピュータープログラム 図000008
  • 特許6632908-衛星地上間統合ネットワークにおいてリソースを再割り当てする方法及びデバイス並びにコンピュータープログラム 図000009
  • 特許6632908-衛星地上間統合ネットワークにおいてリソースを再割り当てする方法及びデバイス並びにコンピュータープログラム 図000010
  • 特許6632908-衛星地上間統合ネットワークにおいてリソースを再割り当てする方法及びデバイス並びにコンピュータープログラム 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6632908
(24)【登録日】2019年12月20日
(45)【発行日】2020年1月22日
(54)【発明の名称】衛星地上間統合ネットワークにおいてリソースを再割り当てする方法及びデバイス並びにコンピュータープログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/04 20090101AFI20200109BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20200109BHJP
   H04W 84/06 20090101ALI20200109BHJP
   H04M 3/00 20060101ALI20200109BHJP
   H04W 24/04 20090101ALI20200109BHJP
【FI】
   H04W72/04 130
   H04W16/28
   H04W84/06
   H04M3/00 D
   H04W24/04
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-28768(P2016-28768)
(22)【出願日】2016年2月18日
(65)【公開番号】特開2016-158244(P2016-158244A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2018年11月22日
(31)【優先権主張番号】15156456.4
(32)【優先日】2015年2月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503163527
【氏名又は名称】ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161115
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 義行
(72)【発明者】
【氏名】チョチーナ−ドゥチェスネ、クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】ブルネル、ロイク
【審査官】 野村 潔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−064219(JP,A)
【文献】 特開2006−148797(JP,A)
【文献】 特開2014−155228(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/034361(WO,A2)
【文献】 国際公開第2011/138563(WO,A1)
【文献】 特開2012−142672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星地上間統合ネットワークによってカバーされるエリア内で異常事態が発生している場合に前記衛星地上間統合ネットワーク内のリソースを再割り当てするデバイスにおいて実行される方法であって、前記衛星地上間統合ネットワークは、セルから構成される地上セルラーコンポーネントと、衛星コンポーネントと、前記地上セルラーコンポーネント及び前記衛星コンポーネントの両方と通信するネットワークコントローラとを備え、前記衛星コンポーネントに割り当てられる前記リソースは、地上面におけるマルチビーム送信のために前記衛星コンポーネントの衛星によって生成される1組のビームによって用いられる幾つかのリソースサブ部分に分割され、1つのリソースサブ部分を用いる各ビームにおいて、前記ビーム内の前記セルは、前記ビームによって用いられる前記リソースサブ部分とは異なるリソースを使用し、前記衛星地上間統合ネットワークの前記リソースは、前記衛星地上間統合ネットワークによってカバーされる前記エリア内で異常事態が発生しているときに再割り当てすることができるリソースを更に備えていることを特徴とし、前記デバイスが実行する前記方法は、
前記衛星地上間統合ネットワーク内の報告を監視するステップと、
前記報告の内容に従って異常事態が発生しているか否かをチェックするステップと、異常事態が発生している場合に、
前記異常事態が発生している地域を特定するステップと、
前記特定された地域内に位置する操縦可能ビームの中心を計算するステップと、
前記計算された中心の方向を指す操縦可能ビームを新たに加えるために、前記衛星コンポーネントにコマンドを転送するステップであって、新たに加える前記操縦可能ビームは、再割り当てすることができる最大で全てのリソースを使用する、ステップと、
前記異常事態が生じる前に、前記再割り当てすることができる最大で全てのリソースを使用していた前記衛星地上間統合ネットワークのコンポーネントに、少なくとも前記操縦可能ビームによってカバーされるエリア内で前記再割り当てすることができる最大で全てのリソースを使用するのを止めるコマンドを転送するステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記再割り当てすることができる最大で全てのリソースを使用していた前記衛星地上間統合ネットワークの前記コンポーネントは、前記地上セルラーコンポーネントであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記地上セルラーコンポーネントは、ユーザーデータ通信のためにのみ、前記再割り当てすることができる最大で全てのリソースを使用していたことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、前記操縦可能ビームのサイズを計算する更なるステップを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、前記コマンドの転送前に実行される、
再割り当てすることができる可変範囲のリソースに関して、操縦可能ビームを配置する場合に、衛星コンポーネント容量利得が、少なくとも前記操縦可能ビームによってカバーされる前記エリア内の地上セルラーコンポーネント容量損失を上回っているか否かをチェックする更なるステップを含むことを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記可変範囲のリソースに関して前記チェックすることは、前記特定された地域内に位置する前記操縦可能ビームの複数の取り得る中心に対して更に実行されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
各セルは、前記衛星コンポーネントに割り当てられた前記リソースとは異なり、かつ再割り当てすることができる前記リソースとは異なるリソースを更に使用することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも前記操縦可能ビームによってカバーされるエリア内で前記再割り当てすることができる最大で全てのリソースを使用するのを止める前記コマンドは、少なくとも前記操縦可能ビームによってカバーされる前記エリア内で、かつ制限エリア内で前記再割り当てすることができる最大で全てのリソースを使用するのを止めるコマンドであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記報告の内容に従って異常事態が発生しているか否かをチェックすることは、或る地理的地域内で前記地上セルラーコンポーネント上のトラフィック需要の増加が生じているか否かをチェックすることによって、及び/又は前記地理的地域内で前記衛星コンポーネント上のトラフィック需要の増加が生じているか否かをチェックすることによって、及び/又は或る地理的地域の複数のセルが報告を行うことができないか否かをチェックすることによって、及び/又は前記地理的地域の周囲のセルにおいて干渉レベルが増加しているか否かをチェックすることによって実行されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、前記地上セルラーコンポーネント及び前記衛星コンポーネントの両方と通信する前記ネットワークコントローラによって実行されることを特徴とする、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記操縦可能ビームの前記中心は、
【数1】
として計算されることを特徴とし、ただし、c、i=1...Nは、それぞれu個のアタッチされたモバイル端末MTを有する、前記特定された地域内に位置する前記セルの複素座標であり、Nは前記特定された地域内に位置する前記セルの数であり、関数f(u)=1又はf(u)=u、である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
衛星地上間統合ネットワークによってカバーされるエリア内で異常事態が発生している場合に前記衛星地上間統合ネットワーク内のリソースを再割り当てするデバイスであって、前記衛星地上間統合ネットワークは、セルから構成される地上セルラーコンポーネントと、衛星コンポーネントと、前記地上セルラーコンポーネント及び前記衛星コンポーネントの両方と通信するネットワークコントローラとを備え、前記衛星コンポーネントに割り当てられる前記リソースは、地上面におけるマルチビーム送信のために前記衛星コンポーネントの衛星によって生成される1組のビームによって用いられる幾つかのリソースサブ部分に分割され、1つのリソースサブ部分を用いる各ビームにおいて、前記ビーム内の前記セルは、前記ビームによって用いられる前記リソースサブ部分とは異なるリソースを使用し、前記衛星地上間統合ネットワークの前記リソースは、前記衛星地上間統合ネットワークによってカバーされる前記エリア内で異常事態が発生しているときに再割り当てすることができるリソースを更に備えていることを特徴とし、前記デバイスは、
前記衛星地上間統合ネットワーク内の報告を監視する手段と、
前記報告の内容に従って異常事態が発生しているか否かをチェックする手段と、
前記異常事態が発生している場合に、前記異常事態が発生している地域を特定する手段と、
前記異常事態が発生している場合に、前記特定された地域内に位置する操縦可能ビームの中心を計算する手段と、
前記異常事態が発生している場合に、前記計算された中心の方向を指す操縦可能ビームを新たに加えるために、前記衛星コンポーネントにコマンドを転送する手段であって、新たに加える前記操縦可能ビームは、再割り当てすることができる最大で全てのリソースを使用する、手段と、
前記異常事態が生じる前に、再割り当てすることができる最大で全てのリソースを使用していた前記衛星地上間統合ネットワークのコンポーネントに、少なくとも前記操縦可能ビームによってカバーされるエリア内で前記再割り当てすることができる最大で全てのリソースを使用するのを止めるコマンドを転送する手段と、
を備えることを特徴とする、デバイス。
【請求項13】
プログラマブルデバイス内に直接ロード可能とすることができるコンピュータープログラムであって、前記コンピュータープログラムがプログラマブルデバイス上で実行されるとき、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法の前記ステップを実施するための命令又はコード部分を含む、コンピュータープログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包括的には衛星地上間統合ネットワーク(integrated satellite−terrestrial network)によってカバーされるエリア内で異常事態が発生している場合に衛星地上間統合ネットワーク内のリソースを再割り当てする方法及びデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
衛星地上間統合ネットワークは、衛星コンポーネント及び地上コンポーネントを備えており、2つのコンポーネントが同じリソース及びネットワーク管理システムによって制御されるネットワークである。衛星地上間統合ネットワークの地上コンポーネントは通常、相補地上コンポーネント(Complementary Ground Component)と呼ばれる。
【0003】
衛星地上間統合ネットワークの一例が図4において開示される。
【0004】
図4は衛星地上間統合ネットワークの一例を表す。
【0005】
ネットワーク管理ユニット又はコアネットワークCNは、地上コンポーネント及び衛星コンポーネントの両方を制御する。
【0006】
第1のコンポーネントは少なくとも1つのゲートウェイGwから構成される衛星ネットワークであり、ゲートウェイは少なくとも1つの衛星Satと通信し、その衛星によって、モバイル端末MTは、図4には示されない遠隔電気通信デバイスとの通信を確立できるようになる。
【0007】
第2のコンポーネントは複数の基地局から構成される地上セルラー電気通信ネットワークであり、基地局によって、モバイル端末MTは、図4には示されない遠隔電気通信デバイスとの通信を確立できるようになる。
【0008】
2つのコンポーネントは同じリソースを使用することができる。リソースは、複数の周波数帯域部分、及び/又は場合によっては異なる偏波にある。
【0009】
統合システムのために割り当てられた所与の1組のリソースに関して、リソースは、例えば、周波数分割又は周波数共有によって2つのコンポーネント間で異なる方法で共有することができる。
【0010】
周波数分割では、地上コンポーネント及び衛星コンポーネントが異なる周波数帯域を使用する。2つのコンポーネント間に帯域内干渉はないが、漏れがあることに起因して、何らかの帯域外干渉がある。
【0011】
衛星コンポーネントに割り当てられるリソースは更に、周波数及び/又は偏波によって、一般にカラーと呼ばれる幾つかのサブ部分(sub−portions)に分割されると考えることができ、サブ部分は、地上面においてマルチビーム配置を可能にするために、衛星Satによって生成される1組のビームによって或る特定の再利用率で使用することができる。衛星コンポーネントによって使用されるカラーの数をNcolorsによって表すものとする。
【0012】
全システム容量は、2つのコンポーネントが同じリソースを再利用できないことによって制限される。
【0013】
周波数共有によるリソース計画の一例が図5において与えられる。
【0014】
図5は、衛星地上間統合ネットワークの衛星コンポーネントと地上コンポーネントとの間の周波数共有によるリソース計画の一例を開示する。
【0015】
横軸は、衛星地上間統合ネットワークに割り当てられるリソースを示す。
【0016】
縦軸は、異なるビームにおけるリソース使用の一例を示しており、衛星コンポーネントはNcolors=4の異なるカラーを使用する。
【0017】
第1のカラーを用いるビームの場合、衛星コンポーネントは、Bsat1で表されるリソースを使用し、それらのビーム内に配置される地上セルラーコンポーネントはTer1で表されるリソースを使用する。
【0018】
第2のカラーを用いるビームの場合、衛星コンポーネントは、Bsat2で表されるリソースを使用し、それらのビーム内に配置される地上セルラーコンポーネントはTer2で表されるリソースを使用する。
【0019】
第3のカラーを用いるビームの場合、衛星コンポーネントは、Bsat3で表されるリソースを使用し、それらのビーム内に配置される地上セルラーコンポーネントはTer3で表されるリソースを使用する。
【0020】
第4のカラーを用いるビームの場合、衛星コンポーネントは、Bsat4で表されるリソースを使用し、それらのビーム内に配置される地上セルラーコンポーネントはTer4で表されるリソースを使用する。
【0021】
このようにして、周波数共有では、2つのコンポーネントは同じリソースセットを使用することができる。
【0022】
各衛星ビームにおいて、地上セルラーコンポーネントは、そのビーム内で衛星コンポーネントによって使用されていない周波数及び/又は場合によっては偏波のような、全てのリソースを使用する。
【0023】
コンポーネント間干渉は、周波数分割構成の場合より高い。そのシステムは、漏れに起因する帯域外干渉を受けるだけでなく、ビームエッジにある、ユーザーとも呼ばれるモバイル端末の場合に特に、例えば、或るビーム内で衛星リソースを用いるモバイル端末と、同じリソースを用いるが、隣接するビーム内に位置する地上セルラーコンポーネントを用いるモバイル端末との間の干渉のような帯域内干渉も受ける。
【0024】
周波数共有は、より良好なスペクトル利用に起因して、より高い利用可能システム帯域幅/スペクトル効率を提供するが、何らかの地上/衛星干渉軽減/除去を必要とする場合がある。
【0025】
衛星コンポーネント及び地上セルラーコンポーネントのためのリソース上にアップリンク信号及びダウンリンク信号がいかにマッピングされるかによって、異なる干渉パターンが存在する。
【0026】
モバイル端末は、初期設定により、衛星地上間統合ネットワークの地上セルラーコンポーネントによってサービングされる。地上セルラーコンポーネントは、従来型の地上ワイヤレス通信ネットワーク、例えば、LTE(Long Term Evolution)又はLTEアドバンストネットワーク等で実現することができる。
【0027】
モバイル端末MTはデュアルモード能力を有し、地上セルラーコンポーネントに届かない(例えば、モバイル端末が地上カバレッジ外にあるか、地上セルラーコンポーネントが、例えば、災害状況に起因して故障しているか、又は地上セルラーコンポーネントが過負荷状態である)ときに、衛星コンポーネントによってサービングすることができる。
【0028】
衛星は操縦可能ビームを提供することもできる。
【0029】
図5では、簡単にするために、Ncolors=4の異なるカラーを用いる4つのビームのみが示されるが、マルチビーム衛星は通常、所定のカラー数Ncolorsを再利用する数十/数百のビームを有する。
【0030】
地上セルラーコンポーネントが周波数再利用1ネットワーク、すなわち、全てのセルが同じリソースを使用することができるセルラー電気通信ネットワークである場合には、地上セルラーコンポーネントは、各セルにおいて、そのセルが地理的に位置する衛星ビームによって使用されていないリソースを使用する。
【0031】
通常動作モードでは、トラフィック負荷は、それぞれ所定のトラフィックプロファイルに対処するように構成される地上セルラーコンポーネントと衛星コンポーネントとの間で分配される。
【0032】
災害が発生する場合には、災害地域内の地上セルラーコンポーネントは、同時に接続されるモバイル端末又は提供される全スループットの観点から過負荷状態になる場合があるか、又は使用できなくなる場合がある。そのような状況は、異常事態と見なされる。
【0033】
災害地域では、モバイル端末から、大量の衛星アクセス需要が生じる場合がある。例えば、かなりの数のモバイル端末が同時に通信したい場合があり、高い通信要求を有する救急サービスの到着が生じる場合等もある。そのような状況は、異常事態と見なされる。
【0034】
この大量の需要の結果として、衛星コンポーネント容量が使用不能になるおそれがある。災害地域の場所によるが(例えば、災害地域がビーム境界に近い場合)、干渉レベルの増加も、災害地域内の衛星ユーザーと同じリソースを使用する隣接するビーム内の地上セルの機能に影響を及ぼすおそれがある。そのような状況は、異常事態と見なされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0035】
本発明は、異常事態が発生している地域内で容量が使用不能なるのを回避するために、特定のリソース計画を可能にする方法及びデバイスと、異常事態が発生している場合に衛星地上間統合ネットワークが従うべきプロトコルとを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0036】
この目的のために、本発明は、衛星地上間統合ネットワークによってカバーされるエリア内で異常事態が発生している場合に衛星地上間統合ネットワーク内のリソースを再割り当てする方法であって、衛星地上間統合ネットワークは、セルから構成される地上セルラーコンポーネントと、衛星コンポーネントと、地上コンポーネント及び衛星コンポーネントの両方と通信するネットワークコントローラとを備え、衛星コンポーネントに割り当てられるリソースは、地上面におけるマルチビーム送信のために衛星コンポーネントの衛星によって生成される1組のビームによって用いられる幾つかのリソースサブ部分に分割され、1つのリソースサブ部分を用いる各ビームにおいて、ビーム内のセルは、ビームによって用いられるリソースサブ部分とは異なるリソースを使用し、衛星地上間統合ネットワークのリソースは、衛星地上間統合ネットワークによってカバーされるエリア内で異常事態が発生しているときに再割り当てすることができるリソースを更に備えていることを特徴とし、この方法は、
衛星地上間統合ネットワーク内の報告を監視するステップと、
報告の内容に従って異常事態が発生しているか否かをチェックするステップと、異常事態が発生している場合には、
異常事態が発生している地域を特定するステップと、
特定された地域内に位置する操縦可能ビームの中心を計算するステップと、
計算された中心の方向を指す操縦可能ビームを加えるために、衛星コンポーネントにコマンドを転送するステップであって、操縦可能ビームは、再割り当てすることができる最大で全てのリソースを使用する、ステップと、
異常事態が生じる前に、再割り当てすることができる最大で全てのリソースを使用していた衛星地上間統合ネットワークのコンポーネントに、少なくとも操縦可能ビームによってカバーされるエリア内で再割り当てすることができる最大で全てのリソースを使用するのを止めるコマンドを転送するステップと、
を含むことを特徴とする、方法に関する。
【0037】
また、本発明は、衛星地上間統合ネットワークによってカバーされるエリア内で異常事態が発生している場合に衛星地上間統合ネットワーク内のリソースを再割り当てするデバイスであって、衛星地上間統合ネットワークは、セルから構成される地上セルラーコンポーネントと、衛星コンポーネントと、地上コンポーネント及び衛星コンポーネントの両方と通信するネットワークコントローラとを備え、衛星コンポーネントに割り当てられるリソースは、地上面におけるマルチビーム送信のために衛星コンポーネントの衛星によって生成される1組のビームによって用いられる幾つかのリソースサブ部分に分割され、1つのリソースサブ部分を用いる各ビームにおいて、ビーム内のセルは、ビームによって用いられるリソースサブ部分とは異なるリソースを使用し、衛星地上間統合ネットワークのリソースは、衛星地上間統合ネットワークによってカバーされるエリア内で異常事態が発生しているときに再割り当てすることができるリソースを更に備えていることを特徴とし、デバイスは、
衛星地上間統合ネットワーク内の報告を監視する手段と、
報告の内容に従って異常事態が発生しているか否かをチェックする手段と、
異常事態が発生している場合に、異常事態が発生している地域を特定する手段と、
異常事態が発生している場合に、特定された地域内に位置する操縦可能ビームの中心を計算する手段と、
異常事態が発生している場合に、計算された中心の方向を指す操縦可能ビームを加えるために、衛星コンポーネントにコマンドを転送する手段であって、操縦可能ビームは、再割り当てすることができる最大で全てのリソースを使用する、手段と、
異常事態が生じる前に、再割り当てすることができる最大で全てのリソースを使用していた衛星地上間統合ネットワークのコンポーネントに、少なくとも操縦可能ビームによってカバーされるエリア内で再割り当てすることができる最大で全てのリソースを使用するのを止めるコマンドを転送する手段と、
を備えることを特徴とする、デバイスに関する。
【0038】
このようにして、衛星地上間統合ネットワークは、異常事態が発生している場合に機能し続けることができる。
【0039】
特定の特徴によれば、再割り当てすることができる最大で全てのリソースを使用していた衛星地上間統合ネットワークのコンポーネントは、地上セルラーコンポーネントである。
【0040】
このようにして、通常機能モードにおいて、地上セルラーコンポーネントの容量が最適化される。
【0041】
特定の特徴によれば、地上セルラーコンポーネントは、ユーザーデータ通信のためにのみ、再割り当てすることができる最大で全てのリソースを使用していた。
【0042】
このようにして、リソース再割り当ての場合に、システム情報又は制御情報は失われない。
【0043】
特定の特徴によれば、方法は、操縦可能ビームのサイズを計算する更なるステップを含む。
【0044】
このようにして、操縦可能ビームのサイズが、異常事態によって影響を及ぼされる地域の大きさに合わせられる。
【0045】
特定の特徴によれば、方法は、コマンドの転送前に実行される、
再割り当てすることができる可変範囲のリソースに関して、操縦可能ビームを配置する場合に、衛星コンポーネント容量利得が、少なくとも操縦可能ビームによってカバーされるエリア内の地上セルラーコンポーネント容量損失を上回っているか否かをチェックする更なるステップを含む。
【0046】
このようにして、操縦可能ビームは、著しい性能改善をもたらすときにのみ配置される。
【0047】
特定の特徴によれば、可変範囲のリソースに関してチェックすることは、特定された地域内に位置する操縦可能ビームの複数の取り得る中心に対して更に実行される。
【0048】
このようにして、操縦可能ビームは、異常事態によって最も影響を及ぼされる地域をサービングすることができる。
【0049】
特定の特徴によれば、各セルは、衛星コンポーネントに割り当てられたリソースとは異なり、かつ再割り当てすることができるリソースとは異なるリソースを更に使用する。
【0050】
このようにして、地上セルラーコンポーネントへの衛星コンポーネントの干渉が制限される。
【0051】
特定の特徴によれば、少なくとも操縦可能ビームによってカバーされるエリア内で再割り当てすることができる最大で全てのリソースを使用するのを止めるコマンドは、少なくとも操縦可能ビームによってカバーされるエリア内で、かつ制限エリア内で再割り当てすることができる最大で全てのリソースを使用するのを止めるコマンドである。
【0052】
このようにして、操縦可能ビームと、操縦可能ビームの外側にある隣接する地上セルラーコンポーネントとの間の干渉が制限される。
【0053】
特定の特徴によれば、報告の内容に従って異常事態が発生しているか否かをチェックすることは、或る地理的地域内で地上セルラーコンポーネント上のトラフィック需要の増加が生じているか否かをチェックすることによって、及び/又は地理的地域内で衛星コンポーネント上のトラフィック需要の増加が生じているか否かをチェックすることによって、及び/又は或る地理的地域の複数のセルが報告を行うことができないか否かをチェックすることによって、及び/又は地理的地域の周囲のセルにおいて干渉レベルが増加しているか否かをチェックすることによって実行される。
【0054】
このようにして、ネットワーク飽和につながる異常事態を特定することができる。
【0055】
特定の特徴によれば、方法は、地上コンポーネント及び衛星コンポーネントの両方と通信するネットワークコントローラによって実行される。
【0056】
このようにして、衛星コンポーネント及び地上セルラーコンポーネントは、衛星地上間統合ネットワークの性能を最適化するように協働する。
【0057】
特定の特徴によれば、操縦可能ビームの中心は、
【数1】
として計算され、ただし、c、i=1...Nは、それぞれu個のアタッチされたモバイル端末MTを有する、特定された地域内に位置するセルの複素座標であり、Nは特定された地域内に位置するセルの数であり、関数f(u)=1又はf(u)=u、である。
【0058】
このようにして、操縦可能ビームによってサービングされるモバイル端末の数が最大化される。更に別の態様によれば、本発明は、プログラマブルデバイス内に直接ロード可能とすることができるコンピュータープログラムであって、このコンピュータープログラムがプログラマブルデバイス上で実行されるとき、本発明による方法のステップを実施するための命令又はコード部分を含む、コンピュータープログラムに関する。
【0059】
システム及びコンピュータープログラムに関連する特徴及び利点は、本発明による方法及び装置に関して既に言及されたのと同じであるので、ここでは繰り返されない。
【0060】
本発明の特性は、実施形態の一例の以下の説明を読むことから更に明らかになり、その説明は添付の図面を参照しながら行われる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】本発明が実施される衛星地上間統合ネットワークの地上コンポーネント及び衛星コンポーネントの両方と通信することができるネットワークコントローラのアーキテクチャを表す図である。
図2】本発明による、衛星地上間統合ネットワークの衛星コンポーネントと地上コンポーネントとの間のリソース共有の一例を表す図である。
図3】本発明による、衛星地上間統合ネットワークによってカバーされるエリア内で異常事態が発生しているときにリソースを再割り当てするために実行されるアルゴリズムを表す図である。
図4】衛星地上間統合ネットワークの一例を表す図である。
図5】衛星地上間統合ネットワークの衛星コンポーネントと地上コンポーネントとの間の周波数共有によるリソース計画の一例を開示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
図1は、本発明が実施される衛星地上間統合ネットワークの地上コンポーネント及び衛星コンポーネントの両方と通信することができるネットワークコントローラのアーキテクチャを表す図である。
【0063】
ネットワークコントローラNCは、例えば、バス301と、図3において開示されるようなプログラムによって制御されるプロセッサ300とによって互いに接続されるコンポーネントに基づくアーキテクチャを有する。
【0064】
ここで、ネットワークコントローラNCは専用集積回路に基づくアーキテクチャを有することができることに留意されたい。
【0065】
バス301はプロセッサ300をリードオンリーメモリROM302、ランダムアクセスメモリRAM303及びネットワークインターフェース205にリンクする。
【0066】
メモリ303は、図3において開示されるようなアルゴリズムに関連するプログラムの変数及び命令を受信するように意図されたレジスタを含む。
【0067】
プロセッサ300は、無線インターフェース305の動作を制御する。
【0068】
リードオンリーメモリ302は、図3において開示されるようなアルゴリズムに関連するプログラムの命令を含み、それらの命令は、ネットワークコントローラNCが起動されるときに、ランダムアクセスメモリ303に転送される。
【0069】
図3に関して以下に説明されるアルゴリズムのありとあらゆるステップは、PC(Personal Computer)、DSP(Digital Signal Processor)若しくはマイクロコントローラーのようなプログラム可能なコンピューティングマシンによって1組の命令若しくはプログラムを実行することによってソフトウェアにおいて実施することができるか、又はソフトウェアでなければ、FPGA(Field−Programmable Gate Array)若しくはASIC(Application−Specific Integrated Circuit)のようなマシン又は専用コンポーネントによってハードウェアにおいて実施することができる。
【0070】
換言すれば、ネットワークコントローラNCは、図3に関して以下で説明するアルゴリズムのステップをネットワークコントローラNCに実行させる回路部、又は回路部を備えるデバイスを備える。
【0071】
本発明によれば、ネットワークコントローラは、衛星地上間統合ネットワークによってカバーされるエリア内で異常事態が発生している場合に衛星地上間統合ネットワーク内のリソースを再割り当てし、衛星コンポーネントに割り当てられるリソースは、地上面においてマルチビーム送信するために衛星によって生成される1組のビームによって用いられる幾つかのリソースサブ部分に分割される。各ビームは、1つのリソースサブ部分を使用し、そのビーム内のセルはそのビームによって使用されるリソースサブ部分とは異なるリソースを使用する。衛星地上間統合ネットワークのリソースは、衛星地上間統合ネットワークによってカバーされるエリア内で異常事態が発生しているときに再割り当てすることができるリソースを更に含む。ネットワークコントローラは、
衛星地上間統合ネットワーク内の報告を監視し、
報告の内容に従って異常事態が発生しているか否かをチェックし、異常事態が発生している場合には、
異常事態が発生している地域を特定し、
特定された地域内に位置する操縦可能ビームの中心を計算し、
計算された中心の方向を指す操縦可能ビームを加えるために、衛星コンポーネントにコマンドを転送し、操縦可能ビームは、再割り当てすることができる最大で全てのリソースを使用し、
異常事態が生じる前に、再割り当てすることができる最大で全てのリソースを使用していた衛星地上間統合ネットワークのコンポーネントに、少なくとも操縦可能ビームによってカバーされるエリア内で再割り当てすることができる最大で全てのリソースを使用するのを止めるコマンドを転送する。
【0072】
図2は、本発明による、衛星地上間統合ネットワークの衛星コンポーネントと地上コンポーネントとの間のリソース共有の一例を表す。
【0073】
横軸は、衛星地上間統合ネットワークに割り当てられるリソースを示す。
【0074】
ここで、図2において隣接しているように表されるリソースは、周波数領域において必ずしも隣接していないことに留意されたい。
【0075】
縦軸は、異なるビーム内のリソース使用の一例を示す。この特定の例では、衛星コンポーネントは4つの異なるカラーを使用する。明らかに、衛星ビームパターンによって、異なるカラー数Ncolorsを使用することができる。
【0076】
第1のカラーを用いるビームの場合、衛星Satは、Bsat1で表されるリソースを使用する。それらのビーム内に配置される地上セルラーコンポーネントは、Ter1で表されるリソースを使用する。ReBsat1で表されるリソースは、異常事態が発生しているときに、本発明に従って再割り当てすることができるリソースである。異常事態が発生していないとき、リソースReBsat1は、例えば、第1のカラーを用いるビーム内に配置される地上セルラーコンポーネントによって使用することができる。
【0077】
第2のカラーを用いるビームの場合、衛星Satは、Bsat2で表されるリソースを使用する。それらのビーム内に配置される地上セルラーコンポーネントは、Ter2で表されるリソースを使用する。ReBsat2で表されるリソースは、異常事態が発生しているときに、本発明に従って再割り当てすることができるリソースである。異常事態が発生していないとき、リソースReBsat2は、例えば、第2のカラーを用いるビーム内に配置される地上セルラーコンポーネントによって使用することができる。
【0078】
第3のカラーを用いるビームの場合、衛星Satは、Bsat3で表されるリソースを使用する。それらのビーム内に配置される地上セルラーコンポーネントは、Ter3で表されるリソースを使用する。ReBsat3で表されるリソースは、異常事態が発生しているときに、本発明に従って再割り当てすることができるリソースである。異常事態が発生していないとき、リソースReBsat3は、例えば、第3のカラーを用いるビーム内に配置される地上セルラーコンポーネントによって使用することができる。
【0079】
第4のカラーを用いるビームの場合、衛星Satは、Bsat4で表されるリソースを使用する。それらのビーム内に配置される地上セルラーコンポーネントは、Ter4で表されるリソースを使用する。ReBsat4で表されるリソースは、異常事態が発生しているときに、本発明に従って再割り当てすることができるリソースである。異常事態が発生していないとき、リソースReBsat4は、例えば、第4のカラーを用いるビーム内に配置される地上セルラーコンポーネントによって使用することができる。
【0080】
ReBsat1、ReBsat2、ReBsat3、ReBsat4で表されるリソースは、異常事態が発生しているときに、本発明に従って再割り当てすることができるリソースReBsatである。
【0081】
本発明によれば、ネットワークコントローラNCが、例えば、特定の地域における災害又は突然の著しいトラフィック増加のような異常事態を検出するとき、ネットワークコントローラNCは、異常事態が発生している地域を特定し、その場所を突き止めて、異常事態の重大性及び局在性に従ってリソース割り当てを適応させる。
【0082】
ネットワークコントローラNCは、新たな状況に対処し、異常事態が発生している地域においてモバイル端末をサービングし続けるために再割り当てすることができるリソースの一部又は全てを動的に再割り当てし、それにより、容量が使用不能になるのを回避する。
【0083】
動的リソース再割り当ては、再割り当てすることができるリソースReBsatの事前の具体的計画と、地上セルラー電気通信コンポーネントと衛星コンポーネントとの間のリソース共有とによって可能となる。
【0084】
本発明によれば、グローバルネットワークレベルにおいて大規模に変更することなく、異常事態が発生している地域において局所的な措置を実施できるようになる。
【0085】
本発明は、図2において説明されるような新たなリソース計画及び共有を使用する。
【0086】
衛星地上間統合ネットワークの全リソース量がBtotで表される。これは、周波数リソース及び/又は場合によっては偏波リソースを含む。本発明は、以下に説明されるように、再割り当てすることができるリソースを、異常事態が発生している地域の存在及び/又は重要性に応じて異なる利用率を有する量Bのリソースとして規定することを提案する。B>0である。
【0087】
衛星ビームは、そのリソース再利用パターンのためのNcolors個の異なるカラーを使用することができる。通常動作モードにおいて、その一定のフットプリントカバレッジを得るために衛星コンポーネントによって用いられる全リソース量は、
【数2】
である。ただし、
【数3】
は、第iのカラーを有するビームによって用いられるリソースの量である。通常、ビームは同じ帯域幅を有し、それゆえ、Bsat=Ncolorsbeamである。明らかに、Bsat≦Btot−Bである。
【0088】
本発明は、衛星コンポーネントとリソース共有することなく、地上セルラーコンポーネントによってのみ用いられるリソースBTOのみを地上セルラーコンポーネント専用として更に規定する。BTO=Btot−B−Bsat≧0である。
【0089】
TO>0であるとき、リソースBTOは、地上セルの場所にかかわらず、そしてビーム境界に位置するセルの場合であっても、衛星コンポーネントからの干渉を受けない。干渉は隣接する地上セルからのみ生じ、例えば、セル間干渉協調又は協調多地点法を利用することによって地上セルラーコンポーネント内で管理される。したがって、BTO>0が存在する結果として、ビーム境界に位置する地上セルにおいて地上セルラーコンポーネントが受けるコンポーネント間干渉は低減される。
【0090】
TO>0は、衛星コンポーネントのリソースBsatの実効範囲、それゆえ、衛星コンポーネントの容量を縮小し、衛星コンポーネントにとって他のいかなる利点もないことに留意されたい。例えば、BTOの存在又は規模は、干渉プロファイル、最大負荷における予想衛星トラフィック、及び地上セルラーコンポーネント性能と衛星コンポーネント容量との間のトレードオフに基づいて、衛星地上間統合ネットワーク設計の初期段階において決定される。
【0091】
全量Bからなる再割り当てすることができるリソースReBsatは、通常動作モード中に特定の用途を有し、異常事態の場合に或る特定の地理的地域において全体的に又は部分的に再割り当てされる。
【0092】
例えば、通常動作モードにおいて、再割り当てすることができるリソースReBsatは、地上コンポーネントによって自由に使用される。これらのリソースは災害発生時に動的に再割り当てされる可能性が高いので、地上セルラーコンポーネントは、アップリンク及びダウンリンクの両方において任意のシステム情報又は制御情報を転送するためにBを使用するのを控えなければならず、例えば、そのリソースを、ユーザーデータを通信するためにのみ使用する。
【0093】
例えば、地上セルラーコンポーネントがLTEアドバンストを使用する場合には、キャリアアグリゲーションを使用することができ、キャリアのうちの1つがBに及ぶことができるが、そのキャリアはレイヤ1制御シグナリング(PDCCH)を決して搬送しない。
【0094】
1つの変形形態では、通常動作モードにおいて、再割り当てすることができるリソースReBsatは、高いトラフィック需要を有するホットスポットゾーンに向けられる操縦可能衛星ビームに割り当てられる。
【0095】
例えば、異常事態を検出する場合、ネットワークコントローラNCは、異常事態の存在を特定し、その場所を突き止め、範囲を確認した後に、地上セルラーコンポーネントが故障しているか、又は過負荷状態である異常事態が発生している地域をサービングするために、再割り当てすることができるリソースReBsatのうちの一部又は全てを割り当てることに決める。同じことは、災害、大きなスポーツイベント等の場合にも当てはまる。
【0096】
例えば、再割り当てすることができるリソースReBsatのうちの量Br_effective≦Bを使用する操縦可能衛星ビームが、異常事態が発生している地域にわたって配置される。通常の衛星サービスとの帯域外干渉を制限するために、Bは、衛星コンポーネントによって使用される他のリソースからスペクトルに関して「離れている」ように選択される場合がある。ここで、再割り当てすることができるリソースReBsatは、緊急事態が検出されないときに、衛星地上間統合ネットワークによって他の方法において使用されてもよいことに留意されたい。
【0097】
異常事態が発生している地域にわたって配置される操縦可能ビームが起動された場合、ネットワークコントローラNCは、少なくとも操縦可能ビームのカバレッジと、それに加えて、場合によってはこのカバレッジの周囲の除外エリアとを含む、地上制限エリアを画定し、そのエリア内では、引き続き動作している地上セルは、リソースBr_effectiveを使用するのを禁止される。地上制限エリア外では、リソースBr_effectiveは、地上セルラーコンポーネントによって自由に使用し続けることができる。
【0098】
再割り当てすることができるリソースReBsatの量Bは、典型的な災害状況によって引き起こされるトラフィックを、容量使用不能を生じることなく、衛星地上間統合ネットワークによって扱うことができるのを確実にするほど十分に多くなければならない。
【0099】
一方、かなりの量のリソースBを使用することは、衛星サービスの実効リソース範囲Bsatを、それゆえ、衛星コンポーネント容量を縮小し、通常動作モードにおける衛星コンポーネントにとって他のいかなる利点もない。衛星地上間統合ネットワーク設計の初期段階において、リソース量Bは、衛星地上間統合ネットワークが対処するように設計された緊急事態における推定トラフィック負荷と、緊急時に動的に再割り当てすることができる追加容量の量と、通常動作モードにおける衛星コンポーネント容量との間のトレードオフとに基づいて決定される。
【0100】
図3は、本発明による、衛星地上間統合ネットワークによってカバーされるエリア内で異常事態が発生しているときにリソースを再割り当てするために実行されるアルゴリズムを表す。
【0101】
より厳密には、本アルゴリズムは、ネットワークコントローラNCのプロセッサ300によって実行される。
【0102】
ステップS500において、プロセッサ300は衛星地上間統合ネットワークを監視する。
【0103】
プロセッサ300は、各セル/ビームの地理的場所の知識を有し、隣接する地理的エリア内で発生している衛星地上間統合ネットワーク挙動の突然の変化を特定することができる。
【0104】
通常動作モードにおいて、プロセッサ300は、地上コンポーネント及び衛星コンポーネントの両方から定期的な情報を受信する。この情報は、地上セルラーコンポーネントの各セル内、及び衛星コンポーネントの各ビーム内の接続されているモバイル端末の数と、待ち受けモバイル端末の概数とに関する報告を含むべきである。
【0105】
待ち受けモバイル端末は、電源を入れられたが、接続されていないモバイル端末MTである。地上コンポーネントは通常、一群のセルによって形成されたトラッキングエリア内の待ち受けモバイル端末の生の位置特定情報の知識を有する。統計的には、災害状況において電源を入れられ、アクセスを要求する可能性がある、電源を切られているモバイル端末の数が監視される。接続されているモバイル端末は、基地局とデータ及び/又は音声で通信しているモバイル端末である。
【0106】
次のステップS501において、プロセッサ300が、報告の内容に従って、異常事態が発生しているか否かをチェックする。
【0107】
地上セルラーコンポーネントに重大な障害を引き起こすことなく、災害が地上面に影響を及ぼしている場合には、例えば、通信を確立しようとする待ち受けモバイル端末によって、地上セルラーコンポーネントへのトラフィック需要増加が生じ、地上セルラーコンポーネントが飽和状態になる場合がある。
【0108】
地上セルラーコンポーネントに接続できないモバイル端末の中には、衛星コンポーネントに接続しようとするモバイル端末もあり、衛星コンポーネントもトラフィック需要増加を受ける場合がある。
【0109】
災害がある地理的地域に影響を及ぼしている場合には、その地理的地域内のセルにおいて地上セルラーネットワーク飽和が生じるか、又はセルによっては、報告を行うことができない場合もある。
【0110】
災害が衛星ビーム境界付近において生じている場合には、衛星ビーム境界に局在する衛星コンポーネントに対するアップリンクトラフィック増加によって、異常事態が発生している地域に地理的に近く、隣接するビーム内に位置する地上セルにおいて干渉レベルが増加する。干渉レベルが大きくなると、これらのセル内のモバイル端末の中には、衛星コンポーネントによる通信に切り替えようとするモバイル端末も現れる場合がある。
【0111】
大きな地震、大規模な洪水等のような大災害が生じている場合には、地上セルラーコンポーネントは故障している可能性が高い場合がある。故障している地上セルに接続されていた地上面のモバイル端末MTは、甚大な無線リンク障害に陥り、衛星コンポーネントにアクセスしようとする。待ち受けモバイル端末/電源を切っていたモバイル端末も通信を確立しようとする場合がある。
【0112】
その後、数分/数時間にわたって大きな災害が生じている場合には、救急センター、警察、医療介入グループ、マスコミ等のような特殊部門から到来するトラフィック需要が増加することになる。
【0113】
このようにして、プロセッサ300は、地理的に近い幾つかの地上セルが過負荷状態であり、及び/又は同じ地域内の幾つかのセルが故障していることを示し、それゆえ、異常事態を特定できることを示す報告をネットワークコントローラNCが受信するときに、異常事態を特定することができる。
【0114】
このようにして、プロセッサ300は、異常事態が発生している少なくとも1つのビームにおいて衛星トラフィック需要の増加が生じているときに、異常事態を特定することができる。
【0115】
このようにして、プロセッサ300は、異常事態が発生している地域を含むビームに隣接する少なくとも1つのビームにおいて衛星トラフィック需要の増加が生じているときに、異常事態を特定することができる。
【0116】
このようにして、プロセッサ300は、地理的に近い幾つかの地上セルが故障しており、及び/又は同じ地域内の幾つかのセルが過負荷状態であることを示し、それゆえ、異常事態が発生している地域を特定できることを示す報告を受信するときに、異常事態を特定することができる。
【0117】
衛星コンポーネントの現在の構成が需要に対処できる場合には、プロセッサ300はステップS500に戻る。
【0118】
一方、衛星コンポーネント上のトラフィックも飽和に近づいている場合には、プロセッサ300はステップS502に進む。
【0119】
ステップS502において、プロセッサ300は、異常事態が発生している地域と、場合によってはその周囲の除外エリアとを特定する。
【0120】
異常事態が発生している地域は、衛星コンポーネントに対するトラフィック需要の増加が生じている地域を含む。
【0121】
異常事態が発生している地域は、地上セルラーコンポーネント飽和が発生している地域を含む。
【0122】
異常事態が発生している地域は、地上セルが報告を行うことができない地域、又は地上セルが甚大な無線リンク障害を示す報告を行う地域を含む。
【0123】
異常事態が発生している地域は、干渉レベルが顕著になる地域を含む。
【0124】
次のステップS503において、プロセッサ300は、操縦可能ビームの中心を計算する。
【0125】
その目的は、操縦可能ビームを配置することから恩恵を受ける最大数の潜在的なモバイル端末MTを、その操縦可能ビーム中心のできる限り近くに集中させることである。操縦可能ビーム中心は、例えば、異常事態が発生している地域の重み付けされた中心として計算することができ、その重み付けは、異常事態が発生している地域内の各セルにアタッチされた、接続中のモバイル端末MTの数、待ち受けモバイル端末MTの数又は電源を切っているモバイル端末MTの数の関数である。
【0126】
例えば、ネットワークコントローラNCは、メモリに、各セルの中心を表す、複素数として表されるデカルト座標における地図上のセル位置を記憶する。
【0127】
、i=1...Nが、通常の動作状況に対応する最新の報告において、それぞれu個のアタッチされたモバイル端末MTを有する、異常事態が発生している地域に属すると特定されたセルの複素座標であると仮定する。
【0128】
プロセッサ300は、例えば、
【数4】
として操縦可能ビーム中心を計算する。例えば、関数f(u)は、モバイル端末MTの数に与えたい重要性に応じて、異なる形を有する場合がある。例えば、異常事態が発生している地域内のセルの場所だけが問題である場合には、f(u)=1とし、又はモバイル端末MTの数が考慮に入れられる必要がある場合には、f(u)=uとする等である。
【0129】
別の例では、第1段階として、複数の取り得る操縦可能ビーム中心、例えば、所定の格子上にあるか、又は均一に散在している、異常事態が発生している地域内の種々の点を想定することができる。
【0130】
当然、極座標等の他のタイプの表現及び複数のタイプの重み付けを用いることもでき、それゆえ、本明細書における上記の式は、それに応じて変化する場合がある。
【0131】
次のステップS504において、プロセッサ300は、操縦可能ビームのサイズを決定することができる。衛星システムによっては、ビームサイズはあらかじめ決定されており、変更できない場合がある。
【0132】
衛星システムが可変サイズの操縦可能ビームを可能にする場合において、先行するステップにおいて複数の中心が特定されたとき、操縦可能ビームの幾つかの位置が試験される。そのような位置ごとに、ビームサイズを計算することができる。
【0133】
ビームに割り当てられる全電力が限られていると仮定すると、フットプリントサイズが、地上面においてモバイル端末MTが受ける電力密度を決定する。大きなフットプリントに電力を分布させるほど、カバレッジを拡大できるようになるが、リンクマージンを低下し、それゆえ、モバイル端末のためのスループットが制限される可能性がある。
【0134】
逆に、高電力スポットビームは、より狭い地理的エリアにおいて、良好なサービス品質を確保する。ビーム中心ごとに、所定の数の操縦可能ビームサイズを試験することができる。
【0135】
操縦可能ビームは、異常事態が発生している地域の大部分又は全てをカバーすべきであり、及び/又は異常事態が発生している地域内のモバイル端末の大部分を収容すべきである。操縦可能ビームのフットプリントの周囲に、オプションの追加除外地域を設定することができ、それにより、地上制限エリアを決定することができる。
【0136】
操縦可能ビームの位置を計算するために、他のタイプの判定基準を考慮に入れることもできる。例えば、異常事態が発生している地域が、操縦可能ビームの最大フットプリントサイズより大きい場合には、最も都合の良い方向、例えば、最大数の潜在的なモバイル端末をサービングする方向を選択するために、メモリに記憶された所定の格子を用いて、操縦可能ビーム中心の所定の数の異なる位置を評価することができる。
【0137】
次のステップS505において、プロセッサ300は、特定の措置を講じることによって、衛星地上間統合ネットワークを改善する余地があるか否かを評価する。
【0138】
特定の措置は、例えば、本明細書において先に説明されたように計算された中心及びサイズを有し、再割り当てすることができるリソースReBsatの量Bの全て又は一部から構成される量Br_effectiveを用いる操縦可能ビームを配置すること、及び、例えば、操縦可能ビームのフットプリントと、そして場合によってはその周囲の除外エリアとから構成される地上制限地域において地上セルラーコンポーネントが操縦可能ビームによって用いられるリソースを使用するのを禁止することである。
【0139】
そのような再配置は、グローバルネットワークリソース計画に更なる変更を何も加えることなく、地上制限地域内の地上セルラー電気通信コンポーネントの容量を減らし、地上制限地域にわたって衛星コンポーネントの容量を増やすことを意味する。
【0140】
プロセッサ300は、0から最大量Bまで再割り当てされる可変範囲のリソースReBsatに関して、操縦可能ビームを配置する場合の衛星コンポーネント容量利得が、地上制限地域内の地上セルラーコンポーネント容量損失を上回っているか否かを計算することができる。これが当てはまる場合には、プロセッサ300はステップS506に進み、操縦可能ビームが配置されなければならないと判断する。
【0141】
プロセッサ300は、大災害の場合、地上ワイヤレスセルラーコンポーネントが、異常事態が発生している地域において既にほとんど稼動していないと仮定して、更なる容量試験を何も行うことなく、操縦可能ビーム配置が決定されると判断することができる。可変範囲のリソースReBsatから、Br_effectiveは、地上セルラーコンポーネントが部分的に使用できる場合の、異常事態が発生している地域内のモバイル端末MTの推定数に応じて判断することができ、場合によっては、異常事態が発生している地域の大きさに応じて、かつ緊急チームの到着予想を考慮に入れて、倍数によって補正することができる。その場合、プロセッサ300は、操縦可能ビームが配置されなければならないと判断し、ステップS506に進む。
【0142】
そうでない場合には、プロセッサ300はステップS500に戻る。
【0143】
次のステップS506において、プロセッサ300は、計算された中心の方向を指しており、計算されたサイズを有し、再割り当てされるリソースの量Br_effectiveを用いる操縦可能ビームを加えるために、衛星コンポーネントに指示する。同じステップにおいて、プロセッサ300は、特定された地上制限エリア内の地上セルに、リソースBr_effectiveを使用するのを止めるように通知する。
【0144】
地上セルは、そのセルにあるモバイル端末を残っているリソースに再スケジューリングすることができる。地上リンクを利用できないモバイル端末は、衛星リンクの利用可能性を監視する。操縦可能ビームフットプリント外では、モバイル端末は、通常モードの場合のように、それらの地域をカバーする衛星ビームに接続する。
【0145】
いかなる地上リンク接続も有しない地上制限地域内のモバイル端末MTは、地上制限地域にわたってホットスポットを生成し、それゆえ、標準的なビームより高い電力を有する操縦可能ビームに最初に自動的に接続しようとする。
【0146】
衛星コンポーネントに接続されたモバイル端末は、地上リンクの存在を定期的に監視する。地上リンクが利用できるようになるとき、モバイル端末MTは、地上リンクへのハンドオーバーに進む。
【0147】
次のステップS507において、プロセッサ300は、異常事態が発生している地域内の地上セルからの報告を用いて、異常事態の終結を示すネットワークインジケーターを監視するか、又は通常動作モードに戻る手動コマンドを検出する。
【0148】
例えば、プロセッサ300は、モバイル端末の数が増加するのに伴って通常動作報告を送信する、異常事態が発生している地域内のセルの数に応じて異常事態の終結を判断する。
【0149】
例えば、プロセッサ300は、衛星コンポーネントに接続されるモバイル端末MTの数が長期にわたって減少しているときに、異常事態の終結を判断する。
【0150】
プロセッサ300が、異常事態の終結を判断すると、プロセッサ300は、操縦可能ビームを使用している残りのモバイル端末MTに、通常動作モードにある衛星コンポーネントへのハンドオーバーを開始するように通知することを、衛星コンポーネントに指示する。
【0151】
プロセッサ300は、操縦可能ビームをオフに切り替えるように衛星コンポーネントに指示し、地上制限エリア内の地上セルに、リソースBr_effectiveを用いてモバイル端末のサービングを再開できることを通知する。
【0152】
別の変形形態では、プロセッサ300は、定期的にステップS500に戻ることができる。
【0153】
当然のことながら、本発明の範囲から逸脱することなく、上述した本発明の実施形態に対して多くの変更を行うことができる。
図1
図2
図3
図4
図5